JP2008019306A - 熱可塑性樹脂の再資源化方法、ならびに熱可塑性樹脂成形体の製造方法および熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂の再資源化方法、ならびに熱可塑性樹脂成形体の製造方法および熱可塑性樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】環境負荷を考慮し、多様な用途に応じた特性を有する高品位な熱可塑性樹脂成形体を得ることができる、効率的な化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法を提供する。
【解決手段】プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、プラスチック廃棄物から化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、を含み、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法、ならびに当該方法を用いた熱可塑性樹脂成形体の製造方法および熱可塑性樹脂成形体。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂の再資源化方法に関し、より詳しくは、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法に関する。また本発明は、当該再資源化方法を用いた熱可塑性樹脂成形体の製造方法および当該製造方法により得られる熱可塑性樹脂成形体に関する。
循環型社会構築のためには、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄パラダイムから、循環を考慮した新しい生産パラダイムへの転換が求められている。特に、循環を考慮した新しい生産パラダイムでは、再生可能な資源を利用することや、より地球に優しい再資源化方法が求められている。
再生可能な資源という観点から、環境にやさしい植物由来の資源が注目されている。植物由来の資源は、再生可能であり、焼却されても、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため、環境中の二酸化炭素濃度は増加しないとされており、環境にやさしい材料である。環境にやさしい材料である植物由来の資源の利用を拡大するべく、近年、さまざまな分野で植物由来の資源の利用技術が開発されつつあり、その利用技術のさらなる拡大が重要な課題となっている。
なお、本明細書においては、プラスチックからなる部材を「プラスチック部材」と呼称し、熱可塑性樹脂からなる部材を「熱可塑性樹脂部材」と称する。また、本明細書においては、プラスチック部材、熱可塑性樹脂部材を備えた製品をそれぞれ「プラスチック製品」、「熱可塑性樹脂製品」と呼称する。さらに、本明細書においては、プラスチック製品、熱可塑性樹脂製品の廃棄物をそれぞれ「プラスチック廃棄物」、「熱可塑性樹脂廃棄物」とも呼称する。なお、本明細書中においては「プラスチック」とは、熱可塑性樹脂の他、熱硬化性樹脂やゴムなどの高分子を含む広い概念を意味するものとする。
製品の再資源化に対しては、従来よりさまざまな取り組みがなされている。2001年4月に家電リサイクル法が施行されて以降、より活発に再資源化が行われるようになった。家電製品の再資源化においては、構成部材にしめるプラスチックの比率が高く、プラスチックをリサイクルすることができれば、法定基準値を達成することができる。回収したプラスチックの再資源化方法としては、回収したプラスチック部材を燃料として再資源化するサーマルリサイクル、回収したプラスチック部材を再度加熱溶融して製品の部材や原料に加工して使用するマテリアルリサイクル、回収したプラスチック部材から熱や圧力を加えて、元の石油や基礎化学原料に戻してから再度利用するケミカルリサイクルなどがあげられる。
しかしながら、サーマルリサイクルでは、燃焼時に炭酸ガスの発生があり社会的要求に合致しているとはいえない。また、回収した製品のプラスチック部材のマテリアルリサイクルでは、長期間市場で使用されてきた部材のため、劣化が起こり、要求特性の高い部材にはリサイクルすることが困難である。また、ケミカルリサイクルでは、元の石油や基礎化学原料に戻すためのエネルギーが大きく、一般的にはバージン材を製造するよりも投入するエネルギーが大きいという問題がある。ここで、バージン材とは未使用の樹脂組成物を意味するものである。
このような問題を解決するために、熱可塑性樹脂廃棄物からのマテリアルリサイクルでは、マテリアルリサイクルにより得られる熱可塑性樹脂成形体の特性を向上させ、要求特性の高い熱可塑性樹脂部材としても使用可能な再資源化方法が多く研究開発されている。
たとえば、特許文献1ではポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂を主体とする廃材にポリフェニレンエーテル系樹脂(バージン材)及びメタクリル酸メチル系重合体を混合することにより特性を保持する方法が開示されている。また、特許文献2では、回収されたプラスチック部材を樹脂の種類および添加剤の種類で細かく選別し、添加剤を除去する工程を設けることによりマテリアルリサイクルを可能にしている。しかしながら、このようなマテリアルリサイクル方法においては、化石資源由来の資源以外の有効な活用法は考慮されていない。
そのため、環境を考慮するならば、熱可塑性樹脂廃棄物のマテリアルリサイクルを拡大させつつ、バイオマス由来の資源などの再生可能な資源を有効活用し、化石資源由来の熱可塑性樹脂への依存度を低減していくべきである。
また、環境への影響を定量的に把握することも重要である。なぜなら、バイオマス由来の資源を利用しても、従来の化石資源を利用する場合より、製品ライフサイクルで環境負荷が高くなってしまえば、バイオマス由来の資源を利用する価値は少なくなってしまうからである。
一方、近年の世界的な生活水準の向上や人口増加などに伴い、熱可塑性樹脂の急速な市場の拡大が続いている。熱可塑性樹脂廃棄物の再資源化がより発展し、高品位な部材に再利用可能なマテリアルリサイクルが確立したとしても、熱可塑性樹脂廃棄物を需要に見合うだけ回収することができない可能性がある。そのため、熱可塑性樹脂廃棄物の有効利用と新たな化石資源由来の原料を使用しない、まったく新しい再資源化方法が求められている。
特開2002−88212号公報 特開2004−122661号公報
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を利用した、化石資源の使用量を低減することのできる効率的な化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法を提供することである。
また、本発明の別の課題は、熱可塑性樹脂成形体の要求特性、特に環境負荷に関する要求特性を満足することのできる、高品位な特性を有する熱可塑性樹脂成形体を、廃棄物から回収した化石資源由来の熱可塑性樹脂から製造する方法およびその方法により得られる熱可塑性樹脂成形体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するためには、化石資源由来の熱可塑性樹脂組成物とバイオマス由来の熱可塑性樹脂組成物を混合した熱可塑性樹脂成形体が、環境負荷を考慮しつつ高品位な特性値を発現させることができればよいとの着想を得て、そのような再資源化方法を開発すべく、化石資源由来の熱可塑性樹脂組成物に対するバイオマス由来の熱可塑性樹脂組成物のさまざまな混合比の熱可塑性樹脂成形体に対して、さまざまな特性値が発現できる再資源化方法の検討を重ねた。
そして、検討の末に、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対するバイオマス由来の熱可塑性樹脂の任意の混合比の熱可塑性樹脂成形体に対して、化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂の両者の特性値を併せ持ち、高い要求特性をも満足でき、さらに環境負荷を考慮した再資源化方法を導き出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明は、プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、を含み、前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法である。
また本発明は、プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、前記熱可塑性樹脂成形体に関する環境影響評価を実施する評価工程と、を含み、前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記環境影響評価により得られた環境負荷の評価値に基づいて、前記熱可塑性樹脂成形体の、環境負荷に関する要求特性を満足するように決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法である。
ここで、前記プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂を主に含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。
また、前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体であることが好ましい。
また、前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体であってもよい。
本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法においては、前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂に加え、前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂およびポリオレフィン系熱可塑性樹脂に対して、相容性および/または分散性を有する熱可塑性樹脂を混合することが好ましい。
前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂およびポリオレフィン系熱可塑性樹脂に対して、相容性および/または分散性を有する熱可塑性樹脂は、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体であることが好ましい。
ここで、前記トリブロック共重合体は、構成単位であるオレフィン系樹脂成分の主鎖または側鎖にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む変性重合体であってもよい。
また、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体をさらに混合してもよい。
前記プラスチック廃棄物は、家電、OA機器、電気電子部品からなる群から選択される1種または2種以上の製品の廃棄物であってもよい。
本発明はまた、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法を用いて熱可塑性樹脂成形体を得る、熱可塑性樹脂成形体の製造方法をも提供する。
本発明はさらに、上記熱可塑性樹脂成形体の製造方法により得られる熱可塑性樹脂成形体をも提供する。ここにおいて、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂部材を製造するための熱可塑性樹脂原料であってもよく、熱可塑性樹脂部材自体でもよいが、熱可塑性樹脂原料である場合、ペレット状であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体である熱可塑性樹脂部材は、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機からなる群から選択される家電製品に好適に用いることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂成形体である上記可塑性樹脂原料は、熱可塑性樹脂部材に成形されて、上記家電製品に好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、ポリスチレン系熱可塑性樹脂の代替として用いることができる。
本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、プラスチック廃棄物から化石資源由来の熱可塑性樹脂を効率的に回収し、再資源化できるため、バージン材の化石資源由来の熱可塑性樹脂の使用量を低減することができる。また、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、熱可塑性樹脂成形体を製造するにあたり、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合させるため、化石資源由来の熱可塑性樹脂の使用量自体を低減させることができる。さらに、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じた、様々なバリエーションの特性を備えた熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。
以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。
<化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法>
実施形態1
本発明は、プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、を含み、前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法である。
ここで、「化石資源」とは、原油や石炭の他、天然ガスも含む。また、「化石資源由来の熱可塑性樹脂」とは、このような化石資源を原料として得られる各種化合物を重合反応することにより生成する熱可塑性樹脂を意味する。
化石資源由来の熱可塑性樹脂を例示すると、たとえばポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、アクリル系、アクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、フッ素樹脂系等の系統の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
また、「バイオマス由来の熱可塑性樹脂」とは、植物あるいは微生物を原料として得られる各種化合物を重合反応することにより生成する熱可塑性樹脂の他、そのような植物や微生物から直接的に抽出されるものも含まれる。ここで、「バイオマス由来の熱可塑性樹脂」は、化石資源由来の熱可塑性樹脂との複合材料であってもよく、少なくとも、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分が含まれていればよい。
このようなバイオマス由来の熱可塑性樹脂は、化石資源由来の熱可塑性樹脂とは異なり、生分解性を示すという特徴を有するものもある。バイオマス由来の熱可塑性樹脂を例示すると、たとえばポリ乳酸重合体系、デンプン系、ポリヒドロキシアルカノエート系などのポリエステル系、ポリオールウレタン系等、の熱可塑性樹脂を挙げることができる。ポリ乳酸重合体(以下、PLAとも称する)系としては、たとえばL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、アクリル系、アクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、フッ素樹脂系等のうち、いずれか一つ以上を含む化石資源由来の熱可塑性樹脂との複合材料などが挙げられる。
本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、プラスチック廃棄物から化石資源由来の熱可塑性樹脂を効率的に回収し、再資源化できるため、バージン材の化石資源由来の熱可塑性樹脂の使用量を低減することができる。また、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、熱可塑性樹脂成形体を製造するにあたり、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合させるため、化石資源由来の熱可塑性樹脂の使用量自体を低減させることができる。さらに、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じた、様々なバリエーションの特性を備えた熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。
図1は、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法の好ましい一例を段階的に示すフローチャートである。図1には、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン(以下、家電4品目と称することがある)の廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する場合の具体例を示している。本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法は、基本的には、たとえば図1に示すような手順で、プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂から所望の熱可塑性樹脂成形体を得る。
図1に示す例においては、まず、家庭などから廃棄された使用済みの家電4品目を回収する(S101)。ここで、プラスチック廃棄物は、家電4品目に限られるものではない。プラスチック廃棄物は、化石資源由来の熱可塑性樹脂を含む廃棄物であれば特に限定されないが、たとえば家電4品目等の家電製品、OA機器、電気電子部品などを挙げることができる。なお、回収されるプラスチック廃棄物は、1種類に限られず、2種以上のプラスチック廃棄物を回収し、これらを1つの再資源化工程に供してもよい。
再資源化される化石資源由来の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂であるか、またはこれを主に含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。ここで、本明細書中において「熱可塑性樹脂組成物」とは、熱可塑性樹脂が1種または2種以上のポリマー成分の混合物から構成されている場合において、当該熱可塑性樹脂を構成する一のポリマー成分を意味する。
ここで、表1に家電4品目に含まれるプラスチック部材における、当該部材を構成する熱可塑性樹脂組成物の系統別の構成比率(重量%)の代表的な一例を示す。
Figure 2008019306
表1に示されるように、家電4品目に含まれるプラスチック部材においては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物の構成比率の合計は、テレビでは95.1重量%、冷蔵庫では67.3重量%、洗濯機では85.7重量%、エアコンでは68.1重量%であり、60重量%を超える極めて高い値である。したがって、家電4品目においては、プラスチック部材のうち、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物および/またはポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物を含有するプラスチック部材を再資源化することが、資源の有効利用という観点から特に重要であり、少なくともポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなる部材をマテリアルリサイクルすることができれば、家電4品目のプラスチック部材の再資源化率は60%を超えることになるといえる。したがって、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂を再資源化することは、再資源化の効率および有効性の点から極めて重要である。
続く工程において、回収したプラスチック廃棄物をおおまかに解体し、熱可塑性樹脂部材やコンプレッサー、熱交換器などの大型金属部材等を部品ごとに回収する(S102)。解体する方法としては、従来公知の適宜の方法を採ることができ、たとえば人の手による解体(手解体)などを挙げることができる。なお、S102は必須の工程ではなく、廃棄物の種類によっては省略することができる。
次に、熱可塑性樹脂部材や大型金属部材等が回収されたプラスチック廃棄物の残りの部材を粗破砕する(S103)。粗破砕の方法として従来公知の適宜の方法を採ることができ、たとえば衝撃式破砕装置やせん断式破砕装置などの大型破砕機を用いた方法が挙げられる。以下、粗破砕により生じた破砕物を「粗破砕物」と称する。
粗破砕により生じる粗破砕物の粒径は、特に制限されるものではないが、10mm以上であるのが好ましく、40mm以上であることがより好ましい。また、粗破砕物の粒径は80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましい。粗破砕物の粒径が10mm未満または80mmを越える場合には、次工程での金属の選別精度が低下するという傾向がある。また、粗破砕物の粒径が10mm未満の場合には、破砕に長時間を要するため、プラスチック廃棄物に含まれるプラスチックが溶融あるいは熱酸化による劣化を起こすという傾向がある。さらに、粗破砕物の粒径が80mmを越えると、嵩比重が小さくなり以後の工程での作業性に悪影響を及ぼすという傾向がある。したがって、具体的には、粒径が60mm程度となるように破砕するのが特に好ましい。
なお、S102を設け、プラスチック廃棄物から熱可塑性樹脂部材を回収している場合には、当該部材を別途、または熱可塑性樹脂部材や大型金属部材等が回収されたプラスチック廃棄物の残りの部材と一緒に粗破砕することが好ましい。
続く工程において、S103で得られた粗破砕物から、金属系粗破砕物および/または低嵩比重破砕物を選別、除去した後、分離液を用いて比重差を利用し、再資源化するプラスチック破砕物を選別、回収する(S104)。
まず、粗破砕物中に含まれる鉄、銅、アルミニウムなどからなる金属系粗破砕物と、プラスチック粗破砕物とを選別する。ここで、プラスチック粗破砕物とは、主にプラスチックからなる粗破砕物を意味し、破砕時に混入するプラスチック以外のものが若干含まれていてもよい。ここで、プラスチック以外のものとは、具体的には、当該金属系粗破砕物と比較して、粒径が極めて小さい鉄、銅、アルミニウムなどからなる金属系破砕片、塵、埃などである。金属系粗破砕物を選別除去する方法としては、従来公知の適宜の方法を採ることができる。たとえば、鉄系の粗破砕物については、磁力を用いて選別除去することができる。また、アルミニウム系や銅系の粗破砕物については、渦電流を用いて選別除去することができる。
さらに、低嵩比重破砕物を選別除去する工程を設けてもよい。ここで、低嵩比重破砕物とは、嵩比重が0.3以下の破砕物を意味し、たとえば、ポリウレタン系断熱材の破砕物や発砲スチロール系の破砕物などを挙げることができる。この工程を設けることにより、以後の工程の作業性が改善する。
低嵩比重破砕物の選別除去は、従来公知の適宜の方法を採ることができ、たとえば、風力を用いた方法を挙げることができる。このように、低嵩比重破砕物を選別除去する工程を設け、さらに、磁石を用いた金属系粗破砕物の選別除去および渦電流を用いた金属系粗破砕物の選別除去を行なう場合には、その順序は特に制限されないが、選別の効率の観点からは、まず磁力により鉄系粗破砕物を選別除去し、次いで渦電流によりアルミニウム系や銅系の粗破砕物を選別除去し、最後に風力により低嵩比重破砕物を選別除去することが好ましい。以上の工程を経て、廃棄物から金属系粗破砕物および低嵩比重破砕物が除去され、プラスチック粗破砕物が選別回収される。
なお、図示されていないが、プラスチック粗破砕物は、次工程(S105)に供される前に微破砕されることが好ましい。微破砕の方法としては、従来公知の適宜の方法を採ることができ、たとえばせん断式破砕装置などの大型破砕機を用いた方法が挙げられる。なお、以下微破砕された破砕物を「微破砕物」と称する。
微破砕物のサイズは、特に制限されるものではないが、後の工程において充分に溶融させ、他の物質と均一に混合させることができるよう、微破砕物の最大長さは5〜20mm程度であるのが好ましく、10mm程度であることが特に好ましい。なお、本工程は、必要に応じて行なわれるものであり、省略することができる場合もある。また、当該微破砕の工程は、次のS105以降に行なってもよい。
続いて、比重差を利用してプラスチック粗破砕物または微破砕物を、プラスチックを構成する樹脂組成物の系統別に分離する。なお、プラスチック粗破砕物または微破砕物には、S102において回収された熱可塑性樹脂部材の粗破砕物または微破砕物を含んでもよい。以下、本工程を「比重分離工程」と称する。
以下、比重分離工程について詳細に説明する。本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法においては、比重の異なる2種類のX分離液およびY分離液を用い、2回比重分離操作を行なうことが好ましい。ここで、比重分離操作とは、プラスチック粗破砕物または微破砕物を、たとえば混合攪拌槽に収容した液(分離液と称する)に投入し、当該分離液の比重より小さい比重を有するために分離液の液中または分離液表面に浮かぶプラスチック破砕物を、たとえばオーバーフロー方式等の方法を用いて回収する一連の操作をいう。当該分離液の比重より大きい比重を有する破砕物は、容器の底の方に沈降するが、これらは吸引等により回収することができる。
ここで表2に、プラスチックを構成する樹脂組成物の系統別の、プラスチックの比重の範囲の代表的な一例を示す。
Figure 2008019306
表2からわかるように、家電4品目に多量に使用されているポリオレフィン系樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂の比重の範囲は一般的に、0.89〜0.91g/cm3の範囲に含まれ、ポリスチレン系樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂の比重の範囲は一般的に1.04〜1.05g/cm3の範囲に含まれることが分かる。また、その他の系統の樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂の大部分は、その比重が一般的に1.05〜2.00g/cm3の範囲に含まれることがわかる。ただし、充填材などの添加による比重増加、発泡などによる比重減少などにより、多少のずれが生じる場合もある。
このことから、一般的には、比重が1.01〜1.08g/cm3の範囲にある分離液を用いることにより、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物と、その他の樹脂組成物からなるプラスチック破砕物の大部分とを分離することが可能であることがわかる。また、一般的には比重が0.92〜1.00g/cm3の範囲にある分離液を用いることにより、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物と、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物とを分離することが可能であることがわかる。
したがって、当該比重分離工程においては、まず、X分離液として好ましくは1.0〜1.1g/cm3、さらに好ましくは1.01〜1.08g/cm3の比重を有する液を用い比重分離を行い、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物と、その他の樹脂組成物からなるプラスチック破砕物やゴムの破砕物等とを分離する。X分離液の比重が1.0g/cm3未満の場合には、その他の樹脂組成物からなるプラスチック破砕物やゴムの破砕物のところへポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物が混入するという傾向が大きくなる。また、X分離液の比重が1.1g/cm3を超えると、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物にポリアミド系、ポリカーボネート系樹脂組成物からなるプラスチック破砕物やゴムの破砕物などが混入するという傾向が大きくなる。
次に、Y分離液として、好ましくは0.92〜1.01g/cm3、さらに好ましくは0.95〜1.00g/cm3の比重を有する液を用い比重分離を行い、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物とポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物とを分離する。Y分離液の比重が0.92g/cm3未満であると、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物の一部が沈降し、回収率が低下する傾向にある。また、Y分離液の比重が1.01g/cm3を越えると、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物にポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物が混入する傾向が大きくなる。
このようなX分離液およびY分離液を用いた2回の連続した比重分離操作は、具体的には、たとえば次のようにして行なうことができる。まず、プラスチック粗破砕物または微破砕物を、X分離液を収容した混合攪拌槽内に投入して攪拌する。ついで、オーバーフロー方式等の方法を用いて、浮上した粗破砕物または微破砕物を回収する。続いて、当該回収した粗破砕物または微破砕物を、Y分離液を収容した混合攪拌槽内に投入して攪拌する。ついで、オーバーフロー方式等の方法を用いて、浮上した粗破砕物または微破砕物を回収する。最終的に回収された粗破砕物または微破砕物が、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物である。また、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物は、沈降物として吸引等の方法により回収される。
本工程にて分離回収される、たとえばポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物のそれぞれには他の熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物が含まれることがあってもよい。このような他の熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物の混入は、たとえば次のような原因で起こり得る。すなわち、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物が発泡により多孔質となっている場合には、分離液中で沈降すべきポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物が浮上して、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を主体とするプラスチック破砕物に一部混入し得る。また、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物に軽比重の異物が付着して比重液中で沈降しないで浮上し混入する場合もあり得る。したがって、再資源化する化石資源由来の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂を指すだけではなく、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂を主に含み、他の系統の熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂をも含む熱可塑性樹脂も指すものである。ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂についても同様である。
なお、上記説明においては、X分離液を用いた比重分離操作の後、Y分離液を用いた比重分離操作を行なったが、これは好ましい順序であって、順序はこれに限られるものではない。また、比重分離操作は2回に限られるものではなく、場合によっては3回以上行なってもよい。
所望の比重を有する分離液の調整は、たとえば以下のようにして行なうことができる。すなわち、所望の比重が1.0未満の場合には、エタノールなどのアルコール等の比重が1.0未満の溶剤に、所望の比重となるまで水を加える。所望の比重が1.0より大きい場合には、水に、たとえば塩化ナトリウムなどの塩を加えて所望の比重とする。所望の比重が1.0の場合には、水を用いる。分離液の主剤となる溶剤は、必ずしも水である必要はないが、比重調整の簡便さや分離液の使用後の処理等を考慮すると、分離液の主剤となる溶剤は水であることが好ましい。
続く工程において、S104で選別、回収されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物、ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物のうち再資源化する対象となるものについて、洗浄乾燥を行なう(S105)。洗浄、乾燥の方法としては、従来公知の適宜の方法を採ることができ、たとえば翼型ローター・脱水スクリーン式洗浄脱水乾燥機などを用いた方法等が挙げられる。
ここで、S102を設け、プラスチック廃棄物から熱可塑性樹脂部材を回収しており、当該部材を別途、粗破砕(S103)を行なっている場合には、上記選別、回収された粗破砕物またはこれを微破砕した微破砕物とともに、洗浄乾燥してもよい。
続いて、再資源化される対象となる、洗浄・乾燥された、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物またはポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂および必要に応じて特性を調整する改質剤を均一に混合する工程(S106)に移る。当該バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合する工程(S106)から熱可塑性樹脂成形体である熱可塑性樹脂原料または熱可塑性樹脂部材を得るまでの工程(S108またはS110)を「成形体製造工程」と称する。
このように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合させることにより、化石資源由来の熱可塑性樹脂の使用量を低減させることができる。
使用するバイオマス由来の熱可塑性樹脂としては種々のものと使用することができる。バイオマス由来の熱可塑性樹脂の具体例は、すでに上述したとおりである。その中でも、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を好適に用いることができる。L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体は、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため、廃棄時に焼却されても環境中の二酸化炭素濃度は増大しないとされていることから環境上好適である。また、量産可能であるとともに、透明性、剛性などにおいて優れている。ここで、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体は、下記式(1)
Figure 2008019306
で表される。
バイオマス由来の熱可塑性樹脂の好ましい性状としては、軟化点が100〜400℃、より好ましくは120〜350℃であり、さらに好ましくは150〜300℃である。
軟化点が100℃未満の場合には、化石資源由来の熱可塑性樹脂との混和が不十分となり、軟化点が400℃を超えると成形温度が高くなり過ぎ、化石資源由来の熱可塑性樹脂が熱分解する虞がある。
また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸重合体系の1種である、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体であってもよい。ここで、脂肪族ポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等のグリコールと脂肪族ジカルボン酸とからなる脂肪族ポリエステルを特に好適なものとして例示することができる。L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、下記式(2)
Figure 2008019306
で表現することができる。ここで、上記式(2)におけるRは、炭化水素鎖を含む分子鎖である。Rはエステルと炭化水素鎖を含む分子鎖を例示することができ、Rがエステルと炭化水素鎖を含む分子鎖であるときのL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、下記式(3)
Figure 2008019306
で表現できる。
すなわち、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、当該脂肪族ポリエステルを構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位とを含んでなるものである。ここで、式(3)におけるR1およびR2は炭化水素鎖である。
また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂として、上記L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体、ならびに上記L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体の両方を混合してもよい。この両者を混合することにより、ポリ乳酸重合体の脆性および、再資源化するポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂とポリ乳酸重合体との親和性を改善することができる。また、両方を混合させることにより、得られる熱可塑性樹脂成形体の諸特性をさらに向上させることができる。
ここで、親和性について詳しく説明する。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂に対して、上記ポリ乳酸重合体および上記ポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体を混合することにより、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂は、上記式(2)におけるRに含まれる炭化水素鎖、上記式(3)における炭化水素鎖であるR1および/またはR2と親和性を示す。
ここで、上記式(2)、式(3)におけるR、R1、R2の炭素数は、再資源化する熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性樹脂組成物の種類に応じて決定されることが好ましい。たとえば、再資源化する熱可塑性樹脂が主にポリプロピレンを含んでいる場合には、ポリプロピレンを構成するモノマー単位の炭素数と同等の3以上にすることが好ましい。
一方、バイオマス由来の熱可塑性樹脂として混合されるL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体は、上記ポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体におけるポリ乳酸ブロックおよび、脂肪族ポリエステルブロックに含まれるエステル部分に親和性を示す。
すなわち、式(2)で示されるL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、再資源化する化石資源由来の熱可塑性樹脂およびバイオマス由来の熱可塑性樹脂としてのL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体の双方を相容化させる。したがって、当該L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、後述する相容化剤として捉えることも可能である。
次に、混合するバイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比について説明する。本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法は、得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて、当該混合比を決定することを特徴とする。
このように、得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて、混合比を決定することにより、当該熱可塑性樹脂成形体が適用される製品の部材に応じて、適切な特性を有する熱可塑性樹脂成形体を提供することが可能となる。
本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法においては、上記S101〜S105の工程を行なう一方で、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の効果的な混合比、および必要に応じてバイオマス由来の熱可塑性樹脂とともに混合される改質剤の種類、量を決定する工程が設けられる(S210〜S240)。PLA等のバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を決定する(S230)にあたっては、次のステップを経ることが好ましい。
まず、適用する部材を決定する(S210)。すなわち、再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体を、どの製品のどの部材に使用するかを決定する。次に、再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性を把握する(S220)。再資源化する化石資源由来の熱可塑性樹脂に対するバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を変化させると、得られる熱可塑性樹脂成形体の特性を改質させることができる。したがって、要求特性を把握し、当該要求特性に応じて、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する、PLA等のバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を決定(S230)することにより、所望の特性を有する、すなわち要求特性を満足する熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。
ここで、要求特性とは、再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体が各種製品の部材として適用される場合において、当該熱可塑性樹脂成形体に要求される特性を意味する。要求特性は、たとえば一般的な機械的特性、寿命、成形性、耐候性などの客観的特性のほか、外観やコストなどの主観的特性であってもよい。本発明の再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体は、これが適用される製品に係る全ての要求特性を満足するべきであるが、ある特定の要求特性のみを満足していてもよい。また、要求特性には、環境負荷に関する項目があってもよい。環境負荷に関する要求特性は、具体的には環境負荷削減についての要求特性を挙げることができる。環境負荷削減についての要求特性は、通常、本発明の熱可塑性樹脂成形体の環境負荷を、対応する現行部材の環境負荷に対して小さくするといったような内容である。なお、環境負荷に関する要求特性についての詳細は後述する。
なお、上述のようにバイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定されるものであるが、バイオマス由来の熱可塑性樹脂がL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体である場合、概して、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と化石資源由来の熱可塑性樹脂の合計100重量部のうち、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体が占める割合は、5〜95重量部であることが好ましい。5重量部未満である場合、化石資源由来の熱可塑性樹脂の比率が高くなるため、埋蔵化石資源の使用量の低減への寄与度が小さくなり、95重量部を超えるとポリ乳酸重合体の比率が高くなるため、衝撃特性(面衝撃強度)などに劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られなくなる虞がある。
特に、特性を損なうことなく、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を増加させるには、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と化石資源由来の熱可塑性樹脂の合計100重量部のうち、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体が占める割合は、10〜90重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは20〜80重量部である。これは、面衝撃特性が大きく低下せず、且つ埋蔵化石資源の使用量の低減に寄与できると言える配合量であるからである。
また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂がL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体である場合、概して、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と化石資源由来の熱可塑性樹脂の合計100重量部のうち、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体が占める割合は、1〜50重量部であることが好ましい。1重量部未満の場合、化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂の相容性または分散性が悪くなるため、面衝撃特性などが劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られなくなり、50重量部を超えると、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体の比率が高くなるため、耐久消費材として使用する場合には剛性と面衝撃性の良好なバランスが得られなくなる上、コストが高くなり経済的に不利となるからである。
特に、特性を損なうことなく、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を増加させるには、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と化石資源由来の熱可塑性樹脂の合計100重量部のうち、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体が占める割合は、2〜40重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは、5〜30重量部である。L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体を多く入れすぎると粘性が大きくなるため、耐久消費財として使用するには剛性が足りなくなり、少なすぎると相容化剤としての効果が小さくなるためである。
次に、要求特性を満足するように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂とともに添加する改質剤の種類、量を決定する(S240)。化石資源由来の熱可塑性樹脂に、単純にバイオマス由来の熱可塑性樹脂のみを混合して再資源化し、熱可塑性樹脂成形体を得た場合には、例えば冷蔵庫の部材などの高品位な部材に採用できない場合がある。そのため、要求特性を満足するように、さらに改質剤の種類および/または量を決定し、添加する。
ここで、改質剤について詳細に説明する。なお、上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、化石資源由来の熱可塑性樹脂を改質させる、すなわち特性を変化させるという意味においては、改質剤ともいえるが、本明細書においては、「改質剤」とは、当該バイオマス由来の熱可塑性樹脂とポリオレフィン系熱可塑性樹脂の双方に対して相容性および/または分散性を有する熱可塑性樹脂をいう。本明細書においては、改質剤を「相容化剤」とも称することがある。ここで、「相容性を有する」とは、熱可塑性樹脂組成物が互いに分子レベルで混合することを指し、「分散性を有する」とは、分子状に混じらない熱可塑性樹脂組成物がより微細に分散し、双方の熱可塑性樹脂組成物が界面結合することを指す。
改質剤としては、特に制限されるものではないが、たとえば、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体、エチレン−プロピレン系ゴム、オレフィン系樹脂成分とスチレン系熱可塑性樹脂成分とのグラフト共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPO)とスチレンの共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート(GMA)共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体とスチレンあるいはメタクリル酸メチル(MMA)あるいは酢酸ビニル(VA)のグラフト共重合体などが例示される。
好ましい改質剤の1つは、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体である。オレフィン系熱可塑性樹脂成分とスチレン系熱可塑性樹脂成分を主に含み、オレフィン系熱可塑性樹脂成分の両端にスチレン系熱可塑性樹脂成分を配した骨格を持つものは、連続相であるポリオレフィン系熱可塑性樹脂と分散相であるポリスチレン系熱可塑性樹脂の界面に配位しやすい。
このようなオレフィン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体としては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィンブロック共重合体(SEBC)などを挙げることができる。ここで、エチレン・ブチレンブロックは、ポリブタジエンをすべて水素添加したものでもよく、一部水素添加したもの、あるいは水素添加がないものでもよい。オレフィン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体としては、たとえばスチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレン共重合体である、旭化成製タフテック(登録商標)P2000を好適に用いることができる。なお、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレン共重合体は、下記式(4)
Figure 2008019306
で表される。
式(4)におけるブチレン・ブタジエンブロックは、再資源化するポリオレフィン系熱可塑性樹脂に親和性を示しながら耐衝撃性を付与する。
改質剤の別の好ましい例として、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体であって、構成単位のオレフィン樹脂成分の主鎖または側鎖にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む、変性重合体を挙げることができる。ここで、このような変性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位がブロック化またはグラフト化されているものを含むものである。カルボン酸基またはその誘導体基を例示すると、無水マレイン酸等を挙げることができる。したがって、このような変性重合体としては、たとえばマレイン酸変性SEBSを挙げることができ、旭化成ケミカルズ(株)製タフテック(登録商標)M1943を好適に用いることができる。なお、マレイン酸変性SEBSは、下記式(5)
Figure 2008019306
で表される。
上述したとおり、式(5)におけるマレイン酸ブロックは、バイオマス由来の熱可塑性樹脂として混合した、たとえばポリ乳酸重合体及びポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体のエステル基と親和性を示し、一方、式(5)におけるポリオレフィンブロックは、再資源化するポリオレフィン系熱可塑性樹脂に親和性を示すことにより相容性を示す。また、マレイン酸変性SEBSは、耐光性、耐熱性に優れている。
改質剤の別の好ましい例として、ポリオレフィンブロックを含有するブロック共重合体であって、当該ポリオレフィンブロックにカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位を結合した変性ブロック共重合体を挙げることができる。ここで、このような変性重合体は、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位がブロック化またはグラフト化されているものを含むものである。カルボン酸基またはその誘導体基を例示すると、無水マレイン酸等を挙げることができる。したがって、このような変性ブロック共重合体として、たとえば三洋化成(株)製ユーメックス1010を好適に用いることができる。なお、ポリオレフィンブロックにカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位を結合した変性ブロック共重合体は、下記式(6)
Figure 2008019306
で表される。
式(6)におけるマレイン酸ブロックは、バイオマス由来の熱可塑性樹脂として混合した、たとえばポリ乳酸重合体およびポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体のエステル基と親和性を示し、一方、式(6)におけるポリオレフィンブロックは、再資源化するポリオレフィン系熱可塑性樹脂に親和性を示すことにより相容性を示す。
改質剤の別の好ましい例として、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体を挙げることができる。このようなジブロック共重合体として、たとえばスチレン系樹脂成分とブタジエン樹脂成分とを含むジブロック共重合体を挙げることができ、そのようなものとして、旭化成ケミカルズ(株)製タフプレン(登録商標)126を好適に用いることができる。なお、スチレン系樹脂成分とブタジエン樹脂成分とを含むジブロック共重合体は、下記式(7)
Figure 2008019306
で表される。
式(7)におけるブタジエンブロックにより耐衝撃性が付与される。なお、上記改質剤は1種のみを用いてもよく、2種以上の改質剤を用いてもよい。改質剤の種類の選択、組み合わせは熱可塑性樹脂の要求特性に応じて決定される。
以上のようにして再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定されたバイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比、改質剤の種類、量に従って、S106において、バイオマス由来の熱可塑性樹脂、改質剤が添加され、均一に混合される。混合は、たとえばタンブラー混合機等を用いた方法など従来公知の方法により行なうことができる。
なお、本工程(S106)において、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤、耐加水分解安定剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加してもよい。
続く工程において、加熱溶融して押出し成形し(S107)、本発明の熱可塑性樹脂成形体である、たとえばペレット状の熱可塑性樹脂原料とする(S108)。
ここで、加熱溶融時および成形時の加熱温度は、当該熱可塑性樹脂成形体の融点がT℃である場合、T℃以上であることが好ましく、(T+10)℃以上であることがより好ましい。また、加熱溶融時および成形時の加熱温度は(T+120)℃以下であることが好ましく、(T+80)℃以下であることがより好ましい。加熱溶融時および成形時の加熱温度がT℃未満の場合には、混合された熱可塑性樹脂のいずれかが十分に溶融しないために成形し難いという傾向にあるためであり、また、加熱溶融時および成形時の加熱温度が(T+120)℃を越えると、混合された熱可塑性樹脂のいずれかが熱劣化してしまう傾向にあるためである。
成形された熱可塑性樹脂原料の形状は、特に制限されるものではなく、ペレット状の他、たとえばシート状、フィルム状、パイプ状等の形状であってもよく、押出成形機の種類、使用の態様あるいは求められる特性などから適宜選択される。シート、フィルム、射出成形体などの各種成形体に成形する原料として汎用性があること、取り扱いが容易であることから、本発明の熱可塑性樹脂成形体である熱可塑性樹脂原料は、ペレット状であることが好ましい。
熱可塑性樹脂原料をペレット状とする場合、その粒径は特に制限されるものではないが、1mm以上が好ましく、特に2mm以上がより好ましい。これは、ペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向があるためである。また、ペレットの粒径は、8mm以下が好ましく、特に5mm以下がより好ましい。これは、ペレットの粒径が8mmを越えると、成形機のシリンダー内で充分に溶融しないため均一混練されないという傾向があるためである。
加熱成形に用いる装置としては、特に制限されるものではないが、たとえば、単軸押出成形機あるいは多軸式押出成形機などの押出成形機が挙げられる。ペレット状に成形する場合、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどの方法を用いることができる。これらの方法の中でも、後に射出成形により特定の形状に成形する場合には、樹脂原料の供給が円滑に行え、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
続いて、好ましくは、品質等を管理するために、ロット毎にペレット状の熱可塑性樹脂原料の特性値を調査し、管理する(S109)。
続く工程において、熱可塑性樹脂原料を射出成形機に投入し、本発明の熱可塑性樹脂成形体である熱可塑性樹脂部材を作製する(S110)。このとき用いる射出成形機としては、特に限定するものではないが、たとえばスクリュインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂部材を作製する際、上記ペレット状等の形状の熱可塑性樹脂原料を作製することなく、S105で洗浄乾燥されたプラスチック破砕物、バイオマス由来の熱可塑性樹脂および、必要に応じて改質剤を射出成形機にそのまま投入し、直接熱可塑性樹脂部材に成形するようにしてもよい。
実施形態2
本発明は、プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、前記熱可塑性樹脂成形体に関する環境影響評価を実施する評価工程と、を含み、前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記環境影響評価により得られた環境負荷の評価値に基づいて、前記熱可塑性樹脂成形体の、環境負荷に関する要求特性を満足するように、前記混合比を決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法をも提供する。
このような本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化するに際し、環境負荷をより少なくすることができる。また、本発明によれば、適用する熱可塑性樹脂成形体の要求特性、特に環境負荷に関する要求特性を満足する特性を備えた熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。
図2は、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法の、別の好ましい一例を段階的に示すフローチャートである。以下、図2を参照しながら、本実施形態について説明する。本実施形態の再資源化方法は、S220において把握された要求特性が環境負荷に関する要求特性を含む場合において、再資源化により得られる熱可塑性樹脂成形体に関する、たとえばライフサイクルアセスメント(以下、LCAとも称する)等の環境影響評価を実施する評価工程(S221)を有することを特徴とする。本実施形態の再資源化方法においては、成形体製造工程において混合されるバイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、上記評価工程(S221)において実施された環境影響評価により得られた、熱可塑性樹脂成形体に係る環境負荷の評価値に基づいて、環境負荷に関する要求特性を満足するように決定される。ここで、環境負荷に関する要求特性は、具体的には環境負荷削減についての要求特性を挙げることができる。環境負荷削減についての要求特性は、通常、本発明の熱可塑性樹脂成形体の環境負荷を、対応する現行部材の環境負荷に対して小さくするといったような内容である。
このように、LCA等の環境影響評価を実施することにより、本発明の再資源化方法により得られる熱可塑性樹脂成形体の環境負荷を定量的に把握することが可能となる。また、現行部材がある場合には、当該現行部材の環境負荷と比較することが可能となる。環境負荷を定量的に把握、すなわち環境負荷の評価値を得、現行部材の環境負荷と比較することにより、現行部材と比較してより環境負荷の小さい熱可塑性樹脂成形体の得られるバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を決定することができる。
以下、本実施形態の特徴である評価工程(S221)およびバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を決定する工程(S230)について詳細に説明する。なお、当該説明においては、化石資源由来の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン(以下、PPとも称する)を例に挙げるが、化石資源由来の熱可塑性樹脂はこれに限られるものではない。
まず、評価工程(S221)において、LCA等の環境影響評価を実施し、熱可塑性樹脂成形体に関する環境負荷の評価値を得る。ここで本発明においては、環境負荷の評価値として「化石資源消費量」を採用することが好ましい。「化石資源消費量」とは、対象とする製品を製造する際に利用するプロセスのエネルギー(以下、プロセスエネルギーともいう)と化石資源エネルギーの合計を意味する。すなわち、化石資源消費量が小さいほど、環境負荷は小さい。また、環境負荷の評価値として、二酸化炭素などの温室効果ガス等を換算して用いてもよい。
当該評価工程(S221)においては、まずバイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比が異なる熱可塑性樹脂成形体を製造する場合のそれぞれの化石資源消費量を算出する。図3は、バージン材のPLAから熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(a)、バージン材のポリオレフィン系熱可塑性樹脂であるPPから熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(b)、および本発明の方法により化石資源由来の熱可塑性樹脂を回収し、これから本発明の熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(c)を示す概略フローチャートである。化石資源消費量に算出にあたっては、図3に示される原料産出(コーンの栽培または原油の採掘)あるいは回収工程からペレット製造までの工程を対象として化石資源消費量を算出する。図3におけるコンパウンド作製と成形体を製造する工程は、PLA、PP及び本発明の熱可塑性樹脂成形体ではほとんど同じ工程を持ち、環境負荷の評価値に大きな影響を及ぼさないためである。
上記化石資源消費量を算出するにあたっては、次のような前提を採用した。まず、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合しない場合の、プラスチック廃棄物の回収からペレット製造までのインベントリ分析を行った結果に基づき、プラスチック廃棄物から回収された主にPPからなる熱可塑性樹脂から熱可塑性樹脂成形体を製造する場合の化石資源消費量を5.00(MJ/kg)と設定した。なお同様に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合しない場合において、S102で取り出された熱可塑性樹脂部材から熱可塑性樹脂成形体を製造する場合の化石資源消費量についても、5.00(MJ/kg)とした。S102で取り出された熱可塑性樹脂部材は比重分離工程等を経ない場合があるが、当該工程は破砕工程と比べて極めて化石資源消費量が小さいため、同様の扱いとしたものである。このような化石資源消費量5.00(MJ/kg)という値は、本発明の再資源化方法により熱可塑性樹脂成形体を製造する場合に適用されるものであり、この数値は、再資源化する方法、再資源化時に使用するエネルギー、輸送距離など、さまざまな要因により変動し得る。したがって、実際に行なう再資源化方法が、たとえば本発明の再資源化方法に何らかの工程を付加されている等の場合には、化石資源消費量は、実際に再資源化するフローに従い、導出すればよい。
また、上記化石資源消費量を算出するにあたっては、バージン材のPPからペレット製造までの化石資源消費量として、(社)プラスチック処理促進協会「プラスチック廃棄物の処理・処分に関するLCA調査報告書」(2001年3月)(参考文献1)に記載されたデータを採用した。この文献の記載によれば、PPのプロセスエネルギーは24.7(MJ/kg)、化石資源エネルギーは45.8(MJ/kg)であり、化石資源消費量は70.5(MJ/kg)である。
また、バージン材のPLAからペレット製造までの化石資源消費量として、Erwin T.H. Vink et.al.; Polymer Degradation and Stability, 80, p403−419, 2003 ”Applications of life cycle assessment to NatureWorks polylactide(PLA)production”(参考文献2)に記載されたデータを採用した。この文献の記載によれば、PLAのプロセスエネルギーは54.1(MJ/kg)、化石資源エネルギーは0(MJ/kg)であり、化石資源消費量は54.1(MJ/kg)である。
環境負荷の評価値、すなわち化石資源消費量の算出は、具体的には次のようにして行なう。ここで、一般的にLCAを採用した場合、環境負荷の評価値xは次の数式[1]で算出される。
x=Aj+Ak+・・・+As+At [1]
ここで、Aは、ライフサイクルのシナリオである。環境負荷の評価値は上記数式[1]のように、調査範囲として設定したライフサイクルのシナリオの環境負荷の評価値の積み上げ算で表現される。
図2に示されるフローチャートに基づいて製造される熱可塑性樹脂成形体の環境負荷の評価値、すなわち化石資源消費量xは、バイオマス由来の熱可塑性樹脂とプラスチック廃棄物から回収された化石資源由来の熱可塑性樹脂の混合比に依存する。すなわち、当該混合比がa:b(ただし、a+b=1)である場合には、化石資源消費量xは、次の数式[2]のように求められる。
x=a×s+b×t [2]
ここで、sは、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の化石資源消費量、tは、プラスチック廃棄物から回収された化石資源由来の熱可塑性樹脂の化石資源消費量である。本来は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と化石資源由来の熱可塑性樹脂を混合して再資源化する際に、添加する各種添加剤、成形加工条件等を考慮して環境負荷の評価値を算出するべきであるが、上記と同じ理由から省略している。
たとえば、バイオマス由来の熱可塑性樹脂とPPの混合比が30:70であり、図2のS101〜S105を経て得られるPPにPLAを混合して(図2のS106)、熱可塑性樹脂成形体(熱可塑性樹脂ペレット状原料)を製造する場合の化石資源消費量xは、上記前提を考慮し、次の数式[3]により、19.73(MJ/kg)と求めることができる。
x=30/100×54.1+70/100×5.00
=19.73(MJ/kg) [3]
同様にして、様々なPLA/PP混合比を有する熱可塑性樹脂ペレット状原料を製造する場合の化石資源消費量xを算出した。結果を表3に示す。
Figure 2008019306
ここで、表3におけるシナリオ1に示される化石資源消費量は、現状のPLAの化石資源消費量、すなわち上記参考文献2に記載の54.1(MJ/kg)に基づいて算出された化石資源消費量であり、シナリオ2に示される化石資源消費量は、将来予測されるPLAの化石資源消費量、7.4(MJ/kg)に基づいて算出された化石資源消費量である。上記参考文献2には、PLAは将来、生産量が増えることや、製造時のエネルギーに再生可能エネルギーを採用することにより化石資源消費量が大幅に削減されると報告されている。なお、表3における「再生材」とは、図2に示されるS101〜S105を経て回収された熱可塑性樹脂を意味する。
続く工程において、以上のようにして算出された環境負荷の評価値、すなわち化石資源消費量に基づいて、環境負荷に関する要求特性を満足するように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比を決定する(S230)。たとえば環境負荷に関する要求特性が、環境負荷削減についての要求特性であり、当該環境負荷削減についての要求特性が、現行部材を製造する際の環境負荷をA%削減するという内容である場合には、現行部材を製造する際の化石資源消費量をx1としたときに、化石資源消費量xがx1×(1−A/100)となるような範囲から混合比を決定すればよい。
このようにして、環境影響評価を実施し、得られた環境負荷の評価値、すなわち化石資源消費量に基づいて、環境負荷に関する要求特性を満足するように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比が決定される。なお、要求特性としては、環境負荷に関する要求特性以外にも、熱可塑性樹脂成形体の機械的特性、コストなど様々な要求特性が存在するが、これらの環境負荷に関する要求特性以外の要求特性をも考慮して混合比を決定することが好ましい。
<熱可塑性樹脂成形体>
上記本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法を用いることにより、本発明の熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂成形体は、製品に適用される熱可塑性樹脂部材であってもよく、当該部材を製造する原料となる、たとえばペレット状の熱可塑性樹脂原料であってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体が適用される製品としては、たとえば家電製品、OA機器(パーソナルコンピュータ等の情報機器やプリンターやコピー機等の事務機器を含む)、電気電子部品等を挙げることができる。本発明の熱可塑性樹脂成形体は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比や改質剤の種類、量などにより、所望の特性をもたせることが可能である。したがって、家電製品の中でも、特にエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの要求特性が高い製品の部材としても用いることができる。
ここで、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法においては、上述のように、たとえばポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物と、他の熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物とを完全に分離できない場合があるが、そのような場合であっても、本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法によれば、使用済みとなった廃棄物を高い割合で再利用することができ、得られる本発明の熱可塑性樹脂成形体は、少なくとも中品位もしくは高品位の熱可塑性樹脂成形体である。すなわち、従来、家電4品目に使用する熱可塑性樹脂廃棄物から得られるポリオレフィン系熱可塑性樹脂をリサイクルする際、異組成であるポリスチレン系熱可塑性樹脂等が混合するため、物性や長期信頼性の点で低品位の再生品しか得られず、ハンガーや植木鉢などの日用品雑貨への利用に留まっていたが、本発明の方法によれば、上記家電4品目の家電品から、高品位な熱可塑性樹脂成形体が得られるため、得られた本発明の熱可塑性樹脂成形体を耐久消費材(例えば、家電4品目の部材)へ適用することが可能となる。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、たとえばポリスチレン系熱可塑性樹脂の代替として用いることができる。このように、現行の熱可塑性樹脂の代替として本発明の再資源化方法により製造された熱可塑性樹脂成形体を用いることにより、化石資源由来の熱可塑性樹脂の消費量を低減させることができる。
以下、実施例、比較例および参考例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(化石資源由来の熱可塑性樹脂の選別回収)
図1のフローチャートに示されるS101〜S104に従って、プラスチック廃棄物から化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別回収した。まず、プラスチック廃棄物として、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機からなる群から選ばれる家電製品を回収し(S101)、手解体した後(S102)、通常の破砕機を用いて破砕して(S103)、得られた破砕物から、通常の磁力を用いた選別機により金属系破砕物を選別し、さらに通常の風力を用いた選別機により低嵩比重破砕物を選別し、残りのプラスチック粗破砕物を回収し、比重差を利用してポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる粗破砕物を選別回収した(S104)。
比重差を利用した選別回収(比重分離工程)は次のようにして行なった。まず、金属系破砕物および低嵩比重破砕物が選別除去されたプラスチック粗破砕物を比重1.08の塩化ナトリウム水溶液で満たされた混合攪拌槽内に投入し、攪拌したのち、浮遊したもの(ポリオレフィン系およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物)をオーバーフロー方式で回収し、沈殿したもの(その他の系統の樹脂組成物からなるプラスチック破砕物、ゴム、金属など)は塩化ナトリウム水溶液とともに吸引回収した。ここで、オーバーフロー方式で流出した塩化ナトリウム水溶液、および吸引回収時に同時回収された塩化ナトリウム水溶液は、ポンプを用いて混合攪拌槽内に注入して再利用した。ついで、浮遊したものとして回収されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物およびポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を、比重1.00の水で満たされた混合攪拌槽内に投入し、攪拌したのち、浮遊したもの(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物)と沈殿したもの(ポリスチレン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物)を回収した。
(熱可塑性樹脂成形体の作製)
次に、図1のフローチャートに示されるS105〜S110に従って、熱可塑性樹脂成形体(試験片)を作製した。まず、得られた主にポリプロピレンから構成されるポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物を微破砕した後、洗浄乾燥した(S105)。ついで、洗浄乾燥されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物(A−1)にバイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)を表4に示す混合比(重量%)で添加し、通常のタンブラー混合機を用いて均一混合した(S106)。
ここで、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)には、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(三井化学(株)製 レイシア(登録商標)H−100J)(B−1)を用いた。
次に、上記均一に混合された混合物を、それぞれスクリュー径25mm、L/D=26の二軸溶融混練押出機((株)テクノベル製)を用いて210℃で溶融混練するとともに、押出成形することにより(S107)、直径約2mm、長さ3mmのペレット状の熱可塑性樹脂原料3種類を作製した(S108)。
次に、これらの熱可塑性樹脂原料を、それぞれ10トン射出成形機のホッパーに投入し、成形温度220℃、金型温度40℃の射出成形条件でASTM準拠の物性測定用の試験片(実施例1−1〜1−3)を作製し(S110)、それぞれの試験片について、以下の特性を以下の測定方法により測定した。
<比較例1−1>
バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B−1)を使用しないこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、以下の特性を以下の測定方法により測定した。
<比較例1−2>
バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B−1)のみを用いて、実施例1と同様に試験片を作製し、以下の特性を以下の測定方法により測定した。
<参考例1−1>
化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)として、図1に示されるS101〜S104に従って選別回収されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなるプラスチック破砕物(A−1)の代わりに、バージン材のポリオレフィン系熱可塑性樹脂(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ−3057HP)(A−2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、以下の特性を以下の測定方法により測定した。
(各種特性の測定方法)
以下の特性について、以下の測定方法により、実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−2および参考例1−1の試験片の測定を行なった。
(i)「引張強度」および「伸び」は、それぞれ引張降伏強さおよび引張破断伸びとしてJIS K7113に準じて測定した。
(ii)「曲げ強度」および「曲げ弾性率」は、JIS K7203に準じて測定した。
(iii)「アイゾット衝撃強度」は、JIS K7110に準じて測定した。
(iv)「面衝撃強度」は、JIS K7211に準じて測定した。
ここで、「引張強度」、「伸び」とは、材料を一定速度で引っ張り、応力と歪の関係を求めるもので、伸張された材料は、最初弾性変形をし、その後塑性変形を始め、極大強度に達し、さらに降伏点を越えるとネッキングを生じ、破断に至る。応力の一番大きいところ(最大点応力)を「引張強度」、破断したときの歪(破断点伸び)を「伸び」としている。
また、「曲げ強度」、「曲げ弾性率」とは、2点で支えた試験片の中心に応力をかけることにより、試験片の中心を境として凹部は引張応力が、凸部は圧縮応力がかかっており、これらも「引張強度」、「伸び」と同様に、応力と歪の関係を求めるものである。そして、それぞれの測定値から、応力と歪のバランスで特性が変わる。例えば、PPなどは、強度は大きいが、弾性率が小さく、伸びも大きいものは「軟らかくて粘り強い」材料である。また、ポリ乳酸などは強度・弾性率ともに大きく、伸びが小さいものは「硬くて脆い」材料である。
「アイゾット衝撃強度」とは、材料に高速で負荷したとき、瞬時にして破壊する現象を衝撃破壊といい、その破壊に対する抵抗力が衝撃強度である。一般的に強度が大きいと硬く強い材料、小さいと脆く弱い材料といえるが、ゴムのように弾性が大きいために破壊しにくく強度が大きくなる場合もある。
「面衝撃強度」とは、一定の高さから錘を落下させ、どの高さで材料が割れるかを示すものであり、異種材料が混合しているような材料は、互いの材料が界面で剥離している(相容していない)ため、面衝撃強度が小さくなり、相容しているかどうかの指標になるものである。
(試験片の特性の評価)
実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−2および参考例1−1の試験片の測定結果を表4に示す。
Figure 2008019306
表4の実施例1−1〜1−3と比較例1−1の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率を比較すると、曲げ強度、曲げ弾性率ともに、実施例1−1〜1−3の試験片は、比較例1−1の試験片と同程度またはそれより大きくなっている。したがって、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A−1)にL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)を混合することにより、剛性が向上することが分かる。
また、実施例1−1〜1−3を比較すると、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)に対して、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を任意の割合で混合しても、比較例1−1の試験片と比較して、曲げ強度、曲げ弾性率等に改質効果があり、再資源化が可能であるといえる。上述のように、配合量については特性から得られる情報をもとに、用途に応じた特性を選んで決めればよく、また、資源の有効活用という面ともバランスをとる必要があるが、少なくとも、表4の測定結果から、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)の特性を改質させるものとして、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)は適していると言える。
また、実施例1−1〜実施例1−3から、適用部材が比較例1−1の試験片と同等程度の剛性(引張強度)を必要とするならば、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)の混合比は少ないほうがよく、剛性が大きいほうがよい場合には、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)の混合比は多いほうがよいことが理解される。
また、アイゾット衝撃強度、面衝撃強度についてみると、実施例1−1〜1−3の試験片は、比較例1−1の試験片と比べて低く、高品位な耐久消費財として採用するためには、さらなる改質が必要であると考えられる。
<実施例2>
バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)として、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)に加え、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(大日本インキ(株)製 プラメート(登録商標)PD−150)(B−2)を、表5に示す混合比(重量%)で混合すること以外は実施例1と同様にして試験片を作製した(実施例2−1〜2−5)。
<比較例2>
バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B−2)を使用しないこと以外は実施例2と同様にして試験片を作製した(比較例2−1〜2−2)。熱可塑性樹脂(A−1)と(B−1)の混合比(重量%)は、表5に示すとおりである。
<参考例2>
参考のため、参考例2−1および2−2を表5に合わせて示した。参考例2−1は、参考例1−1と同一であり、参考例2−2は、比較例1−2と同一である。
(試験片の特性の評価)
実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−2および参考例2−1〜2−2の試験片の測定結果を表5に示す。
Figure 2008019306
表5の実施例2−1〜2−2と比較例2−1とを比較すると、さらにL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(B−2)を混合することにより、曲げ強度、曲げ弾性率が減少傾向にあるものの、面衝撃強度が増加することがわかる。したがって、実施例2−1〜2−2の熱可塑性樹脂成形体は、参考例2−1と同等の曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を必要とし、さほど高い面衝撃強度を必要としない中品位部材に採用することが可能である。
同様に、表5の実施例2−3〜2−5と比較例2−2とを比較すると、アイゾット衝撃強度、面衝撃強度ともに、比較例2−2より大きくなっていることから、さらにL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(B−2)を混合することにより、衝撃強度が向上することがわかる。したがって、比較例2−2と比較して高い衝撃強度の要求される中品位部材(例えば、文具、玩具、家具など)に適用可能である。また、実施例2−3〜2−5を参考例2−1と比較すると、面衝撃強度を除く、すべての特性値は同等以上であることがわかる。これにより、実施例2−3〜2−5の成形体は、剛性の必要な部材にまで、採用できることがわかる。
上述のように、特性から得られる情報をもとに、用途に応じた特性を選んで決めればよく、また、資源の有効活用という面ともバランスをとる必要があるが、少なくとも、表4および表5の測定結果から、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)の特性を改質させるものとして、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(B−2)は適しているといえ、剛性の必要な部材に対しては、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B−1)および/または(B−2)を多く混合して再資源化するべきであることが理解される。
また、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)に加えて、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(B−2)をさらに混合させる方が、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)のみを配合する場合に比べ、熱可塑性樹脂成形体の諸特性をさらに向上できることがわかった。
<実施例3>
化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)として上記(A−1)または(A−3)を用い、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)として上記(B−1)および上記(B−2)を混合し、さらに、改質剤(C)として(C−1)〜(C−4)を、表6に示す混合比で混合した以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した(実施例3−1〜3−5)。化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)としての(A−3)は、図1に示されるフローチャートにおいて、市場から回収された洗濯機から手解体(S102)により取り出した熱可塑性樹脂部材を単独で破砕し(S103)、比重分離工程等の選別工程(S104)を行なうことなく、洗浄乾燥して(S105)得られたプラスチック破砕物である。改質剤(C−1)は、三洋化成(株)製ユーメックス1010、改質剤(C−2)は、旭化成製タフテック(登録商標)P2000、改質剤(C−3)は、旭化成ケミカルズ(株)製タフテック(登録商標)M1943、改質剤(C−4)は、旭化成ケミカルズ(株)製タフプレン(登録商標)126である。なお、表5に示される改質剤の混合比は、改質剤(C−1)および(C−2)については、全組成物(化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)+バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)+改質剤(C))100重量部に占める改質剤(C)の割合(重量部)であり、改質剤(C−3)および(C−4)については、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)+バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)100重量部に対する改質剤(C)の重量部である。
<比較例3>
比較のため、比較例3−1および3−2を表6に合わせて示した。比較例3−1および3−2は、それぞれ比較例2−1および2−2と同一である。
<参考例3>
参考のため、参考例3−1〜3−3を表6に合わせて示した。参考例3−1は、参考例2−2と同一であり、参考例3−2は、参考例2−1と同一である。また、参考例3−3は、耐衝撃性を付与したバージン材のポリスチレンからなる化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)(以下、HIPS(High Impact Polystyrene)ともいう)として、ポリスチレン系熱可塑性樹脂のバージン材(BASF(株)製 576H)のみを用いて、実施例1と同様にして試験片を作製したものである。
(試験片の特性の評価)
実施例3−1〜3−5、比較例3−1〜3−2および参考例3−1〜3−2の試験片の測定結果を表6に示す。
Figure 2008019306
表6の実施例3−1〜3−2と比較例3−1との曲げ強度、曲げ弾性率を比較すると、実施例3−1および3−2の試験片の曲げ強度、曲げ弾性率はともに、比較例3−1の試験片と同程度またはそれより大きくなっている。これより、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A−1)、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)としてのL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)に、改質剤(C)をさらに混合することにより、強度および剛性が向上することが分かる。
さらに、面衝撃強度についてみると、実施例3−1および3−2の試験片の面衝撃強度は、比較例3−1の試験片より大きくなっている。これより、改質剤(C)として(C−1)および(C−2)を混合することにより、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(B−1)だけでは不十分であった面衝撃強度の向上、つまり粘性の向上を図ることができることがわかる。すなわち、改質剤(C)として、ポリオレフィンブロックを含有するブロック共重合体であって、当該ポリオレフィンブロックにカルボン酸基またはその誘導体基を含有する分子単位を結合した変性ブロック共重合体である、三洋化成(株)製ユーメックス1010(C−1)およびオレフィン系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体である、旭化成製タフテック(登録商標)P2000(C−2)を混合することにより面衝撃強度が向上できることがわかる。また、表6の実施例3−1〜3−2の試験片の特性は、「伸び」を除く機械特性において、参考例3−2の試験片の特性と近似していることが理解される。
表6の実施例3−3と実施例3−4との比較、実施例3−4と比較例3−2との比較から明らかなように、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A−1)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)、および改質剤(C)としてのマレイン酸変性スチレン‐ブチレン・ブタジエン‐スチレン(C−3)に、さらにスチレン系樹脂成分とオレフィン樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体であるスチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体(C−4)を混合したことにより、強度、剛性が低下することなく、面衝撃強度が大幅に向上した。
特に、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A−1)20重量%と、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B−1)および(B−2)80重量%に加え、改質剤(C)としてのマレイン酸変性スチレン‐ブチレン・ブタジエン‐スチレン(C−3)2重量部およびスチレン系樹脂成分とオレフィン樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体であるスチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体(C−4)を5重量部配合することにより(実施例3−4)、HIPS(参考例3−3)と同等の特性を得ることができ、高品位、すなわち要求特性の高い部材として使用することができる熱可塑性樹脂成形体の提供が可能となった。したがって、実施例3−4の熱可塑性樹脂成形体は、ポリスチレン系熱可塑性樹脂の代替として用いることが可能である。
また、実施例3−4の試験片は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物のみからなる熱可塑性樹脂成形体と比較して(たとえば、参考例3−2の試験片)低成形収縮であり、HIPSと同等の収縮率を有している。同等の収縮率を有していれば、製造された熱可塑性樹脂成形体の寸法が同等になるため、従来、成形していた金型をそのまま使用することができるため、新たな設備投資を行なう必要がなく、さらには本発明の熱可塑性樹脂を採用することにより環境負荷を低減することが可能になる。ここで、収縮率とは、例えば ASTM D955に規定されている方法により測定できる。熱可塑性樹脂原料を用いて加熱溶融し成形する際に、熱可塑性樹脂原料の流れ方向をMD、前記流れ方向に対して垂直方向をTDとして表現する。 ASTM D955に準じて収縮率を測定した結果、表6の実施例3−1の収縮率は、MDが1.69%、TDが1.80%、実施例3−4の収縮率は、MDが0.25%、TDが0.29%、参考例3−2の収縮率は、MDが1.25%、TDが1.96%、参考例3−3の収縮率は、MDが0.65%、TDが0.56%であった。これらの収縮率の測定値から、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)を20%混合した本発明の熱可塑性樹脂成形体と比較しバイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)を80%程度混合した本発明の熱可塑性樹脂成形体では、低成形収縮であることが理解でき、さらには低成形収縮にするためには、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)の混合比を増やせばよいことが理解される。同様に、参考例3−2と同等の収縮率を確保するためには、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)の混合比を少なくすればよいことが理解される。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体の要求特性が収縮率である場合はバイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)の混合比を制御することにより、要求特性を満足することができる。また、実施例3−4及び参考例3−3の収縮率が同等であることから、HIPSの代替として本発明の熱可塑性樹脂原料を用いる場合は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)の混合比を多くすることにより、収縮率をHIPSと同等にすることができるため、従来、HIPSを用いて成形する際に使用していた金型をそのまま使用することができ、本発明の熱可塑性樹脂原料を用いて熱可塑性樹脂成形体を製造するときの新たな投資が必要でなくなった。しかしながら、HIPSの特徴である塗装密着性は、実施例3−4の熱可塑性樹脂成形体では、必ずしも十分に満足できないため、塗装の必要な部位に採用するためにはさらなる改質が必要であると考えられる。
実施例3−5の試験片は、実施例3−4において化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)として、(A−1)の代わりに(A−3)を用いて作製されたものである。先に示した比重分離工程等の選別工程(S104)を経たポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A−1)の代わりに、主にポリプロピレンから構成される異物混入の極めて少ない手解体の部材を破砕したプラスチック破砕物(A−3)を採用することにより、さらに高品質の熱可塑性樹脂成形体を得ることができることがわかった。すなわち、化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)として(A−3)を用いることにより、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度および面衝撃強度が向上し、参考例3−3の試験片の物性とさらに近似した熱可塑性樹脂成形体を得ることが可能となった。実施例3−5の熱可塑性樹脂成形体は、実施例3−4の熱可塑性樹脂成形体と比較して、より好適にポリスチレン系熱可塑性樹脂の代替として用いることが可能である。
ここで、たとえば本発明の熱可塑性樹脂成形体を適用する部材を表6に示されるような要求特性を有する冷蔵庫の部材、冷蔵庫部材Aまたは冷蔵庫部材Bと決定した場合、実施例3−1〜3−5の熱可塑性樹脂成形体は、いずれの要求特性もおおよそ満足しているが、冷蔵庫部材Aには実施例3−1の熱可塑性樹脂成形体が特に好ましいといえる。また、冷蔵庫部材Bには実施例3−2または実施例3−5の熱可塑性樹脂成形体が特に好ましいといえる。
<実施例4>
本実施例では、図2に示される化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法のフローチャートに従い、環境負荷に関する要求特性を満足するような熱可塑性樹脂成形体の作製について検討した。
まず、適用する部材を表6に示される冷蔵庫部材Aおよび冷蔵庫部材Bと決定した(S210)。次に当該冷蔵庫部材Aおよび冷蔵庫部材Bの要求特性を把握した(S220)。冷蔵庫部材Aおよび冷蔵庫部材Bに要求される機械的特性は表6に示される。なお、現状の冷蔵庫部材AおよびBは、バージン材のPPから製造されているものである。また、環境負荷に関する要求特性として、環境負荷を削減する項目を設け、環境負荷の削減量は、現状の冷蔵庫部材AおよびBに対して70%の削減と決定した。
次に、LCAを実施し、環境負荷の評価値を算出した(S221)。環境負荷の評価値、すなわち化石資源消費量の算出は、上記したとおりであり、算出された化石資源消費量は、表3に示される。現状の冷蔵庫部材AおよびBの化石資源消費量は、表3より70.5(MJ/kg)である(表3の参考2)。70%という環境負荷の削減量を達成するためには、適用する熱可塑性樹脂成形体についての化石資源消費量xは、x=70.5×(1−0.7)=21.15(MJ/kg)以下にする必要がある。表3より、化石資源消費量を21.15(MJ/kg)以下にするためには、PLAの混合率をおよそ30重量%以下(PP+PLA合計重量に占めるPLAの重量)にすればよいことがわかる(シナリオ1)。このように、環境負荷の評価値から化石資源由来の熱可塑性樹脂に対するバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比を決定することが可能になる。
なお、環境負荷の削減量70%という要求特性を満足するためには、上記したように、PLAの混合率をおよそ30重量%以下にすればよいが、さらに機械的特性についての要求特性をも満足するためには、実施例3−1または実施例3−2の組成となるように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)および改質剤(C)を混合すればよいことがわかる。
ここで、シナリオ2の場合においては、PLAのPPに対する混合比に関わらず、当該環境負荷に関する要求特性を満足することがわかる。すなわち、現状では化石資源由来の熱可塑性樹脂に対するバイオマス由来の熱可塑性樹脂の混合比は少なくしなければ、当該環境負荷に関する要求特性は満足できなかったが、将来はバイオマス由来の熱可塑性樹脂をより多く混合できるようになる。これにより、製品ライフサイクルで使用される資源を、新規の化石由来の資源、リサイクル由来の資源及びバイオマス由来の資源に、より分散させることが可能になる。また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合せず、化石資源由来の熱可塑性樹脂のみを再資源化した場合と比較して、PLAの環境負荷の評価値がほぼ同程度まで低下するため、化石資源由来の熱可塑性樹脂が回収できない場合などには有効な再資源化方法であるといえる。
今回開示された実施の形態及び実施例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法の好ましい一例を段階的に示すフローチャートである。 本発明の化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法の、別の好ましい一例を段階的に示すフローチャートである。 バージン材のPLAから熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(a)、バージン材のポリオレフィン系熱可塑性樹脂であるPPから熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(b)、および本発明の方法により化石資源由来の熱可塑性樹脂を回収し、これから本発明の熱可塑性樹脂成形体を得るまでの流れ(c)を示す概略フローチャートである。

Claims (15)

  1. プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、
    前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、
    前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、を含み、
    前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記熱可塑性樹脂成形体の要求特性に応じて決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法。
  2. プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂を再資源化する方法であって、
    前記プラスチック廃棄物から前記化石資源由来の熱可塑性樹脂を選別する選別工程と、
    前記選別工程において選別された化石資源由来の熱可塑性樹脂に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を混合し加熱溶融した後、成形して熱可塑性樹脂成形体を得る成形体製造工程と、
    前記熱可塑性樹脂成形体に関する環境影響評価を実施する評価工程と、を含み、
    前記成形体製造工程において混合される前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂の、前記化石資源由来の熱可塑性樹脂に対する混合比は、前記環境影響評価により得られた環境負荷の評価値に基づいて、前記熱可塑性樹脂成形体の、環境負荷に関する要求特性を満足するように決定することを特徴とする、化石資源由来の熱可塑性樹脂の再資源化方法。
  3. 前記プラスチック廃棄物に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂を主に含む熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  6. 前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂に加え、前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂およびポリオレフィン系熱可塑性樹脂に対して、相容性および/または分散性を有する熱可塑性樹脂を混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記バイオマス由来の熱可塑性樹脂およびポリオレフィン系熱可塑性樹脂に対して、相容性および/または分散性を有する熱可塑性樹脂は、スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記トリブロック共重合体は、構成単位であるオレフィン系樹脂成分の主鎖または側鎖にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む変性重合体であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. スチレン系樹脂成分とオレフィン系樹脂成分とを構成単位として含むジブロック共重合体をさらに混合することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記プラスチック廃棄物は、家電、OA機器、電気電子部品からなる群から選択される1種または2種以上の製品の廃棄物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法を用いて熱可塑性樹脂成形体を得る、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  12. 請求項11に記載の方法により製造された熱可塑性樹脂成形体。
  13. ペレット状であることを特徴とする請求項12に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  14. エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機からなる群から選択される家電製品に用いられることを特徴とする請求項12または13に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  15. ポリスチレン系熱可塑性樹脂の代替として用いられることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015096431A (ja) * 2013-11-15 2015-05-21 大日本印刷株式会社 チューブ容器
JP2016210510A (ja) * 2016-08-26 2016-12-15 大日本印刷株式会社 ポリオレフィン樹脂フィルム
GB2598478A (en) * 2020-08-26 2022-03-02 Reventas Ltd Improvements in or relating to plastic recycling

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