JP4824388B2 - 圧延制御装置及び圧延制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、圧延制御装置及び圧延制御方法に関するものである。
従来、圧延時に板厚を制御する方法として、出側の板厚偏差を計測器によって計測してロールギャップを変化させるAGC制御が知られているが、このAGC制御では、圧延開始直後や圧延速度が低い場合での制御が困難なため、このような場合にミル剛性可変制御が行われている。ミル剛性可変制御では、板厚変動を荷重変動に伴う成分とロールギャップの操作量による成分とによって表し、板厚変動をゼロに近づける制御が行われる。すなわち、荷重変動をΔP、ミル剛性をM、ロールギャップの変動量をΔSとすると、板厚変動Δhは、以下の関係式(1)により、
Δh=(ΔP/M)+ΔS ・・・・・(1)
と表すことができる。ここで、(ΔP/M)は、荷重変動に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に相当する。そして、下記式(2)
ΔS=−(ΔP/M) ・・・・・(2)
を満足するようにロールギャップの変動量ΔSを規定すれば、理論上板厚変動をゼロにすることができるが、比例ゲインであるチューニング率αを用いて、以下の式(3)
ΔS=−α(ΔP/M) ・・・・・(3)
に基づいてロールギャップを調整する制御を行っている。このとき、ミル剛性Mの同定誤差や定常時のAGC制御との干渉による過応答を防止すべく、チューニング率αは1.0以下の値が採用される。
このようにチューニング率αを用いたミル剛性可変制御は、例えば特許文献1〜3に開示されている。特許文献1に開示された圧延方法では、熱間圧延において、先行鋼片と後行鋼片とを接合した接合部及びその近傍の圧下に際し、0.8〜1.0のチューニング率αで圧延制御を行っている。そして、この圧延方法では鋼片の接合時に生じていた局部的な温度低下に伴う板厚変動を抑制できると記載されている。また特許文献2に開示された圧延方法では、チューニング率αを1よりも大きくすることにより、推定されたミル伸び量よりも大きくロールギャップを変動させるようにしている。これにより硬度むらに起因する板厚変動を抑制することができると記載されている。また特許文献3に開示された圧延方法では、圧延荷重変化量と板厚変化量との相関係数を求め、この相関係数に応じてチューニング率αを補正するようにしている。そして、この圧延方法では硬度むらなどの長手方向の板厚変動を抑制する効果が極めて大きいことが記載されている。
特開平7−16607号公報 特開2004−230407号公報 特開2003−136116号公報
ところで、圧延中において、圧延速度が極端に低くなったり、停止することがある。例えば、冷間圧延では、温度低下の問題がないことからコイルの巻き換えが行われており、その巻き換え時に圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になることがある。そして、圧延途中で圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になったときには、板厚不良が発生するという問題があった。
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タンデム圧延機による圧延において、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になったことに起因して板厚不良が発生するのを抑制することにある。
前記目的を達成すべく、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になったときにはその時ロール直下にあった部位で板厚変動が大きくなり、しかもその板厚変動はチューニング率が高い場合であっても低い場合であっても低減されないことが見出された。この研究過程において行われた板厚比較実験の結果の一例を図1に示す。この図1は、チューニング率αを高中低の3通りに設定した場合でのミル剛性可変制御による結果を示すものであり、この図に示すように、チューニング率αを高く設定した場合(α=0.8)でも短い周期で起こる板厚変動を取りきれておらず、板厚変動が生じていることが分かる。また同図に#2、#3、#4で示す板厚変動の大きな部位は、圧延が停止した時に各スタンドのロール直下に位置していた部位と推測される。
また圧延停止時にロール直下にあった部位での板厚変動とチューニング率αとの関係を図2に示すと、チューニング率αが高い場合でも低い場合でも板厚が変動することが分かった。すなわち、チューニング率αが0.8〜0.9のとき板厚が目標値よりも厚くなる一方、チューニング率αが0.2のときには、目標値に対して板厚が薄くなる傾向があり、何れの場合でも板厚が変動していると言える。このように圧延停止時にロール直下にあった部位で板厚が変動し、しかもその板厚変動はチューニング率αが高い場合でも低い場合でも低減されず、板厚不良が発生し易いことが見出された。
本発明は、この研究結果に基づいて創案されたものである。すなわち、本発明は、複数の圧延スタンドと、圧延荷重の変化に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に対して所定の比例ゲインで各圧延スタンドごとにロールギャップを制御する制御部とを有するタンデム圧延機に適用され、被圧延材の板厚制御を行う圧延制御装置を前提として、圧延速度に応じて前記比例ゲインを調整するゲイン調整手段を備え、通常の圧延速度である定常速度よりも低い分速10mである第2の所定速度と、分速1m未満の第1の所定速度とが設定されており、前記第1の所定速度は、当該第1の所定速度よりも圧延速度が低くなった時ロール直下にあった部位で板厚変動が起こり得る速度であり、前記ゲイン調整手段は、前記圧延速度が前記第1の所定速度未満のときに、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整する。
本発明では、圧延速度に応じて比例ゲインを調整するようにしているので、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速度になることに起因して被圧延材の板厚不良が発生するのを抑制することができる。
そして、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になったときに板厚が厚くなりすぎたり、薄くなりすぎるのを防止することができる。この結果、板厚不良の発生を抑制することができる。
この態様において、前記ゲイン調整手段は、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整した後に前記圧延速度が加速して前記第1の所定速度以上になると、前記比例ゲインを0.7以上で且つ1.0以下に調整するのが好ましい。
この態様では、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速になることに起因してある圧延スタンドで板厚変動が生じたとしても、その後段の圧延スタンドで板厚変動を効果的に低減することができる。
前記タンデム圧延機は、冷間圧延機として構成されているのが好ましい。
すなわち、冷間圧延では、温度低下の問題がないことから途中で停止したり、圧延速度を停止状態に近い低速の状態でコイルの巻き換え作業を行うことができる。したがってこの態様では、コイルの巻き換え作業のために圧延速度を低速にすることがある場合であっても、それに起因して生ずる板厚変動を抑制することができる。また、冷間圧延では、圧延停止から加速に移る状態において、材料の変形抵抗の変化による摩擦係数の変化、摩擦係数の変化による先進率の変化、加速時のロール速度の応答性の問題から生ずる張力変動等により、板厚が変動することになるが、本態様によれば、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速度のときに比例ゲインを調整するので、これらの要因による板厚変動を抑制することができる。
また、本発明は、タンデム圧延機による被圧延材の板厚制御に適用され、圧延荷重の変化に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に対して所定の比例ゲインで各圧延スタンドごとにロールギャップを制御する圧延制御方法を前提として、通常の圧延速度である定常速度よりも低い分速10mである第2の所定速度と、分速1m未満の第1の所定速度とが設定されており、前記第1の所定速度は、当該第1の所定速度よりも圧延速度が低くなった時ロール直下にあった部位で板厚変動が起こり得る速度であり、前記圧延速度が前記第1の所定速度未満のときに、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整する。
そして、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整した後に前記圧延速度が加速して前記第1の所定速度以上になると、前記比例ゲインを0.7以上で且つ1.0以下に調整するのがより好ましい。
冷間圧延機として構成されるタンデム圧延機による被圧延材の板厚制御に適用されてもよい。
以上説明したように、本発明によれば、タンデム圧延機による圧延において、圧延速度が停止又は停止に近い低速になったこと起因して板厚不良が発生するのを抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明に係る圧延制御装置の一実施形態が適用されたタンデム圧延機10を概略的に示している。本タンデム圧延機10は、冷間圧延機として構成されるものであり、複数台(#1〜#5の5台)の圧延スタンド11〜15が連続して配設されている。本タンデム圧延機10では、図3中に矢印Aで示す方向に送り出された被圧延材70が各圧延スタンド11〜15において冷間圧延される。
各圧延スタンド11〜15は、被圧延材70を圧延する圧延機21〜25と、被圧延材70の板厚を測定する板厚計31〜35と、圧延荷重を測定する荷重計41〜45とを備えている。各圧延スタンド11〜15間には、被圧延材70の張力を測定する張力計51〜56が配設されている。
またタンデム圧延機10は、ミル剛性可変制御が可能に構成されており、前記圧延機21〜25のロールギャップを調整する圧下機構61〜65を各圧延スタンド11〜15ごとに備え、各圧下機構61〜65を駆動制御する制御部80が設けられている。制御部80は、圧延荷重の変化に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に対して所定の比例ゲインとしてのチューニング率αでロールギャップを制御する。なお、制御部80は、タンデム圧延機10全体として統合して制御するものであってもよく、あるいは各圧延スタンド11〜15毎に個別に設けられて各制御部80が個別に圧延スタンド11〜15を制御するものであってもよい。
前記圧延制御装置90は、その機能として、圧延速度Vに応じて前記チューニング率αを調整するゲイン調整手段90aを備えている。ゲイン調整手段90aは、圧延速度Vとチューニング率αとを関連付けるテーブルを利用してチューニング率αを調整するように構成されている。このテーブルに基づくチューニング率αの調整は、各圧延機21〜25を対象としたものでもよく、あるいは後段(#3,#4,#5)のみを対象としてもよい。後段のみを対象とする場合、前段(#1,#2番)ではチューニング率αをそれぞれ0.8、0.6に設定しておいてもよい。
前記テーブルの一例を表1に示す。
Figure 0004824388
この表1は、被圧延材70の加速時におけるチューニング率αを示すものである。表1に示すように、チューニング率αは、圧延速度Vが停止時又は停止状態に近い速度である低速度領域、この領域よりも大きな速度領域である中間速度領域、及び中間速度領域よりも大きな高速度の領域である高速度領域の何れに該当するかに応じて調整される。ここで、低速度領域では圧延速度Vが所定速度未満(1m/min未満)となっており、中間速度領域では圧延速度Vが前記所定速度以上(1m/min以上)で且つ10m/min未満となっており、高速度領域では圧延速度Vが前記所定速度よりも大きな第2の所定速度以上(10m/min以上)となっている。なお、通常の圧延速度Vである定常速度は第2の所定速度よりも大きいので、定常時には高速度領域で圧延が行われる。
本実施形態では、中間速度領域は加速時のみに適用され、減速時には適用されない。すなわち高速度領域ではチューニング率αが0.2に設定されて圧延が行われ、圧延速度Vが低下しても(すなわち減速時)圧延速度Vが1m/min未満となって低速度領域に移行するまでは0.2に維持される。そして、低速度領域になるとチューニング率αが0.4以上で且つ0.6以下に調整されて圧延が行われる。一方加速時には、圧延速度Vが上昇して低速度領域から中間速度領域へと移るとチューニング率αが0.7以上で且つ1.0以下に調整される。そして、中間速度領域から高速度領域に移るとチューニング率αが0.2に設定される。
加速時か減速時かを判断するには、種々の方法がある。例えば、被圧延材コイルどうしの溶接部をトラッキングしている場合には、溶接部が通過するとフラグを立てるとともに定常の速度になるとフラグを下げるようなシグナルを設け、フラグが立っているときのみチューニング率αを0.7〜1.0に上げるようにする方法がある。後行の被圧延材コイルの先頭部である溶接部が通過するのは加速時であるので、このようなフラグによって制御すれば、容易に加速時か否かを判断することができる。
また本実施形態では、前記低速度領域及び中間速度領域において、被圧延材70の強度別にチューニング率αの設定値が異なるようになっている。すなわち、これら速度領域において、チューニング率αは、被圧延材70の強度が高いほど大きな値に設定されるようになっており、逆に強度が低いほど小さな値に設定されるようになっている。なお、強度の異なるものを接合した被圧延材70を圧延する場合において、先行の被圧延材70と後行の被圧延材70とで強度が異なるものである場合には、先端の板厚を制御する目的で実施されることから後行の被圧延材70の強度に基づいてチューニング率αが設定される。
ここで、前記圧延速度は、その圧延機21〜25の出側での被圧延材70の速度(板速度)であり、例えばモータ回転数から算出されるロール速度に圧延による先進率を乗じて算出することができる。また圧延速度は、ドップラー板速計によって板速度を直接測定することも可能である。また圧延速度は、出側での被圧延材70の速度に代え、ロール回転数を用いることも可能である。これらの場合には、低速時等のように先進率の計算誤差が増大するような場合でもその影響を受けない制御が可能となる。
前記低速度領域と中間速度領域の境界となる速度(1m/min)は、圧延機21〜25間の間隔を考慮し、圧延速度Vが低速度領域にあるときにロール直下にあった部位が次段の圧延機22〜25に到達するときまでにチューニング率αが中間速度領域での値に変更されるような速度に設定されている。境界速度をこのような速度に設定することにより、低速度時にロール直下にあった部位をトラッキングしなくても、その部位が次段の圧延機22〜25に到達するまでにチューニング率αを上げることができるので、制御が複雑化するのを回避しつつチューニング率αの調整を行うことができる。
次に、本実施形態に係る圧延制御装置90の制御動作について図4に示す制御フローを参照しながら説明する。この制御フローにおいては、まず荷重計41〜45によって圧延荷重Pが測定されるとともに(ステップST1)、例えばロール速度等から圧延速度Vが導出される(ステップST2)。そしてテーブルを参照して、ステップST2で導出された圧延速度Vに応じてチューニング率αを決定する(ステップST3)。このとき、例えば圧延速度Vが定常速度であれば被圧延材70の強度によらずチューニング率αが0.2に設定される。そして、ステップST4に移り、ステップST3においてチューニング率αが変更されたか否かが判断され、例えば圧延速度Vが定常速度のままであればチューニング率αが変更されないのでステップST5に進む。そして、圧延荷重Pと基準荷重としてのロックオン荷重POとの荷重偏差ΔPを算出する(ステップST5)。このロックオン荷重POは圧延制御装置90の記憶部90bに記憶されているものである。続いてステップST6において、荷重偏差ΔP、チューニング率α及び前回のギャップ操作量ΔSOを用いて下記式(4)
ΔS=−α・ΔP/M+ΔSO ・・・・・(4)
によるギャップ操作量ΔSを算出して、このギャップ操作量ΔSで圧下機構61〜65を駆動制御する。
このステップST1〜ST6が繰り返し実行されるが、その途中で圧延が停止する等、圧延速度Vが1m/min未満に低下したときには、表1に示すテーブルに従いチューニング率αが変更されることになる(ステップST3)。具体的には、被圧延材70の強度が45kgf/mm未満の場合には、チューニング率αが0.4に変更され、また被圧延材70の強度が45kgf/mm以上で且つ60kgf/mm未満の場合にはチューニング率αが0.5に変更され、また被圧延材70の強度が60kgf/mm以上の場合にはチューニング率αが0.6に変更される。このようにチューニング率αが変更されたときには、ステップST4からステップST7へ進む。このステップST7では、変更前のチューニング率α0に基づくギャップ操作量ΔSO(=−α0・ΔP/M)を記憶部90bに記憶する。そして、荷重計41〜45によって測定された現在の圧延荷重Pをロックオン荷重POとして書き換え(ステップST8)、以降の制御ではこの新たなロックオン荷重P0との荷重偏差ΔPに基づくギャップ操作量ΔSを出力し(ステップST5,ST6)、それに応じて圧下機構61〜65を操作する。
その後圧延が再開される等、圧延速度Vが上昇して1m/min以上となったときには、再びチューニング率αが変更される。この場合には、圧延速度Vが中間速度領域となるので、チューニング率αは被圧延材70の強度に応じて0.7〜1.0に設定される。このときも前記同様ステップST7,ST8が実行された後、実測荷重Pとロックオン荷重P0との荷重偏差ΔPに基づくギャップ操作量ΔSで圧下機構61〜65が操作される。
この後さらに圧延速度Vが上昇して高速度領域に移行すると、チューニング率αは再び0.2に設定され、実測荷重Pとロックオン荷重P0との荷重偏差ΔPに基づくギャップ操作量ΔSで圧下機構61〜65が操作される。そして、圧延速度Vが更に上昇してAGC制御が適用できる速度になったところで、圧延制御装置90は、出側の板厚を計測してフィードバックするAGC制御を実行するようになる。なお、このときミル剛性可変制御とAGC制御の双方を実行する構成であっても、ミル剛性可変制御からAGC制御に移行する構成であってもよい。
このように圧延を停止するとき等の低速度領域に移行したときにチューニング率αを0.4〜0.6に調整するようにするので、例えば図2に示すように、出側での被圧延材70の板厚平均値は許容範囲(例えば±10μm)内に収まり易くなる。ただし、このとき圧延速度Vが低速度になったときにロール直下にあった部位での板厚変動が解消されているわけではない。しかしながら、圧延が再開されたときには、圧延速度Vが上昇して低速度領域から中間速度領域に移行したときにチューニング率αを0.7〜1.0に調整するようにしているので、板厚変動を解消することができる。すなわち、圧延速度Vが低速度領域にあるときにロール直下にあった部位が圧延の再開によって次段の圧延機22〜25に到達するまでに、その次段の圧延スタンド12〜15においてチューニング率αが0.7〜1.0に設定されるため、例えば図5に示すように次段の圧延スタンド12〜15において板厚変動を解消することができる。この図5は、前段の圧延スタンド11〜14で生じた板厚変動に対する当該圧延スタンド12〜15の出側での板厚変動の割合である残存率を示すものであり、同図に示すようにチューニング率αが大きくなるにしたがって残存率が次第に低下することが分かる。そしてチューニング率αが0.7以上であれば効果的に板厚変動を解消できることが分かる。
本実施形態に係るタンデム圧延機10による出側での板厚変動を測定した結果の一例を図6に示す。この図は、実施例(本実施形態)と比較例(図1に示すチューニング率α=0.6の場合)とを比較して示しているが、同図から明らかなように本実施例では、圧延速度Vの停止又は停止状態に近い低速になることによって生ずる板厚変動を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、圧延速度Vに応じてチューニング率αを調整するようにしているので、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速度になることに起因して被圧延材70の板厚不良が発生するのを抑制することができる。
特に本実施形態では、圧延速度Vが低速度領域にあるときにチューニング率αを0.4〜0.6に調整するので、圧延速度Vが停止又は停止状態に近い低速になったときに板厚が厚くなりすぎたり、薄くなりすぎるのを防止することができる。この結果、板厚不良の発生を抑制することができる。
しかも本実施形態では、圧延速度Vが加速して低速度領域から中間速度領域に移行すると、0.4〜0.6に調整されていたチューニング率αを0.7〜1.0に調整するようにしているので、圧延速度Vが停止又は停止状態に近い低速になることに起因してある圧延スタンド11〜14で板厚変動が生じたとしても、その後段の圧延スタンド12〜15で板厚変動を効果的に低減することができる。
また本実施形態では、ロール直下にあった部位が低速度領域と中間速度領域の境界となる速度で送られて次段の圧延スタンド12〜15に到達するまでにチューニング率αが0.7〜1.0に調整されるように設定されているので、ロール直下にあった部位をトラッキングしなくてもこのロール直下にあった部位が導入される次段の圧延スタンド12〜15において板厚変動を効果的に低減することができる。したがって、制御が複雑化するのを回避しつつ板厚変動を抑制することができる。
また本実施形態では、冷間圧延機として構成されたタンデム圧延機10に適用されている。すなわち、冷間圧延では温度低下の問題がないことから圧延を停止したり、圧延速度を停止状態に近い低速にした状態でコイルの巻き換え作業を行うことができる。したがって本実施形態では、コイルの巻き換え作業のために圧延速度を低速にすることがある場合であっても、それに起因して生ずる板厚変動を抑制することができる。また、冷間圧延では、圧延停止から加速に移る状態において、材料の変形抵抗の変化による摩擦係数の変化、摩擦係数の変化による先進率の変化、加速時のロール速度の応答性の問題から生ずる張力変動等により、板厚が変動することになるが、本実施形態によれば、圧延速度が停止又は停止状態に近い低速度のときにチューニング率αを調整するので、これらの要因による板厚変動を抑制することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更が可能である。例えば、本実施形態では、ロール直下にあった部位が次段の圧延機22〜25に到達する前にチューニング率αを0.7〜1.0に上げられるように、十分に遅い圧延速度Vのときにチューニング率αを調整する構成としているが、通常の加速率から次段の圧延機22〜25に到達するまでの時間が計算できるので、この計算によって得られる時間までにチューニング率αを調整する構成としてもよい。また、被圧延材70の所定部位をトラッキングしておいて、そのトラッキングによってチューニング率αを上げるタイミングを調整する構成としてもよい。
また、本実施形態では、加速時のみにチューニング率αを0.7〜1.0に上げる構成としたが、これに限られるものではなく、加速時及び減速時の双方でチューニング率αを上げる構成にすることも可能である。
また、テーブルを参照してチューニング率αを決定する構成としたが、これに限られるものではない。例えばチューニング率αを圧延速度Vの関数として設定することにより、チューニング率αが圧延速度Vに応じて設定される構成としてもよい。
出側での板厚偏差を測定した結果の一例を示す特性図である。 チューニング率と板厚の変動との相間を示す特性図である。 本発明の実施形態に係る圧延制御装置が適用されたタンデム圧延機の要部を概略的に示す図である。 前記圧延制御装置の制御動作を示すフロー図である。 チューニング率と残存率との関係を示す特性図である。 出側での板厚偏差を測定した結果の一例を示す特性図である。
符号の説明
11〜15 圧延スタンド
70 被圧延材
80 制御部
90 圧延制御装置
90a ゲイン調整手段

Claims (6)

  1. 複数の圧延スタンドと、圧延荷重の変化に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に対して所定の比例ゲインで各圧延スタンドごとにロールギャップを制御する制御部とを有するタンデム圧延機に適用され、被圧延材の板厚制御を行う圧延制御装置であって、
    圧延速度に応じて前記比例ゲインを調整するゲイン調整手段を備え、
    通常の圧延速度である定常速度よりも低い分速10mである第2の所定速度と、分速1m未満の第1の所定速度とが設定されており、前記第1の所定速度は、当該第1の所定速度よりも圧延速度が低くなった時ロール直下にあった部位で板厚変動が起こり得る速度であり、
    前記ゲイン調整手段は、前記圧延速度が前記第1の所定速度未満のときに、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整する圧延制御装置。
  2. 前記ゲイン調整手段は、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整した後に前記圧延速度が加速して前記第1の所定速度以上になると、前記比例ゲインを0.7以上で且つ1.0以下に調整する請求項1に記載の圧延制御装置。
  3. 前記タンデム圧延機は、冷間圧延機として構成されている請求項1又は2に記載の圧延制御装置。
  4. タンデム圧延機による被圧延材の板厚制御に適用され、圧延荷重の変化に伴う見かけ上のロールギャップ変化量に対して所定の比例ゲインで各圧延スタンドごとにロールギャップを制御する圧延制御方法であって、
    通常の圧延速度である定常速度よりも低い分速10mである第2の所定速度と、分速1m未満の第1の所定速度とが設定されており、前記第1の所定速度は、当該第1の所定速度よりも圧延速度が低くなった時ロール直下にあった部位で板厚変動が起こり得る速度であり、
    前記圧延速度が前記第1の所定速度未満のときに、前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整する圧延制御方法。
  5. 前記比例ゲインを0.4以上で且つ0.6以下に調整した後に前記圧延速度が加速して前記第1の所定速度以上になると、前記比例ゲインを0.7以上で且つ1.0以下に調整する請求項4に記載の圧延制御方法。
  6. 冷間圧延機として構成されるタンデム圧延機による被圧延材の板厚制御に適用される請求項4又は5に記載の圧延制御方法。
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