JP2003220401A - 熱間圧延方法および熱間圧延ライン - Google Patents

熱間圧延方法および熱間圧延ライン

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JP2003220401A
JP2003220401A JP2001386748A JP2001386748A JP2003220401A JP 2003220401 A JP2003220401 A JP 2003220401A JP 2001386748 A JP2001386748 A JP 2001386748A JP 2001386748 A JP2001386748 A JP 2001386748A JP 2003220401 A JP2003220401 A JP 2003220401A
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leveler
hot rolling
metal plate
rolling line
metal
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JP2001386748A
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Yukihiro Matsubara
行宏 松原
Toshiki Hiruta
敏樹 蛭田
Masanori Kitahama
正法 北浜
Kazuo Onda
和雄 恩田
Eiji Toyama
栄二 遠山
Futoshi Goto
太 後藤
Kazuya Miyagawa
和也 宮川
Takeshi Hirabayashi
毅 平林
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Original Assignee
JFE Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スラブあるいはシートバー厚及び製品板厚を
変更することなく金属板にひずみを与えることで金属板
の組織の結晶粒微細化を実現し、従来以上に高強度化す
るための熱間圧延方法および熱間圧延ラインを提案す
る。 【解決手段】 仕上圧延機と、レベラと、冷却設備と
を、該金属板搬送方向上流から下流に向かってその順に
配設した金属板の熱間圧延ラインである。前記熱間圧延
ラインにおいて、金属片に施した仕上圧延の終了後の金
属板に、レベラによって、繰り返し曲げ加工を施し、し
かるのち冷却する熱間圧延方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度の金属板を
製造するための熱間圧延方法ならびに熱間圧延ラインに
関する。
【0002】
【従来の技術】金属板の代表例として鋼板の熱間圧延ラ
インについて述べる。鋼板は、例えば図13に模式的に
示す熱間圧延ラインにおいて一般に製造される。素材の
金属片はスラブあるいはシートバーと呼ばれる。スラブ
は、図示しない加熱炉で加熱されて抽出される場合や加
熱炉を経ずに上工程から熱間状態で直送される場合もあ
る。シートーバーが仕上圧延機3に直接供給されて粗圧
延機2による圧延を省略して鋼板が製造されることもあ
る。図13中符号5c、5dはマンドレルである。それぞれ
コイラ5a、5bに付設され図示しない制御装置により回転
速度を制御される。冷却装置4で冷却された金属板1を
巻き付けて、コイル状の金属板製品とすることができる
ように構成されている。これらの各設備間では圧延され
るスラブやシートバーは図示しない多数のテーブルロー
ラにより搬送される。
【0003】この金属板製品の高強度化のため、従来か
ら、結晶粒の微細化を図る鋼の熱間圧延方法が種々検討
されてきている。その代表的なものとして、特開昭63-2
23124 号公報等に開示されているいわゆる制御圧延法が
ある。制御圧延法の原理は、オーステナイト(以下γと
記す)からフェライト(以下αと記す)に変態する時の
α核の生成場所となるγ粒界を増やすこと及び転位など
の格子欠陥をより多量に導入することにより、γからα
に変態する時にα粒を数多く生成して、結晶粒の微細化
を実現しようとするものである。γ粒の微細化、あるい
は、転位などの格子欠陥の導入のためには、できるだけ
大きなひずみを鋼板に与えることが有効である。しかし
スラブあるいはシートバー厚と製品である板厚が決まっ
ているので通常の圧延プロセスでは導入できるひずみ量
に限界がある。一般に、制御圧延法では平均結晶粒径5
μmが限界であると言われている。
【0004】特開昭60-44106号公報には、高温の素材を
接続し、熱間で圧延する仕上圧延機を配置した熱間圧延
ラインにおいて、仕上圧延機の最終スタンド出側近傍に
張力付与装置を配置することにより、形状均一な極薄製
品を得ることができるとされている。また、特開昭60-4
4106号公報に示された張力付与装置は、多数の曲げロー
ルを有しているものの、形状均一な極薄製品を得ること
ができるように、仕上圧延後の金属板に張力を付加して
いるだけで、仕上圧延後の金属板に付与できる曲げひず
みは不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、スラブある
いはシートバー厚及び製品板厚を変更することなく金属
板にひずみを与えることで金属板の組織の結晶粒微細化
を実現し、従来以上に高強度化するための熱間圧延方法
および熱間圧延ラインを提案するものである。更に実用
的なレベラ条件内で、結晶粒を一段と微細化することが
できる熱間圧延方法及び熱間圧延ラインを提供すること
にある。尚、本発明にいう金属板は、金属帯をも含む意
味とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金属板の
高強度化について鋭意検討した結果、スラブあるいはシ
ートバー厚及び製品板厚を変更することなく金属板にひ
ずみを与える方法を見出した。仕上圧延機出側の後に、
上下のワークロール(以下、単にロールとも称する)を
千鳥状に配列したローラレベラ(以下、単にレベラとい
う)を設置し、仕上圧延後の金属板に当該レベラで繰り
返し曲げ加工を与えることが有効であることを見出し
た。曲げ変形は、金属板の板厚を減少させることなくひ
ずみを与えることができるので、これを繰り返せば金属
板にひずみを与えることが可能である。レベラのワーク
ロールが金属板から受ける圧力によって撓み、金属板幅
方向に均一にひずみを与えられなくなる場合がある。こ
れを防止する目的で上下のワークロールをそれぞれバッ
クアップロールによってバックアップしてもよい。該レ
ベラを仕上圧延機とコイラ間に設置することで、本発明
を、従来の熱間圧延ラインへの追設で実現でき、設備費
を安く抑えられるとともに、生産性の悪化等を招くこと
もない。
【0007】本発明は、仕上圧延機出側に、金属板に繰
り返し曲げ加工ひずみを与えることのできるレベラを設
置する。ひずみを追加的に付与することで、例えば鋼の
場合ならより一層のγ粒の微細化(γ粒界の増加)を図
る。それとともに、γ粒内への転位などの格子欠陥の導
入を図り、α粒のより一層の微細化を可能とする。金属
結晶粒のより一層の微細化により製品金属板の高強度化
を図る。尚、レベラによりひずみを付与された金属板
は、さらに冷却されて所望の温度とされた上で巻き取ら
れる。更に、本発明者らは、仕上圧延機出側であって、
上記レベラ入側に冷却装置を配設し、金属板を冷却して
所定の温度とした上で、さらに繰り返し曲げ加工を行う
ことが好適であることを同時に見出した。
【0008】本発明は、以下に示す通りである。 1. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機
と、前記金属板に曲げひずみを付与するレベラと、冷却
設備とを、前記金属板搬送方向上流から下流に向かって
その順に配設したことを特徴とする金属板の熱間圧延ラ
イン。 2. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機
と、ワークロールがそれぞれバックアップロールによっ
てバックアップされているレベラと、冷却設備とを、該
金属板搬送方向上流から下流に向かってその順に配設し
たことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。 3.金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機と、
冷却設備と、レベラと、さらにまた冷却設備とを、該金
属板搬送方向上流から下流に向かってその順に配設した
ことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。 4. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機
と、冷却設備と、ワークロールがそれぞれバックアップ
ロールによってバックアップされているレベラと、さら
にまた冷却設備とを、該金属板搬送方向上流から下流に
向かってその順に配設したことを特徴とする金属板の熱
間圧延ライン。 5. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合設備と、
仕上圧延機と、前記金属板に曲げひずみを付与するレベ
ラと、冷却設備と、切断装置と、コイラを、前記金属板
搬送方向上流から下流に向かってその順に配置したこと
を特徴とする金属板の熱間圧延ライン。 6. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合設備と、
仕上圧延機と、ワークロールがそれぞれバックアップロ
ールによってバックアップされているレベラと、冷却設
備と、切断設備と、コイラとを、該金属板搬送方向上流
から下流に向かってその順に配設したことを特徴とする
金属板の熱間圧延ライン。 7. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合設備と、
仕上圧延機と、冷却設備と、レベラと、さらにまた冷却
設備と、切断装置と、コイラとを、前記金属板搬送方向
上流から下流に向かってその順に配設したことを特徴と
する金属板の熱間圧延ライン。 8. 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合設備と、
仕上圧延機と、冷却設備と、ワークロールがそれぞれバ
ックアップロールによってバックアップされているレベ
ラと、さらにまた冷却設備と、切断設備と、コイラと
を、該金属板搬送方向上流から下流に向かってその順に
配設したことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。 9. 前記レベラは、直径が300mm 以下のワークロール
を有することを特徴とする、1.〜8.のいずれかに記
載の熱間圧延ライン。 10. 前記レベラは、3段から30段のワークロールを有
するレベラであることを特徴とする1.〜9.のいずれ
かに記載の熱間圧延ライン。 11. 前記レベラのワークロールが、それぞれ駆動式で
あることを特徴とする1.〜10.のいずれかに記載の熱
間圧延ライン。 12. 前記レベラの上下ワークロールそれぞれのワーク
ロールとワークロールの間隙にガイドを設置したことを
特徴とする1.〜11.のいずれかに記載の熱間圧延ライ
ン。 13. 前記レベラのワークロールの表面粗さRaを0.5
<Ra<2.0 μm としたことを特徴とする1.〜12.の
いずれかに記載の熱間圧延ライン。 14. 前記レベラは、直径が仕上圧延後の金属板の厚み
の40倍未満の寸法とされている小径ワークロールを少な
くとも1本有していることを特徴とする1.〜13.のい
ずれかに記載の熱間圧延ライン。 15. 1.〜14.に記載の熱間圧延ラインにおいて、前
記レベラは、直径が仕上圧延後の金属板の厚みの40倍未
満の非駆動の小径ワークロールを少なくとも1本有し、
かつ残りのワークロールは、直径が仕上圧延後の金属板
の厚みの40倍以上の寸法とされていると共に駆動可能と
されていることを特徴とする熱間圧延ライン。 16. 1.〜15.に記載の熱間圧延ラインにおいて、前
記レベラは、直径が仕上圧延後の金属板の厚みの40倍未
満の小径ワークロールを少なくとも1本有し、前記小径
ワークロールは、前記小径ワークロール及びそのバック
アップロールのそれぞれのネック部に設けられた歯車を
介して前記バックアップロールから前記小径ワークロー
ルに駆動トルクが伝達できるように構成され、残りのワ
ークロールに関しては、直径が仕上圧延後の金属板の厚
みの40倍以上でかつ駆動可能に構成されていることを特
徴とする熱間圧延ライン。 17. 仕上圧延を含む圧延を金属片に熱間で施す熱間圧
延方法において、該金属片に施した前記仕上圧延の終了
後の金属板に、レベラによって、繰り返し曲げ加工を施
し、しかるのち冷却することを特徴とする熱間圧延方
法。 18. 前記仕上圧延終了後で、かつ、繰り返し曲げ加工
の前の金属板に、冷却を施すことを特徴とする17.に記
載の熱間圧延方法。 19. 前記繰り返し曲げ加工後における金属板の温度
を、Ar3点+50℃〜Ar3点−100 ℃の範囲とすることを
特徴とする17.または18.に記載の熱間圧延方法。 20. 前記レベラのワークロールのロール押し込み量を
+1〜+30mmとすることを特徴とする17.〜19.のいず
れかに記載の熱間圧延方法。 21. 前記仕上圧延終了後における金属板の温度を、Ar
3点以上とすることを特徴とする17. 〜20.のいずれか
に記載の熱間圧延方法。 22. 前記金属板の先端と尾端の搬送トラッキングを行
い、前記金属板の先端がレベラの該当するワークロール
を通過した後に上下のワークロールの締め込みを行い、
尾端が抜ける前に該当する上下のワークロールを開放す
る制御を行うようにしたことを特徴とする17.〜21.の
いずれかに記載の熱間圧延方法。 23. 先行するシートバーと後行するシートバーとを接
合した後に、前記仕上圧延を行うことを特徴とする17.
〜22.のいずれかに記載の熱間圧延方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に係る熱間圧延ラインにつ
いて、図1(A)、図1(B)を用いて説明する。図1
(A)、図1(B)において、粗圧延機2、第1の冷却
設備4及びマンドレル5c、5d、コイラ5a、5bは、図13
に示す従来の熱間圧延ラインに設置されているものと同
じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0010】第1の実施の形態を図1(A)に示す。こ
の熱間圧延ラインでは、仕上圧延機3と、レベラ6と、
冷却設備4とが圧延ライン上流から下流に向かってこの
順に配置されている。以下、冷却設備4を第1の冷却設
備4ともいう。第2の実施の形態を図1(B)に示す。
この熱間圧延ラインでは、図1(A)に示す熱間圧延ラ
インの設備に加えて、仕上圧延機3とレベラ6との間に
第2の冷却設備7が配置されている。仕上圧延機3にお
ける3aはワークロール、3bはバックアップロールであ
り、図示しないハウジングに組み込まれている。
【0011】レベラ6は、千鳥状に配列された3本以上
のワークロール6a、あるいはさらにワークロール6aをバ
ックアップするバックアップロール6bを備えている。こ
のワークロール6aの直径は、後述するレベラ付加ひずみ
を付与する観点から 300mm以下とすることが望ましく、
また、ワークロール6aの直径が 180mmを下回る場合に
は、上記バックアップロール6bを備えることが望まし
い。
【0012】この熱間圧延ラインでは、金属片Sに仕上
圧延機3により圧延を施して金属板1とし、続いて仕上
圧延後の金属板1に繰り返し曲げ加工を施し、その後冷
却する。レベラ6により金属板長手方向に付加されるひ
ずみにより、金属板製品の結晶粒を微細化できる。ここ
で、鋼の場合には、金属板がγからαに変態を完了する
以前に、レベラ6による繰り返し曲げ加工を金属板に施
して、α粒の微細化を図る。その際、γ単相の温度域の
金属板に繰り返し曲げ加工を施すよりも、α相がわずか
に存在するようになった2相温度域の金属板に繰り返し
曲げ加工を施すようにすると更にα粒を微細化できるの
で好ましい。
【0013】この鋼における結晶粒微細化のメカニズム
は、γ粒の微細化によるγ粒界の増大、γ粒内への
転位などの格子欠陥の導入、によりγからαに変態する
時にα粒が多数生成するからであると考えられる。な
お、図1(B)に示すように、第1の冷却設備4に加え
て、第2の冷却設備7を仕上圧延機の最終スタンドとレ
ベラとの間に配置する。第2の冷却設備7を備えた熱間
圧延ラインでは、仕上圧延後、金属板1に繰り返し曲げ
加工を施す前に金属板1を所望の温度に冷却することが
できる。金属板製品の結晶粒を一段と微細化することが
でき好適である。
【0014】第2の冷却設備7は、従来の第1の冷却設
備4と同様の構成とすることができる。例えば、金属板
1の表裏面に冷却水を噴出する冷却ノズル、その冷却水
の噴出を制御する制御装置、金属板1の表面の温度を測
定する放射温度計等で構成する。繰り返し曲げ加工を施
す直前の金属板1の温度は、鋼の場合、900 〜 750℃と
するのが望ましい。
【0015】図5(A)に示すように、レベラ6におけ
る1回当たりの曲げひずみεは、下ワークロール6a同士
の中心間隔を2Lとし、ロール押し込み量をδとする
と、金属板1の表面でδ/L2 に比例する。ここで、δ
=0とは、上下ワークロール間に金属板を挟んだ状態を
示す。この状態からワークロールを押し込んだ距離を+
で表す。レベラ6により金属板表面に付加する1回当た
りの曲げひずみεは、近似的に式(1)で与えられるこ
とが知られている。
【0016】ε=a×δ/L2 ・・・・(1)式 ここで、 a :2×h h :金属板1の厚みである。 図5(C)にワークロール6aの直径dと金属板表面で
の1回当りの曲げひずみεの関係を示す。ただし、板厚
を4mm 、ワークロール6a同士の中心間隔2Lをd+10
mmとし、ロール押し込み量δを最大押し込み量とした場
合の結果である。金属板表面での1回当りの曲げひずみ
εは、ワークロール6aの直径dに反比例する。ワークロ
ール6aの直径dが300mm を超えると、金属板表面での一
回当りの曲げひずみεは非常に小さくなる。このためワ
ークロール6aの直径dは300mm 以下であることが望まし
い。ワークロール6aの直径が大きくなるほど、ワークロ
ール6a同士の中心間隔2Lも大きくせざるを得なくな
り、レベラの圧延ライン方向長さが長くなる。冷却装置
の冷却長も確保しなければならない。結局、熱間圧延ラ
イン長が長くなる。また、ワークロール6aの直径が大き
くなるほど装置が大型になる。以上の観点からも、ワー
クロール6aの直径dは300mm 以下であることが望まし
い。
【0017】レベラ6で金属板1に付与されるひずみは
(1)式に曲げ回数(n−2)、を乗じて求めることが
できる。ただし、nはワークロールの本数である。とこ
ろで、図3(A)、図3(B)に示すように他のワーク
ロールに比して小径なワークロール6a' をレベラ6内に
設けると、小径ワークロール6a’による曲げの曲率半径
が小さくなるので、金属板1に付与されるひずみが大き
くなる。本願発明者らは(1)式のaの値をm×hとす
ると実際のひずみの値に近づくことを見出した。ここで
mの値は2を超え3程度までの値である。mはレベラ6
の押し込み量δ、金属板1に作用する張力などの条件に
より変化し、実験的に求めることができる。以下の
(2)式で、小径ワークロール6a' を設けた場合の金属
板1の表面に付加されるひずみを求めることができる。 ε=h×δ×{2×n1/(L1)2 +(m×n2)/(L2)2 } ・・・・・(2)式 ここで、 n1 :大径ワークロールによる曲げ回数 n2 :小径ワークロールによる曲げ回数 L1 :大径ワークロール同士の中心間隔の半分 L2 :小径ワークロールと金属板を挟んで向かい合う
2つのロール6a同士の中心間隔の半分 n=n1 +n2 +2 大径ワークロールとは小径ワークロール6a' 以外のワー
クロール6aを意味している。
【0018】ところで、金属板1表面での長手方向曲げ
ひずみεを大きくしようとしてロール押し込み量δが大
きくなり過ぎると、図6に示すように、金属板1の先端
がレベラ内を正常に通過できなくなる場合が生じる。こ
れを防止するためには、δを+30mm以下に制限するのが
望ましい。一方、金属板に必要最低限のひずみを付与
し、結晶粒を微細化する観点から、δを+1mm以上とす
るのが望ましい。ワークロール6aの半径rを小さくし
て、ロール間隔2Lを狭め、かつロール押し込み量δを
維持すると金属板1表面での長手方向曲げひずみεを大
きくできる。しかし、ワークロール6aが細くなり、ロー
ル押し込みに伴う金属板1からの反力によってたわむ場
合がある。ワークロール6aの直径が180mm を下回る場合
はワークロール6aを補強するバックアップロールがあっ
た方が望ましい。バックアップロールは、ロール軸方向
に渡って一体的にロール部材で構成された一体バックア
ップロール構造としてもよいし、ロール軸部材の軸方向
にロール部材を複数装着したような構造の分割バックア
ップロールとしてもよい。本発明はこれに限るものでは
ない。
【0019】また、レベラ6による1回当たりの金属板
1表面での長手方向曲げひずみεを一定とし、曲げ回数
を増大して、所望の曲げひずみεを付与することも考え
られる。しかし、ワークロールの数が30本を超えると、
金属板1の温度が低下し、金属板1からの反力が大きく
なりすぎるという問題が生じる。このため、本発明の熱
間圧延ラインに配置するレベラは、ワークロールの数を
30本以下とするのが好ましい。
【0020】さらに、上記レベラのワークロールをそれ
ぞれ駆動式とするのが好ましい。ワークロールを駆動式
とすることで、金属板を送り出しつつ、繰り返し曲げ加
工を行うことが可能となる。原則として駆動速度は、金
属板の走行速度と等しい速度とする。ただし、金属板の
先端あるいは尾端が仕上圧延機最終スタンドとコイラの
間にある場合には例外的速度をとる。すなわち、先端に
対しては金属板の走行速度よりも速い速度とする。尾端
に対しては金属板の走行速度よりも遅い速度とする。金
属板のダブリとそれに伴う金属板の走行障害を防止する
上で好ましい。先端に対しては金属板の走行速度の103
〜140 %が好ましい。また尾端に対しては金属板の板厚
と走行速度により変わるが、金属板の走行速度の60〜95
%が好ましい。
【0021】本発明に適用するレベラのワークロールの
表面粗さRaは0.5 <Ra<2.0 μm とすることが好ま
しい。図7に示したような金属板のレベラ内通板トラブ
ルを抑制するためである。ここで表面粗さRaは、JIS
B 0601-1994 に定義するRa(算術平均粗さ)を意味
し、カットオフ値0.8mm 、評価長さ4mm としてワークロ
ールのロール軸方向に測定した値である。
【0022】レベラのワークロールの表面粗さRaを0.
5 μm <Raとする理由は以下の通りである。Raが0.
5 μm 以下であると金属板とレベラのワークロール間で
スリップが生じ金属板がレベラ内を通過できず(図7参
照)、後続する金属板がレベラ入口で折れ重なって通板
トラブルとなり、圧延を停止せざるを得なくなることが
あるからである。そこで、このようなレベラ内スリップ
による通板トラブルを抑制するために、レベラのワーク
ロールの表面粗さRaを0.5 μm <Raとし、レベラ内
スリップを防止することにより、レベラ内安定通板を図
るようにしている。
【0023】例えば、図8に示すレベラのワークロール
の表面粗さRa(μm )とスリップ発生率(%)の関係
からも、レベラのワークロールの表面粗さRaを0.5 μ
m 以下とした場合に比べて、レベラのワークロールの表
面粗さRaを0.5 μm <Raとすることにより、レベラ
内のスリップ発生率(%)が減少していることがわか
る。
【0024】この調査は、図1に示した熱間圧延ライン
を用い、レベラのワークロールの表面粗さRa(μm )
を変えて、後述する実施例の No.12(本発明例1)と同
じ条件で、それぞれの表面粗さRa(μm )とされたワ
ークロールを有するレベラにより繰り返し曲げ加工を行
い、レベラのワークロールの表面粗さRa(μm )毎
に、レベラ内スリップにより通板トラブルに至った金属
板のコイル数を調べ、このコイル数を当該表面粗さRa
(μm )とされたワークロールを有するレベラにより繰
り返し曲げ加工を施されたコイル数で除し、100 倍して
スリップ発生率とした。表面粗さRa(μm )は、レベ
ラのワークロールのロール軸方向に各5点測定し、その
平均値とした。
【0025】なお、この場合におけるレベラ内スリップ
は、レベラ通過後の金属板先端がコイラピンチロール又
はコイラに到達していないうちにレベラが押し込まれた
ときに多く発生していた。この原因は以下の様に推定で
きる。滑らずにレベラのワークロールから金属板に伝達
できる金属板を前進させる方向の力をFw、仕上圧延機
最終スタンドのワークロールにより付与される押し込み
力をFc、レベラ内の金属板を通板させるのに要する力
をFrとする。レベラのワークロールの表面粗さRaが
小さい場合には、レベラ出側の金属板先端部に張力が付
与されていない状態でレベラにより繰り返し曲げ加工を
行うと、FwとFcとの和がFrより小さくなり、レベ
ラ内で金属板がスリップする。一方、レベラのワークロ
ールの表面粗さRaを粗くすると、Fwが大きくなり、
FwとFcとの和がFrより大きくなってレベラ内で金
属板がスリップしないと推定される。
【0026】前記レベラのワークロールの表面粗さRa
をRa<2.0 μm とする理由は、レベラのワークロール
の表面粗さRaを2.0 μm 以上にすると、ワークロール
表面粗さが金属板の表面に転写されて金属板の表面粗さ
が大きくなるからである。鋼板の場合、スケールの部分
剥離などを招き、表面品質を損なう。本発明において
は、金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機と、
レベラと、冷却設備とを、金属板搬送方向上流から下流
に向かってその順に配設する。金属片に施した仕上圧延
の終了後の金属板にレベラによって繰り返し曲げ加工を
施し、しかるのち冷却する。こうすると結晶粒が微細化
され高強度の金属板製品が得られる。上記レベラのワー
クロールの表面粗さRaを0.5 <Ra<2.0 μmとする
と、レベラ内通板トラブルが減る。圧延ラインの稼働率
を高くすることができ、かつ、金属板の表面性状を良好
に維持することができるので好ましい。
【0027】ところで、金属板の尾端がレベラを通過す
る時にも問題が生じる場合がある。尾端がレベラ内を通
過していきつつあるとき、急激に金属板が幅方向に蛇行
し、皺状に折れ重なってレベラを通ることがある。この
現象は絞り込みと呼ばれる。レベラのワークロールに疵
が入り、後続の金属板にその疵が転写して表面品質不良
になる場合がある。この問題を解決するには、先端の問
題同様にワークロール6a間にスレッディングガイド6cあ
るいはさらにサイドガイド6d(金属板1を幅方向に挟む
ように両側にガイド板を対向配置)を設置するのが1つ
の手段として好ましい。もう1つの手段は、金属板の尾
端の位置をトラッキングし、尾端がレベラにさしかかる
直前にレベラの上下ワークロールの間隙を広げる。
【0028】ここで、トラッキングについて説明する。
トラッキングとは、金属板の先端や尾端が熱間圧延ライ
ン上のどこにあるかを逐次リアルタイムに検知すること
である。例えば、図10に示すメジャーリングロール8
を図9に示すように仕上圧延機入側に設置する。仕上圧
延機入側と出側の板厚比を図示しない計算機内の記憶デ
ータから索引する。この板厚比とメジャーリングロール
8の発するパルスカウント数を掛け合せる。こうすると
金属板の熱間圧延ライン上の位置がわかる。ちなみに、
パルスカウントの起点は、仕上圧延機最終スタンドのロ
ールに金属板先端が噛み込んだときとする。
【0029】このメジャーリングロール8は、金属板1
に押し付けられて回転する。所定角度(周長に直すと例
えば0.025mm )回転するごとにパルスを発生する。この
メジャーリングロール8が発するパルスを図示しない制
御装置でカウントすることにより仕上圧延機入側の金属
板の速度を測定する。あとは、仕上圧延機入側と出側の
板厚比を掛け算すれば、仕上圧延機出側の金属板の先端
位置がリアルタイムにわかる。金属板尾端のトラッキン
グに関しては少し工夫を要する。起点を仕上圧延機最終
スタンドのロールから金属板尾端が抜けた時点とする。
その時点からのトラッキングは、例えば金属板がコイラ
5aまたは5bに巻きついた以降続けている、マンドレル5c
または5dの径+巻数×板厚の積算により計算される巻径
と、マンドレル5cまたは5dの回転数との掛け算を時間積
分していく、といった方法で行えばよい。
【0030】別な例としては、起点は同じとしながら
も、仕上圧延機最終スタンドのロール径と延べ回転数を
図示しない制御装置でとらえ、先進率を図示しない計算
機内の記憶データから索引するかあるいはモデル式によ
り計算し、掛け算することで行うようなやり方もある。
あるいはメジャーリングロールの替わりにレーザ速度計
を使う方法もある。本発明を実施する上で有用な、先
端、尾端の位置をリアルタイムで追跡可能な方法であれ
ば、いかなる方法でもよい。金属板1の先端あるいは尾
端がレベラに対しどの位置にあるかが図示しない制御装
置内で判定できたら、それに応じてレベラのローラを開
閉するように制御すればよい。
【0031】第3の実施形態に係る熱間圧延ラインを図
11に示す。レベラ6の前に冷却装置7を設置しない場
合は本発明例(3)、設置する場合は本発明例(4)に
相当する。接合設備10にて先行するシートバー(先行の
金属板1a)と後行するシートバー(後続の金属板1b)を
接合する。次に、仕上圧延機3にて金属板1に圧延後、
レベラ6にて、金属板1に繰り返し曲げ変形を施す。次
に、切断設備16によって金属板1を切断し、2つのコイ
ラ5a、5bに分けて巻取る。
【0032】接合設備10により複数本のシートバーが接
合される。接合部では図6に示すようなレベラ6内での
通板障害及び前述のレベラ6内での絞り込みを防止でき
る。シートバーを1本ずつ圧延し、1本毎に先端と尾端
を有する金属板にレベラ6にて繰り返し曲げ変形を施す
場合に比べて、高強度金属板の歩留まりを大幅に向上で
きる。
【0033】接合設備10は、主としてコイルボックス1
1、クロップシャ9a、接合装置12の一群の装置から構成
されるが、さらに、図11に点線で示すバリ取り装置1
3、接合部冷却装置14、シートバー加熱装置15などがこ
れに加わってもよい。また、接合の原理は、誘導加熱と
圧接の組み合わせのほか、レーザによるフィラーワイヤ
溶接などが実用化されている。そのいずれの方法として
もよいし、また、もちろん、これら以外の方法によって
もよい。
【0034】トラッキングに関しては、接合1本目の先
端を前述の先端とし、接合最終本目の尾端を前述の尾端
に見立てて、同じようにパルスをカウントするなどすれ
ばよい。また、上述のようにメジャーリングロールの替
わりにレーザ式の速度計を使う方法などをとってもよ
い。要は、先端、尾端の位置をリアルタイムで追跡可能
な方法であれば、いかなる方法でもよい。
【0035】シートバーを接合し、連続的に仕上圧延
し、さらに、本発明の繰り返し曲げ加工を金属板に施
す。こうすることにより接合1本目の先端と接合最終本
目の尾端を除いて、途中の接合部も含めた金属板全長を
高強度化でき、歩留まり上有利になる。図1(B)に示
すように、仕上圧延機出側であって、上記レベラ入側に
冷却設備7を配設し、仕上圧延後の金属板1を所定の温
度となるまで冷却し、その後、当該レベラで繰り返し曲
げ加工を施すようにするのも1つの好適な例である。
【0036】鋼の場合、高強度鋼板とするためには、仕
上圧延機最終スタンド出側温度は、普通、Ar3点以上で
ある。レベラ入側に冷却設備7を配設すると、仕上圧延
後、レベラ前で冷却することができる。レベラ出側での
温度をγからαに変態を開始する温度であるAr3点以下
〜Ar3点−50℃以上の温度範囲とすることにより、結晶
粒の微細化効果を最大とすることができる。
【0037】結晶粒の微細化効果が最大となるのは、Ar
3点を超える温度域で複数回の曲げひずみを加えた場合
よりも、大部分γ粒で、わずかにα粒が存在する変態途
中の金属組織で複数回の曲げひずみを加えた場合であ
る。この方がγ粒に導入された転位がα粒の核生成サイ
トとなる作用が大きい。γからαへの変態の完了後に複
数回の曲げひずみを加えても、結晶粒の微細化効果はほ
とんどないと考えられる。
【0038】冷却設備7としては、例えば図2に点線で
示すように、金属板1の表裏面に冷却水を噴出する冷却
ノズル7c、その冷却ノズル7cからの冷却水の噴出を制御
する制御装置7b、金属板1の表面の温度を測定する放射
温度計7a等から構成する。金属板1の表面温度に応じ、
所定の温度までの冷却を行うことを可能としている。冷
却設備4も同様な構成とすることができる。金属板1を
所定の冷却パターンで、かつ所定の巻取温度となるよう
に冷却できる。制御装置4bと制御装置7bを一台に統合
し、情報を共有して、温度制御を行うようにすることも
できる。4aは冷却設備4の出側近傍に設けた放射温度計
であり、4cは冷却設備4に設けた冷却ノズルである。図
2中、レベラ6はわかりやすさのため誇張して大きく描
いている。
【0039】ところで、第1、第2の実施の形態に係る
熱間圧延ラインに配置したレベラは、前述のように、そ
の内の少なくとも1本のワークロールを小径ワークロー
ルとすることにより、金属板1に付与されるひずみを大
きくすることができる。小径ワークロールは非駆動と
し、残りの大径ワークロールは駆動可能とするのが好ま
しい(図3(A)、図3(B)参照)。この小径ワーク
ロール6a' は直径dが仕上圧延後の金属板の厚みhの40
倍未満の寸法とされるのが好ましい。大径ワークロール
6aは直径dが仕上圧延後の金属板の厚みhの40倍以上の
寸法とされるのが好ましい。大径ワークロール6aの小判
形状のネック部には、図3(B)に示す公知の自在継手
(ユニバーサルジョイント)61のスピンドルヨーク61a
がはめこんである。大径ワークロールは、ユニバーサル
ジョイント61を介して図示しないモーターにより回転駆
動される。モーターとユニバーサルジョイント61の間に
は複数の歯車を備えたギアボックスを介在させてもよ
い。
【0040】なお、図3(A)は、第1、第2の実施の
形態に係る熱間圧延ラインに配置したレベラの一例の部
分概略縦断面図である。また、図3(B)は、レベラに
配置した1本の上小径ワークロール6a’とそれに隣接す
る2つの大径ワークロール6aの駆動機構を示した概略図
である。それ以外の大径ワークロール6a及びバックアッ
プロール6bは省略した。図3(B)中符号63は軸受であ
り、ワークロール6a、6a’及びバックアップロール6bは
軸受を介して、図示しないレベラのフレームに回転自在
に支持されている。
【0041】本発明に用いるレベラは、直径dが仕上圧
延後の金属板の厚みhの40倍未満の寸法の小径ワークロ
ール6a’を少なくとも1本有するのが好ましい。このよ
うにした理由は、仕上圧延後の金属板の厚みの40倍未満
の直径の小径ワークロールを少なくとも1本レベラに配
置するだけで、当該小径ワークロールにおける1回当た
りの曲げひずみεが大きくなって、製品の結晶粒をより
微細化できるからである。図3(C)にレベラーのワー
クロール直径dと金属板の厚みhの比d/hが金属板の
平均結晶粒径に及ぼす影響を示す。仕上圧延機出側の鋼
板の板厚は4mmと5mmである。熱間圧延条件は、仕上出
側温度は900 ℃、仕上圧延機出側における鋼板速度は72
0 m/min 、巻き取り温度は600 ℃である。図3(C)
からワークロールの直径dを仕上圧延後の金属板の厚み
hの40倍未満とすることにより製品の結晶粒を微細化で
きることがわかる。ワークロールの直径dを金属板の厚
みhに対して、d/hで表すようにしている理由は、ワ
ークロール直径dを小さくすると、ロール間隔2Lを小
さくでき、d/hの逆数に比例してひずみが付加される
ためである。
【0042】本発明に用いるレベラは、大径ワークロー
ル6aを駆動可能とし、小径ワークロール6a’を非駆動と
するのが好ましい。以下に述べるように、小径ワークロ
ール6a’を駆動することは難しい。レベラの上ワークロ
ールは上下動できる必要がある。これをモータで駆動す
るためには例えばユニバーサルジョイントを使用する。
小径ワークロール6a’は、直径が小さいため、ユニバー
サルジョイントも小径の軸対応のスピンドルヨークを使
用することとなる。これでは十分なトルク伝達ができな
い。無理に大きなトルクを伝達しようとモーターを大き
な駆動トルク設備仕様のものにすると、ユニバーサルジ
ョイントが機械強度的に耐えられなくて破損する可能性
が高い。このように、ユニバーサルジョイントを使って
小径ワークロール6a’を直接駆動するのは困難である。
一方、直径が仕上圧延後の金属板の厚みの40倍以上の寸
法の大径ワークロール6aでは、ユニバーサルジョイント
を用いて直接ワークロールを駆動しても強度上の問題が
生じることはない。そこで金属板の曲げ加工に要する大
径ワークロール6aの分と非駆動とされた小径ワークロー
ルの分の両方を含めたトルクを伝達するよう、大径ワー
クロール6aの側だけを駆動することが好ましい。
【0043】またさらに、本発明に係る熱間圧延ライン
に配置するレベラは、ワークロールが11本以上30本以下
で構成され、かつそのうちのワークロール本数の約1/
3までが上記径を有する小径ワークロールとされている
のが好ましい。この理由は、レベラに配置した11本のワ
ークロールのうち、非駆動とした小径ワークロール6a’
の本数が4本までであれば、非駆動とされた小径ワーク
ロール6a’における金属板の曲げ加工に要するトルクを
残りの7本の大径ワークロール6aに接続のユニバーサル
ジョイントから強度上問題なく伝達することができる。
一方、レベラに配置した11本のワークロールのうち、非
駆動とした小径ワークロール6a’の本数を5本以上に増
やした場合、大径ワークロールに接続のユニバーサルジ
ョイントには強度上の問題が生じる。
【0044】また、レベラ6に設置した30本のワークロ
ールのうち、非駆動の小径ワークロール6a’が10本まで
であれば、非駆動とされた小径ワークロール6a’におけ
る金属板の曲げ加工に要するトルクを残りの20本の大径
ワークロール6aに接続のユニバーサルジョイント61から
強度上問題なく伝達できる。一方、レベラ6に配置され
た30本のワークロールのうち、非駆動としたワークロー
ルを11本以上に増やした場合、大径のワークロール6aに
接続のユニバーサルジョイント61には強度上の問題が生
じる。このように、ワークロール全体本数の約1/3ま
での小径ワークロールの本数であれば小径ワークロール
6a’を非駆動としても、大径ワークロール6aを駆動する
ユニバーサルジョイント61のトルク伝達の問題が発生す
ることなく、大径ワークロール6aを駆動することができ
る。
【0045】ところで、レベラの大径ワークロールとし
ては、所要トルクを伝達する上からは、径が大きいほど
有利である。しかし、金属板に十分にひずみを付与する
ことと、装置を小さくする観点から、大径ワークロール
6aの径は300mm 以下とすることが望ましい。以上説明し
た第1、第2の実施の形態に係る熱間圧延ラインでは、
金属片を仕上圧延前に接合しない。第3の実施の形態に
係る熱間圧延ラインは、図11に示すように、第1、第
2の実施の形態に係る熱間圧延ラインに、公知の接合設
備10及び連続している金属板1を切断する切断設備16が
配置されている。金属片Sを接合してから仕上圧延を施
し、連続している金属板1を走間で切断することができ
るように構成されている。
【0046】図11中の接合設備10は、先行金属片の尾端
と後行金属片の先端とを接合するための設備である。主
としてコイルボックス11、クロップシャ9a、接合装置12
などから構成される。接合装置12は誘導加熱やレーザな
どの原理による。さらに点線で示すバリ取り装置13、接
合部冷却装置14、シートバー加熱装置15などがこれに加
わってもよい。また、第2の冷却設備7は配置するのが
好ましい。
【0047】第3の実施の形態に係る熱間圧延ラインに
よれば、接合2本目以降の金属板1に対してその先端か
ら全長、レベラ6で繰り返し曲げ加工を行うことができ
る。このため、高強度金属板の生産歩留まりが大幅に向
上する。1本ずつ金属片Sを圧延するように構成された
第1、第2の実施の形態に係る熱間圧延ラインより好ま
しい。
【0048】ところで、第1、第2、第3の実施の形態
に係る熱間圧延ラインに配置するレベラは、小径ワーク
ロール6a’が図3(A)、図3(B)に示すように非駆
動であると、金属板の厚みが厚くなった場合、繰り返し
曲げ加工時にロール間でスリップが発生することがあ
る。スリップに起因した擦り疵欠陥が金属板に生じるこ
とがある。このロール間スリップは、例えば図3
(A)、図3(B)に示したレベラでは、金属板1の上
に位置している小径ワークロール6a’と、この小径ワー
クロール6a’を補強するように隣接されて配置されてい
るバックアップロール6bとの間で発生する。
【0049】そこで、レベラ内でのロール間スリップを
防止するために、図4(A)、図4(B)に示す機構が
考えられる。小径ワークロール6a’のネック部とバック
アップロール6bのネック部にそれぞれ歯車64、64' を設
ける。歯車64、64' を介してバックアップロール6bから
小径ワークロール6a’に駆動トルクを伝達する。図中符
号64は、バックアップロール6bのネック部にキー等によ
り固定された歯車であり、また符号64’は小径ワークロ
ール6a’のネック部にキー等により固定された歯車であ
る。なお、歯車64、64' の歯数およびバックアップロー
ル6bと小径ワークロール6a’のロール直径はバックアッ
プロール6bと小径ワークロール6a’のロール周速度が同
じとなるように決める。図4(A)において、小径ワー
クロール6a’の負荷トルクは次の順に伝わる。小径ワー
クロール6a’に固定された歯車64’、バックアップロー
ル6bに固定された歯車64、バックアップロール6bのネッ
ク部、スピンドルヨーク61a 、それをもつユニバーサル
ジョイント61、複数の歯車を備えたギアボックス65、モ
ータ(図示省略)。モータからの駆動トルクはこの逆順
に供給される。図4(A)は、小径ワークロール6a’を
ユニーバサルジョイント61を用いて駆動するための駆動
機構の構成図である。金属板1の通板速度が比較的低速
の300m/分程度の場合に好適である。図4(A)では、
上側に配置される1本の小径ワークロール6a’とこの小
径ワークロール6a’を補強している1本のバックアップ
ロール6bについて示す。その他のロールの図示は省略し
た。図中符号62はロールを回転自在に支持する軸受63を
装着した軸受箱であり、66はスピンドルサポートであ
る。
【0050】このようなレベラの小径ワークロール6a'
の駆動機構によれば、小径ワークロール6a' のネック部
およびバックアップロール6bのネック部に設けられた歯
車を介してバックアップロール6bから小径ワークロール
6a' へ駆動トルクが伝達できる。残りのワークロールは
大径とされ、駆動可能とされている。このような機構に
よればロール間スリップを防止できる。小径ワークロー
ル6a’を非駆動とした場合より設備コストはやや高くな
る。
【0051】一方、1000m/分程度の高速度でレベラに
金属板1を通板する場合には、ユニバーサルジョイント
の駆動限界のためにそれが破損する可能性が高くなる。
そこで、図4(B)に示すような小径ワークロール6a'
の駆動機構が好適である。図4(B)はレベラに配置さ
れる何本かの小径ワークロール6a' (図示は4本)とこ
のワークロール6a' を補強しているバックアップロール
6bの構成を示している。バックアップロールをモータ67
の軸に直結しており、ユニバーサルジョイントは使用し
ないため高速回転に耐えられる。
【0052】小径ワークロールをバックアップロールか
ら歯車を介して駆動するようにしている。大径ワークロ
ール6aだけでなく、小径ワークロール6a' も駆動するこ
とができる。バックアップロール6bをモータ67軸に直結
した以外は、図4(A)に示した小径ワークロール6a'
の駆動機構と同じである。小径ワークロール6a' への駆
動トルク伝達経路の説明は省略する。
【0053】但し、図4(B)に示したレベラでは、上
側ワークロール6a' の関係品を一体で昇降させる昇降板
68上に駆動モーター67、スピンドルサポート66などが設
置されている。上側ワークロール6a' の関係品が図示し
ない昇降機構により昇降されるようにしてある。上側ワ
ークロール6a' の関係品を一体昇降機構とすれば、ワー
クロールの直径が50mm、周速度が1000m/分、すなわち
12700 回転/分という高回転速度でも強度上の問題がな
く、上側の小径ワークロール6a' へ駆動トルクを伝達で
きる。
【0054】さらにワークロール6a' の小径化を図るに
は、図4(C)に示すように、上側ワークロール6a' の
関係品が一体昇降機構とされかつ駆動モーター67と上側
ワークロール6a' の軸を同軸となるように直結した駆動
機構とする。なお、バックアップロールは図示されてい
ない。このとき、となり合うワークロール6a' があまり
に小径なため、図4(C)からわかる通り、駆動モータ
ー67は熱間圧延ラインを挟んで金属板1の幅方向両サイ
ドに配置する。それでも同じサイドにある駆動モーター
67同士が設置スペース上機械干渉してしまう。これを防
止するため、同じサイドでとなり合う駆動モーターのス
ピンドル69の長さを変える。このような小径ワークロー
ルの駆動機構によれば、上側の小径ワークロールの直径
を25mmまで小径化できる。
【0055】以上説明した熱間圧延ラインにおいて、本
発明者らは、鋼を対象として種々の実験を行った。その
結果、レベラでの繰り返し曲げ加工を加える温度がα粒
の微細化効果に大きな影響を与えるという新たな知見を
得た。実験材は0.2 C−0.7Si −2.0Mn −0.15Ti鋼であ
る。仕上圧延機で厚さ4mmに圧延した。レベラのワーク
ロール本数を23、ワークロール直径190mm 、ワークロー
ルの中心軸間隔200mm 、ロール押し込み量20mmとした。
レベラにて繰り返し曲げ加工した後、コイラにて巻き取
りを行った。上記鋼のAr3点温度は 750℃である。仕上
圧延速度を種々変更し、放冷する時間を調整すること
で、レベラ出側での鋼板温度を550 〜800 ℃となるよう
に調整して実験を行い、実験材の結晶粒径と引張強度を
実測した。
【0056】ちなみに、鋼板温度は、レベラの最下流ロ
ールから1m下流の位置に図示しない温度計を設置して
測定した。結晶粒径については、JIS G 0552に準拠して
結晶粒の平均断面積を求め、それを円形と仮定して平均
粒径を算出した。引張強度はJIS Z 2201に準拠して5号
試験片を切り出して引張試験を行い求めた。試験片は仕
上圧延しコイラにて巻き取った鋼板を別の場所で巻き戻
して、JIS Z 2201に準拠して5号試験片を切り出した。
なお、結晶粒径、引張強さの測定は、コイル長手方向の
中央部分、すなわち、レベラによる繰り返し曲げ加工を
施された部分から測定用サンプルを切り出して行った。
【0057】これらの試験および測定の結果を表1に示
す。
【0058】
【表1】
【0059】表1において、実験材 No.1は、従来例で
あり、仕上圧延機出側でレベラは使用していない。実験
材 No.2〜7は、それぞれレベラ出側での鋼板温度を80
0 〜550℃の各温度としロール押し込み量20mmになるよ
うにレベラを使用して繰り返し曲げ加工を行った結果を
示している。表1から明らかなように、レベラを使用し
ない従来例の No.1に対し、レベラを使用し、レベラ出
側での鋼板温度が 650℃以上である No.2〜5では、結
晶粒は微細化されている。この事実より、レベラ出側で
の金属板温度をAr3点+50℃〜Ar3点−100 ℃の範囲と
するのが好適であることがわかる。特に、レベラ出側温
度がAr3点〜Ar3点−50℃となるNo. 3、 No.4では、
結晶粒は極めて微細化されている。
【0060】一方、レベラ出側温度が 600℃以下の No.
6、 No.7では、レベラでの変形温度が低く、γからα
に変態した後に繰り返し曲げ加工を行うことに相当す
る。α粒にひずみを加えたのみで、結晶粒の微細化はさ
れていないことがわかる。これら好適温度域が存在する
理由は以下のように推定できる。これらの温度域におい
ては変形中の金属組織が、大部分γ粒で、わずかにα粒
が存在する変態途中の組織となっている。これに変形を
加えるとγ粒に導入された転位がそのままα粒の核生成
サイトとなる作用が大きいと推定できる。
【0061】以上、説明したことからわかるように、仕
上圧延された金属板にレベラにより繰り返し曲げ加工を
行うと結晶粒を微細化することが可能である。仕上圧延
後、レベラ前で冷却を行い、レベラ出側での温度をAr3
点〜Ar3点−50℃とすることで、本発明における微細化
効果を最大とすることができる。レベラ出側での金属板
温度を、精度良く制御するためには、前述のトラッキン
グを行い、仕上圧延機出側で実測した金属板温度をベー
スにして適正な冷却を行う。金属板を所定の温度として
からレベラにより繰り返し曲げ加工を行うことを好適と
する。金属板の仕上圧延機出側での温度、圧延速度等か
ら、レベラ出側での金属板温度を最適に保持しつつレベ
ラにより繰り返し曲げ加工を行うことが可能となる。
【0062】
【実施例】(実施例1)本発明の効果を検証するための
実施例として、表2に示すAとBの2種類の鋼種の実験
材を熱間圧延し、従来例と本発明例1、2の比較検討を
行った。
【0063】
【表2】
【0064】熱間圧延においては、仕上圧延機出側温度
を 900℃とし、仕上圧延機出側における鋼板速度 720m
/min の条件で厚さ4mmに仕上圧延し600 ℃で巻き取っ
ている。従来例では、熱間圧延ラインにおいて、上記の
仕上圧延後、通常実施している冷却を行い、コイラで巻
き取った。
【0065】本発明例1では、基本的に従来例と同条件
とするが、仕上圧延直後に、ワークロール段数を23と
し、ワークロール直径190mm 、ワークロールの中心軸間
隔(上側同士、下側同士の間隔)200mm 、ロール押し込
み量20mmとしたレベラで繰り返し曲げ加工を加え、その
後、冷却を行ってコイラで巻き取った。レベラの最上流
ロールの中心を仕上圧延機最終スタンドロール中心から
下流に30mの位置に設置した。本レベラによって熱延鋼
板に与える長手方向表面ひずみは、近似的に0.34となっ
ている。
【0066】本発明例2では、基本的に従来例と同条件
とする。ただし、仕上圧延機の出側と上記レベラの入側
の間に更に配設した冷却装置で冷却を行い、レベラ出側
での鋼板温度がAr3点〜Ar3点−50℃となるように温度
制御を行った。レベラでの繰り返し曲げ加工を行い、そ
の後、再び冷却を行ってコイラで巻き取りを行った。冷
却装置は、仕上圧延機最終スタンドとレベラの間に複数
バンク設置した。冷却水流量は鋼板単位表面積あたり最
大で上下(鋼板表裏相当)毎分3200l/m2 である。仕
上圧延後の鋼板に対し、冷却水を噴射するバンク数を上
下両面とも、鋼板の走行に追随して局部的な長手方向の
温度ムラを解消していくようにしつつレベラ出側での鋼
板温度をAr3点〜Ar3点−50℃とするように制御した。
【0067】表3に、従来例と本発明例1、2につい
て、結晶粒径と引張強度の測定結果を比較して示す。測
定用サンプルの切り出し位置、また、結晶粒径と引張強
度の定義および測定方法は前出のものと同じである。
【0068】
【表3】
【0069】A、Bいずれの鋼種においても、レベラを
用いない従来例(No.11 、No.14 )と比較し、レベラを
用いた本発明例1(No.12 、 No.15)、本発明例2(N
o.13、No.16 )の方が、強度が高い。さらに、冷却装置
を用いない本発明例1(No.12 、No.15 )に比べて、冷
却装置を適用した本発明例2(No.13 、No.16 )の方が
強度がさらに高いことがわかる。ここで、鋼種Aについ
てのNo.11 〜13の比較結果をグラフ化して図12に示す。 (実施例2)仕上圧延機と、レベラと、第1の冷却設備
とが圧延ライン上流から下流に向かってこの順に配列し
てある図1(A)に示す熱間圧延ラインを用いた。熱間
で鋼片に圧延を施し、厚み4mmに仕上げ、その後冷却
し、得られた熱間圧延鋼板製品のフェライトの平均結晶
粒径及び引張強度を調べた。
【0070】平均結晶粒径は、鋼板製品の長手方向の中
央部分でかつ幅方向の中央部分から測定用サンプルを切
り出し、JIS G 0552に準拠して結晶粒の平均断面積を求
め、それを円形と仮定して算出した。引張強度は、鋼板
製品の長手方向の中央部分から測定用サンプルを切り出
し、JIS Z 2201に準拠して5号試験片を作製し、常温で
引張試験を行い求めた。
【0071】なお鋼板は、表4に示す成分のTi添加鋼と
し、仕上圧延機最終スタンド出側温度を 900℃、仕上圧
延機最終スタンド出側の鋼板速度を 720m/分、コイラ
巻取温度を 600℃とした。
【0072】
【表4】
【0073】その際、発明例1〜6では、表5に示すよ
うに、直径が仕上圧延後の金属板の厚みの40倍未満の寸
法とされている小径ワークロールを少なくとも2本有す
るレベラを用いて、仕上圧延を施された鋼板に繰り返し
曲げ加工を施し、使用後レベラの状態を調べた。また、
発明例1〜6では、レベラの小径ワークロール6a' の駆
動方式は図4(B)に示した歯車方式とした。
【0074】
【表5】
【0075】繰り返し曲げ加工は、上下におけるワーク
ロール中心軸間隔2L(上側同士、下側同士の間隔)を
発明例1および5では 155mm(小径ワークロール直径は
100mm)、発明例2〜4では 180mm(小径ワークロール
直径は 150mm)とし、かつロール押し込み量δを20mmと
して、レベラ付加ひずみを表5中の値とした。レベラ付
加ひずみは(2)式のmを3として計算した。レベラ操
業中に運転を急停止し、小径ワークロールによる鋼板の
曲率を測定した。この実験から得たレベラ付加ひずみが
m=3で計算したレベラ付加ひずみと精度良く一致する
ことを別途確認している。ワークロール直径が小さくな
るほど(たとえば発明例1、2の比較)、小径ワークロ
ールを導入する本数が多くなるほど(たとえば発明例
3、4の比較)、レベラ付加ひずみは大きくなる。また
上記鋼板のAr3点温度は、表4に示す通りである。レベ
ラ入側の鋼板温度が表5となるように圧延を行った。レ
ベラは、仕上圧延機最終スタンド中心から下流に30mの
位置にレベラ最上流ロール中心が一致するように設置し
た。
【0076】発明例6では、第1の冷却設備に加えて、
第2の冷却設備を配置し、第2の冷却設備により、仕上
圧延後でかつ繰り返し曲げ加工前の鋼板を冷却して、レ
ベラ入側での鋼板温度を表5に示すようにし、その他の
条件は上記発明例2と同じとした。ここで、第2の冷却
設備は、仕上圧延機最終スタンドとレベラの間に複数バ
ンク設置した。冷却水流量は鋼板単位表面積あたり最大
で上下(表裏相当)毎分3200l/m2 である。仕上圧延
後の鋼板に対し、冷却水を噴射するバンク数を上下両面
とも、鋼板の走行に追随して局部的な長手方向の温度ム
ラを解消していくようにした。
【0077】比較例では、大径ワークロールのみを有す
るレベラを用い、それ以外の条件は発明例1〜6と同じ
として仕上圧延を施された鋼板に繰り返し曲げ加工を施
した。一方、従来例としては、図1(A)に示す熱間圧
延ラインにおいて、レベラを設置する以前に、上記発明
例1〜6と同じ成分の鋼片を用い、それ以外の条件は発
明例1〜6と同じとして、仕上圧延を行い、その後冷却
した。
【0078】得られた発明例、比較例及び従来例の熱間
圧延鋼板製品のフェライトの平均結晶粒径、引張強度を
表5に示す。また、発明例及び比較例における使用後レ
ベラの状態も表5に合わせて示す。表5の結果から、小
径ワークロールを有するレベラを用い、繰り返し曲げ加
工を施した発明例1〜6の場合は、レベラにより繰り返
し曲げ加工を施していない従来例より鋼板製品の結晶粒
を微細化することができていることがわかる。
【0079】また、第2の冷却装置により仕上圧延後の
金属板に冷却を施した条件の発明例6は、第2の冷却装
置を設置せず、繰り返し曲げ加工前に鋼板を第2の冷却
装置により冷却していない以外は同じ条件とした発明例
2と比べて結晶粒をより微細化することができている。
また、発明例においては、小径ワークロールの本数を増
やすことにより、製品の平均結晶粒を微細にすることが
できること、及び鋼板製品の引張強度は、結晶粒径に対
応しており、結晶粒が微細なものほど高強度となってい
ることもわかる。
【0080】なお、発明例1〜6及び比較例の場合、レ
ベラによる繰り返し曲げ加工により、γ粒が微細化し
てγ粒界が増大すると共に、γ粒内へ転位などの格子
欠陥が導入されたため、従来例より鋼板製品のα粒が微
細化したと推定される。
【0081】
【発明の効果】本発明によって、金属板を従来と比較し
て更に高強度化することが可能となった。また、金属板
の成分を変更することなく、機械的特性を容易に制御す
ることが可能となることから、製鋼精錬負荷低減の観点
からも有益であり、また、省エネルギー効果もある。更
に小径ワークロールレベラでは、大径ワークロールのみ
を有するレベラに比して、結晶粒をより微細化すること
ができ、一段と高強度な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明に係る熱間圧延ラインの一
例の配置図である。図1(B)は好適な熱間圧延ライン
の配置図である。
【図2】図2は本発明に適用するレベラと、冷却設備の
詳細を説明する模式図である。
【図3】図3(A)は本発明に用いるレベラの一例のロ
ール配置を示す部分縦断面図である。図3(B)は図3
(A)に示した上小径ワークロールに隣接する大径ワー
クロールの駆動機構を示した概略図である。図3(C)
はレベラのワークロール直径と金属板の厚みの比が金属
板の平均結晶粒径に及ぼす影響を示す図である。
【図4】図4は本発明に用いるレベラの小径ワークロー
ルを駆動するための駆動機構の構成図である。
【図5】図5(A)はレベラにおける金属板のロール間
変形を説明する模式図である。図5(B)はレベラの押
し込み量がマイナスの場合の模式図である。図5(C)
はレベラのワークロール直径と曲げひずみの関係を示す
図である。
【図6】図6はレベラにおける金属板先端の通過トラブ
ルの様子を示す模式図である。
【図7】図7は金属板スリップによるレベラ通板トラブ
ルの様子を示す模式図である。
【図8】図8はレベラのワークロールの表面粗さとスリ
ップ発生率の関係を示すグラフである。
【図9】図9はメジャーリングロールの熱間圧延ライン
への設置の様子を示す模式図である。
【図10】図10はメジャーリングロールの構成を示す図
である。
【図11】図11は本発明に係る他の好適な熱間圧延ライ
ンの配置図である。
【図12】図12は本発明例と従来例の引張強度、平均結
晶粒径を比較したグラフである。
【図13】図13は従来の鋼板を製造する熱間圧延ライン
の配置図である。
【符号の説明】
1 金属ストリップ(鋼ストリップ) S 金属片(スラブまたはシートバー) 2 粗圧延機 3 仕上圧延機 3a ワークロール 3b バックアップロール 4、7 冷却装置 5a、5b コイラ 5c、5d マンドレル 6 レベラ 6a、6a’ レベラのワークロール 6b レベラのバックアップロール h 金属ストリップの厚み d レベラのワークロールの径 61 自在継手(ユニバーサルジョイント) 61a スピンドルヨーク 62 軸受箱 63 軸受 64、64' 歯車 65 ギアボックス 66 スピンドルサポート 67 駆動モーター 68 昇降板 69 スピンドル 9a、9b クロップシャ 10 接合設備 11 コイルボックス 12 接合装置 13 バリ取り装置 14 接合部冷却装置 15 シートバー加熱装置 16 切断設備
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願2001−355265(P2001−355265) (32)優先日 平成13年11月20日(2001.11.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 北浜 正法 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 恩田 和雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 遠山 栄二 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 後藤 太 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 宮川 和也 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 平林 毅 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E002 AD04 BA01 BD05 BD06 BD07 BD20 CB01 4E003 AA02 BA26 EA00

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上
    圧延機と、前記金属板に曲げひずみを付与するレベラ
    と、冷却設備とを、前記金属板搬送方向上流から下流に
    向かってその順に配設したことを特徴とする金属板の熱
    間圧延ライン。
  2. 【請求項2】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上
    圧延機と、ワークロールがそれぞれバックアップロール
    によってバックアップされているレベラと、冷却設備と
    を、該金属板搬送方向上流から下流に向かってその順に
    配設したことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。
  3. 【請求項3】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上
    圧延機と、冷却設備と、レベラと、さらにまた冷却設備
    とを、該金属板搬送方向上流から下流に向かってその順
    に配設したことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。
  4. 【請求項4】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、仕上
    圧延機と、冷却設備と、ワークロールがそれぞれバック
    アップロールによってバックアップされているレベラ
    と、さらにまた冷却設備とを、該金属板搬送方向上流か
    ら下流に向かってその順に配設したことを特徴とする金
    属板の熱間圧延ライン。
  5. 【請求項5】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合
    設備と、仕上圧延機と、前記金属板に曲げひずみを付与
    するレベラと、冷却設備と、切断装置と、コイラを、前
    記金属板搬送方向上流から下流に向かってその順に配置
    したことを特徴とする金属板の熱間圧延ライン。
  6. 【請求項6】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合
    設備と、仕上圧延機と、ワークロールがそれぞれバック
    アップロールによってバックアップされているレベラ
    と、冷却設備と、切断設備と、コイラとを、該金属板搬
    送方向上流から下流に向かってその順に配設したことを
    特徴とする金属板の熱間圧延ライン。
  7. 【請求項7】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合
    設備と、仕上圧延機と、冷却設備と、レベラと、さらに
    また冷却設備と、切断装置と、コイラとを、前記金属板
    搬送方向上流から下流に向かってその順に配設したこと
    を特徴とする金属板の熱間圧延ライン。
  8. 【請求項8】 金属板の熱間圧延ラインにおいて、接合
    設備と、仕上圧延機と、冷却設備と、ワークロールがそ
    れぞれバックアップロールによってバックアップされて
    いるレベラと、さらにまた冷却設備と、切断設備と、コ
    イラとを、該金属板搬送方向上流から下流に向かってそ
    の順に配設したことを特徴とする金属板の熱間圧延ライ
    ン。
  9. 【請求項9】 前記レベラは、直径が300mm 以下のワー
    クロールを有することを特徴とする、請求項1〜8のい
    ずれかに記載の熱間圧延ライン。
  10. 【請求項10】 前記レベラは、3段から30段のワークロ
    ールを有するレベラであることを特徴とする請求項1〜
    9のいずれかに記載の熱間圧延ライン。
  11. 【請求項11】 前記レベラのワークロールが、それぞれ
    駆動式であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか
    に記載の熱間圧延ライン。
  12. 【請求項12】 前記レベラの上下ワークロールそれぞれ
    のワークロールとワークロールの間隙にガイドを設置し
    たことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の熱
    間圧延ライン。
  13. 【請求項13】 前記レベラのワークロールの表面粗さR
    aを0.5 <Ra<2.0 μm としたことを特徴とする請求
    項1〜12のいずれかに記載の熱間圧延ライン。
  14. 【請求項14】 前記レベラは、直径が仕上圧延後の金属
    板の厚みの40倍未満の寸法とされている小径ワークロー
    ルを少なくとも1本有していることを特徴とする請求項
    1〜13のいずれかに記載の熱間圧延ライン。
  15. 【請求項15】 請求項1〜14のいずれかに記載の熱間圧
    延ラインにおいて、前記レベラは、直径が仕上圧延後の
    金属板の厚みの40倍未満の非駆動の小径ワークロールを
    少なくとも1本有し、かつ残りのワークロールは、直径
    が仕上圧延後の金属板の厚みの40倍以上の寸法とされて
    いると共に駆動可能とされていることを特徴とする熱間
    圧延ライン。
  16. 【請求項16】 請求項1〜15のいずれかに記載の熱間圧
    延ラインにおいて、前記レベラは、直径が仕上圧延後の
    金属板の厚みの40倍未満の小径ワークロールを少なくと
    も1本有し、前記小径ワークロールは、前記小径ワーク
    ロール及びそのバックアップロールのそれぞれのネック
    部に設けられた歯車を介して前記バックアップロールか
    ら前記小径ワークロールに駆動トルクが伝達できるよう
    に構成され、残りのワークロールに関しては、直径が仕
    上圧延後の金属板の厚みの40倍以上でかつ駆動可能に構
    成されていることを特徴とする熱間圧延ライン。
  17. 【請求項17】 仕上圧延を含む圧延を金属片に熱間で施
    す熱間圧延方法において、該金属片に施した前記仕上圧
    延の終了後の金属板に、レベラによって、繰り返し曲げ
    加工を施し、しかるのち冷却することを特徴とする熱間
    圧延方法。
  18. 【請求項18】 前記仕上圧延終了後で、かつ、繰り返し
    曲げ加工の前の金属板に、冷却を施すことを特徴とする
    請求項17に記載の熱間圧延方法。
  19. 【請求項19】 前記繰り返し曲げ加工後における金属板
    の温度を、Ar3点+50℃〜Ar3点−100 ℃の範囲とする
    ことを特徴とする請求項17または18に記載の熱間圧延方
    法。
  20. 【請求項20】 前記レベラのワークロールのロール押し
    込み量を+1〜+30mmとすることを特徴とする請求項17
    〜19のいずれかに記載の熱間圧延方法。
  21. 【請求項21】 前記仕上圧延終了後における金属板の温
    度を、Ar3点以上とすることを特徴とする請求項17〜20
    のいずれかに記載の熱間圧延方法。
  22. 【請求項22】 前記金属板の先端と尾端の搬送トラッキ
    ングを行い、前記金属板の先端がレベラの該当するワー
    クロールを通過した後に上下のワークロールの締め込み
    を行い、尾端が抜ける前に該当する上下のワークロール
    を開放する制御を行うようにしたことを特徴とする請求
    項17〜21のいずれかに記載の熱間圧延方法。
  23. 【請求項23】 先行するシートバーと後行するシートバ
    ーとを接合した後に、前記仕上圧延を行うことを特徴と
    する請求項17〜22のいずれかに記載の熱間圧延方法。
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