JP2004283909A - 連続熱間圧延における走間板厚変更方法及び熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

連続熱間圧延における走間板厚変更方法及び熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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貴夫 内山
Katsushi Yamamoto
克史 山本
Katsuhiro Takebayashi
克浩 竹林
Mitsutoshi Kajigaya
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Abstract

【課題】連続熱間圧延での走間板厚変更に伴う被圧延材の仕上圧延中の通板トラブルを解消する。
【解決手段】連続熱間圧延における複数スタンド仕上圧延機での仕上圧延中の走間板厚変更において、連続して仕上圧延する異なる製品板厚の被圧延材について、連続する2つ以上のスタンドの圧下率を変化させる比率を、該連続する2つ以上のスタンドで、所定範囲内に収めるようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続熱間圧延における走間板厚変更方法、及び、それを用いた熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延とは、金属材料を数百〜千数百℃に加熱した後、熱間圧延ライン上に抽出し、一対のロールで挟圧しつつそのロールを回転させ、薄く延ばすことをいう。熱間圧延ラインを図4に示すが、3/4連続と呼ばれるタイプのものが多い。これは、被圧延材8の搬送方向上流から下流に向かう順に、加熱炉10、複数の粗圧延機(Rougher;多くの場合4基。そのうち一部(多くの場合1基)が往復圧延を行い、残る圧延機が一方向圧延を行う。しかし、4基中3基が一方向のタイプに限らず例えば3基中1基又は2基が一方向のタイプなども含め、3/4連続という)12、クロップシャー14、デスケーリング装置16、仕上圧延機(Finisher)18、冷却ゾーン22、コイラー(巻取装置)24を順次配置して成る。各設備間には図示しない多数のテーブルローラがあり、これにより被圧延材8が搬送される。
【0003】
粗圧延機12、仕上圧延機18は複数あるので、それぞれRougher、Finisherの頭文字を取り、各スタンドのナンバーを付与して、R1、R2、R3、F1、F2…F7などと略称される。コイラー24も同様に複数あって、号機ナンバーを付与して、DC1、DC2などと略称される。
【0004】
かような熱間圧延ラインで製造される金属材料としては、JISG3131に規定される熱延鋼板(鋼帯を含む)が代表的であり、その他、JISG3141に規定される冷延鋼板(鋼帯を含む)他(例えばぶりき原板)の素材熱延板も多く製造される。本発明にいう熱延鋼板は、これらを総称したものとする。
【0005】
仕上圧延機18のワークロール19で被圧延材8の先端を噛み込み、圧延し、尾端を圧延し終わり、という動作を断続的に繰り返す熱間圧延のことを、特に、バッチ圧延と称している。
【0006】
近年、例えば特許文献1に示されるように、図5に示す如く、被圧延材8の搬送方向最下流粗圧延機R3と仕上圧延機18の間に、例えば被圧延材の移動に追従して走行しながら、先行する被圧延材の尾端と後行する被圧延材の先端を接合する走間接合装置(以下、単に接合装置と称する)30を設置し、仕上圧延機18とコイラー24の間に、先行する被圧延材と後行する被圧延材を切断して別々に巻き取るための切断装置(ストリップシャーとも称する)40を設置するものも登場してきた。
【0007】
粗圧延機12と仕上圧延機18の間で、先行する被圧延材の尾端と後行する被圧延材の先端を接合し、連続的に仕上圧延することを、特に、連続熱間圧延と称している。
【0008】
この連続熱間圧延のできる連続熱間圧延ライン110は、図5に示したように、先行する被圧延材の尾端と後行する被圧延材の先端を接合するために、接合装置30のほかにコイルボックス26、接合用クロップシャ−28等も備えている。あるいは更に、バリ取り装置32、シートバーヒータ34、エッジヒータ36、接合部冷却装置38、高速通板装置42などを設置している場合もある。
【0009】
ここで、接合装置30には、誘導加熱方式によるものや、レーザ方式によるものなどがある。
【0010】
また、ちなみに高速通板装置42とは、例えば仕上圧延後板厚2mm未満の薄物の被圧延材に使用して好適な通板安定化のための装置で、薄ストリップ状の被圧延材が切断直後に剛性が弱く丸まってコイラー24の付帯設備間に詰まり巻き取れなくなるのを防止する。仕上圧延後板厚の薄い被圧延材は概して搬送速度が高速のため、この名称がある。原理はエアジェットにより生ずる負圧部に搬送中の薄ストリップ状の被圧延材を吸引し、ガイドにまっすぐに沿わせることで丸まるのを防止するというものである。
【0011】
図5中、44で示されているのはトラッキング用センサである。一例としてメジャーリングロールを使用した場合を図示しているが、レーザ板速計などその他の種類のトラッキング用センサを用いてもよい。トラッキングとは、搬送、仕上圧延による接合部の移動を制御装置50内で仮想的に捉え、その連続熱間圧延ライン110上の位置の移動を制御装置50内で時々刻々と認識することであるが、ちなみに図示した例のメジャーリングロール44は搬送中の被圧延材8に接触して回転され、一定周長回転されるごとにパルスを発する仕組みであり、そのパルス数を制御装置50内で時々刻々にカウントする原理である。
【0012】
これらトラッキング用センサの連続熱間圧延ライン110上への設置位置は、仕上圧延機18の搬送方向入側の場合もあれば出側の場合もあるし、両方の場合もある。トラッキングは、接合部の移動のほか、別途同制御装置50内で接合部の近傍に仮想的に生成させる切断予定部の移動も時々刻々と捉え、認識する。
【0013】
ところで、連続熱間圧延においては、接合された先行被圧延材と後行被圧延材で仕上圧延終了後の板厚の設定が需要家のオーダによって異なる場合がしばしばある。このような場合、特許文献2に示すように、仕上圧延機18のうちの最終圧延機あるいは多くの場合全ての圧延機の圧下すなわち上下ワークロール19の間隙を圧延を継続しつつ変更する、走間板厚変更と呼ばれる方法がとられる。
【0014】
上記特許文献2では、仕上圧延機の第1スタンドの入側に板厚、板幅、材料温度をそれぞれ検出する測定器が設けられ、各測定値が設定計算機70に加えられるようになっており、設定計算機70は測定器によって測定された板厚、板幅、材料温度と、設定された鋼種、製品板厚、板幅及び材料温度の各設定値とに基いて、各スタンドのロール間隙、ロール周速、ルーパ角度及びストリップ張力の指令値(設定値)を演算し、仮想的な圧延変更点が各スタンドに到達したとき、それぞれ圧延変更後の値に設定し、変更開始する、としている。
【0015】
また、特許文献3では、特に、図2(a)に示すようなペアクロス式圧延機に代表される上下のワークロール19がクロスする形式の圧延機の場合を想定し、基本的に、板厚に代表される各指標の走間変更終了点とクロス角変更終了点とを一致させるように、先行材に対するロールクロス角の設定値、後行材に対するロールクロス角の設定値、所定のロールクロス角変更速度及び圧延機入側の圧延材速度に基づいてロールクロス角変更開始点を決定し、このロールクロス角変更開始点が当該スタンドに到達した時点から前記ロールクロス角変更速度で後行材に対するロールクロス角の設定値に向けてロールクロス角の設定値を変更するようにし、ロールクロス角変更開始点が走間変更開始点より早い場合にはロールクロス角変更開始点から走間変更開始点までの間のロールクロス角変更による出側板クラウンの変化を打ち消すようにワークロールベンド力の設定値をロールクロス角の設定値の変更に伴って変更するようにし、もしもロールクロス角変更開始点から走間変更開始点までの間にワークロールベンド力の設定値が最大ワークロールベンド力を越えた場合は、その時点でロールクロス角の設定値の変更を中止し、走間変更開始点が当該圧延機に到達した時点からロールクロス角の設定値の変更を再開するようにする、としている。
【0016】
ちなみに、ペアクロス式圧延機によれば、図2(b)に示すように、クロス角をとると、図3(a)に示す以前の圧延機に比べ、被圧延材8の幅中央部分がよく圧下され、圧延荷重によりロールが被圧延材の板幅方向に撓む分を補償でき、被圧延材の板クラウンを低減できるとともに、被圧延材の形状(急峻度)を制御する能力も高い。
【0017】
ところで、連続熱間圧延1本目については、各スタンドのロール間隙の設定値を、鋼種、製品板厚、板幅及び材料(被圧延材)温度の各設定値に基いて演算するには、バッチ圧延の場合と同様に、表1に示すような基準となる各スタンドの板厚の設定値をテーブル値として設定計算機70内に記憶しておき、その板厚になるように各スタンドで圧延したときの圧延荷重を、詳説しない計算式等によって予測し、それによって圧延機ハウジングが伸びる分を見越して、その分だけ狭めに各スタンドのロール間隙の設定値を設定する。ちなみに表1は製品板厚1.2mm、板幅1198mmの低炭素鋼(SPHC)の各スタンドの板厚の設定値テーブルの例である。参考までに圧下率も併記して示してある。
【0018】
【表1】
Figure 2004283909
【0019】
各スタンドの板厚の設定値のテーブルが、今正にこれから仕上圧延しようとする連続熱間圧延1本目の被圧延材の鋼種、製品板厚、板幅の各設定値を索引キーとして読み出され、それを更に被圧延材の温度実績値によって、これも詳説しない計算式等により補正する。被圧延材の温度実績値が基準温度より低ければ、板厚が過厚となるのを防止するために、各スタンドのロール間隙の設定値を狭めに補正し、逆に基準温度より高ければ広めに補正する。これらテーブル値を読み出し、被圧延材の温度による補正を行う計算の起動タイミングは、一例として、連続熱間圧延1本目の被圧延材の先端の温度が仕上圧延機18の入側に設置された温度計13によって測定されたときとしている。
【0020】
ところで、上述したような連続熱間圧延1本目の被圧延材についての各スタンドのロール間隙の設定方法は、実のところ特許文献1に登場するような連続熱間圧延を対象としたものではなく、先にも述べた通り、被圧延材同士を接合しないバッチ圧延、つまり被圧延材の先端を噛み込み、圧延し、尾端が尻抜けし、という従来からある熱間圧延の場合の方法をそのまま踏襲している。
【0021】
では、連続熱間圧延2本目以降ではどうか。以降、連続熱間圧延1本目と2本目の製品板厚が異なる場合を例に説明するが、例えばそのような場合、走間板厚変更中の過渡的な状態を経た後、連続熱間圧延2本目の被圧延材用の仕上圧延機各スタンドのロール間隙の設定値をどのように与えればよいのか、その具体的な値の決め方と、ロール間隙を実際にその設定値に向け動作開始させるようにするタイミングが問題となる。
【0022】
従来、前者の具体的な値の決め方については、実は、連続熱間圧延2本目以降の場合も、バッチ圧延の場合の方法を踏襲し、後述の表2に示すようなテーブルにて、各スタンドの板厚の設定値を決定していた。
【0023】
後者の設定値に向け動作開始させるようにするタイミングは、例えば特許文献2のように仮想的な圧延変更点が各スタンドに到達したときにロール間隙を連続熱間圧延2本目の被圧延材用の値に変更開始する方法を踏襲する等していた。
【0024】
後者については何ら問題は生じていなかった。
【0025】
【特許文献1】
特許第3103260号公報
【特許文献2】
特開平6−210333号公報
【特許文献3】
特開平9−174126号公報
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前者の各スタンドのロール間隙の具体的な値の決め方は、前述のような基準となる各スタンドの板厚の設定値をテーブル値をベースとして決めるという方法では、実は問題が生じる場合があることが、最近わかってきた。
【0027】
その問題を、上記表1の製品板厚1.2mm、板幅1198mmの低炭素鋼(SPHC)から、下記表2の製品板厚1.0mm、板幅1198mmの低炭素鋼(SPHC)に向け走間板厚変更する場合を例に以下に説明する。
【0028】
【表2】
Figure 2004283909
【0029】
ちなみに、製品板厚1.0mmのような極薄材とも呼ばれる熱延鋼板は、従来からあるバッチ式の熱間圧延では、仕上圧延後の被圧延材が宙に舞ってコイラーに巻き付かなかったり、尾端の尻抜け時にほぼ確実に絞り込みが起こってワークロールに疵が入ることにより後続の被圧延材に転写してしまったりする問題があるために、その製造が不可能であるとされていたものである。連続熱間圧延は、このような製造の難しい被圧延材を連続熱間圧延1本目と最終本目を除いた中間本目に配置することでその製造を可能にする。
【0030】
問題の方の説明に戻る。製品板厚1.2mmから1.0mmへの走間板厚変更に伴い、各スタンドの圧下率はどの程度上昇しているかを表3に示す。
【0031】
【表3】
Figure 2004283909
【0032】
表3を見ると、製品板厚1.2mmから1.0mmへの走間板厚変更に伴う、F3の圧下率の上昇が他のスタンドに比べて際立って大きいことがわかる。
【0033】
このときの各スタンドにおける計算上の急峻度を図6に示すが、F3の急峻度が1.2mmの場合はマイナス側すなわち腹伸び側に、1.0mmの場合はプラス側すなわち耳伸び側に、それぞれ下限、上限(経験的に人為設定した許容値)を超えて外れてしまっているようすがわかる。
【0034】
事実、上記表1および表2に示す各スタンドの板厚の設定値に従って連続熱間圧延した場合、先行する製品板厚1.2mmの被圧延材の仕上圧延中に、F3で被圧延材が腹伸びして図7(a)に示すように幅中央部で3枚重ねの状態での圧延となって開口し、図7(b)に示すように被圧延材搬送方向にいくつも断続して穴が明き、その後ついに被圧延材が破断して圧延の継続が不可能になるトラブルを起こしてしまった。
【0035】
ここで、被圧延材の穴明き破断を招いた原因について考察した結果について以下に説明する。状況として、発明者らの工場では、ちなみに圧延機の形式は、F1からF7ともペアクロス式圧延機を使用しており、F1からF3までの3スタンドについては、走間板厚変更が行われる場合、先行被圧延材の圧延から後行被圧延材の圧延に移行するに際し、圧延を継続したままクロス角を走間で変更できるようにはなっておらず、F4からF7については変更できるようになっている。上記の被圧延材の穴明き破断のトラブルは、その場合での例である。
【0036】
F1からF3までの3スタンドについては、圧延を継続したまま走間でクロス角は変更できず、F4からF7についてだけ変更できるようになっている理由は、次に説明する通りである。
【0037】
クロス角は、全スタンドについて、先行被圧延材の圧延のためのクロス角から後行被圧延材の圧延のためのクロス角に圧延を継続したまま走間で移行できるのが望ましい。ところが、被圧延材の板クラウンや形状の制御能力の高いペアクロス式圧延機を使う場合といえども、かつてペアクロス式圧延機が登場する以前の圧延機を使っていたときに当然のごとく行っていたように、F1からF7に向かうに従い、圧延荷重がなだらかに減少するように各スタンドの板厚あるいは圧下率の配分を設定するようにするのがやはり好ましいのである。
【0038】
すると、圧延荷重が高い状態で圧延することになるF1からF3などの前段スタンドでは、圧延を継続したまま走間でクロス角を変更するには、圧延荷重が高い分、それに抗してクロス角を変更するのに大きな力が必要になることから、機械設備の仕様上、問題が多い。それで、F1からF3までの3スタンドについては、圧延を継続したまま走間でクロス角は変更できず、F4からF7についてだけ変更できるようになっているのである。
【0039】
圧延荷重がF1からF7に向かうに従い、なだらかに減少するように各スタンドの板厚あるいは圧下率の配分を設定するようにするのがやはり好ましいのは、次に述べる理由による。
【0040】
一般的に言って、被圧延材の形状すなわち急峻度が特定のスタンドで過度に腹伸びや耳伸びになるのを防止するには、仕上圧延を通して全スタンドにてクラウン比率が極力一定になるように圧延することが必要である。クラウン比率とは、図8(a)中に▲1▼+▲2▼で示した板クラウンすなわち被圧延材の板幅中央部の板厚方向の出っ張りを被圧延材の表裏面側双方について合計したものを、板厚で割り算した比率のことであるが、クラウン比率が一定になるようにするには、図8(b)に示したように、被圧延材の板厚が最も厚いF1から最も薄いF7に向かうに従い、被圧延材の板クラウンもそれに同調してF1で最も大きくなるようにし、F7で最も小さくなるようにする必要がある。それには、被圧延材の板クラウンを決める支配的要因である、ワークロール19の撓みをF1からF7に向かうに従い、なだらかに減少するようにする必要があり、最終的に、その撓みを決めるのに支配的な要因である圧延荷重を、F1からF7に向かうに従い、なだらかに減少するようにする必要があるのである。図8において、195はワークロールチョックである。
【0041】
上記の被圧延材の穴明き破断のトラブルの例では、製品板厚1.2mmから1.0mmへの走間板厚変更に伴う、F3の圧下率の上昇が他のスタンドに比べて際立って大きかったことに加え、F3は先行被圧延材の圧延から後行被圧延材の圧延に移行するに際し、圧延を継続したままクロス角を走間で変更できない仕組になっていたため、形状制御能力が十分でなかった、という不利な条件が重なって、腹伸びで穴が明き、被圧延材が破断して圧延の継続が不可能になる通板トラブルを起こしてしまっていたわけである。
【0042】
被圧延材の穴明き破断を招いた原因について考察した結果については以上述べた通りであるが、上記の例のように圧延機の形式がペアクロス式である場合に限らず、このように、走間板厚変更によって接続すべき異なる製品板厚の被圧延材について、各スタンドの板厚の設定値のテーブルを、個別に決めておいて、各スタンドとも走間板厚変更前のロール間隙の設定値から走間板厚変更後のロール間隙の設定値に向かって動作する、という方法に従った場合、どこか特定のスタンドで際立って圧下率の変化が大きくなり、前述の通り、急峻度の上下限を超えてしまう、という現象が同様に起こりうる。
【0043】
このような問題は、いってみれば人為的なミスであり、各種の製品板厚について、スタンド間の圧下率のバランスが取れるように、最初から各スタンドの板厚の設定値を決めておけばよい、という考え方もあるが、異なるサイズ(板幅も含む)の製品であると、各スタンドの板厚の設定値を最初に決める者は、必ずしも同じ者とは限らない上、走間板厚変更前後の製品のサイズの組合せの数は多数あり、さらに異なる鋼種の場合の組合せの数も勘案すると、それらの組合せは無数にあるといっても過言ではなく、これらすべての組合せを考慮して、どこか特定のスタンドで際立って圧下率の変化が大きくならないように、各鋼種、製品のサイズ、の別に、圧下率の設定値をあらためてバランスの取れるような適正な値に変更することは、作業負荷として膨大にのぼり、現実的でない。
【0044】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたもので、連続熱間圧延での走間板厚変更に伴う上記のような被圧延材の仕上圧延中の通板トラブルを解消する方法を提案することを課題としている。
【0045】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、連続熱間圧延における複数スタンド仕上圧延機での仕上圧延中の走間板厚変更に際して、連続して仕上圧延する異なる製品板厚の被圧延材について、連続する2つ以上のスタンドの圧下率を変化させる比率を、該連続する2つ以上のスタンドで、所定範囲内に収めるようにすることを特徴とする連続熱間圧延における走間板厚変更方法である。
【0046】
更に、本発明は、その方法を用いた熱延鋼板の製造方法である。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明では、連続して仕上圧延する異なる製品板厚の被圧延材について、連続する2つ以上のスタンドについて、圧下率の比を所定範囲内に収めるようにする。そのようにすると、穴明き等の通板トラブルが生じなくなる理由について、以下に説明する。
【0048】
ここでは一つの実施の形態の例として、先行する被圧延材の圧下率に対し、特定の比率を乗じた圧下率に、後行する被圧延材の圧下率を設定するようにするのが簡単なため、その場合を例に説明する。
【0049】
後出の圧延理論上公知の(3)式を修正した次の(1)式が、圧下率rの変化率Δrがさほど大きくない範囲内では、近似的に成り立つものとすると、各スタンドの圧下率rを、各スタンドで同じ比率Δrだけ変更すれば、各スタンドの圧延荷重Wも(1)’式からわかるように、同じ比率ΔWだけ変化する。
【0050】
W=αkmQp√(R’)×b×r…(1)
ΔW=αkmQp√(R’)×b×Δr…(1)’
ここに、
W:圧延荷重
α:比例係数
km:変形抵抗
Qp:圧下力関数
R’:扁平ロール半径
b:被圧延材幅
r:圧下率
ΔW:圧延荷重の変化率
Δr:圧下率の変化率
である。
【0051】
ここで、圧下率rが各スタンドで同じ比率だけ変化したことにともない、各スタンドの圧延荷重Wが同じ比率だけ変化すれば、それにともなって、各スタンドのワークロールの撓みδも、次の(2)式のような関係があることから、略同じ比率だけ変化する。
【0052】
δ∝WL/EI…(2)
Δδ∝ΔWL/EI…(2)’
ここに、
δ:ワークロールの撓み
W:圧延荷重
L:ワークロールへの圧延荷重作用領域の長さ(軸方向)
E:ワークロールのヤング率
I:ワークロールの断面二次モーメント(πD/64)
D:ワークロールの直径
Δδ:ワークロールの撓みの変化率
である。
【0053】
略、としたのは、正確には、ロール表層部分の熱膨張、磨耗、それにバックアップロールによるワークロールの撓み抑制効果の影響があるため、理論的に完全に同じ比率だけ変化するというわけではないからであるが、それらの影響を考えなくても、第一義的には、上記したような評価の仕方で十分に説明がつく。
【0054】
ある特定の連続する2つ以上のスタンドの圧下率rを略等しい比率だけ変化させれば、各スタンドでの圧延荷重が略等しい比率だけ変化するため、ワークロールの撓みδ、そしてそれが転写してできる被圧延材の板クラウンも、略等しい比率だけ変化する。また、各スタンドの圧下率rを略等しい比率だけ変化させることにより、同時に、各スタンドにおける被圧延材の板厚も略等しい比率だけ変化する。従って、もしも先行する被圧延材側で、その特定の連続する2つ以上の各スタンド個々の間について、被圧延材のクラウン比率が、被圧延材の形状が過度の腹伸びや耳伸びにならないような適正な範囲に設定されていれば、走間板厚変更後の後行する被圧延材側でも、その特定の連続する2つ以上のスタンドにおける被圧延材のクラウン比率は略等しい比率だけ変化するように設定されることから、その特定の連続する2つ以上の各スタンド個々の間についてみると、結果的に、被圧延材のクラウン比率は殆ど変化しないことになり、被圧延材に穴明き等の通板トラブルが生じなくなるのである。
【0055】
あとは、走間板厚変更をどのようなタイミングで行うかだけの問題であり、それはトラッキングにかかってくる。トラッキングの仕方については、後述の実施例にて詳細に説明する。
【0056】
ところで、上記(1)式は、圧延理論上、正確には次の(3)式により表される式をベースに修正したものである。
【0057】
W=kmQp√(R’Δh)×b…(3)
ここに、
Δh:圧延前後での被圧延材の板厚差
を表す以外、各記号は、上記(1)式と同じものを表す。
【0058】
【実施例】
(実施例1)
F1からF7まで全てペアクロス式圧延機の場合を例に、F1からF3までについて本発明を適用した。F4からF7までについては従来からあったテーブル値そのままとした。各スタンドの板厚と圧下率の設定値を表4、5に、先行被圧延材と後行被圧延材の圧下率設定値を比較して表6に示す。従来技術と問題点の説明に用いた先述の表1、2、3の例と同様、製品板厚1.2mmの先行被圧延材から同1.0mmの後行被圧延材への走間板厚変更の場合を例に取っている。ちなみに被圧延材の製品板幅も同じく1198mmである。
【0059】
【表4】
Figure 2004283909
【0060】
【表5】
Figure 2004283909
【0061】
【表6】
Figure 2004283909
【0062】
表6からわかる通り、F1からF3について見ると、圧下率の増分は7.11〜7.26%と、従来技術と問題点の説明に用いた先述の表1の例では圧下率の増分が2.33〜14.53%とばらつきが大きかったのに比べ、本発明では揃った値にするようにしている。
【0063】
どの程度揃えればよいのか、は経験的に適宜定めればよい。別な機会に実施した、同じ製品板厚1.2mmの先行被圧延材から同1.0mmの後行被圧延材への走間板厚変更の場合について、各スタンドの板厚と圧下率の設定値を表7、8に、先行被圧延材と後行被圧延材の圧下率設定値を比較して表9に示す。
【0064】
【表7】
Figure 2004283909
【0065】
【表8】
Figure 2004283909
【0066】
【表9】
Figure 2004283909
【0067】
発明者らの研究によれば、本発明を適用するスタンド間で±3%以内の差(上記表9最下行の上段)に収めれば、何とか圧延の継続が不可能になる通板トラブルを起こさないようにできる。同様に比ならば±44%の比(同表9最下行の下段)に収めればよい。製品板厚1.2mmと1.0mmの圧下率の比を完全に一致させてしまうのが計算の仕方が簡単になるため好ましいが、被圧延材温度による補正等により若干ずれる場合がある。しかし、通板トラブルを起こすようなことはなく、大勢に影響はない。
【0068】
圧下率の増分をいくらにすればよいか、その計算の仕方を上記の例について説明する。ここでは、最も簡単な製品板厚1.2mmと1.0mmの圧下率の比を完全に一致させてしまう例を紹介するが、本発明はこれに限るものではない。本実施例では、本発明を適用するスタンドをF1からF3に限っているため、F1で圧延する前の被圧延材の板厚と、F3で圧延後の被圧延材の板厚、それに、製品板厚1.2mmの先行する被圧延材から製品板厚1.0mmの後行する被圧延材へのF1からF3各スタンドの圧下率の変化率Δrについては、次のような方程式(4)が成り立ち、これをΔrについて解くことにより圧下率の増分をいくらにすべきかが求められる。
【0069】
30.37×(1−49.1×(1+Δr/100)/100)×(1−47.8×(1+Δr/100)/100)×(1−44.1×(1+Δr/100)/100)=3.70 …(4)
【0070】
適当な仮の値からΔrを少しずつ変化させるように逐次代入していき、両辺が等しくなるようなΔrを探るようにしていく、いわゆる収束計算によって、上記の例の場合、Δr=7.15%を得る。表6の増分をみると、それに近い値になっていることがわかる。この比率だけ、表4のF1からF3の各圧下率を高めにすると、表5のF1からF3の各圧下率を求められる。完全に同じ値になっていないのは、詳説しない被圧延材の実績温度による補正計算の結果である。表6の設定で実際に連続熱間圧延したところ、穴明き等の通板トラブルなく、円滑に圧延できた。
【0071】
このときの各スタンドにおける計算上の急峻度を図1に示す。各スタンドにおける被圧延材の急峻度とも、それぞれ許容下限、上限以内におさまっているようすがわかる。
【0072】
次に、製品板厚1.2mmの先行被圧延材から同1.0mmの後行被圧延材への走間板厚変更の場合以外の例として、3.5mmの先行被圧延材から2.9mmの後行被圧延材への走間板厚変更の場合について、各スタンドの板厚と圧下率の設定値を表10、11に、先行被圧延材と後行被圧延材の圧下率設定値を比較して表12に示す。
【0073】
【表10】
Figure 2004283909
【0074】
【表11】
Figure 2004283909
【0075】
【表12】
Figure 2004283909
【0076】
このときも、圧延の継続が不可能になる通板トラブルを起こさないで圧延できている。
【0077】
ところで、各スタンドのロール間隙を走間板厚変更にともなってどのようなタイミングで変更するか、クロス角の変更を走間板厚変更にともなってどのようなタイミングで変更するか、については、先述の特許文献3の方法を踏襲するようにした。
【0078】
それに関連して、走間変更点(走間板厚変更開始点と走間板厚変更終了点の丁度中間の位置)を接合部と同じ位置に設定し、次に述べる高精度のトラッキング方法により時々刻々に認識するようにした。以下、この接合部、それに便宜上、切断予定部についても、そのトラッキング方法について説明する。
【0079】
熱間エンドレス圧延のように間断なく被圧延材を搬送、圧延する場合、そのトラッキングを行うのに重要となるその手法上のポイントは、以下の3つに区分して行うことである。
【0080】
(1)連続熱間圧延1本目の被圧延材の仕上圧延〜コイラー到達、
(2)後続の被圧延材の接合部の、接合部発生〜仕上圧延機第1スタンド(F1)到達、
(3)接合部の、仕上圧延機第1スタンド到達〜切断予定部の発生〜切断、
以降、この順に説明する。
【0081】
(1)連続熱間圧延1本目の被圧延材の仕上圧延〜コイラー到達
連続熱間圧延1本目の先端については、いずれも図示しない接合装置出側に設置された温度計、仕上圧延機入側に設置された温度計、仕上圧延機出側に設置された温度計にてその先端を逐次捉え、以降は仕上圧延機最終スタンドのロールの電動機の軸に接続の図示しないドライブ装置から所定周長(正確にはロールの所定回転角度に対しロール半径を掛け算した値)圧延ごとに発せられるパルスに先進率を掛け算した値で、コイラー24までの機械的な距離をカウントダウンすることで行う。仕上圧延機出側に設置された温度計に連続熱間圧延1本目の先端が到達したことに替えて、仕上圧延機最終スタンドに連続熱間圧延1本目の先端が到達したことを以って代用してもよい。このことは、圧延荷重の起立を以ってできる。
【0082】
もちろんこれらのセンサーは被圧延材の板厚や板幅などを計測するセンサや電動機のトルク計など他の計測センサ等で代用してもよい。
【0083】
(2)後続の被圧延材の接合部の、接合部発生〜仕上圧延機第1スタンド到達
接合部については、接合後仕上圧延機第1スタンドまでは、接合装置の走行終端位置(被圧延材ごとに異なる)を起点とし、そこから仕上圧延機第1スタンドまでの距離X(図5)を、被圧延材の搬送に伴い回転されるメジャーリングロール44から所定周長搬送ごとに発せられるパルスを制御装置50が受けてカウントダウンすることで行う(接合に先だってメジャーリングロール44は被圧延材8に押しつけられ回転している状態にしておく)。
【0084】
(3)接合部の、仕上圧延機第1スタンド到達〜切断予定部の発生〜切断
接合部が仕上圧延機第1スタンド到達から仕上圧延機最終スタンドに達するまでのトラッキングは、次のようにして行う。各スタンド間の機械的な距離と各スタンド出側での被圧延材の板厚の積を全スタンド間分累積した計算上の仕上圧延機内被圧延材体積を、仕上圧延機最終スタンドのロールの電動機の軸に接続の図示しないドライブ装置から所定周長(正確にはロールの所定回転角度に対しロール半径を掛け算した値)圧延ごとに発せられるパルスに先進率と仕上圧延機最終スタンド出側板厚を掛け算することで搬送体積距離に換算した値で、制御装置50内でカウントダウンすることで行う。
【0085】
接合部が各スタンドに到達するタイミングは、接合部が仕上圧延機第1スタンド到達以降、各下流スタンドまでのスタンド間の機械的な距離と各スタンド出側での被圧延材の板厚の積を該当スタンドまで累積した計算上の仕上圧延機内被圧延材体積を、前記した、所定周長圧延ごとに発せられるパルスに先進率と仕上圧延機最終スタンド出側板厚を掛け算することで搬送体積距離に換算した値で、制御装置50内でカウントダウンすることで行う。
【0086】
切断予定部は、例えば接合部が仕上圧延機最終スタンドに達してから所定距離圧延後に仕上圧延機最終スタンド位置に発生させる、というように制御装置50内で接合部近傍(この例では搬送方向上流側であるが別に下流側であってもよい)に仮想的に発生させる。
【0087】
接合部が仕上圧延機最終スタンド到達から切断装置40で切断予定部を切断するまで、仕上圧延機最終スタンドのロールの電動機の軸に接続の図示しないドライブ装置から所定ロール周長(正確にはロールの所定回転角度に対しロール半径を掛け算した値)圧延ごとに発せられるパルスを制御装置50が受けてカウントし、さらにそれに先進率を掛け算して被圧延材の圧延距離に換算した値で仕上圧延機最終スタンドから切断装置40までの機械的な距離をカウントダウンすることで行う。
【0088】
以上の例では、メジャーリングロール44や仕上圧延機最終スタンドの電動機軸に接続のドライブ装置から発せられるパルスを制御装置50でカウントするトラッキングの仕方を例に説明したが、本発明はこれに限るものではなく、レーザ速度計を使うようにするなど、その他のトラッキング方法を以って代用してもよい。特に上記の、(2)後続の被圧延材の接合部の、接合部発生〜仕上圧延機第1スタンド到達、(3)接合部の、仕上圧延機第1スタンド到達〜切断予定部の発生〜切断、はそれぞれ、仕上圧延機入側、出側にレーザ速度計を設置してトラッキングした方がより精度よくトラッキングでき好適である。
【0089】
また、上記(1)〜(3)に登場した、ロール半径、先進率は次のようにして制御装置50に与えればよい。
【0090】
・ロール半径:操業上、ロールを定期的に研磨するので、研磨直後に操作者による手動で、あるいは自動でロール直径を測定し、設定計算機70にその測定値を手で、あるいは自動で入力し、該設定計算機70内で演算してロール半径に直し、該設定計算機70から制御装置50に伝送する。
【0091】
・先進率:同じく設定計算機70内で、鋼種、製品サイズ等に応じたテーブル内に所定値として記憶しておき、仕上圧延中の被圧延材の該鋼種、製品サイズ等の属性をキーに該テーブルから所定値を検索し、制御装置50に伝送する。あるいは、このようなテーブル式に替え、同じく鋼種、製品サイズ等に応じたモデル式を以って代用してもよい。
【0092】
なお、F1からF3までの3スタンドについてだけ本発明を適用したが、その理由は、先述の発明が解決しようとする課題の項でも述べた通り、本実施例では、F1からF3までのペアクロス式圧延機とも圧延を継続しながら走間でクロス角を変更できる機械設備の仕様にはなっていない場合を例にとったからである。なお、この例ではF4からF7までは圧延を継続しながら走間でクロス角を変更できる機械設備の仕様になっている。
【0093】
それに関連して、表6からわかる通り、F4からF7までの各スタンドでは、圧下率の増分がF1からF3までのそれらに比較して小さい。これは、走間でクロス角を変更できる機械設備の仕様になっているF4からF7までの各スタンドでは、被圧延材の板クラウン、形状(急峻度)を走間でクロス角を変更することにより、適正に制御できることから、本発明を適用しなくても、図6に示したように被圧延材の急峻度がいずれかのスタンドでその下限、上限の一方を超えて外れてしまうことがないのである。
【0094】
表9の例では、F4からF7の中に、圧下率の増分がF1からF3までのそれらに比較して大きいスタンドもある。こういう場合でも走間でクロス角を変更することにより、適正に制御できる。
【0095】
そういう意味からすると、例えば全スタンドが被圧延材の板クラウン、形状(急峻度)を制御する能力が比較的小さい図3(a)に示した以前の4Hiの圧延機、あるいは、例えば図3(b)にその構造を示す4Hiワークロールシフトのような形式の圧延機のような場合、例えば、次に示す実施例2のように全スタンドに本発明を適用しても勿論よい。図において、195はワークロールチョック、205はバックアップロールチョックである。
【0096】
(実施例2)
F1からF7までの7スタンド全てが、図3(b)に示したような4Hiワークロールシフト形式の圧延機である場合について本発明を適用した。走間板厚変更タイミングについては特許文献2の場合と同様、トラッキング方法については実施例1の場合と同様としたため、説明を省略する。このときの具体的な各スタンドの板厚と圧下率の設定値を表13、14に、圧下率の設定値の先行被圧延材と後行被圧延材の対比を表15に示す。先述の表4、5、6の例と同様、製品板厚1.2mmの先行被圧延材から同1.0mmの後行被圧延材への走間板厚変更の場合を例に取っている。ちなみに被圧延材の製品板幅も同じく1198mmである。
【0097】
【表13】
Figure 2004283909
【0098】
【表14】
Figure 2004283909
【0099】
【表15】
Figure 2004283909
【0100】
表15からわかる通り、製品板厚1.2mmと1.0mmの場合の圧下率の比をF1からF7全てについて、4.50%に揃えるようにした。
【0101】
表13、14の設定で実際に連続熱間圧延したところ、穴明き等の通板トラブルなく、円滑に圧延できた。
【0102】
以上説明した通りであるが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。本発明を適用すべきスタンドは、F1からF3の場合と全スタンドの場合だけでなく、その他の場合であってもよいし、走間板厚変更の開始のタイミングや終了のタイミング、あるいは更にクロス角の走間変更の開始のタイミングとの関係、終了のタイミングとの関係については、特許文献2や特許文献3の方法に限らず、その他の方法によってもよい。
【0103】
また、先行する被圧延材に対する、後行する被圧延材の圧下率は、各スタンドについて、その増分をいくらにすればよいか、については、実施例1や2のように、本発明を適用するスタンドすべてで等しくすることは必ずしも必要ではなく、要は被圧延材が腹伸びや耳伸びにより通板トラブルを起こさないような圧下率の増分の範囲内に収まれば、いかなる方法によってもよい。
【0104】
そして、発明の実施の形態の項では、圧下率rの変化率Δrがさほど大きくない範囲内では、(1)’式が近似的に成り立つことを前提として説明したが、本発明はこれに限るものではなく、多少複雑になるが、理論的に正確な(3)式を前提として、やはり収束計算等により各スタンドの圧下率の増分を求めても、結果的に、本発明を適用する連続するスタンドの圧下率の増分が所定範囲内に収まればよいため、勿論そのような方法によってもよい。
【0105】
その他、ワークロールの熱膨張や磨耗の影響を計算や実測により求め、各スタンドの圧下率の増分を求めるのに反映するなどしてももちろんよい。
【0106】
最後に、上述した実施例に限らず、被圧延材の板厚が各種の場合について、同様に本発明は適用できる。また、先行する被圧延材が薄く、後行する被圧延材が厚い、というように上述した実施例とは逆の場合でも、原理的に、本発明を適用すれば同様の効果が得られることは明らかである。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、連続熱間圧延での走間板厚変更に伴う被圧延材の仕上圧延中の通板トラブルを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果を示す図
【図2】本発明を適用する圧延機の形式の一つである、ペアクロス圧延機の構造と仕組を示す図
【図3】本発明を適用する別の形式の圧延機の構造と仕組を示す図
【図4】従来からある熱間圧延ラインの概略の設備配列を示す図
【図5】近年登場してきた連続熱間圧延ラインの概略の設備配列を示す図
【図6】従来技術の問題点を解説するための図
【図7】従来技術により生ずる通板トラブルの様子を示す図
【図8】仕上圧延の進展に伴うクラウン比率の変化の様子を示す図
【符号の説明】
8…被圧延材
10…加熱炉
12…粗圧延機
13…温度計
14…クロップシャー
16…デスケーリング装置
18…仕上圧延機
19…ワークロール
195…ワークロールチョック
20…バックアップロール
22…冷却ゾーン
24…コイラー
28…クロップシャー(接合用)
30…接合装置
32…バリ取り装置
34…シートバーヒータ
36…エッジヒータ
38…接合部冷却装置
40…切断装置
42…高速通板装置
44…メジャーリングロール
50…制御装置
70…設定計算機
100…熱間圧延ライン
110…熱間エンドレス圧延ライン

Claims (2)

  1. 連続熱間圧延における複数スタンド仕上圧延機での仕上圧延中の走間板厚変更に際して、連続して仕上圧延する異なる製品板厚の被圧延材について、連続する2つ以上のスタンドの圧下率を変化させる比率を、該連続する2つ以上のスタンドで、所定範囲内に収めるようにすることを特徴とする連続熱間圧延における走間板厚変更方法。
  2. 請求項1に記載の走間板厚変更方法を用いたことを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
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