JP4822991B2 - 積層塗膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた意匠性を有する塗膜を形成することができる、積層塗膜の形成方法に関する。
自動車などの基材の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を形成して、基材を保護すると同時に美しい外観を付与している。そして自動車に形成された塗膜の外観は、その自動車の高級感などといった外観価値に大きく関与する。また自動車を購入する顧客は、意匠性に優れた塗膜を有する自動車を求める傾向にある。
これらの要求に対応する塗膜形成方法として、特開昭61−18469号公報(特許文献1)には、メタリック調顔料を含むベースコートの上に、クリヤー塗料の第一層を塗装したのち焼き付けを行い、次いで第二層のクリヤー塗料およびトップコートを積層、焼き付けした、四層からなる4コート2ベークメタリック塗膜の形成方法が記載されている。また特開平3−12263号公報(特許文献2)には、ベースコートおよび透明クリヤを塗装し焼き付け、次いでカラークリヤおよび透明クリヤを塗装し焼き付けることを特徴とする、うるし調塗膜の形成方法が記載されている。
また特開昭63−205178号公報(特許文献3)および特開昭63−319088号公報(特許文献4)には、カラー中塗り塗膜の上にマイカベース塗料およびクリヤー塗料を塗布する、上塗り塗装方法が記載されている。これらの塗装方法によって、意匠性の優れた塗膜を得ることができると記載されている。
ところで、自動車車体のような比較的複雑な形状を有する被塗物表面上に塗装して積層塗膜を形成する場合、得られる積層塗膜の膜厚が、塗装された部位によって不均一となることがある。この膜厚の不均一によって、膜厚の薄い部分の色相が他の部分の色相と異なるという不具合が生じることがある。この為、特に、深み感や透明感が求められる高外観の塗色においては、塗装部位による色相差または色ムラの改善という要求に対して、十分に満足するものは得られていなかった。
特開2000−84473号公報(特許文献5)には、カラーベース塗料、光輝材含有ベース塗料、およびクリヤ塗料を塗装し、3コート1ベーク方式により硬化させる積層塗膜の形成方法が記載されている。そしてこの形成方法によって、塗膜の色相の差を低減することができると記載されている。しかしながらこの塗装方法は、カラーベース塗料を用いた3コート1ベーク方式による塗装方法であり、本願発明とは発明の構成が異なるものである。
特開2005−169313号公報(特許文献6)には、下地層、ベース塗膜層および複数の着色塗膜層を有する積層塗膜であって、ベース塗膜層の明度が着色塗膜層の明度より高く、着色塗膜層には微粒化着色材と平均粒子径300nmを超える着色材とを特定の割合で含むことを特徴とする積層塗膜が記載されている。そしてこの積層塗膜は、彩度が高く、下地隠ぺい性に優れ、深み感のある積層塗膜であると記載されている。しかしながらこの積層塗膜は、着色塗膜層に含まれる着色材が2種以上であって特定の割合で用いられていることを特徴とする点において、本発明とは異なるものである。
特開平9−299872号公報(特許文献7)には、グレー色下地塗膜、光輝性材料を含有するメタリック塗膜を積層したメタリック塗膜構造であって、グレー色下地塗膜の明度(L値)がメタリック塗膜のL値+40以内の範囲に設定され、波長400nm〜700nmにおけるメタリック塗膜色の波長域で測定した光線透過率が10〜25%の透け色であることを特徴とするメタリック塗膜構造が記載されている。しかしながらこの塗膜構造もまた、メタリック塗膜色の光線透過率が10〜25%の透け色であることを特徴とする点において、本発明とは異なるものである。
特開昭61−18469号公報 特開平3−12263号公報 特開昭63−205178号公報 特開昭63−319088号公報 特開2000−84473号公報 特開2005−169313号公報 特開平9−299872号公報
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、深み感があり意匠性に優れ、かつ、膜厚変動による色相変動が小さい、積層塗膜の形成方法を提供することにある。
本発明は、
硬化中塗り塗膜が形成された被塗物に、第1水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程、
得られた第1ベース塗膜上にウエットオンウエットで第1クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第1クリヤー塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の第1ベース塗膜および第1クリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化を行い、第1硬化塗膜を得る、第1焼き付け工程、
得られた第1硬化塗膜の上に第2水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程、
得られた第2ベース塗膜上にウエットオンウエットで第2クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第2クリヤー塗膜を形成する工程、および
得られた未硬化の第2ベース塗膜および第2クリヤー塗料組成物を同時に焼き付け硬化を行う、第2焼き付け工程、
を包含する、積層塗膜の形成方法であって、
この第1水性ベース塗料組成物は、光輝性顔料を顔料質量濃度(PWC)で5〜25質量%含有し、
形成された第1硬化塗膜は、25°L*値が60〜100、フリップフロップ値が4以上、およびC*平均値が10以下である塗膜であり、
この第2水性ベース塗料組成物は、顔料質量濃度(PWC)が0.01〜10質量%であって、光輝性顔料を含まない着色塗料組成物であり、および
第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜は、白黒隠ぺい膜厚が100μm以上であり、およびL*値が90であるホワイトソリッド塗膜上における硬化第2ベース塗膜のC*値が30〜100である、
積層塗膜の形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記方法より得られた積層塗膜は、フリップフロップ値が1.5以上であり、75°における明度に対する彩度の比率(C*/L*)が3以上である高彩度レッド色を有する積層塗膜であるのがより好ましい。
本発明はまた、上記の形成方法により形成される積層塗膜も提供する。
本発明の方法によって、深み感があり意匠性に優れた積層塗膜を形成することができる。本発明の積層塗膜の形成方法はさらに、膜厚変動による色相変動が小さいという利点も有している。本発明の方法により形成される積層塗膜は、シェードにおける彩度が高く、かつ明度が低い外観を有している、つまり鮮やかな濃い色であってかつ暗い色である、すなわち深み感を有する外観を有している。本発明の積層塗膜の形成方法は、自動車の車体などのような、大きくかつ複雑な形状を有する被塗物の塗装に特に適している。
本発明に至るまでの過程
自動車などの基材の塗装において、例えばレッドなどの着色積層塗膜(ベース塗膜およびカラークリヤー塗膜を含む。)を形成する場合は、一般に、下地のベース塗膜の色相は、その上に設けられる着色されたカラークリヤー塗膜と同色系のレッドメタリック色としたり、またはマイカを用いた高彩度レッド色としたりすることが多い。ベース塗膜の色相をこのように設定する目的は、ベース塗膜の上に形成されるカラークリヤー塗膜の膜厚が変動した場合における、積層塗膜の色相変動を少なくするためである。一方、このような色相を有するベース塗膜は、彩度を上げる為に着色顔料を多く含むこととなっていた。そのため、フリップフロップ性を高めることが困難となっていた。さらに、ベース塗膜の彩度が高い場合は、ベース塗膜自体が特定の波長において反射ピークを有することとなる。この場合、積層塗膜の外観において、その上に形成されるカラークリヤー塗膜の透過波長ピークとのずれが発生することが多く、これによりカラークリヤー塗膜の膜厚変動に対する色相変化が大きくなるという問題が生じる。従って、積層塗膜において、カラークリヤー塗膜の膜厚変動による色相変化を少なくする事は非常に困難である。
積層塗膜の色相変動を少なくする他の方法として、ベース塗膜の色相と積層塗膜の色相とを近づける方法がある。しかしながらこれらの塗膜の色相を近づけることによって、積層塗膜における深み感がなくなるという不利益がある。この積層塗膜における深み感は、塗膜外観の意匠性に大きく関与している。深み感を有する塗膜は、高級感が感じられ、意匠性に優れるものである。深み感を有する積層塗膜の形成方法として、例えば、下地のベース塗膜をシルバーメタリック塗膜とする方法が挙げられる。しかしながら、この方法では下地のハイライト反射強度が強すぎ、このため膜厚変動による色相変動が大きくなるという不利益がある。
本発明は、これらの問題点を克服した、深み感があり意匠性に優れた塗膜を形成することができ、かつ、膜厚変動による色相変動が小さいという利点を有する、積層塗膜の形成方法を提供することを目的としている。本発明者らは、赤系の塗色は可視光の中で600nm以下の波長を吸収し、600〜780nmの範囲の波長を反射する、つまり可視光の中でこの特定範囲の波長のみを吸収することによって赤色を示す点に着目した。カラークリヤー塗膜を形成することは、深み感がある積層塗膜を得る手法として有用であるが、一方でカラークリヤー塗膜は光を透過するため、その下に形成されている塗膜の光反射の影響を受けてしまう。この場合、積層塗膜の色設計において、カラークリヤー塗膜より下に形成される塗膜による光反射の影響までも考慮しなければならなくなる。そこで本発明者らは、より下に形成される第1ベース塗膜は、積層塗膜の色相にとらわれずに、ほとんど色味を有しない無彩色(グレー)に近い塗膜とすることを試みた。こうすることによって、第1ベース塗膜は特定の反射ピークを有しない塗膜となる。そしてこの見地に基づき、より下方に形成される第1ベース塗膜にはアルミペーストまたはマイカを含有させることによって意匠性を確保し、さらに膜厚変動による色相変動を少なくするためにこのベース塗膜の彩度を低くかつハイライト明度の低い色調とすることにより、高い意匠性を有し、かつ低い膜厚変動性を有する積層塗膜の形成を可能とすることを見いだした。
本発明の積層塗膜の形成方法は、
硬化中塗り塗膜が形成された被塗物に、第1水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程、
得られた第1ベース塗膜上にウエットオンウエットで第1クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第1クリヤー塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の第1ベース塗膜および第1クリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化を行い、第1硬化塗膜を得る、第1焼き付け工程、
得られた第1硬化塗膜の上に第2水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程、
得られた第2ベース塗膜上にウエットオンウエットで第2クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第2クリヤー塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の第2ベース塗膜および第2クリヤー塗料組成物を同時に焼き付け硬化を行う、第2焼き付け工程、
を包含する方法であり、いわゆるフォーコート・ツーベーク(4C2B)塗装による方法である。各工程で用いられる塗料組成物等について順次説明する。
被塗物
本発明の積層塗膜の形成方法に用いられる被塗装物は、特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、発泡体等などを挙げることができる。本発明の方法は、特に金属および鋳造物に有利に用いることができ、電着塗装可能な金属に対して特に好適に用いることができる。このような金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。具体的な成型物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体およびその部品が挙げられる。これらの金属は、電着塗装する前に、予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理するのがより好ましい。このような化成処理がなされた被塗物上に電着塗膜が形成されているのが好ましい。電着塗料組成物としてはカチオン型およびアニオン型の何れも使用することができるが、カチオン型電着塗料組成物を用いることにより防食性においてより優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の方法は、プラスチックに対しても好適に用いることができる。このようなプラスチックとしては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。具体的な成型物としては、例えば、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品等が挙げられる。さらに、これらのプラスチック成型物は、塗装前に純水および/または中性洗剤により洗浄されたものが好ましい。これらの成型物は、静電塗装を可能にするためのプライマー塗装が施されていてもよい。
本発明に用いる被塗物は、上記成型物などの被塗物が所望により有する電着塗膜上またはプライマー層上に、中塗り塗膜が形成されている。この中塗り塗膜は、中塗り塗料組成物を塗装し、焼き付け硬化することによって形成される。中塗り塗料組成物としては特に限定されず、水性型、溶剤型、粉体型等、当業者によってよく知られているものを挙げることができる。
通常用いられる中塗り塗料組成物は、有機系、無機系の各種着色顔料、体質顔料等、塗膜形成性樹脂および硬化剤等を含有する。中塗り塗料組成物により得られる中塗り塗膜は、下地を隠ぺいし、上塗り塗装後の表面平滑性を確保(外観向上)し、塗膜物性(耐衝撃性、耐チッピング性等)を付与することができる。中塗り塗料組成物に用いられる着色顔料としては、例えば有機系の顔料および無機系の顔料が挙げられる。また、体質顔料、更に、アルミニウム粉、マイカ粉等の扁平顔料を併用しても良い。標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンを主要顔料としたグレー系中塗り塗料組成物が用いられる。更に、上塗り塗色と明度あるいは色相等を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料組成物を用いることもできる。
中塗り塗料組成物に用いられる塗膜形成性樹脂としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができ、これらはアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。顔料分散性あるいは作業性の点から、アルキド樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組合せが好ましい。
このような中塗り塗料組成物を被塗物に塗装した後、加熱することによって、硬化した中塗り塗膜が得られることとなる。加熱温度は一般に100〜180℃であり、より好ましくは120〜160℃である。加熱時間は10〜30分であるのが好ましい。中塗り塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、乾燥膜厚で20〜60μm程であるのが好ましく、30〜40μm程であるのがより好ましい。
第1水性ベース塗料組成物
本発明における第1水性ベース塗料組成物は、光輝性顔料を顔料質量濃度(PWC)で5〜25質量%含有する塗料組成物である。そしてこの第1水性ベース塗料組成物は、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られるアクリルエマルション樹脂、1分子中に一級水酸基を平均0.02個以上有し、数平均分子量300〜3000であるポリエーテルポリオール、ウレタンエマルション樹脂、硬化剤および光輝性顔料を含有するものが好ましく用いられる。
アクリルエマルション樹脂
第1水性ベース塗料組成物に含まれるアクリルエマルション樹脂は、種々のものを用いることができる。例えば、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルを65質量%以上含んでいる、酸価3〜50mgKOH/gのα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られるものを用いることができる。
上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物に含まれる、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルの量が65質量%未満であると、得られる塗膜の外観が低下する。上記エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが挙げられる。尚、本明細書において(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの両方を意味するものとする。
また、このα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物は酸価が3〜50mgKOH/gであり、好ましくは7〜40mgKOH/gである。酸価が3mgKOH/g未満では、作業性を向上させることができないおそれがあり、50mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。一方、上記第1水性ベース塗料組成物が硬化性を有する必要がある場合には、このα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物は水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、好ましくは20〜100mgKOH/gである。10mgKOH/g未満では、充分な硬化性が得られないおそれがあり、150mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。また、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を重合して得られるエマルション樹脂のガラス転移温度は、−20〜80℃の間であることが、塗膜物性の点から好ましい。
上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物は、酸基または水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーをその中に含むことにより、上記酸価および水酸基価を有することができる。
また、上記酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体である。
一方、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物である。
さらに、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物はさらにその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。上記その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、エステル部の炭素数3以上の(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド 2,4−ジヒドロキシ−4'−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレンおよびビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)を挙げることができる。これらは目的により選択することができるが、親水性を容易に付与する場合には(メタ)アクリルアミドを用いることが好ましい。
尚、これらのエステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステル以外の上記α,β−エチレン性不飽和モノマーは、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物中の含有量が35質量%未満に設定するのが好ましい。
第1水性ベース塗料組成物に含まれるエマルション樹脂は、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られるものである。ここで行われる乳化重合は、通常よく知られている方法を用いて行うことができる。具体的には、水、または必要に応じてアルコールなどのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物および重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化したα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を同様に滴下してもよい。
好適に用いうる重合開始剤としては、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など)、および水性化合物(例えば、アニオン系の4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)およびカチオン系の2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン));並びにレドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびt−ブチルパーベンゾエートなど)、および水性過酸化物(例えば、過硫酸カリおよび過酸化アンモニウムなど)が挙げられる。
乳化剤には、当業者に通常使用されているものを用いうるが、反応性乳化剤、例えば、アントックス(Antox)MS−60(日本乳化剤社製)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製)、アデカリアソープNE−20(旭電化社製)およびアクアロンHS−10(第一工業製薬社製)などが特に好ましい。
また、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタンおよびα−メチルスチレンダイマーなどのような連鎖移動剤を必要に応じて用いうる。
反応温度は開始剤により決定され、例えば、アゾ系開始剤では60〜90℃でであり、レドックス系では30〜70℃で行うことが好ましい。一般に、反応時間は1〜8時間である。α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の総量に対する開始剤の量は、一般に0.1〜5質量%であり、好ましくは0.2〜2質量%である。
上記乳化重合は二段階で行うことができる。すなわち、まず上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物のうちの一部(α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1)を乳化重合し、ここに上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の残り(α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物2)をさらに加えて乳化重合を行うものである。
意匠性に優れる塗膜を形成する為に、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1はアミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していることが好ましい。またこの時、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物2は、アミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していないことがさらに好ましい。尚、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1および2を一緒にしたものが、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物であるため、先に示した上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の要件は、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1および2を一緒にしたものが満たすことになる。
このようにして得られる上記アクリルエマルション樹脂の粒子径は0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。粒子径が0.01μm未満であると作業性の改善の効果が小さく、1.0μmを上回ると得られる塗膜の外観が悪化する恐れがある。この粒子径の調節は、例えば、モノマー組成や乳化重合条件を調整することにより可能である。尚、本明細書内において、上記アクリルエマルション樹脂の粒子径は、レーザー光散乱法により測定した体積平均粒径を用いている。
上記アクリルエマルション樹脂は、必要に応じて塩基で中和することにより、pH=5〜10で用いることができる。これは、このpH領域における安定性が高いからである。この中和は、乳化重合の前または後に、ジメチルエタノールアミンやトリエチルアミンのような3級アミンを系に添加することにより行うことが好ましい。
ポリエーテルポリオール
第1水性ベース塗料組成物に含有されるポリエーテルポリオールは、1分子中に一級水酸基を平均0.02個以上有し、数平均分子量300〜3000である。このポリエーテルポリオールを含有することにより、塗膜のフリップフロップ性、耐水性、耐チッピング性を向上することができる。尚、本明細書内において、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミィエーションクロマトグラム)により測定し、ポリスチレンポリマー分子量に換算した値を用いている。
上記ポリエーテルポリオールの1分子中における一級水酸基が平均0.02個未満だと、塗膜の耐水性、耐チッピング性が低下する。さらに、1分子中に一級水酸基を0.04個以上有することが好ましく、特に、1分子中に一級水酸基を1個以上有することが好ましい。この一級水酸基の他、二級および三級水酸基を含めた水酸基の個数は、1分子中に2個以上であることが塗膜の耐水性、耐チッピング性の観点から好ましい。また、水酸基価の観点から見た場合には、水酸基価が30〜700mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が下限を下回ると硬化性が低下し、塗膜の耐水性、耐チッピング性が低下するおそれがある。上限を超えると塗料安定性、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。特に好ましくは50〜500mgKOH/gである。
また、上記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が300未満だと塗膜の耐水性が低下し、3000を超えると塗膜の硬化性、耐チッピング性が低下するおそれがある。好ましくは400〜2000である。尚、本明細書では、分子量はスチレンポリマーを標準とするGPC法により決定される。
上記ポリエーテルポリオールは、塗料樹脂固形分中で、1〜40質量%含有されることが好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。上限を超えると塗膜の耐水性、耐チッピング性が低下するおそれがあり、下限を下回ると塗膜の外観が低下するおそれがある。
上記ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸類などの活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドが付加した化合物が挙げられる。活性水素原子含有化合物としては、例えば、水、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキシレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール、蔗糖等の8価アルコール、ポリグリセリン等);多価フェノール類[多価フェノール(ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォン等)];ポリカルボン酸[脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸等)、芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等)]等;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールは、通常アルカリ触媒の存在下、上記活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを、常法により常圧または加圧下、60〜160℃の温度で付加反応を行うことにより得られる。上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用することができる。2種以上を併用する場合の付加形式はブロックもしくはランダムのいずれでもよい。
尚、上記ポリエーテルポリオールは、市販されているものを使用することができ、例えば、プライムポールPX−1000、サンニックスSP−750、PP−400(上記いずれも三洋化成工業社製)、PTMG−650(三菱化学社製)等を挙げることができる。
ウレタンエマルション樹脂
第1水性ベース塗料組成物に含まれるウレタンエマルション樹脂は、特に限定されるわけではなく、例えば、ジイソシアネートと、少なくとも2個の活性水素を含有するグリコールあるいはカルボン酸基を有するグリコール等とをNCO/OH当量比が0.5〜2.0で反応させてウレタンプレポリマーを作り、次いで、このプレポリマーを中和および鎖伸長して、イオン交換水を添加することにより製造することができる。
上記ウレタンエマルジョン樹脂の構成成分であるウレタンプレポリマーを作る際に用いられるジイソシアネートとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、脂肪族、脂環式、または芳香族ジイソシアネートが挙げられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびそれらの誘導体等を挙げることができる。
上記グリコール類としては、特に限定されるわけではないが、少なくとも2個の活性水素を含有するものであって、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等の低分子量グリコール、ポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシプロピレンとグリセリンとの付加物、ポリオキシプロピレンとトリメチロールプロパンとの付加物、ポリオキシプロピレンと1,2,6−ヘキサントリオールとの付加物、ポリオキプロピレンとペンタエリスリットとの付加物、ポリオキシプロピレンとソルビットとの付加物、メチレン−ビス−フェニルジイソシアネート、ヒドラジンで鎖伸長したポリテトラフランポリエーテルおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
さらに、アジピン酸あるいはフタル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンあるいは1,1,1−トリメチロールエタン等の縮合物であるポリエステル類、ポリカプロラクトン等か挙げられる。
また、カルボン酸基を有するグリコールとして、特に限定されるわけではないが、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等を用いることもできる。
上記ウレタンエマルション樹脂は、上述したようなグリコールと、過剰のイソシアネート化合物との反応生成物であるウレタンプレポリマーを、カチオン系、ノニオン系、またはアニオン系の界面活性剤を用いて、中和および鎖伸長し、イオン交換水を添加して分散して得ることができる。
その際に用いられる中和剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンのようなアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
また、鎖伸長剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、1,2−ビス(2−シアノエチルアミノ)エタン、イソホロンジアミン等の脂肪族、脂環式、または芳香族ジアミン、および水等を挙げることができる。
例えば、上記ウレタンエマルション樹脂の市販品としては、特に限定されるわけではないが、大日本インキ製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル製の「インプラニール」シリーズ、例えば、ネオレッツR−940、R−941、R−960、R−962、R−966、R−967、R−962、R−9603、R−9637、R−9618、R−9619、XR−9624等のアビシア社製の「ネオレッツ」シリーズ、三洋化成工業製の「ユーコート」、「ユープレン」、「パーマリン」シリーズ、旭電化製の「アデカボンタイター」シリーズ等を挙げることができる。
上記ウレタンエマルション樹脂は、1種のみを使用してもよいし、あるいは、2種以上を併用してもよい。
なお、第1水性ベース塗料組成物は、塗料樹脂固形分100質量部当たり、上記ウレタンエマルション樹脂を3〜30質量部含有していることが好ましい。上記ウレタンエマルション樹脂の含有割合が3質量部未満の場合は付着性等が低下するおそれがあり、30質量部を超える場合は塗料の貯蔵安定性が低下するおそれがある。特に好ましくは10〜25質量部である。
光輝性顔料
第1水性ベース塗料組成物に含まれる光輝性顔料は、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ厚さが0.1〜5μmである鱗片状のものが好ましい。また、平均粒径が10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、さらに好適に用いられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色あるいは着色された金属製光輝性顔料およびその混合物が挙げられる。この他に干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料なども含むことができる。
第1水性ベース塗料組成物に含まれる光輝性顔料の顔料質量濃度(PWC)は、5〜25質量%である。上限を超えると塗膜外観が低下するおそれがある。さらに好ましくは、5〜15質量%であり、特に好ましくは5〜10質量%である。なお、上記光輝性顔料の顔料質量濃度は、後述するその他の顔料も併せた計算式、
PWC(質量%)=(全光輝性顔料の合計質量)/(全光輝性顔料およびその他の顔料と、全樹脂成分との合計質量)×100
から算出される。
硬化剤
第1水性ベース塗料組成物は、硬化剤を含むことができる。上記硬化剤としては、塗料一般に用いられているものを使用することができ、このようなものとしては、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート等が挙げられる。得られる塗膜の諸性能、コストの点からアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートが一般的に用いられる。
上記アミノ樹脂は、特に限定されるものではなく、水溶性メラミン樹脂あるいは非水溶性メラミン樹脂を用いることができる。
また、上記ブロックイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートに活性水素を有するブロック剤を付加させることによって得ることができるものであって、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生し、上記樹脂成分中の官能基と反応し硬化するものが挙げられる。
上記硬化剤が含まれる場合、その含有量は第1水性ベース塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、15〜100質量部であることが好ましく、15〜35質量部であることがさらに好ましい。15質量部未満の場合は硬化性等が低下し、100質量部を超える場合は付着性、耐温水性等が低下するおそれがある。また、このとき、本発明の第1水性ベース塗料組成物は、塗料樹脂固形分100質量部当たり、ウレタンエマルション樹脂および上記硬化剤の和が30〜60質量部であることが好ましい。上記和が、30質量部未満の場合は塗装作業性が低下し、60質量部を超える場合は塗料の貯蔵安定性が低下するおそれがある。特に好ましくは30〜55質量部である。
その他の成分
本発明の第1水性ベース塗料組成物には、必要によりその他の塗膜形成性樹脂を含んでいてもよい。このようなものとしては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の塗膜形成性樹脂が利用できる。
上記その他の塗膜形成性樹脂は、数平均分子量3000〜50000、好ましくは6000〜30000である。3000より小さいと塗装作業性および硬化性が充分でなく、50000を超えると塗装時の不揮発分が低くなりすぎ、かえって塗装作業性が悪くなるおそれがある。
上記その他の塗膜形成性樹脂は10〜100mgKOH/g、さらに20〜80mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、上限を超えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると樹脂の水分散性が低下するおそれがある。また、20〜180mgKOH/g、さらに30〜160mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましく、上限を超えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると塗膜の硬化性が低下するおそれがある。
なお、第1水性ベース塗料組成物における樹脂成分の内、上記アクリルエマルション樹脂と上記その他の塗膜形成性樹脂との配合割合は、その樹脂固形分総量を基準にして、アクリルエマルション樹脂が5〜95質量%、さらに好ましくは10〜85質量%、特に好ましくは20〜70質量%であり、その他の塗膜形成性樹脂が95〜5質量%、さらに好ましくは90〜15質量%、特に好ましくは80〜30質量%である。上記アクリルエマルション樹脂の割合が5質量%を下回るとタレの抑制および塗膜外観が低下するおそれがあり、95質量%より多いと塗膜外観が悪くなる恐れがある。
また、第1水性ベース塗料組成物は、その他の顔料を含むことができる。上記その他の顔料としては、体質顔料等を挙げることができる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等を挙げることができる。なお本発明においては、第1水性ベース塗料組成物および第1クリヤー塗料組成物から形成される第1硬化塗膜が無彩色(グレー)であることが好ましく、第1水性ベース塗料組成物中には有彩色の着色顔料は外観の色相に影響を与えるほどには含まれないのが好ましい。
第1水性ベース塗料組成物中の全顔料質量濃度(PWC)としては、5〜50質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜40質量%であり、特に好ましくは、5〜30質量%である。上限を超えると塗膜外観が低下するおそれがある。なお、上記全顔料質量濃度は(全その他の顔料と全光輝性顔料との合計質量)/(全光輝性顔料およびその他の顔料と、全樹脂成分との合計質量)×100(%)で表されるものである。
またさらに、第1水性ベース塗料組成物には、第1クリヤー塗膜とのなじみを防止し、塗装作業性を確保するために、その他の粘性制御剤を添加することができる。粘性制御剤としては、一般にチクソトロピー性を示すものを使用でき、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドの燐酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料等を粘性制御剤として挙げることができる。
本発明の第1水性ベース塗料組成物中には、上記成分の他に塗料に通常添加される添加剤、例えば、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤等を配合してもよい。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
第1水性ベース塗料組成物の製造
第1水性ベース塗料組成物の製造方法は特に限定されず、上記成分および顔料等の配合物をニーダーまたはロール等を用いて混練、分散するなどといった、当業者に周知の全ての方法を用いることができる。
第1クリヤー塗料組成物
第1クリヤー塗料組成物は、光輝性顔料に起因する第1ベース塗膜の凹凸、チカチカ等を平滑にしたり、また第1ベース塗膜を保護し、外観を向上させるための塗膜を形成する塗料組成物である。上記第1クリヤー塗料組成物としては特に限定されず、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤及びその他の添加剤からなるものを挙げることができる。
塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらはアミノ樹脂及び/又はポリイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いることができる。透明性等の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、アミノ樹脂及び/又はポリイソシアネート樹脂との組合わせ等を用いることが好ましい。
第1クリヤー塗料組成物は、上述した第1ベース塗料組成物を塗装した後、この塗膜がウエット塗膜の状態で塗装するため、塗膜層間のなじみや反転、又はタレ等の防止を目的とした粘性制御剤を添加剤として含有することが好ましい。粘性制御剤の添加量は、第1クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、下限0.01質量部、上限10質量部であり、好ましくは、下限0.02質量部、上限8質量部、より好ましくは、下限0.03質量部、上限6質量部である。10質量部を超えると、得られた塗膜の外観が低下するおそれがあり、0.1質量部未満であると、粘性制御効果が得られず、塗膜形成時にタレ等の不具合を起こす原因となるおそれがある。
第1クリヤー塗料組成物の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を用いることができる。なお、水性型クリヤー塗料の例としては、上記クリヤー塗料の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものを挙げることができる。この中和は重合の前又は後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
第2水性ベース塗料組成物
第2水性ベース塗料組成物は、第1水性ベース塗料組成物と同様のアクリルエマルション樹脂、ポリエーテルポリオール、ウレタンエマルション樹脂などを含む塗料組成物を用いることができる。但し、第2水性ベース塗料組成物は光輝性顔料を含まない点において、第1水性ベース塗料組成物とは異なる。また第2水性ベース塗料組成物は着色顔料を含有し、塗料組成物中に含まれる顔料質量濃度(PWC)は0.01〜10質量%であることを条件とする。第2水性ベース塗料組成物は、このように光輝性顔料を含んでおらず、一方で着色顔料を含み、そして塗料組成物中に含まれる顔料質量濃度(PWC)が低いことから、カラークリヤー塗料とも言うことができる。
第2水性ベース塗料組成物に含まれる着色顔料として、例えば有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。塗料組成物中に含まれる顔料質量濃度(PWC)は、好ましくは0.01〜5.0質量%であり、より好ましくは0.01〜2.0質量%である。
なお第2水性ベース塗料組成物の調製は、第1水性ベース塗料組成物と同様に調製することができる。
本発明においては、第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜は、白黒隠ぺい膜厚が100μm以上、好ましくは150〜1000μmであることを特徴とする。この白黒隠ぺい膜厚は、塗料組成物の隠ぺい力の測定に用いられる隠ぺい率測定紙(規格:JIS K5600)を用いて測定することができる。白黒隠ぺい膜厚の測定方法は次の通りである。隠ぺい率測定紙が有する2×2cm角の白黒の市松模様上に、乾燥膜厚が20〜1000μmの膜厚勾配ができるようにスプレー塗装し、その後焼き付けを行い硬化させる。次いで、目視により、白黒の市松模様が透けて見えない限界の塗膜部位を判定し、その部位の膜厚を実測し、この膜厚を白黒隠ぺい膜厚とする。
第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜の白黒隠ぺい膜厚が100μm以上であることは、硬化第2ベース塗膜の隠ぺい力が低いことを意味する。このため、第2水性ベース塗料組成物は、カラークリヤーといわれるような、隠ぺい力の低い塗料組成物であるということができる。硬化第2ベース塗膜の白黒隠ぺい膜厚が100μmを下まわる場合は、隠ぺい力が高い塗膜となり、積層塗膜の意匠性が劣ることとなるおそれがある。尚、第1水性ベース塗料組成物により形成される硬化第1ベース塗膜の白黒隠ぺい膜厚は、100μm未満であることが好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
本発明においては、第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜は、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上でのC*値が30〜100であることも特徴とする。なお本明細書において、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上での硬化第2ベース塗膜のC*値の測定は、第2ベース塗膜の乾燥膜厚15±2μmの膜厚を用いて測定する。
ここでL*およびC*は、JIS Z8729に準拠して求められる。L*およびC*は、L*a*b*表色系(CIE 1976)による、被測定物の色を表すのに用いられる指標である。この表色系では、L*は明度を表す。そして色相と彩度を示す色度をa*、b*で表す。a*、b*は、クロマティクネス指数と呼ばれ、色の方向を表す。a*は0を基準とし、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において緑色度が、数値がプラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。またb*は0を基準とし、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相が青色度を、プラスになる場合は黄色度を増すことを意味する。なおa*b*ともに0の場合は、色味がない無彩色となる。そしてC*は彩度を表し、下記式によって求めることができる。
Figure 0004822991
明度L*は、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相が白色度が、その数値が低下するにしたがい黒色度が増すことを意味する。彩度C*は、この値が大きいほど被測定物の色が鮮やかであることを示す。一方、C*の値が小さい場合は、色味がない無彩色に近いことを示す。L*値およびC*値は、「CM512m−3」(ミノルタ社製変角色差計)を用いて測定することができる。
第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜について、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上でのC*値が30〜100であるということは、第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜が鮮やかな色彩を有していることを示している。なお、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上においてC*値を測定している理由は、上記の通り第2水性ベース塗料組成物は、いわゆるカラークリヤーといわれるような隠ぺい力の低い塗料組成物であるため、塗膜を形成してC*値を測定する場合においては、その塗膜の下地がC*値に影響することとなる。本発明においては、C*値を測定する場合の下地の影響を取り除くことを目的として、硬化第2ベース塗膜のC*値を測定する場合の下地を白色にすることとした。なお下地に用いられる「L*値が90であるホワイトソリッド塗膜」とは、いわゆるフリップフロップ性を有しない白色塗膜であることを示している。
第2水性ベース塗料組成物は、この塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜の白黒隠ぺい膜厚が100μm以上であり、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上における硬化第2ベース塗膜のC*値が30〜100であることから、カラークリヤーといわれるような隠ぺい力の低い塗料組成物であって鮮やかな色彩を有することがわかる。この硬化第2ベース塗膜のC*値が100を超える場合は、顔料質量濃度が高い状態となり、これにより隠ぺい力も高くなってしまうため、積層塗膜の意匠性が劣ることとなるおそれがある。また硬化第2ベース塗膜のC*値が30を下まわる場合は、積層塗膜の彩度が低くなり、積層塗膜の意匠性が劣ることとなるおそれがある。
第2クリヤー塗料組成物
第2クリヤー塗料組成物として、酸エポキシ硬化系クリヤー塗料組成物が好ましく用いられる。この酸エポキシ硬化系クリヤー塗料組成物は、酸無水物基含有アクリル樹脂(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)及び水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)を含有する。
上記酸無水物基含有アクリル樹脂(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)を含有することにより本発明の第2クリヤー塗料組成物が得られる。特に、耐酸性に優れた塗膜を形成する高固形分の第2クリヤー塗料組成物が得られる。
酸無水物基含有アクリル樹脂(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)の配合は、当業者に周知の量および方法で行いうる。
上記酸無水物基含有アクリル樹脂(a)及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に含有されるカルボキシル基と、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)に含有されるエポキシ基とのモル比が1/1.4〜1/0.6、好ましくは1/1.2〜1/0.8となり、かつ酸無水物基含有アクリル樹脂(a)に含有されるカルボキシル基とカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)に含有される水酸基とのモル比が1/2.0〜1/0.5、より好ましくは1/1.5〜1/0.7となるような量で配合を行うことが好ましい。
酸無水物基含有アクリル樹脂(a)及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に含有されるカルボキシル基と水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)に含有されるエポキシ基との割合が1/0.6を上回ると得られる塗料組成物の硬化性が低下するおそれがあり、1/1.4を下回ると塗膜が黄変するおそれがある。酸無水物基含有アクリル樹脂(a)に含有される酸無水物基とカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)及び水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)に含有される水酸基とのモル比が1/0.5を上回ると得られる塗料組成物の硬化性が低下するおそれがあり、1/2.0を下回ると水酸基が過剰となるので耐水性が低下するおそれがある。この配合量はそれぞれのポリマーの水酸基価、酸価およびエポキシ当量から当業者に周知の計算法により計算することができる。
このようにして得られる本発明の第2クリヤー塗料組成物の硬化機構は、まず、加熱により酸無水物基含有アクリル樹脂(a)中の酸無水物基はカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)中に含有される水酸基と反応することにより架橋点を形成し、再度カルボキシル基を形成する。このカルボキシル基およびカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に存在するカルボキシル基は、水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)中に存在するエポキシ基と反応することにより架橋点を形成する。このように、3種類のポリマーが相互に反応することにより硬化が進行して高い架橋密度を提供することができる。
その他の成分
架橋密度を上げ、耐水性の向上をはかるために、本発明の塗料組成物にブロック化イソシアネートを加えてもよい。また、塗装膜の耐候性向上のために、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤等を加えても良い。更にレオロジーコントロール剤として架橋樹脂粒子や、外観の調整の為表面調整剤を添加しても良い。更にまた、粘度調整等のために希釈剤としてアルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール等)、ヒドロカーボン系、およびエステル系等の溶剤を使用しても良い。
架橋樹脂粒子を用いる場合は、本発明の第2クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の量で添加される。架橋樹脂粒子の添加量が10質量部を上回ると外観が悪化するおそれがあり、0.01質量部を下回るとレオロジーコントロール効果が得られないおそれがある。
また、本発明で用いる樹脂は酸基を官能基として有する。したがって、アミンで中和することにより、水を媒体とする水性塗料組成物とすることも可能である。
積層塗膜の形成
本発明の積層塗膜の形成方法においては、中塗り塗膜が形成された被塗物に、まず、第1水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する。第1水性ベース塗料組成物の塗装は、被塗物の形状などに応じた種々の塗装方法および塗装機を用いて塗装することができる。例えば自動車車体等に塗装する場合には、エアー静電スプレー塗装、あるいは、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機による多ステージ塗装、好ましくは2ステージが好適に用い得る。これらの塗装方法を用いることによって、意匠性をより高めることができる。
第1ベース塗膜の膜厚については、乾燥膜厚で5〜35μmとなるように塗装するのが好ましく、10〜25μmがより好ましい。第1ベース塗膜の形成後は、加熱硬化させることなく次工程の第1クリヤー塗膜の形成工程に移る。第1クリヤー塗膜を形成する前に、第1ベース塗膜に対して、加熱硬化(焼き付け)処理で用いられる温度より低い温度によるプレヒートを行なってもよい。なお本発明において「未硬化」とは、完全に硬化していない状態をいい、プレヒートが行なわれた塗膜の状態も含むものである。
こうして得られた未硬化の第1ベース塗膜の上に、次いで第1クリヤー塗料組成物がウェットオンウェットの状態で塗装される。第1クリヤー塗料組成物の塗装は、具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
第1クリヤー塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で10〜80μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。上限を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、ピンホールあるいは流れ等の不具合が起こることがある。また下限を下回ると、下地が隠ぺいできず膜切れが発生するおそれがある。
第1クリヤー塗膜を形成した後に、未硬化の第1ベース塗膜および第1クリヤー塗膜からなる2層の塗膜を、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で焼き付けることにより、これらの塗膜が硬化して第1硬化塗膜が得られることとなる(第1焼き付け工程)。焼き付け時間は焼き付け温度により変化するが、120℃〜160℃で焼き付ける場合は10〜30分程であるのが好ましい。
本発明においては、こうして得られる第1硬化塗膜の25°L*値が60〜100であることを特徴とする。L*上記定義と同様である。25°L*値は、測定対象である塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、25°となる角度から光源を照射して受光されるL*値を意味する。下記する45°L*値、75°L*値も同様に、測定対象である塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ45°、75°となる角度から光源を照射して受光されるL*値を意味する。図2は、これらの光源照射角度を概略説明する図である。
第1硬化塗膜の25°L*値が100を超える場合は、第1硬化塗膜の反射強度が高くなり、得られる積層塗膜の膜厚変動による色相変動が大きくなるという不具合がある。また25°L*値が60を下まわる場合は、ハイライトの明度が低くなり、フリップフロップ性も低くなるため、意匠的な面白みがなくなるという不具合がある。
本発明においては、こうして得られる第1硬化塗膜のC*平均値が10以下であることも特徴とする。なおC*は上記定義と同様である。またC*平均値は、測定対象である塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ25°、45°、75°となる角度から光源を照射して測定されるC*値を測定し、こうして得られた測定値の平均値を算出することにより求めた値である。なお、このC*の測定は、ミノルタ512m−3を用いて測定することができる。
第1硬化塗膜のC*平均値は好ましくは1〜10である。C*平均値が10を超える場合は、第1硬化塗膜が反射率ピークを有することとなり、これにより積層塗膜における第2ベース塗膜の膜厚変動時の色相変動が大きくなるという不具合がある。
本発明においては、第1硬化塗膜のフリップフロップ値が4以上であることも特徴とする。ここでフリップフロップ値とは、光源の入射角度および受光部の方向により塗膜の明度が変化する性質(フリップフロップ性)を表す数値であり、25°L*/75°L*(25°におけるL*値/75°におけるL*値)より求めるこのフリップフロップ値が大きい程、フリップフロップ性が高いことを示す。第1硬化塗膜のフリップフロップ値は、好ましくは4〜10である。このフリップフロップ値が下限を下まわる場合は、見る角度による明度変化の乏しい意匠となり好ましくない。
このフリップフロップ値は、塗膜をハイライト方向から見たときとシェード方向から見たときの明るさ感の差を数値で示すことができる指標である。このフリップフロップ値(比)が大きいほど明度差が大きく、見た目にメリハリのついた色であることを示す。例えば自動車などの被塗物に、フリップフロップ性が高い塗膜を形成することによって、被塗物のボディー形状をより強調させることができる。
本発明において形成される第1硬化塗膜は、25°L*値が60〜100であり、フリップフロップ値が4以上であることから、高いフリップフロップ性を有しておりかつ明度が低い塗膜、言い換えると明度が低いメタリック塗膜、であるということができる。この第1硬化塗膜はまたC*平均値が10以下であることから、ほとんど色味を有しない、無彩色(グレー)に近い塗膜であるということもできる。
本発明の積層塗膜の形成方法においては、こうして得られた第1硬化塗膜の上に、第2水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する。第2水性ベース塗料組成物の塗装は、第1水性ベース塗料組成物と同様に塗装することができる。第2ベース塗膜の膜厚については、乾燥膜厚で5〜35μmとなるように塗装するのが好ましく、10〜25μmがより好ましい。第2ベース塗膜の形成後は、加熱硬化させることなく次工程の第2クリヤー塗膜の形成工程に移る。第2クリヤー塗膜を形成する前に、第2ベース塗膜に対して、加熱硬化(焼き付け)処理で用いられる温度より低い温度によるプレヒートを行なってもよい。
こうして得られた未硬化の第2ベース塗膜の上に、次いで第2クリヤー塗料組成物がウェットオンウェットの状態で塗装される。第2クリヤー塗料組成物の塗装は、具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
第2クリヤー塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で10〜80μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。上限を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、ピンホールあるいは流れ等の不具合が起こることがある。また下限を下回ると、下地が隠ぺいできず膜切れが発生するおそれがある。
第2クリヤー塗膜を形成した後に、未硬化の第2ベース塗膜および第2クリヤー塗膜からなる2層の塗膜を、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で焼き付けることにより、これらの塗膜が硬化して、積層塗膜が得られることとなる(第2焼き付け工程)。焼き付け時間は焼き付け温度により変化するが、120℃〜160℃で焼き付ける場合は10〜30分程であるのが好ましい。
こうして得られる積層塗膜は、フリップフロップ値が1.5以上であるのが好ましく、1.5〜10であるのがより好ましい。この積層塗膜のフリップフロップ値は、第1硬化塗膜のフリップフロップ値と同様に、25°L*/75°L*(25°におけるL*値/75°におけるL*値)より求めるこの積層塗膜のフリップフロップ値が1.5を下まわる場合は、見る角度による明度変化の乏しい意匠の積層塗膜となり、好ましくない。
本発明における積層塗膜はさらに、75°における明度に対する彩度の比率(C*/L*)が3以上であるのが好ましい。この75°におけるC*/L*は、試料表面から垂直角度で受光する受光部に対して75°から照射した場合(いわゆるシェード)に受光される彩度C*値および明度L*値を測定し、比率を求めることにより算出する。この75°におけるC*/L*を算出することによって、塗膜の有する「深み感」を数値化することができる。75°におけるC*/L*が3以上と高い値を有するということは、シェードにおける彩度が高く、かつ明度が低いことを示している。つまり、鮮やかな濃い色であってかつ暗い色である、すなわち深み感を有する色であることを示している。この75°における明度に対する彩度の比率(C*/L*)は、3〜10であるのがより好ましい。C*/L*が3未満である場合は、シェードの受光において、暗く汚い感じであり、深み感を有さない色となるおそれがある。
なお塗膜の有する「深み感」は、一般に、低明度であって落ち着いた色でありながら、彩度の高い色によって表される色感である。通常のフリップフロップ性が高い塗膜においては、シェードでの明度(L*値)が低くなり、それに伴い彩度(C*値)も低くなる。このため、シェードでは特に、暗く汚い感じであり、深み感を有さない色と感じられることとなる。
これに対して本発明による積層塗膜は、フリップフロップ値が1.5以上と、高いフリップフロップ性を有していることから、試料表面から垂直角度で受光する受光部に対して25°から照射した場合(いわゆるハイライト)に受光する場合においては高明度かつ高彩度を呈している。そしてシェードでは、低明度かつ高彩度を呈しており、深み感のある意匠を有している。また本発明による積層塗膜においては、第2ベース塗膜の隠ぺい力が低く、かつ、L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上における硬化第2ベース塗膜のC*値が30〜100と高彩度である。つまり第2ベース塗膜は、積層塗膜の深み感を生じさせる透明感および着色感を有している。この第2ベース塗膜を有することによって、下地を視認できる半透明さを有する意匠が提供される。さらに第2ベース塗膜の隠ぺい力が低いことによって、第2ベース塗膜の膜厚変動による色相変動が小さいという利点も有している。
本発明における積層塗膜は、このような深み感を有する濃色を有している。本発明の積層塗膜の色の例として、例えば、レッド、ブルー、グリーンなどといった、明度が低くかつ高彩度である色が挙げられる。この中でも、レッド系の積層塗膜であるのがより好ましい。
本発明の積層塗膜の形成方法によって得られる積層塗膜は、上記のように深み感のある意匠性に優れた塗膜であることに加えて、膜厚変動による色相変動が小さいという優れた利点をも有している。そしてこれは、第1硬化塗膜がほぼ無彩色であることから、可視波長領域での反射率が一定であり、第2硬化塗膜との色相のずれがなく、更に第1硬化塗膜の25°L*値およびフリップフロップ値が上記特定の範囲であって、かつ硬化第2ベース塗膜の白黒隠ぺい膜厚およびC*もまた上記特定の範囲であることによって達成されている。本発明によって、深み感のある意匠性に優れた塗膜を、膜厚による色相変動が小さい状態で形成することができる。本発明の積層塗膜の形成方法は、自動車の車体などのような、大きくかつ複雑な形状を有する被塗物の塗装に特に適している。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1 第1水性ベース塗料組成物(実施例1)の調製
日本ペイント社製アクリルエマルション(平均粒子径150nm、不揮発分20%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g)を236部、
ジメチルエタノールアミン10質量%水溶液を10部、
日本ペイント社製水溶性アクリル樹脂(不揮発分は30.0%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g)を28.3部、
プライムポールPX−1000(三洋化成工業社製2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、水酸基価278mgKOH/g、一級/二級水酸基価比=63/37、不揮発分100%)を8.6部、
サイメル204(三井サイテック社製混合アルキル化型メラミン樹脂、不揮発分100%)を21.5部、
ネオレッツR−9603(アビシア製ポリカーポネート系ウレタンエマルション樹脂、不揮発分33%)を26部、そして、
ラウリルアシッドフォスフェート0.2部、
アルペースト91−0562(東洋アルミニウム社製アルミニウム製光輝性顔料)を10.0部、
デグサカーボンFW−200P(デグサジャパン株式会社製カーボン黒顔料)を0.5部
添加し、均一分散することにより第1水性ベース塗料組成物(実施例1)を得た。表1は、第1水性ベース塗料組成物の調製に用いた顔料、顔料質量濃度(PWC%)、そしてこの第1水性ベース塗料組成物により得られる第1ベース塗膜の色相(目視評価)および白黒隠ぺい膜厚を表す。白黒隠ぺい膜厚の測定方法は下記方法と同様である。
製造例2 第1水性ベース塗料組成物(実施例2)の調製
表1の実施例2に示す顔料を表中記載の顔料質量濃度(PWC%)となるように混合すること以外は、製造例1と同様にして、第1水性ベース塗料組成物(実施例2)を調製した。
比較製造例1 第1水性ベース塗料組成物(比較例1)の調製
表1の比較例1に示す顔料を表中記載の顔料質量濃度(PWC%)となるように混合すること以外は、製造例1と同様にして、第1水性ベース塗料組成物(比較例1)を調製した。
比較製造例2 第1水性ベース塗料組成物(比較例2)の調製
表1の比較例2に示す顔料を表中記載の顔料質量濃度(PWC%)となるように混合すること以外は、製造例1と同様にして、第1水性ベース塗料組成物(比較例2)を調製した。
比較製造例3 第1水性ベース塗料組成物(比較例3)の調製
表1の比較例3に示す顔料を表中記載の顔料質量濃度(PWC%)となるように混合すること以外は、製造例1と同様にして、第1水性ベース塗料組成物(比較例3)を調製した。
比較製造例4 第1水性ベース塗料組成物(比較例4)の調製
表1の比較例4に示す顔料を表中記載の顔料質量濃度(PWC%)となるように混合すること以外は、製造例1と同様にして、第1水性ベース塗料組成物(比較例4)を調製した。
Figure 0004822991

・アルミペースト91−0562:東洋アルミニウム(株)社製、光輝性顔料であるアルミニウム顔料
・デグサカーボンFW−200P:デグサジャパン(株)社製、カーボンブラック
・ホスタパームレッドP2GL :クラリアントジャパン(株)社製、ペリレンレッド
・シアニンブルーG−314 :山陽色素(株)社製、シアニンブルー
・タイペークCR−97 :石原産業(株)社製、酸化チタン顔料
製造例3 第2水性ベース塗料組成物の調製(1)
製造例1の第1水性ベース塗料配合の樹脂組成にて、PWC=1.5質量%となるように、ホスタパームレッド P2GL(クラリアントジャパン(株)社製、ペリレンレッド)を混合することにより、第2水性ベース塗料組成物(1)を調製した。顔料質量濃度(PWC)は1.5質量%であった。
こうして得られた第2水性ベース塗料組成物の白黒隠ぺい膜厚を測定したところ、最大膜厚300μmを超えることが確認された。またC*値は70であった。なお、白黒隠ぺい膜厚の測定およびC*値の測定は以下の通り行った。
白黒隠ぺい膜厚の測定
隠ぺい率測定紙(規格:JIS K5600)が有する2×2cm角の白黒の市松模様上に、あらかじめ20秒/20℃でフォードカップNo.4に希釈した第2水性ベース塗料組成物を、乾燥膜厚が20〜1000μmの膜厚勾配ができるようにスプレー塗装し、7分間セッティングした後、140℃で20分間焼き付け硬化させた。放冷した後に、目視により、白黒の市松模様が透けて見えない限界の塗膜部位を判定し、その部位の膜厚を実測し、この膜厚を白黒隠ぺい膜厚とした。
C*値の測定
L*値が90であるホワイトソリッド塗膜上に、あらかじめ20秒/20℃でフォードカップNo.4に希釈した第2水性ベース塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、140℃で20分間焼き付け硬化させた。「CM512m−3」(ミノルタ社製変角色差計)を用いて、得られた塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ25°、45°、75°となる角度から光源を照射して測定されるC*値を測定し、こうして得られた測定値の平均値を算出することによりC*値を求めた。
比較製造例5 第2水性ベース塗料組成物(2)の調製
製造例1の第1水性ベース塗料配合の樹脂組成にて、PWC=20質量%となるように、ホスタパームレッド P2GL(クラリアントジャパン(株)社製、ペリレンレッド)を混合することにより、第2水性ベース塗料組成物(2)を調製した。顔料質量濃度(PWC)は20質量%であった。
こうして得られた第2水性ベース塗料組成物の白黒隠ぺい膜厚を上記と同様に測定したところ、最大膜厚は80μmであった。またC*値は85であった。
実施例1
リン酸亜鉛処理した厚さ0.8cm、20cm×30cmのSPCC−SD鋼板(ダル鋼板)に、カチオン電着塗料「パワートップU−50」(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた。次に、得られた電着塗膜上に、グレー色の中塗り塗料「オルガP−2グレー」(日本ペイント社製、ポリエステル・メラミン樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間焼き付けて、中塗り塗膜が形成された被塗物を作成した。
得られた中塗り塗膜上に、製造例1の第1水性ベース塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるように、カートリッジベル(ABB社製回転霧化塗装機)により塗装した。80°で3分間プレヒートした後、更にウエットオンウエットで、第1クリヤー塗料「SPO−171」(日本ペイント社製、アクリル/メラミン樹脂系溶剤型塗料組成物)を、乾燥膜厚が30μmとなるように、μμベルにより回転霧化型静電塗装した。7分間のセッテイングの後、140℃で30分間焼き付けて、第1硬化塗膜を得た。
「CM512m−3」(ミノルタ社製変角色差計)を用いて、得られた第1硬化塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ25°、45°、75°となる角度から光源を照射して測定されるL*値およびC*値を測定した。測定結果を表2に示す。次いで、得られた測定値から、フリップフロップ値およびC*平均値を算出した。得られた値を表3に示す。
フリップフロップ値(F/F値)=25°L*値/75°L*値
C*平均値=(25℃*値+45℃*値+75℃*値)/3
得られた第1硬化塗膜の上に、製造例3の第2水性ベース塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるように、カートリッジベル(ABB社製回転霧化塗装機)により塗装した。80°で3分間プレヒートした後、更にウエットオンウエットで、第2クリヤー塗料「マックフロー O−1810クリヤー」(日本ペイント社製、酸・エポキシ硬化型アクリル樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が35μmとなるように、μμベルにより回転霧化型静電塗装した。塗装後、140℃で30分間焼き付けて、積層塗膜を得た。なお用いた第2水性ベスト量組成物の物性値などを表2に示す。
「CM512m−3」(ミノルタ社製変角色差計)を用いて、得られた積層塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ25°、45°、75°となる角度から光源を照射して測定されるL*値およびC*値を測定した。測定結果を表3に示す。次いで、得られた測定値から、フリップフロップ値および75°C*値/75°L*値を算出した。得られた値を表3に示す。
フリップフロップ値(F/F値)=25°L*値/75°L*値
75°C*値/75°L*値=75°におけるC*値/75°におけるL*値
目視意匠性評価
得られた積層塗膜の外観について、下記基準で目視評価を行った。評価結果を表3に示す。
○:濡れたような艶および深み感を有し、高級感が感じられる塗膜である
△:深み感がやや少ない塗膜である
×:深み感が全く感じられない塗膜である
膜厚変動に対する色相変動評価
上記と同様にして得られた第1硬化塗膜の上に、第2水性ベース塗料組成物を、乾燥膜厚がそれぞれ13mμおよび17μmとなるように塗装し、次いで第2クリヤー塗料組成物を塗装した後に140℃で20分間焼き付けて、積層塗膜を調製した。なお塗装方法等は、膜厚が異なること以外は上記と同様である。
こうして得られた2つの積層塗膜の色相について、色彩色差計(ミノルタCR300、ミノルタ社製)を用いてL*値、a*値、b*値を測色し、△Eを求めた。得られた結果を表4に示す。これらの数値は、数値間の差が小さい程、色差が小さく色相の変化が少ない事を示す。なお△Eは、下記式によって求められる。式中、L*、a*及びb*は、上記と同様である。この△Eの値が1を超える場合は、明らかな色相の変化が確認できる状態である。
Figure 0004822991
なお、表4に記載した△Eは、塗膜に対して垂直位置にある受光部を0°とした場合に、それぞれ25°、45°、75°となる角度から光源を照射してL*値、a*値、b*値をそれぞれ測色し、上記式より各角度における△Eを求め、その後これらの△Eの平均値を求めることにより算出している。
第2ベース塗膜の膜厚の変動(13μm/17μm)に対する、積層塗膜の目視違和感評価
上記により得られた、第2ベース塗膜の膜厚がそれぞれ13mμおよび17μmとなるように塗装して得られた積層塗膜について、第2ベース塗膜の膜厚の変動(13μm/17μm)に対する積層塗膜の外観を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
○:第2ベース塗膜の膜厚の変動があっても、ほぼ同じ色相と判断される
△:膜厚の変動によりやや違和感が感じられる
×:膜厚の変動により違和感が感じられる
実施例2
第1水性ベース塗料組成物として、製造例2により得られた塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層塗膜を調製し、同様の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
比較例1
第1水性ベース塗料組成物として、比較製造例1により得られた塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層塗膜を調製し、同様の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
比較例2
第1水性ベース塗料組成物として、比較製造例2により得られた塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層塗膜を調製し、同様の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
比較例3
第1水性ベース塗料組成物として、比較製造例3により得られた塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層塗膜を調製し、同様の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
比較例4
第1水性ベース塗料組成物として、比較製造例4により得られた塗料組成物を用い、そして第2水性ベース塗料組成物として比較製造例5により得られた塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層塗膜を調製し、同様の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
Figure 0004822991
Figure 0004822991
Figure 0004822991
表2に示されるように、第1硬化塗膜の25°L*が60〜100、F/F値4〜10およびC平均値1〜10であって、第2水性ベース塗料組成物として顔料質量濃度が0.1〜10質量%であって、かつ、光輝性顔料を含まないカラークリヤー塗料組成物を用いた場合は、積層塗膜のF/F値1.5以上を確保でき、かつ、75°(シェード)のC*/L*(明度に対する彩度比率)が3以上である、鮮やかな濃い色であってかつ暗い色である、深み感を有する積層塗膜を得ることができた。さらにこうして得られた積層塗膜の、(第2水性ベース塗料組成物による塗膜の)膜厚変動に対する色相変動評価については、△Eが1.0以下であり、膜厚が13〜17μmに変動した場合であっても高い色相安定性を有していることが確認された。
一方、比較例1により得られた積層塗膜は、F/F値が低く、フリップフロップ性を有しない、深み感のない積層塗膜であった。比較例2においては、硬化第1塗膜のC*平均値が高く、そして積層塗膜についてはL*値に対してC*値が高いものであった。そして比較例2により得られた積層塗膜は、膜厚変動に対する色相変動が大きいものであった。比較例3においては、硬化第1塗膜および積層塗膜のL*値が共に高く、実施例により得られた積層塗膜と比べて深み感に劣る塗膜であった。比較例4は、第2ベース塗膜の隠ぺい性が高い場合における積層塗膜である。この積層塗膜は、第2ベース塗膜の膜厚変動に関しての評価は良好である一方、第2ベース塗膜によって第1ベース塗膜のフリップフロップ性が隠ぺいされてしまっており、積層塗膜としての意匠は劣っている。
本発明により、深み感のある意匠性に優れた塗膜を、膜厚による色相変動が小さい状態で形成することができる。本発明の積層塗膜の形成方法は、自動車の車体などのような、大きくかつ複雑な形状を有する被塗物の工業的塗装に特に適している。
本発明の方法により形成される積層塗膜の一例を示す断面図である。 光源照射角度を概略説明する図である。
符号の説明
1…積層塗膜、3…第2クリヤー塗膜、5…第2ベース塗膜、7…第1クリヤー塗膜、9…第1ベース塗膜、11…中塗り塗膜、13…第1硬化塗膜、15…被塗物。

Claims (3)

  1. 硬化中塗り塗膜が形成された被塗物に、第1水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程、
    得られた第1ベース塗膜上にウエットオンウエットで第1クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第1クリヤー塗膜を形成する工程、
    得られた未硬化の第1ベース塗膜および第1クリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化を行い、第1硬化塗膜を得る、第1焼き付け工程、
    得られた第1硬化塗膜の上に第2水性ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程、
    得られた第2ベース塗膜上にウエットオンウエットで第2クリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化の第2クリヤー塗膜を形成する工程、および
    得られた未硬化の第2ベース塗膜および第2クリヤー塗料組成物を同時に焼き付け硬化を行う、第2焼き付け工程、
    を包含する、積層塗膜の形成方法であって、
    該第1水性ベース塗料組成物は、光輝性顔料を顔料質量濃度(PWC)で5〜25質量%含有し、
    形成された第1硬化塗膜は、25°L*値が60〜100、25°L*/75°L*であるフリップフロップ値が4以上、およびC*平均値が10以下である塗膜であり、
    該第2水性ベース塗料組成物は、顔料質量濃度(PWC)が0.01〜10質量%であって、光輝性顔料を含まない、着色塗料組成物であり、および
    該第2水性ベース塗料組成物により形成される硬化第2ベース塗膜は、白黒隠ぺい膜厚が100μm以上であり、およびL*値が90であるホワイトソリッド塗膜上における硬化第2ベース塗膜のC*値が30〜100である、
    積層塗膜の形成方法。
  2. 前記請求項1の方法で得られた積層塗膜は、25°L*/75°L*であるフリップフロップ値が1.5以上であり、75°における明度に対する彩度の比率(C*/L*)が3以上である高彩度レッド色を有する積層塗膜である、請求項1記載の積層塗膜の形成方法。
  3. 前記請求項1または2のいずれかに記載の形成方法により形成される積層塗膜。
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