JP4821327B2 - 発汗判定装置および発汗状態を判定するための方法 - Google Patents
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Description
また、乗員の皮膚の表面温度を用いて空調制御を行う場合には、皮膚の表面温度を正確に検出する必要がある。
しかしながら、車室内の温度が同じであったとしても、乗員が発汗しているか否かによって検出される皮膚の表面温度が異なる場合がある。
このため、検出された皮膚の表面温度を用いて車室内に吹き出す空気の温度を制御する場合には、乗員の発汗状態によって正確に車室内の空気温度を制御することができないことがあった。
これにより、たとえば夏など、汗をかいたまま車両に乗員が乗り込んだ場合であっても、発汗状態の影響を受けずに車両内の温度を制御しようとするものである。
このように、特に車両の空調制御において、乗員の発汗状態を検出することは重要であるにもかかわらず、直接乗員の発汗判定が行われていないといった問題があった。
まず第1の実施例について説明する。
なお本実施例は、発汗判定装置による乗員の発汗状態の判定結果にもとづいて、車両の空調制御装置が空調制御を行うものである。
図1に、第1の実施例の全体構成を示す。
IRセンサ10とマイクロコンピュータ11とより発汗判定装置1が構成される。
IRセンサ10は、被検温体(車両の乗員)から入射される赤外線を熱に変換する熱変換膜と、この熱変換膜により変換される熱を電力に変換する検出素子と、IRセンサ内の温度を計測するサーミスタとを備えている。
このIRセンサ10は、図2に示すように車両50内のセンターコンソール中央部に取り付けられ、図2、3に示すように、運転席側乗員30の顔領域30Fの表面温度を検出可能となっている。
マイクロコンピュータ11は、検出された運転席側乗員30の顔領域30Fの表面温度の変化率より、運転席側乗員30が発汗しているかどうかを判定する(判定手順の詳細については後述する)。
判定結果は空調制御装置へ出力され、車両内の空気温度の制御に用いられる。
図4に、発汗判定処理の流れを示し、図5に発汗時と非発汗時の表面温度変化率を示す。
本処理は、車両50の電源がON(イグニッションがON、または空調装置がON)となったときに開始される。
ステップ100において、以降の処理の実行に使用するカウンタやフラグなどを初期化する。
ステップ101において、IRセンサ10から、IRセンサ10が検出した運転席側乗員30の顔領域30F表面の熱エネルギーに相当する出力値を取得し、ステップ102においてIRセンサ10を構成するサーミスタからの温度値を取得する。
この温度値が、顔領域30F表面の熱エネルギーに相当する出力値を温度に変換する際の基準温度となる。
ステップ104において、ステップ103で算出した顔表面温度TFを用いて所定時間(たとえば、10秒)あたりの顔表面温度変化率ΔTF(ΔTFa、ΔTFb)を算出する。
この分岐処理は、顔表面温度変化率ΔTFが所定値Th1(たとえば0.5)よりも大きいかどうかを判断するものであり、顔表面温度変化率ΔTFが所定値Th1よりも大きい場合にはステップ106へ進み、そうでない場合にはステップ109へ進む。
なお、この分岐処理に用いる所定値Th1は、車内温度と車外温度との差に応じて可変としてもよく、たとえば、車内温度<車外温度、であって車内温度と車外温度の差が大きければ所定値Th1を大きくしたり、車内温度と車外温度の差が小さければ所定値Th1を小さくしたりすることもできる。
ここで、発汗判定の原理について説明する。
乗員の皮膚の温度は、車両内の空気の自然な流れにより変化する。
図5に示すように、乗員が発汗しているときと、発汗していないときとでは、皮膚の表面温度の温度変化率が異なり、発汗しているときには顔表面温度変化率ΔTFbが大きく、発汗していないときには顔表面温度変化率ΔTF1aが小さい。
したがって、運転席側乗員30の皮膚の表面温度変化率ΔTFにもとづいて、運転席側乗員30が発汗しているかどうかを判定することができる。
ステップ107において、ステップ106または後述のステップ109における判定結果を空調制御装置へ出力する。
ステップ108において、空調装置の電源がOFFとなったかどうかを判断する分岐処理を行い、電源がOFFである場合には処理を終了し、OFFで無い場合には、ステップ101へ戻り上述の処理を繰り返す。
なお本実施例において、ステップ101〜103が本発明における表面温度検出手段を構成し、ステップ104〜106およびステップ109が本発明における発汗判定手段を構成する。
なお本実施例は、乗員の発汗状態を判定する発汗判定装置を車両の空調制御装置内に組み込んだものであり、より正確に発汗状態を検出することができるものである。
図6に、第2の実施例の全体構成を示す。
IRセンサ10、マイクロコンピュータ11A、吹き出し口位置制御部12、吹き出し風温制御部13、吹き出し風量制御部14、吹き出し風向制御部15より空調制御装置2が構成される。
IRセンサ10は、第1の実施例におけるIRセンサ10と同じ構成、および同じ取り付け位置(図2、3参照)であるため説明を省略する。
マイクロコンピュータ11Aは、IRセンサ10より出力された被検温体(運転席側乗員30)の熱エネルギーに相当する出力値と、そのときのIRセンサ10内の温度とにもとづいて、運転席側乗員30の顔領域30Fの表面温度を算出する。
吹き出し口位置制御部12は、空調制御装置内に備えられた吹き出し口を決定するモードドア位置を制御し、吹き出し風温制御部13は空調制御装置内に備えられた吹き出し風温を決定するエアミックスダンパ開度を制御する。また吹き出し風量制御部14は、吹き出し風量を決定するブロアモータを制御し、吹き出し風向制御部15は、空調風の吹き出し風向を決定するルーバーを制御する。
図7の(a)、(b)に示されるように、運転席側乗員30に空調風が当たっている場合における非発汗時と発汗時の顔表面温度変化率の差(ΔTF1aとΔTF1bの差)は、運転席側乗員30に空調風が当たっていない場合における非発汗時と発汗時の顔表面温度変化率の差(ΔTF2aとΔTF2bの差)よりも大きくなる。
したがって、運転席側乗員30に空調風を当てて表面温度の変化率を検出することにより、IRセンサ10の検出精度にばらつきがあったとしても、運転席側乗員30が発汗しているかどうかを正確に判定することができる。
マイクロコンピュータ11Aは、運転席側乗員30に空調風を当てることによって発汗時と非発汗時とで差異が大きくなった顔の表面温度の変化率にもとづいて、運転席側乗員30が発汗しているかどうかの判定を行い、該判定結果にもとづいて車両の空調制御を行う。
図8に、発汗判定処理の流れを示す。
本処理は、車両50の電源がON(イグニッションがON、または空調装置がON)となったときに開始される。
ステップ200において、以降の処理の実行に使用するタイマーやカウンタ、フラグなどを初期化する。
ステップ201において、今回の発汗判定処理が開始された直後であるかどうかについての分岐処理を行う。
発汗判定処理が開始されてから所定時間以内(たとえば、10秒)である場合にはステップ216へ進み、そうでない場合にはステップ202へ進む。
なお、発汗判定処理が開始された直後である場合には、乗員の顔に風を当てて発汗判定を行い易くする制御が行われていないため、ステップ216において乗員の顔に風を当てる制御を行う。
また、この運転席側乗員30の顔に風を当てる制御は所定時間のみ行われる。
乗員(運転席側乗員30)が乗り込んでから(エンジンの始動後、一旦車外に出た乗員が再度車両に乗り込んでから)所定時間以内(たとえば、10秒)である場合にはステップ216へ進み、そうでない場合にはステップ203へ進む。
ステップ203において、IRセンサ10から、運転席側乗員30の顔領域30F表面の熱エネルギーに相当する出力値を取得し、ステップ204においてIRセンサ10を構成するサーミスタからの温度値を基準温度として取得する。
ステップ206において、吹き出し口位置制御部12、吹き出し風量制御部14、吹き出し風向制御部15より、空調風の吹き出し口位置情報、空調風が吹き出されているかどうかを示す空調風吹き出し情報、吹き出し口に取り付けられたルーバーの吹き出し方向情報を取得する。
顔領域30Fに風が当たっている場合にはステップ208へ進み、当たっていない場合にはステップ213へ進む。
ステップ208において、ステップ205で算出した顔表面温度TFを用いて所定時間(たとえば、10秒)あたりの顔表面温度変化率ΔTF1(ΔTF1a、ΔTF1b)を算出し、該顔表面温度変化率ΔTF1をマイクロコンピュータ11A内の図示しないメモリに記憶する。なお、このメモリに記憶される顔表面温度変化率ΔTF1は、最新のもののみが記憶されている。
このステップ208における顔表面温度変化率ΔTF1の算出処理において、運転席側乗員30の顔に風が当たっているため、運転席側乗員30が発汗していた場合には図7の(b)に示すように顔表面温度変化率は大きく(ΔTF1b)なり、発汗していない場合には図7の(b)に示すように顔表面温度変化率は小さく(ΔTF1a)なる。
このステップ213における顔表面温度変化率ΔTF2の算出処理において、運転席側乗員30が発汗していた場合には図7の(a)に示すように顔表面温度変化率は大きく(ΔTF2b)なり、発汗していない場合には図7の(a)に示すように顔表面温度変化率は小さく(ΔTF2a)なる。
顔表面温度変化率ΔTF2が、所定値Th2と所定値Th3の間である場合には、ステップ216へ進み、そうでない場合にはステップ209へ進む。
そこで、このように発汗状態の判断がつきにくい場合には後述のステップ216へ進み、乗員の顔に風を当てる制御を行う。
一方、顔表面温度変化率ΔTF2が、所定値Th2と所定値Th3の間で無い場合には、乗員は非発汗状態であるかまたは発汗状態であるかを顔表面温度変化率ΔTF2の値より正確に判定することができる。
具体的には、まず乗員が発汗した状態で車両に乗り込んだ場合、乗車直後に乗員の顔に風が当たっている状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF1bは図7の(b)に示すように大きな値となる。その後、運転席側乗員30の顔に風を当てる制御が終了して乗員の顔に風が当たって無い状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF2bは、乗車直後に乗員の顔に風が当たっている状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF1bと比較して図7の(a)に示すように小さな値となる。
また乗員が非発汗状態で車両に乗り込んだ場合、乗車直後に乗員の顔に風が当たっている状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF1aは図7の(b)に示すように小さな値となる。その後、運転席側乗員30の顔に風を当てる制御が終了して乗員の顔に風が当たって無い状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF2aは、図7の(a)に示すように乗車直後に乗員の顔に風が当たっている状態で算出された顔表面温度変化率ΔTF1aに近い値となる。
このように、風が当たっているときと当たっていないときの顔表面温度変化率の比にもとづいて発汗状態を判定することにより、乗員の個人差(風が当たると冷えやすい場合など)によって顔表面温度変化率が異なる場合であっても、個人差に応じて発汗状態の判定を行うことができる。
その後、ステップ212において、空調装置の電源がOFFとなったかどうかを判断する分岐処理を行い、電源がOFFである場合には処理を終了し、OFFで無い場合には、ステップ202へ戻り上述の処理を繰り返す。
この制御は、吹き出し口位置制御部12に対して乗員の顔に向けて風を吹き出し可能な吹き出し口を選択する旨の指示、吹き出し風量制御部14に対して風を吹き出す指示、および、吹き出し風向制御部15に対して運転席側乗員30の顔領域30Fに風が当たるようにルーバーを制御するよう指示を出す。
これにより、運転席側乗員30が発汗状態である場合には顔表面温度変化率が大きくなり、非発汗時には顔表面温度変化率があまり変化しないこととなる。
風を乗員の顔に当てた場合の顔表面温度変化率ΔTF1は、発汗時には大きな値(ΔTF1b)となるため、該顔表面温度変化率ΔTF1bにもとづいて乗員の発汗状態を容易に判断することができる。
なお本実施例において、ステップ203〜205が本発明における表面温度検出手段を構成し、ステップ206〜210、213〜215が本発明における発汗判定手段を構成する。またステップ216が本発明における風吹出手段を構成する。
空調制御装置2の発汗判定処理が開始された直後、車両に乗員が乗り込んだ直後、および顔表面温度変化率が小さく発汗判定が困難である場合に、乗員の顔に風を当てることにより、顔表面温度変化率にもとづいた発汗判定を容易に行うことができる。
本実施形態においては、顔の表面温度変化率に基づいた発汗判定を行いやすくするために、顔に風を当てる場合と当てない場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば乗員の顔に風を当てる際の湿度をコントロールして、湿度の違いによる表面温度変化率の差異にもとづいて判定するようにしてもよい。さらには、顔に風を当てる場合の風量を所定パターンで変えて、風量の違いによる表面温度変化率の差異にもとづいて判定するようにしてもよい。
また、発汗状態を判定するために表面温度を計測する部位として運転席側乗員30の顔領域30Fを用いたが、顔領域30F以外にも手などの表面温度を計測してもよい。
なお、第2の実施例では運転席側乗員30の顔に風が当たっている場合の顔表面温度変化率ΔTF1と風が当たっていない場合の顔表面温度変化率ΔTF2とを用いて、個人差に応じた発汗状態の判定を行うものとしたが、個人差を無視できる場合には、第1の実施例と同様に、風を当てることによって変化率が大きくなった顔表面温度変化率ΔTF1と所定値とを比較することによって、乗員の発汗状態を判定することもできる。
2 空調制御装置
10 IRセンサ
11、11A マイクロコンピュータ
12 吹き出し口位置制御部
13 吹き出し風温制御部
14 吹き出し風量制御部
15 吹き出し風向制御部
30 運転席側乗員
30F 顔領域
50 車両
Claims (7)
- 車室内の乗員の発汗状態を判定する発汗判定装置であって、
前記乗員の皮膚の表面温度を非接触で検出する表面温度検出手段と、
前記乗員が発汗しているかどうかを判定する発汗判定手段と、
前記乗員の上半身に向けて風を吹き出す風吹出手段と、を備え、
前記発汗判定手段は、前記表面温度検出手段によって検出された乗員の皮膚温度の低下率を算出し、該算出した低下率が所定値以上の場合に前記乗員が発汗状態であるものとして判定し、
前記発汗判定手段は、前記風吹出手段が前記乗員の所定部位に向けて風を吹き出している場合に、発汗判定を行い、前記風吹出手段から前記乗員の前記所定部位に向けて風が吹き出されている場合に前記表面温度検出手段によって検出された表面温度の低下率と、風が吹き出されていない場合に検出された表面温度の低下率とを比較することにより前記乗員の発汗状態を判定し、
前記所定部位は、前記表面温度検出手段によって表面温度が検出される部位であることを特徴とする発汗判定装置。 - 前記風吹出手段は、前記乗員の発汗状態を判定する処理が開始された直後、前記乗員が車両に乗り込んだ直後、前記乗員の上半身の前記所定部位の表面温度の低下率が所定範囲内である場合のうち、少なくともいずれかの場合に風を吹き出すことを特徴とする請求項1に記載の発汗判定装置。
- 前記風吹出手段は、前記乗員の発汗状態を判定する処理が開始された直後、前記乗員が車両に乗り込んだ直後、前記乗員の上半身の前記所定部位の表面温度の低下率が所定範囲内である場合のうち、少なくともいずれか一つ以上の場合に、所定時間の間、風を吹き出すことを特徴とする請求項2に記載の発汗判定装置。
- 前記乗員の前記所定部位は、乗員の顔であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の発汗判定装置。
- 前記表面温度検出手段は、前記乗員から発せられた赤外線を検出することによって前記乗員の皮膚温度を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の発汗判定装置。
- 前記発汗判定手段は、車両の外が雨天の場合には前記乗員が車両に乗り込んだ直後から所定時間の間、前記乗員の発汗状態の判定を行わないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の発汗判定装置。
- 発汗状態を判定するための方法であって、
車室内の乗員の皮膚の表面温度を非接触で検出し、該検出した表面温度の低下率を算出した後、該算出した表面温度の低下率が所定値以上かどうかを比較する比較ステップを備え、
前記比較ステップは、前記乗員の所定部位に向けて風を吹き出す風吹出ステップを含み、
前記所定部位は、表面温度が検出される部位であり、
前記比較ステップは、前記風吹出ステップにおいて前記乗員の前記所定部位に向けて風が吹き出されている場合に検出された表面温度の低下率と、風が吹き出されていない場合に検出された表面温度の低下率とを比較することを含む方法。
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