以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを、例えば4輪自動車等の車両に適用する場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図12は本発明の前提となる第1の参考技術を示している。図中、1は車両の車輪と共に回転するディスクで、該ディスク1は、図1、図3および図6等に二点鎖線で例示するように、外径寸法Rの回転円板として形成されるものである。
2は車両の非回転部分に取付けられる取付部材で、該取付部材2は、例えば鉄鋼、アルミニウム合金等の高い剛性をもった金属材料により、図8に示す如く細長い略四角形の枠状体として一体に形成されている。そして、取付部材2は、後述の一側枠板3、他側枠板5と、左,右の継枠板6,6とから高剛性の一体物(鋳造品)として成形されるものである。
3は取付部材2の一側枠板で、該一側枠板3は、例えば図3に示す如く後述の摩擦パッド16よりもディスク1の径方向内側となる位置でディスク1の周方向に延びた取付板部3Aと、該取付板部3Aの長さ方向両側からディスク1の径方向外側に向けて突出した左,右一対の突出板部3B,3Bとにより構成されている。そして、一側枠板3の取付板部3Aと各突出板部3Bとは、図8に示す如くディスク1の一側(インナ側)に位置し、該ディスク1の一側面に沿ってほぼ平行に延びるものである。
また、一側枠板3の各突出板部3Bは、図3、図6に示す如く後述するインナ側の摩擦パッド16をディスク1の周方向両側から挟む位置に配設されている。そして、突出板部3Bの突出端側には、後述の継枠板6が一体形成され、後述のパッドガイド部3Dと継枠板6との間は、ほぼ水平な面からなる平坦面部3Cとなっている。
ここで、取付板部3Aの長さ方向両側には、図6、図9に示す如く後述のパッドガイド部3D、ピン嵌合穴4Aよりもディスク1の径方向内側となる位置に左,右一対のねじ穴3A1 ,3A1 が形成されている。そして、これらのねじ穴3A1 には、固定ボルト(図示せず)が螺着され、取付部材2の取付板部3Aは、この固定ボルトにより車両の非回転部分となるナックル部(図示せず)等にディスク1のインナ側で固定されるものである。
また、左,右の突出板部3B,3Bには、平坦面部3Cよりもディスク1の径方向内側となる位置にインナ側のパッドガイド部3D,3Dが設けられ、該パッドガイド部3Dは、図9に示すように切欠き幅Wをもったコ字形状の切欠きとして形成されている。そして、このパッドガイド部3D内には、後述する摩擦パッド16(裏金17)の耳部17Aがパッドスプリング19を介してそれぞれ摺動可能に挿嵌されるものである。
また、各パッドガイド部3Dの底部側は、それぞれインナ側のトルク受部3Eを構成し、これらのインナ側のトルク受部3Eは、摩擦パッド16からの制動トルクを後述のパッドスプリング19を介して受承するものである。
4,4は取付部材2(一側枠板3)の突出板部3B,3Bに一体形成されたピンガイド用の筒状突部で、該各筒状突部4は、図2、図4および図8に示すように一側枠板3の各突出板部3Bからディスク1の軸方向外側に向けて突出する段付き筒状体として形成され、その内周側が突出板部3Bの板厚方向(ディスク1の軸方向)に延びる有底のピン嵌合穴4Aとなっている。そして、該ピン嵌合穴4A内には、後述のスライドピン13が摺動可能に挿嵌されるものである。
ここで、これらのピン嵌合穴4Aは、その全長が図2、図4に示すようにディスク1よりもインナ側となる位置に配置され、左,右のトルク受部3E,3Eに対しては、図6、図9に示すようにディスク1の周方向で隣接した位置に配置されている。また、ピン嵌合穴4Aは、パッドガイド部3Dに対して切欠き幅W(図9参照)の範囲内となる位置に配置されている。そして、ピン嵌合穴4Aの中心は、切欠き幅Wの幅中心と一致する位置に配置するのが好ましいものである。また、ピン嵌合穴4Aの底部側には、図2、図4に示す寸法T(例えば、T=2〜6mm程度)の肉厚を確保するのがよい。
5は取付部材2の他側枠板で、該他側枠板5は、図7、図8に示すようにディスク1を挟んで一側枠板3と対向する位置に配置されている。そして、他側枠板5は、ディスク1のアウタ側(他側)で後述の継枠板6,6間を一体的に連結するようにディスク1の他側面に沿ってほぼ平行に延びている。ここで、他側枠板5は、図1、図7に示す如く弓形状をなして左,右方向(ディスク1の周方向)に延びた細長い棒状の連結ビーム部5Aと、該連結ビーム部5Aの長さ方向両側からディスク1の径方向外側に向けて突出した左,右一対の突出板部5B,5Bとにより構成されている。
そして、他側枠板5の連結ビーム部5Aは、図1、図7に示すように後述の摩擦パッド16よりもディスク1の径方向内側となる位置でディスク1の周方向に延び、左,右の突出板部5B,5B間を剛性をもって一体的に連結するものである。また、他側枠板5の各突出板部5Bには、前述した一側枠板3の突出板部3Bとほぼ同様に、それぞれ平坦面部5C、アウタ側のパッドガイド部5Dおよびアウタ側のトルク受部5E等が形成されている。
6,6はディスク1の外周を跨ぐようにディスク1の軸方向に延びた左,右一対の継枠板で、該継枠板6,6は、図6、図8、図9に示すようにディスク1の外周を跨ぐ位置に配設され、ディスク1の両面に沿って互い平行に延びる一側枠板3と他側枠板5とを、その長さ方向(ディスク1の周方向)両側で一体的に連結するものである。
ここで、各継枠板6は、図6に示すようにディスク1の外周に沿って僅かに湾曲した薄肉の板体として形成され、その板厚tは、従来技術で述べた腕部の厚さに比較して1/2以下の厚さ(例えば、t=5〜10mm程度)に設定されている。これにより、ディスク1の外径寸法Rは現行品等に比較して、例えば8〜15mm程度大きくすることが可能となり、ディスク1の熱容量を増大できるものである。
7は取付部材2に摺動可能に支持されたキャリパで、該キャリパ7は、図1〜図6に示す如くディスク1の外周側を跨いで軸方向に延びるブリッジ部8と、該ブリッジ部8の一側に一体形成され、ディスク1のインナ側に配設されるインナ脚部としてのシリンダ部9と、ブリッジ部8の他側に一体形成され、ディスク1のアウタ側に配設されるアウタ脚部10とにより構成されている。
そして、このアウタ脚部10は、図1、図11に示すようにディスク1の周方向で二又状をなして離間した一対のアウタ爪部10A,10A(以下、爪部10Aという)と、該爪部10A,10A間に逆U字状をなして形成され、後述のピストン12をシリンダ部9内に取付けるため、または後述のシリンダボア9A内を加工する工具を挿入するための挿入用空所となるリセス10Bとを有している。
この場合、アウタ脚部10の爪部10A,10Aには、図1、図11に示すようにリセス10Bのうちディスク1の周方向で対向する対向面側に略L字状をなす円弧状の切込み部10C,10Cが形成され、該各切込み部10Cには、後述するアウタ側スプリング21のフック部21Dが弾性変形状態で当接(係合)されるものである。
一方、キャリパ7のシリンダ部9には、図5に示すようにシリンダボア9Aが形成され、該シリンダボア9A内には、ピストン12が摺動可能に挿嵌されている。そして、シリンダボア9Aは、例えば車両のマスタシリンダ(図示せず)からブレーキ液圧が供給されることにより、ピストン12を後述の摩擦パッド16に向けて駆動し、このときにピストン12は、摩擦パッド16をディスク1の一側面に押圧するものである。
また、キャリパ7には、図2、図3に示すようにシリンダ部9の左,右両側から略L字状に突出してディスク1の周方向に延びる一対の取付部11,11が一体に設けられている。そして、これらの取付部11には、図2、図4に示す如く後述のスライドピン13が締結ボルト14により固着して取付けられている。この場合、キャリパ7の各取付部11は、取付部材2の筒状突部4よりもインナ側となる位置まで延び、筒状突部4に対してディスク1の軸方向で対向配置されるものである。
ここで、キャリパ7は、ピストン12および後述のスライドピン13を含めた全体の重心位置Gが、例えば図2に示すようにスライドピン13の先端から寸法La となる位置に配置され、この重心位置Gは、ピン嵌合穴4Aに対する後述のスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内に収められている。
13,13はキャリパ7の各取付部11に設けられたスライドピンで、該各スライドピン13は、図2、図4に示すように基端側が締結ボルト14,14を介してシリンダ部9側の各取付部11に固定される固定端となり、先端側が自由端となって取付部材2のピン嵌合穴4A内に摺動可能に挿嵌されている。これにより、キャリパ7は、スライドピン13を介して取付部材2により摺動可能に支持されるものである。
ここで、スライドピン13は、図2、図4に示すように取付部材2のピン嵌合穴4Aに対する嵌合長Lt が設定され、ピストン12およびスライドピン13を含めたキャリパ7全体の重心位置Gは、この嵌合長Lt の範囲内に収められている。そして、この重心位置Gは、後述の摩擦パッド16が新品状態から交換時期に達するまでの間にわたって嵌合長Lt の範囲内に収められるものである。
15,15は各スライドピン13を外側から保護する保護ブーツで、該各保護ブーツ15は、例えば弾性樹脂材料等を用いて蛇腹状に形成され、取付部材2の筒状突部4とスライドピン13との間に取付けられている。そして、保護ブーツ15は、スライドピン13の基端側周囲を覆うことにより、スライドピン13とピン嵌合穴4Aとの間に雨水や塵埃等の異物が浸入するのを防ぐものである。
16,16はディスク1の両側に配置されたインナ側,アウタ側の摩擦パッドで、該各摩擦パッド16は、例えば図6、図10に示すように横長の略扇形状に形成された裏金17と、該裏金17の表面側に重ね合せるように固着して設けられた摩擦材からなるライニング18とにより構成されている。そして、各裏金17の長さ方向両端側には、図1、図6に示す如くインナ側のパッドガイド部3D、アウタ側のパッドガイド部5Dにそれぞれ対応して凸形状をなす耳部17A,17Aが突設されている。
ここで、インナ側の摩擦パッド16は、裏金17の各耳部17Aが図6に示すように後述のパッドスプリング19を介してインナ側のパッドガイド部3Dに摺動可能に挿嵌されている。また、アウタ側の摩擦パッド16は、裏金17の各耳部17Aが図1に示すように後述のパッドスプリング19を介してアウタ側のパッドガイド部5Dに摺動可能に挿嵌されている。
そして、各摩擦パッド16は、図5に示すようにディスク1の両面側に対向配置され、車両のブレーキ操作に伴ってピストン12がブレーキ液圧で押動されることにより、キャリパ7の各爪部10Aとピストン12との間でディスク1を両面から挟むように押圧され、これによって、ディスク1に制動力を付与するものである。
この場合、キャリパ7により各摩擦パッド16をディスク1に押圧したときの制動トルクは、摩擦パッド16(裏金17)の耳部17Aから取付部材2のトルク受部3E,5Eに伝えられ、取付部材2の突出板部3B,5B等でディスク1からの回転トルク(制動トルク)を受承するものである。
19,19はディスク1の周方向に離間して取付部材2に設けられた左,右一対のパッドスプリングで、該各パッドスプリング19は、ばね性を有するステンレス鋼板等を曲げ加工(プレス成形)することにより、後述のシリンダスプリング20と一体物として形成されている。
そして、パッドスプリング19は、取付部材2の各パッドガイド部3D,5Dと共にインナ側,アウタ側の摩擦パッド16に凹凸嵌合し、インナ側,アウタ側の摩擦パッド16を裏金17の各耳部17Aを介してディスク1の軸方向に摺動可能に案内する。即ち、パッドスプリング19は、インナ側,アウタ側の摩擦パッド16に凹凸嵌合して各摩擦パッド16を移動可能にガイドするガイド部を、取付部材2のパッドガイド部3D,5Dと共に構成するものである。
ここで、パッドスプリング19は、インナ側とアウタ側とで互いに離間した一対のパッド付勢部19A等を有し、該各パッド付勢部19Aは、インナ側,アウタ側の摩擦パッド16をそれぞれディスク1の径方向内側から外側に向けて弾性的に付勢する。これにより、パッドスプリング19は、ディスク1の軸方向に向けた摩擦パッド16の動き(摺動変位)を安定させ、円滑化するものである。
また、パッドスプリング19には、図4に示すように取付部材2(他側枠板5)の突出板部5Bからディスク1の軸方向外側へと屈曲して突出する突起片19B,19C等が設けられ、これらの突起片19B,19Cは、取付部材2に対してパッドスプリング19を抜止め状態に保持するものである。
20はキャリパ7のシリンダ部9を径方向外側に向けて付勢するインナ側付勢部材としてのシリンダスプリングで、該シリンダスプリング20は、パッドスプリング19に対してディスク1のインナ側に横並び状態で配置され、パッドスプリング19と一体物として形成されている。そして、シリンダスプリング20は、その下面(基端)側が図1、図6に示す如く取付部材2(一側枠板3)の平坦面部3C、筒状突部4の上側面(ディスク1の径方向外側となる部位)等に広い接触面積をもって載置されている。
また、シリンダスプリング20の先端(上面)側は、ディスク1の周方向外側から内側に向け略U字状に折返して延びるように形成されている。そして、シリンダスプリング20の先端側は、キャリパ7のシリンダ部9側に下側から弾性的に当接し、キャリパ7のシリンダ部9をディスク1の径方向外側(図4、図6中の矢示B方向)に付勢するものである。
この場合、シリンダスプリング20は、図4に示すようにピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内で、かつキャリパ7の重心位置Gとディスク1の軸方向で重なる位置に配置されている。そして、摩擦パッド16が新品状態から交換時期に達するまでの間にわたってキャリパ7の重心位置Gが後述の如く移動する場合でも、シリンダスプリング20は、その移動軌跡の範囲内に配置されるものである。
21はキャリパ7のアウタ脚部10側に設けられたアウタ側付勢部材としてのアウタ側スプリングで、該アウタ側スプリング21は、ばね性を有するステンレス鋼板等を図10に示す如く曲げ加工(プレス成形)することにより形成され、後述の固定板部21A、支持板部21B、左,右の屈曲板部21Cおよび左,右のフック部21Dにより構成されている。
即ち、アウタ側スプリング21は、その長さ方向中間部に位置しアウタ側の摩擦パッド16にカシメ等の手段で固定された固定板部21Aと、該固定板部21Aの下端側(ディスク1の径方向内側)からL字状に折曲げられ左,右方向(ディスク1の周方向)で水平となった支持板部21Bと、該支持板部21Bの左,右両側から上向き(ディスク1の径方向外側)に延設され、全体として略R字状をなすように互いに対称な形状に折曲げられた左,右一対の屈曲板部21C,21C等とにより構成されている。
ここで、アウタ側スプリング21の固定板部21Aは、摩擦パッド16の裏金17に後述のカシメ部22を介して固定され、ディスク1の周方向において裏金17の中央部となる位置に位置決めされている。また、各屈曲板部21Cの先端側には、アウタ側スプリング21の長さ方向両端部となる位置に円弧状に湾曲した左,右のフック部21D,21Dが形成され、これらのフック部21Dは、図11に示すようにキャリパ7(アウタ脚部10)の各爪部10Aに切込み部10Cを介して係合されるものである。
即ち、アウタ側スプリング21は、左,右の屈曲板部21C、21Cが図11中に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと弾性変形され、各フック部21Dが各爪部10Aの切込み部10Cに当接して掛止めされる。これにより、アウタ側スプリング21は、アウタ脚部10の各爪部10Aをディスク1の周方向外方(図11中の矢示C,C方向)へと互いに逆向きに付勢すると共に、ディスク1の径方向内側(図11中の矢示D方向)に付勢するものである。
この場合、アウタ側スプリング21は、図11中に示すように全体がアウタ脚部10のリセス10B内に配置されている。そして、アウタ側スプリング21の屈曲板部21Cは、図11中の矢示C,C方向と矢示D方向との3方向でアウタ脚部10の各爪部10Aを弾性的に付勢し、アウタ側の摩擦パッド16を介して取付部材2に対するキャリパ7(アウタ脚部10)の姿勢を安定した状態に保持するものである。
22,22はアウタ側スプリング21の固定板部21Aをアウタ側の摩擦パッド16に固定するためのカシメ部で、該各カシメ部22は、アウタ側の摩擦パッド16において図1、図10に示す如く、裏金17の裏面(ライニング18と反対側の面)側で、ディスク1の周方向の中央部となる位置に一対の突起部として形成されている。
そして、これらのカシメ部22,22は、アウタ側スプリング21の固定板部21Aをアウタ側の摩擦パッド16に対し位置合わせした状態でカシメ工具(図示せず)等を用いて塑性変形されることにより、アウタ側スプリング21の固定板部21Aを裏金17の中央部側に抜止め状態で固定するものである。
第1の参考技術によるディスクブレーキは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、車両のブレーキ操作に伴ってマスタシリンダ(図示せず)からのブレーキ液圧をキャリパ7のシリンダ部9(図5に示すシリンダボア9A)内に供給すると、シリンダ部9内のピストン12は、このときのブレーキ液圧によってディスク1の軸方向に摺動変位し、インナ側(シリンダ部9側)の摩擦パッド16をディスク1の一側面に向けて押圧する。
そして、このときにキャリパ7全体は、ピストン12による押圧反力でスライドピン13がピン嵌合穴4Aに対して図2、図4中の矢示A方向に相対変位するように、取付部材2に対してディスク1の軸方向(矢示A方向)に摺動変位し、これによって、アウタ脚部10の各爪部10Aがアウタ側の摩擦パッド16をディスク1の他側面に向けて押圧する。
このため、ディスク1はインナ側の摩擦パッド16とアウタ側の摩擦パッド16とにより両面側から強く挟持され、例えば走行中の車両に制動力を付与するものである。また、ブレーキ操作を解除したときには、ディスク1の両面から各摩擦パッド16が離間して、前記車両に対する制動力を解除することになる。
ところで、車両に制動力を付与するため、インナ側,アウタ側の摩擦パッド16をディスク1の両面に押圧したときには、ディスク1からの回転トルク(制動トルク)が各摩擦パッド16の耳部17A等を介して取付部材2のトルク受部3E,5Eに付加されると共に、キャリパ7のシリンダ部9、アウタ脚部10にも付加される。
この場合、キャリパ7のシリンダ部9側に付加される制動トルクは、取付部材2の一側枠板3に設けた筒状突部4のピン嵌合穴4Aとスライドピン13との間で受承されるので、キャリパ7のシリンダ部9等が制動トルクの影響で変形するのを、ピン嵌合穴4A内に挿嵌されたスライドピン13等によって抑えることができる。
しかし、キャリパ7のアウタ脚部10側は、図2、図4にも示す如くピン嵌合穴4A、スライドピン13からディスク1の軸方向他側(アウタ側)へと離れた位置に配置されるため、前記制動トルク等の影響でキャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の周方向等で弾性変形するように振動を繰返すことがある。
そこで、第1の参考技術では、キャリパ7のアウタ脚部10側にアウタ側スプリング21を設け、該アウタ側スプリング21によりディスク1の周方向両側(図1、図11中の矢示C,C方向)と径方向内側(矢示D方向)との3方向でアウタ脚部10の各爪部10Aを弾性的に付勢する構成としている。
これにより、キャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の周方向等で振動するのをアウタ側スプリング21で抑えることができ、ピン嵌合穴4A内に挿嵌されるスライドピン13とアウタ側スプリング21とによってキャリパ7全体を安定した支持状態に保つことができる。
また、取付部材2は、ディスク1の両面に沿って互いに平行に延びる一側枠板3、他側枠板5と、該一側枠板3、他側枠板5の長さ方向両端側をディスク1の外周を跨いで連結した左,右の継枠板6,6とから、高い剛性をもった細長い略四角形の枠状体(図8参照)として一体成形している。このため、取付部材2を小型、軽量化しつつ、頑丈な構造に形成することができ、ディスク1のインナ側,アウタ側でトルク受部3E,5Eが受承する制動トルクを、取付部材2全体で安定して支えることができる。
しかも、取付部材2の筒状突部4側とキャリパ7のシリンダ部9との間には、該シリンダ部9をディスク1の径方向外側に向けて付勢するシリンダスプリング20を設け、このシリンダスプリング20を、ピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内となる位置に配置している。このため、ピストン12等を含むキャリパ7全体の重量によりスライドピン13とピン嵌合穴4Aとの間に付加される摺動抵抗を、シリンダスプリング20の付勢力で減じることができ、両者の間の摺動抵抗を小さく抑えることができる。
一方、前述の如きブレーキ操作を繰返すうちに摩擦パッド16のライニング18は徐々に摩耗する。そして、ライニング18の摩耗が大きくなって摩擦パッド16の交換時期に達するときには、スライドピン13が筒状突部4のピン嵌合穴4Aから抜け出す方向(図2、図4中の矢示A方向)に相対変位し、ピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt は、ライニング18の摩耗代に対応する厚さ分だけ短くなる。
また、車両のブレーキ操作を繰返すうちに摩擦パッド16(ライニング18)の摩耗等が進行し、キャリパ7全体の重心位置Gが図2、図4中の矢示A方向に移動すると、取付部材2に支持されたキャリパ7に傾き等が生じ易くなる。そして、このような場合には、キャリパ7のアウタ脚部10側がディスク1の径方向外側へと傾いた状態となって、摩擦パッド16のライニング18に偏摩耗が生じたり、ブレーキ鳴きが発生したりする原因になる。
しかし、この場合でも、キャリパ7のアウタ脚部10側に設けたアウタ側スプリング21は、ディスク1の径方向内側(図1、図5中の矢示D方向)に向けてアウタ脚部10の各爪部10Aを弾性的に付勢しているので、キャリパ7のアウタ脚部10側がディスク1の径方向外側へと傾くのを長期にわたって抑えることができる。
しかも、キャリパ7のシリンダ部9は、シリンダスプリング20によりディスク1の径方向外側に向けて付勢されているので、ピン嵌合穴4A内に挿嵌されたスライドピン13と共にキャリパ7全体を安定した支持状態に保つことができ、取付部材2に対してキャリパ7が傾くのをシリンダスプリング20により抑えることができる。
かくして、第1の参考技術によれば、取付部材2の一側枠板3には、ディスク1の軸方向に突出する筒状突部4を一体形成すると共に、該筒状突部4内には一側枠板3の板厚方向に延びる有底のピン嵌合穴4Aを設け、このピン嵌合穴4Aを全体(全長)にわたってディスク1よりもインナ側となる位置に配置している。そして、キャリパ7は、その重心位置Gがピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内に存在するように形成する構成としている。
このため、取付部材2には、例えばディスク1の外周側を跨ぐ部分(継枠板6に相当する部分)にピン嵌合穴を設ける必要がなくなり、この継枠板6の板厚tを図6に示す如く、例えば5〜10mm程度まで薄く形成するとことができ、従来技術で述べた腕部の厚さに比較しても、例えば1/2以下の厚さとすることができる。
これにより、ディスク1の外径寸法Rは現行品等に比較して、例えば8〜15mm程度まで大きくすることが可能となり、ディスク1の外径寸法Rを大きくすることにより、その熱容量を増大することができ、所謂フェード時にも安定したブレーキの効きを確保することができる。
また、キャリパ7のアウタ脚部10に設けたアウタ側スプリング21は、ディスク1の周方向両側(矢示C,C方向)と径方向内側(矢示D方向)とでアウタ脚部10の各爪部10Aを弾性的に付勢している。このため、キャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の周方向等で振動するのを抑えることができ、ピン嵌合穴4A内に挿嵌されるスライドピン13によりキャリパ7全体を安定した支持状態に保つことができる。
そして、取付部材2に対してキャリパ7が傾くのをアウタ側スプリング21により抑えつつ、キャリパ7の姿勢を安定させることができる。また、車両のブレーキ操作を繰返すうちに各摩擦パッド16の摩耗等が進行し、キャリパ7全体の重心位置Gがディスクの軸方向でインナ側(矢示A方向)に移動した場合でも、キャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の径方向外側へと浮上がるように傾くのをアウタ側スプリング21により抑えることができ、摩擦パッド16のライニング18に偏摩耗が生じたり、ブレーキ鳴きが発生したりするのを抑制することができる。
この場合、アウタ側スプリング21は、アウタ脚部10のリセス10B内となる位置に配置されると共に、固定板部21A(長さ方向の中間部)がアウタ側の摩擦パッド16に固定して設けられ、左,右の屈曲板部21Cは、先端側のフック部21D(長さ方向の両端部)が一対の爪部10Aに切込み部10Cを介して弾性変形状態で当接している。
このため、アウタ側スプリング21の各屈曲板部21C等により、キャリパ7のアウタ脚部10をディスク1の周方向でアウタ側の摩擦パッド16(取付部材2)に対してセンタリングさせるように、一対の爪部10Aをディスク1の周方向外方へと互いに逆向きに付勢することができ、一対の爪部10Aがディスク1の周方向等で振動するのを抑えることができる。
これにより、シリンダ部9(インナ脚部)側で取付部材2に支持されたキャリパ7がアウタ脚部10側で取付部材2に対して傾くのを防止することができ、キャリパ7のアウタ脚部10を取付部材2の他側枠板5等に対して安定した姿勢に保つことができる。
また、キャリパ7のシリンダ部9と取付部材2の筒状突部4等との間には、図4に示す如くピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内となる位置で、キャリパ7をディスク1の径方向外向き(図6中の矢示B方向)に付勢するシリンダスプリング20を設ける構成としている。
このため、キャリパ7の重量(自重)によりスライドピン13とピン嵌合穴4Aとの間に働く摺動抵抗を、シリンダスプリング20の付勢力によって減じることができ、両者の間の摺動抵抗を小さく抑えることができる。そして、ピン嵌合穴4A内に挿嵌されるスライドピン13によりキャリパ7全体を安定した支持状態に保つことができ、キャリパ7の姿勢を長期にわたって安定させることができると共に、引摺りトルクの発生を抑えることができ、ブレーキ性能の向上化を図ることができる。
また、スライドピン13を含めたキャリパ7全体の重心位置Gを、摩擦パッド16が新品状態から交換時期に達するまでの間にわたって前記嵌合長Lt の範囲内に収めることにより、車両のブレーキ操作を繰返すうちに摩擦パッド16の摩耗が進行しても、摩擦パッド16が交換時期に達するまでは、キャリパ7全体の重心位置をピン嵌合穴4Aに対するスライドピン13の嵌合長Lt の範囲内に収めることができ、キャリパ7全体を安定した支持状態に長期にわたって保つことができる。
従って、第1の参考技術によれば、キャリパ7のアウタ脚部10とアウタ側の摩擦パッド16との間に設けたアウタ側スプリング21により、アウタ脚部10の各爪部10Aをディスク1の周方向両側(矢示C,C方向)と径方向内側(矢示D方向)とに付勢している。
これにより、キャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の周方向等で振動するのを抑えることができると共に、キャリパ7のアウタ脚部10がディスク1の径方向外側へと浮上がるように傾くのをアウタ側スプリング21により抑えることができ、摩擦パッド16のライニング18に偏摩耗が生じたり、ブレーキ鳴きが発生したりするのを抑制することができる。
また、所謂ブレーキの引き摺り等も良好に抑えることができ、経時劣化時の耐ジャダ性能も高めることができると共に、ブレーキ性能の向上化を図ることができる。しかも、所謂コレット型キャリパの利点を活かしてディスクブレーキ全体を小型化することができ、軽量化を図ることができるものである。
また、取付部材2のピン嵌合穴4Aは、ディスク1の周方向でインナ側のトルク受部3Eと隣接した位置に配置する構成としている。このため、摩擦パッド16を介した制動トルクをインナ側のトルク受部3Eで受承するときに、ピン嵌合穴4Aとスライドピン13との間に作用する曲げモーメント等を小さく抑えることができ、所謂コレット型キャリパの利点を活かすことができる。
即ち、第1の参考技術のように、コレット型キャリパを採用した場合には、リバースピン型キャリパとは異なり、スライドピン13がキャリパ7の取付部11に締結ボルト14で固定される位置がトルク受部3Eから大きく離れた位置となっているため、締結ボルト14の螺合部位等に作用する曲げモーメントを小さく抑えることができ、締結ボルト14の弛止め等を容易に行うことができる。
また、取付部材2の一側枠板3には、トルク受部3Eに近い位置にピン嵌合穴4Aを有底穴として形成し、該ピン嵌合穴4A内にはスライドピン13を挿嵌して設けているので、トルク受部3E近辺での取付部材2の剛性を確保することが容易となり、取付部材2全体を小型化し、軽量化等を図ることができる。
次に、図13ないし図15は本発明の第1の実施の形態を示し、第1の実施の形態の特徴は、アウタ側の摩擦パッドとアウタ脚部との間に設けるアウタ側付勢部材を、一対のアウタ爪部よりもディスクの径方向内側となる位置を周方向外方に延ばして該一対のアウタ爪部に外側から弾性変形状態で係合させる構成としたことにある。なお、第1の実施の形態では、前述した第1の参考技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、31は取付部材2に摺動可能に支持されたキャリパを示し、該キャリパ31は、前記第1の参考技術で述べたキャリパ7とほぼ同様に形成され、ブリッジ部8、インナ脚部としてのシリンダ部9およびアウタ脚部32等により構成されている。しかし、この場合のキャリパ31は、アウタ脚部32の形状が前記第1の参考技術とは異なるものである。
即ち、このアウタ脚部32は、図13、図14に示すようにディスク1の周方向で二又状をなして離間した一対のアウタ爪部32A,32A(以下、爪部32Aという)と、該爪部32A,32A間に逆U字状をなして形成され、ピストン12をシリンダ部9内に取付けるため、またはシリンダボア9A内を加工する工具を挿入するための挿入用空所となるリセス32Bとを有している。
しかし、アウタ脚部32の爪部32A,32Aには、ディスク1の周方向でリセス32Bとは反対側となる周方向外側の面側に略半円形状をなす円弧状の切込み部32C,32Cが形成され、該各切込み部32Cには、後述するアウタ側スプリング33のフック部33Dが外側から弾性変形状態で当接(係合)されるものである。
33はキャリパ7のアウタ脚部10側に設けられたアウタ側付勢部材としてのアウタ側スプリングで、該アウタ側スプリング33は、前記第1の参考技術で述べたアウタ側スプリング21とほぼ同様に、固定板部33A、支持板部33B、左,右の屈曲板部33Cおよび左,右のフック部33D等により構成されている。
しかし、この場合のアウタ側スプリング33は、長さ方向中間部となる固定板部33Aがディスク1の周方向に延びる長方形状に形成され、アウタ脚部32のリセス32B内で後述のカシメ部34によりアウタ側の摩擦パッド16にカシメ固定されている。そして、支持板部33Bは、図15に示す如く固定板部33Aの下端側(ディスク1の径方向内側)からL字状に折曲げられ左,右方向(ディスク1の周方向)へと水平に延びている。
また、左,右の屈曲板部33C,33Cは、支持板部33Bの左,右両側から略「く」の字状に折曲げられて各爪部32Aよりもディスク1の径方向内側となる位置を周方向外方に向けて延びている。そして、各屈曲板部33Cの先端側には、アウタ側スプリング33の長さ方向両端部となる位置に円弧状(例えば、S字状)に湾曲した左,右のフック部33D,33Dが形成され、これらのフック部33Dは、図14に示すようにキャリパ31(アウタ脚部32)の各爪部32Aに周方向外側の切込み部32Cを介して係合されるものである。
即ち、アウタ側スプリング33は、左,右の屈曲板部33C、33Cが図14中に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと弾性変形され、それぞれのフック部33Dが各爪部32Aの切込み部32Cに掛止めするように当接される。これにより、アウタ側スプリング33は、アウタ脚部32の各爪部32Aをディスク1の径方向内側(図14中の矢示D方向)に付勢すると共に、ディスク1の周方向内方(図14中の矢示E,E方向)へとリセス32B側に向けて付勢する。
この場合、アウタ側スプリング33は、図14中に示すように固定板部33Aが支持板部33Bと共にアウタ脚部32のリセス32B内となる位置に配置されている。そして、アウタ側スプリング33の各屈曲板部33Cは、リセス32Bの位置から周方向外方へと延び、先端側のフック部33Dにより図14中の矢示D方向と矢示E,E方向との3方向でアウタ脚部32の各爪部32Aを弾性的に付勢し、取付部材2に対するキャリパ31(アウタ脚部32)の姿勢を安定した状態に保持するものである。
34,34はアウタ側スプリング33の固定板部33Aをアウタ側の摩擦パッド16に固定するためのカシメ部で、該各カシメ部34は、アウタ側の摩擦パッド16において図13〜図15に示す如く、裏金17の裏面(ライニング18と反対側の面)側で、ディスク1の周方向の中央部となる位置に左,右に離間した一対の突起部として形成されている。
そして、これらのカシメ部34,34は、アウタ側スプリング33の固定板部33Aをアウタ側の摩擦パッド16に対し位置合わせした状態でカシメ工具(図示せず)等を用いて塑性変形されることにより、アウタ側スプリング33の固定板部33Aを裏金17の中央部側に抜止め状態で固定するものである。
かくして、このように構成される第1の実施の形態でも、アウタ側スプリング33によりキャリパ31のアウタ脚部32をディスク1の径方向内側と周方向の内方とに向けて付勢することができ、前記第1の参考技術とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
特に、本実施の形態では、アウタ側スプリング33の屈曲板部33Cが、各爪部32Aよりもディスク1の径方向内側となる位置を周方向外方に向けて延び、先端側のフック部33Dをアウタ脚部32の各爪部32Aに周方向外側の切込み部32Cを介して係合させる構成としている。
このため、アウタ側スプリング33の各屈曲板部33Cにより、ディスク1の周方向でキャリパ31のアウタ脚部32をアウタ側の摩擦パッド16(取付部材2)に対してセンタリングさせるように、一対の爪部32Aをディスク1の周方向と径方向とで付勢し続けることができ、キャリパ31のアウタ脚部32を取付部材2に対して安定した姿勢に保つことができる。
次に、図16ないし図19は第2の参考技術を示し、第2の参考技術の特徴は、アウタ側付勢部材を、取付部材側のガイド部とアウタ脚部との間に設ける構成としたことにある。なお、第2の参考技術では、前述した第1の参考技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、41は第2の参考技術で採用したキャリパで、該キャリパ41は、前記第1の参考技術で述べたキャリパ7とほぼ同様に形成され、ブリッジ部8、インナ脚部としてのシリンダ部9、一対の取付部11およびアウタ脚部42により構成されている。しかし、この場合のキャリパ41は、アウタ脚部42の形状が前記第1の参考技術とは異なるものである。
即ち、このアウタ脚部42は、図16〜図18に示すようにディスク1の周方向で二又状をなして離間した一対のアウタ爪部42A,42A(以下、爪部42Aという)と、該爪部42A,42A間に逆U字状をなして形成され、ピストン12をシリンダ部9内に取付けるための挿入用空所となるリセス42Bとを有している。
しかし、アウタ脚部42の爪部42A,42Aには、リセス42Bの周壁面に沿って逆U字状に延びる凹形状の切込み溝42Cが形成され、該切込み溝42Cには、後述するアウタ側スプリング43のフック部43Dが弾性変形状態で当接(係合)されるものである。
43はキャリパ7のアウタ脚部10側に設けられたアウタ側付勢部材としてのアウタ側スプリングで、該アウタ側スプリング43は、前記第1の参考技術で述べたアウタ側スプリング21とほぼ同様に構成され、アウタ脚部42の各爪部42Aをディスク1の周方向外方(図16中の矢示C,C方向)へと互いに逆向きに付勢すると共に、ディスク1の径方向内側(図16中の矢示D方向)に付勢するものである。
しかし、この場合のアウタ側スプリング43は、アウタ脚部42のリセス42B内に位置する長さ方向中間部が一対の凸湾曲板部43A,43Aとして形成されている。該凸湾曲板部43A,43Aは、全体として略ハート形状をなすようにリセス42Bの中心線に対して斜めに傾いた左,右対称な形状を有し、アウタ脚部42の切込み溝42C内に弾性変形した状態で挿嵌されるものである。
そして、各凸湾曲板部43Aの下端側(ディスク1の径方向内側)部位には、各爪部42Aよりもディスク1の径方向内側となる位置を周方向外方に向けて延びる左,右の延設板部43B,43Bが一体形成され、該各延設板部43Bは、各爪部42Aに沿って略「く」の字状に屈曲している。
また、各延設板部43Bの先端側(アウタ側スプリング43の長さ方向両端部)には、略コ字状に折曲げられた左,右の突当て部43C,43Cが一体形成されている。そして、該各突当て部43Cは、ガイド部としてのパッドスプリング19の突起片19B,19Cに掛止め(係合)されることにより、アウタ側スプリング43を取付部材2に対し左,右のパッドスプリング19(突起片19B,19C)を介して抜止め状態で取付けるものである。
ここで、アウタ側スプリング43は、各凸湾曲板部43Aがアウタ脚部42の切込み溝42C内に弾性変形状態で挿嵌されることにより、アウタ脚部42の各爪部42Aをディスク1の周方向外方(図16中の矢示C,C方向)へと互いに逆向きに付勢すると共に、ディスク1の径方向内側(図16中の矢示D方向)に付勢するものである。
かくして、このように構成される第2の参考技術でも、アウタ側スプリング43によりキャリパ41のアウタ脚部42(一対の爪部42A)をディスク1の径方向内側と周方向の外方とに向けて付勢することができ、前記第1の参考技術とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
特に、第2の参考技術では、アウタ側スプリング43の突当て部43Cがパッドスプリング19の突起片19B,19Cに係合して取付けられ、長さ方向中間部側の各凸湾曲板部43Aがアウタ脚部42のリセス42B内で一対の爪部42Aに弾性変形状態で当接することにより、アウタ側の摩擦パッド16を介さずにキャリパ41のアウタ脚部42を付勢する構成としている。
これによって、ディスク1の周方向でキャリパ41のアウタ脚部42を取付部材2(左,右のパッドスプリング19)に対してセンタリングさせるように、一対の爪部42Aをディスク1の周方向と径方向とで付勢し続けることができ、キャリパ41のアウタ脚部42を取付部材2に対して安定した姿勢に保つことができる。また、突当て部43Cがパッドスプリング19に当接するようになっているため、キャリパ41の摺動性がよくなっている。
次に、図20ないし図23は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、キャリパのアウタ脚部をディスクの軸方向外側から覆うカバー部をアウタ側付勢部材に設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した前記第1の参考技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は第2の実施の形態で採用したアウタ側付勢部材としてのアウタ側スプリングで、該アウタ側スプリング51は、前記第1の参考技術で述べたアウタ側スプリング21とほぼ同様に形成され、固定板部51A、支持板部51B、左,右の屈曲板部51Cおよび左,右のフック部51D等により構成されている。しかし、この場合のアウタ側スプリング51は、後述の如くカバー部51Eが設けられている点で前記第1の参考技術とは異なるものである。
ここで、アウタ側スプリング51の支持板部51Bは、図23に示す如く固定板部51Aの下端側(ディスク1の径方向内側)に位置して固定板部51Aよりも幅広に形成され、その左,右方向(ディスク1の周方向)両側部位がディスクの軸方向外側に向けて張り出すように折曲げられている。そして、左,右の屈曲板部51C,51Cは、支持板部51Bの左,右両側に位置する折曲げ部位から上向き(ディスク1の径方向外側)に延設され、全体として略R字状をなすように互いに対称な形状に折曲げられている。
また、各屈曲板部51Cの先端側には、アウタ側スプリング51の長さ方向両端部となる位置に円弧状に湾曲した左,右のフック部51D,51Dが形成され、これらのフック部51Dは、前記第1の参考技術で述べたフック部21Dと同様にアウタ脚部10の各爪部10Aに切込み部10C(図11参照)を介して係合されるものである。
一方、アウタ側スプリング51は、キャリパ7のアウタ脚部10をディスク1の軸方向外側から覆うカバー部51Eを有し、該カバー部51Eは、図22、図23に示す如く支持板部51Bの下端側から上向きに折返された略U字状の折返し板部51Fを介して支持板部51B等と一体形成されている。
そして、カバー部51Eは、図20、図21に示すようにキャリパ7のアウタ脚部10をディスク1の周方向にわたって覆い、例えば車両の走行時に跳上げられた飛び石等からアウタ側スプリング51の固定板部51A、支持板部51B、屈曲板部51Cおよびフック部51D等を保護するものである。
52,52,…はアウタ側スプリング51のカバー部51Eに設けられた複数の突起部で、該各突起部52は、カバー部51Eの外周側(ディスク1の径方向外側)に周方向で互いに離間して形成され、アウタ脚部10の外側面に弾力性をもって当接される。これにより各突起部52は、アウタ側スプリング51のカバー部51Eがアウタ脚部10の外側面に対してガタ付いたり、振動したりするのを防ぐものである。また、カバー部51Eの弾力性によりアウタ側の摩擦パッド16を確実にアウタ脚部10に当接させることができる。
53はアウタ側スプリング51のカバー部51Eに設けられた打抜き穴で、該打抜き穴53は、カバー部51Eのほぼ中央部に穿設され、例えばカシメ部22を形成するためのカシメ工具(図示せず)等が挿入されるものである。即ち、アウタ側スプリング51の固定板部51Aをアウタ側の摩擦パッド16に対しカシメ部22により固定するときに、前記カシメ工具等を挿入するための挿入用穴として打抜き穴53は形成されるものである。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、アウタ側スプリング51によりキャリパ7のアウタ脚部10をディスク1の径方向内側と周方向の外方とに向けて付勢することができ、前記第1の参考技術とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、アウタ側スプリング51にカバー部51Eを設けているので、下記のような作用効果を奏するものである。
即ち、アウタ側スプリング51は、キャリパ7のアウタ脚部10をディスク1の軸方向外側から覆うカバー部51Eを有しているので、例えば車両の走行時に跳上げられた飛び石等からアウタ側スプリング51の固定板部51A、支持板部51B、屈曲板部51Cおよびフック部51D等をカバー部51Eにより保護することができ、アウタ側スプリング51の耐久性、寿命等を向上することができる。また、カバー部51Eにより車両の外側からリセス10Bが見えなくなるため、アウタ側スプリング51やアウタ側の摩擦パッド16が隠れて、外観上すっきりした印象を与えることができる。
なお、前記第2の実施の形態では、アウタ側スプリング51にカバー部51Eを設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第1の実施の形態で述べたアウタ側スプリング33についても、キャリパ31のアウタ脚部32をディスク1の軸方向外側から覆うカバー部を設ける構成としてもよい。
そして、このようなカバー部は、アウタ側付勢部材に必ずしも一体に形成する必要はなく、例えば別体に形成したカバー部をアウタ側付勢部材に溶接、またはねじ止め等の手段を用いて取付ける構成としてもよい。さらには、別体のカバーをアウタ脚部に取付けることにより、アウタ側付勢部材を外側から保護する構成としてもよい。
また、前記第2の参考技術では、アウタ側スプリング43の突当て部43Cをパッドスプリング19の突起片19B,19Cに掛止めして取付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばパッドスプリング19の突起片19B,19Cに替わる突起部等を取付部材に設け、この突起部に対しアウタ側スプリング43の突当て部43Cを係合させて取付ける構成としてもよいものである。
一方、前記各実施の形態では、キャリパ7のシリンダ部9を径方向外側に向けて付勢するインナ側付勢部材としてのシリンダスプリング20を、パッドスプリング19と一体に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばインナ側付勢部材をパッドスプリングとは別体に形成する構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、取付部材2のパッドガイド部3D,5Dをコ字形状の切欠きとして形成し、該切欠きの底部側でトルク受部3E,5Eを構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパッドガイド部からディスクの径方向内側または外側に離間した位置にトルク受部を設ける構成としてもよいものである。
また、前記各実施の形態では、取付部材2のパッドガイド部3D,5Dをコ字形状の切欠きとして形成し、各摩擦パッド16の裏金17には、パッドガイド部3D,5Dに移動可能に嵌合する凸形状の耳部17Aを形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパッドガイド部を凸形状に形成し、摩擦パッドの裏金には、凸形状のパッドガイド部に移動可能に嵌合する凹形状の嵌合凹部を設ける構成としてもよい。
さらに、前記各実施の形態では、キャリパ7のシリンダ部9に単一のシリンダボア9A(ピストン12)を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2〜3個以上のピストンをキャリパに設ける構成としたコレット型キャリパ、またはリバースピン型キャリパ等にも広く適用できるものである。