JP4818497B2 - 接着剤組成物、樹脂材料、ゴム物品および空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は接着剤組成物、これにより処理された樹脂材料、およびこの樹脂材料で補強されたゴム物品、およびこのゴム物品を適用した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維などのポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維は、高い初期弾性率、優れた熱時寸法安定性を有しているため、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物、帆布などの形態で、タイヤ、ベルト、空気バネ、ゴムホースなどのゴム物品の補強材として極めて有用である。
【0003】
しかし、これらの補強材は分子構造が緻密であり、しかも樹脂表面に官能基が少ないので、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の補強材とゴムとを良好に接着させることのできるレゾルシンとホルムアデヒドとゴムラテックスから成る接着剤組成物(以下、RFLという。)ではほとんど接着できない。
このため、これらの合成繊維とゴムとを良好に接着させるため、接着剤組成物のみならず、接着方法、処理化繊維など、種々提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
接着方法には、一浴処理接着法と二浴処理接着法がある。一浴処理接着法には、例えば、ノボラック反応により得られるフェノール類・ホルムアルデヒド縮合物などの、メチレンジフェニル類からなる鎖状構造を分子内に含有する化合物(接着性改良剤)を、RFLと混合して得られる接着剤組成物(参照:WO97/13818)をコードに被覆する方法などがある。
【0005】
この一浴処理接着法は、接着剤組成物をコード表面に1回被覆させるだけなので、接着剤組成物の使用量も少なくて済み、原材料費、製造費の点で優れている。また、接着剤組成物が柔軟なので、応力の集中やそれに伴う発熱が小さく、コード疲労性が優れている。したがって、汎用タイヤへの適用においては、有効である。
【0006】
しかし、この接着剤組成物は、ゴムラテックスを含んでいるため、被着体であるゴムから移行してくる硫黄と反応して、硫黄架橋し、接着剤層が高モジュラス化すると共に、収縮して、繊維と接着剤層との界面に歪応力が発生し、接着力が低下する(参照:前出WO97/13818)。
ラテックスゴムの硫黄架橋は、高温になるにつれて、ポリサルファイド結合からモノサルファイド結合になるので、架橋部が短くなり、それと共に、架橋数が多くなり、その結果、接着剤層の収縮が大きくなり、接着力が著しく低下する。したがって、タイヤ高温走行時に環境温度が、例えば180℃以上となる非汎用タイヤにおいては、タイヤ高温走行時に接着力が不十分になる可能性がある。
【0007】
一方、二浴処理接着法には、先ず、繊維コードの表面を、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート類を含む接着剤組成物で被覆し、次に、さらにその表面を、RFLを含む接着剤組成物で被覆する方法等がある。
この二浴処理接着法により処理された繊維コードは硬くなり、製造上取り扱いが困難になり(参照:特開平06−173172)、これで補強したゴム物品は、初期には、高温度下でも接着力は高いが、高温、高歪下で使用した場合、接着劣化やコード疲労が急激に生じるので、製品寿命を著しく低下してしまう不具合がある。
【0008】
しかし、短時間であれば高接着力が得られるので、上記の接着劣化やコード疲労を改善できれば、高温走行するタイヤなどに適用できる可能性がある。
【0009】
近年、タイヤ性能の高性能化が高まり、タイヤの回転による歪や熱のコードへの入力は厳しくなる一方である。例えば、従来はレーシングタイヤであっても、走行により、190℃前後(参照:「ドライバーのためのタイヤ工学」p182第3行:グランプリ出版;1989年)まで接着性能を確保すれば十分であった。
【0010】
ところで、最近、パンクした状態で走行可能なランフラットタイヤが注目されており、このタイヤでは、パンク状態での走行による発熱が大きく、特に歪応力が集中した箇所では局所的に高温となり、構造上で歪応力が集中しやすいタイヤ補強コードの温度は、ポリエステルやナイロンからなるタイヤ補強コードが熱変形する温度にまで達することがある。
ポリエステルやナイロンなどの樹脂材料の熱変形条件は、温度だけでなく歪にも依存する。つまり、歪が大きくなると、樹脂材料の融点より低い温度であっても、クリープ変形することがある。
【0011】
このような状況のなかで、タイヤコード用接着剤に求められる耐熱性能は、タイヤコードが熱と歪により熱変形する条件まで、接着状態を維持することである。この条件はコード材料により異なるが、少なくとも200℃近い温度まで、接着剤層で剥離しないことが好ましい。
【0012】
更に、タイヤでは、硫黄量を多くすることで硬質にしたゴムを、補強ゴムとして使用することがある。この補強ゴム付近では、補強ゴムから接着剤層に移行する硫黄の量が多くなり、高熱下で接着剤層が硫黄架橋することにより生じる歪劣化も大きくなることがある。
【0013】
このような条件下における、接着耐久性および高歪下コード疲労性という点では、前述の一浴処理法あるいは二浴処理法の接着剤組成物は共に、接着耐久性が不十分になる。
従って、ランフラットタイヤのタイヤカーカス材など、タイヤ走行で高温になる場合には、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維またはアクリル繊維などを、タイヤ補強用繊維として実用している例はみられていない。
【0014】
また、タイヤの高性能化のみならず、タイヤなどのゴム物品製作における加硫工程においても、工程時間短縮のため、加硫を高温度、例えば190℃以上で行う要求があるため、熱劣化に耐える接着剤組成物が求められる。
以上の観点から、高温、高歪下で耐久性が良好な接着剤組成物が強く求められている。
【0015】
これらの要求を満たす接着剤組成物には、初期接着力が高いのみならず、以下の3つの性能が優れていることが必要である。すなわち、(i)高温時の接着性が高く、(ii)高温下で接着力の熱劣化性が少なく、かつ(iii)高歪下のコードでの耐疲労性が良いことである。
【0016】
(i)最初に、高温時の接着性が高い接着剤組成物は、高温時の凝集破壊抗力が高いことが必要である。この接着剤組成物の高温時の凝集破壊抗力は、接着剤組成物の分子の凝集状態や分子鎖運動など、温度により可逆的に変化する分子の物理的状態の変化から説明することができる(参照:「機能性接着剤の開発と応用」(下巻)p174;1997年;シーエムシー)。
高温での凝集破壊抗力を高めるには、例えば、接着剤組成物に高Tg材料を用いるたり、接着剤分子間を架橋剤で架橋したりするなどの方法がある。接着剤組成物に高Tg材料を用いると、高温での分子の熱運動性が小さくなることで接着剤層の凝集破壊抗力を高くなり、一方、接着剤組成物を架橋剤などにより適度に分子間架橋すると、高温による分子鎖の流動化が抑制され、高温でも接着剤層が熱変形(クリープ)し難くなるためである。
タイヤ高温走行や高温下での剥離試験において、接着剤層が破壊されないためには、高温下での接着剤層の凝集破壊抗力を、被着体のゴムまたは繊維より高くする必要がある。
【0017】
(ii)次に、高温下での接着力の熱劣化性を少なくするためには、温度と時間に依存するして発生する化学的な構造の変化が小さいことが必要となる(参照:前出「機能性接着剤の開発と応用」(下巻)p174)。
この接着力を低下させる化学的構造変化の要因には、(ii-1)接着剤組成物内部での架橋反応による構造変化に伴う歪の発生と、(ii-2)接着剤組成物成分などにより促進される熱分解による被着体である樹脂材料の劣化などが挙げられる。
【0018】
まず、(ii-1)接着剤組成物内部での架橋反応による構造変化に伴う歪について説明する。
特に、接着剤−樹脂界面の相互作用が比較的弱いポリエステルなどの樹脂材料では、樹脂材料表面に被覆する接着剤組成物の分子間架橋による収縮・硬化の化学構造変化が過度に大きくなりすぎないよう制御することが重要であることは言うまでもない。
【0019】
接着剤組成物内部での架橋反応としては、例えば、エポキシ樹脂の架橋反応(参照:越智光一、小寺一弘「日本接着協会誌」28,272(1992))や、炭素−炭素二重結合を含有するゴムラテックスなどと硫黄とによる架橋反応(参照:前出WO97/13818)などを挙げることができる。
【0020】
エポキシの架橋反応により発生する内部応力はエポキシ樹脂の種類、量、硬化剤の種類などにより異なる。例えば、長鎖脂肪酸のグリシジルエステルや多価アルコールのグリシジルエーテルなど、いわゆる可撓性エポキシ樹脂(参照:「エポキシ樹脂の高機能化と市場展望」p162;1990年;シーメムシー)は硬化反応に伴う接着での歪が小さいため、従来より、ゴムと繊維の接着剤組成物に用いられているが、可撓性エポキシ樹脂のみを用いた接着剤組成物では、十分な化学的耐熱性が得られているとはいえない。
【0021】
ゴムラテックスなど、アリル位に水素基を有する硫黄反応性の炭素−炭素二重結合を有する重合体は、被着体であるゴムから移行する硫黄が加硫反応するため、硫黄が反応する炭素−炭素二重結合を少なくすることが有効である。
なお、高温になると、硫黄による架橋は、ポリサルファイド結合からモノサルファイド結合化し、架橋点が多くなるとともに、架橋部の長さが極端に短くなるため、接着力低下も急激に大きくなる。従って、接着剤−樹脂界面の相互作用が比較的弱い樹脂材料を被覆する接着剤組成物にはあまり好ましいとはいえない。また、耐熱性が求められる非汎用タイヤなどでは、樹脂材料を「直接」被覆する接着剤組成物は硫黄反応性が少ない性質であることが好ましい。
【0022】
タイヤ高温走行や、熱劣化後の剥離試験で、接着剤層と合成樹脂間が破壊されないようにするには、樹脂材料を直接被覆する接着剤層内での架橋反応により発生する接着剤層内部の歪を少なくすることが必要である。
【0023】
次に、(ii-2) 被着する樹脂材料の接着剤組成物成分などにより促進される熱分解による劣化について説明する。
一般に、ポリエステルなどの樹脂材料は、加熱下で、アルカリ成分により加水分解反応が促進されることが知られている。過去、タイヤなどのゴム物品では、被着ゴムに含まれる加硫促進剤成分から由来するアミン成分などが多くなると、ポリエステルの熱劣化が著しくなることが知られていた。この原因としては、アルカリ成分により高熱下のエステル加水分解反応が促進され、ポリエステル樹脂材料の分子が化学構造的に脆く変化し、樹脂材料の強度が低下してしまうためである。このため、過去、被着ゴムに含まれる加硫促進剤成分が大幅に削減されて改善されてきた経緯がある。
【0024】
即ち、ポリエステルなど樹脂材料を被覆する接着剤組成物においても、エステル結合の加水分解反応を促進するアルカリ成分が、できるだけ除去されることが好ましいことは言うまでもない。
このようなエステル結合の加水分解反応を促進し易いアルカリ成分としては、比較的に低〜中分子量である不揮発性のアミンや、アルカリ金属など1価の金属の塩基が挙げられる。これらのアルカリ成分は高温下になると接着剤組成物で容易に拡散し、ポリエステルなどの樹脂材料内に移行して作用する。
【0025】
また、接着剤組成物に含まれるアルカリ成分のうち、樹脂材料のエステル結合の加水分解反応を促進させる効果が、比較的小さくなるアルカリ成分としては、例えば、高分子量のアミン、多価である金属の塩基や揮発性のアミンが挙げられる。
この理由は、被着する樹脂材料の熱分解による劣化においては、接着剤組成物に含まれるアルカリによる劣化促進効果は、接着剤組成物から樹脂材料に、熱下で拡散して移行するアルカリ量が少なくなる方が、小さくなるためである。
これらアルカリ成分のうち、先ず、高分子量のアミンは分子が大きいため拡散しにくくなり、樹脂材料に移行するアルカリ量が少なくなる。次に、多価の金属の塩基は、1価の金属に比べて、一般的にイオン結合が解離しにくいものが多く、イオンが解離しにくいと、水などの接着剤組成物溶剤に溶解せず、粒子として分散し易い。このような粒子になると、接着剤組成物に溶解し拡散しにくくなり、樹脂材料に移行するアルカリ量が少なくなる。さらに、揮発性のアミンは、接着剤組成物を樹脂材料に塗布して熱処理すると、水などの溶剤と共に揮発して、接着剤組成物からその量が減り、樹脂材料に移行するアルカリ量が少なくなる。
【0026】
以上のとおり、耐熱性が求められる非汎用タイヤなどでは、特に樹脂材料に直接被覆される接着剤組成物は、樹脂材料の加水分解劣化を促進する、比較的に低〜中分子量である不揮発性のアミンや、アルカリ金属など1価の金属の塩基を少なくすることが好ましいといえる。
【0027】
(iii)最後に、高歪下のコードでの耐疲労性が良い接着剤組成物とするためには、回転歪下での耐疲労性が高いことが必要である。
接着剤組成物が硬く脆いと、タイヤ走行の連続歪で、接着剤層内に亀裂が生じ、亀裂進行方向のコードフィラメント箇所に歪応力が集中しやすくなる。特に接着剤組成物が硬く脆くなるほど、コードが均一に撓まないで、局所的に屈曲してしまうため、屈曲箇所に応力集中することで局所的な発熱も大きくなるため、場合によってはコードが熱変形により切断する。
【0028】
例えば、ポリエチレンテレフタレート材料のコードに、硬い接着剤組成物を処理したスティフネスの高いコードは、チューブ疲労試験による疲労時間が10〜20分でコードが溶融し切断してしまうが、柔らかい接着剤組成物で同じコードを処理すると、チューブ疲労時間が1日以上となっても、チューブの発熱は小さく、コードが溶融切断するなどの現象が発生しない。
従って、接着剤組成物の可撓性が高いことは、回転によりもたらされる連続高歪によるコード耐疲労性を改善するために重要である。
【0029】
以上のように、高温、高歪下で使用される接着剤組成物には、上記の高温時接着性、熱劣化後接着力、および高歪下での可撓性を、それぞれ保持することが重要であるとの知見が得られた。
【0030】
ところが、高温域で強靭で凝集破壊抗力がある接着剤組成物には、例えば、耐熱性材料を多く配合し、接着剤組成物のTgを高くする方法で改善できるが、一方で、室温域やタイヤ走行温度域での可撓性が小さくなりがちで、連続歪下で接着剤組成物の耐久性が低くなる背反性がある。
また、接着剤組成物の分子間架橋を多くする方法でも改善できるが、接着剤組成物の架橋収縮が大きくなりすぎると、熱劣化後接着力が低下してしまう背反性がある。
【0031】
そこで、エポキシド化合物とブロックドイソシアネート類からなる接着剤組成物マトリックスに、改質剤として熱可塑性樹脂などをブレンドする方法が検討されている。これらは改質剤として配合した樹脂が接着剤組成物内で発生する内部応力を低下させたり、熱変形を抑制させたりする作用などが考えられている。また、環境に有利な水系溶媒の接着剤組成物を改質させる方法としては、水溶性のポリマーを改質剤としてブレンドさせる方法、ラテックス、エマルジョンなどの水分散性ポリマーをブレンドする方法が挙げられる。
【0032】
接着剤組成物マトリックスに、水分散性の熱可塑性高分子重合体を改質剤として添加する方法としては、例えば、ゴムラテックスを配合する(参照:前出特公昭60−24226号公報等)方法がみられる。これは、高温域で強靭で凝集破壊抗力があるが、脆い性質の接着剤組成物マトリックスに、柔軟なラテックス粒子を分散し、エポキシ樹脂などの架橋に伴う接着剤層内での歪や、走行歪に対する吸収性を向上できる効果があるとみられている。また、例えば特開平11−03418公報には、エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスを配合し、ラテックスに架橋性のある官能基を導入することで、接着剤マトリックスとの界面等との接着性を更に改善できる方法が開示されている。
しかし、この接着剤組成物に含まれるゴムラテックス成分は、200℃近くの高熱下になると、被着ゴムから移行する硫黄により、ゴムラテックスが加硫反応で熱劣化し、接着力が低下してしまう不具合がある。
【0033】
また、ゴムラテックス以外の、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を主鎖構造に実質的に含有しない熱可塑性重合体エマルジョンなどの水分散性ポリマーを添加する例としては、タイヤコード接着用としては、ペンダント基に架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有し、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を主鎖構造に実質的に含有しない熱可塑性重合体として、特公平3−26690公報にはオキサゾリン基含有ラテックスが開示されている。また、特開平5−339552公報にはオキサゾリン基含有水溶性重合体が水性媒体に溶解してなる繊維接着剤組成物が、また特開平6−123078公報にはポリエポキシド化合物とブロックドポリイソシアネート化合物およびゴムラテックスを含む第1処理液で処理し、次いでRFLにオキサゾリン基を有する化合物を添加配合した第2処理液で処理する方法が開示されている。
【0034】
また、ペンダント基に架橋性を有する官能基を少なくとも1つ有し、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を主鎖構造に実質的に含有しない熱可塑性重合体としては、例えば、グラビアラミネートインキ用のポリウレタン樹脂等で、ヒドラジノ基(ヒドラジン残基)を有するウレタン系樹脂が知られており、ヒドラジノ基とポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂表面のカルボニル基とが架橋(共有結合の形成)してインキ塗膜・被着樹脂間の接着力が強化する効果が得られている(参照:宮本賢人「日本接着学会誌」VOL32、NO8(1996)、p.316)、および特開平10−139839公報など)。
【0035】
しかしながら、これらペンダント基に架橋性官能基を少なくとも1つ有し、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を主鎖構造に実質的に含有しない熱可塑性重合体を成分とし、耐熱接着力、特に200℃での苛酷な温度条件での接着耐久性や合成繊維に処理してコード耐疲労性が十分である接着剤組成物はまだ見出されていない。
【0036】
接着剤組成物マトリックスに水溶性高分子を改質剤として添加する例としては、例えば、アミノ基またはカルボキシル基を含む熱可塑性樹脂を改質剤として添加する方法などが挙げられる。
特に、文献(接着大百科;水町弘ら監訳、1993年、朝倉書店,p.195)によると、カルボキシル基は、ポリマーの鎖内および鎖間架橋と被着材への親和性に影響を及ぼす化学反応の中心としての役割を果たすことができ、接着力を向上させる酸または他の電子受容基が、ポリマーと被着材との界面で電子移動を起こすことに関係していると考えられている。これら、カルボキシル化ポリマーの接着剤組成物への適用は、これまでに種々の提案がなされている。
【0037】
カルボキシル化ポリマーのうち、無水マレイン酸とイソブチレンを含むモノマーを共重合させた水溶性高分子については、無水マレイン酸とイソブチレンを含むモノマーを共重合させた水溶性高分子とエポキシド化合物および金属塩もしくは金属酸化物、あるいは、スチレン・ブタジエン共重合体からなるゴムラテックスを含む接着剤組成物が、特開昭46-20521 号公報、特開平10-310755号公報などで開示されている。
【0038】
しかしながら、これらカルボキシル基含有の水溶性高分子を接着剤組成物に適用し、接着性能の耐熱性あるいは耐久性を検討し、特に、200℃近くの高熱、高温での硫黄による熱劣化、および高歪下の耐久性という3つの課題を、十分に両立している接着剤組成物はまだ見出されていない。
【0039】
また、接着剤組成物に添加する接着促進剤として、(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体、あるいは極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含む化合物を接着促進剤として接着剤組成物に添加する例が多く開示されている。
例えば、(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体としては、トリレンジイソシアネート(の2量体)、 m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソプロペニルジメチルベンジルジイソシアネートなどの(ブロックド)イソシアネート類などが挙げられる。
また例えば、極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含む化合物としては、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートやそのブロック化物などの(ブロックド)イソシアネート類;ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物や、クロロフェノール・レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物などのフェノール樹脂類;エポキシ基を有するクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂の変性体;あるいは、芳香族類をメチレン結合した構造を含有する有機ポリイソシアネート類と2個以上の活性水素を有する化合物と熱解離性ブロック化剤を含む成分を反応させ得られる水性ウレタン化合物などが挙げられる。
【0040】
これら接着促進剤は、ポリエステルなどの樹脂材料への密着性や接着性を高める作用により、タイヤコードとゴムなどで開示されている、多くの接着剤組成物において使用されている。
【0041】
また、接着促進剤として、芳香族類をメチレン結合した構造を含有する有機ポリイソシアネート類と2個以上の活性水素を有する化合物と熱解離性ブロック化剤を含む成分を反応させ得られる水性ウレタン化合物(I)については、例えば、特公昭63−51474公報に有機高分子材料の接着性改良剤として、熱反応型水性ウレタン樹脂が開示されている。
また、特開平9−111050公報には熱反応型水性ウレタン樹脂とエポキシ化合物、特開平11−35702公報には、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスまたはエポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスからなる第一処理液で処理後、RFLからなる第二処理液で処理するゴム/コード複合体が開示されている。
【0042】
しかしながら、これら接着剤組成物ではスチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックスが用いられており、本発明のようにアリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を実質的に含有しない重合体や水溶性高分子などを含有する接着剤組成物で処理した合成繊維でなければ耐熱接着力、特に200℃での熱劣化後接着力が十分であるとはいえない。
【0043】
また、金属塩や金属酸化物を充填剤などとして接着剤組成物に配合する例については、例えば、前述の特公昭46−20521号公報に無水マレイン酸・イソブチレン共重合体と金属塩や金属酸化物を配合する接着剤組成物が開示され、また例えば、エポキシとブロックドイソシアネート化合物に金属酸化物の混合物であるベントナイト(特公昭60−24226公報)、スメクタイト(特公昭57−29586公報)を添加する方法などが挙げられる。金属塩や金属酸化物の充填剤添加により、安価な充填剤であればコスト性が良好になる。特に、無水マレイン酸・イソブチレン共重合体などのカルボキシル化ポリマーを接着剤組成物に含む場合は、充填剤の金属部位と接着剤組成物でイオン結合的相互作用が得られ(日本接着協会誌;p287,Vol.10, No.6 (1974))、接着剤組成物に延性や、強靭化の効果が得られる例が知られている。
【0044】
しかしながら、これら金属塩や金属酸化物を充填剤などとして含む接着剤組成物においても、熱可塑性高分子重合体(A)、水溶性高分子(B)、および化合物(C)、または水性ウレタン化合物(I)などを含む接着剤組成物でないと、200℃近くの高熱、高温での硫黄による熱劣化、および高歪下の耐久性いう3つの課題を、十分に両立できているとは言えない。
【0045】
本発明は、接着初期、および200℃の高温条件下の接着性、および200℃下で30分熱劣化させた後の接着力など、高温度による接着劣化への耐久性が十分で、タイヤなどの連続歪下における接着耐久性能が良好な接着剤組成物、およびこのような接着剤組成物で処理したコードなどの樹脂材料、およびこのような樹脂材料で補強した耐疲労性や耐熱性に優れたゴム物品、およびこのようなゴム物品を使用して耐熱時の接着力低下を抑制し耐久性の優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、高温条件下の接着性、高温下で経時的に発生する接着での歪みによる接着力熱劣化、および高歪下での接着剤組成物の疲労性について種々検討した結果、樹脂材料に直接被覆する接着剤組成物に、ペンダント基に架橋性官能基を含有し、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を実質的に含有しない熱可塑性高分子重合体(A)、水溶性高分子(B)、および極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含む化合物(C)を含む接着剤組成物等が有効であることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0047】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成とする。
(1) 本発明にかかる第1の接着剤組成物は、2−オキサゾリン基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体(A)、無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体、あるいは無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体の誘導体である水溶性高分子(B)、ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、またはエポキシクレゾールノボラック樹脂である化合物(C)を含み、乾燥重量で、接着剤組成物中、熱可塑性高分子重合体(A)を2〜75%、水溶性高分子(B)を5〜75%、化合物(C)を15〜77%含む。あるいは、これらの成分に、さらに脂肪族エポキシド化合物(D)、金属酸化物(F)、ゴムラテックス(G)、およびトリレンジイソシアネートまたはその2量体からなるベンゼン誘導体(H)よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、乾燥重量で、接着剤組成物中、熱可塑性高分子重合体(A)を2〜75%、水溶性高分子(B)を5〜75%、化合物(C)を15〜77%、脂肪族エポキシド化合物(D)が70%以下、金属塩(E)が50%以下、金属酸化物(F)が50%以下、ゴムラテックス(G)が18%以下、ベンゼン誘導体(H)が50%以下含む。
【0050】
なお本発明において、「ペンダント基」とは、高分子鎖を修飾する官能基である。また、高分子鎖へのペンダント基の導入は、本発明のような、ペンダントさせる基を含む単量体を重合させる方法の他、ペンダント基を高分子鎖に化学的修飾反応で導入する方法など、既知の方法で行うことができる。また、水性ウレタン化合物などの「水性」とは、水溶性または水分散性であることを示し、「水溶性」とは必ずしも完全な水溶性を意味するのではなく、部分的に水溶性のもの、あるいは本発明の接着剤組成物の水溶液中で相分離しないことをも意味し、「水分散性」とは水中あるいは本発明の接着剤組成物の水溶液中で分散することを意味し、「アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合」は、「アリル位の飽和炭素原子に水素基を有する炭素−炭素二重結合」のことであり、芳香性六員環など、共鳴安定性がある炭素−炭素二重結合は含まないことを示す。また、「(共)重合体」は、「重合体または共重合体」を意味し、「(ブロックド)イソシアネート」は、「ブロックドイソシアネートまたはイソシアネート」を意味し、イソシアネート基に対するブロック化剤と反応して生じたブロックドイソシアネート、イソシアネート基に対するブロック化剤と未反応のイソシアネート、あるいはブロックドイソシアネートのブロック化剤が解離して生じたイソシアネートなどを含む。
【0051】
また、本発明の水溶性高分子(B)はカルボキシル基を有することが好ましい。なお、接着剤組成物の使用などにおいて、水溶させることにより、カルボキシル基が遊離されてカルボキシル基を有することになる場合も含む。このような水溶性高分子としては、水溶性高分子と塩基性化合物との塩や、無水マレイン酸単位や無水マレイミド単位など加水分解によりカルボキシル基を遊離する単位を含有する水溶性高分子などが挙げられる。
【0052】
(4) 本発明にかかる樹脂材料は、上記接着剤組成物の層で、表面を被覆されたことを特徴とする。
(5) 本発明にかかるゴム物品は、上記樹脂材料で補強されたことを特徴とする。
(6) 本発明にかかる空気入りタイヤは、上記ゴム物品をゴム部材として適用したことを特徴とする。
【0053】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
[1]熱可塑性高分子重合体(A)について説明する。
熱可塑性高分子重合体(A)は、化合物(C)または水性ウレタン化合物(I)あるいは脂肪族エポキシド化合物(D)などの架橋成分により、硬く脆くなりがちな接着剤組成物マトリックスの可撓性を高める目的で、改質剤として、接着剤組成物に含ませる熱可塑性樹脂である。
【0054】
熱可塑性高分子重合体(A)が、硫黄架橋反応による接着歪を抑制しつつ、接着剤組成物の可撓性を高めることで、高歪時のコード強力低下を防止して、熱劣化後接着力、および高歪下での可撓性を保持できる。
さらに、熱可塑性高分子重合体(A)が含有する架橋性のペンダント基による比較的可撓性の高い架橋反応作用により、破壊靭性や耐熱変形性が保持できる。
【0055】
熱可塑性高分子重合体(A)は、ペンダント基に架橋性官能基を含有するが、この理由は、接着剤層−樹脂表面間の結合が得られるほか、熱可塑性高分子重合体(A)の分子内架橋などにより高温時の分子流動が抑制され、高温時接着力を向上できるからである。しかし、架橋性官能基の量が過度になると化学的耐熱性が低下する。
【0056】
熱可塑性高分子重合体(A)のペンダント基の架橋性官能基がオキサゾリン基、ビスマレイミド基、(ブロックド)イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、カルボジイミド基、ヒドラジノ基、エピチオ基であることが好ましい。特に好ましくは、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、または(ブロックド)イソシアネート基である。
【0057】
熱可塑性高分子重合体(A)に含まれる架橋性官能基の好ましい量は、熱可塑性高分子重合体(A)の主鎖骨格の分子量、ペンダント基に含まれる架橋性官能基の種類やペンダント基の分子量などに依存するが、一般的には、熱可塑性高分子重合体(A)の乾燥総重量に対し、0.01ミリモル/g〜8.0ミリモル/gの範囲にあることが好ましい。
特に架橋性官能基が熱可塑性高分子重合体(A)の分子内で架橋する自己架橋性官能基である場合は、0.01ミリモル/g〜6.0ミリモル/gであることが好ましい。
この理由は、 自己架橋によりモジュラスが向上し、その結果、熱可塑性高分子重合体(A)添加の主な目的である可撓性の向上効果が低くなる他、内部応力発生による歪みで接着が低下してしまうのを回避するためである。
このため、熱可塑性高分子重合体(A)に導入される架橋性官能基を含むペンダント基の量は、接着剤マトリックス等と高分子重合体(A)との界面での接着を向上し、かつ自己架橋による可撓性低下を生じない範囲が好ましい。
【0058】
また、熱可塑性高分子重合体(A)は、主鎖に、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を実質的に含有しないが、この理由は、主鎖に硫黄反応性があると、硫黄を含むゴム物品の使用等において、硫黄架橋に伴う接着の熱劣化が大きくなるので、これを回避するためである。
なお、熱可塑性高分子重合体(A)は、側鎖など主鎖以外の構造がある場合に、炭素−炭素二重結合をもつことができるが、この二重結合も主鎖と同様に、硫黄との反応性が低い、例えば、共鳴構造により安定的な、芳香性の炭素−炭素二重結合などであることが好ましい。
【0059】
また、前記熱可塑性高分子重合体(A)は、好ましくは直鎖状構造を主体とする比較的高分子量域の高分子重合体で、更に好ましくはゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で重量平均分子量が10,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。
この理由は、分子量が小さいと接着による歪を吸収する改善効果が得られなくなるからである。
【0060】
なお、熱可塑性高分子重合体(A)は、水性ウレタン化合物(I)と同じ原材料から高分子を合成できるが、水性ウレタン化合物(I)の分子量は、後述のとおり、好ましくは比較的低〜中分子量領域の分子で、特に好ましくは分子量9,000以下である。
熱可塑性高分子重合体(A)の合成などにおいて、原材料としてアルカリを用いることができ、アルカリの種類や量は、重合体により異なり特に制限されない。しかし、特にアルカリ金属の塩基および不揮発性で比較的低〜中分子量のアミンの場合には、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、揮発性のアミン、あるいは不揮発性で比較的低〜中分子量のアミンであっても、高分子反応時に高分子に取り込まれて高分子のアミンとなるようなアミン成分であればよい。
この理由は、前記のように、アルカリ成分が樹脂材料中に拡散した場合には、樹脂材料中のエステル結合の加水分解反応を促進するので、これを避けるためである。
【0061】
熱可塑性高分子重合体(A)は、水分散性であると、水を溶剤に使用できるので、環境への汚染が少なくでき、好ましい。
熱可塑性高分子重合体(A)のガラス転移温度は−90℃以上180℃以下が好ましい。
この理由は−90℃未満であると高温使用時のクリープ性が大きくなり、180℃以上では硬くなりすぎるため、軟質な熱可塑性樹脂特有の応力緩和性が小さくなり、また、タイヤ使用時などの高歪下でのコード耐疲労性が低下するからである。同様の観点から、より好ましくは−50℃以上120℃以下、更に好ましく0℃以上100℃以下である。
【0062】
前記熱可塑性高分子重合体(A)の主鎖には、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、酢酸ビニル・エチレン系重合体などのエチレン性付加重合体、および直鎖構造を主体とするウレタン系高分子重合体を好ましく用いることができる。この理由は、このようなウレタン系高分子重合体中のウレタン結合は、分子内に存在する凝集エネルギーが高く、しかもウレタン結合による分子間2次結合による凝集破壊抗力が高いので、耐久性が良好になるためである。
これらの重合体を、1種もしくは複数種組み合わせて使用できる。
【0063】
以下に、熱可塑性高分子重合体(A)の主鎖骨格が、[1−1]エチレン性付加重合体、[1−2]ウレタン系高分子重合体の場合に分けて説明する。
[1−1]エチレン性付加重合体
熱可塑性高分子重合体(A)がエチレン性付加重合体からなる場合には、その単位は、(a)炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体および(b)炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体からなる。
【0064】
(a)炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のα-オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、スルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性カルボン酸類及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチエレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のジエステル類;アクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β−エチレン性不飽和酸のアミド類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン;ビニルアミド;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;酢酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニル、ビニルピリジン等のビニル化合物;2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの付加重合性オキサゾリン類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ビニルエトキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物などが挙げられる。
また、(b)炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2、3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどのハロゲン置換ブタジエンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられ、また、非共役ジエン系単量体としては、ビニルノーボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン系単量体等が挙げられる。
これらの単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、ラジカル付加重合により重合体(A)を得ることが好ましい。
【0065】
架橋性官能基を導入する方法としては、特に限定されない。例えば、オキサゾリン、エポキシ基、マレイミド、ブロックドイソシアネート基、あるいはエピチオ基等を有する各付加重合性単量体を、ラジカル付加重合等により重合体を重合する際に、上記単量体と共重合させる方法等を採用できる。
【0066】
ペンダント基にオキサゾリンを含有する付加重合性単量体としては、例えば、下記の一般式
【0067】
【化2】
【0068】
〔式中、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル、アラルキル、フェニルまたは置換フェニルであり、R5 は付加重合性不飽和結合を持つ非環状有機基である。〕によって表すことができる。
【0069】
具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンを挙げられる。これらのうち、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手し易いため好適である。
【0070】
ペンダント基にエポキシ基を含有する付加重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、6−ビニルエポキシノルボルナンなどの脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーなど、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。特に(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0071】
ペンダント基にビスマレイミド基を含有する付加重合性単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。特にマレイミドが好ましい。
【0072】
ペンダント基にブロックドイソシアネート基を含有する付加重合性単量体としては、下記の一般式
【0073】
【化3】
【0074】
〔式中、R6は水素原子またはメチル基、Xは−OBO−(但し、Bはハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルキレン基)または−NH−、Yは芳香族ジイソシアネート残基、Zはケトオキシム残基である。〕で表される化合物を好ましく例示できる。
【0075】
ペンダント基にブロックドイソシアネート基を含有する付加重合性単量体は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する重合性単量体に、公知のブロック剤を付加反応させることで得られる。
イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤としては、例えば、フェノール、チオフェノール、クロロフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のフェノール類;イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の第二級または第三級のアルコール;ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第二級アミン類;フタル酸イミド類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム等のラクタム類;ε-カフロラクタム等のカフロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステルなどの活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;3−ヒドロキシピリジンなどの塩基性窒素化合物および酸性亜硫酸ソーダ等を挙げることができる。
【0076】
ペンダント基にエピチオ基を含有する付加重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸−2,3,−エピチオプロピル;(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル;脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;等が挙げられる。特に(メタ)アクリル酸−2,3,−エピチオプロピルが好ましい。
【0077】
これらの熱可塑性高分子有機重合体(A)のうち、ペンダント基にオキサゾリン基を含有する熱可塑性高分子重合体(A)が、長期貯蔵時における架橋性官能基の保存安定性が良好であるため好適に用いられる。
【0078】
[1−2]ウレタン系高分子重合体
熱可塑性高分子重合体(A)がウレタン系高分子重合体からなる場合、その主鎖構造には、主に、ポリイソシアネートと2個以上の活性水素を有する化合物とを重付加反応させ得られるウレタン結合やウレア結合などの、イソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合が多数存在する。
なお、同時に、イソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合のみならず、活性水素を有する化合物の分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、および、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、カルボジイミド等をも含むことは言うまでもない。
【0079】
エポキシ基を有するウレタン系高分子重合体は、例えば、後述の方法で製造する末端にイソシアネート基を有するウレタン系高分子重合体の末端イソシアネート基に、グリシドール、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテルビスフェノールA等、ジグリシジルエーテルの水酸基とエポキシ基を有する化合物を重付加反応させることにより得ることができる。
また、例えば、ブロックドイソシアネート基は、末端イソシアネート基を有するウレタン系高分子重合体を公知のブロック化剤で処理することで得られる。
【0080】
本発明におけるウレタン系高分子重合体の合成に用いられる、(a)ポリイソシアネートとしては、従来より一般に用いられる芳香族、脂肪族、脂環族の有機ポリイソシアネートを挙げることができる。具体的には、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'‐ジメチルジフェニル、4,4'−ジイソシアネート、ジアニシジンイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、 水添化キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、ウレタン変性トルエンジイソシアネート、アロファネート変性トルエンジイソシアネート、ビュウレット変性トルエンジイソシアヌレート、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、アシル尿素変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、またこれらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
本発明におけるウレタン系高分子重合体の合成に用いられる、(b)2個以上の活性水素を有する化合物としては、分子末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基等を有する、一般に公知のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリシロキサン等を挙げることができる。
【0082】
これらのうち、分子末端に2個以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルまたはポリエステルが好ましい。これら、2個以上の活性水素を有する化合物は、50〜5,000の分子量であることが好ましい。
具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ヘキサンジオール、1,5‐ヘキサンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、2,5‐ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7‐ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2‐オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4‐トリメチル−1,3−ペンタンジオール、プロピレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物などの低分子ポリオール類;2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,5,6−トリメトキシ−3,4−ジヒドロキシヘキサン酸、2,3−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシペンタン酸などのカルボキシ基含有ポリオール類などの低分子ポリオール類を挙げることができる。
【0083】
高分子量ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合物、THF/エチレンオキサイド共重合物、THF/プロピレンオキサイド共重合物などのポリエーテルポリオール類;ジメチロールプロピオン酸、ポリエチレンアジペート、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ−ε−カプロラクトン、およびこれらの共重合物であるポリエステルポリオール類;ポリエーテルエステルポリオール、ポリ炭酸エステル化合物等のポリカーボネートポリオール、炭化水素骨格ポリオールや、これらの重付加体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
本発明のポリウレタン系重合体に用いられる、2個以上の活性水素を有する化合物としては、少なくとも1種以上が、芳香族類もしくは芳香族類をメチレン結合した構造を含む化合物を含有することが好ましい。これは、芳香族類をメチレン結合した構造を含むことでポリエステル素材などに対する密着性が得られるからである。また、芳香族類をメチレン結合以外の結合で結ばれた構造を含む化合物も同様な効果により好ましい。
このような構造を含む化合物は、下記の化学式に示すようなジオール類などが挙げられるが特にこれらに限られるものではない。
【0085】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0086】
ペンダント基にヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体の具体的な合成方法は、特に限定されない。
本発明のペンダント基にヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体の合成は、先ず、2個以上の活性水素を有する化合物と、過剰量のポリイソシアネートを重付加反応等で反応させ得られた末端イソシアネートを有するウレタン系高分子重合体を製造し、第三級アミンなどの中和剤によって中和した後、水を加え転相させ、多官能カルボン酸ポリヒドラジドにより鎖延長と、末端イソシアネート封鎖の処理を行った。
【0087】
上述の2個以上の活性水素を有する化合物と、過剰量のポリイソシアネートとの反応は、従来から公知の一段式または多段式イソシアネート付加反応法により、室温または40〜120℃程度の温度条件下で行うことができる。
上記反応では、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチルアミン等の公知の触媒、リン酸、アジピン酸、ベンゾイルクロライド等の反応制御剤および、イソシアネート基と反応しない有機溶媒を使用しても良い。
上記溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類; N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0088】
上記反応で使用される中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモルホリン、モルホリン、2,2−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミンなどのアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
上記反応で使用される多官能カルボン酸ポリヒドラジドとしては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリメシン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(VDH)、エノコ酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、アクリルアミド−アクリル酸ヒドラジド共重合体などである。これらの中でもアジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、および1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(VDH)が好ましく使用される。
【0089】
また、必要に応じて、ジアミン、ポリアミン、N−メチルジエタノールアミンの如きN−アルキルジアルカノールアミン;ジヒドラジド化合物などの公知の鎖伸長剤も使用できる。
なお、得られたウレタン系高分子重合体(A)の水分散液中に有機溶媒が含有する場合、必要に応じて減圧、加熱条件化で留去することができる。
【0090】
[2]水溶性高分子(B)について説明する。
水溶性高分子(B)は、改質剤として接着剤組成物に添加され、接着剤組成物マトリックスとの相互作用により接着剤組成物を補強して、接着剤組成物の延性や破壊靭性を高める。
特に水溶性高分子(B)がカルボキシル基を含有する場合は、マトリックスを構成する脂肪族エポキシド化合物(D)や水性ウレタン化合物(I)などの架橋性官能基との架橋反応作用により、また金属塩(E)や金属酸化物(F)とのイオン的相互作用により、前記延性や破壊靭性をさらに高めることができる。
【0091】
水溶性高分子(B)は、水または電解質を含む水溶液に水溶性であり、その構造に特に制限はなく、直鎖であっても、分岐していても、あるいは二次元、三次元に架橋していてもよいが、性能の点から直鎖あるいは分岐鎖の構造のみの重合体であると好ましい。
この重合体の特徴としては、接着剤組成物の水溶液等の中にブレンドする際に、主鎖がなるべくゴムまり状にならず、広がることが好ましい。主鎖が広がり、カルボキシル基が接着剤マトリックスと相互作用することにより、接着剤組成物の耐熱変形性の向上を可能にするからである。
なお、水溶性高分子が部分的に水溶する場合、例えばコロイダルディスパージョンのような場合に、十分広がらなくても、接着剤組成物マトリックスと部分的に相溶すれば、効果を得ることができる。
【0092】
前記水溶性高分子(B)は、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、第三級アミン、第四級アンモニウム塩基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、アジド基の一群から選ばれる親水性官能基のうち少なくとも1つ以上を含有することが好ましい。
前記水溶性高分子(B)の主鎖は、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性カルボン酸類及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸などのヒドロキシ基含有アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチエレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステルなどの、エチレン性ジカルボン酸のジエステル類;α,β−エチレン性不飽和酸のアミド類の1つ、もしくは複数の水溶性モノマー同士、あるいはその他のモノマーとの(共)重合体をも好ましく用いることができる。その他のモノマーとしては、長鎖アルキレン、スチレン、メチルビニルエーテル、エチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、アクリロキシエチルフォスフェート、メタクリロシキエチルスルホン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
特にイソブテン−無水マレイン酸共重合体であると好ましい。さらに、本発明の水溶性高分子は塩の形態であってもよい。
また、水溶性高分子(B)は、水に溶解させ使用することがができるが、塩基性物質による中和物である塩として溶解させ使用することができる。
【0093】
具体的な水溶性高分子(B)の例としては、ポリアクリル酸;ポリ(α―ヒドロキシカルボン酸);アクリルアミドーアクリル酸;(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル−無水マレイン酸;スチレンーマレイン共重合体;エチレンーアクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸エステルー無水マレイン酸共重合体;イソブテンー無水マレイン酸などのαオレフィン−無水マレイン酸共重合体;メチルビニルエーテル−無水マレイン酸、アリールエーテル−無水マレイン酸などのアルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体;スチレン−アクリル共重合体;αオレフィン−(メタ)アクリル酸エステル−マレイン酸共重合体またはこれら水溶性高分子の塩基性物質による中和物が挙げられ、特にイソブテン−無水マレイン酸共重合体またはこれらの塩基性物質による中和物であると好ましい。
【0094】
水溶性高分子(B)を中和する塩基性物質としては、塩基性物質であれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩;リン酸三ナトリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩が挙げられ、これらの中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましく用いられる。なかでも、ポリエステルなどの樹脂材料を加水分解させ劣化させる作用のあるアルカリ金属を含む塩基より、樹脂材料に塗布した後の加熱工程などで飛散する、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなど、沸点が150℃以下、好ましくは100℃以下で揮発性がある有機アミンなどの塩基が好ましい。
【0095】
また、水溶性高分子(B)が、実質的に炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体由来の単位からなることが好ましい。この理由は、硫黄反応性があると、硫黄架橋に伴う接着の熱劣化が大きくなるためである。水溶性高分子(B)の主鎖構造に、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を少くすることにより、ゴム物品で使用される硫黄による架橋に伴う化学的な構造収縮変化のうち、不可逆な化学的劣化に起因する接着力の熱劣化の低下などを小さくすることができる。また、水溶性高分子(B)は、比較的高分子量域の高分子重合体であることが好ましく、好ましくは重量平均分子量3,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは80,000以上である。
【0096】
[3]化合物(C)について説明する。
化合物(C)は、主に接着剤組成物の一方の被着体である樹脂材料への接着を促進する作用を目的として含ませられる。
化合物(C)は極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含む。その理由は、基材となるポリエステル樹脂などの合成樹脂素材は、扁平線状な高分子鎖からなり、この高分子鎖は、これに含まれる芳香族などに由来するπ電子的雰囲気を有している。従って、接着剤組成物の成分中に、分子側面に芳香族性π電子を有する分子構造が含まれると、この分子構造部分と前記樹脂の高分子鎖のπ電子的雰囲気部分との間のπ電子的な相互作用により、接着剤組成物の樹脂表面への密着性や、樹脂の高分子鎖間への拡散などの効果も得られやすいなどのためである。
【0097】
また化合物(C)の極性官能基は、接着剤組成物中に含まれるカルボキシル基、架橋性成分であるエポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などと反応する基であることが好ましい。具体的には、エポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などの架橋性官能基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0098】
芳香族類をメチレン結合した分子構造としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、あるいはフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物などにみられる分子構造が挙げられる。芳香族類をメチレン結合した分子構造部分は、分岐などせず直鎖状であることが好ましい。
この芳香族類をメチレン結合された分子構造は、メチレンジフェニル、または、比較的に線状な分子構造のポリメチレンポリフェニルの構造が好ましい。なお、芳香族類をメチレン結合された分子構造部分の分子量は、特に規制されないが、好ましくは6,000以下、より好ましくは2,000以下である。この理由は、分子量6,000超過になると高分子量となり過ぎ、投錨効果がほとんど一定にも拘わらず、基材への拡散性が小さくなるからである。
また、化合物(C)としては、好ましくは比較的低〜中分子量領域の分子で、分子量9,000以下が好ましい。
さらに、化合物(C)は、水性(水溶性あるいは水分散性)であることが好ましい。
【0099】
化合物(C)としては、芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤を含む化合物、ジフェニルメタンジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物、ビスフェノール系エポキシド化合物、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物またはその変性体、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノール・レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物、エポキシ基を有するクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂類あるいはその変性体、水性ウレタン化合物(I)などを挙げることができる。
【0100】
芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤とを含む化合物としては、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートと公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物などが挙げられる。
ジフェニルメタンジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、前述のイソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応物が挙げられる。具体的には、実施例で用いたエラストロンBN69やDELION PAS-037など市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0101】
フェノール類としては、例えば、フェノール;アルキルフェノール類;ハロフェノール;アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、m−メトキシフェノールなどの一価フェノール;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノール、天然のフェノール樹脂類などの多価フェノール類;等が挙げられる。
【0102】
前記アルキルフェノールとしては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。
前記ハロフェノールとしては、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール等が挙げられる。
前記アミノフェノールとしては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等が挙げられる。
前記ニトロフェノールとしては、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノールが挙げられる。
前記アルキルレゾルシンとしては、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−プロピルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシンが挙げられる。
天然のフェノール樹脂類としては、エストニア産のオイルシェールの乾留により得られる多価フェノール混合物(アルキレース)等を挙げることができる。
ノボラック化反応により得られるフェノール樹脂(機能性接着剤の開発と最新技術(上巻)p.82;1997年;株式会社CMC)が好ましい。
これらの1種もしくは2種以上のフェノール類とフォルムアルデヒドとを縮合した反応物を挙げることができる。
また、これらフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物は、エポキシ化、スルホメチル化、スルフィルメチル化などにより変性した誘導体も好ましく用いることができる。
特に好ましくは、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、ノボラッククロロフェノール・レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物、エポキシ基を有するクレゾールノボラック樹脂である。
【0103】
フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物の具体例としては、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、アミノフェノールとクレゾールとホルムアルデヒドの縮合物、p−クロロフェノールとホルムアルデヒドの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物などが挙げられるが、好ましくは、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、p−クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物などを挙ことができる。
より具体的には、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物はWO97/13818公報の実施例に記載のノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物や、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物はナガセ化成工業(株)のデナボンド、デナボンド−AL、デナボンド−AFなどを用いることができる。
【0104】
エポキシクレゾールノボラック樹脂としては、旭チバ(株)のアラルダイトECN1400、ナガセ化成工業(株)のデナコールEM-150などの市販の製品を用いることができる。このエポキシノボラック樹脂はエポキシド化合物でもあるため、接着剤組成物の高温での流動化を抑制する接着剤分子の分子間架橋成分としても作用する。
フェノール類とホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化変性した化合物は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応の、反応の前、反応中、あるいは反応の後にスルホメチル化剤を加熱反応させた化合物である。スルホメチル化剤としては亜硫酸、重亜硫酸と塩基性物質の塩が挙げられる。
具体的には特願平10−203356号公報の実施例に記載のフェノール類とホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化変性物などを用いることができる。
【0115】
[5]脂肪族エポキシド化合物(D)について説明する。
脂肪族エポキシド化合物は接着剤組成物の架橋剤として含ませる。
前記脂肪族エポキシド化合物(D)は、1分子中に好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上のエポキシ基を含む化合物である。
この理由は、エポキシ基が多官能であるほど、接着剤組成物の高温領域での応力によるクリープやフローを抑制効果が高く、高温での接着力が高くなるからである。
【0116】
また、前記2個以上のエポキシ基を含む化合物が、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物であることが好ましい。
脂肪族エポキシド化合物としては、脂肪酸のグリシジルエステル類、脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル類、環状脂肪族エポキシド化合物類などが挙げられる。
このエポキシド化合物は、特に前述の可撓性エポキシ樹脂である、長鎖脂肪酸のグリシジルエステルや多価アルコールのグリシジルエーテルなどが好ましく用いられる。
【0117】
エポキシ化合物(D)の具体例としては、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレン・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリチオール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、などの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物が挙げられる。
【0118】
多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物のうち、特に好ましくは、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテルである。
この理由はエポキシ基が多官能で高温時の接着剤層の応力によるフロー、クリープによる高温接着力低下が少なく、また長鎖状で柔軟な主骨格構造で可撓性があるため、架橋による接着剤層の硬化・収縮の発生が小さく、内部歪応力による接着力低下が小さくなるためである。
これらソルビトール・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂は市販の薬品を用いることができる。
【0119】
かかるポリエポキシド化合物は、水に溶解、または乳化により水に分散させて使用できる。乳化液とするには、例えば、かかるポリエポキシド化合物をそのまま水に溶解するか、あるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて水に乳化できる。
【0120】
[6]金属塩(E)および金属酸化物(F)について説明する。
金属塩(E)、金属酸化物(F)は接着剤組成物の安価な充填剤として含ませ、接着剤組成物に延性や、強靭性を付与することができる。
金属塩、金属酸化物は多価金属塩や多価金属酸化物が好ましい。なおここでいう「金属」とは、ホウ素や、珪素などの類金属をも含包する。多価金属塩、多価金属酸化物は、水酸化ナトリウムなど1価のアルカリなどと比較して、ポリエステルなどの基材となる樹脂材料をアルカリ加水分解させるなどの劣化作用が小さく好ましいほか、接着剤組成物中のカルボキシル基を含むポリマー間をイオン結合的な相互作用で架橋する効果も期待できる。
多価金属塩としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの2価以上の、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物、珪酸塩などの塩が挙げられる。
多価金属酸化物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ホウ素、珪素、ビスマス、マンガン、鉄、ニッケルの酸化物、または、これら酸化物がその構成要素となっている、ベントナイト、シリカ、ゼオライト、クレー、タルク、サテン白、スメクタイトなどが挙げられる。
【0121】
これら多価金属塩、多価金属酸化物は、一般的に、水溶媒などを用いても溶解し難く、接着剤組成物に相溶するよりは分散しやすいため、充填物として作用し易い。従って、これら金属塩、金属酸化物は微細粒子として添加することが好ましく、平均粒子径は好ましくは20μm以下、特に好ましくは5μm以下である。この理由としては、タイヤコードなどでは接着剤組成物の被覆層の厚さが数μm〜50μm程度が一般的であるため、この厚みよりは粒子径が小さいことが好ましいためである。
また、金属塩、金属酸化物は既知の界面活性剤あるいは水溶性高分子などで水に分散して用いることができる。本発明においては、水溶性高分子(B)をその保護コロイドとして利用して比較的安定な水分散体を得ているが、特に水に分散できればこの方法に限定されない。
【0122】
[7]ゴムラテックス(G)について説明する。
ゴムラテックスは公知のゴムラテックスを用いることができる。
ビニルピリジン−共役ジエン化合物系共重合体ラテックスおよびその変性ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ラテックスおよびその変性ラテックスなどの合成ラテックス;天然ゴムラテックス等を例示でき、これらを1種または2種以上併用してもよい。
なお、これらの合成ラテックスは、接着剤組成物マトリックスと架橋する、カルボキシル基やエポキシ基など架橋性官能基を有する単量体を含有していてもよい。また、カルボキシル変性、エポキシ変性などの変性を行った変性ラテックスを用いることができる。
特に、接着剤組成物のマトリックスに対する架橋性官能基を有する場合には、マトリックスの凝集破壊抗力が向上するため、初期接着力や、歪下などでの接着耐久性が向上するので好ましい。
なお、ビニルピリジン−共役ジエン化合物系共重合体ラテックスとしては、WO97/13818公報などで開示の、接着性能を損なわず低ブタジエン量化した、マルチステージフィード重合方法で得られる共重合体を用いることができる。このnVpラテックスは、JSR(株)製品などを用いることができる。
【0123】
[8]2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体(H)について説明する。
このベンゼン誘導体(H)としては、トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソプロペニルジメチルベンジルジイソシアネートなどのベンゼン類のイソシアネート誘導体もしくはその2量体などが挙げられる。
【0124】
[9]接着剤組成物の組成比について説明する。
[9−1]熱可塑性高分子重合体(A)、水溶性高分子(B)および化合物(C)を含む接着剤組成物の場合
乾燥重量で、接着剤組成物中、熱可塑性高分子重合体(A)が2〜75%、水溶性高分子(B)が5〜75%、化合物(C)が15〜77%であると好ましい。
【0125】
この理由は、熱可塑性高分子重合体(A)が2重量%未満では少なすぎて、重合体(A)を添加する目的である接着での歪吸収による接着力劣化抑制の効果が十分得られず、一方75重量%超過になると熱可塑性高分子重合体(A)の接着剤組成物に含まれる量が多すぎ、熱による可塑化で、高温時の接着力が低下するため好ましくないためである。
【0126】
また、水溶性高分子(B)が5重量%未満では少なすぎて、水溶性高分子(B)を添加する目的である接着剤組成物の熱変形性への耐久性や、強靭性などを高める効果が十分に得ることができず、一方75重量%超過になると水溶性高分子(B)の接着剤組成物に含まれる量が多く、化合物(C)の成分が少なくなりすぎ、化合物(C)の量が少なくなると初期接着力が低下するためである。
【0127】
また、化合物(C)が15重量%未満では接着性改良剤である化合物(C)の含有量が少なすぎ接着力が初期より低下し、一方77重量%超過では接着剤組成物の他の成分が少なくなりすぎ高温接着力、あるいは耐熱接着力が低下してしまうためである。
同様の観点から、熱可塑性重合体(A)がより好ましくは6〜65%、さらに好ましくは10〜55%であり、水溶性高分子(B)がより好ましくは15〜60%、さらに好ましくは18〜45%であり、化合物(C)が より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは18〜55%である。
【0130】
上記[9−1]の接着剤組成物は、これら成分に加えて、さらに脂肪族エポキシド化合物(D)、金属塩(E)、金属酸化物(F)、ゴムラテックス(G)、2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体(H)のうち少なくとも1種の成分を含むことができるが、この場合の配合量を以下に説明する。乾燥重量で、接着剤組成物中、脂肪族エポキシド化合物(D)が70%以下であると好ましい。この理由は、70重量%超過では接着剤組成物が硬くなりすぎチューブ疲労など歪下での疲労性が低下してしまうためである。同様の観点から、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは10〜30%である。なお、化合物(C)がエポキシクレゾールノボラック樹脂などのエポキシ基を含有する架橋性化合物の場合は、接着剤組成物に含まれる「脂肪族エポキシド化合物(D)と化合物(C)の含有量」の合計が接着剤組成物の乾燥重量の9〜70%以下であることが好ましい。この理由は、9重量%未満では化合物(C)が少なくなり、架橋による接着剤組成物の分子流動を抑制する効果が低下して高温時の接着力が低下する場合があり、一方70重量%超過では接着剤組成物が硬くなりすぎチューブ疲労など歪下での疲労性が低下してしまうためである。
【0131】
また金属塩(E)は50%以下であると好ましい。この理由は、50重量%超過では接着剤組成物の靭性が低くなり、接着力が低下してしまうためである。同様の観点から、より好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜25%である。
【0132】
また金属酸化物(F)は50%以下であると好ましい。この理由は、50重量%超過では、やはり、靭性が低くなり、接着力が低下してしまうためである。同様の観点から、より好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜25%である。
【0133】
またゴムラテックス(G)は18%以下であると好ましい。この理由は、18%超過では接着組成物が硫黄と反応することで、内部応力による歪により接着力が低下するためである。同様の観点から、より好ましくは15%以下である。
【0134】
べンゼン誘導体(H)は50%以下であると好ましい。この理由は、50%超過では接着剤組成物の靭性が低くなり、接着力が低下してしまうためである。同様の観点から、より好ましくは20%以下である。
【0135】
なお、上記(A)〜(H)の各成分は、それぞれの成分において、1種に限らず2種以上を使用してもよいが、この場合は、それらの合計量がその組成の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0136】
本発明の接着剤組成物は、上記(A)〜(H)を主な成分とするものであるが、架橋性官能基を有さない水性ウレタン樹脂やセルロース系共重合体などのその他の水性樹脂成分を含んでもよい。これら水性成分は、一般的に、接着剤乾燥重量の30%以下であることが好ましいが、これに限定されない。
また、各成分は、接着剤組成物の製造、塗布などの工程で、水、有機溶剤などの各種溶剤に溶解または分散して使用することができる。
【0137】
また、アルカリ金属は、乾燥重量で、接着剤組成物中、2%以下であることが好ましい。この理由は、接着剤組成物が塩基性であると、アルカリ金属はポリエステルなど被着体の樹脂材料の分子を加水分解により劣化させるからである。また、接着剤組成物が塩基性でない場合であっても、アルカリ金属が2%以下であると以下の点で好ましい。すなわち、ゴム物品製造時の加硫工程などで発生するゴム中の加硫促進剤成分から発生するアミン成分が接着剤組成物を浸透して樹脂材料に作用する。このとき接着剤組成物中の水溶性高分子などのカルボキシル基と相互作用するアルカリ金属が少ないほど、接着剤組成物を浸透するアミン成分の遮蔽などの効果が得られるなどで、ポリエステルコードなどでは接着剤組成物に含有するアルカリ金属が少ないほどコード強力の低下が少なくなる効果が得られるためである。
従って、特にポリエステルなどの樹脂材料では、接着剤組成物に含有するアルカリ金属を削減することが、高温下で耐久性が良好な接着剤組成物とするのに好ましい特徴の1つとなる。
【0138】
[10]接着剤組成物の貯蔵弾性率G’(60℃および200℃)について説明する。
上記接着剤組成物においては、各温度での接着剤組成物の粘弾性を制御することが重要となる。特に非汎用タイヤでは、高歪走行時の温度である200℃近くの物性は、高温度で軟化せず、通常走行時の温度である60℃付近では歪みに対して柔軟で可撓性が高く、しかも硬さを維持することが望ましい。
本発明の接着剤組成物は、プレート式動的粘弾性測定装置を用いて、60℃、周波数10Hzで動的粘弾性を測定したときの貯蔵弾性率G’が10の9乗以下であると好ましい。この理由は、10の9乗超過であると一般に材料はガラス状態に近くなり、タイヤでの高歪下の走行や、チューブ疲労試験などでの耐久性が低くなるためである。同様の観点から、より好ましくは10の8乗以下である。このような効果は、熱可塑性高分子重合体(A)や水溶性高分子(B)の作用により得られる。
また、200℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率G’は10の6乗以上であることが好ましい。高温では、接着剤組成物マトリックスの分子間架橋や、熱可塑性高分子重合体(A)や水溶性高分子(B)が含有する官能基が架橋することにより、200℃付近のモジュラスを改善し、いわゆる広いプラトー領域(貯蔵弾性率が10の6乗〜8乗程度)をもつことがその特徴の1つである。なお、貯蔵弾性率G'が10の6乗未満であると、一般に材料はいわゆる粘着剤に近い、低いモジュラス領域にとなり、タイヤでの高温走行などでは、接着剤組成物が熱により変形破壊しやすくなるので好ましくない。
【0139】
このように、60℃では、可撓性を保持するため貯蔵弾性率G'を抑制し、同時に、200℃での高温では、軟化を抑制し、貯蔵弾性率G'を高く保ち、これらを両立させることが、高温、高歪下で耐久性が良好な接着剤組成物とするのに好ましい特徴の1つである。
【0140】
[11]接着剤組成物の積算反応熱量について説明する。
この積算反応熱量は、アリル位に水素基を有する炭素―炭素二重結合と硫黄との反応に基づく反応熱に相関しているので、この量から、前記二重結合の量を評価することができる。
実施例記載の方法に従い、前記接着剤組成物の乾燥重量100重量部と10重量部の硫黄を160℃で90分間反応させたときの、接着剤組成物乾燥1gあたりの積算反応熱が85J(ジュール)以下であると好ましい。
85J以上になると、熱劣化後接着力とそのゴム付着量の低下が著しく、特に、ゴム付着率が表14の基準でCレベル以下となるため好ましくない。また、ひいては総合耐熱接着力およびゴム付きレベルが低下するためである。
この理由は、熱的刺激で加硫反応が促進されると硬化し、熱可塑性高分子重合体(A)特有の軟質な応力緩和性が小さくなり、また、架橋で分子鎖を拘束するのに伴う応力が発生するため、加硫による化学的接着劣化が著しくなるからである。同様の観点から、より好ましくは、65J以下である。
なお、接着剤組成物の硫黄反応性は、本発明の実施例で規定する方法により、加硫温度での反応熱量を測定して求めることができる。
【0141】
上記積算反応熱量を所定範囲に規定する効果は、例えば、合成繊維などの合成樹脂材料の被着体と、硫黄等の加硫剤を含むゴム組成物の被着体の接着など、いずれかの被着体に含まれる加硫剤が接着剤組成物へ移行し、接着剤組成物が加硫剤により架橋され得る接着方法において得られることは言うまでもない。
【0142】
前記加硫剤としては、硫黄;テトラメチルチラリウムジスルフィド、ジペンタメチレンチラリウムテトラサルファイドなどのチラリウムポリサルファイド化合物;4,4−ジチオモルフォリン、p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾキノンジオキシム、環式硫黄イミドなど有機加硫剤;等が挙げられる。
【0143】
[12]樹脂材料について説明する。
上記のような接着剤組成物を樹脂材料、たとえばポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、またはアクリル樹脂の表面に被覆させ、適度な熱処理を施すことにより、接着剤組成物が樹脂材料表面に接着処理された樹脂材料を作成することができる。
【0144】
本発明の接着剤組成物を被覆させる樹脂材料は、特にポリエステル樹脂材料が好ましい。ポリエステルは、主鎖中にエステル結合を有する高分子であり、詳しくは、主鎖中の繰り返し単位の結合様式の80%以上がエステル結合様式のものである。かかるポリエステルは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等のグリコール類と、テレフタル酸、イソフタル酸、およびそれらのジメチル体等のジカルボン酸類のエステル化反応、あるいはエステル交換反応によって縮合して得られるものである。最も代表的なポリエステルはポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートである。
【0145】
上記のようなポリエステル樹脂材料の他、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン等の脂肪族ポリアミド樹脂材料、パラフェニレンテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド樹脂材料が挙げられる。
これらの樹脂材料の形態はコード、ケーブル、フィルム、フィラメント、フィラメントチップ、コード織物、帆布、短繊維、不織布等が挙げられ、特にタイヤ物品やコンベアベルトなどゴム物品補強には、前記樹脂材料が複数のフィラメントを撚り合わせてなるコードが好適に用いられる。
かかるコードは、合成繊維が上撚りと下撚りを有し、下記式(1)、(2)で規定される下撚りの撚係数N1が0〜0.70であり、上撚りの撚係数N2が0.12〜0.90であることが好ましい。
N1=n1×(0.125×D1/ρ)1/2×10−3 (1)
N2=n2×(0.125×D2/ρ)1/2×10−3 (2)
(式中、D1は下撚り糸束の表示デシテックス数、D2はトータル表示デシテックス数、n1は下撚り数(回/10cm)、n2は上撚り数(回/10cm)、ρは有機繊維の比重を表す。)
この理由は、下撚りの撚係数N1が0.70超過であると、コードの弾性率が低くなるためである。特に好ましくは、0.15〜0.60である。また、上撚りの撚係数N2が、0.12未満ではコードが「ばらけて」作業性を悪化させる傾向があるためである。また、コードの弾性率を保つためには、0.90以下であることが好ましい。よりこの好ましくは0.18〜0.75である。
また、前記コードを被覆する接着剤組成物が、乾燥重量で、コード重量に対し0.5〜6.0重量%であると好ましい。
【0146】
また、本発明の接着剤組成物を処理したコードのスティフネスは硬すぎるとチューブ耐疲労性が低くなるので好ましくない。本発明の接着剤組成物は、樹脂材料として、撚構造1670dtex/2、上撚数40回/10cm、下撚数40回/10cmの例えばポリエチレンテレフタレートタイヤコードに、コード重量に対し接着剤組成物の乾燥重量が約2.0〜2.5重量%付着させたコードで、ガーレー式によるコードスティフネスが、好ましくは150mN以下、より好ましくは100mN以下である。コードスティフネスが150mN超過であると、コードが硬すぎチューブ疲労による寿命が短くなる。
また、かかるコードは接着剤組成物を処理後、コード柔軟化装置などにより、コードの柔軟化を行ってもよい。
【0147】
被覆させる方法は、特に限定されず、接着剤組成物に樹脂材料を浸漬する方法、接着剤組成物をハケで塗布する方法、接着剤組成物をスプレーする方法等、必要に応じて適当な方法を選択することができる。
この被覆処理に際しては、接着剤組成物を種々の溶剤に溶解して粘度を下げてから行うと、塗布作業が容易になるため好ましい。またかかる溶剤が水であると環境的に好ましい。
【0148】
接着剤組成物を表面に被覆された樹脂材料は、例えば、100℃〜210℃の温度で乾燥させた後、引き続いて行う熱処理は、樹脂材料のポリマーのガラス転移温度以上、好ましくは、該ポリマーの〔融解温度−70℃〕以上、〔融解温度−10℃〕以下の温度で施すのが好ましい。この理由としては、ポリマーのガラス転移温度未満では、ポリマーの分子運動性が悪く、接着剤組成物のうちの接着を促進する成分とポリマーとが十分な相互作用を行えないため、接着剤組成物と樹脂材料の結合力が得られないためである。
かかる樹脂材料は、予め電子線、マイクロ波、コロナ放電、プラズマ処理等の前処理加工されたものでもよい。
【0149】
このようにして得られた接着剤組成物被覆樹脂材料は、直接、未加硫ゴムに埋設して、加硫により接着させても良好な接着を得ることができるが、さらに、接着剤組成物被覆樹脂材料を、一旦、公知の方法で作成されるRFLを含む処理液で被覆した後、未加硫ゴムに埋設し加硫する等の方法により、該樹脂材料とゴムとを接着させてもよい。
【0150】
RFLを含む処理液としては、例えば、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物/ゴムラテックス(例えば、スチレンブタジエンラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスなどの30〜60%エマルジョン)=1:2〜1:20(重量比)であり、これらの成分に加えて、必要に応じ、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルマリン縮合物、やメチレンジフェニルジポリソシアネートを含むブロックドイソシアネート水分散体など、芳香族類をメチレン結合した構造の接着性改良剤などを含有させることができる。
またRFLの熟成液の製造方法としては、水、レゾルシンおよび/またはレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、ホルムアルデヒド、およびアルカリを加えた後、ある程度までレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させた液に、ゴムラテックスを混合して、さらに熟成する2段の熟成方法や、初期から、水、レゾルシンまたは/およびレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、ホルムアルデヒド、アルカリ、ゴムラテックスを混合した後、熟成させる1段の熟成方法があるが、いずれの方法を用いても構わない。
なお、1段の熟成方法では、一般にゴムラテックス液は、その分散安定性を保持するため、多くアルカリを含んでいるため、レゾルシンとホルムアルデヒドを反応させるためのアルカリ触媒を添加しなくても、レゾルシン(または、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物)とホルムアルデヒドとゴムラテックス液を混合すれば、RFL熟成液が得られる場合がある。本発明においてはゴムラテックスに含まれるアルカリでRFL熟成液を得る方法を後述する実施例における配合例T−2で示す。このような熟成方法により、RFL液に含まれるアルカリ量を減らすことは、ポリエステル材料など熱下でアルカリにより劣化しやすい材料が被着体の場合には好ましい。
RFLを含む処理液でコードを処理する方法としては、コードを被覆するRFL処理液組成物が乾燥重量で、コード重量に対し0.5〜6.0重量%、好ましくは2〜6重量%となるようにする。被覆処理されたコードは乾燥(例えば温度100〜150℃)した後、さらに、例えば200〜250℃の温度で熱処理する。
【0151】
[13]ゴム物品および空気入りタイヤについて説明する。
本発明の接着剤組成物で被覆した樹脂材料で補強されるゴム物品としては、タイヤ、コンベアベルト、ベルト、ホース、空気バネなどが挙げられる。
空気入りタイヤの場合、カーカスプライ、ベルト補強層等のゴム部材に好適に適用できる。
【0152】
【実施例】
本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでない。
なお、実施例中の固形分濃度は、JIS K6833「その他の接着剤」の測定方法における接着剤の不揮発分の測定方法に準拠して行った。
実施例において使用した成分は以下のとおりである。
[重合体A]
実施例品:A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−8、A−9
比較例品:A−6、A−7
A−1 エポクロスK1010E;(株)日本触媒製、固形分濃度40%
(2−オキソザリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン)
ポリマーTg:−50℃、 オキサゾリン基量: 0.9 (mmol/g,solid)の品
A−2 エポクロスK1030E;(株)日本触媒製、 固形分濃度40%
(2−オキソザリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン)
ポリマーTg:50℃、 オキサゾリン基量: 0.9 (mmol/g,solid)の品
A−3 エポクロスK2030E ;(株)日本触媒製、 固形分濃度40%
(2−オキソザリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン)
ポリマーTg:50℃、 オキサゾリン基量: 1.8 (mmol/g,solid)の品
A−4 合成例1の重合体(調製法を下記に示す)
(2−オキソザリン基を含有するスチレン系共重合体エマルジョン)
ポリマーTg:104℃
A−5 合成例2の重合体(調製法を下記に示す)
(2−オキソザリン基を含有する、アクリル・スチレン・ブタジエン系共重合体エマルジョンで、ブタジエンを含むが、単量体組成比で10%以下の品)
A−6 合成例3の重合体(調製法を下記に示す)
(2−オキソザリン基を含有するアクリル・スチレン・ブタジエン系共重合体エマルジョンで、ブタジエンを含み、ブタジエンが単量体組成比で10%超過の品)
A−7 合成例4の重合体(調製法を下記に示す)
(オキソザリン基を含有しないアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン)
A−8 合成例5の重合体(調製法を下記に示す)
(ブロックドイソシアネート基を含有するアクリル系共重合体エマルジョン)
A−9 合成例6の重合体(調製法を下記に示す)
(ヒドラジノ基を含有するウレタン系共重合体エマルジョン)
【0153】
[水溶性高分子B]
実施例品:B−1、B−2、B−3、B−4、B−5、B−6
B−1 イソバン10;(株)クラレ 、固形分100%
(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物)
分子量: 160,000〜170,000
B−2 イソバン04;(株)クラレ 、固形分100%
(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物)
分子量: 55,000〜65,000
B−3 イソバン110;(株)クラレ、固形分100%
(イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物の、無水マレイン酸単位をアンモニアと反応させて、マレイン酸のモノアミド単位とした後、加熱により閉環させてマレイミド単位とした誘導体)
分子量: 190,000〜200,000
B−4 ジュリマーAC−10L ;日本純薬(株)
ポリアクリル酸
B−5 スクリプセット520;モンサント(株)製
(スチレン−無水マレイン酸共重合体、分子量: 350,000)
B−6 合成例7の重合体(調製法を下記に示す) 固形分100%
(アリルエーテル−無水マレイン酸共重合体、分子量:27,000)
【0154】
[化合物(C)]
実施例品:C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6
C−1 DELION PAS-037; 竹本油脂(株)製
(ジフェニルメタンビス(4,4'−カルバモイル−ε−カプロラクタム):ジフェニルメタンジイソシアネートの分子構造とブロック化剤を含む)固形分濃度 27.5%
C−2 Grilbond IL-6;EMS-CHEMIE AG製
(Caprolactam Blocked dipheylmethane-diisocyanate:ジフェニルメタンジイソシアネートとブロック化剤を含む)固形分濃度 50%
C−3 Penacolite R−50;Indspec Chem. Co. 製
(ノボラック化反応によるレゾルシンとホルムアルデヒド縮合物)固形分濃度 50%
C−4 デナボンドーAF;ナガセ化成工業(株)
(ノボラック化反応によるクロルフェノールとホルムアルデヒドとレゾルシノール縮合物)固形分濃度 30%
C−5 合成例8の重合体(調製法を下記に示す)
(ノボラック化反応によるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化物)
C−6 ARLDITE ECN1400;旭チバ(株)製固形分濃度40%
(エポキシクレゾールノボラック樹脂の40%水分散液、pH7.5、 エポキシ価0.44(当量/100g,solid) )
【0156】
[脂肪族エポキシド化合物(D)]
実施例品:D−1、D−2
D−1 デナコールEX614B; ナガセ化成工業(株)製
(ソルビトールポリグリシジルエーテル)
D−2 SR−4GL; 阪本薬品工業(株)製
(ポリグリセリンポリグリシジルエーテル)
【0157】
[金属塩(E)]
実施例品:E−1、E−2
E−1 ホワイトンP−30; 白石カルシウム(株)製
(炭酸カルシウム)平均粒子径 0.15μm
E−2 水酸化アルミニウム; 和光純薬工業(株)製、市販試薬
【0158】
[金属酸化物(F)]
実施例品:F−1
F−1 FINEX−75; 堺化学工業(株)製
(酸化亜鉛)平均粒子径 0.01μm
【0159】
[ラテックス(G)]
実施例品:G−1、G−2
G−1 JSR2108;JSR(株)、 固形分濃度40%
(スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SBRラテックス))
G−2 合成例11の重合体(調製法を下記に示す)
(ビニルピリジン・ブタジエン・スチレン共重合ラテックス (通称:nVpラテックス))
【0160】
[2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を含有するベンゼン誘導体(H)]
実施例品:H−1
H−1 Thanecure T9; TSEインダストリー, Inc.製
(1,3-bis(3-isocyanato-4-methylphenyl)-1,2-diazetidin-2,4-dione;トリレンジイソシアネートの2量体)
固形分 100%
【0161】
(1)熱可塑性高分子重合体(A)の調製法
a)合成例1(A−4)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水782.4部及びハイテノールN−08(第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩)15%水溶液128部を仕込み、適量の28%アンモニア水でpH9.0に調整し、ゆるやかに窒素ガスを流しながら70℃に加熱した。そこへ過硫酸カリウムの5%水溶液64部を注入し、続いて予め調整しておいた、スチレン576部及び2−イソプロペニル−2−オキサゾリン64部からなる単量体混合物を3時間にわたって滴下した。反応中は窒素ガスを吹き込み続け、フラスコ内の温度を70±1℃に保った。滴下終了後も2時間同じ温度に保った後、内温を80℃に昇温させて1時間攪拌を続けて反応を完結させた。その後冷却し、不揮発分39.5%、pH8.0の2−オキサゾリン基含有重合体水性分散液を得た。
上記で生成した水性分散液に2−オキサゾリン基が存在していることは、2−オキサゾリン基中の炭素−窒素二重結合の強い吸収(波数1655〜1657cm-1)があることはフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で確認した。
【0162】
b)合成例2(A−5)
予め調整しておいた単量体混合物が1,3−ブタジエン18.8部、スチレン557.2部及び2−イソプロペニル−2−オキサゾリン64部からなること以外は、上記合成例1と同様にして、不揮発分39.3%、pH8.0の2−オキサゾリン基含有重合体水性分散液を得た。
2−オキサゾリン基の存在は、上記と同様にして確認した。
【0163】
c)合成例3(A−6)
予め調整しておいた単量体混合物が1,3−ブタジエン105部、スチレン471部及び2−イソプロペニル−2−オキサゾリン64部からなること以外は上記合成例1と同様にして、不揮発分40.1%、pH8.0の2−オキサゾリン基含有重合体水性分散液を得た。
2−オキサゾリン基の存在は、上記と同様にして確認した。
【0164】
d)合成例4(A−7)
予め調整しておいた単量体混合物がアクリル酸ブチル200部、スチレン432部からなること以外、上記合成例1と同様にして、不揮発分39.5%、pH8.0の重合体水性分散液を得た。
【0165】
e)合成例5(A−8)
i)重合に供するブロックドイソシアネート基含有ウレタンアクリレート単量体の合成
攪拌機、コンデンサー、温度計を備えた4ッ口フラスコに分子量500の3−メチルペンタンアジペート1500部、トリメチロールプロパン134部、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート1464部を加える。その後100℃に加温し、5時間反応させて多官能の末端イソシアネートプレポリマー(NCO含有率4.1%)を得た。次いでこの生成物の温度を60℃とし、β−ヒドロキシエチルメタアクリレート174部を加えて2時間反応した。その後更にメチルエチルケトオキシム130部を加えて2時間反応を続け、ウレタンアクリレートを得た。
ii)乳化重合に供する単量体混合物の調製
ビーカーにイオン交換水125部を加え、攪拌しながらノイゲンEA190D(第一工業製薬(株)製ノニオン型界面活性剤)10部、プライサーフA−215E(第一工業製薬(株)製アニオン型界面活性剤)15部を加え均一に溶解させる。次いで上記工程iで得たウレタンアクリレート130部、エチルアクリレート250部、ブチルアクリレート100部、N−メチロールアクリルアミド10部、アクリル酸10部を加え、これら単量体を水に完全に乳化し、単量体混合物を得た。
iii) ブロックドイソシアネート基を含有するアクリル系共重合体エマルジョンの乳化重合
攪拌機、滴下ロート2基、コンデンサー、温度計を備えた円筒型のフラスコを完全に窒素で置換する。次いでこれにイオン交換水 250部を加え、攪拌しながらプライサーフ A−215Eの1部を添加し、70℃に加温し、これに上記工程iiで得た単量体混合物を20部加えた。15分経過後、5%過硫酸ナトリウム水溶液25部を加え15分間重合を開始させた。
続けて残りの単量体混合物の630部と5%過硫酸ナトリウム水溶液25部を3時間かけて、さらにこれに滴下し重合した。滴下終了30分後からさらに5%過硫酸ナトリウム水溶液50部を1時間かけて滴下した。その後冷却し200メッシュ金網で濾過してエマルジョンを得た。このエマルジョンは、固形分濃度が50%であった。
【0166】
f)合成例6(A−9)(参照:特開平10−139839公報の合成例1)
還流冷却器、温度計及びスターラーを取りつけた四つ口フラスコに、ポリカプロラクトン(ダイセル化学製;分子量2,000)80重量部、イソホロンジイソシアネート99.9重量部、ジメチロールプロピオン酸30重量部、ポリエステルポリオール(ユニチカ(株)製、エリーテル3320、分子量2,000)100重量部、プロピレングリコールジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物(共栄社化学製)28.1重量部、N−メチルピロリドン30重量部酢酸エチル150重量部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、90℃まで昇温し、この温度で1時間ウレタン化反応を行った。その後40℃まで冷却し、NCO末端のプレポリマーを得た。次いで、このプレポリマーにトリエチルアミン20重量部を加えて、中和した後、イオン交換水600重量部を添加した。次いで反応系に12.0重量部のアジピン酸ジヒドラジドを添加し、50℃にて1時間攪拌を続けた後、酢酸エチルを減圧留去し、その後固形分30%になるように水希釈を行い、ヒドラジン末端のウレタン系共重合体エマルジョンを得た。
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は35,000であった。
【0167】
(2) 水溶性高分子(B)の調製法
a) 合成例7(B−6)
温度計、撹拌機、適下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、メトキシ−6−エチレングリコールアリルエーテル(日本油脂(株)製)336部、無水マレイン酸98.0部、ベンゾイルパーオキサイド6.0部、トルエン566.0部を仕込み、撹拌下に於て容器内を窒素置換した後、80℃まで加熱し、4時間温度を保持して反応を進行させた。次いで10mmHgの減圧下、110℃でトルエンを留去した後、常温、常圧とし、重量平均分子量27,000(ポリエチレングリコール換算)のアリルエーテル−無水マレイン酸共重合体を得た。
【0168】
(3) 化合物(C)の調製法
a) 合成例8(C−5)
温度計、攪拌機、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、レゾルシンを100重量部、水16.3重量部、パラトルエンスルホン酸を0.16重量部仕込み、室温で溶解後、110℃で攪拌しながら37%ホルマリン溶液97.7重量部を0.5時間かけて滴下した後、更に5.0時間攪拌を続けた後、亜硫酸ナトリウム6.3重量部を加え、攪拌しながら90℃で2時間反応させ、スルホメチル化されたフェノール系縮合物を得た。
【0171】
(5)ゴムラテックス(G)の調整
a) 合成例11(G−2)(参照: WO97/13818公報の実施例1、マルチステージフイード重合により製造されるnVpラテックス)
窒素置換した5リットル容量で攪拌機付きのオートクレーブを用い、これに脱イオン水130重量部、ロジン酸カリウム4.0重量部を仕込み溶解する。これに、2−ビニルピリジン7.5重量部、スチレン36重量部、1,3−ブタジエン16.5重量部からなる単量体混合物(a)と連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.2重量部を仕込み、乳化する。その後、50℃に昇温後、過硫酸カリウム0.5重量部を加え、重合を開始する。単量体混合物(a)の反応率が80〜90%に達した後、これに、2−ビニルピリジン6重量部、スチレン6重量部、1,3−ブタジエン28重量部からなる単量体混合物(b)とt−ドデシルメルカプタン0.2重量部を添加し、さらに、重合を続ける。反応率が95%に達した後、ハイドロキノン0.1重量部を加え、重合を停止する。次に、減圧下、未反応単量体を除去した後、濃度を調節し、固形分濃度40%の共重合体ゴムラテックスを得た。
【0172】
(6)接着剤液(S)の調製
(6−1)固形分濃度10%の各水溶液の調製
(i)水溶液B−1〜B−6
攪拌機を備えたフラスコ中で、表1記載の配合量で、水あるいは水と25%アンモニアを混合した液に、水溶性高分子(B)を攪拌下に加え、90℃近傍で溶解し、室温まで冷却する。なお、水溶性高分子(B)の添加は、水和熱で90℃以上になるので、突沸しないよう、徐々に添加した。表1の重量部で溶解させた各水溶液は、水溶性高分子添加時の水分蒸発などで固形分10%よりやや高い濃度になるため、固形分濃度を測定し、水で希釈することにより固形分濃度10%に調節した。
(ii)水溶液A−1〜A−9、C−1、C−2、C−4〜C−6、G−1、G−2
すでに水溶液または水分散液である、A−1〜A−9、C−1、C−2、C−4〜C−6、G−1、G−2については、固形分濃度が10%になるように水で希釈した。
(iii)水溶液C−3
C−3は、すでに水溶液であるが、水で希釈すると、固形分が析出するので、水74重量部に、25%アンモニア水6重量部を混合した液に、C−3を20重量部混合し、十分攪拌することにより、乾燥時の固形分濃度が10%になるように水で希釈した。
(iv)水溶液D−1、D−2
水溶性の脂肪族エポキシド化合物である、D−1およびD−2は、水90重量部に、脂肪族エポキシド化合物10重量部を添加し、十分攪拌することにより、固形分濃度が10%になるよう溶解した。
【0173】
(6−2)接着剤液S−1〜S−114の調製
(i)接着剤液S−1〜S−45、S−48、S−50〜S−75、S−79、S−80、S−82〜S−101、S−105、S−106、S−108、S−109、S−112〜S−114
表2〜6に示す種類と重量%の、固形分濃度を10%に調節した各成分の水溶液を、C−水溶液、A−水溶液、G−水溶液、B−水溶液、D−水溶液を、含まれるものについてこの順に配合した後、十分に攪拌を行い混合した。
(ii)接着剤液S−46、S−47、S−49、S−76〜S−78、S−81、S−102〜S−104、S−107、S−110、S−111
先ず、濃度100%の固体成分である金属塩(E)、金属酸化物(F)あるいはベンゼン誘導体(H)を、表2〜6に示す種類と重量%のB−水溶液と混合し、よく攪拌することで水分散させる。これにより、水溶性高分子(B)を保護コロイドとして、分散安定性がより安定化された水分散液を予め調整しておく。次に、水各9重量%、および、表2〜6に示す種類と重量%の、C−水溶液、A−水溶液を、含まれるものについてこの順に配合した後、前記水分散液を配合し、更に表2〜6に示す種類と重量%のD−水溶液を配合した後、十分に攪拌を行い混合した。
【0174】
(7)接着剤液(S)で表面を被覆した樹脂材料の作成
接着剤液(S)で表面処理する樹脂材料として、表7記載のデニール、撚構造(撚数、撚係数)の3種類のタイヤコード、すなわち、ポリエステル樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレートタイヤコード、およびポリエチレンナフタレートタイヤコード(商標:ペンテックス、アライドシグナル社)、また、芳香族樹脂材料として、アラミドタイヤコード(商標:ケブラー、デュポン社)を用いた。これらの樹脂材料を、接着剤液(S)に浸漬し、次に、接着剤液(S)の水溶剤を乾燥する処理を行った後、加熱による接着処理を行なった。このときの、乾燥処理条件(ドライ温度、ドライ時間)と加熱接着処理条件(ホット温度、ホット時間)は、表7に示す通りである。また、コードを被覆する接着剤組成物の乾燥重量は、バキューム吸引するなどで量を調節した。このときの、コード重量に対する接着剤組成物の乾燥重量(Solid pick up:SPUと略す)は、接着剤組成物のコード処理前後の重量差より求め、付着率(S)として表2〜6にその結果を記した。
【0175】
(8)二浴式の場合に使用されるRFL接着剤組成物
これは、上記(7)で樹脂の表面に被覆された本発明の接着剤組成物(S)の層の表面に被覆するゴムラテックスを含む接着剤組成物である。
(8−1)接着剤液(T)の調製先ず、表8に示す種類と重量部の、水、レゾルシン、ホルマリン、10%の水酸化ナトリウム水溶液を、この順に、よく攪拌しながら、配合した混合物を調製した。この混合物を表8に示す温度と時間で熟成するものは熟成し、レゾルシン−ホルムアルデヒド混合物液を得た。次に、このレゾルシン−ホルムアルデヒド混合物液に、表8に示す重量部の、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR0655、JSR(株)製、固形分濃度41%、pH実測値=10.7)と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR2108、JSR(株)製、固形分濃度40%、pH実測値=10.6)を添加した後、表8に示す温度と時間で熟成しRFL熟成液を得た。なお、比較例、実施例は接着剤液T−1を使用した。
【0176】
(8−2)接着剤液(T)でさらに表面を被覆した樹脂材料の作成
上記(7)で樹脂材料の表面に本発明の接着剤組成物を被覆したタイヤコードを、接着剤液(T)に浸漬し、次に、接着剤液(T)の水溶剤を乾燥する処理をおこなった後、加熱による接着処理を行なった。このときの、接着剤組成物(T)溶液の乾燥処理条件(ドライ温度、ドライ時間)と加熱接着処理条件(ホット温度、ホット時間)は、表7に示す通りである。また、コードを被覆する接着剤組成物の乾燥重量は、特に制限されないが、本発明では実施例や比較例での比較のため、コード重量に対し約1.5〜2.5重量%になるように、バキューム吸引するなどで付着量を調節した。
【0177】
(9)初期接着性(接着力およびゴム付着率)
(8)で得た接着剤組成物処理コードを、表9に示す配合の未加硫状態のゴム組成物に埋め込んで試験片を作成し、これを160℃×20分、20Kg/cm2の加圧下で加硫した。加硫物を室温まで冷却後、コードを堀り起こし、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を25±1℃の室内雰囲気温度で測定し、これを初期接着力とし、結果を表2〜6に示した。また、剥離後のゴム付着状態を観察し、表10に従いランク付けを行いゴム付着率(ゴム付)とし、結果を表2〜6に示した。
【0178】
(10)高温時接着性(接着力およびゴム付)
200±1℃雰囲気温度に保持したオーブン内で、コードを加硫物から剥離した他は、上記と同様にして剥離抗力を測定し、この抗力を高温時接着力とし、また、同様にゴム付着率(ゴム付)を求めた。これらの結果を表2〜6に示した。
【0179】
(11)熱劣化後接着性(接着力およびゴム付)
加硫温度を時間を200℃×30分とした他は、(9)の場合と同様にして剥離抗力を測定し、この抗力を熱劣化後接着力とし、また、同様にゴム付着率(ゴム付)を求めた。これらの結果を表2〜6に示した。なお、本試験方法での200℃熱劣化は、大気圧下より高い加硫圧をかけており、大気圧下での熱劣化より大幅に促進された条件となっている。
【0180】
(12)総合耐熱接着性(物理的耐熱性、化学的耐熱性の総合性能)(接着力およびゴム付)
(8)で得た接着剤組成物処理コードを表9に示す配合の未加硫ゴム組成物に埋め込み、160℃×20分、20kg/cm2の加圧下で加硫した。加硫物を室温まで冷却後、コードを堀り起こし接着試験片を作成後、200±1℃のオーブン内に30分置いた後、そのまま200±1℃の雰囲気温度下、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を測定し、これを総合耐熱接着力とした。また、剥離後のゴム付着状態を観察し、表10に従い、ランク付けを行いゴム付着率(ゴム付)とした。これらの結果を表2〜6に示した。
【0181】
(13) チューブ疲労性試験
JIS L1017−1983 3.2.2.1A法に準拠して、チューブ疲労時間を測定し、表2〜6に示した。サンプルの加硫条件は160℃×20分、20kg/cm2である。
【0182】
(14)接着剤組成物の積算反応熱量
接着剤組成物の積算反応熱量は次のように測定した。
先ず、水混合液の状態の各接着剤液(S)をテフロンシャーレ上で風乾し、更に40℃、1トル以下の減圧下で1日放置し、乾燥フィルムを作成する。この乾燥フィルムをオーブンで、140℃で80秒、200℃で60秒、140℃で80秒、続いて240℃で60秒の熱処理を行った。
次にこの熱処理を行ったフィルムを以下の方法で粉末にした。まず乳鉢(あるいは金属性ボウル)の容器に熱処理したフィルムを入れ、液体窒素を八分目まで注ぐ。サンプルや容器が冷えて液体窒素の気化が比較的落ち着いてから、液体窒素中のフィルムを乳棒で粉砕する。このフィルムの粉末は液体窒素とともに80メッシュの金網でろ過し、その後、液体窒素を蒸発させて、80メッシュ以下に分別された接着剤粉末を得る。なお、粉砕では乳鉢などの替わりに小型粉砕機(ワーリング社製ブレンダーなど、金属容器製の小型粉砕機に蓋を付けて使用)を用いることができる。また、液体窒素を用いる理由は粉砕するフィルムが硬いほど粉砕しやすいためである。
得られた接着剤粉末約10mgを耐圧ステンレス製パンに採取し、精秤する。さらに、耐圧ステンレス製パンに、80メッシュ以下の粒度の不溶性硫黄を接着剤粉末重量の10重量%(±0.5%)加えて秤量する。次に、耐圧ステンレス製パン内の硫黄と接着剤粉末を先鋭なピンセットを用いて均一に混合した後、充分練る。練り後、重量の変化が練り前の±1%以内であることを確認し、パンを密閉する。
【0183】
続いて、温度設定を制御して測定できる示差走査熱量測定計で、加硫温度における反応熱量を次のように測定した。
先ず、試料が入った耐圧ステンレス製パンを示差走査熱量測定計にセットし、加硫が開始しない90℃で5分間保持した条件から、1分間で160(±1)℃に昇温し保持する。昇温開始後3分経ったときから90分間に測定される熱量を積算する(RUN1)。
その後、180℃で10分間処理した後、再び90℃に5分間保持した条件から、1分間で160(±1)℃に昇温し、昇温開始後3分経ったときから90分間に測定される熱量を積算する(RUN2)。
【0184】
160℃で接着剤組成物100乾燥重量部と硫黄10重量部とを90分間反応させたときの積算反応熱量は、RUN1(反応熱量+容器と試料の熱容量)の値より、RUN2(容器と試料の熱容量)の値を引いて、前記単位重量に換算することにより得た。このようにして測定した接着剤組成物(S)の積算反応熱量(J/g)を以下に示す。
実施例27 34J/g
実施例34 68J/g
比較例38 113J/g
実施例40 66J/g
実施例41 72J/g
なお、示差走査熱量測定に用いる容器であるパンは、加硫中に硫化水素ガスが発生するため、測定中に重量が変化することがないよう耐圧パンを用い、材質は硫化水素と反応性が小さいステンレス(SUS15)製品が好ましい。また、硫黄と接着剤粉末との混合と練りが充分でない状態は、160℃昇温後2分の時点でパンを液体窒素に入れ、急冷し、試料を切断すると切断面に硫黄粒子が観測される(走査型電子顕微鏡−X線物質分析)ことから判断できる。
【0185】
(15)接着剤組成物の貯蔵弾性率G’
接着剤組成物の貯蔵弾性率G’は次のように測定した。
先ず、水混合液の状態の各接着剤液(S)をシャーレ上で120〜30トルの減圧下で乾燥後、1トル以下の減圧下で1日乾燥させて厚さ1.00±0.05mmの乾燥フィルムを作成する。この乾燥フィルムを動的粘弾性測定装置(パーフィジカ社、UDS200)の直径8mmのパラレルプレート式測定部にセットする。乾燥フィルムのサンプルが、プレートの下をずれたり、熱収縮でプレート下を離れたりしないよう、プレートで軽く押さえるために一定力(2Nで自動補正)をかけながら、先ず、粘弾性測定装置を昇温速度60℃/分で加熱し、240℃になったら240℃で1分間熱処理をした後、ガスチラーなどの冷却装置を用いて冷却速度20℃/分で0℃まで冷却した。このようにして、乾燥および熱処理した試料について上記の動的粘弾性測定装置で、周波数10Hz、歪0.05%、昇温速度10℃/分で貯蔵弾性率G'(dyn/cm)を60℃および200℃のそれぞれについて測定した。結果は以下のとおりである。
【0186】
比較例12 8.83×108 (60℃) 2.73×105 (200℃)
比較例28 1.39×109 (60℃) 9.20×108 (200℃)
比較例31 1.78×109 (60℃) 1.04×109 (200℃)
実施例2 8.20×108 (60℃) 3.82×107 (200℃)
実施例7 8.71×108 (60℃) 6.94×107 (200℃)
【0187】
(16)コードスティフネス
(7)および(8)で得た接着剤組成物処理コードの曲げ剛性である、ガーレー・スティフネス値は特開平5−229304に記載のコードステフネス試験法に準じて測定した。すなわち、処理コードを枠に固定し、温度130℃で30分間熱セットし、コードを真直状態に保たせる。これを規定の試料長さに切断し、ガーレー・スティフネス・テスター(東洋精機社製)でスティフネスを測定する。
図1にガーレー式試験機の斜視図、図2にその要部を示す。1は可動アーム(A)、2は振子(B)、3は水準器、4はレベルスクリュー、5はチャック、6は試験片、7は軸受(支点)、8は目盛板、9はウェイト、10は駆動スイッチボタンである。
試料の取付け及び測定法は、次の通りである。
(ア)可動アームに付属するチャックを、可動アームの目印位置「1インチ」にあわせて固定する。このチャックにテストピース(試料コード)を垂直(90±1°)になるように取付ける。
(イ)可動アームの下部(軸部より下部)にウェイトを取付ける。ウェイトの取付孔が、軸受より1インチ(図1のw1)、2インチ(図1のw2)、及び4インチ(図1のw3)の位置にあるので、テストピース(試料)の柔軟性に応じた荷重の重さ及び孔の位置でウェイトを取り付ける。なお、具体的な「ウエイト荷重及び孔の位置の選び方」は、ウェイト荷重」と「孔の位置」を種々変更しながら、次の(ウ)の操作によりテストピースで実際に「目盛板測定値」を測定し、この読取置が2.0〜4.0の範囲内となるように、ウエイトの荷重および孔の位置を選択する。
(ウ)テストピースの柔軟性に見合う「ウエイト荷重と取り付け位置」の設定が出来たら、駆動スイッチボタンを押し、振子を左右に動かす。このとき、テストピースのスティフネスに応じた振幅で、振子に押された可動アーム下端の指針が振れるが、このときの「振れの最大値」を図1の目盛板で、数値を0.1単位まで読取り「目盛板測定値」とする。
(エ)1つのテストピースにつき、左右1回、テストピース10本、計20回の値を求め、1試料の平均値を求める。
【0188】
計算法は次の通りである。測定値の平均値からスティフネスを次式で計算する。
スティフネス(mN)=RG×{(W1×1)+(W2×2)+(W3×4)}/5×L2/W×0.1089
但し、RG:「目盛板測定値」の平均値
W1:1インチの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)W2:2インチの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:4インチの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L:サンプル長−1/2インチ(インチ)
W:サンプルの幅(mm)
(7)で得られたコードの曲げ剛性値(スティフネス:mN)をスティフネス(S処理)、(8)で得られたコードの曲げ剛性値(スティフネス:mN)をスティフネス(S+T処理)として、表2〜6に示した。
【0189】
(17)タイヤ耐久性能(タイヤ故障時のゴム付着率(ゴム付))
(8)で得た処理加工コードを使用し、カーカスプライとして用いて、225/50ZR15のサイズの乗用車用ラジアルタイヤを作成した。作成したタイヤについて、JATMA YEAR BOOK−1999規格の適用リム(標準リム)を用い、リム組みし、25℃(2℃の室内で、内圧1.9kPaに調節した後、24時間放置後、空気圧の再調整を行い、JATMA規格の100%の荷重(空気圧:1.9kPa、速度:210km/時)をタイヤに付加し、直径約3mのドラム上で速度60km/時で2万km連続走行させた。これは市街地走行時の疲労を接着剤組成物に与えるためである。この2万km連続走行させたタイヤについて、さらに、タイヤに高温、高歪が負荷される、高速ドラム耐久試験を、米国FMVSSNO.109のテスト方法に準じ、スッテプスピード方式(30分毎にスピードを増加する)にて、故障するまで行った。なお、故障は、タイヤショルダーからサイド部のカーカスプライ近傍でのセパレーションであった。次に、このセパレーション箇所のタイヤコードへのゴム付着状態を観察し、表10に従い、ランク付けを行い、結果を表2〜6に示した。
【0190】
上記結果の考察を以下に示す。比較例1〜9より、接着剤組成物の成分が1種のみであると、各種接着力やチューブ疲労時間とも性能が低いことがわかる。比較例10〜13、比較例16〜18、比較例26〜29より、接着改良剤である化合物(C)を含有しないと、初期接着力が低く、ひいては各種接着力やチューブ疲労時間とも性能が低いことがわかる。比較例14、15より、接着剤組成物の架橋成分が少ないと、高温で熱変形しやすくなり、特に、高温接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。比較例19〜23より、架橋剤を含まない接着剤組成物は、高温下の流動化により、高温接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。比較例24より、化合物(C)成分を有し、かつ化合物(C)成分が架橋性を有する接着剤組成物ではあるが、熱可塑性高分子重合体(A)を含まない接着剤組成物は、総合接着力が低いことがわかる。比較例25〜29より、熱可塑性高分子重合体(A)を含まない接着剤組成物は、総合接着力が低いことがわかる。比較例30〜32より、熱可塑性高分子重合体(A)あるいは水溶性高分子(B)を一方でも含まない接着剤組成物は、加熱下の反応に伴う歪を吸収する熱可塑性成分が少ないため、熱劣化後接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。実施例1〜4、実施例14〜17は、接着剤組成物の組成が好ましい範囲内の例である。
【0193】
実施例5〜17は、脂肪族エポキシド化合物(D)が多価アルコール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物である例である。比較例38、40、41より、接着剤組成物に、接着改良剤である化合物(C)を含有しないと、初期接着力が低く、ひいては各種接着力が低いことがわかる。比較例39より、接着剤組成物の架橋成分が少ないと、高温で熱変形しやすくなり、高温接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。比較例42より、化合物(C)成分を有し、かつ化合物(C)成分が架橋性を有する接着性組成物であるが、熱可塑性高分子重合体(A)を含まない接着剤組成物は、総合接着力が低いことがわかる。比較例43、44より熱可塑性高分子重合体(A)を含まない接着剤組成物は、総合接着力が低いことがわかる。比較例45より、熱可塑性高分子重合体(A)あるいは水溶性高分子(B)を一方でも含まない接着剤組成物は、加熱下の反応に伴う歪を吸収する熱可塑性成分が少ないため、熱劣化後接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。
【0194】
比較例51、53、54より、接着改良剤である化合物(C)を含有しないと、初期接着力が低く、ひいては各種接着力が低いことがわかる。比較例52より、接着剤組成物の架橋成分が少ないと、高温で熱変形しやすくなり、高温接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。比較例55〜57より、熱可塑性高分子重合体(A)を含まない接着剤組成物は、総合接着力が低いことがわかる。比較例58より、熱可塑性重合体(A)あるいは水溶性高分子(B)を一方でも含まない接着剤組成物は、加熱下の反応に伴う歪を吸収する熱可塑性成分が少ないため、熱劣化後接着力が低く、ひいては総合接着力が低いことがわかる。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
【表7】
【0206】
【表8】
【0207】
【表9】
【0208】
【表10】
【0209】
【発明の効果】
以上説明したとおりに、本発明の接着剤組成物を用いると、初期接着力に優れ、200℃近くの高温下での接着力低下の抑制、熱劣化時の接着力低下の抑制、高歪下でのコード耐疲労性低下の抑制の効果をも得ることができる。
したがって、本発明の接着剤組成物で処理した樹脂材料、これで補強したゴム部品および、このゴム部品をゴム部材として適用した汎用タイヤ、高速走行用タイヤ、ランフラットタイヤ等の各空気入りタイヤは、高温下、高歪下でも、高性能で耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ガーレー式試験機の斜視図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
5 チャック、6 試験片、7 軸受、8 目盛板
Claims (21)
- 2−オキサゾリン基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体(A)、無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体、あるいは無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体の誘導体である水溶性高分子(B)、ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、またはエポキシクレゾールノボラック樹脂である化合物(C)を含み、
乾燥重量で、接着剤組成物中、熱可塑性高分子重合体(A)を2〜75%、水溶性高分子(B)を5〜75%、化合物(C)を15〜77%含むことを特徴とする接着剤組成物。 - 2−オキサゾリン基を含有するエチレン性付加重合体、または、ヒドラジノ基を含有するウレタン系高分子重合体からなる熱可塑性高分子重合体(A)、無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体、あるいは無水マレイン酸単位とイソブチレン単位とを含んでなる共重合体の誘導体である水溶性高分子(B)、ジフェニルメタンジイソシアネートとイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤との反応生成物、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、またはエポキシクレゾールノボラック樹脂である化合物(C)からなる成分に、さらに脂肪族エポキシド化合物(D)、金属酸化物(F)、ゴムラテックス(G)、およびトリレンジイソシアネートまたはその2量体からなるベンゼン誘導体(H)よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、
乾燥重量で、接着剤組成物中、熱可塑性高分子重合体(A)を2〜75%、水溶性高分子(B)を5〜75%、化合物(C)を15〜77%、脂肪族エポキシド化合物(D)が70%以下、金属酸化物(F)が50%以下、ゴムラテックス(G)が18%以下、ベンゼン誘導体(H)が50%以下含むことを特徴とする接着剤組成物。 - 前記熱可塑性高分子重合体(A)が水分散性重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。
- 熱可塑性高分子重合体(A)が重量平均分子量1,0000以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 前記熱可塑性高分子重合体(A)が、オキサゾリン基、ビスマレイミド基、(ブロックド)イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、カルボジイミド基、ヒドラジノ基、およびエピチオ基よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 前記熱可塑性高分子重合体(A)の主鎖が、炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体由来の単位からなるエチレン性付加重合体からなり、共役ジエン単量体由来の付加反応性炭素−炭素二重結合が主鎖単量体中組成比で10%以下であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 前記水溶性高分子(B)が、アリル位に水素基を有する炭素−炭素二重結合を含有せず、重量平均分子量3,000以上であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 前記脂肪族エポキシド化合物(D)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含む化合物であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
- 前記脂肪族エポキシド化合物(D)が、多価アルコールとエピクロロヒドリンとの反応生成物であることを特徴とする請求項2または8に記載の接着剤組成物。
- 金属塩(E)が、多価金属の塩であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
- 金属酸化物(F)が、多価金属の酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
- 乾燥重量で、接着剤組成物中、アルカリ金属が含まれるとしても2%以下しか含まれないことを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 接着剤組成物を動的粘弾性測定したときの貯蔵弾性率G’が、60℃および周波数10Hz、歪0.05%、昇温速度10℃/分にて10の9乗以下であり、かつ、200℃および周波数10Hz、歪0.05%、昇温速度10℃/分にて10の6乗以上であることを特徴とする請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の接着剤組成物。
- 請求項1〜13のうちいずれかの1項に記載の接着剤組成物の層で、表面を被覆されたことを特徴とする樹脂材料。
- 前記樹脂材料の樹脂がポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、またはアクリル樹脂であることを特徴とする請求項14記載の樹脂材料。
- 前記ポリエステル樹脂材料が、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートであることを特徴とする請求項15記載の樹脂材料。
- 樹脂材料が複数のフィラメントを撚り合わせてなるコードであり、該コードは、合成繊維が上撚りと下撚りを有してなり、下記式[1]、[2]で規定される下撚りの撚係数N1が0〜0.70であり、上撚りの撚係数N2が0.12〜0.90であることを特徴とする請求項14〜16のうちいずれか1項に記載の樹脂材料。
N1=n1×(0.125×D1/ρ)1/2×10−3 [1]
N2=n2×(0.125×D2/ρ)1/2×10−3 [2]
(式中、D1は下撚り糸束の表示デシテックス数、D2はトータル表示デシテックス数、n1は下撚り数(回/10cm)、n2は上撚り数(回/10cm)、ρは有機繊維の比重を表す。) - コードが、上撚りと下撚りを有し、下撚りの撚係数が1300〜2500であり、上撚りの撚係数が900〜1800であることを特徴とする請求項17記載の樹脂材料。
- コードを被覆する接着剤組成物層が乾燥重量で、コード重量の0.5〜6.0重量%であることを特徴とする請求項17または18のうちいずれか1項の記載の樹脂材料。
- 請求項14〜19のうちいずれか1項に記載の樹脂材料で補強されたことを特徴とするゴム物品。
- 請求項20記載のゴム物品をゴム部材として適用したことを特徴とする空気入りタイヤ。
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