JP4817519B2 - 変性共役ジエン系重合体組成物及びゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカを充填剤として含有するゴム組成物の加工性を改善し、ヒステリシスロス特性、強度特性に優れた共役ジエン系重合体を含むゴム組成物に関する。詳しくは、本発明は共役ジエン系重合体の活性末端とエポキシ基を有する多官能化合物を反応させて得られる変性重合体、及び重合活性末端と反応可能な官能基を有する変性剤を反応させて得られる変性重合体の混合物を用いることにより、シリカとの親和性が改善された新規な変性共役ジエン系重合体組成物を提供すること、更には、特定構造の共役ジエン系重合体を用い、オイル、シリカ、加硫剤及び加硫促進剤等を配合・混練して得られる新規なゴム組成物に関する。その加硫物はタイヤ用を中心に従来から共役ジエン系重合体ゴム組成物が使用されている用途で好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
近年省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から排出炭酸ガスの低減の社会的要求が強まっている。自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、自動車の軽量化・電気エネルギーの利用等様々な対応策が検討されているが、自動車共通の課題としてタイヤの転がり抵抗改善による燃費性能の改善が必要とされている。同時に自動車に対しては、走行時の安全性向上の要求も強まっている。これら自動車の燃費性能及び安全性は使用されるタイヤの性能に負うところが大きく、自動車用のタイヤに対しては、省燃費性、操縦安定性、耐久性の改善要求が強まっている。これらのタイヤ特性は、タイヤの構造・使用材料等種々の要素に左右されるが、特に路面に接するトレッド部分に用いるゴム組成物の性能が省燃費性・安全性・耐久性等のタイヤ特性への寄与が大きい。このため、タイヤ用ゴム組成物の技術的改良が多く検討・提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、タイヤトレッドのゴム性能としては、省燃費性向上にはヒステリシスロスが小さいこと、操縦安定性向上にはウェットスキッド抵抗性が高いこと、耐久性向上には耐摩耗性の優れていることが要求されている。しかしながら、低ヒステリシスロスとウェットスキッド抵抗性との関係は相反するものであり、また耐摩耗性とウェットスキッド抵抗性との関係も相反するものであり、これらの相反する性能のバランス改良が重要であって、一つだけの性能向上では問題点の解決は難しいのが現状である。タイヤ用ゴム組成物の改良の代表的な手法は、使用する原材料の改良であり、SBRやBRに代表される原料ゴムのポリマー構造の改良、カーボンブラック・シリカ等の補強充填剤、加硫剤、可塑剤等の構造や組成の改良が行われている。
【0004】
これらの中で近年特に注目されている技術は、補強充填剤として従来のカーボンブラックに代わってシリカを使用する技術である。その代表的な技術は,例えばアメリカ特許第5,227,425号明細書に示され,特定構造のSBRにシリカを補強充填剤として使用し、ゴム組成物の混練条件を特定することによって、トレッドゴム組成物の省燃費性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスが向上する方法が提案されている。しかしながら、シリカを補強充填剤とするゴム組成物には幾つかの解決すべき課題がある。例えばシリカは従来のカーボンブラックに比較してゴムとの親和性が低いため、ゴム中への分散性が必ずしも良くなく、この分散性不良によって耐摩耗性の不足、強度特性の不足がおこりがちである。シリカの分散性を改良するために、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)―テトラスルフィドに代表されるシランカップリング剤を使用して特定の温度条件において混練し、さらに混練回数を増やしてシリカの分散を改良することが必要である。
【0005】
このような状況下において、ゴム中へのシリカの分散性を改良すること及び前記シランカップリング剤の使用量を低減する事を目的として、ゴムの末端を種々のアルコキシシリル基によって変性する方法及びそれらを用いたシリカ配合ゴム組成物が、特開昭62−227908号公報、特開平8−53513号公報、特開平8−53576号公報、特開平9−225324号公報に提案されている。これらアルコキシシリル基による変性ポリマーは、アニオン重合によって得られた活性末端ポリマーに特定のアルコキシシラン化合物を反応させることによって得られるものであるが、得られたポリマーのアルコキシシリル基が水分によって縮合しポリマーの粘度が経時変化しやすいことやシリカの分散性は改良されるものの得られたゴム配合物の粘度が増大し加工性が必ずしも良くないことが課題となっている。
さらにエポキシ化ポリマーを使用したシリカ配合組成物が、特開平9−118785号公報、特開平9−241429号公報において提案されているが、これらの方法は変性ポリマーを得る際、過酸化水素や過酸によってエポキシ化する特別な反応工程を必要とし、またこれら配合物の加工性は必ずしも良くないのが課題である。
【0006】
さらに、特開平7−330959号公報には、ジグリシジルアミノ基を含有する多官能化合物によってカップリングされた特定構造のSBRを使用したタイヤトレッド組成物が、工程加工性、転がり抵抗低減、耐ウエットスキッド性改善を目的として提案されている。この例においては、一定量以上のカーボンブラックの配合が加工性、耐摩耗性等の性能達成およびラジオノイズ等の電波障害防止のため必要とされている。また、ポリマーの分子量分布が特定範囲であること、特定範囲のスチレン量及び1,2−結合量が好ましいこと、及び、分子内に未反応のグリシジル基を1個以上含有することが好ましいことが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下で、本発明は、シリカ配合において、カ―ボンブラックの配合量が少ない場合にあっても加工性に優れ、また、更に低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランス、強度特性等を改善した共役ジエン系重合体組成物を提供する事を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく共役ジエン系重合体の分子構造及び変性構造さらに製造方法について鋭意検討をおこない、特定の変性成分を特定量含有する変性共役ジエン系重合体の混合物が優れた性能を有することを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
1.炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用いて共役ジエン系単量体を重合、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後に得られた重合体の活性末端と次の一般式で表される分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物を反応させて得られる変性重合体(成分A)と、該重合体の活性末端と反応可能な官能基を有する下記(1)〜(8)から選ばれる1以上の化合物である、変性剤を反応させて得られる変性重合体(成分B)との混合物であり、(A成分)/(B成分)の重量比は90/10〜10/90の範囲であり、
該成分A及び成分Bは、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体、または少なくとも1種類の共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体とを有機リチウム触媒の存在下で溶液重合させた後、特定の変性剤を反応させて得られる変性成分が60重量%を越えて含有し、重合体組成物の重量平均分子量が100,000〜2,000,000である変性共役ジエン系重合体組成物。
【0010】
【化5】
(但し、R 1 およびR 2 は炭素数1〜10の炭化水素基またはエーテルおよび、または3級アミンを有する炭素数1〜10の炭化水素基、R 3 およびR 4 は、水素、炭素数1〜20の炭化水素基またはエーテルおよび、または3級アミンを有する炭素数1〜20の炭化水素基、R 5 は炭素数1〜20の炭化水素基またはエーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、ハロゲンの内、少なくとも1種の基を有する炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。)
【0011】
(1)N−置換アミノアルデヒド類、N−置換アミノチオアルデヒド類、N−置換アミノケトン類、N−置換アミノチオケトン類、及び分子中に下記の構造を有する化合物。
【化6】
(式中、Mは酸素原子又は硫黄原子を表す)から選ばれる化合物。
【0012】
(2)少なくとも1個のアミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基を有するベンゾフェノン類またはチオベンゾフェノン類である化合物。
(3)一般式、R 4n MX 4-n で表される化合物。(但し、式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数)
(4)一般式、X n M(OR 1 ) m R 2 4-m-n で表される化合物。(但し、式中R 1 、R 2 は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜2、mは1〜4の整数であり、mとnの和は2〜4である。)
(5)イソシアネート化合物またはイソチオシアネート化合物。
(6)R 1 m Si(OR 2 ) n X (4-m-n) で表される化合物。(式中、R 1 はエポキシ基若しくは不飽和カルボニル基を有する置換基を、Xはアルキル基、ハロゲン原子を、R 2 は炭素数1〜20の脂肪族、脂環族、芳香族の各炭化水素基から選ばれる基を表す。mは1〜3の整数を、nは1〜3の整数を、それぞれ表し、且つ、m+nは2〜4の整数を表す。)
【0013】
(7)下記一般式で表されるオルガノシロキサン化合物。
【化7】
(式中、X 1 〜X 8 は独立してアルコキシル基、ビニル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子もしくはそれらのうち少なくとも1種を有する炭化水素基;エポキシ基を有する炭化水素基;カルボニル基を有する炭化水素基;水素原子;アルキル基;またはフェニル基であり、mおよびnは独立して0〜100の整数である。ただしmとnが同時に0となることはない。)
【0014】
(8)下記一般式で表されるオルガノシロキサン化合物。
【化8】
(式中、R1 〜R3 はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基であり、mおよびnは独立して0〜100の整数である。ただしmとnが同時に0となることはない。)
2.上記1に記載の変性共役ジエン系重合体組成物100重量部、及び該変性共役ジエン系重合体組成物100重量部に対してそれぞれ、
(1)ゴム用伸展油 1〜100重量部
(2)補強性シリカ 25〜100重量部
(3)加硫剤及び加硫促進剤 1.0〜20重量部
からなるゴム組成物である。
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物は、変性共役ジエン系重合体として特定の構造を有するゴム状重合体(A成分)と(B成分)の混合物を含むものである。本発明の特定の構造を有する変性共役ジエン系重合体(A成分)及び(B成分)は、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体又は少なくとも1種類の共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体とを有機リチウム触媒の存在下で溶液重合させた後、特定の変性剤を反応させて得られる変性成分が60重量%を越えて含有する共役ジエン系ゴム状重合体または共役ジエンー芳香族ビニル系ゴム状共重合体である。
【0016】
本発明において、共役ジエン系ゴム状重合体または共役ジエン−芳香族ビニル系ゴム状共重合体の製造に用いられる共役ジエン系単量体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。好ましい単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体の例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。好ましい単量体としては、スチレンが挙げられる。
【0017】
共重合する芳香族ビニル単量体は、ランダム共重合したものであることが好ましい。ここで、ランダム共重合体とは、芳香族ビニル単量体の連鎖長が30以上の成分が少ないかまたは無いものであり、具体的にはKolthoffの方法でポリマーを分解し、メタノールに不溶な芳香族ビニル系重合体量を分析する公知の方法で、ポリマー量に対し10重量%以下、好ましくは5重量%以下、また、オゾン分解による方法でポリマーを分解し、GPCにより芳香族ビニル単量体連鎖分布を分析する公知の方法で、芳香族ビニル単量体の連鎖長が8以上の成分がポリマー量に対し5重量%以下であるものがより好ましい。また、必要に応じ、他の共重合可能なモノマーを10重量%以下共重合してもよい。
このゴム状重合体の製造方法において用いられる炭化水素溶媒としては、飽和炭化水素、芳香族炭化水素であり、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が用いられる。
【0018】
重合開始剤としてはアニオン重合開始剤が用いられ、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属が好ましく、特に有機リチウム化合物が好適である。有機リチウム化合物としては、重合開始の能力があるあらゆる有機リチウム開始剤を含み、低分子量のもの、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物、また、1分子中に単独のリチウムを有するもの、1分子中に複数のリチウムを有するもの、有機基とリチウムの結合様式において、炭素−リチウム結合からなるもの、窒素−リチウム結合からなるもの、錫−リチウム結合からなるもの等を含む。具体的には、モノ有機リチウム化合物としてn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、多官能有機リチウム化合物として1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物、1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエンおよびジビニルベンゼンの反応物、n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物の反応物、窒素−リチウム結合からなる化合物としてジメチルアミノリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム、ジヘキシルアミノリチウム、ヘキサメチレンイミノリチウムなどがあげられる。特に好ましいものは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムである。これらの有機リチウム化合物は1種のみならず2種以上の混合物としてももちいられる。重合反応において、芳香族ビニル単量体を共役ジエン系単量体とランダムに共重合する目的で、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラハイドロフラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類等の非プロトン性極性化合物を添加することも実施可能である。
【0019】
重合反応は、通常実施される条件、例えば、20〜150℃の重合温度にて、最終的な重合体濃度が5〜30重量%の濃度範囲で行われ、重合温度は、重合が発熱反応であることを考慮に入れて、モノマー及び溶媒のフィード温度、モノマー濃度及び反応器外部からの冷却ないし加熱により制御される。好ましくは70〜120℃、更に好ましくは80〜100℃の範囲で重合は行われる。
本発明で用いるゴム状重合体(A成分)は、活性末端を有する共役ジエン系重合体に、分子中に2個以上のエポキシ基を持つ多官能化合物を反応させて得られる変性成分を60重量%を超えて含有することが必要である。
【0020】
本発明で用いる変性率が高いゴム状重合体を工業的に得るためには、変性反応前の活性末端を有するジエン系重合体を制御した方法で効率よく得る必要がある。通常、工業的に入手可能なモノマー、溶剤等には種々の有害な不純物が含まれており、それらが重合中に重合体の活性末端と反応して停止反応、転移反応を起こして重合体の活性末端は減少し、本発明の変性成分を60重量%を超えて含有する重合体を得ることは困難である。特に、80℃を超える高温で重合する際に、アルケン類、アセチレン類、水等の不純物の影響が大きい。本発明で限定される構造のジエン系重合体を得るためには、不純物量が少ないモノマーおよび溶媒が重合反応器にフィードされること、重合温度が制御されることなどが必要である。
【0021】
本発明において、重合反応器にフィードされるモノマーおよび溶媒中の全ての不純物は、重合反応器にフィードされる開始剤に対し、0.40当量未満、好ましくは0.30当量以下とするべきである。具体的には、共役ジエンモノマー中の不純物としては、例えばビニルアセチレン、1,2−ブタジエン、ブチン−1等の有機アルカリ金属の複数モルと反応する化合物、アルデヒド類等の有機アルカリ金属と等モル反応する化合物、また、スチレンモノマー中の不純物としては、例えばフェニルアセチレン、ベンズアルデヒド等の有機アルカリ金属と等モル反応する化合物、また、種々のモノマー、溶剤に共通である重合禁止剤のTBC等の有機アルカリ金属の2モルと反応する化合物、水等の有機アルカリ金属と等モル反応する化合物がある。本発明において、複数モル反応する化合物については2モル反応するとして計算することが好ましい。
【0022】
これら不純物の影響を減らす方法として、当然ながら不純物の少ない原料を用いることが好ましいが、実用的には、不純物を含む原料を用い、蒸留、吸着等の化学工学的手法で除去するのが一般的である。しかし、これらの方法では十分に効果的とは言えず、一方、十分な効果を得るためには経済的に多大のコストがかかる。したがって、本発明において、分子量の高い変性共役ジエン系重合体を得る際、微量の不純物でも大きな影響を受けることから、通常以上に不純物の影響を減らす方法として、好ましくは、重合反応器にフィードされるモノマーおよび溶媒をフィードする前に、予め不純物に相当する量の有機金属化合物、具体的には重合触媒等を反応させて実質的に不活性化する方法が好適である。これらの方法を単独で、または組み合わせて、重合反応器に供給されるモノマー溶液中に含有される不純物による重合中の活性末端の失活を大幅に減少させ、その結果として、80℃を超え、好ましくは120℃以下の温度で、工業的に効率よく変性反応を行うことが可能となる。
【0023】
本発明の変性共役ジエン系重合体(A成分)を得るために用いる変性剤としては、分子内に2個以上のエポキシ基を持つ多官能化合物がもちいられる。分子中に2個以上のエポキシ基を持つ多官能化合物としてはいかなる化合物も使用できる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル、1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物、4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物があげられる。好ましくは、分子中に2個以上のエポキシ基および1個以上の窒素含有基を持つ多官能化合物がもちいられる。より好ましくは、次の一般式の多官能化合物が用いられる。
【0024】
【化8】
(但し、R1 およびR2 は炭素数1〜10の炭化水素基またはエーテルおよび、または3級アミンを有する炭素数1〜10の炭化水素基、R3 およびR4 は、水素、炭素数1〜20の炭化水素基またはエーテルおよび、または3級アミンを有する炭素数1〜20の炭化水素基、R5 は炭素数1〜20の炭化水素基またはエーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、ハロゲンの内、少なくとも1種の基を有する炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。)
【0025】
さらに好ましくは、ジグリシジルアミノ基を持つ多官能化合物である。また、分子内のエポキシ基の数は2個以上であることが必要であり、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上である。ただし、これらの化合物において、ポリマーの活性末端と反応して、活性末端を不活性化する官能基、例えば、活性水素を有する官能基、例えば水酸基、カルボキシル基、1級・2級アミノ基等を分子内に有する化合物、アルコール、アミンを脱離する官能基、例えばエーテル、アミド等を分子内に有する多官能化合物は好ましくない。一方、ポリマーの活性末端と反応して結合する官能基はあってもよく、例えばカルボニル、ハロゲン等である。
【0026】
これらの分子中に2個以上のエポキシ基を持つ多官能化合物を、好ましくは、多官能化合物のエポキシ基がポリマーの活性末端に対し0.6当量を超え、多官能化合物の分子がポリマーの活性末端に対し10倍モル以下の量比で反応される。単官能の開始剤で重合されたポリマーの活性末端の場合は、これ以下では本発明の変性成分が60重量%を超えて含有するものとならない。一方、これを超えると、未反応のエポキシ基を有する多官能化合物が増加して、かえって性能を低下させる。
【0027】
ポリマーの活性末端とエポキシ基が反応すると、重合体鎖に水酸基が導入される。多官能化合物のエポキシ基がポリマーの活性末端に対し0.6当量を超え、1当量以下の場合は、大部分のポリマーの活性末端は多官能化合物のエポキシ基と反応して、複数の分子がカップリング反応し、複数の水酸基を有する変性ポリマー分子が生成する。多官能化合物のエポキシ基がポリマーの活性末端に対し1当量を超える場合は、上記の複数の水酸基を有するポリマー分子と、ポリマーの活性末端とエポキシ基が反応して生成する水酸基とともに、ポリマーに結合した多官能化合物分子中の未反応のエポキシ基の両方が存在する変性ポリマー分子の両方が生成する。分子中に2個以上のエポキシ基および1個以上の窒素含有基を持つ多官能化合物がもちいられると、ポリマーの活性末端とエポキシ基が反応して生成する水酸基とともに、窒素含有基が導入される。
【0028】
本発明で用いる(A成分)のゴム状重合体は、その多官能化合物による変性成分の含有量が重合体全体の60重量%を超えることが必要である。好ましくは、70重量%以上である。変性成分の含有量が多い場合には、充填剤のシリカとの作用効果がより発揮される。この変性成分の含有量は、変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定可能である。このクロマトグラフィーの方法としては、変性成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準をもちいて定量する方法、変性の前のポリマーと変性後ポリマーのGPCを測定しその形状及び分子量の変化に基づいて変性部分の量を計算する方法等がある。
【0029】
本発明で用いる(A成分)のゴム状重合体の分子量分布Mw/Mnは1.05〜3.0の範囲である。分子量分布はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。分子量分布が1.05未満の場合、加工性が劣り、しかも、工業的に製造することが難しい。3.0を超える場合は、得られるゴム組成物の機械的強度が劣る。
分子量分布が2.2以上の重合体は、混練時の加工性が優れ、加工時のトルクが大きくなく、また、混練時間が短くても良いなどの特長がある。一方、分子量分布が2.2未満の場合は、一般的に加工性が劣り、特にシリカ配合においては、加工時のトルクが大きくなるため、従来はカーボンブラックを多く併用することが必要であった。本発明の場合は、特にシリカとの親和性が高められたためカーボンブラックの配合量が少ない場合にあっても加工性が優れ、さらに、得られるゴム組成物の低転がり抵抗性と耐ウェットスキッド性のバランスが優れ、強度特性もより優れたものとなる。
【0030】
本発明の(A成分)のゴム状重合体の重量平均分子量は100,000〜2,000,000であることが必要である。重量平均分子量はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。重量平均分子量が100,000未満では、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、2,000,000を超える場合は,加工性が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。
【0031】
本発明の(A成分)のゴム状重合体のムーニー粘度(MV−M)は、好ましくは20〜200の範囲である。このムーニー粘度は,標準規格に定められるムーニー粘度計を使用し、100℃で測定されたムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )である。但し、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )の値が約150を超えて100℃での測定が難しい場合には、例えば130℃の温度で測定し、100℃での値に換算する。ムーニー粘度(MV−M)が20未満の場合は、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、200を超える場合は、加工性能が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。ムーニー粘度(MV−M)は、25〜180の範囲がより好ましい。
本発明の(A成分)のゴム状重合体は、その加工をより容易にするために、通常のゴム用伸展油をゴム100重量部あたり20〜60重量部添加した油展ゴムとして実用に供することも可能である。
【0032】
本発明の(A成分)のゴム状重合体のガラス転移温度は、最終的に得られるゴム組成物がゴム弾性を示すために−100〜0℃の範囲が好ましい。さらに、−95〜−10℃の範囲がより好ましい。本発明で使用するゴム状重合体のガラス転移温度は、ゴム組成物の使用用途によってその範囲が選択され、例えば低温性能がより重要な用途においては低い範囲のガラス転移温度を有するゴム状重合体が主体的に選択され、制動能力が要求される用途においては高い範囲のガラス転移温度を有するゴム状重合体が主体的に選択される。前記のガラス転移温度は,構成する共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体の組成による制御及び共役ジエン系単量体がブタジエン又はイソプレンの場合は、重合体連鎖におけるミクロ構造(1,4−結合と1,2−および3,4−結合)の比率で制御出来る。本発明のゴム状重合体がポリブタジエンの場合は、ブタジエンのミクロ結合の1,2−結合量は10〜80%が好ましく、本発明のゴム状重合体がスチレン−ブタジエンランダム共重合体の場合は、スチレン量が5〜45%、ブタジエン部分のミクロ結合の1,2−結合量は10〜70%の範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の(A成分)のゴム状重合体は、1種だけでなく例えば2種以上のゴム状重合体であってもよい。その場合、ポリブタジエンとスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの場合、スチレン−ブタジエン共重合ゴムであっても、分子量・分子量分布がことなるもの、ガラス転移温度がことなるものの組み合わせであってもよい。
本発明の好ましい態様として、(A成分)として、変性成分の量が70重量%以上で、ガラス転移温度が−80〜−20℃の範囲で、分子量分布が1.05以上、2.2未満であり、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )が20以上、100未満であるスチレン−ブタジエン共重合ゴム10〜90重量部と、変性成分が70重量%以上で、ガラス転移温度が−50〜−20℃の範囲で、分子量分布が2.2〜3.0であり、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )が100〜200であるスチレン−ブタジエン共重合ゴム90〜10重量部をもちいる場合、加工性、強度特性、低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスのいずれも優れたゴム組成物となる。
【0034】
本発明の変性共役ジエン系重合体(B成分)は、重合体の活性末端と反応可能な官能基を有する変性剤と反応させて得られるものである。変性剤は、重合体の活性末端と反応可能であれば特に限定されるものではないが、好ましい変性剤としては、次の(1)〜(8)から選ばれる1以上の化合物が挙げられる。
(1)N−置換アミノアルデヒド類、N−置換アミノチオアルデヒド類、N−置換アミノケトン類、N−置換アミノチオケトン類、及び分子中に下記の構造を有する化合物。
【0035】
【化9】
(式中、Mは酸素原子又は硫黄原子を表す)
【0036】
から選ばれる化合物であり、具体的には、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジ−t−ブチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジビニルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス−(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等のN−置換アミノケトン類、及び対応するN−置換アミノチオケトン類;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド、4−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のN−置換アミノアルデヒド、及び対応するN−置換アミノチオアルデヒド類;N−メチル−β−プロピオラクタム、N−t−ブチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム、N−メトキシフェニル−β−プロピオラクタム、N−ナフチル−β−プロピオラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−フェニル−ピロリドン、N−メトキシフェニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N−ナフチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,3' −ジメチル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−3,3' −ジメチル−2−ピロリドン、N−フェニル−3,3' −ジメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−t−ブチル−2−ピぺリドン、N−フェニル−ピぺリドン、N−メトキシフェニル−2−ピぺリドン、N−ビニル−2−ピぺリドン、N−ベンジル−2−ピぺリドン、N−ナフチル−2−ピぺリドン、N−メチル−3,3' −ジメチル−2−ピぺリドン、N−フェニル−3,3' −ジメチル−2−ピぺリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メトキシフェニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ベンジル−ε−カプロラクタム、N−ナフチル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−フェニル−ω−ラウリロラクタム、N−t−ブチル−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、N−ベンジル−ω−ラウリロラクタム等のN−置換ラクタム類およびこれらの対応するチオラクタム類;,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−チル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−2- エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジノン等のN−置換エチレン尿素類および対応するN−置換チオエチレン尿素類等が挙げられる。
【0037】
(2)少なくとも1個のアミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基を有するベンゾフェノン類またはチオベンゾフェノン類である化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、4,4' −ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4' −ビス(ジブチルアミノ)−ベンゾフェノン、4、4' −ジアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン等及びこれらの対応のチオベンゾフェノン等のような一方あるいは両方のベンゼン環に少なくとも1つのアミノ基、アルキルアミノ基あるいはジアルキルアミノ基を有するベンゾフェノン及びチオベンゾフェノンである。
【0038】
(3)一般式、R4nMX4-n で表される化合物。
(但し、式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数)
で表される化合物から選ばれるケイ素化合物またはスズ化合物化合物であり、具体的には、ケイ素化合物としてはテトラクロルケイ素、テトラブロムケイ素、メチルトリクロルケイ素、ブチルトリクロルケイ素、ジクロルケイ素、ビストリクロルシリルケイ素等が用いられ、スズ化合物としてはテトラクロルスズ、テトラブロムスズ、メチルトリクロルスズ、ブチルトリクロルスズ、ジクロルスズ、ビストリクロルシリルスズ、ビストリクロルシリルスズ等が用いられる。
【0039】
(4)一般式、Xn M( OR1)m R2 4-m-nで表される化合物。
(但し、式中R1 、R2 は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜2、mは1〜4の整数であり、mとnの和は2〜4である。)
で表される化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、ジメトキシジメチルシラン、ジフェノキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、トリフェノキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)エチルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)ビニルシラン、トリフェノキシフェニルシラン、テトラフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、フェノキシジビニルクロロシラン、メトキシビエチルクロロシラン、ジフェノキシメチルクロロシラン、ジフェノキシフェニルヨードシラン、ジエトキシメチルクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、トリス(2−エチルヘキシルオキシ)クロロシラン、フェノキシメチルジクロロシラン、メトキシエチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、フェノキシフェニルジヨードシラン、ジフェノキシジクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ビス(2−メチルブトキシ)ジブロモシラン、ビス(2−メチルブトキシ)ジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、(2−エチルヘキシルオキシ)トリクロロシラン、(2−メチルブトキシ)トリクロロシラン等があげられる。
【0040】
(5)イソシアネート化合物またはイソチオシアネート化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、イソシアナート化合物としては、2,4 −トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート、キシリレンジイソシアナート、ベンゼン−1,2,4 −トリイソシアナート、ナフタレン−1,2,5,7 −テトライソシアナート、ナフタレン−1, 3, 7−トリイソシアナート、フェニルイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、フェニル−1, 4−ジイソチオシアナートなどが挙げられる。好ましくは芳香族ジイソシアナート又はトリイソシアナートあるいは各種芳香族イソシアナート化合物の2量体、3量体および上記芳香族イソシアナートとポリオ−ル、ポリアミンと反応させたアダクト体などの芳香族イソシアナート化合物を用いる。さらに好ましくは、2, 4−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート化合物が挙げられる。
【0041】
(6)R1 m Si( OR2)n X(4-m-n) で表される化合物。
(式中、R1 はエポキシ基若しくは不飽和カルボニル基を有する置換基を、Xはアルキル基、ハロゲン原子を、R2 は炭素数1〜20の脂肪族、脂環族、芳香族の各炭化水素基から選ばれる基を表す。mは1〜3の整数を、nは1〜3の整数を、それぞれ表し、且つ、m+nは2〜4の整数を表す。)
で表される化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、具体的には、例えば、γ- グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ- グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ- グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ- グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ- グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ- メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ- メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ- メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ- メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ -メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ- メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- トリメトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- トリエトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- トリプロポキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- トリブトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- トリフェノキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)プロピル- トリメトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジメトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- エチルジメトキシシラン、β- (3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチル- エチルジエトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジエトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジプロポキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジブトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジフェノキシシラン、β- 3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジメチルメトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジエチルエトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジメチルエトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル -ジメチルプロポキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジメチルブトキシシラン、β -(3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジメチルフェノキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- ジエチルメトキシシラン、β- (3,4- エポキシシクロヘキシル)エチル- メチルジイソプロペンオキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
(7)下記一般式で表される
【化10】
(式中、X1 〜X8 は独立してアルコキシル基、ビニル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子もしくはそれらのうち少なくとも1種を有する炭化水素基;エポキシ基を有する炭化水素基;カルボニル基を有する炭化水素基;水素原子;アルキル基;またはフェニル基であり、mおよびnは独立して0〜100の整数である。ただしmとnが同時に0となることはない。)
オルガノシロキサン化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、たとえばジグリシドキリジメチルシロキサン、ジメチル(メトキシ- メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチル(アセトキシ- メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジグリシジルポリシロキサンおよびジクロロポリジメチルシロキサンなどを挙げることができる。
【0043】
(8)下記一般式で表される
【化11】
(式中、R1 〜R3 はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基であり、mおよびnは独立して0〜100の整数である。ただしmとnが同時に0となることはない。)
オルガノシロキサン化合物から選ばれる化合物であり、具体的には、ポリメトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリメトキシジエチルシロキサン、ポリエトキシジエチルシロキサン、ポリブトキシジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0044】
これらの変性剤は、好ましくは、重合に使用する触媒に対し0.2〜10倍モルの量比で反応される。0.2モル以下では本発明の効果が不十分であり、一方、10倍モルを超えると、未反応の変性剤が増加して、かえって性能を低下させる。
本発明で用いる(B成分)のゴム状重合体の分子量分布Mw/Mnは1.05〜3.0の範囲である。分子量分布はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。分子量分布が1.05未満の場合、加工性が劣り、しかも、工業的に製造することが難しい。3.0を超える場合は、得られるゴム組成物の機械的強度が劣る。
【0045】
分子量分布が2.2以上の重合体は、混練時の加工性が優れ、加工時のトルクが大きくなく、また、混練時間が短くても良いなどの特長がある。一方、分子量分布が2.2未満の場合は、一般的に加工性が劣り、特にシリカ配合においては、加工時のトルクが大きくなるため、従来はカーボンブラックを多く併用することが必要であった。本発明の場合は、特にシリカとの親和性が高められたためカーボンブラックの配合量が少ない場合にあっても加工性が優れ、さらに、得られるゴム組成物の低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが優れ、強度特性もより優れたものとなる。
本発明の(B成分)のゴム状重合体の重量平均分子量は100,000〜2,000,000であることが必要である。重量平均分子量はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。重量平均分子量が100,000未満では、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、2,000,000を超える場合は,加工性が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。
【0046】
本発明の(B成分)のゴム状重合体のムーニー粘度(MV−M)は、好ましくは20〜200の範囲である。このムーニー粘度は,標準規格に定められるムーニー粘度計を使用し、100℃で測定されたムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )である。但し、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )の値が約150を超えて100℃での測定が難しい場合には、例えば130℃の温度で測定し、100℃での値に換算する。ムーニー粘度(MV−M)が20未満の場合は、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、200を超える場合は、加工性能が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。ムーニー粘度(MV−M)は、25〜180の範囲がより好ましい。
本発明の(B成分)のゴム状重合体は、その加工をより容易にするために、通常のゴム用伸展油をゴム100重量部あたり20〜60重量部添加した油展ゴムとして実用に供することも可能である。
【0047】
本発明の(B成分)のゴム状重合体のガラス転移温度は、最終的に得られるゴム組成物がゴム弾性を示すために−100〜0℃の範囲が好ましい。さらに、−95〜−10℃の範囲がより好ましい。本発明で使用するゴム状重合体のガラス転移温度は、ゴム組成物の使用用途によってその範囲が選択され、例えば低温性能がより重要な用途においては低い範囲のガラス転移温度を有するゴム状重合体が主体的に選択され、制動能力が要求される用途においては高い範囲のガラス転移温度を有するゴム状重合体が主体的に選択される。前記のガラス転移温度は,構成する共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体の組成による制御及び共役ジエン系単量体がブタジエン又はイソプレンの場合は、重合体連鎖におけるミクロ構造(1,4−結合と1,2−および3,4−結合)の比率で制御出来る。本発明のゴム状重合体がポリブタジエンの場合は、ブタジエンのミクロ結合の1,2−結合量は10〜80%が好ましく、本発明のゴム状重合体がスチレン−ブタジエンランダム共重合体の場合は、スチレン量が5〜45%、ブタジエン部分のミクロ結合の1,2−結合量は10〜70%の範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明の(B成分)のゴム状重合体は、1種だけでなく例えば2種以上のゴム状重合体であってもよい。その場合、ポリブタジエンとスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの場合、スチレン−ブタジエン共重合ゴムであっても、分子量・分子量分布がことなるもの、ガラス転移温度がことなるものの組み合わせであってもよい。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物は、(A成分)/(B成分)の重量比は90/10〜10/90の範囲であることが好ましい。好ましくは、90/10〜70/30、更に好ましくは、90/10〜50/50である。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物の分子量分布Mw/Mnは1.05〜3.0の範囲である。分子量分布はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。分子量分布が1.05未満の場合、加工性が劣り、しかも、工業的に製造することが難しい。3.0を超える場合は、得られるゴム組成物の機械的強度が劣る。
【0049】
分子量分布が2.2以上の重合体は、混練時の加工性が優れ、加工時のトルクが大きくなく、また、混練時間が短くても良いなどの特長がある。一方、分子量分布が2.2未満の場合は、一般的に加工性が劣り、特にシリカ配合においては、加工時のトルクが大きくなるため、従来はカーボンブラックを多く併用することが必要であった。本発明の場合は、特にシリカとの親和性が高められたためカーボンブラックの配合量が少ない場合にあっても加工性が優れ、さらに、得られるゴム組成物の低転がり抵抗性と耐ウェットスキッド性のバランスが優れ、強度特性もより優れたものとなる。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物の重量平均分子量は100,000〜2,000,000であることが必要である。重量平均分子量はGPCを使用し、標準ポリスチレンの分子量から測定する方法で求められる。重量平均分子量が100,000未満では、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、2,000,000を超える場合は,加工性が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。
【0050】
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物のムーニー粘度(MV−M)は、好ましくは20〜200の範囲である。このムーニー粘度は,標準規格に定められるムーニー粘度計を使用し、100℃で測定されたムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )である。但し、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )の値が約150を超えて100℃での測定が難しい場合には、例えば130℃の温度で測定し、100℃での値に換算する。ムーニー粘度(MV−M)が20未満の場合は、得られるゴム組成物の強度及び耐摩耗性が低下し、200を超える場合は、加工性能が極端に低下しゴム組成物を得ることが難しくなる。ムーニー粘度(MV−M)は、25〜180の範囲がより好ましい。
【0051】
本発明のゴム組成物で用いられるゴム用伸展油としては、従来から使用されているアロマチック系、ナフテン系、パラフィン系伸展油の他に、MES、T−DAE、T−RAE等の多核芳香族成分が少なく環境に配慮したゴム用伸展油も使用可能である。本発明においてゴム用伸展油は原料ゴム100重量部あたり1〜100重量部使用される。ゴム用伸展油の量は後述する補強性シリカ充填材と補強性カーボンブラックの量に応じて増減し、加硫後の配合物の弾性率を調節するように使用される。ゴム用伸展油の量が100重量部を超えると得られるゴム組成物のヒステリシスロス性能及び耐摩耗性が悪化するので好ましくない。ゴム用伸展油の量は5〜60重量部の範囲が好ましい。
【0052】
本発明の補強性シリカとしては、湿式法シリカ、乾式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカのいずれのものも使用できる。補強効果及びグリップ性能改良効果が高いのは粒子径の小さいシリカであり、小粒径・高凝集タイプのものが好ましい。本発明の補強性シリカは、補強効果のある充填剤として、原料ゴム100重量部あたり25〜100重量部が使用される。25重量部未満では強度その他の物理性能が劣り、100重量部を超えると硬くなりすぎたり、強度がかえって低下したりゴム性能が低下する。の補強性シリカの量は30〜90重量部が好ましい。本発明の加硫剤及び加硫促進剤はゴム状重合体100重量部あたり1〜20重量部の範囲で使用される。加硫剤としては代表的なものとして硫黄が使用され、その他に硫黄含有化合物、過酸化物などか使用される。また、加硫剤促進剤してスルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系などが必要に応じた量使用される。
【0053】
次に、本発明のゴム組成物には、有機シランカップリング剤を使用することが可能である。有機シランカップリング剤は、補強性シリカ充填剤と原料ゴムとのカップリング作用(相互結合作用)を緊密にするために、好ましくは、補強性シリカに対して0.1〜20重量%が加えられる。有機シランカップリング剤の量が20重量部を超えると補強性が損なわれる。有機シランカップリング剤の量は、より好ましくは補強性シリカ充填剤の量に対して0.1重量%以上、10重量%未満の範囲が好ましい。
【0054】
有機シランカップリング剤は、分子内にポリマーの二重結合とシリカ表面とにそれぞれ親和性あるいは結合性の基を有しているものである。その例としてはビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。本発明においては、特定の変性成分を有するゴム状重合体が補強性シリカとの結合性能が高いため、有機シランカップリング剤を用いないか、他の重合体を使用した場合に比較してシランカップリング剤の量を低減することがかえって高性能なゴム組成物を得ることが可能である。
【0055】
本発明のゴム組成物では、好ましくは前記補強性シリカの性能を損なわない範囲で補強性カーボンブラックを使用することが可能である。補強性カーボンブラックとしては、FT、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、DBP吸油量が80ml/100gのカーボンブラックが好ましい。補強性カーボンブラックの量は、原料ゴム100重量部あたり0.1〜100重量部であり、補強性シリカとカーボンブラックの合計が30〜150重量部であることが好ましい。この範囲以外では本発明の目的とする適度なゴム性能が得られない。また、カーボンブラックが0.1重量部以上、25重量部未満であることがより好ましい。その場合、得られるゴム組成物の低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが更に優れたものとなる。
【0056】
本発明において、原料ゴムとして(A成分)と(B成分)の混合物15〜99重量%と、それ以外の加硫可能なゴム状重合体1〜85重量%からなる原料ゴムをもちいることも可能である。他の成分としては、合成ゴム、天然ゴムから必要に応じ、1種以上がもちいられる。具体的に示すと、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンゴム、また、ブチルゴム、天然ゴムから選ばれた1種以上のゴムであって、例えば、ブタジエンゴムとしては、コバルト系、ニッケル系、ネオジム系、ウラン系等の各種触媒による高シスブタジエンゴム、リチウム系触媒による低シスブタジエンゴム、中・高ビニルブタジエンゴムがあり、スチレン−ブタジエンゴムとしては、スチレン含有量3〜50重量%の乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、スチレン含有量3〜50重量%でブタジエン部分の1,2−結合量が10〜80%の溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴムとしては、スチレン含有量が3〜40重量%でイソプレン含有量が3〜40%重量%のスチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンゴムとしては、シス1,4−結合量が90%以上の合成ポリイソプレンゴム等がある。その組成をゴム組成物の使用目的に合わせて、物性及び加工性を最適化して使用される。特に好ましいその他成分としては、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムであり、この場合、本発明の目的である低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが最も優れる。
【0057】
本発明の好ましい態様として、変性共役ジエン系重合体組成物として、変性成分の量が70重量%以上でガラス転移温度が−80〜−20℃の範囲である特定重合体を使用し、その他の成分としてガラス転移温度が−50〜−20℃の範囲のムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )が100以上である溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが、好ましいものとしてあげられる。
また、その他成分として用いる別の好ましい溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムの例として、ムーニー粘度(ML1+4(100 ℃) )が150以上で分子量分布(Mw/Mn)1.4〜2.2の範囲のものがあげられ、本発明の特定のゴム状重合体組成物との組合せで、良好な強度特性と、低転がり抵抗性と耐ウェットスキッド性のバランスが優れるゴム組成物をもたらす。
さらに、本発明のゴム組成物は、その他の添加剤として必要に応じて亜鉛華、ステアリン酸、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤が目的に従った量の例えば0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0058】
本発明は、変性共役ジエン系重合体組成物または変性共役ジエン系重合体組成物と他の重合体成分、およびゴム用伸展油、補強性シリカさらに必要によりシランカップリング剤、補強性カーボンブラック、その他の添加剤を、混練排出温度が135〜180℃となる条件でインターナルミキサーなどの公知の密閉混練機を使用して1回以上混練して、混練後のバウンドラバー量(補強性充填剤に結合した原料ゴム成分の比率)を30〜70重量%とした後、さらに加硫剤及び加硫促進剤を添加し、インターナル・ミキサーやミキシング・ロール等の公知の混練機を用いて、混練排出温度が120℃以下となるように混練して、加硫して得られるジエン系重合体ゴム加硫物を提供する。混練排出温度がこれらの範囲から外れると、本発明の目的とする低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが優れ、強度特性等を改善したジエン系重合体ゴム加硫物が得られない。また、バウンドラバー量は30〜70重量%であることが必要である。30重量%未満では、本発明の目的とする低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが優れ、強度特性等を改善したジエン系重合体ゴム加硫物が得られない。また、70重量%を超えると混練時のトルクが高くなり加工が困難となる。バウンドラバー量は40〜70重量%であることが好ましい。
【0059】
本発明は、さらに、有機シランカップリング剤を補強性シリカの0.1重量%以上6重量%未満加え、混練排出温度が135〜180℃となる条件で1回以上混練して、混練後のバウンドラバー量(補強性充填剤に結合した原料ゴム成分の比率)を30〜70重量%とした後、さらに加硫剤及び加硫促進剤を添加し、混練排出温度が120℃以下となるように混練し、加硫することが好ましい。
また、本発明において、補強性シリカの加熱減量(Mo)に応じて、下記の混練排出温度(Td)
1) 1%≦Mo≦4%の場合:
135≦Td≦180℃
2) 4%<Mo≦6%の場合:
(15×Mo+75)℃<Td≦180℃
3) 6%<Mo≦10%の場合:
165℃<Td≦180℃
となるように1回以上混練して、混練後のバウンドラバー量(補強性充填剤に結合した原料ゴム成分の比率)を30〜70重量%とした後、さらに、加硫剤及び加硫促進剤を添加した後、混練排出温度が120℃以下となるように混練し、加硫することが好ましい。このようにして得られるジエン系重合体ゴム加硫物は低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスが優れ、強度特性等が改善されたものとなる。
【0060】
補強性シリカはその製造方法の違いに起因する水分の量(105℃、8時間後の加熱減量(Mo )で測定される)に従って、最終的に得られる加硫ゴム組成物の性能に差があり、本発明においては、補強性シリカの加熱減量に応じて配合物の混練温度を調整することが好ましい。加熱減量の異なるシリカは、加熱減量が6〜8%程度である市販のシリカを100〜120℃の範囲において、常圧下で乾燥することによって得られる。たとえば105℃の常圧下では、1〜8時間程度の乾燥により、加熱減量が1〜4重量%であるシリカを得ることができる。
【0061】
各々のシリカの加熱減量において、最適な温度範囲が異なるのは、補強性シリカの加熱減量分即ち補強性シリカに吸着した水分が、補強性シリカと変性ポリマーとの反応に阻害因子となるためである。従って、加熱減量が多いシリカを使用するする場合には、混練排出温度が範囲の下限より低い場合においては、シリカとゴムの結合が十分に生成できず、混練排出温度が範囲より高い場合においては、組成物のスコーチ及び架橋反応が起き好ましくない。このような混練排出温度の設定が可能となることにより、工業的規模での生産性を改良する効果も可能である。
【0062】
本発明において、通常実施される加硫方法で加硫され、例えば、120〜200℃の温度で、好適には140〜180℃の温度で加硫され、得られるジエン系重合体ゴム加硫物の状態でその性能を発揮する。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物は、ジエン系重合体ゴム加硫物の形態で、高性能タイヤ、オールシーズンタイヤを代表的なものとするタイヤトレッド配合物に好適に使用されるが、他のタイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、はきものなどにもその特徴を生かして適用できる。
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
【実施例】
変性SBRの製法−1:
内容積10リットルで、底部に入口、頭部に出口を有し、攪拌機およびジャケットを付けたオートクレーブを反応器として2基直列に連結し、ブタジエンを16.38g/分、スチレンを8.82g/分、n−ヘキサンを132.3g/分で混合した後、この混合溶液を活性アルミナを充填した脱水用カラムを経由し、不純物を除去するためにn−ブチルリチウムを0.0046g/分の速度でスタティックミキサー中で混合した後、1基目の反応器底部より定量ポンプを用いて連続的に供給し、さらに極性物質として2、2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.028g/分の速度、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.0070g/分の速度で直接反応器へ供給し、反応器内温を86℃に保持した。反応器頭部より重合体溶液を連続的に抜出し、2基目の反応器の供給した。1基目の反応器の状態が安定した後、得られた変性反応前重合体のムーニー粘度は、100℃測定で55であった。2基目の反応器の温度を80℃に保ち、テトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.009g/分(活性リチウムに対する当量比=0.9)の速度で反応器底部から添加し変性反応をさせた。この重合体溶液に連続的に酸化防止剤を連続的に添加し変性反応を終了させ、その後溶媒を除去し、表1に示す変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体Aを得た。
【0064】
変性SBRの製法−2:
内容積10リットルで、攪拌機およびジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去した1,3−ブタジエンを645g、スチレンを280g、シクロヘキサンを5500g、極性物質として2、2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.70gを反応器へ入れ、反応器内温を30℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム0.50gを含むシクロヘキサン溶液を反応器へ供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内音は徐々に上昇した。重合開始剤添加後7分から12分の5分間にわたって、ブタジエン75gを15g/分の速度で供給した。最終的な反応器内温は75℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤として、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンを0.8g添加し、75℃で5分間保持して変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤を添加後、溶媒を除去し、表1に示す変性成分を有する試料B得た。
さらに、試料Bを得たのと同様な方法で、表1に示す結合スチレン量、ブタジエン部分の1、2−結合量、ム−ニ−粘度、ガラス転移温度、分子量分布、変性剤の異なる試料C〜試料Jを得た。
【0065】
なお試料の分析は以下に示す方法により行った。
1)結合スチレン量
試料をクロロホルム溶液とし、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量[S](wt%)を測定した。
2)ブタジエン部分のミクロ構造
試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して所定の吸光度よりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた。
3)ガラス転移温度
DSCを使用し、昇温速度10℃/分で測定。外挿開始温度(On set point)をTgとした。
【0066】
4)ムーニー粘度、JIS K 6300によって100℃、予熱1分で4分後の粘度を測定。
5)分子量及び分子量分布
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本連結して用いたGPCを使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレン使用して検量線により分子量及び分子量分布を計算。
6)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、上記5のポリスチレン系ゲル(昭和電工製:Shodex)のGPCと、シリカ系カラムGPC(デュポン社製Zorbax)の両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率(重量%)を求めた。
【0067】
【実施例1〜7】
【比較例1】
表1に示す試料を原料ゴムとして、表2に示す配合を用い下記の混練方法でゴム配合物を得た。
[混練方法]
外部より循環水による温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量1.7リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数66/77rpmの条件で、原料ゴム、充填材(シリカおよびカーボンブラック)、有機シランカップリング剤、アロマチックオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。(混練手順は、表6に示す)。この際、密閉混合機の温度を制御し、異なる排出温度のゴム組成物を得た。
【0068】
ついで、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度により排出温度を調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を混練した。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫し、以下のタイヤ性能を示す物性の性能を測定した。
1)バウンドラバー量:第2段混練終了後サンプリングした組成物0.2gを約1mm角に裁断してハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ重量測定。トルエン中に24時間浸漬後、重量を測定し、非溶解成分の量から、充填剤に結合したゴムの量を計算してバウンドラバー量とした。
2)配合物ムーニー粘度:ムーニー粘度計を使用し、JIS K 6300により、130℃で、予熱1分、2回転4分後の粘度を測定。ムーニー粘度が80を大幅の超える場合は加工性が劣る。ムーニー粘度が30以下では粘着が大きく加工しにくくなる。
【0069】
3)300%モジュラス及び引張強度:JIS K 6251の引張試験法により測定。
4)省燃費特性:50℃におけるTanδで試験。レオメトリックス社製 アレス粘弾性試験装置にて、ねじり方式により、周波数10Hz、歪み3%、50℃で測定。数字が小さい方が省燃費性能良好。
5)ウェットスキッド抵抗性能:0℃におけるTanδで試験。レオメトリックス社製 アレス粘弾性試験装置にて、ねじり方式により、周波数10Hz、歪み3%、0℃で測定。数字が大きい方がウェットスキッド抵抗性能良好。
表4から明らかなごとく、実施例1〜7の本発明の限定内のゴム状重合体を使用した加硫ゴム組成物は、同じシリカを含む配合において、比較例1の組成物に比較して、良好な省燃費性を有し、ウェットスキッド性も良好である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【発明の効果】
本発明の特定構造の共役ジエン系重合体ゴムを補強性シリカ充填材を含む特定の配合で用いることにより、強度特性、加工性、省燃費性能、グリップ性能の良好なタイヤトレッド用加硫ゴム組成物が提供される。またシリカ配合組成物を得るのに必要なシランカップリング剤の減量が可能となる。このタイヤ用加硫ゴム組成物は、省燃費抵能を必要とする自動車タイヤの材料として有用である。
Claims (2)
- 炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用いて共役ジエン系単量体を重合、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後に得られた重合体の活性末端と次の一般式で表される分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物を反応させて得られる変性重合体(成分A)と、該重合体の活性末端と反応可能な官能基を有する下記(1)〜(8)から選ばれる1以上の化合物である、変性剤を反応させて得られる変性重合体(成分B)との混合物であり、(A成分)/(B成分)の重量比は90/10〜10/90の範囲であり、
該成分A及び成分Bは、少なくとも1種類の共役ジエン系単量体、または少なくとも1種類の共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体とを有機リチウム触媒の存在下で溶液重合させた後、特定の変性剤を反応させて得られる変性成分が60重量%を越えて含有し、重合体組成物の重量平均分子量が100,000〜2,000,000である変性共役ジエン系重合体組成物。
(1)N−置換アミノアルデヒド類、N−置換アミノチオアルデヒド類、N−置換アミノケトン類、N−置換アミノチオケトン類、及び分子中に下記の構造を有する化合物。
(2)少なくとも1個のアミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基を有するベンゾフェノン類またはチオベンゾフェノン類である化合物。
(3)一般式、R4nMX4-n で表される化合物。(但し、式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数)
(4)一般式、Xn M(OR1)m R2 4-m-nで表される化合物。(但し、式中R1 、R2 は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基、Mはケイ素またはスズ原子、Xはハロゲン原子、nは0〜2、mは1〜4の整数であり、mとnの和は2〜4である。)
(5)イソシアネート化合物またはイソチオシアネート化合物。
(6)R1 m Si(OR2)n X(4-m-n) で表される化合物。(式中、R1はエポキシ基若しくは不飽和カルボニル基を有する置換基を、Xはアルキル基、ハロゲン原子を、R2 は炭素数1〜20の脂肪族、脂環族、芳香族の各炭化水素基から選ばれる基を表す。mは1〜3の整数を、nは1〜3の整数を、それぞれ表し、且つ、m+nは2〜4の整数を表す。)
(7)下記一般式で表されるオルガノシロキサン化合物。
(8)下記一般式で表されるオルガノシロキサン化合物。
- 請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体組成物100重量部、及び該変性共役ジエン系重合体組成物100重量部に対してそれぞれ、
(1)ゴム用伸展油 1〜100重量部
(2)補強性シリカ 25〜100重量部
(3)加硫剤及び加硫促進剤 1.0〜20重量部
からなるゴム組成物。
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