以下、本発明に係る電子式計算機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本実施形態に係る電子式計算機の正面図を示す。電子式計算機1は、主に、入力手段である各種キー群2と、表示手段であるディスプレイ3とを備えている。
各種キー群2は、ユーザから数値や演算記号等の数式構成要素の入力操作を受けたり、各種処理の指示操作を受けて後述するCPUに入力するためのキー群であり、それぞれ固有の機能を割り当てられた複数のキーを備えている。本実施形態では、各種キー群2は、例えばテンキー20、演算キー21、「=」キー22、ACキー23、Cキー24、右方向キー25、左方向キー26、税込キー27、税抜キー28、メモリキー29、電源キー30等で構成されている。
このうち、テンキー20は数値の入力操作を受けるキーであり、演算キー21は四則演算を実行する場合の演算記号の入力操作を受けるキーである。なお、本実施形態では、演算キー21の乗算キー21aや除算キー21bをそれぞれ連続して2回押下すると電子式計算機1の計算モードが定数計算モードに設定されるようになっている。「=」キー22は入力された数値や演算記号に基づく演算処理の指示を受けるキーである。
ACキー23は後述する記憶手段のメモリ領域をクリアする処理の指示を受けるキーであり、Cキー24は入力したデータをクリアする処理の指示を受けるキーである。また、右方向キー25は本実施形態ではドル単位で入力された数値を円単位に換算する換算計算の処理の指示を受けるキーであり、左方向キー26は円単位で入力された数値をドル単位に換算する換算計算の処理の指示を受けるキーである。
税込キー27は入力された数値に対する税込み計算の処理の指示を受けるキーであり、税抜キー28は入力された数値に対する税抜き計算の処理の指示を受けるキーである。メモリキー29は入力された数値をメモリ内容とするメモリ計算の処理の指示を受けるキーであり、電源キー30は電子式計算機1の電源を投入/切断するためのキーである。
表示手段であるディスプレイ3は、図2(A)に示すような日の字状セグメントを一段に表示する一段型表示手段3aと、図2(B)に示すような日の字状セグメントを二段に表示する二段型表示手段3bとが積層されて構成されている。以下、一段型表示手段3aを一段表示パネル3a、二段型表示手段3bを二段表示パネル3bという。
本実施形態では、ディスプレイ3は、図示しない反射板の外側に光を透過する素材で構成された二段表示パネル3bが貼付され、さらにその外側に同じく光を透過する素材で構成された一段表示パネル3aが積層されて形成されている。また、一段表示パネル3aおよび二段表示パネル3bの日の字状セグメントを構成する各セグメント、および二段表示パネル3bの「K」、「M」、「税」、「税込」、「税抜」の文字セグメントには、それぞれ図示しない透明電極が配設されており、各透明電極には、後述する第1表示駆動回路5aや第2表示駆動回路5bから所定の電圧を印加できるようになっている。
前述したように、一段表示パネル3aや二段表示パネル3bは光を透過する素材で構成されているため、日の字状セグメント以外の部分や「K」、「M」、「税」、「税込」、「税抜」の文字セグメント以外の部分に外光が入射すると、光が一段表示パネル3aや二段表示パネル3bを透過して反射板で反射され、二段表示パネル3b、一段表示パネル3aを透過して一段表示パネル3aから外界に出射される。そのため、その部分は明るく見えるようになっている。
また、一段表示パネル3aや二段表示パネル3bの日の字状セグメントの部分や文字セグメントの部分は、所定の電圧が印加されていない状態では外光を透過してそれら以外の部分と同様に明るく見えるため、ディスプレイ3上には何も表示されていないように見える。しかし、日の字状セグメントの部分や文字セグメントの部分は前述した所定の電圧が印加されると光を吸収するようになっており、そのため、所定の電圧が印加されるとそのセグメント部分では外光が透過できなくなって反射板で反射されず、そのセグメント部分が黒く見えるようになる。このように、表示すべき数値や文字に対応するセグメントに所定の電圧を印加することで、ディスプレイ3の画面上に数値や文字が表示されるようになっている。
なお、「K」の表示は、電子式計算機1の計算モードが定数計算モードであり、その右方に表示されている数値が定数計算の定数であることを示す表示であり、「M」の表示は、計算モードがメモリ計算モードであり、その右方に表示されている数値が記憶手段に記憶されているメモリ内容であることを示す表示である。また、「税」の表示は、計算モードが税込み計算モードまたは税抜き計算モードであり、その右方に表示されている数値が税額であることを示す表示であり、「税込」および「税抜」の表示は、計算モードが税込み計算モードまたは税抜き計算モードであり、その右方に表示されている数値が税込み計算または税抜き計算の計算結果であることを示す表示である。また、計算モードが四則演算モードである場合にはこれらの文字セグメントの表示は行わない。
続いて、電子式計算機1の機能構成について説明する。図3は、本実施形態に係る電子式計算機の機能構成を示すブロック図である。電子式計算機1は、入力部4、第1表示駆動回路5a、第2表示駆動回路5b、ROM(Read Only Memory)6、記憶手段であるRAM(Random Access Memory)7およびCPU(Central Processing Unit)8等の機能部を備えており、各機能部はバス10で接続されている。
入力部4は、上述の各種キー群2を備えており、押下されたキーの信号をCPU8に出力するようになっている。
第1表示駆動回路5aおよび第2表示駆動回路5bは、CPU8からの信号に基づいてそれぞれ前述したディスプレイ3の一段表示パネル3aおよび二段表示パネル3bの駆動を行うようになっている。具体的には、第1表示駆動回路5aや第2表示駆動回路5bは、CPU8からそれぞれ一段表示パネル3aや二段表示パネル3bに表示すべき情報の信号が送信されてくると、その信号に基づいて、一段表示パネル3aや二段表示パネル3bの必要な日の字状セグメントや文字セグメントの透明電極に所定の電圧を印加して、ディスプレイ3上に各種情報を表示するようになっている。
ROM6は、電子式計算機1におけるメニュー表示処理や各種設定処理、各種演算処理等の動作に係る各種プログラムや、電子式計算機1が備える種々の機能を実現するためのプログラム等を格納している。ROM6に記憶されている各プログラムは、必要に応じてCPU8によりROM6から読み出され、RAM7に展開された後に実行されるようになっている。
RAM7は、CPU8が実行する各種プログラムをプログラム用の領域に書き込み、これらのプログラムの実行に係るデータ等を一時的に保持する図示しない演算用の領域や表示用の領域等を有する随時書き込み可能なメモリである。
なお、図3に示すように、本実施形態では、RAM7には、表示用の領域として、一段表示パネル3aに表示する内容を一時的に保持する第1表示メモリ領域と、二段表示パネル3bの上段に表示する内容を一時的に保持する第2上段表示メモリ領域と、二段表示パネル3bの下段に表示する内容を一時的に保持する第2下段表示メモリ領域とが設けられている。
また、RAM7には、この他にも、前述した定数計算モード、メモリ計算モード、税込み計算モード、税抜き計算モードの計算モードを表すデータが一時的に保持される計算モード用領域や、後述するフラグFの値が一時的に保持されるフラグ用領域、税率を表す数値を記憶するための税率用領域、為替レート等の換算レートを記憶するための換算レート用領域、「M+」計算や「M−」計算等のメモリ計算に使用されるM値を記憶するためのメモリ計算用領域等が設けられている。なお、M値とはRAMに記憶されメモリ計算に使用されるメモリ内容である。
なお、フラグFの機能については後述する。また、税率すなわち消費税である5%の数値、および換算レートすなわち例えば1ドル=110円を表す数値は、ROM6に記憶されているプログラム中に予め設定された数値がプログラムのRAM7上への展開時に自動的に税率用領域および換算レート用領域に書き込まれるように構成してもよく、また、電子式計算機1に入力して書き込むように構成することも可能である。
CPU8は、入力される指示に応じて所定のプログラムに基づいた処理を実行し、各機能部への指示やデータの転送を行うようになっている。また、CPU8は、入力された数値やRAM7に記憶された税率等の数値に基づいて計算を行う計算手段を構成するとともに、第1表示駆動回路5aおよび第2表示駆動回路5bを介して表示を行うパネルを一段表示パネル3aおよび二段表示パネル3bの間で切り換える切り換え手段を構成している。
具体的には、CPU8は、入力部4から入力される操作信号に応じてROM6に格納されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って処理を実行する。そして、CPU8は、計算結果を表示するための表示制御信号を適宜第1表示駆動回路5aや第2表示駆動回路5bに出力して、対応した表示情報をディスプレイ3の一段表示パネル3aまたは二段表示パネル3bに表示させるようになっている。
以下、CPU8により実行される電子式計算機1の計算モードにおける動作例について、図4〜図9に示すフローチャートと、図10〜図14に示す画面遷移とを用いて説明する。なお、図10〜図14では、互いに対応させた状態で、ユーザの操作を図の左側に、ディスプレイ3における表示を図の右側にそれぞれ示している。
図4の基本フローチャートに示すように、電源キー30が押下されて電子式計算機1の電源がONにされると(ステップS1)、CPU8は、まず、電子式計算機1の初期化を行うようになっている(ステップS2)。初期化においては、CPU8は、ROM6に記憶されている各プログラムを読み出してRAM7に展開する。また、この段階で、後述するフラグFは0にセットされる。
続いて、CPU8は、ユーザによってキー操作がされるまで処理を待機し(ステップS3;NO)、ユーザによりキー操作が行われると(ステップS3;YES)、押下されたキーに対応する処理を行うようになっている。なお、図4の基本フローチャートでは、便宜上、以下のステップS4、S7、S9、S11、S14、S16、S18、S20等でそれぞれ判断が行われるように記載されているが、実際には、CPU8が押下されたキーを判断して押下されたキーに対応する処理を即座に行うように構成されている。
CPU8は、押下されたキーがテンキー20であれば(ステップS4;YES)、入力されたキーの内容をRAM7の第1表示メモリ領域に一時的に記憶させて(ステップS5)、表示処理(ステップS6)を行うようになっている。
表示処理(ステップS6)は、図5に示すフローチャートに従って行われるようになっている。なお、図5のフローチャートにおいても、便宜上、以下のステップS60、S62、S64、S67、S70、S72でそれぞれ判断が行われるように記載されているが、実際には、現在の電子式計算機1の計算モードを判断してその計算モードに対応する処理を即座に実行するように構成されている。
表示処理では、CPU8は、まず、フラグFが0であるか否かを判断するようになっている(ステップS60)。本実施形態では、フラグFが0の状態とは、電子式計算機1の計算モードが四則演算モードに設定されていることを意味する。
そして、この場合、フラグFは0であるから(ステップS60;YES)、CPU8は、第1表示駆動回路5aに第1表示メモリ領域に記憶させたキーの内容を信号として送信し、第1表示駆動回路5aは、その信号に基づいて一段表示パネル3aの日の字状セグメントの透明電極に所定の電圧を印加してキーの内容をディスプレイ3上に表示させる(ステップS61)。CPU8は、表示処理(図4のステップS6)を終了すると、キー操作の待機状態に戻るようになっている(ステップS1)。
なお、表示処理における他の処理については後述する。また、テンキー20が押下されると数値等が一段表示パネル3aの最も右端側の日の字セグメントに表示され、テンキー20が連続して押下されると先に入力された数値等が一段表示パネル3a上のより左側の日の字セグメントにシフトしながら表示されることおよびそのように制御することは公知の技術であり、説明を省略する。
CPU8は、押下されたキーが演算キー21であれば(ステップS7;YES)、その演算キー21の内容をRAM7に一時的に記憶させて、四則演算・定数計算処理(ステップS8)を行うようになっている。四則演算・定数計算処理(ステップS8)は、図6に示すフローチャートに従って行われるようになっている。
四則演算・定数計算処理では、CPU8は、まず、フラグFが1であるか否かを判断するようになっている(ステップS80)。本実施形態では、フラグFが1の状態とは、電子式計算機1の計算モードが定数計算モードに設定されていることを意味する。
そして、この場合、フラグFは0であるから(ステップS80;NO)、CPU8は、続いて、RAM7に一時的に記憶した今回の演算キー21の内容と同じ内容がその直前に記憶されているか否かを検索して、同じ演算キー21が連続して押下されたか否かを判断するようになっている(ステップS81)。
CPU8は、同じ演算キー21が連続して押下されていなければ(ステップS81;NO)、その演算キー21の内容をRAM7の四則演算用領域に記憶させる(ステップS82)。なお、ユーザは、四則演算において例えば除算をすべきところを誤って乗算キー21aを押下した場合には通常続けて除算キー21bを押下するから、このように演算キー21が連続して押下されてもそれらが異なる演算キー21であれば四則演算を続行する意思があると考えられる。そのため、CPU8は、ステップS81の判断において、連続して押下された演算キー21が異なるキーであれば、同じ演算キー21が連続して押下されていないと判断して、四則演算を続行する。
一方、前述したように、本実施形態では演算キー21が連続して2回押下されると電子式計算機1の計算モードが定数計算モードに設定されるようになっている。そのため、CPU8は、同じ演算キー21が連続して押下されたと判断すると(ステップS81;YES)、フラグFを1にセットして電子式計算機1の計算モードを定数計算モードに設定する(ステップS83)。
本実施形態では、通常の四則演算モードでは計算結果等を一段表示パネル3aに表示し、RAM7に記憶された数値を用いて計算を行う定数計算モードや後述する税込み計算モード、税抜き計算モード、換算計算モード、メモリ計算モードでは二段表示パネル3bに表示するようになっている。なお、定数計算モードとは、入力されたある数値を定数として固定し、次に入力された数値とその定数との乗算や除算を次々に行う計算モードである。
CPU8は、フラグFを1にセットすると(ステップS83)、ディスプレイ3の表示を四則演算の場合の一段表示パネル3aから二段表示パネル3bに切り換えるために、第1表示メモリ領域に記憶されている内容を第2上段表示メモリ領域に転写する(ステップS84)。そして、その内容と今回押下された演算キー21の内容とをRAM7の定数計算用領域に記憶させる(ステップS82)。テンキー20を介して入力され第1表示メモリ領域に記憶されていた内容は、定数計算における定数となる。
なお、CPU8は、押下されたキーが演算キー21である場合に、すでにフラグFが1である場合(ステップS80;YES)、すなわち電子式計算機1の計算モードが定数計算モードになっている状態でさらに演算キー21が押下された場合には、フラグFを0にセットして(ステップS85)、電子式計算機1の計算モードを定数計算モードから通常の四則演算のモードに戻すようになっている。
CPU8は、以上の操作を行って四則演算・定数計算処理(図4のステップS8)を終了する。
そして、その後の表示処理(ステップS6)では、CPU8は、図5に示した表示処理のフローチャートに従い、四則演算・定数計算処理で計算モードが定数計算モードに移行してフラグFが1にセットされていれば、ステップS60の判断でフラグFは0ではなく(ステップS60;NO)、1であるから(ステップS62;YES)、二段表示パネル3bの上段に前述した定数を表示させる(ステップS63)。そして、その後、テンキー20が押下されて置数が入力されると、表示処理では、フラグFが1であるからステップS63の処理が行われ、今度は置数が二段表示パネル3bの下段に表示される。
また、図4の基本フローチャートに示すように、CPU8は、押下されたキーが「=」キー22であれば(ステップS9;YES)、フラグFの値に基づいて四則演算や定数計算等の演算処理を実行するようになっている(ステップS10)。そして、この場合、すなわちフラグFが1にセットされ定数計算が行われている場合には、その後の表示処理(ステップS6)では、図5に示すように、定数計算の計算結果が二段表示パネル3bに表示されるようになっている(ステップS63)。
以上の処理をディスプレイ3の表示を用いて説明すると、例えば図10(A)に示すように、四則演算モードで、キー操作により「2」、「0」、「×」と入力されると、フラグFは0にセットされた状態であるから、CPU8は、図6の四則演算・定数計算処理では、フラグFは1ではなく(ステップS80;NO)、同じ演算キー21が連続して押下されていないと判断して(ステップS81;NO)、テンキー20の内容「2」「0」および演算キー21の内容「×」をRAM7の四則演算用領域に記憶させる(ステップS82)。また、表示処理では、四則演算モードであるから(図5のステップS60;YES)、図10(A)に示すように、CPU8は、第1表示駆動回路5aから所定の電圧を印加させて一段表示パネル3aに表示させる(ステップS61)。
そして、図10(B)に示すように、その後、乗算キー21aがさらに押下されると、四則演算・定数計算処理では、CPU8は、フラグFは0であり(ステップS80;NO)、同じ演算キー21が連続して押下されたから(ステップS81;YES)、フラグFを1にセットして(ステップS83)、電子式計算機1の計算モードを定数計算モードにする。そして、第1表示メモリ領域の内容「20」を第2上段表示メモリ領域に転写し(ステップS84)、転写された内容「20」を定数計算の定数としてRAM7の定数計算用領域に記憶させる(ステップS82)。
続いて、表示処理では、フラグFは1であるから(図5のステップS62;YES)、CPU8は、表示手段をそれまでの一段表示パネル3aから二段表示パネル3bに切り換える表示の切り換えを行い、図10(B)に示すように、第2表示駆動回路5bから所定の電圧を印加させて二段表示パネル3bの上段にRAM7に記憶されている定数「20」を読み出して表示させる(ステップS63)。また、CPU8は、定数計算モードであることを示すために、二段表示パネル3bの左側の「K」の文字セグメントに所定の電圧を印加させて「K」の文字を表示させる。
そして、さらに、図10(C)に示すように、テンキー20が押下されて置数「10」が入力されると、表示処理では、フラグFが1であるからステップS63の処理が行われ、同図に示すように、CPU8は、今度は置数を二段表示パネル3bの下段に表示させる。
そして、図10(D)に示すように、「=」キー22が押下されると、CPU8は、定数「20」に置数「10」を乗算する定数計算を実行し(図4のステップS10)、同図に示すように、表示処理で、定数計算の計算結果「200」を二段表示パネル3bに表示させる(ステップS63)。例えば図10(E)に示すように、この状態でさらに別の置数「15」が入力され「=」キー22が押下されると、定数「20」に置数「15」を乗算する定数計算が実行されて、同図に示すように、表示処理で、定数計算の計算結果「300」が二段表示パネル3bに表示される。
なお、定数計算モードは、フラグFが1に設定されている図10(A)〜(E)の何れかの状況でテンキー20や「=」キー22ではなく演算キー21を押下することで解除され(図6のステップS85)、或いは下記に述べるACキー23の押下により解除されて、四則演算に戻る。
図4の基本フローチャートに戻り、CPU8は、押下されたキーがACキー23であれば(ステップS11;YES)、RAM7の演算用の領域や第1表示メモリ領域、第2上段表示メモリ領域、第2下段表示メモリ領域に記憶されている内容や定数計算用領域に記憶されている定数をクリアし(ステップS12)、フラグFを0にセットするようになっている(ステップS13)。
そのため、計算モードが四則演算モードに戻り、RAM7の計算モード用領域には四則演算モードを表すデータが記憶され、フラグ用領域には0が記憶される。また、表示用の領域がクリアされるため、ディスプレイ3上の表示が消える(ステップS6)。
CPU8は、押下されたキーがCキー24であれば(ステップS14;YES)、RAM7中からその直前に入力した入力データを消去する(ステップS15)。
CPU8は、押下されたキーが税込キー27または税抜キー28であれば(ステップS16;YES)、税込み・税抜き計算処理(ステップS17)を行うようになっている。税込み計算と税抜き計算とは別々に行われるが、同様の処理であるから、ここで同時に説明する。税込み・税抜き計算処理(ステップS17)は、図7に示すフローチャートに従って行われるようになっている。
税込み・税抜き計算処理では、CPU8は、まず、押下されたキーが税込キー27であればフラグFを2にセットして計算モードを税込み計算モードとし、押下されたキーが税抜キー28であればフラグFを3にセットして計算モードを税抜き計算モードとするようになっている(ステップS170)。そして、税込み計算または税抜き計算を実行する(ステップS171)。
税込み計算では、CPU8は、記憶手段であるRAM7の税率用領域に記憶された数値である税率を読み出して、税込キー27が押下するまでにテンキー20を介して入力された価格を表す数値に対する税額と税込み価格を計算する。具体的には、入力された価格をA、税率をαとした場合、CPU8は、税額A×α、税込み価格A×(1+α)を計算する。そして、ディスプレイ3の表示を四則演算の場合の一段表示パネル3aから二段表示パネル3bに切り換えるために、算出した税額を第2上段表示メモリ領域にセットし、税込み価格を第2下段表示メモリ領域にセットする(ステップS172)。
また、税抜き計算(ステップS171)においても同様に、CPU8は、RAM7の税率用領域に記憶された税率を読み出して、入力された価格を表す数値に対する税額と税抜き価格を計算する。具体的には、CPU8は、税額A×α/(1+α)、税抜き価格A/(1+α)を計算する。そして、算出した税額を第2上段表示メモリ領域にセットし、税抜き価格を第2下段表示メモリ領域にセットする(ステップS172)。
CPU8は、以上の操作を行って税込み・税抜き計算処理(図4のステップS17)を終了する。
そして、表示処理(ステップS6)では、CPU8は、図5に示した表示処理のフローチャートに従い、フラグFは2(ステップS64;YES)または3(ステップS67;YES)であるから、二段表示パネル3bの上段に税額を、下段に税込み価格または税抜き価格を表示させる(ステップS65、S68)。そして、本実施形態では、新たに価格を入力する場合に、ユーザに一段表示の大きな表示で入力させるためにフラグFを0にセットするようになっている(ステップS66、S69)。
以上の処理をディスプレイ3の表示を用いて説明すると、消費税が5%すなわち前記α=0.05であるとすると、税込み計算の場合、例えば図11(A)に示すように、四則演算モードでキー操作により「2000」と入力され、図11(B)に示すように税込キー27が押下されると、CPU8は、図7の税込み・税抜き計算処理で、フラグFを2にセットし(ステップS170)、税込み計算を行う(ステップS171)。そして、表示処理ではフラグFが2であるから(図5のステップS64;YES)、CPU8は、二段表示パネル3bの上段に税額「100」を、下段に税込み価格「2100」を表示させる(ステップS65)。また、CPU8は、税額と税込み計算モードであることを示すために、二段表示パネル3bの左側上方の「税」の文字セグメントおよび左側下方の「税込」の文字セグメントに所定の電圧を印加させてそれらの文字を表示させる。そして、次の入力にそなえてフラグFを0にセットする(ステップS66)。
税抜き計算の場合には、例えば図12(A)に示すように、四則演算モードでキー操作により「2100」と入力され、図12(B)に示すように税抜キー28が押下されると、CPU8は、図7の税込み・税抜き計算処理で、フラグFを3にセットし(ステップS170)、税抜き計算を行う(ステップS171)。そして、表示処理ではフラグFが3であるから(図5のステップS67;YES)、CPU8は、二段表示パネル3bの上段に税額「100」を、下段に税抜き価格「2000」を表示させる(ステップS68)。また、CPU8は、税額と税抜き計算モードであることを示すために、二段表示パネル3bの左側上方の「税」の文字セグメントおよび左側下方の「税抜」の文字セグメントに所定の電圧を印加させてそれらの文字を表示させる。そして、次の入力にそなえてフラグFを0にセットする(ステップS69)。
図4の基本フローチャートに戻り、CPU8は、押下されたキーが右方向キー25または左方向キー26であれば(ステップS18;YES)、換算計算処理(ステップS19)を行うようになっている。換算計算処理では、例えば右方向キー25の押下によりドルから円への換算が行われ、左方向キー26の押下により円からドルへの換算が行われるが、同様の処理であるから、ここで同時に説明する。換算計算処理(ステップS19)は、図8に示すフローチャートに従って行われるようになっている。
換算計算処理では、CPU8は、まず、フラグFが4または5であるか否かを判断し(ステップS190)、フラグFが4または5でなければ(ステップS190;NO)、押下されたキーが右方向キー25であればフラグFを4にセットして計算モードをドルから円への換算計算モードとし、押下されたキーが左方向キー26であればフラグFを5にセットして計算モードを円からドルへの換算計算モードとするようになっている(ステップS191)。そして、換算計算を実行する(ステップS192)。
ドルから円への換算計算では、CPU8は、記憶手段であるRAM7の換算レート用領域に記憶された数値である換算レートを読み出して、右方向キー25が押下するまでにテンキー20を介して入力されたドルを表す被換算値に対する円への換算結果を計算する。具体的には、入力された被換算値をB、換算レートをβとした場合、CPU8は、換算結果B×βを計算する。そして、ディスプレイ3の表示を四則演算の場合の一段表示パネル3aから二段表示パネル3bに切り換えるために、入力された被換算値を第2上段表示メモリ領域にセットし、算出した換算結果を第2下段表示メモリ領域にセットする(ステップS193)。
また、円からドルへの換算計算(ステップS192)においても同様に、CPU8は、RAM7の換算レート用領域に記憶された換算レートを読み出して、入力された円を表す被換算値に対するドルへの換算結果を計算する。具体的には、CPU8は、換算結果B/βを計算する。そして、入力された被換算値を第2上段表示メモリ領域にセットし、算出した換算結果を第2下段表示メモリ領域にセットする(ステップS193)。
CPU8は、以上の操作を行って換算計算処理(図4のステップS19)を終了する。
そして、表示処理(ステップS6)では、CPU8は、図5に示した表示処理のフローチャートに従い、フラグFは4(ステップS70;YES)または5(ステップS72;YES)であるから、二段表示パネル3bの上段に入力された被換算値を、下段に換算結果を表示させるようになっている(ステップS71、S73)。なお、連続して換算計算を行う場合が多いから、本実施形態では、換算計算の場合には表示を二段表示のままとするようになっている。
以上の処理をディスプレイ3の表示を用いて説明すると、ドルから円への換算計算の場合、1ドル=110円すなわち前記β=110であるとすると、例えば図13(A)に示すように、四則演算モードでキー操作により「200」と入力され、図13(B)に示すように右方向キー25が押下されると、CPU8は、図8の換算計算処理で、フラグFが4でなければ(ステップS190;NO)フラグFを4にセットし(ステップS191)、換算計算を行う(ステップS192)。そして、表示処理ではフラグFが4であるから(図5のステップS70;YES)、CPU8は、二段表示パネル3bの上段に入力された被換算値「200」を、下段に換算結果「22000」を表示させる(ステップS71)。
円からドルへの換算計算の場合には、図示を省略するが、キー操作により例えば「3300」と入力され、左方向キー26が押下されると、CPU8は、図8の換算計算処理で、フラグFが5でなければ(ステップS190;NO)フラグFを5にセットし(ステップS191)、換算計算を行う(ステップS192)。そして、表示処理ではフラグFが5であるから(図5のステップS72;YES)、CPU8は、二段表示パネル3bの上段に入力された被換算値「3300」を、下段に換算結果「30」を表示させる(ステップS73)。
なお、換算計算が続けて行われる場合は、二段表示パネル3bの上段に置数すなわち被換算値が入力され、右方向キー25や左方向キー26が押下されると、二段表示パネル3bの下段に換算結果が表示される。また、本実施形態では、換算計算においてはディスプレイ3上にそれを表す文字セグメントは表示されないようになっているが、換算計算モードであることや「円」、「ドル」等の表示を行うように構成することも可能である。
図4の基本フローチャートに戻り、CPU8は、押下されたキーがメモリキー29であれば(ステップS20;YES)、押下されたメモリキー29が「M+」キーまたは「M−」キーであれば、メモリ計算処理(ステップS21)を行うようになっている。なお、押下されたメモリキー29が「MC」キーであればRAM7のメモリ計算用領域に記憶されたM値を0とし、「MR」キーであれば四則演算等の中でM値を読み出すだけであるので、以下に述べる二段表示等は行われない。
メモリ計算処理(ステップS21)は、図9に示すフローチャートに従って行われるようになっている。
メモリ計算処理では、CPU8は、まず、フラグFが6でなければ(ステップS210;NO)、フラグFを6にセットして計算モードをメモリ計算モードとし(ステップS211)、記憶手段であるRAM7のメモリ計算用領域に記憶された数値であるM値を読み出して、メモリ計算を行うようになっている(ステップS212)。
メモリ計算では、CPU8は、押下されたメモリキー29が「M+」キーであれば、M値と「M+」キーが押下するまでに計算された計算結果との和を計算する。また、押下されたメモリキー29が「M−」キーであれば、M値と計算結果との差を計算する。
続いて、CPU8は、このようにして計算したメモリ計算の結果を新たにM値としてRAM7のメモリ計算用領域に記憶する(ステップS213)。そして、CPU8は、ディスプレイ3の表示を一段表示パネル3aから二段表示パネル3bに切り換えるために、この新たなM値をRAM7の第2上段表示領域にセットし、「M+」キーや「M−」キーが押下されるまでの計算の置数や計算結果を第2下段表示メモリ領域にセットする(ステップS214)。CPU8は、以上の操作を行って換算計算処理(図4のステップS21)を終了する。
そして、表示処理(ステップS6)では、CPU8は、図5に示した表示処理のフローチャートに従い、フラグFは6であるから(ステップS72;NO)、二段表示パネル3bの上段にM値を、下段に置数や計算結果を表示させるようになっている(ステップS74)。
以上の処理をディスプレイ3の表示を用いて説明すると、図14(A)に示すように、例えば四則演算モードで「21×6=」と入力すると、ディスプレイ3の一段表示パネル3aにはその計算結果である「126」が表示される。そして、図14(B)に示すように、メモリキー29として「M+」キーが押下されると、CPU8は、図9のメモリ計算処理で、フラグFが6でないから(ステップS210;NO)フラグFを6にセットし(ステップS211)、メモリ計算を行う(ステップS212)。
この場合、RAM7のメモリ計算用領域に記憶されているM値が初期化により設定された値0であるとすると、M値「0」と計算結果「126」との和は126であるから、RAM7のメモリ計算用領域にはメモリ計算の結果「126」が新たなM値として記憶される(ステップS213)。そして、表示処理ではフラグFが6であるから(図5のステップS72;NO)、CPU8は、二段表示パネル3bの上段にM値「126」を、下段に前記「21×6=」の計算結果「126」を表示させる(ステップS74)。また、CPU8は、メモリ計算モードであることを示すために、二段表示パネル3bの左側の「M」の文字セグメントに所定の電圧を印加させて「M」の文字を表示させる。
また、この状態で、続けてメモリ計算が行われ、例えばM値「126」に「3×5」の計算結果を加算する場合には、図14(B)の状態で、まず「3」キーが押下されるとディスプレイ3上には図14(C)のように置数「3」が表示され、続いて「×」キーが押下されると表示上は変化がないが乗算の態勢となり、続いて「5」キーが押下されると、図14(D)に示すようにディスプレイ3の下段に置数「5」が表示され、さらに続いて「=」キーが押下されると、図14(E)に示すように「3×5」の計算結果「15」が表示される。
そして、この段階で「M+」キーが押下されると、メモリ計算が行われ、図14(F)に示すように、ディスプレイ3の上段のM値の表示が、メモリ計算の結果新たにM値とされた「141」に変わる。なお、「M−」キーを押下した場合のメモリ計算についても同様に説明される。
なお、図4のフローチャートにおいて、押下されたキーが上記のテンキー20、演算キー21、「=」キー22、ACキー23、Cキー24、税込キー27、税抜キー28、右方向キー25、左方向キー26、メモリキー29の何れでもない場合には(ステップS20;NO)、CPU8は、必要に応じてフラグFを0にセットしたり表示処理等を行った後、当該キー操作に対応する処理を行うようになっている(ステップS22)。
以上のように、本実施形態に係る電子式計算機1によれば、電子式計算機1の基本的機能であり頻繁に利用される四則演算においては、表示をディスプレイ3の一段型表示手段である一段表示パネル3aで行うことで、小型の電子式計算機であっても、ディスプレイに表示される数値等を大きくすることができ、ディスプレイに表示される数値等を非常に見易いものとすることが可能となる。
また、定数計算や税込み・税抜き計算、換算計算、メモリ計算等の記憶手段に記憶された数値を用いた計算においては、表示をディスプレイ3の一段表示パネル3aから二段型表示手段である二段表示パネル3bに切り換えて行うことで、表示を見易くし、且つ、種々の計算結果を理解し易い状態で表示することが可能となる。
なお、本実施形態では、四則演算では一段表示を行い、記憶手段に記憶された数値を用いた計算では二段表示を行うように、切り換え手段であるCPU8が自動的に表示を切り換える場合について説明したが、ユーザが入力手段を介して切り換え指示を入力でき、CPU8がそれに基づいて表示の切り換えを行うように構成することも可能である。
例えば、図1に示した電子式計算機1の正面部分に入力手段として「一段」キーと「二段」キーとを設け、ユーザが税込み計算等の記憶手段に記憶された数値を用いた計算においても一段表示をさせたい場合には「一段」キーを押下することで、CPU8が表示を行う表示手段を一段表示パネル3aに固定し、例えば「=」キー22の繰り返し操作により税額と税込み価格とが繰り返し表示されるように構成することもできる。また、ユーザが「二段」キーを押下することで、CPU8が表示を行う表示手段を二段表示パネル3bに固定し、四則演算の計算結果を例えばその右側下方に表示させるように構成することも可能である。