JP4815838B2 - 色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セル - Google Patents
色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セル Download PDFInfo
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Description
上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことを特徴とする色素増感型太陽電池用積層体を提供する。
また、本発明の色素増感型太陽電池用積層体は、その製造工程において第2透明電極層が焼成処理等の加熱条件に曝されることがないため、第2金属酸化物としてITOを用いたとしても、ITOが本来有する優れた電気伝導性を維持できるといった利点を有するからである。
上記色素増感型太陽電池用積層体が有する第2透明電極層と、上記基材とが、上記接着層を介して接合していることを特徴とする耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材を提供する。
上記接着層上に形成され、第2金属酸化物からなる第2透明電極層と、上記第2透明電極層上に形成され、第1金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層と、からなる色素増感型太陽電池用基材であって、上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことを特徴とする色素増感型太陽電池用基材を提供する。
また、本発明においては上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことにより、第2透明電極層のみならず、上記接着層が酸化還元対により侵蝕されることも抑制することができる。したがって、本発明によれば、経時で接着層の接着力が失われることのない、接着安定性に優れた色素増感型太陽電池用基材を得ることができる。
まず、本発明の色素増感型太陽電池用積層体について説明する。本発明の色素増感型太陽電池用積層体は、耐熱基板と、上記耐熱基板上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層と、上記多孔質層上に形成され、第1金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、第2金属酸化物からなる第2透明電極層と、からなる色素増感型太陽電池用積層体であって、上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことを特徴とするものである。
また、本発明の色素増感型太陽電池用積層体では、後述するように高温での加熱処理が必要な、多孔質層と第2透明電極層とを形成した後に、第1透明電極層を形成するため、加熱処理により第1透明電極層を構成する第1金属酸化物の電気抵抗値が増加することがない。したがって、本発明の色素増感型太陽電池用積層体によれば、化学的耐久性と電気伝導性に優れる第1電極層を形成することができる。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池用積層体を用い、後述する方法により色素増感型太陽電池用基材および色素増感型太陽電池セルを形成することにより、可撓性に優れる色素増感型太陽電池用基材および色素増感型太陽電池セルを容易に製造することができる。
まず、本発明の色素増感型太陽電池用積層体における第1透明電極層について説明する。本発明における第1透明電極層は、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高い第1金属酸化物からなることを特徴とするものである。
より具体的には、上記第1金属酸化物としては、任意の基板上に第1金属酸化物からなる第1金属酸化物膜と、第2金属酸化物からなる第2金属酸化物膜とを、同一の厚みで形成した後、両者をメトキシアセトニトリル、アセトニトリル、またはプロピレンカーボネートのいずれかの溶媒に、ヨウ素を0.05mol/l、ヨウ化リチウムを0.1mol/l、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドを0.3mol/l、およびtert−ブチルピリジンを0.5mol/lで溶解した電解質溶液(25℃)に浸漬した場合に、第1金属酸化物膜の方が、第2金属酸化物膜よりも、クラック、割れ、欠け等の金属酸化物膜の破損が発生する時間が遅いもの、または、表面抵抗値(Ω/□)の上昇速度が遅いものが好ましい。
ここで、上記クラック、割れ、欠け等の金属酸化物膜の破損は目視で評価し、また上記表面抵抗値は、表面抵抗は四端子法の表面抵抗測定機(Loresta−EP、三菱化学製)により測定した値を用いる。
次に、本発明における第2透明電極層について説明する。本発明における第2透明電極層は、第2金属酸化物からなるものである。
次に、本発明における多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、金属酸化物半導体微粒子を含むことを特徴とするものである。
本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子としては、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体微粒子は、多孔性の多孔質層を形成するのに適しており、エネルギー変換効率の向上、コストの削減を図ることができるため好適に用いられる。また、本発明においては上記金属酸化物半導体微粒子のうち、いずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、上記の金属酸化物半導体微粒子のうち、一種をコア微粒子とし、他の金属酸化物半導体微粒子により、コア微粒子を包含してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。本発明においては、上記半導体酸化物微粒子としてTiO2を用いることが最も好ましい。
このような粒径の異なる複数の金属酸化物半導体微粒子の混合物としては、同種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であっても良く、または異なる種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であってもよい。異なる粒径の組み合わせとしては、例えば、10〜50nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子と、50〜800nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子とを混合して用いる態様を挙げることができる。
本発明における多孔質層は、色素増感剤を含むことが好ましい。上記多孔質層が色素増感剤を含むことにより、本発明の色素増感型太陽電池用積層体を用いた色素増感型太陽電池セルの製造工程を簡易化できるからである。本発明に用いられる色素増感剤としては、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。
本発明における多孔質層の膜厚は、本発明の色素増感型太陽電池用積層体を用いて製造される色素増感型太陽電池セルにおいて、多孔質層の膜抵抗を所望の値にできる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明における多孔質層の膜厚は、通常、1μm〜100μmの範囲内が好ましく、特に5μm〜30μmの範囲内が好ましい。多孔質層の厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の色素増感型太陽電池用積層体を用いて色素増感型太陽電池セルを製造した際に、多孔質層の膜抵抗が高くなりすぎてしまう場合があり、また、上記範囲よりも薄いと厚みが均一な多孔質層を形成するのが困難となる可能性があるからである。
次に、本発明における耐熱基板について説明する。本発明に用いられる耐熱基板としては、後述する焼成処理時の加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば特に限定されない。このような耐熱基板としては、ガラス、セラミックス、または金属板等からなる耐熱基板を挙げることができる。中でも本発明においては、耐熱基板として可撓性のある金属板を用いることが好ましい。このような耐熱基板を用いることにより、後述する焼成処理を十分に高温で行うことができるので、多孔質層を形成する金属酸化物半導体微粒子間の結着性を高くすることができるからである。また、上記耐熱基板は、リユースすることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用積層体の製造方法は、後述する「D.色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セルの製造方法」の、1.色素増感型太陽電池用積層体の製造方法の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
次に本発明の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材について説明する。本発明の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材は、基材と、熱溶融性樹脂からなる接着層と、上記色素増感型太陽電池用積層体とからなり、上記色素増感型太陽電池用積層体が有する第2透明電極層と、上記基材とが、上記接着層を介して接合していることを特徴とするものである。
まず、本発明における接着層について説明する。本発明に用いられる接着層は、熱溶融性樹脂からなることを特徴とするものである。
本発明における接着層に用いられる熱可塑性樹脂は、所望の温度で融解する樹脂であれば特に限定されない。中でも本発明においては、熱可塑性樹脂の融点が50℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、特に60℃〜180℃の範囲内であることが好ましく、中でも65℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
本発明においては上記の熱可塑性樹脂の中でも、シラン変性樹脂を用いることが好ましい。シラン変性樹脂を用いることにより、接着層が示す接着力をより強固にすることができるからである。
また、本発明において上記共重合体は、シラノール触媒による架橋をしていてもしていなくてもどちらでもよい。
本発明に用いられる接着層の厚みは、接着層を構成する上記熱可塑性樹脂の種類に応じて、必要な接着力を発現できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、5μm〜300μmの範囲内が好ましく、特に10μm〜200μmの範囲内が好ましい。接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと所望の接着力を得ることができない場合があり、また厚みが上記範囲よりも厚いと接着層により層間接着強度を十分に発現させるために過剰な加熱が必要となり、基材などへの熱ダメージが大きくなる場合があるからである。
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いることができる基材は、所望の透明性を有するものであれば特に限定されないが、通常、波長400nm〜1000nmの光に対する透過率が、78%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本発明に用いられる、色素増感型太陽電池用積層体は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の製造方法は、後述する「D.色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セルの製造方法」の、2.色素増感型太陽電池セルの製造方法の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
次に本発明の色素増感型太陽電池用基材について説明する。本発明の色素増感型太陽電池用基材は、基材と、上記基材上に形成され、熱溶融性樹脂からなる接着層と、
上記接着層上に形成され、第2金属酸化物からなる第2透明電極層と、上記第2透明電極層上に形成され、第1金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層とからなり、上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことを特徴とするものである。
また、本発明においては上記第1金属酸化物の方が、上記第2金属酸化物よりも化学的耐久性が高いことにより、第2透明電極層のみならず、上記接着層が酸化還元対により侵蝕されることも抑制することができる。したがって、本発明によれば、経時で接着層の接着力が失われることのない、接着安定性に優れた色素増感型太陽電池用基材を得ることができる。
このような化学的耐久性に乏しい化合物としては、ITOに代表される透明電極を構成する金属酸化物がある。色素増感型太陽電池に用いられる多孔質層は、多孔質であるため酸化還元対を透過してしまうことから、透明電極は酸化還元対に曝されてしまい、その結果、経時で透明電極の機能が損なわれ、発電特性が低下してしまうことが、色素増感型太陽電池の一つの問題点となっていた。
また、本発明によれば接着層が酸化還元対により劣化されることも抑制することができるため、各層の接着安定性に優れた色素増感型太陽電池用基材を得ることができる。
本発明に用いられる基材は、上記「B.耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材」の、2.基材の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる接着層は、上記「B.耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材」の、1.接着層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる第2透明電極層は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、2.第2透明電極層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる第1透明電極層は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、1.第1透明電極層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる多孔質層に関する説明は、上記「A.色素増感型太陽電池用基材」の、3.多孔質層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の色素増感型太陽電池用基材における多孔質層は、パターニングされていることが好ましい。多孔質層がパターニングされていることにより、本発明の色素増感型太陽電池用基材を、モジュール起電力の高い色素増感型太陽電池を製造するのに好適なものにできるからである。本発明における多孔質層のパターニングについて図を参照しながら説明する。図4は、本発明における多孔質層のパターニング態様の一例を示す概略断面図である。本発明における多孔質層のパターニングは、図4に示すように、少なくとも多孔質層15がパターニングされていれば良い。また、図4に示すように多孔質層15が、酸化物半導体層15aと、介在層15bとからなる場合には、両層が同一形状でパターニングされていることが好ましい。
さらに、本発明における多孔質層のパターニング態様としては、多孔質層15と、第1透明電極層14と、第2透明電極層13とがパターニングされていることが好ましい。多孔質層15と、第1透明電極層14と、第2透明電極層13とがパターニングされている場合においては、それぞれのパターニング形状は、同一であっても異なっていても良い。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法は、後述する「D.色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セルの製造方法」の、3.色素増感型太陽電池用基材の製造方法の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の色素増感型太陽電池セルについて説明する。本発明の色素増感型太陽電池セルは、上記色素増感型太陽電池用基材と、対向電極層および対向基材からなる対電極基材と、酸化還元対を含む電解質層と、からなる色素増感型太陽電池セルであって、上記色素増感型太陽電池用基材が有する多孔質層と、上記対電極基材が有する対向電極層とが、上記電解質層を介して対向配置されていることを特徴とするものである。
まず、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、酸化還元対を含むことを特徴とするものである。
本発明における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に電解質層において用いられているものであれば特に限定はされない。具体的には、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。例えば、ヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物と、I2との組合せを挙げることができる。さらに、臭素および臭化物の組み合わせとしては、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と、Br2との組合せを挙げることができる。
本発明における電解質層には、上記酸化還元対を保持する高分子化合物を含有することが好ましい。このような高分子化合物を含有することにより、電解質層における上記酸化還元対の分布を均一化することができるからである。上記酸化還元対を保持する高分子化合物としては、正孔輸送性を有するものであれば特に限定されず、例えば、CuI、ポリピロール、ポリチオフェンを用いることができる。
電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよい。電解質層をゲル状とした場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであってもよい。ここで、物理ゲルは物理的な相互作用で室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
また、電解質層を液体状とした場合には、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸プロピレンなどを溶媒とし、酸化還元対を含んだものや、同じくイミダゾリウム塩をカチオンとするイオン性液体を溶媒とすることができる。
さらに、電解質層を固体状とした場合には、酸化還元対を含まずにそれ自身が正孔輸送剤として機能するものであればよく、例えばCuI、ポリピロール、ポリチオフェンなどを含む正孔輸送剤であってもよい。
次に本発明における対電極基材について説明する。本発明における対電極基材は、対向電極層および対向基材からなるものである。
本発明における対向電極層は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、2.第2透明電極層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における対向基材は、上記「B.耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材」の、2.基材の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における対電極基材には必要に応じて、上記以外のその他の層を含んでも良い。本発明に用いられるその他の層としては、触媒層を挙げることができる。本発明においては、上記対向電極層上に触媒層を形成することにより、本発明の色素増感型太陽電池セルをより発電効率に優れたものにできる。このような触媒層の例としては、上記対向電極層上にPtを蒸着した態様を挙げることができるが、この限りではない。
本発明における色素増感型太陽電池用基材は、上記「C.色素増感型太陽電池用基材」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の色素増感型太陽電池セルの製造方法は、後述する「D.色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材、および色素増感型太陽電池セルの製造方法」の、4.色素増感型太陽電池セルの製造方法の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
まず、本発明の色素増感型太陽電池用積層体の製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池用積層体の製造方法は、色素増感型太陽電池用積層体を構成する各層を均質に形成できる方法であれば特に限定されないが、通常、耐熱基板上に有機物および金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層形成用塗工液を塗布し、固化させて多孔質層形成用層を形成する多孔質層形成用層形成工程と、
上記多孔質層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、多孔質層を形成する焼成工程と、
上記多孔質層上に第1金属酸化物からなる第1透明電極層を形成する第1透明電極層形成工程と、
上記第1透明電極層上に、第2金属酸化物からなる第2透明電極層を形成する第2透明電極層形成工程と、
からなる製造方法により色素増感型太陽電池用積層体を製造することが好ましい。このような方法によれば、高生産性で各層が均質に形成された色素増感型太陽電池用積層体を製造することができるからである。
上記介在層形成用層上に、上記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、からなることが好ましい。
図6(b)に示すように、介在層形成用層25b上に酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層25aを形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、
図6(c)に示すように、介在層形成用層25bおよび酸化物半導体層形成用層25aが積層された耐熱基板に加熱焼成を施すことにより、連通孔を有する多孔質体である介在層15bおよび酸化物半導体層15aを形成する焼成工程と、
図6(d)に示すように、酸化物半導体層15a上に第1透明電極層14を形成する第1透明電極層形成工程と、
図6(e)に示すように、第1透明電極層14上に、第2透明電極層13を形成する第2透明電極層形成工程と、によって、色素増感型太陽電池用積層体10を製造する方法である。
まず、本発明における介在層形成用層形成工程について説明する。本発明における介在層形成用層形成工程は、耐熱基板上に、介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層を形成する工程である。
まず、本工程に用いられる介在層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられる介在層形成用塗工液は、少なくとも金属酸化物半導体微粒子および有機物を含有するものである。
本工程における上記介在層形成用塗工液に用いられる金属酸化物半導体微粒子は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、3.多孔質層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
次に、上記介在層形成用塗工液に用いられる有機物について説明する。上記介在層形成用塗工液に用いられる有機物としては、後述する焼成工程において分解されやすいものであれば特に限定はされない。中でも本発明においては、上記有機物として合成樹脂を用いることが好ましい。合成樹脂は分子量や材質を任意に選択することにより、所望の熱分解性を備える化合物を得ることができるため、後述する焼成処理の処理条件の制約が少なくなる等の利点を有するからである。
上記介在層形成用塗工液は、溶媒を含有しない塗工液であっても良く、溶媒を含有する塗工液であっても良い。介在層形成用塗工液に溶媒が含有されている場合には、用いる有機物に対して良溶媒であることが好ましく、溶剤の選定は、溶剤の揮発性と、使用する有機物の溶解性を主に考慮して適宜選択する。具体的には、ケトン類、炭化水素類、エステル類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、グリコール誘導体、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類、アセテート類、ケトンエステル類、グリコールエーテル類、スルホン類、スルホキシド類等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、テルピネオール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール等の有機溶媒であることが好ましい。介在層形成用塗工液は耐熱基板上に塗布されるため上記有機溶媒を用いることにより、耐熱基板上に濡れ性良く塗布することができるからである。
また、上記介在層形成用塗工液には、耐熱基板に対する塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。上記pH調製剤としては、例えば、硝酸、塩酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、アンモニア等を挙げることができる。また、分散助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を挙げることができる。
本工程において用いる耐熱基板としては、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、4.耐熱基板の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程において、上記介在層形成用塗工液を上記耐熱基板上に塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。このような塗布法を用い、単数回または複数回、塗布および固化を繰り返すことにより介在層形成用層を所望の膜厚に調整することができる。
本工程により得られる介在層形成用層の膜厚としては、特に限定はされないが、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、後述する「(3)焼成工程」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。具体的には、0.01μm〜30μmの範囲内、中でも、0.05μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。
次に、酸化物半導体層形成用層形成工程について説明する。本発明における酸化物半導体層形成用層形成工程は、上記介在層形成用層上に、上記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する工程である。
本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液は、少なくとも、金属酸化物半導体微粒子および樹脂を含有するものであり、上記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高く調整されているものである。
本工程において上記酸化物半導体層形成用塗工液に用いられる金属酸化物半導体微粒子は、上記「A.色素増感型太陽電池用積層体」の、3.多孔質層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられる樹脂は、後述する焼成工程により多孔質体の空孔を付与するために用いられるものである。また、樹脂の使用量を変化させることにより、酸化物半導体層形成用塗工液の粘度を調整することができる。
本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液は、溶媒を含有しない塗工液であっても良く、溶媒を含有する塗工液であっても良い。酸化物半導体層形成用塗工液に溶媒を用いた場合には、上述した樹脂が溶解するものであり、かつ、上述した介在層形成用層の形成に使用する有機物が溶解しにくいものであれば特に限定はされない。具体的には、水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ターピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等の各種溶剤を挙げることができる。中でも、水ないしアルコール系の溶媒であることが好ましい。水またはアルコール系溶媒は、上記介在層形成用塗工液に用いられる有機溶媒と混合しないため、上記介在層形成用層と酸化物半導体層形成用層とが混合することを防止できるからである。
また、本工程においては、上記酸化物半導体層形成用塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。例えば、添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができるが、上記「(1)介在層形成用層形成工程」に用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本工程においては、特に、分散助剤としてポリエチレングリコールを使用することが好ましい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節可能となり、剥がれにくい酸化物半導体層の形成、酸化物半導体層の空孔率の調整等を行うことができるからである。
本工程において、上記酸化物半導体層形成用塗工液を上記介在層形成用層上に塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、上記「(1)介在層形成用層形成工程」の中に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本工程により得られる酸化物半導体層形成用層の膜厚としては、最終的に酸化物半導体層として形成された際に、光照射により色素増感剤により生じた電荷を伝導する機能を充分に得ることができるのであれば特に限定はされない。例えば、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、後述する「(3)焼成工程」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。具体的には、1μm〜65μmの範囲内、中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
次いで、本発明における焼成工程について説明する。本発明における焼成工程は、上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、介在層および酸化物半導体層を形成する工程である。本工程により、連通孔を有する多孔質体として形成された介在層および酸化物半導体層を形成することができる。
次に、本発明における第1透明電極層形成工程について説明する。本発明における第1透明電極層形成工程は、上記酸化物半導体層上に第1透明電極層からなる第1透明電極層を形成する工程である。
本工程におけるスプレー熱分解法について説明する。本工程におけるスプレー熱分解法は、具体的には、上記酸化物半導体層を第1透明電極層形成温度以上の温度に加熱し、第1金属酸化物が有する金属元素を含む、金属塩または金属錯体が溶解した第1透明電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記酸化物半導体層上に第1透明電極層を形成する方法である。
上記スプレー熱分解法に用いられる第1透明電極層形成用塗工液について説明する。上記スプレー熱分解法に用いられる第1透明電極層形成用塗工液は、第1透明電極層を構成する金属元素を有する金属源が溶媒に溶解したものである。上記第1透明電極層形成用塗工液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有させることにより、より低い加熱温度で第1透明電極層を得ることができるからである。
上記スプレー熱分解法に用いられる金属源は、第1金属酸化物が有する金属元素を有するものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、本発明における「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
上記スプレー熱分解法に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、第1透明電極層(金属酸化物膜)の発生しやすい環境とすることができ、より低い加熱温度で第1透明電極層を得ることができる。
上記スプレー熱分解法に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解等によって水酸化物イオンを発生させ、上記第1透明電極層形成用塗工液のpHを上げる働きを有するものである。上記第1透明電極層形成用塗工液のpHが上昇することで、第2透明電極層(金属酸化物膜)の発生しやすい環境とすることができ、より低い加熱温度で第2透明電極層を得ることができる。
上記スプレー熱分解法に用いられる第2透明電極層形成用塗工液は、添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、補助イオン源や界面活性剤等が挙げられる。上記補助イオン源は、電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、第1透明電極層形成用塗工液のpHを上昇させ、第1透明電極層の形成しやすい環境とすることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属塩や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種等を挙げることができる。
上記第1透明電極層形成用塗工液に用いられる溶媒は、上述した金属源を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
次に、上記スプレー熱分解法における第1透明電極層形成用塗工液と酸化物半導体層との接触方法について説明する。上記スプレー熱分解法における接触方法は、上述した第1透明電極層形成用塗工液と、上述した酸化物半導体層とを接触させる方法であれば、特に限定されるものではないが、上記第1透明電極層形成用塗工液と上記酸化物半導体層とが接触する際に、加熱された酸化物半導体層の温度を低下させない方法であることが好ましい。酸化物半導体層の温度が低下すると所望の第1透明電極層を得ることができない可能性があるからである。
次に、本発明における第2透明電極層形成工程について説明する。本発明における第2透明電極層形成工程は、上記第1透明電極層上に第2透明電極層を設ける工程である。
本工程におけるスプレー熱分解法について説明する。本工程におけるスプレー熱分解法は、具体的には、上記第1透明電極層を第2透明電極層形成温度以上の温度に加熱し、第2金属酸化物が有する金属元素を含む金属塩または金属錯体が溶解した第2透明電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記第1透明電極層上に第2透明電極層を形成する方法である。
また、このような「第2透明電極層形成温度」は、実際に所望の金属源が溶解した第2透明電極層形成用塗工液を用意することによって、上記「(4).第1透明電極層形成工程」に記載した測定方法と同様の方法により求めることができる。
上記スプレー熱分解法に用いられる第2透明電極層形成用塗工液について説明する。上記スプレー熱分解法に用いられる第2透明電極層形成用塗工液は、第2金属酸化物が有する金属元素を含む、金属塩または金属錯体が溶媒に溶解したものである。また、上記スプレー熱分解法においては、上記第2透明電極層形成用塗工液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有させることにより、より低い加熱温度で第2透明電極層を得ることができるからである。
上記スプレー熱分解法に用いられる金属源は、第2金属酸化物が有する金属元素を含むものであれば特に限定されず、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。
また、上記金属酸化物がZnOの場合、金属源としては、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛等を用いることができる。
また、上記金属酸化物がFTOの場合、金属源としては、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができ、フッ素ドーピング剤としてはフッ化アンモニウム等を用いることができる。
また、上記金属酸化物がATOの場合、金属源としては、アンチモン(III)ブトキシド、アンチモン(III)エトキシド、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができる。
また、上記金属酸化物がSnO2(TO)の場合、金属源としては、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができる。
上記スプレー分解法における第2透明電極層形成用塗工液に用いられる、酸化剤、還元剤、およびその他の添加剤については、上記「(4)第1透明電極層形成工程」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記スプレー熱分解法に用いられる溶媒としては、上記「(4)第1透明電極層形成工程」に記載されたものと同様であるのでここでの説明は省略する。
次に、上記スプレー熱分解法における第2透明電極層形成用塗工液と第1透明電極層との接触方法について説明する。上記スプレー熱分解法における接触方法は、上述した第2透明電極層形成用塗工液と、上述した第1透明電極層とを接触させる方法であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、上記「(4)第1透明電極層形成工程」における方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
次に本発明の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の製造方法について説明する。本発明の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材は、上記色素増感型太陽電池用積層体の製造方法によって製造される色素増感型太陽電池用積層体の第2透明電極層上に、接着層を介して基材を形成する、基材形成工程により製造する。このような基材形成工程において基材を形成する方法としては、上記色素増感型太陽電池用積層体の製造方法によって製造される色素増感型太陽電池用積層体の第2透明電極層と、基材とを、接着層を介して密着性良く接合できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、予め基材上に熱可塑性樹脂からなる接着層を形成し、当該接着層を有する基材を、接着層と上記第2透明電極層とが接着するように配置した後、加熱して熱融着する方法(第一の方法)と、熱可塑性樹脂からなる熱溶融性フイルムを作製し、当該熱溶融性フイルムを介して、上記第2透明電極層と、基材とをラミネートする方法(第二の方法)とを挙げることができる。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法は、上記耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の製造方法により得られる耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材から耐熱基板1を剥離する剥離工程によって、色素増感型太陽電池用基材を製造する方法を好適に用いることができる。
上記耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の耐熱基板を介在層から剥離する剥離工程において、耐熱基板を剥離する方法としては、耐熱基板と介在層とを剥離できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば耐熱基材がフレキシブルなものであって、Roll to Roll方式で行う場合は、上記耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の耐熱基板および基材を別々のヒートロールで貼り合わせ、その後、耐熱基板および色素増感型太陽電池用基材を別々に巻き取る方法等が挙げられる。また、例えば耐熱基板がリジッドなものである場合は、上記耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の基板をヒートロールで貼り合わせ、色素増感型太陽電池用基材を巻き取る方法等が挙げられる。なお、本発明においては、耐熱基板と介在層とを剥離する際、耐熱基板および介在層の種類等によって、耐熱基板と介在層とが界面剥離を起こす場合と、介在層が凝集破壊を起こし、耐熱基板上に介在層の一部が残留する場合とがある。
また本工程においては、耐熱基板を機械的研磨除去や、エッチングなどによる化学的除去により剥離することもできる。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法には、上記の工程以外に他の工程を含んでも良い。本発明に用いられる他の工程としては、上記耐熱基板を剥離した後に多孔質層のパターニングを行う、パターニング工程を挙げることができる。
次に、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、上記色素増感型太陽電池用基材の製造方法によって得られる色素増感型太陽電池用基材と、対向電極層および対向基材を備えた対電極基材とを用い色素増感型太陽電池用基材対の形成を行うこと、および色素増感型太陽電池用基材対が有する上記介在層および上記酸化物半導体層の細孔表面に色素増感剤を担持する色素増感剤担持工程、および上記色素増感剤担持工程の後に、上記対向電極層と上記介在層との間、および上記酸化物半導体層および上記介在層の多孔質体細孔内部に、光照射によって生じた電荷を伝達する電解質層を形成する電解質層形成工程を行う充填処理を行うことにより、色素増感型太陽電池を形成する方法が好ましい。以下、本発明に用いられる色素増感型太陽電池用基材対、および充填処理について詳細に説明する。
色素増感型太陽電池用基材対を形成する方法について説明する。色素増感型太陽電池用基材対を形成する方法としては、エネルギー変換効率が良好な色素増感型太陽電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、後述する充填処理の電解質層形成工程に対する本工程を行う時期によって以下のように大別することができる。すなわち、本工程が上記電解質層形成工程より先に行われる場合および本工程が上記電解質層形成工程より後に行われる場合である。
次に、本発明における充填処理について説明する。本発明における充填処理は、色素増感剤担持工程、および上記色素増感剤担持工程の後に行われる電解質層形成工程をいうものである。本発明においては、上記充填処理を、色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材または色素増感型太陽電池用基材対に対して行うことにより、色素増感型太陽電池を製造する。以下、本発明における充填処理である、色素増感剤担持工程および電解質層形成工程について説明する。
まず、上記充填処理における色素増感剤担持工程について説明する。上記色素増感剤担持工程は、上記色素増感型太陽電池用積層体、上記耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、上記色素増感型太陽電池用基材または上記色素増感型太陽電池用基材対に対して行われ、これらの部材の介在層および酸化物半導体層の細孔表面に色素増感剤を担持する工程である。
次に、上記充填処理における電解質層形成工程について説明する。上記電解質層形成工程は、上記介在層に処理を行うことにより、光照射によって生じた電荷を伝達する電解質層を形成する工程である。
次に、上記充填処理を行う時期について説明する。上記充填処理は、上記色素増感剤担持工程および上記電解質層形成工程を有し、上記2つの工程を、色素増感型太陽電池用積層体、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材、色素増感型太陽電池用基材または色素増感型太陽電池用基材対に対して行うことにより色素増感型太陽電池を製造する。
色素増感型太陽電池用積層体に対して、色素増感剤担持工程を行う場合における色素増感型太陽電池の製造方法としては、以下の(i)および(ii)の方法を挙げることができる。
(ii)上記色素増感型太陽電池用積層体に対して、上記色素増感剤担持工程を行い、次いで、上記基材形成工程、上記剥離工程、上記電解質層形成工程および上記対電極基材形成工程をこの順で行うことにより、色素増感型太陽電池を形成する色素増感型太陽電池の製造方法
耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材に対して、色素増感剤担持工程を行う場合における色素増感型太陽電池の製造方法としては、以下の(iii)および(iv)の方法を挙げることができる。
耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材に対して、色素増感剤担持工程を行う場合における色素増感型太陽電池の製造方法としては、以下の(v)および(vi)の方法を挙げることができる。
色素増感型太陽電池用基材対に対して、色素増感剤担持工程を行う場合における色素増感型太陽電池の製造方法としては、以下の(vii)の方法を挙げることができる。
1.色素増感型太陽電池用積層体の作製
(1)介在層形成用層の形成
介在層形成用塗工液として一次粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル社製P25)1質量%、主成分がポリメチルメタクリレートであるアクリル樹脂(分子量25000、ガラス転移温度105℃)(三菱レーヨン社製BR87)10質量%、となるようにホモジナイザーを用いてメチルエチルケトンおよびトルエンにアクリル樹脂を溶解させた後、TiO2微粒子を分散させることにより介在層形成用塗工液を調製した。この介在層形成用塗工液を耐熱基材として用意した無アルカリガラス基板(厚み0.7mm)上にワイヤーバーにて塗工し乾燥させた。
酸化物半導体層形成用塗工液として一次粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル社製P25)37.5質量%、アセチルアセトン1.25質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.88質量%となるように、ホモジナイザーを用いて水およびイソプロピルアルコールに溶解および分散させてスラリーを調製した。上記介在層形成用層が形成された基板上にドクターブレードにて前記スラリーを塗布後、室温下にて20分間放置後、100℃、30分間で乾燥させた。
次に、介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を電気マッフル炉(デンケン社製P90)を用い500℃、30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、多孔質体として形成された介在層および多孔質酸化物半導体層を得た。
その後、第1透明電極層形成用塗工液としてエタノールにNH4F 0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意した。その後、上記焼成を行った、酸化物半導体層を、ホットプレート(400℃)により加熱し、この加熱された酸化物半導体層上に、上記第1透明導電層形成用塗工液を超音波噴霧器により噴霧することにより、100nmのFTO膜を作製し、第1透明電極層を形成した。
更に、第2透明電極層形成用塗工液としてエタノールに塩化インジウム0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意した。その後、第1透明電極層をホットプレート(400℃)により加熱し、この加熱された第1透明電極層上に、上述した第2透明電極層形成用塗工液を超音波噴霧器により噴霧し、第2透明電極層であるITO膜を300nm形成し、色素増感型太陽電池用積層体を得た。
基材としてPETフィルム(東洋紡A5100:厚み125μm)を用い、当該基材上にヒートシール剤(東洋紡 MD1985)を塗布し、風乾することにより基材上に接着層を形成した。このような接着層を有する基材と、上記「1.色素増感型太陽電池用積層体の作製」において作製した色素増感型太陽電池用積層体の第2透明電極層とを120℃で熱融着することにより耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材を得た。
上記「2.耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材の作製」において作製した、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材から、耐熱基材を剥離することで酸化物半導体層、第1透明電極層、および第2透明電極層を基材側へ転写することにより色素増感型太陽電池用基材を得た。
色素増感剤としてルテニウム錯体(小島化学株式会社RuL2(NCS)2)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ、吸着用色素溶液を作製した。その後、上記「3.色素増感型太陽電池用基材の作製」において作製した色素増感型太陽電池用基材を上記吸着用色素溶液に浸漬することにより酸化物半導体層に増感色素が担持された色素増感型太陽電池用基材を得た。
上記「4.色素増感剤の担持」により得られた、色素増感剤が担持された色素増感型太陽電池用基材を用いて、以下のように色素増感型太陽電池セルを作製した。
まず、メトキシアセトニトリルを溶媒とし、濃度0.1mol/lのヨウ化リチウム、濃度0.05mol/lのヨウ素、濃度0.3mol/lのジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、濃度0.5mol/lのターシャリーブチルピリジンを溶解させたものを電解質層形成用塗工液とした。
上記色素増感剤が担持された色素増感型太陽電池用基材を1cm×1cmにトリミングした後、対向基材を厚さ20μmのサーリン(登録商標、米国デュポン社)によって貼り合せ、その間に電解質層形成用塗工液を含浸させたものを素子とした。対向基材としては、膜厚150nmを有し、表面抵抗7Ω/□である、ITOスパッタ層を有する対向基材上に膜厚50nmの白金膜からなる対向電極層をスパッタリングにて付与したものを用いた。このようにして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
上記「1.色素増感型太陽電池用積層体の作製」における(3)第1透明電極層の形成を実施しないこと以外は、実施例1と同様の方法により、色素増感型太陽電池セルを作製した。
作製した色素増感型太陽電池セルの評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm2)を光源として、色素吸着させた酸化物半導体層を有する基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。
2 … 第1電極層
3 … 多孔質層
4 … 電解質層
5 … 第2電極層
6 … 対向基材
7 … 色素増感型太陽電池セル
10 … 色素増感型太陽電池用積層体
11 … 基材
12 … 接着層
13 … 第2透明電極層
14 … 第1透明電極層
15 … 多孔質層
15a … 酸化物半導体層
15b … 介在層
16 … 耐熱基板
17 … 電解質層
18 … 対向電極層
19 … 対向基材
20 … 耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材
25a … 酸化物半導体層形成用層
25b … 介在層形成用層
30 … 色素増感型太陽電池用基材
40 … 色素増感型太陽電池セル
50 … 対電極基材
Claims (6)
- 耐熱基板と、
前記耐熱基板上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層と、
前記多孔質層上に形成され、第1金属酸化物からなる第1透明電極層と、
前記第1透明電極層上に形成され、第2金属酸化物からなる第2透明電極層と、
からなる色素増感型太陽電池用積層体であって、
前記第1金属酸化物が、FTO、SnO 2 、IZO、ZnO、ATO、フッ素ドープZnO、アルミニウムドープZnO、ガリウムドープZnO、およびホウ素ドープZnOからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第2金属酸化物が、ITOであることを特徴とする色素増感型太陽電池用積層体。 - 基材と、
熱溶融性樹脂からなる接着層と、
請求項1に記載の色素増感型太陽電池用積層体と、
からなる耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材であって、
前記色素増感型太陽電池用積層体が有する第2透明電極層と、前記基材とが、前記接着層を介して接合していることを特徴とする、耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材。 - 前記基材が、樹脂製フイルム基材であることを特徴とする請求項2に記載の耐熱基板付色素増感型太陽電池用基材。
- 基材と、
前記基材上に形成され、熱溶融性樹脂からなる接着層と、
前記接着層上に形成され、第2金属酸化物からなる第2透明電極層と、
前記第2透明電極層上に形成され、第1金属酸化物からなる第1透明電極層と、
前記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層と、
からなる色素増感型太陽電池用基材であって、
前記第1金属酸化物が、FTO、SnO 2 、IZO、ZnO、ATO、フッ素ドープZnO、アルミニウムドープZnO、ガリウムドープZnO、およびホウ素ドープZnOからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第2金属酸化物が、ITOであることを特徴とする色素増感型太陽電池用基材。 - 前記基材が、樹脂製フイルム基材であることを特徴とする、請求項4に記載の色素増感型太陽電池用基材。
- 請求項4または請求項5に記載の色素増感型太陽電池用基材と、対向電極層および対向基材からなる対電極基材と、
酸化還元対を含む電解質層と、
からなる色素増感型太陽電池セルであって、
前記色素増感型太陽電池用基材が有する多孔質層と、前記対電極基材が有する対向電極層とが、前記電解質層を介して対向配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池セル。
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