JP4852838B2 - 色素増感型太陽電池用基材の製造方法および色素増感型太陽電池の製造方法 - Google Patents

色素増感型太陽電池用基材の製造方法および色素増感型太陽電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、歩留まりよく色素増感型太陽電池を製造することが可能な色素増感型太陽電池用基材の製造方法、および、この製造方法により製造された色素増感型太陽電池用基材を用いて色素増感型太陽電池を製造する色素増感型太陽電池の製造方法に関するものである。
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池が注目され、積極的な研究開発が進められている。このような太陽電池として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などが既に実用化されているが、環境負荷が小さく、かつ、低コスト化の可能性のある太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目され研究開発が進められている。
色素増感型太陽電池は、例えば、光の入射する側から、透明基板、この透明基板上に形成された透明電極、色素増感剤が担持された酸化物半導体層、電解質を有する電解質層、および対電極基板が順に積層されてセルが形成される。
色素増感型太陽電池、とりわけグレッチェルセルの特徴は、ナノ微粒子である酸化チタンを焼成させた多孔質の酸化物半導体層を用いることである。酸化物半導体層を多孔質とすることで増感色素の吸着量が増加し光吸収能を向上させることができる。
このような色素増感型太陽電池において、例えば、透明基板としてガラス基板を用いた場合は、多孔質膜を形成するために400〜600℃での焼成を行うことが可能であるが、ガラス基板よりも耐熱性が劣るフィルム基板を用いた場合は、フィルムの耐熱温度以下で焼成しなければならず、金属酸化物半導体微粒子間の結合力が不充分となるため、光励起により生じた電子における増感色素から酸化物半導体層、および透明電極への伝達経路が十分に確保できないことがあった。また、フィルム基板と酸化物半導体層との密着性も充分でなくフィルムの可撓性に追従できずに膜の剥離や亀裂が生じるといった不都合があった。
例えば、特許文献1には、耐熱性基板上に酸化物半導体及び/又はその前駆体を含む層を形成させ、これを加熱焼成して得られる酸化物半導体膜を、被転写基板上に転写することを特徴とする半導体電極の製造方法が開示されている。
この方法によれば、耐熱性基板上に酸化物半導体及び/又はその前駆体を含む層が形成されたものを転写体として用いる。この転写体の製造段階においては、耐熱性基板を用いていることにより高温域での加熱焼成が可能であり、金属酸化物半導体微粒子間において充分な結合性を有する酸化物半導体膜の形成が可能である。また、被転写基板においては、既に転写体の製造段階で酸化物半導体膜の加熱焼成が行われていることから、高温域での加熱焼成が施されることはない。したがって、被転写基板においては、その形状を一定に保つ支持材として、多少耐熱性に劣るフィルム基板を用いることができる。
しかしながら、特許文献1による製造方法においては、加熱焼成後の酸化物半導体膜と耐熱性基板との密着性が悪いため、これを転写体として用い、被転写基板上に、精度良く酸化物半導体膜を転写させることは困難であった。このようなことから、歩留まりの向上および転写不良の改善等が求められていた。
特開2002−184475号公報
本発明は、上記目的に鑑みてなされたものであり、色素増感型太陽電池の製造に用いる色素増感型太陽電池用基材を歩留まり良く製造することが可能な色素増感型太陽電池用基材の製造方法、およびそれを用いて色素増感型太陽電池を製造する色素増感型太陽電池の製造方法を提供することを主目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するために、耐熱基板上に有機物および金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層を形成する介在層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層上に、上記介在層形成用塗工液よりも固形分中の金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、介在膜および酸化物半導体膜を形成する焼成工程と、上記酸化物半導体膜上に、第1電極層および基材を設ける電極基材形成工程とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池用基材の製造方法を提供する。
本発明においては、金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、耐熱基板上に適度な密着性を有して酸化物半導体膜を形成することができる。従来、金属酸化物半導体微粒子を含有しておらず有機物からなる有機膜を介して耐熱基板上に酸化物半導体膜を形成していた場合には、焼成処理を行った後は、有機膜に含有された有機物と、酸化物半導体膜に含有された金属酸化物半導体微粒子との熱膨脹係数の差から、有機膜と酸化物半導体膜との間にクラックが生じやすく、酸化物半導体膜を耐熱基板上に密着性良く形成することは困難であった。しかしながら、本発明においては、有機物の他に金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成していることから、焼成工程後に、上述したような問題が生じにくく、耐熱基板上に酸化物半導体膜を密着性良く形成することができる。また、介在膜を全く介さずに酸化物半導体膜を直接耐熱基板上に形成した場合には、両者の密着性が著しく高いために、高い密着性を有して酸化物半導体膜が形成された耐熱基板を用いて、基材上に酸化物半導体膜を形成する際、酸化物半導体膜から耐熱基板を剥離することが難しく、良好に基材上に酸化物半導体膜を形成することができなかった。しかしながら、本発明においては、金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、耐熱基板との間に適度な密着性を保持しつつ、さらに剥離性にも優れているので、基材上に精度良く介在膜および酸化物半導体膜を形成することができる。したがって、歩留まり良く色素増感型太陽電池用基材を製造することができる。
また、本発明においては、上記電極基材形成工程は、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した下地第1電極層形成用塗工液を、上記酸化物半導体膜に接触させることにより、上記酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を設ける溶液処理工程と、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける上側第1電極層形成工程と、を有することが好ましい。下地第1電極層形成用塗工液を用いることによって、多孔質体である上記酸化物半導体膜の内部にまで上記下地第1電極層形成用塗工液を浸透させることができ、上記酸化物半導体膜の内部に下地第1電極層を設けることができるからである。その後、上側第1電極層形成工程において、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設けることにより、緻密な第1電極層を得ることができる。
また、本発明においては、上記上側第1電極層形成工程は、上記下地第1電極層を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける工程であることが好ましい。上記方法を行うことにより、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設けることができ、多孔質体である上記酸化物半導体膜上に緻密な第1電極層を得ることができるからである。
また、本発明においては、上記電極基材形成工程は、上記酸化物半導体膜を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記酸化物半導体膜上に第1電極層を設ける工程を有することが好ましい。多孔質体である上記酸化物半導体膜上に簡便な方法で第1電極層を得ることができるからである。
本発明はまた、上述した色素増感型太陽電池用基材の製造方法を用い、上記色素増感型太陽電池用基材を形成する色素増感型太陽電池用基材形成工程と、上記色素増感型太陽電池用基材に形成された第1電極層および基材と対向する、第2電極層および対向基材を設ける対電極基材形成工程と、多孔質体の上記介在膜および上記酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤が担持されてなる介在層および酸化物半導体層を少なくとも有する光電変換層と上記第2電極層との間に電解質層を形成する電解質層形成工程とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法を提供する。
上述したように上記色素増感型太陽電池用基材の製造方法においては、色素増感型太陽電池用基材を歩留まり良く製造することができるので、この色素増感型太陽電池用基材を用い、さらに電解質層、第2電極層および対向基材等を形成することにより、品質面およびコスト面において有利に色素増感型太陽電池を製造することができる。
また、本発明は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された酸化物半導体層とを備えた色素増感型太陽電池用基材であって、上記酸化物半導体層中に上記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ上記酸化物半導体層中における上記金属元素の濃度が、上記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とする色素増感型太陽電池用基材を提供する。
本発明においては、上記領域においても、上記第1電極層を構成する金属元素が検出されることから、色素増感型太陽電池の集電効率を向上させることができるという利点を有する。
また、本発明においては、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された酸化物半導体層とを備えた色素増感型太陽電池用基材と、対向基材と、上記対向基材上に形成された第2電極層とを備えた対電極基材とを有し、上記酸化物半導体層と上記第2電極層とが対向するように設置され、上記酸化物半導体層と上記第2電極層との間に電解質層を備えた色素増感型太陽電池であって、上記酸化物半導体層中に上記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ上記酸化物半導体層中における上記金属元素の濃度が、上記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とする色素増感型太陽電池を提供する。
本発明においては、上記領域においても、上記第1電極層を構成する金属元素が検出されることから、色素増感型太陽電池の集電効率を向上させることができるという利点を有する。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法においては、金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、耐熱基板との間に適度な密着性を保持しつつ、さらに、良好な剥離性を有して耐熱基板上に介在膜および酸化物半導体膜を形成することができる。よって、このように介在膜および酸化物半導体膜が形成された耐熱基板を用いることにより、色素増感型太陽電池用基材の基材上に精度良く介在膜および酸化物半導体膜を形成することができるので、歩留まり良く色素増感型太陽電池用基材を製造することができる。
以下、本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法およびそれを用いて色素増感型太陽電池を製造する色素増感型太陽電池の製造方法、さらには、これらの製造方法により製造された色素増感型太陽電池用基材および色素増感型太陽電池について説明する。
A.色素増感型太陽電池用基材の製造方法
まず、本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法は、耐熱基板上に有機物および金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層を形成する介在層形成用層形成工程と、
前記介在層形成用層上に、前記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の古形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、
前記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、介在膜および酸化物半導体膜を形成する焼成工程と、
前記酸化物半導体膜上に、第1電極層および基材を設ける電極基材形成工程とを有することを特徴とするものである。
このような本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法について図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法の一例を図示した工程図である。図1(a)に示すように、耐熱基板1上に、介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層2を形成する。次いで、図1(b)に示すように、介在層形成用層2上に酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層3を形成する。
次に、図1(c)に示すように、介在層形成用層2および酸化物半導体層形成用層3が積層された耐熱基板1に加熱焼成を施す。これにより、図1(d)に示すように介在層形成用層2および酸化物半導体層形成用層3は連通孔を有する多孔質体となる。この多孔質体として形成されたものを介在膜2´および酸化物半導体膜3´とする。
また、本発明においては耐熱基板1を用いていることから、高温域での焼成が可能であるため、金属酸化物半導体微粒子間における結着性を充分なものとして介在膜2´および酸化物半導体膜3´を形成することができる。さらに、本発明においては、介在層形成用層2を介して酸化物半導体層形成用層3を形成することにより、酸化物半導体膜3´を耐熱基板31上に適度な密着性を有して形成することができる。これは以下の理由による。
従来、金属酸化物半導体微粒子を含有しておらず有機物からなる有機膜を介して耐熱基板上に酸化物半導体膜を形成していた場合には、焼成処理を行った後は、有機膜に含有された有機物と、酸化物半導体膜に含有された金属酸化物半導体微粒子との熱膨脹係数の差から、有機膜と酸化物半導体膜との間にクラックが生じやすく、耐熱基板と酸化物半導体膜との密着性が著しく悪かった。しかしながら、本発明においては、有機物の他に金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成しているので、加熱焼成を施しても、酸化物半導体膜と耐熱基板との間にクラックが生じるおそれは小さく、よって、耐熱基板上に酸化物半導体膜を適度な密着性を有して形成することができるのである。
また、介在膜を全く介さずに酸化物半導体膜を直接耐熱基板上に形成した場合には、酸化物半導体膜の耐熱基板に対する密着性が著しく高いために、このように高い密着性を有して酸化物半導体膜が形成された耐熱基板側から基材上に酸化物半導体膜を形成する際、酸化物半導体膜から耐熱基板を剥離することが難しく、良好に基材上に酸化物半導体膜を形成することができなかった。しかしながら、本発明においては、金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、耐熱基板との間に適度な密着性を保持しつつ、その剥離性にも優れているので、基材上に精度良く酸化物半導体膜を形成することができる。
次いで、図1(d)に示すように、酸化物半導体膜3´上に透明電極4を形成し、さらに、透明電極4上に透明基材5を配置することにより、色素増感型太陽電池用基材を得ることができる。なお、耐熱基板1を保護層として用いることにより、耐久性および安定性に優れた色素増感型太陽電池用基材を簡便な工程で製造することができる。
以下、本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法について各工程に分けて説明する。
1.介在層形成用層形成工程
まず、介在層形成用層形成工程について説明する。本発明における介在層形成用層形成工程は、耐熱基板上に、有機物および金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層を形成する工程である。
なお、ここでいう介在層形成用層とは、介在層形成用塗工液を塗布し、固化させることにより形成されたものを意味している。また、後述する介在膜は、このような介在層形成用層を焼成することにより、多孔質体として形成されたものを意味している。さらに、介在層とは、多孔質体である介在膜の細孔に色素増感剤が担持されたものを意味する。また、この介在層と後述する酸化物半導体層とは、本発明により製造された色素増感型太陽電池用基材を用いて色素増感型太陽電池が作製された際に、光照射により色素増感剤から生じた電荷を第1電極層に伝導する部材として機能する光電変換層を構成するものである。以下、介在層および酸化物半導体層をまとめて光電変換層と記載する場合がある。
上記介在層形成用塗工液において、金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度は、後述する酸化物半導体層形成用塗工液における金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度よりも低いのであれば特に限定はされないが、具体的には、20重量%〜80重量%の範囲内、中でも、30重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲で金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用塗工液であれば、このような介在層形成用塗工液を用いて形成された介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、後述する酸化物半導体膜を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することができるからである。また、後述する焼成工程により多孔質体である介在膜として形成された際には、耐熱基板との剥離性に優れているため、色素増感型太陽電池用基材の基材上に良好に介在膜および酸化物半導体膜を形成することができる。
さらにまた、上記介在層形成用塗工液において、金属酸化物半導体微粒子の介在層形成用塗工液中に対する濃度は、塗布方法等によって異なるものではあるが、具体的には、0.1重量%〜15重量%の範囲内であることが好ましく、中でも、0.2重量%〜12重量%の範囲内であることが好ましい。
具体的に使用可能な金属酸化物半導体微粒子は、色素増感剤から発生した電荷を第1電極層へ伝導させることができるものであれば特に限定はされない。具体的には、TiO、ZnO、SnO、ITO,ZrO、SiOX、MgO、Al,CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体微粒子は、多孔性の酸化物半導体層を形成するのに適しており、エネルギー変換効率の向上、コストの削減を図ることができるため好ましい。また、上記微粒子のうち、いずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、TiOを好ましく用いることができる。さらに、これらのうち一種をコア微粒子とし、他の金属酸化物半導体微粒子により、コア微粒子を包含してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。
また、介在層形成用塗工液に含有された金属酸化物半導体微粒子の粒径としては、特に限定はされないが、具体的には、5nm〜500nmの範囲内、中でも、10nm〜250nmの範囲内であることが好ましい。
また、上記有機物としては、後述する焼成工程において、分解されやすいものであれば特に限定はされない。具体的には、樹脂を挙げることができる。このような樹脂としては、後述する酸化物半導体膜を形成する際に使用する溶媒に溶解しにくいものであれば特に限定はされない。中でも、本発明においては、分子量が2000〜600000の範囲内である樹脂が好ましく、さらには、分子量が10000〜200000の範囲内である樹脂が好ましい。上記範囲の分子量を有する樹脂であれば、後述する焼成工程において分解されやすく、介在層形成用層を連通孔を有する多孔性の介在膜に容易に形成することができるからである。
具体的に使用可能な樹脂としては、焼成によって容易に熱分解し介在膜中に残存しない樹脂が好ましく、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルエチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、又はメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ターシャルブチルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合体もしくは共重合体からなるアクリル系樹脂、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類等を挙げることができる。
上記樹脂の含有量は、介在層形成用塗工液に対して、0.01〜15重量%の範囲内、その中でも、0.1重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましい。
また、介在層形成用塗工液に溶媒が含有されている場合には、用いる有機物に対して良溶媒であることが好ましく、溶剤の選定は、溶剤の揮発性と、使用する有機物の溶解性を主に考慮して適宜選択する。具体的には、ケトン類、炭化水素類、エステル類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、グリコール誘導体、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類、アセテート類、ケトンエステル類、グリコールエーテル類、スルホン類、スルホキシド類等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、テルピネオール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール等の有機溶媒であることが好ましい。介在層形成用塗工液は耐熱基板上に塗布されるため上記有機溶媒を用いることにより、耐熱基板上に濡れ性良く塗布することができるからである。
また、上記介在層形成用塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。例えば、添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。例えば、pH調製剤としては、硝酸、塩酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、アンモニア等を挙げることができる。
このような本工程において、上記介在層形成用塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。このような塗布法を用い、単数回または複数回、塗布および固化を繰り返すことにより介在層形成用層を所望の膜厚に調整して形成する。
また、介在層形成用層の膜厚としては、酸化物半導体膜を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することを可能とする膜厚であれば特に限定はされないが、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、後述する「3.焼成工程」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。具体的には、0.01μm〜30μmの範囲内、中でも、0.05μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。
また、本工程において用いる耐熱基板としては、耐熱性に優れたものであれば特に限定はされない。具体的には、ガラス、セラミクス、または金属板等からなる耐熱基板を挙げることができる。このような材料からなる耐熱基板を用いることにより、後述する焼成工程において十分に高温で焼成を行うことができるので、金属酸化物半導体微粒子間の結着性を高くすることができる。
2.酸化物半導体層形成用層形成工程
次に、酸化物半導体層形成用層形成工程について説明する。本発明における酸化物半導体層形成用層形成工程は、介在層形成用層上に、上記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する工程である。
なお、ここでいう酸化物半導体層形成用層とは、酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させることにより形成されたものを意味している。また、後述する酸化物半導体膜は、このような酸化物半導体層形成用層を焼成することにより、多孔質体として形成されたものを意味している。さらに、酸化物半導体層とは、多孔質体である酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤が担持されたものを意味する。また、上述したように、この酸化物半導体層と介在層とは、色素増感型太陽電池として作製された際に、その細孔に担持された色素増感剤から光照射により生じた電荷を第1電極層に伝導する部材として機能する光電変換層を構成するものである。
本工程において用いられる酸化物半導体層形成用塗工液は、上述した介在層形成用塗工液と同様に、金属酸化物半導体微粒子を含有するものであるが、上記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高く調整されている。具体的に、酸化物半導体層形成用塗工液における金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度としては、50重量%〜100重量%の範囲内、中でも、65重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。このような酸化物半導体層形成用塗工液を用いることにより、焼成工程後に得られる多孔質体として形成された酸化物半導体膜において、その細孔に十分な量の色素増感剤を担持させることができるため、最終的に得られる酸化物半導体層において、光照射により色素増感剤から生じた電荷を伝導する機能を十分に得ることができるからである。
さらにまた、金属酸化物半導体微粒子の酸化物半導体層形成用塗工液に対する濃度としては、5重量%〜50重量%の範囲内、中でも、10重量%〜40重量%の範囲内であることが好ましい。このような酸化物半導体層形成用塗工液を用いることにより、所望の膜厚に精度良く酸化物半導体層形成用層を成膜することができるからである。
具体的に使用可能な金属酸化物半導体微粒子に関しては、上記「1.介在層形成用層形成工程」の中に記載したものと同様なので、ここでの説明は省略する。
また、酸化物半導体層形成用塗工液に含有された金属酸化物半導体微粒子の粒径は、特に限定はされないが、具体的には、1nm〜10μmの範囲内、その中でも、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも粒子径が小さい場合は、そのような微粒子を製造すること自体が困難であり、各々の粒子が凝集し、二次粒子を形成する場合があるため好ましくない。一方、上記範囲よりも粒子径が大きい場合は、酸化物半導体層を厚膜化させる場合があり、抵抗が高くなるため好ましくない。
また、上記範囲内の粒子径を有し、粒径の異なる同種または異種の金属酸化物半導体微粒子を混合して用いてもよい。これにより、光散乱効果を高めることができ、最終的に得られる酸化物半導体層内でより多くの光を閉じ込めることができるため、色素増感剤における光吸収を効率的に行うことができるからである。例えば、10〜50nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子と、50〜200nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子とを混合して用いる場合を挙げることができる。
また、酸化物半導体層形成用層の形成に使用可能な樹脂としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などのほか、ポリエチレングリコールのような多価アルコール類等を挙げることができる。
上記樹脂の含有量は、酸化物半導体層形成用塗工液に対して、0.5〜20重量%の範囲内、その中でも、1重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましい。
また、酸化物半導体層形成用塗工液に溶媒を用いた場合には、上述した樹脂が溶解するものであり、かつ、上述した介在層形成用層の形成に使用する有機物が溶解しにくいものであれば特に限定はされない。具体的には、水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ターピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等の各種溶剤を挙げることができる。中でも、水ないしアルコール系の溶媒であることが好ましい。上述したように、介在層形成用塗工液に用いる溶媒は有機溶媒が好ましいことから、介在層形成用層上に形成される酸化物半導体層形成用層においては、両者の混合を防止するため、介在層形成用塗工液と異なる水系の溶媒であることが好ましいのである。
また、酸化物半導体層形成用塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。例えば、添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。例えば、pH調製剤としては、硝酸、塩酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、アンモニア等を挙げることができる。また、分散助剤としては、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を挙げることができる。中でも、ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節可能となり、剥がれにくい酸化物半導体膜の形成、酸化物半導体膜の空孔率の調整等を行うことができるので、ポリエチレングリコールを添加することが好ましい。
このような本工程において、上記塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。
また、酸化物半導体層形成用層の膜厚としては、最終的に酸化物半導体層として形成された際に、光照射により色素増感剤により生じた電荷を伝導する機能を十分に得ることができるのであれば特に限定はされない。例えば、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、後述する「3.焼成工程」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。具体的には、1μm〜65μmの範囲内、中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
3.焼成工程
次いで、焼成工程について説明する。焼成工程は、上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、介在膜および酸化物半導体膜を形成する工程である。
本工程により介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより、連通孔を有する多孔質体として形成された介在膜および酸化物半導体膜を形成することができる。
本発明においては、金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成していることから、本工程により焼成した後であっても、酸化物半導体膜と耐熱基板との間にクラックが生じにくく、密着性良く耐熱基板上に酸化物半導体膜を形成することができる。また、介在膜は金属酸化物半導体微粒子を含有していることから耐熱基板との剥離性に優れており、後述する電極基材形成工程において、酸化物半導体膜上に第1電極層および基材を設けた後、耐熱基板を良好に剥離することが可能となる。したがって、歩留まり良く色素増感型太陽電池用基材を製造することができる。
このような本工程において、焼成の温度は、300℃〜700℃の範囲内であることが好ましく、中でも、350℃〜600℃の範囲内であることが好ましい。本発明においては、耐熱性に優れた耐熱基板を用いていることから、上記範囲の高温域での焼成が可能であり、介在膜および酸化物半導体膜を金属酸化物半導体微粒子間の結着性良く形成することができるからである。
また、本工程において、介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成する際の加熱方法としては、加熱ムラなく一様に介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成できる方法であれば特に限定はされない。具体的には、公知の加熱方法を用いることができる。
また、本工程により多孔質体として形成された介在膜および酸化物半導体膜の膜厚としては、両方を併せた膜厚が、1μm〜100μmの範囲内、その中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。本工程により得られる介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤を担持させることにより、色素増感型太陽電池として使用された際に、光照射により色素増感剤から生じた電荷を伝導する機能を有する光電変換層となるため、両者を併せた膜厚を上記範囲内とすることにより、光電変換層の膜抵抗を小さくすることができ、十分な量の光吸収を得ることができるからである。
さらに、酸化物半導体膜と、介在膜との膜厚比は、10:0.1〜10:5の範囲内であることが好ましく、中でも、10:0.1〜10:3の範囲内であることが好ましい。介在膜および酸化物半導体膜を併せた膜厚のうち、酸化物半導体膜と介在膜との膜厚比を上記範囲とすることにより、介在膜を介して形成された酸化物半導体膜を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することができるからである。また、上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層の両者は、金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が異なる塗工液を用いて形成されているため、これらを焼成して得られる介在膜および酸化物半導体膜においては、空孔率が異なる。すなわち、介在膜よりも酸化物半導体膜の方が空孔率が低い。このような両者の空孔率の関係等を考慮すると、上記範囲の膜厚比とすることにより、最終的に得られる光電変換層において、充分な機械的強度を保持するものとすることができるからである。
4.電極基材形成工程
次に、電極基材形成工程について説明する。本工程は、上記酸化物半導体膜上に、第1電極層および基材を設ける工程である。
本工程において第1電極層を形成する材料としては、導電性に優れたもので、かつ、電解質に対する腐食性がないものであれば特に限定はされないが、例えば、本発明の色素増感型太陽電池用基材を用いて製造された色素増感型太陽電池において、第1電極層が光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料としては、SnO、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。中でも、フッ素ドープしたSnO、ITOであることが好ましい。導電性および透過性の両方に優れているからである。
さらに、第1電極層を形成する材料は、本発明により製造された色素増感型太陽電池用基材を用いて色素増感型太陽電池を製造する際に、対向する電極として設ける第2電極層を形成する材料の仕事関数等を考慮して材料を選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。
また、第1電極層は、単層からなる場合であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用い、積層されてなる場合であってもよい。このような第1電極層の膜厚としては、単層からなる第1電極層の場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1〜2000nmの範囲内、その中でも、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明における第1電極層は、異なる金属元素を用いた層が積層されてなるものであっても良く、例えば、後述する第3実施態様における下地第1電極層および上側第1電極層の組合せ等を挙げることができる。
さらに、基材上に開口が十分で光透過性のある金属メッシュを配置したり、上記金属メッシュと上述した第1電極層を形成する材料とを一体化ないしは積層化させることにより本発明における第1電極層とすることもできる。
さらに、本工程により設けられる基材は、透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、例えば、本発明により製造された色素増感型太陽電池用基材を用いて製造された色素増感型太陽電池において、上記基材が光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れた透明性を有するものであることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、水蒸気、その他のガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエステルナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、プラスチックフィルムを用いたフィルム基材とすることが好ましい。加工性に優れているため、他のデバイスとの組合せが容易であり、用途の幅を広げることができるからである。また、生産性の向上、製造コストの削減にも効果がある。
このようなフィルムは単独で使用しても良く、また、2種以上のフィルムを積層した複合フィルムとする場合であってもよい。
本工程において、酸化物半導体膜上に上記第1電極層および基材を設ける方法としては特に限定はされないが、例えば、酸化物半導体膜上に第1電極層を直接形成した後、第1電極層上に基材を設ける方法(第1実施態様)、予め、第1電極層が形成された基材を準備し、この基材の第1電極層上に酸化物半導体膜および介在膜を転写させる転写法を用いた方法(第2実施態様)等を挙げることができる。
また、本工程の上記第1実施態様において、酸化物半導体膜上に第1電極層を直接形成する際の実施態様として、例えば以下のものを挙げることができる。すなわち、後述する下地第1電極層形成用塗工液を用いて酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を設ける溶液処理工程、および上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける上側第1電極層形成工程を行う態様(第3実施態様)、あるいは、上記溶液処理工程を行わずに、後述する第1電極層形成用塗工液を用いて酸化物半導体膜に第1電極層を設ける態様(第4実施態様)等である。
以下、本工程における第1電極層および基材の形成方法について各実施態様に分けて説明する。
(a)第1実施態様
第1実施態様は、酸化物半導体膜上に第1電極層を直接形成した後、第1電極層上に基材を設けることにより、酸化物半導体膜上に第1電極層および基材を設ける態様である。
本実施態様においては、第1電極層の形成方法に応じて、第1電極層を形成する時期を、上記焼成工程の前または後で適宜選択する。例えば、第1電極層を湿式塗工により形成した場合には、上記焼成工程前に第1電極層を形成することが好ましい。すなわち、焼成されていない酸化物半導体層形成用層上に第1電極層を形成する塗工液を塗布し、その後、上述した焼成工程を行うことにより、介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層に加えて第1電極層も同時に焼成することができるので、効率良く酸化物半導体膜上に第1電極層を形成することができるからである。または、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により第1電極層を形成する場合には、焼成工程後であることが好ましい。
上述したように第1電極層を形成した後、第1電極層上に基材を設けることにより色素増感型太陽電池用基材を製造することができる。この際、基材を第1電極層上に配置させる方法としては、例えば、第1電極層を基材上に密着性良く形成するために接着層が形成された基材を準備し、接着層と第1電極層とを対向させ、第1電極層、酸化物半導体膜および介在膜を転写法により基材上に転写させて形成する方法等を挙げることができる。本発明においては、耐熱基板上に介在膜を介して酸化物半導体膜を形成することにより、酸化物半導体膜を密着性良く形成することができるので、基材の所定の位置に精度良く第1電極層、酸化物半導体膜および介在膜を転写させることができる。
なお、上記接着層および転写法については、後述する第2実施態様の中で説明する。
(b)第2実施態様
第2実施態様は、予め、第1電極層が形成された基材を準備し、この基材の第1電極層上に酸化物半導体膜および介在膜を転写させることにより、酸化物半導体膜上に第1電極層および基材を設ける態様である。
このような本実施態様において、基材上に第1電極層を形成する方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、湿式塗工、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スパッタリング法、CVD法であることが好ましい。
また、基材上に酸化物半導体膜および介在膜等を転写させる方法としては、一般的に行われている転写方法であれば特に限定はされない。具体的には、熱転写法等を挙げることができる。
例えば、熱転写法により酸化物半導体膜および介在膜等を転写させる場合、加熱する方法としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ヒートバーを用いる方法、ランプを用いる方法、レーザーを用いる方法、電磁誘導加熱を用いる方法、超音波摩擦加熱を用いる方法等を挙げることができる。その中でも、本発明においては、レーザーを用いたレーザー転写法であることが好ましい。この際、用いることができるレーザーとしては、固体レーザー(YAGレーザー)、半導体レーザー等を用いることができる。
本工程において、上述したように、熱転写法により転写を行った場合、転写時における転写温度としては、転写させる部材、例えば、酸化物半導体膜および介在膜等の材料により異なるものであるが、これらの部材の形成に用いられる材料のガラス転移温度よりも低い温度での熱転写が好ましい。転写させる部材の熱劣化による機能低下といった問題を回避することができるからである。
なお、本工程において、基材上に直接形成される部材、すなわち、第1電極層と基材との密着性を向上させるため、基材上に接着層を設けてもよい。このような接着層を形成する材料としては、基材と第1電極層との密着性を向上させるものであれば特に限定はされないが、具体的には、ヒートシール剤、粘着剤、接着剤、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等を挙げることができる。
(c)第3実施態様
第3実施態様は、上記第1実施態様において酸化物半導体膜上に第1電極層を直接形成する際に、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した下地第1電極層形成用塗工液を、上記酸化物半導体膜に接触させることにより、上記酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を設ける溶液処理工程と、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける上側第1電極層形成工程と、を有する態様である。
なお、本実施態様における上記下地第1電極層を形成する時期としては、上記焼成工程の後に行うことが好ましい。多孔質体が形成された後の方が、下地第1電極層形成用塗工液が酸化物半導体膜の内部まで浸透しやすいからである。
すなわち、本実施態様においては、下地第1電極層形成用塗工液を用いることによって、多孔質体である上記酸化物半導体膜の内部にまで上記下地第1電極層形成用塗工液を浸透させることができ、上記酸化物半導体膜の内部に下地第1電極層を設けることができる。その後、上側第1電極層形成工程において、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設けることにより、緻密な第1電極層を得ることができる。
また、本実施態様においては、上記下地第1電極層形成用塗工液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記酸化剤および/または還元剤の作用により、下地第1電極層が生じやすい環境とすることができるからである。
以下、このような溶液処理工程および上側第1電極層形成工程について説明する。
(I)溶液処理工程
本実施態様における溶液処理工程は、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した下地第1電極層形成用塗工液を、上記酸化物半導体膜に接触させることにより、上記酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を設ける工程である。以下、このような溶液処理工程について各構成毎に説明を行う。
(i)下地第1電極層形成用塗工液
まず、本実施態様に用いられる下地第1電極層形成用塗工液について説明する。本実施態様に用いられる下地第1電極層形成用塗工液は、少なくとも第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体(以下、これらを「金属源」とする場合がある。)が溶媒に溶解しているものである。
(金属源)
本実施態様に用いられる金属源は、第1電極層を構成する金属元素を有するものであり、下地第1電極層を形成することができるものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、本発明における「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
本実施態様に用いられる金属源を構成する金属元素としては、上述した「第1電極層を形成する材料」として記載されたものと同じであるのでここでの説明は省略する。
また、上記金属元素を与える金属塩としては、具体的には、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記金属錯体としては、具体的には、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を挙げることができる。中でも、本実施態様においては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、ストロンチウムジピバロイルメタナート、ペンタエトキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物を使用することが好ましい。
また、本実施態様においては、下地第1電極層形成用塗工液が上記金属元素を2種類以上含有していても良く、複数種の金属元素を使用することにより、例えば、ITO、Gd−CeO、Sm−CeO、Ni−Fe等の複合下地第1電極層を得ることができる。
このような金属源の濃度としては、下地第1電極層を得ることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、金属源が金属塩の場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、下地第1電極層が充分に形成せず、緻密化に貢献できない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の下地第1電極層を得ることができない可能性があるからである。
(酸化剤)
本実施態様の下地第1電極層形成用塗工液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、下地第1電極層の発生しやすい環境とすることができる。
このような酸化剤の濃度としては、下地第1電極層を得ることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、酸化剤が効果を発揮しない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
また、このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、上記金属イオン等の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(還元剤)
本実施態様の下地第1電極層形成用塗工液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、上記下地第1電極層形成用塗工液のpHを上げる働きを有するものである。上記下地第1電極層形成用塗工液のpHが上昇することで、下地第1電極層の発生しやすい環境とすることができる。
このような還元剤の濃度としては、下地第1電極層を得ることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、金属源が金属塩の場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、還元剤が効果を発揮しない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
また、このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウム等を挙げることができ、中でもボラン系錯体を使用することが好ましい。
また、本実施態様においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても、下地第1電極層を形成しやすい環境にすることができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等が挙げられ、中でも、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
(溶媒)
本実施態様の下地第1電極層形成用塗工液に用いられる溶媒は、上述した金属塩等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
(添加剤)
また、本実施態様に用いられる下地第1電極層形成用塗工液は、補助イオン源や界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記補助イオン源は、電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、下地第1電極層形成用塗工液のpHを上昇させ、下地第1電極層の形成しやすい環境とすることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属塩や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、第一金属酸化物膜形成用塗工液と基材表面との界面に作用し、基材表面に金属酸化物膜が生成し易くする働きを有するものである。上記界面活性剤の使用量は、使用する金属塩や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような界面活性剤は、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
(ii)下地第1電極層
次に、本実施態様において形成される下地第1電極層について説明する。本態様において、上記下地第1電極層は、上述した下地第1電極層形成用塗工液と上述した酸化物半導体膜とを接触させることにより形成するものである。
酸化物半導体膜の内部等に設けられる下地第1電極層は、その後の上側第1電極層形成工程により、所望の緻密性を有した第1電極層を得ることができれば、特に限定されるものではなく、例えば、酸化物半導体膜内部から表面にかけて存在し、酸化物半導体膜を完全に被覆した膜であっても良く、上記酸化物半導体膜表面を部分的に被覆しているものであっても良い。上記酸化物半導体膜表面を部分的に被覆している下地第1電極層の具体例としては、例えば、多孔質体である上記酸化物半導体膜の内部に海島状に存在している場合等を挙げることができる。
(iii)酸化物半導体膜と下地第1電極層形成用塗工液との接触方法
次に、本実施態様における酸化物半導体膜と下地第1電極層形成用塗工液との接触方法について説明する。本実施態様における上記接触方法は、上述した酸化物半導体膜と上述した下地第1電極層形成用塗工液とを接触させる方法であれば、特に限定されるものではなく、具体的には、ディッピング法、枚葉式による方法、溶液を霧状にして塗布する方法、等が挙げられる。
例えば、ディッピング法は、焼成工程を経て上記酸化物半導体膜を備えた耐熱基板を下地第1電極層形成用塗工液に浸漬することにより、上記酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を形成する方法である。例えば図5に示すように、上記酸化物半導体膜を備えた耐熱基板6を下地第1電極層形成用塗工液7に浸漬することにより、下地第1電極層を得る方法である。
また、本態様においては、酸化物半導体膜と下地第1電極層形成用塗工液とを接触させる際に、加熱を行うことが好ましい。加熱することにより、酸化剤および還元剤の活性を促進させることができ、下地第1電極層の生成速度を向上させることができるからである。加熱を行う方法としては、特に限定されるものではないが、中でも酸化物半導体膜を加熱することが好ましく、特に酸化物半導体膜および下地第1電極層形成用塗工液を加熱することが好ましい。酸化物半導体膜近傍における下地第1電極層の生成反応を促進することができるからである。
このような加熱温度としては、使用する酸化剤、還元剤等の特徴に合わせて適宜選択することが好ましいが、具体的には50〜150℃の範囲内であることが好ましく、中でも70〜100℃の範囲内であることがより好ましい。
(II)上側第1電極層形成工程
本実施態様における上側第1電極層形成工程は、上述した溶液処理工程により形成された下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける工程である。本実施態様においては、上述した下地第1電極層上に上側第1電極層を形成することで、緻密な第1電極層を得ることができる。
このような上側第1電極層形成工程で用いられる方法としては、所望の緻密性を有する上側第1電極層を設けることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記溶液処理工程後に、上記下地第1電極層を加熱し、後述する上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける方法、あるいは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、プラズマCVD、熱CVD、大気圧CVD等のCVD法等を挙げることができる。中でも、本発明においては上記溶液処理工程後に、上記下地第1電極層を加熱し、後述する上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける方法(以下、スプレー法という場合がある)が好ましい。以下、このようなスプレー法について詳細に説明する。
(i)スプレー法
スプレー法は、上側第1電極層形成工程として、上記下地第1電極層を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける方法である。
なお、上記スプレー法において、「金属酸化物膜形成温度」とは、後述する上側第1電極層形成用塗工液に含まれる金属元素が酸素と結合し、上側第1電極層等である金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属源が溶解してなる金属イオン等の種類、上側第1電極層形成用塗工液の組成等によって大きく異なるものである。上記スプレー法において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源が溶解した上側第1電極層形成用塗工液を用意し、上記下地第1電極層を備えた耐熱基板の加熱温度を変化させて接触させることにより、上側第1電極層である金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を上記スプレー法における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
上記スプレー法においては、上記下地第1電極層を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、上記上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記下地第1電極層上に上側第1電極層を形成することができ、その結果、多孔質体である上記酸化物半導体膜上に緻密な第1電極層を得ることができる。
以下、上記スプレー法について各構成毎に説明する。
(i-i)上側第1電極層形成用塗工液
まず、上記スプレー法に用いられる上側第1電極層形成用塗工液について説明する。上記スプレー法に用いられる上側第1電極層形成用塗工液は、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶媒に溶解したものである。
また、上記スプレー法においては、上側第1電極層形成用塗工液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有させることにより、より低い基材加熱温度で上側第1電極層を得ることができるからである。
(金属源)
上側第1電極層形成用塗工液に用いられる金属源は、上側第1電極層を構成する金属元素を有するものであり、上側第1電極層を形成することができるものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。上記金属源の種類は、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液の金属塩と同じものを用いることができるが、中でも、透過性、導電性を有した上側第1電極層を得ることができる金属源であることが好ましい。本実施態様において上側第1電極層は、集電電極として作用するからである。このような上側第1電極層を構成する金属酸化物としては、透過性、導電性を有した上側第1電極層を構成することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO、ZnO、FTO(フッ素ドープ酸化すず)、ATO(アンチモンドープ酸化すず)、SnO(TO)等が挙げられる。このような金属酸化物を構成する金属源としては、ITOの場合、例えば、トリス(アセチルアセトナート)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができる。また、上記ZnOの場合、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛等を用いることができる。また、上記FTOの場合、例えば、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができ、フッ素ドーピング剤としてはフッ化アンモニウム等を用いることができる。また、上記ATOの場合、例えば、アンチモン(III)ブトキシド、アンチモン(III)エトキシド、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができる。また、上記SnO(TO)の場合、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド等を用いることができる。
また、上側第1電極層形成用塗工液に用いられる金属源は、所望の第1電極層を得ることができれば特に限定されるものではなく、上述した下地第1電極層塗工液に用いられる金属源と同じであっても、異なっていても良い。なお、上側第1電極層および下地第1電極層の組み合わせについては、後述する「(i-ii)上側第1電極層」に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、上側第1電極層形成用塗工液における金属源の濃度としては、上側第1電極層を得ることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、金属源が金属塩の場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、上側第1電極層が形成に時間がかかりすぎる可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の上側第1電極層を得ることができない可能性があるからである。
(酸化剤)
上側第1電極層形成用塗工液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、上側第1電極層の発生しやすい環境とすることができ、より低い基材加熱温度で上側第1電極層を得ることができる。このような酸化剤の濃度および種類は、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液の酸化剤と同じであるので、ここでの説明は省略する。
(還元剤)
上記スプレー法の上側第1電極層形成用塗工液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、上記上側第1電極層形成用塗工液のpHを上げる働きを有するものである。上記上側第1電極層形成用塗工液のpHが上昇することで、上側第1電極層の発生しやすい環境とすることができ、より低い基材加熱温度で上側第1電極層を得ることができる。このような還元剤の濃度および種類は、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液の還元剤と同じであるので、ここでの説明は省略する。
また、上記スプレー法においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても、上側第1電極層を形成することができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液における組合せと同じであるので、ここでの説明は省略する。
(溶媒)
上側第1電極層形成用塗工液に用いられる溶媒は、上述した金属源を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではないが、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液の溶媒と同じであるので、ここでの説明は省略する。
(添加剤)
また、上記スプレー法に用いられる上側第1電極層形成用塗工液は、補助イオン源や界面活性剤等の添加剤を含有していても良いが、上述した溶液処理工程に記載された下地第1電極層形成用塗工液の添加剤と同じであるので、ここでの説明は省略する。
(i-ii)上側第1電極層
次に、上記スプレー法において形成される上側第1電極層について説明する。上記スプレー法において、上記上側第1電極層は、上記下地第1電極層を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記下地第1電極層上に得られるものである。上述した溶液処理工程および上側第1電極層形成工程を行うことにより多孔質体である酸化物半導体膜上に緻密な第1電極層を得ることができる。
また、本発明においては、下地第1電極層を構成する金属酸化物と、上側第1電極層を構成する金属酸化物との組み合わせは、所望の緻密性を有する第1電極層を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、中でも、金属酸化物の結晶系が近い組合せが好ましく、特に、金属元素が共通である組合せがより好ましい。
例えば、上側第1電極層をITO膜とした場合、下地第1電極層としては、上側第1電極層として緻密なITO膜を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ZnO、ZrO、Al、Y、Fe、Ga、La、Sb、ITO、In、SnO等を挙げることができ、中でも、ITO膜と結晶系が近いという観点から、Al、Y、Fe、Ga、La、Sb、ITO、In、SnOであることが好ましく、特に金属酸化物膜(ITO膜)を構成する金属元素(In、Sn)が共通であるという観点から、ITO、In、SnOであることがより好ましい。
(i-iii)上側第1電極層形成用塗工液と下地第1電極層との接触方法
次に、上記スプレー法における上側第1電極層形成用塗工液と上記下地第1電極層との接触方法について説明する。上記スプレー法における上記接触方法は、上述した上側第1電極層形成用塗工液と上述した下地第1電極層とを接触させる方法であれば、特に限定されるものではないが、上記上側第1電極層形成用塗工液と上記下地第1電極層とが接触する際に、加熱された下地第1電極層の温度を低下させない方法であることが好ましい。下地第1電極層の温度が低下すると所望の第1電極層得ることができない可能性があるからである。
このような温度を低下させない方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、液滴として上記上側第1電極層形成用塗工液を噴霧することにより上記下地第1電極層に接触させる方法、上記上側第1電極層形成用塗工液をミスト状にした空間の中に上記下地第1電極層を通過させる方法等が挙げられる。
上記上側第1電極層形成用塗工液を噴霧することにより接触させる方法は、特に限定されるものではないが、例えばスプレー装置等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば、図6に示すように、下地第1電極層等を備えた耐熱基材8を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この基板8に対して、スプレー装置9を用いて上側第1電極層形成用塗工液10を噴霧することにより、上側第1電極層を形成する方法等を挙げることができる。
上記スプレー装置を用いて噴霧する場合、液滴の径は、通常0.1〜1000μm、中でも0.5〜300μmであることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、温度の低下を抑制することができ、均一な第上側1電極層を得ることができるからである。また、上記スプレー装置の噴射ガスとしては、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができる。また、上記噴射ガスの噴射量としては、0.1〜50l/min、中でも1〜20l/minであることが好ましい。
一方、上述した上側第1電極層形成用塗工液をミスト状にした空間の中に、下地第1電極層を通過させる方法としては、例えば、図7に示すように、上側第1電極層形成用塗工液10をミスト状にした空間に、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱され、下地第1電極層を備えた基材8を通過させることにより上側第1電極層を形成する方法を挙げることができる。このような方法においては、液滴の径は、通常0.1〜300μm、中でも1〜100μmであることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、下地第1電極層の温度低下を抑制することができ、均一な上側第1電極層を得ることができるからである。
また、上記スプレー法においては、上記上側第1電極層形成用塗工液と加熱された下地第1電極層とを接触させる際、上記下地第1電極層は、「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、金属源が溶解してなる金属イオン等の種類、上側第1電極層形成用塗工液の組成等によって大きく異なるものであるが、上側第1電極層形成用塗工液に酸化剤および/または還元剤を加えない場合、通常400〜600℃の範囲内とすることができ、中でも、450〜550℃の範囲内であることが好ましい。一方、上側第1電極層形成用塗工液に酸化剤および/または還元剤を加える場合、通常150〜600℃の範囲内とすることができ、中でも、250〜400℃の範囲内であることが好ましい。また、特に、上記スプレー法を用いてITO膜の第1電極層を形成する際には、300〜500℃の範囲内とすることが好ましく、中でも、350〜450℃の範囲内であることがより好ましい。
また、このような加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、中でも下地第1電極層の温度を上記温度に保持しながら上側第1電極層形成用塗工液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
(III)基材の形成方法
本実施態様においては、上述した方法等により第1電極層を形成した後、第1電極層上に基材を設けることにより色素増感型太陽電池用基材とすることができる。第1電極層上に基材を設ける方法については、上述した第1実施態様と同じであるので、ここでの説明は省略する。
(e)第4実施態様
第4実施態様は、上記第1実施態様において酸化物半導体膜上に第1電極層を直接形成する際に、上記酸化物半導体膜を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、上記酸化物半導体膜上に第1電極層を設ける態様である。
本実施態様は、第3実施態様において、溶液処理工程を行わずに、上記スプレー法を行う態様と同等のものである。上記溶液処理工程を行わないことから、多孔質体である上記酸化物半導体膜上に簡便な方法で第1電極層を得ることができる。なお、本実施態様における第1電極層形成用塗工液は、第3実施態様における上側第1電極層形成用塗工液と同一のものであり、さらに本実施態様における金属酸化物膜形成温度は、第1電極層形成用塗工液を用いて測定されるものである。また、その他の事項に関しても、溶液処理工程を行わないこと以外、上述した第3実施態様と同じであるので、ここで説明は省略する。
5.その他
本発明においては、多孔質体として形成された介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤を担持させることにより、光照射により色素増感剤から生じた電荷を伝導する機能を有する光電変換層とすることができる。この光電変換層は、介在膜の細孔に色素増感剤を担持して得られる介在層と、酸化物半導体層の細孔に色素増感剤を担持して得られる酸化物半導体層とを有するものである。
具体的に色素増感剤としては、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。具体的には、有機色素または金属錯体色素を使用することができる。例えば有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系の色素が挙げられる。中でも、クマリン系であることが好ましい。
また、金属錯体色素では、ルテニウム系色素が好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素が好ましい。酸化物半導体膜では、可視光(400〜800nm程度の波長の光)を殆ど吸収することはできないが、例えば、ルテニウム錯体を酸化物半導体膜に担持させることにより、大幅に可視光まで取り込んで光電変換を生じさせることができ、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができる。
本発明において、介在膜および酸化物半導体膜の細孔に上記色素増感剤を担持させる処理は、上記焼成工程後であればいつそのような処理を施しても特に限定はされない。例えば、焼成工程直後に上記処理を施し、その後、上記電極基材形成工程を行う場合や、または上記電極基材形成工程により第1電極層および基材を配置させた後、耐熱基板を剥離し、上記処理を行う場合等を挙げることができる。
さらに、上記色素増感剤を担持させる処理を施す方法としては、介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤を担持させることが可能な方法であれば特に限定はされない。例えば、色素増感剤の溶液に酸化物半導体膜および介在膜を浸漬させ、浸透させた後、乾燥させる方法や、色素増感剤の溶液を酸化物半導体膜上または介在膜上に塗布し、両者に浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。
上記方法により介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤を担持させることにより、多孔質体として形成された介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤が担持され、光照射により色素増感剤から生じた電荷を伝導する機能を有する光電変換層とすることができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法により製造された色素増感型太陽電池においては、上記介在膜上に保護層が形成されていることが好ましい。これにより、介在膜表面が保護されることから、酸素および水等の影響を受けにくくすることができ、色素増感型太陽電池用基材の耐久性および安定性の向上に効果を有するからである。
このような保護層は、耐熱基板であることが好ましい。上述した電極基材形成工程の後に、耐熱基板を剥離せずにそのまま保護層として用いることにより、製造効率およびコスト的に有利に、酸素および水等の影響から色素増感型太陽電池用基材を保護することができるからである。
B.色素増感型太陽電池の製造方法
次に、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、上述した色素増感型太陽電池用基材の製造方法を用い、色素増感型太陽電池用基材を形成する色素増感型太陽電池用基材形成工程と、
上記色素増感型太陽電池用基材に形成された第1電極層および基材と対向する、第2電極層および対向基材を設ける対電極基材形成工程と、
多孔質体の上記介在膜および上記酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤が担持されてなる介在層および酸化物半導体層を少なくとも有する光電変換層と上記第2電極層との間に電解質層を形成する電解質層形成工程とを有することを特徴とするものである。
上述したように本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法においては、色素増感型太陽電池用基材を歩留まり良く製造することができるので、この色素増感型太陽電池用基材を用い、さらに電解質層、第2電極層および対向基材等を形成することにより、品質面およびコスト面において有利に色素増感型太陽電池を製造することができる。
以下、本発明について、各工程ごとに詳細に説明する。
1.色素増感型太陽電池用基材形成工程
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法において、色素増感型太陽電池形成工程は、上述した本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法を用い、色素増感型太陽電池用基材を形成する工程である。
本工程では、上述した色素増感型太陽電池用基材の製造方法により、基材と、前記基材上に形成された第1電極層と、さらに、第1電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を有する多孔質体として形成され、その表面には色素増感剤が担持されており、光照射により前記色素増感剤から生じた電荷を伝導する光電変換層とを有する色素増感型太陽電池用基材を形成する。
本工程については、上記「A.色素増感型太陽電池用基材の製造方法」に記載したものと同様なのでここでの説明は省略する。
2.対電極基材形成工程
次に、対電極基材形成工程について説明する。対電極基材形成工程は、前記色素増感型太陽電池用基材に形成された第1電極層および基材と対向する、第2電極層および対向基材を設ける工程である。
本工程は、後述する電解質層形成工程における電解質層の形成の方法に応じて、電解質層形成工程の前または後のいずれかに行われる。すなわち、後述するように電解質層を、電解質層の形成に用いる電解質層形成用塗工液を、色素増感型太陽電池用基材を構成する光電変換層の介在層上に塗布し、乾燥させることにより形成する場合(以下、このような電解質層の形成方法を塗布法と記載する場合がある。)には、後述する電解質層形成工程を先に行い、続いて本工程を行うことにより、色素増感型太陽電池を作製することができる。または、光電変換層と第2電極層とを、光電変換層の介在層と第2電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用塗工液を注入することにより、電解質層を形成する場合(以下、このような電解質層の形成方法を注入法と記載する場合がある。)には、本工程をまず行い、その後に後述する電解質層形成工程を行うことにより色素増感型太陽電池を作製することができる。
例えば、後述する電解質層形成工程において塗布法により形成した場合、本工程において、第2電極層および対向基材を形成する方法としては、特に限定はされないが、具体的には、第2電極層が形成された対向基材を準備し、電解質層上にこのような対向基材を貼り合わせることにより形成することができる。
また、後述する電解質層形成工程において注入法により形成した場合、本工程において第2電極層および対向基材を形成する方法としては、予め、第2電極層が形成された対向基材を準備し、上記色素増感型太陽電池用基材と、第2電極層が形成された対向基材とを、介在層と第2電極層とが所定の間隙を有して対向するように配置することにより形成することができる。
この場合、介在層および第2電極層間の間隙としては、この間隙に電解質層を形成することができるのであれば特に限定はされないが、一般的に0.01μm〜100μmの範囲内、その中でも、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも間隙を狭くすると、電解質層形成用塗工液を注入するのに長時間を要する場合があるため好ましくなく、上記範囲よりも間隙を広くすると、そのような間隙に形成された電解質層の膜厚が厚膜化する場合があるので好ましくない。
また、介在層と第2電極層とを所定の間隙を有して配置する場合には、精度良く所望の間隙に調整するために、色素増感型太陽電池用基材における基材、または、上記基材と対向する対向基材のいずれか一方にスペーサを形成しても良い。このようなスペーサとしては、公知のガラススペーサ、樹脂スペーサ、またはオレフィン系多孔質膜等を挙げることができる。
(a)対向基材
本発明における対向基材は、色素増感型太陽電池用を構成する基材と対向するものである。このような本発明における対向基材としては、透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れた透明性を有するものであることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、水蒸気、その他のガスバリア性に優れたものであることが好ましい。
なお、具体的に対向基材を形成する際に使用可能な材料に関しては、上述した色素増感型太陽電池用基材の製造方法により製造された色素増感型太陽電池用基材に用いられた基材と同様であるのでここでの説明は省略する。
(b)第2電極層
本発明における第2電極層は、上記対向基材上に形成されたものであり、色素増感型太陽電池用基材に形成された第1電極層と対向する電極である。
このような第2電極層を形成する材料としては、導電性に優れたもので、かつ、電解質に対する腐食性がないものであれば特に限定はされないが、光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れているものであることが好ましい。また、第2電極層と対向する電極である第1電極層を形成する材料の仕事関数等を考慮して材料を選択することが好ましい。
なお、具体的に第2電極層を形成する際に使用可能な材料に関しては、上記「A.色素増感型太陽電池の製造方法 4.電極基材形成工程」の中に記載した第1電極層と同様なのでここでの説明は省略する。
このような第2電極層は、単層からなる場合であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用い、積層されてなる場合であってもよい。例えば、図3に示すように、矢印の方向から光が入射する場合、第1電極層30として透明電極を用い、さらに、この第1電極層30と対向する電極である第2電極層31として、Ptを蒸着した層31aおよびITOからなる層31bを積層したものを用いる場合を例として挙げることができる。
さらに、第2電極層の膜厚としては、単層からなる電極層の場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1〜500nmの範囲内、その中でも、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。
3.電解質層形成工程
本発明における電解質層形成工程は、上記光電変換層と前記第2電極層との間に電解質層を形成する工程である。
このような本工程で形成される電解質層は、光電変換層および第2電極層間に位置し、光電変換層により伝導された電荷が第1電極層および第2電極層を介して、光電変換層へ輸送される際の輸送を行うものである。したがって、本工程により形成される電解質層は、このような機能を有するものであれば特に限定はされず、固体状、ゲル状、液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよい。
このような電解質層において、例えば、ゲル状とした場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであっても特に限定はされない。物理ゲルは物理的な相互作用で室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
さらに、本工程により電解質層を形成する際、その膜厚としては、特に限定はされないが、光電変換層内に充填されて電解質層が形成されることから、光電変換層の膜厚も含めて2μm〜100μmの範囲内、その中でも、2μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも膜厚が薄ければ光電変換層と第2電極層と接触しやすくなるため短絡の原因となり、上記範囲よりも膜厚が厚ければ内部抵抗が大きくなり性能低下につながるからである。
上述したように電解質層の形成方法としては、電解質層の形成に用いる電解質層形成用塗工液を、色素増感型太陽電池用基材上に形成された介在層上に塗布し、乾燥させることにより形成する塗布法、または、本工程の前に、色素増感型太陽電池用基材と第2電極層とを、光電変換層の介在層と第2電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用塗工液を注入することにより、電解質層を形成する注入法等を挙げることができる。以下、電解質層の形成方法について、両方の場合に分けて説明する。
(a)塗布法
まず、介在層上に、電解質層を形成する電解質層形成用塗工液を塗布し、固化等させることにより電解質層を形成する塗布法について説明する。このような形成方法により、主に固体状の電解質層を形成することができる。
このような塗布法において、酸化物半導体層形成用塗工液の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。
また、塗布法により電解質層を形成する場合、電解質層を形成する電解質層形成用塗工液としては、少なくとも酸化還元対電解質および酸化還元対電解質を保持する高分子を有するものであれば特に限定はされない。
具体的に、酸化還元対電解質としては、一般的に電解質層において用いられているものであれば特に限定はされない。具体的には、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。例えば、ヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、LiI、NaI、KI、CaI等の金属ヨウ化物と、Iとの組合せを挙げることができる。さらに、臭素および臭化物の組み合わせとしては、LiBr、NaBr、KBr、CaBr等の金属臭化物と、Brとの組合せを挙げることができる。
さらに、上記酸化還元対電解質を保持する高分子としては、CuI、ポリピロール、ポリチオフェン等の正孔輸送性の高い導電性の高分子を用いることが好ましい。
その他に、添加剤として架橋剤、光重合開始剤等が含有しているものであってもよい。このような添加剤が含有した電解質層形成用塗工液の場合には、電解質層形成用塗工液を塗布した後、活性光線を照射し硬化させることにより、固体状の電解質層を形成することができる。
(b)注入法
次に、電解質層を形成する際に用いる電解質層形成用塗工液を、介在層および第2電極層間に注入して、電解質層を形成する注入法について説明する。
このような注入法を用いることにより、液体状、ゲル状および固体状の電解質層を形成することができる。例えば、ゲル状に形成する場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであっても特に限定はされない。物理ゲルは物理的な相互作用で室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
注入法により電解質層を形成する場合の本発明の色素増感型太陽電池の製造方法の一例について図2を用いて説明する。まず、透明基材20上に透明電極21、酸化物半導体層22bおよび介在層22aが形成された色素増感型太陽電池用基材23と、第2電極層24が形成された対向基材25とを準備し、図2(a)に示すように、介在層22aおよび第2電極層24が所定の間隙を有して対向するように、色素増感型太陽電池用基材23および対向基材25を配置する。
次に、電解質層の形成に用いる電解質層形成用塗工液を、図2(b)に示すように、介在層22aおよび第2電極層24間に形成された間隙に注入する。これにより、図2(c)に示すように、介在層22aおよび第2電極層24間に、電解質層26を形成することができる。また、このような注入法により形成された電解質層が特に液体状またはゲル状である場合には、溶媒の揮発、電解質層の流失等を防止するため、さらに、図2(d)に示すように、有機ポリマー27等で封止することにより色素増感型太陽電池を製造することができる。
このような注入法により電解質層を形成する場合、電解質層を形成する電解質層形成用塗工液としては、少なくとも酸化還元対電解質を有するものであれば特に限定はされないが、形成される電解質層をゲル状とする場合には、さらに、ゲル化剤が含有されたものとする。例えば、物理ゲルの場合は、ゲル化剤としてポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート等を挙げることができる。また、化学ゲルの場合は、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系等を挙げることができる。
なお、酸化還元対電解質は、上述した塗布法において記載したものと同様なのでここでの説明は省略する。
このような注入法により電解質層を形成する場合に、介在層および第2電極層間に形成された間隙に、電解質形成用塗工液を注入する方法としては、容易に、塗工液を注入させることができる方法であれば特に限定はされないが、例えば、毛細管現象を利用して注入させる方法を用いることができる。
また、注入法により、電解質層形成用塗工液を注入した後、例えば、温度調整、紫外線照射または電子線照射等を行い、二次元または三次元の架橋反応を生じさせることによりゲル状さらには固体状の電解質層を形成することができる。
C.色素増感型太陽電池用基材
次に、色素増感型太陽電池用基材について説明する。本発明の色素増感型太陽電池用基材は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された酸化物半導体層とを備えたものであって、上記酸化物半導体層中に上記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ上記酸化物半導体層中における上記金属元素の濃度が、上記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とするものである。
本発明においては、上記領域においても、上記第1電極層を構成する金属元素が検出されることから、色素増感型太陽電池の集電効率を向上させることができるという利点を有する。
本発明においては、例えば、「4.電極基材形成工程」において記載した第1実施態様、第3実施態様、および第4態様において、下地第1電極層形成用塗工液等を用いるWetコートを行っていることから、多孔質体である酸化物半導体層に上記塗工液が浸入することができ、その結果、上記酸化物半導体層中に上記第1電極層を構成する金属元素が存在する色素増感型太陽電池用基材を得ることができるのである。さらに、上記Wetコートにおいては、上記塗工液が上記第1電極層側から侵入することから、上記酸化物半導体層中における上記金属元素の濃度が、上記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少し、その結果、上記金属元素の濃度勾配を有した酸化物半導体層を備えた色素増感型太陽電池用基材を得ることができるのである。
なお、上記酸化物半導体層に第1電極層を構成する金属元素が存在しているか否かについては、上記色素増感型太陽電池用基材の断面について、電子線をプローブとして特定したい金属元素の特性X線強度を二次元でマッピングすることにより判断することができる。具体的には、日本電子社(JEOL)製のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により判断することができる。
また、上記金属元素の濃度勾配については、上記EPMAにより得られる断面元素マッピング図の縦方向(断面垂直方向)の検出強度プロファイルにより判断することができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池用基材において、上記酸化物半導体層は、光電変換層を構成し、金属酸化物半導体微粒子を有する多孔質体であり、その表面には色素増感剤が担持されており、光照射により上記色素増感剤から生じた電荷を伝導する働きを有するものである。
特に、上記光電変換層は、上記第1電極層上に形成された酸化物半導体層と、上記酸化物半導体層よりも空孔率が高い介在層とを有することが好ましい。以下、上記光電変換層が上記介在層を有している場合について説明する。
上述したように、上記色素増感型太陽電池用基材の製造方法においては、歩留まり良く色素増感型太陽電池用基材を製造することができるので、このような製造方法により製造された色素増感型太陽電池用基材を用いて色素増感型太陽電池を作製すれば、色素増感型太陽電池の歩留まりの向上に効果を有する。
このような本発明の色素増感型太陽電池用基材において、光電変換層は、第1電極層上に、金属酸化物半導体微粒子を有する多孔質体として形成され、その表面には色素増感剤が担持されており、光照射により前記色素増感剤から生じた電荷を伝導するものである。また、このような光電変換層は、酸化物半導体層および介在層を有しているが、上述した色素増感型太陽電池用基材の製造方法では、介在層形成用塗工液および酸化物半導体層形成用塗工液において、両者に含有された金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が異なることから、光電変換層は、空孔率が異なる2層から少なくともなっている。具体的には、介在層形成用塗工液の方が、酸化物半導体層形成用塗工液よりも、金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が低いので、介在層の方が空孔率が高い。
このように光電変換層は、空孔率の違いにより少なくとも上記酸化物半導体層および上記介在層の2層からなるものとしているが、酸化物半導体層および介在層以外にも必要に応じて、これら2層と異なる空孔率を有する部材を、上述した色素増感型太陽電池の製造方法により形成するようにしてもよい。しかしながら、コスト等の観点から、酸化物半導体層および介在層の2層からなるものであることが好ましい。
具体的に、介在層の空孔率としては、25%〜65%の範囲内であることが好ましく、中でも、30%〜60%の範囲内であることが好ましい。上記範囲の空孔率を有する介在層であれば、このような介在層を介して形成された酸化物半導体層において、耐熱基板に対して良好な密着性を得ることができ、さらに、耐熱基板に対して良好な剥離性を有するものとすることができるので、精度良く色素増感型太陽電池を製造することができる。また、本発明の色素増感型太陽電池用基材を用いて製造される色素増感型太陽電池において、介在層と第2電極層間に電解質層を形成する際、上記範囲の空孔率を有する介在層であれば、電解質層の形成に使用する電解質層形成用塗工液が介在層を経て酸化物半導体層にまで含浸しやすくなるため、多孔質体である光電変換層の細孔に十分に電解質層が入り込んで、両者の接触面積を十分に確保することができるといった利点を得ることができる。
さらに、酸化物半導体層の空孔率としては、具体的には、10%〜60%の範囲内であることが好ましく、中でも、20%〜50%の範囲内であることが好ましい。上記範囲の空孔率を有する酸化物半導体層であれば、その細孔には、充分な量の色素増感剤を担持させることができ、色素増感型太陽電池として用いられた際に、色素増感剤から生じた電荷を第1電極層に伝導する光電変換層として十分に機能させることができるからである。
なお、本発明における空孔率とは単位体積当たりの金属半導体微粒子の非占有率のことを示す。上記空孔率は、光電変換層の各々の単位面積当たりの重量および金属酸化物微粒子の比重から計算により算出された結果に基づいて規定した。例えば、介在層、酸化物半導体層とも同じ金属酸化物半導体微粒子を用いた場合であり、介在層のみの空孔率を求める場合には、まず、両方の部材を併せた重量および膜厚を求めた後、酸化物半導体層のみの重量および膜厚を求める(これは、酸化物半導体層のみを別途形成することにより求める。)。この結果から、介在層のみの重量および膜厚を算出し、介在層の単位面積当たりの重量を求め、これを金属酸化物半導体微粒子の比重で割ることにより、介在層の空孔率を算出することができる。
また、光電変換層の膜厚としては、1μm〜100μmの範囲内、その中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、光電変換層自体の膜抵抗が小さく、また、光電変換層によって十分に光吸収が行われるからである。
さらに、光電変換層における酸化物半導体層と、介在層との膜厚比は、上述した「A.色素増感型太陽電池用基材の製造方法 3.焼成工程」の中に記載したものと同様なのでここでの説明は省略する。
その他、本発明の色素増感型太陽電池用基材に関しては、上述した「A.色素増感型太陽電池用基材の製造方法」の中で記載したものと同様なので、ここでの説明は省略する。
D.色素増感型太陽電池
最後に、本発明の色素増感型太陽電池について説明する。本発明の色素増感型太陽電池は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された酸化物半導体層と、上記酸化物半導体層上に形成された介在層とを備えた色素増感型太陽電池用基材と、対向基材と、上記対向基材上に形成された第2電極層とを備えた対電極基材とを有し、上記介在層と上記第2電極層とが対向するように設置され、上記介在層と上記第2電極層との間に電解質層を備えた色素増感型太陽電池であって、上記酸化物半導体層中に上記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ上記酸化物半導体層中における上記金属元素の濃度が、上記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とするものである。
本発明においては、上記領域においても、上記第1電極層を構成する金属元素が検出されることから、色素増感型太陽電池の集電効率を向上させることができるという利点を有する。なお、上記酸化物半導体層に第1電極層を構成する金属元素が存在しているか否かについては、上述した「C.色素増感型太陽電池用基材」と同じ方法であるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の色素増感型太陽電池について図面を用いて具体的に説明する。図4は本発明の色素増感型太陽電池の一例を示した概略断面図である。図4に示すように、矢印で示す光が入射する側から、透明基材41と、さらに前記透明基材41表面に形成された透明電極42と、光電変換層43とが形成された色素増感型太陽電池用基材44が用いられている。光電変換層43は、透明電極42の光が入射する方向と反対側の表面に形成された酸化物半導体層43aと、さらに、酸化物半導体層43aの光が入射する方向と反対側の表面に形成された介在層43bとからなっている。
このような色素増感型太陽電池用基材44においては、介在層43bの方が、酸化物半導体層43aよりも空孔率が高いことから、光電変換層43の介在層43b側に電解質層45を形成する際、介在層43bから酸化物半導体層43aへと、その細孔に電解質層45が入り込みやすくなるため、光電変換層43と電解質層45との接触面積を十分に確保することができる。
さらに、上記電解質層45の光の入射方向と反対側の表面には、上記透明電極42と対向する電極である対向電極46および対向基材47が設けられている。
このような色素増感型太陽電池においては、色素増感剤から生じた電荷を利用して光電流を得ているが、一般的に、色素増感剤から生じる電荷としては電子を挙げることができる。以下、色素増感剤から生じた電荷を電子として、色素増感型太陽電池の原理について説明する。まず、図4に示す矢印の方向から光が入射すると、光電変換層43に担持された色素増感剤が光を吸収し励起状態へと移行する。励起状態にある色素増感剤は電子を発生させ、生じた電子は、光電変換層43に渡される。さらに、透明電極42に接続されたリード線48を通じて、対向電極46に運ばれる。これにより光電流を得ることができる。色素増感剤は、生じた電子を光電変換層43に渡すことにより酸化される。また、生じた電子は、対向電極46に移動した後、電解質層45内に存在する酸化還元対であるI/I のうちI を還元しIとする。さらに、Iは酸化した色素増感剤を還元させることにより基底状態に戻すことができる。
このような色素増感型太陽電池において、各部材に関することは、上述した「A.色素増感型太陽電池用基材の製造方法」、「B.色素増感型太陽電池の製造方法」および「C.色素増感型太陽電池用基材」に記載したものと同様なのでここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(介在層形成用層の形成)
介在層形成用塗工液として一次粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル社製P25)1重量%、主成分がポリメチルメタクリレートであるアクリル樹脂(分子量25000、ガラス転移温度105℃)(三菱レーヨン社製BR87)1重量%となるようにホモジナイザーを用いてメチルエチルケトンおよびトルエンにアクリル樹脂を溶解させた後、TiO微粒子を分散させることにより介在層形成用塗工液を作製した。この塗工液を耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板(厚み0.7mm)上にワイヤーバーにて塗工し乾燥させた。
(酸化物半導体層形成用層の形成)
酸化物半導体層形成用塗工液として一次粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル社製P25)37.5重量%、アセチルアセトン1.25重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.88重量%となるようにホモジナイザーを用いて水およびイソプロピルアルコールに溶解および分散させてスラリーを作製した。上記介在層形成用層が形成された基板上にドクターブレードにて前記スラリーを塗布後、室温下にて20分放置の後100℃、30分間乾燥させた。その後、電気マッフル炉(デンケン社製P90)を用い500℃、30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、多孔質体として形成された介在膜および酸化物半導体膜を得た。また、焼成により介在膜中にアクリル樹脂および酸化物半導体膜中にポリエチレングリコールが残存していないことを光電子分光法により確認できた。したがって焼成を行うことによってアクリル樹脂およびポリエチレングリコールは熱分解され除去することができた。またこのときガラス基板上に介在膜および酸化物半導体膜は剥離することなく良好に形成されていた。
(第1電極層の形成)
基板上に介在膜および酸化物半導体膜を形成した後、イオンプレーティング法により厚さ200nmとなるようにITO膜を形成した。このときのITO膜の表面抵抗は10Ω/□であった。
(転写工程)
第1電極層であるITO膜を形成した後、基材として用意したポリエチレンテレフターレトフィルム(東洋紡社製、A4300、厚さ100μm)上にアイオノマー樹脂からなる熱着融着性フィルムのサーリン(デュポン社製、厚さ50μm)を重ね、さらに上記、ITO膜、酸化物半導体膜および介在膜が形成された基板を順次載せた後、真空ラミネーターにより120℃、20分間圧着させることによりポリエチレンテレフタレートフィルム基材上にITO膜、介在膜および酸化物半導体膜を形成した。その後、介在膜および酸化物半導体膜を1cm×1cmのサイズにトリミングした。
(吸着用色素溶液の調整)
色素増感剤としてルテニウム錯体(小島化学株式会社RuL2(NCS)2)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ、色素増感剤が溶解した吸着用色素溶液を得た。
(色素吸着)
上記吸着用色素溶液中に介在膜および酸化物半導体膜が形成された基材を浸漬して、攪拌下にて40℃、3時間の条件にて放置した。このようにして色素吸着した介在膜および酸化物半導体膜である介在層および酸化物半導体層を有する色素増感型太陽電池用基材を作製した。
(電解質調整)
電解質層を形成する電解質層形成用塗工液を以下のように調整した。メトキシアセトニトリルを溶媒とし、濃度0.1mol/lのヨウ化リチウム、濃度0.05mol/lのヨウ素、濃度0.3mol/lのジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、濃度0.5mol/lのターシャリーブチルピリジンを溶解させたものを電解液とした。
(素子の形成)
上記酸化物半導体層を形成したフィルム基材と、対向基材を厚さ20μmのサーリンによって貼り合せ、その間に電解質層形成用塗工液を含浸させたものを素子とした。対向基材としては、膜厚150nmを有し、表面抵抗7Ω/□である、ITOスパッタ層を有する対向フィルム基材上に膜厚50nmの白金膜をスパッタリングにて付与したものを用いた。
(特性評価)
作製した素子の評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm)を光源として、色素吸着させた酸化物半導体層を有する基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流13.3mA/cm、開放電圧660mV、変換効率4.9%であった。
(実施例2)
上記実施例1における介在層形成用層の形成において、アクリル樹脂を主成分がエチルメタクリレートであるアクリル樹脂(分子量180000、ガラス転移温度20℃)(三菱レーヨン社製BR112)とした以外は実施例1と同様に色素増感型太陽電池を作製した。
その結果、短絡電流12.8mA/cm、開放電圧660mV、変換効率4.8%であった。
(実施例3)
上記実施例1における介在層形成用層の形成において、アクリル樹脂を主成分がターシャルブチルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートの共重合体からなるアクリル樹脂(分子量230000、ガラス転移温度230℃)(三菱レーヨン社製BR90)とした以外は実施例1と同様に色素増感型太陽電池を作製した。
その結果、短絡電流11.8mA/cm、開放電圧670mV、変換効率4.6%であった。
(実施例4)
上記実施例1における介在層形成用層の形成において、P25の含有量を5重量%、アクリル樹脂BR87の含有量を5重量%となるように塗工液を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
その結果、短絡電流13.5mA/cm、開放電圧670mV、変換効率5.2%であった。
(実施例5)
上記実施例1における介在層形成用層の形成において、P25の含有量を9.1重量%、アクリル樹脂BR87の含有量を9.1重量%となるように塗工液を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
その結果、短絡電流13.2mA/cm、開放電圧660mV、変換効率4.9%であった。
(実施例6)
上記実施例1における第1電極層の形成を、以下の方法により行ったこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
(第1電極層の形成)
基板上に介在膜及び酸化物半導体膜を形成した後、下地第1電極層形成用塗工液として、純水内に硝酸インジウム0.01mol/l、塩化スズ0.005mol/l、ボラン−ジメチルアミン錯体(DMAB)0.2mol/lを溶解した塗工液を用意し、この塗工液に、酸化半導体膜および介在膜が形成された基材を1分間浸漬させた。その後、350℃炉内で30分間焼成を行った。
次に、上側第1電極層形成用塗工液としてエタノールに塩化インジウム0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意した。その後、上記焼成を行った基板を、酸化物半導体膜を上向きにし、ホットプレート(400℃)上へ設置し、この加熱された酸化物半導体膜上に、上述した上側第1電極層形成用塗工液を超音波噴霧器により噴霧し、第1電極層であるITO膜を形成した。
このようにして得られた素子の特性評価を行った結果、短絡電流15.8mA/cm、開放電圧690mV、変換効率5.5%であった。
(実施例7)
上記実施例1における第1電極層の形成を、以下の方法により行ったこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
(第1電極層の形成)
基板上に介在膜及び酸化物半導体膜を形成した後、第1電極層形成用塗工液としてエタノールに塩化インジウム0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意した。その後、基板を、酸化物半導体膜を上向きにし、ホットプレート(400℃)上へ設置し、この加熱された酸化物半導体膜上に、上述した第1電極層形成用塗工液を超音波噴霧器により噴霧し、第1電極層であるITO膜を形成した。
このようにして得られた素子の特性評価を行った結果、短絡電流14.2mA/cm、開放電圧680mV、変換効率5.2%であった。
(比較例1)
介在層を設けない以外は、上記実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
この場合、耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板と酸化物半導体膜とが強固に密着してしまい熱融着性樹脂によってフィルム基材上へ転写させることはできなかった。
(比較例2)
介在層において樹脂を全く含まないものとした以外は、上記実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を製造した。
介在層 形成用塗工液を塗布した際に膜にならず、耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板との密着性がなく、電池の作製ができなかった。
(比較例3)
介在層としてTiOを含まないものとし、さらに、BR87を9.1重量%とした介在層形成塗工液を用いて介在層形成用層を形成した以外は、上記実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
この場合、焼成後の酸化物半導体膜と耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板との密着性なく、次の工程に移行することができなかった。
(比較例4)
介在層としてTiOを含まず、BR112を9.1重量%とした介在層形成用塗工液を用いて介在層形成用層を形成した以外は、上記実施例2と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
この場合、焼成後の酸化物半導体膜と耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板との密着性なく、次の工程に移行することができなかった。
(比較例5)
介在層としてTiOを含まず、BR90を9.1重量%とした介在層形成用塗工液を用いて介在層形成用層を形成した以外は、上記実施例3と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
この場合、焼成後の酸化物半導体膜と耐熱基板として用意した無アルカリガラス基板との密着性なく、次の工程に移行することができなかった。
本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法の一例を示した工程図である。 本発明の色素増感型太陽電池の製造方法の一例を示した工程図である。 本発明の色素増感型太陽電池の製造方法により製造された色素増感型太陽電池の一例を示した概略断面図である。 本発明の色素増感型太陽電池の一例を示した概略断面図である。 本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法の他の例を示した工程図である。 本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法の他の例を示した工程図である。 本発明の色素増感型太陽電池用基材の製造方法の他の例を示した工程図である。
符号の説明
1 … 耐熱基板
2 … 介在層形成用層
2´ … 介在膜
3 … 酸化物半導体層形成用層
3´ … 酸化物半導体膜
4 … 透明電極
5 … 透明基材
6 … 酸化物半導体膜を備えた耐熱基板
7 … 下地第1電極層形成用塗工液
8 … 下地第1電極層を備えた耐熱基板
9 … スプレー装置
10 … 上側第1電極層形成用塗工液

Claims (7)

  1. 耐熱基板上に有機物および金属酸化物半導体微粒子を含有する介在層形成用塗工液を塗布し、固化させて介在層形成用層を形成する介在層形成用層形成工程と、
    前記介在層形成用層上に、前記介在層形成用塗工液よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高い酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、
    前記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成することにより多孔質体とし、介在膜および酸化物半導体膜を形成する焼成工程と、
    前記酸化物半導体膜上に、第1電極層および基材を設ける電極基材形成工程と
    を有することを特徴とする色素増感型太陽電池用基材の製造方法。
  2. 前記電極基材形成工程は、
    第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した下地第1電極層形成用塗工液を、前記酸化物半導体膜に接触させることにより、前記酸化物半導体膜の内部または表面に下地第1電極層を設ける溶液処理工程と、
    前記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける上側第1電極層形成工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用基材の製造方法。
  3. 前記上側第1電極層形成工程は、前記下地第1電極層を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した上側第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、前記下地第1電極層上に上側第1電極層を設ける工程であることを特徴とする請求項2に記載の色素増感型太陽電池用基材の製造方法。
  4. 前記電極基材形成工程は、前記酸化物半導体膜を金属酸化物膜形成温度以上の温度に加熱し、第1電極層を構成する金属元素を有する金属塩または金属錯体が溶解した第1電極層形成用塗工液と接触させることにより、前記酸化物半導体膜上に第1電極層を設ける工程を有することを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用基材の製造方法。
  5. 前記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された色素増感型太陽電池用基材の製造方法を用い、前記色素増感型太陽電池用基材を形成する色素増感型太陽電池用基材形成工程と、
    前記色素増感型太陽電池用基材に形成された第1電極層および基材と対向する、第2電極層および対向基材を設ける対電極基材形成工程と、
    多孔質体の前記介在膜および酸化物半導体膜の細孔に色素増感剤が担持されてなる介在層および酸化物半導体層を少なくとも有する光電変換層と前記第2電極層との間に電解質層を形成する電解質層形成工程と
    を有することを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法。
  6. 基材と、前記基材上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成された酸化物半導体層とを備えた色素増感型太陽電池用基材であって、
    前記第1電極層が下地第1電極層と上側第1電極層とを有し、前記下地第1電極層と前記上側第1電極層とが異なる金属元素から構成されており、
    前記酸化物半導体層中に前記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ前記酸化物半導体層中における前記金属元素の濃度が、前記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とする色素増感型太陽電池用基材。
  7. 基材と、前記基材上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成された酸化物半導体層とを備えた色素増感型太陽電池用基材と、
    対向基材と、前記対向基材上に形成された第2電極層とを備えた対電極基材と、
    を有し、
    前記酸化物半導体層と前記第2電極層とが対向するように設置され、前記酸化物半導体層と前記第2電極層との間に電解質層を備えた色素増感型太陽電池であって、
    前記第1電極層が下地第1電極層と上側第1電極層とを有し、前記下地第1電極層と前記上側第1電極層とが異なる金属元素から構成されており、
    前記酸化物半導体層中に前記第1電極層を構成する金属元素が検出され、かつ前記酸化物半導体層中における前記金属元素の濃度が、前記第1電極層側表面から反対側表面に向かって減少していることを特徴とする色素増感型太陽電池。
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