特許文献1〜3等に開示されているように、ロードセルに加えて、A/D変換器および処理制御部(マイクロプロセッサ)などを有して各種の不正確さをデジタル補償できる高精度なデジタルロードセル(いわゆるデジタルロードセル:以下、DLCと略す)を複数備えた計量装置は既に知られており、例えばトラックスケールやタンクスケール等に用いられている。一般に、この種の計量装置では、主制御部としてのコントローラや、表示部、操作部などを有する指示計に、各DLCが、RS−485、RS−422等のシリアルで共通の通信回線を介して接続されている。前記DLCのロードセルは、起歪体に歪みゲージなどの荷重検出素子を設けてなる荷重(質量)検出部であり、計量値をデジタルデータとして通信回線を介して指示計のコントローラに出力し、指示計において、これら複数のデジタル計量値情報に基づき合計するなど演算して計量値を表示(出力)する。
なお、各DLCとコントローラとは、それぞれ個別の専用通信回線を用いると、それだけ設備コストが高くなるので、一般に、一つの共通した通信回線に、複数(例えば8台)のDLCが接続される。
ここで、指示計のコントローラから各DLCへの通信は、設置時に設定された各DLC固有の通信識別用のアドレス(例えば1〜8)を指定することで、各DLCに対して個別に処理を行うようになっている。しかし、計量装置を設置したばかりの状態では、各DLCに通信識別用の固有のアドレス(通信用の固有識別番号)が設定されていない未設定状態である(より具体的には、同じ初期アドレス値、例えば「1」が設定されている)ため、まず、各DLCに対してアドレスの設定作業が行われる。
ところで、このDLCも、コンピュータからなるコントローラに接続された周辺機器であるデバイス装置の一種である。一般的に、コントローラに対して共通の通信回線を介して接続された複数のデバイス装置に対してアドレスを設定する(割り振る)手法としては、予め各デバイス装置にアドレス指定用のディップスイッチ等を組みつけておき、設置後に前記ディップスイッチを人が操作して、このディップスイッチで指定された値をアドレスとして設定することが行われている。なお、このアドレス設定時に、操作する人は、各デバイス装置に対してアドレスが重ならないように注意しながら、ディップスイッチを切り換えなければならない。
ところが、DLCでは、防塵機能や防湿機能、急激な温度変動の防止機能などを維持して、高精度な計量を実現するために、ロードセル、A/D変換器、処理制御部を、これらを収容する筐体の内部に埋め込む場合が多く、前記のようなディップスイッチを筐体の内部に設けても、人が手動で操作できないので、意味がない。そのため、一般にDLCには、アドレス指定用のディップスイッチが設けられておらず、ディップスイッチによりアドレスを設定できる構造とはなっていない。
したがって、この種の計量装置の設置時には、共通の通信回線に、アドレスが設定されていない複数のDLCが接続されることとなり、このままの状態では、各DLCをコントローラが識別できない。したがって、複数のDLCを備えた計量装置では、DLC固有の製造識別番号(例えば9桁であり、DLC毎に固有の番号がつけられる)を利用して、アドレスを設定することが行われていた。
アドレスの設定作業は、具体的には以下のようにして行われていた。
まず、DLCの設置時に、設置作業者が、実際に設置するDLCの筐体等に貼り付けられた銘板に記載されている製造識別番号を目視して用紙などに書き写し、この製造識別番号を指示計に手動で入力する。そして、各DLCの製造識別番号を全て入力した状態で、所定のボタンを押したり、所定操作を行ったりすることで、コントローラによって、前記製造識別番号を利用して、アドレスの設定作業(割付作業)が行われる。
ここで、各DLCは、そのDLCの製造識別番号がDLCの処理制御部などに設けられた記憶部に記憶された状態で出荷されている。このため、共通の通信回線に複数のDLCが接続された状態で、主制御部から、DLCの製造識別番号を指定して送信要求し、対応するDLCが存在していると、その1台のDLCのみが応答することとなる。したがって、計量装置の設置時に、設置作業者により各DLCの製造識別番号が入力されることで、コントローラは、まず、これらのDLCの製造識別番号を利用して、各DLCと個別に通信を行い、そのときに、各DLCに対して、通信回線上で通信識別用のアドレス(例えば8台のDLCに対してアドレス1〜8)を割り当てる。そして、これ以降はそのアドレスを利用して、各DLCと個別に通信する。
なお、DLCの製造識別番号をそのまま、通信識別用のアドレスとして使用することも可能ではあるが、前記製造識別番号は一般にその数値が極めて大きい(桁数が大きい)ため、この製造識別番号を通信識別用のアドレスとして使用すると、値の小さいアドレスを用いた場合と比較して、通信による処理能力が低下してしまう。したがって、一般には、数値の小さい(桁数の少ない)アドレスを各DLCに対して割り振り、通信では、このアドレスを指定して各DLCを呼び出す。
特開平7−229781号公報
特開平8−43183号公報
特開2003−35592公報
しかしながら、上記従来の計量装置では、設置時において、設置作業者等により各DLCの製造識別番号(例えば、9桁の製造識別番号)を手動で入力する作業が必要となり、多くの手間や時間がかかる問題があった。
また、このように各DLCの製造識別番号を設置作業者等が入力するに際し、前もって、DLCの銘板に書かれている製造識別番号を目視して用紙などに記録しておかなければならないが、設置作業の前に前記製造識別番号の記録を行うことを忘れてしまったり、記録した用紙を紛失したりして、設置後に製造識別番号の確認作業が必要となる場合がある。しかし、DLCが、物理的に人が入れない場所や環境に設置されている場合など、設置状況に起因して製造識別番号の目視動作を行うために、計量装置の分解作業などの多大な作業を別途に行わなければならない場合が少なくなく、そのために、多大な手間や時間がかかるとともに、別途に多額の費用がかかることがあり、また、目視作業を実質的に行えない場合もある。
さらに、設置作業者等が製造識別番号を目視して記録する際に、製造識別番号を誤って読み取ったり記録したりすることもあり、この場合には、指示計に入力した製造識別番号自体が間違っているので、この後にコントローラがDLCを認識できない難点がある。さらに、この際に、設置作業者等がこの誤りに気づいた場合でも、再度の目視、記録作業が必要となって、多くの手間や時間がかかってしまう。
このように、従来においては、人によってDLCの製造識別番号を目視、記録する作業などに多くの手間や時間がかかっており、また、製造識別番号を誤認する場合もあったため、前記目視、記録作業を省きながら、各DLCに対してアドレスを設定できる方法が望まれている。この方法の1つとして、以下の方法がある。
共通の通信回線に対してDLCが1つだけ接続されている場合は、通信回線を介して全てのDLCに対して製造識別番号の送信要求をした際でも、接続されているDLCが1台だけであるので、そのDLCからのみ製造識別番号が送信される。したがって、コントローラ側でこのDLCの製造識別番号だけを受信して、その製造識別番号に対応するDLCに対して通信回線上で固有の通信識別用のアドレスを割り当てることができる。したがって、この作業を、DLCの台数分だけ繰り返すことによって、全てのDLCに対して固有の通信識別用のアドレスを割り当てる(設定する)ことが可能である。
しかし、この方法を採用しようとすると、認識させたいDLC以外のDLCを全て一時的に通信回線から取外し、その後、指示計を操作するなどして、前記認識させたいDLCをコントローラにより認識させてアドレスを設定するという作業を、DLCの台数分だけ繰り返さなければならず、この作業でも極めて多大な手間と時間とが必要となる。
本発明は上記課題を解決するもので、複数のDLC(デジタルロードセル)が共通の通信回線を介してコントローラに接続された計量装置において、多くの手間や時間をかけることなく、全てのDLCに対してアドレスを良好に設定することができる計量装置のアドレス設定方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明の計量装置のアドレス設定方法は、ロードセル、A/D変換器、処理制御部を有する複数のデジタルロードセルを備え、これらのデジタルロードセルが共通の通信回線を介してコントローラに接続された計量装置において、各デジタルロードセルに対して通信識別用のアドレスを設定する計量装置のアドレス設定方法であって、各デジタルロードセルが乱数列および固有識別番号を記憶または生成する手段を有しており、各デジタルロードセルは、コントローラからの要求コマンドを受信してから、前記乱数列から選択した数値に対応した時間後に、デジタルロードセルの固有識別番号情報をコントローラに対して応答し、前記応答したデジタルロードセルにおいて、先に他のデジタルロードセルが応答したこと、または応答した自己の固有識別番号が受け入れられなかったことを検知した場合に、当該デジタルロードセルは、この要求コマンドに対する応答を中止し、コントローラは、デジタルロードセルの固有識別番号情報を受信し、この固有識別番号のデジタルロードセルに対して通信識別用のアドレスを設定して送信し、前記固有識別番号のデジタルロードセルは前記アドレスデータを受信して自己のアドレスとして取得することを特徴とする。
この方法によれば、各デジタルロードセルは、コントローラからの要求コマンドを受信した際に、乱数列から選択した数値に対応した時間後に、デジタルロードセルの固有識別番号を応答する。この場合に、応答したデジタルロードセルにおいて、先に他のデジタルロードセルが応答したこと(通信回線が半二重通信の場合)、または、コントローラから受信した信号がエラー状態であることが通知されて、要求コマンドに応答した自己の固有識別番号情報が受け入れられなかったこと(通信回線が全二重通信の場合)を検知した場合に、このデジタルロードセルは、要求コマンドに対する応答を中止するので、複数のデジタルロードセルからの応答タイミングが一致したり、近接したりして、応答信号が重なってコントローラが応答信号を良好に受け取れなくなることが最小限に抑えられる。そして、複数のデジタルロードセルからの応答信号が重ならなかった場合には、コントローラはデジタルロードセルの固有識別番号を得ることができるので、この固有識別番号を用いて通信識別用のアドレスを設定でき、また、この固有識別番号のデジタルロードセルは前記アドレスデータを受信して取得することができる。この方法により、設置作業者等は、上記アドレス設定動作を行わせるように指示(操作)する(または、電源投入時に実行するなどして、この指示を省くこともできる)だけで、従来行っていたような製造識別番号の目視作業や記録作業、デジタルロードセルの通信回線に対する分離作業や取付作業を行わなくても、アドレスの設定を自動でかつ良好に行わせることができる。
また、本発明のアドレス設定方法は、コントローラは、コマンド送信後に最も早く応答したデジタルロードセルの固有識別番号情報を受信して特定したときに、この固有識別番号のデジタルロードセルに対して通信識別用のアドレスを設定して送信し、前記固有識別番号のデジタルロードセルは前記アドレスデータを受信して自己のアドレスとして記憶し、前記アドレスを取得したデジタルロードセルは、その後のアドレス設定動作時のコントローラからのコマンドに応答しないことを特徴とする。
この方法によれば、アドレスを取得したデジタルロードセルは、その後のアドレス設定動作時のコントローラからのコマンドに応答しないので、デジタルロードセルがアドレスを取得すると、その分だけ、コントローラのコマンド送信後に応答するデジタルロードセルの数が少なくなることになり、この結果、デジタルロードセルからの応答信号が重なる可能性をより低減できて、より確実かつ迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。
また、本発明は、デジタルロードセルが、自己の固有識別番号に基づいて乱数列を初期化することを特徴とする。
この方法により、各デジタルロードセルは、そのデジタルロードセルに固有であり、他のデジタルロードセルとは異なる固有識別番号に基づいて乱数列を初期化するので、乱数列を初期化した際に、同じ乱数列となる可能性を最小限に抑えることができ、これにより、要求コマンドに対する応答タイミングが一致する可能性をさらに低減できて、より確実かつ迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。
また、デジタルロードセルの固有識別番号としては、このデジタルロードセル固有の製造識別番号を用いたり、このデジタルロードセルで計量した固有の計量値情報を用いて生成したりすることが好適である。
また、本発明は、デジタルロードセルから固有識別番号を送出するに際し、送出するコード列の最初の方にチェック用コードを送出することを特徴とする。
この方法により、デジタルロードセルから送出した固有識別番号をコントローラが受け取る際に、コード列の最初の方のチェック用コードを入力した時点で、エラーであるかどうかを判定できる。したがって、エラーであることをより早く判定できて、ひいては、より迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。
以上のように本発明によれば、各デジタルロードセルが、コントローラからの要求コマンドを受信してから、乱数列を用いて設定した時間後に、コントローラに対して自己の固有識別番号を応答すること、並びに、応答したデジタルロードセルにおいて、先に他のデジタルロードセルが応答したこと、または応答した自己の固有識別番号が受け入れられなかったことを検知した場合に、当該デジタルロードセルが、この要求コマンドに対する応答を中止することにより、複数のデジタルロードセルからの応答信号が重なって、コントローラが応答信号を良好に受け取れなくなることを最小限に抑えることができる。
また、コントローラが、コマンド送信後に最も早く応答したデジタルロードセルの固有識別番号情報を受信して特定し、このデジタルロードセルが、コントローラから送信されてきたアドレスを自己のアドレスとして記憶し、その後のアドレス設定動作時のコントローラからのコマンドに応答しないことにより、デジタルロードセルのアドレス設定作業を、手間をかけることなく、1台ずつ順に自動で、また、より確実かつ迅速に行うことができる。
これにより、設置作業者等は、従来行っていたような各デジタルロードセルの製造識別番号の目視作業や記録作業、デジタルロードセルの通信回線に対する分離作業や取付作業を行わなくても、アドレスの設定を自動でかつ良好に行わせることができ、多くの手間や時間を省くことができる。また、従来発生していたような、製造識別番号の見間違いや入力間違いも発生することがないので、信頼性が向上する。
また、デジタルロードセルが、自己の固有識別番号に基づいて乱数列を初期化することにより、乱数列を初期化した際に、同じ乱数列となる可能性を最小限に抑えることができて、より確実かつ迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。
また、デジタルロードセルの固有識別番号としては、このデジタルロードセル固有の製造識別番号を用いたり、このデジタルロードセルで計量した固有の計量値情報を用いて生成したりすることが好適である。特に、デジタルロードセルの固有識別番号として、固有の計量値情報を用いて生成した場合に、この計量値情報は、デジタルロードセルの設置後にデジタルロードセル自身の機能によって得られる情報であり、計量装置の製品出荷時に各デジタルロードセルに予め記憶させなくても済むので、計量装置の製品出荷時の手間を省くことができて、製造コストの低減化を図ることができる。つまり、固有識別番号として、このデジタルロードセル固有の製造識別番号を用いる場合には、計量装置の製品出荷時に、各デジタルロードセルに製造識別番号を付与し、かつこの製造識別番号を各デジタルロードセルに予め記憶させる作業が必要であるが、デジタルロードセルの固有識別番号として固有の計量値情報を用いて生成する場合には、このような作業を省くことができて、製造コストの低減化を図れる。
また、デジタルロードセルから固有識別番号を送出するに際し、送出するコード列の最初の方にチェック用コードを送出することにより、デジタルロードセルから送出した固有識別番号をコントローラが受け取る際に、受信信号がエラーであることをより早く判定できて、より迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態に係る計量装置のアドレス設定方法を、図面を参照しながら説明する。なお、図1は本発明の実施の形態に係る計量装置の概略構成を示し、図2は同計量装置におけるデジタルロードセルおよび指示計のブロック図を含めた構成を示す。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る計量装置では、8台のデジタルロードセル(以下、DLCと略す)1で、計量対象物が載せられる載台2を支持する構成とされている。各DLC1は、例えばRS−485等のシリアルで共通の通信回線3を介して、指示計4に接続されている。DLC1は何れも同じ構造であり、各DLC1と指示計4とは、以下のように構成されている。
図2に示すように、各DLC1は、筐体としてのケーシング5の中に、起歪体(図示せず)、この起歪体に貼着されたストレインゲージをブリッジ接続したブリッジ回路6,A/D変換器7,温度センサ8,処理制御部(マイクロプロセッサ)9a,通信コントローラ10a,通信ドライバレシーバ11aなどが収容されている。処理制御部9aは記憶部を有しており、この記憶部には、乱数列および固有識別番号としての各DLC1固有の製造識別番号を記憶している。外部からケーシング5内に給電された直流電源電圧は電源12aでDLC1の内部で必要な各種の電圧に変換されて各部に給電される。ストレインゲージのブリッジ回路6には、基準電源12bを介して励磁電圧が印加されている。ブリッジ回路6の出力電圧はアンプ13とローパスフィルタ14を介してA/D変換器7の被変換入力に印加されている。
A/D変換器7は処理制御部9aによって変換のタイミングが管理されており、A/D変換器7でデジタル変換された計量データは処理制御部9aに取り込まれる。温度センサ8はケーシング5の内部温度を検出するもので、ここではブリッジ回路6に近接して配置されており、温度データは処理制御部9aに取り込まれる。処理制御部9aに取り込まれた温度データはA/D変換器7から取り込んだ計量データの温度補正に使用される。処理制御部9aは通信コントローラ10aと通信ドライバレシーバ11aを介して通信回線3に接続されている。他のDLC1も同様に通信回線3に接続されており、すなわち、共通の通信回線3を介して、全てのDLC1と指示計4とが接続されている。
通信回線3を介してDLC1に接続されている指示計4には、以下の機能を有するコントローラ(システムコントローラ)15と、各種の設定入力動作を行うためのテンキーなどからなる操作入力部21と、各種のデータを表示する表示部(出力部)22などが設けられている。
コントローラ15は、通信ドライバレシーバ11b,通信コントローラ10b,処理制御部9b,秤演算データ処理部16,指示計インターフェース17などで構成されている。処理制御部9bは、通信コントローラ10bと通信ドライバレシーバ11bとを介して通信回線3に、各DLC1固有の通信識別用のアドレスを順に指定して計重値データを要求し、通信回線3を介して全てのDLC1から収集した計重値の和算値を秤演算データ処理部16で演算して指示計インターフェース17を介して出力するよう構成されている。
ところが、計量装置(指示計4および各DLC1)を設置したばかりの状態では、各DLC1に通信識別用の固有のアドレス(通信用固有識別番号)が設定されていない未設定状態である(より具体的には、同じ初期アドレス値、例えば「1」が設定されている)ため、各DLC1に対して以下に述べるアドレスの設定作業が行われる。
ここで、図3は、指示計4のコントローラ15の制御処理を示すフローチャート、図4は、DLC1におけるポーリングコマンドを受信した際の制御処理を示すフローチャート、図5(a)、(b)はそれぞれDLC1からの自己の固有識別番号の送信時における、コントローラ15に対するDLC1の応答信号のテキストフォーマットを示す図、図6はDLC1のアドレス設定コマンド受信時の制御処理を示すフローチャート、図7、図8はそれぞれDLC1における乱数を初期化する制御処理を示すフローチャートである。
なお、以下には基本的に、通信回線3(この実施の形態ではRS−485仕様)が2線式の半二重通信の場合を述べ、必要に応じて、通信回線3が4線式の全二重通信の場合を述べる。ここで、半二重通信の場合では、各DLC1の送信機(ドライバ)と受信機(レシーバ)とが同じ2本の線に接続されているので、自分の応答信号および他のDLC1の応答信号を各DLC1の受信機で検出できるよう接続されている。一方、全二重通信の場合では、送信機(ドライバ)と受信機(レシーバ)とが異なる線に接続されているので、各DLC1が、自分の応答信号および他のDLC1の応答信号は検出できない。したがって、全二重通信の場合では、DLC1からの応答信号がコントローラ15側で読み取れなかった場合には、コントローラ15からエラー信号が送出され、DLC1はこのエラー信号を受信することで、当該DLC1から先に送出した信号がコントローラ15側で受け取られなかったことを検知するようになっている。
まず、アドレスの設定作業の最初に、設置者等により、操作入力部21により所定の操作を行うなどして(或いはアドレスの自動設定する押釦等を操作入力部21に設けてこの押釦を押すなどしてもよい)、以下に述べるアドレスの自動設定作業の実行を指示する。
これにより、コントローラ15は、図3に示すように、アドレスを指定するためのアドレスカウンタADを1とする(初期化する)(ステップS1)とともに、DLC1の応答がない回数を検出するためのタイムアウトカウンタTOを0にして(ステップS2)初期化し、ポーリングコマンド(全てのDLC1に対して固有識別番号としての製造識別番号を要求するコマンド)を発行して開始する(ステップS3)。また、続いて、タイムアウトを検出する基準となるタイマをセットして(ステップS4)、コントローラ15側での通信回線3の監視を開始する(ステップS5)。
各DLC1は、図4に示すように、通信回線3を介してコントローラ15からのポーリングコマンドを受け取った際に、後述するアドレス受信フラグに基づいてアドレスを受信済みであるかを確認し(ステップS30)、アドレスを受信していなかった場合には、応答モードになり、乱数列から数値を選択し(すなわち、乱数を発生させて取得し(ステップS31)、自分の発生した乱数に従ったウェイト時間だけ待機状態(ステップS32〜S34)とする。この場合に、乱数列により設定される応答時間の間隔は、通信システムのエラー検出処理時間より大きく設定されている。例えば、通信回線3の通信速度が38.4kbpsであり、start=1bit,stop=1bit,parity=even,data=8byteの場合、1バイトデータの送出時間が0.29msであり、その周期でエラー検出が可能なので、たとえば0.5ms周期の時間を単位とした応答時間単位を設定する。また、最大8台のDLC1からの応答が考えられるため、例えば、その8倍の1〜64の乱数を発生させて、応答時間は0.5ms単位の0.5〜32msまでの離散値とし、例えばコマンド発行から100ms経過しても応答がない場合は、コントローラ15がタイムアウトとして処理する。なお、これ以上応答時間を長くすることも可能であるが、コマンド受信からの処理時間も考慮してこの程度が好ましい。
そのウェイト時間中、各DLC1は、通信回線3の信号を監視し(ステップS32)、次のステップS33において、他のDLC1の応答を感知した場合(半二重通信の場合)には、今回のポーリングコマンドに対する自己の応答モードを中止し、そのコマンドに対しては応答しない。また、通信回線3が信号を良好に読み取れないエラー状態となっていた場合、図3に示すように、コントローラ15は、所定時間経過後にポーリングコマンドの発行処理をやり直す(ステップS6、S8を介してステップS2まで戻り、再度、S3以降を実行する)。なお、通信回線3が、全二重通信の場合、コントローラ15は、エラー状態を検知した場合には、エラー状態であることを通知するエラー応答を送信する(ステップS7)ので、DLC1は、このエラー応答を受け取った場合には、今回のポーリングコマンドに対する自己の応答モードを中止しその要求コマンドに対しては応答しない。
通信エラーを発生していない状態で、前記数値に対応したウェイト時間が経過する(ステップS34)と、図4に示すように、DLC1は、CRCコード(チェックサムコード)を付加した自己の固有識別番号としての製造識別番号情報を作成してコントローラ15に対して応答し、この後も、通信回線3の信号を監視する(ステップS35〜S39)。すなわち、最初に待機時間が終了したDLC1が応答を開始することとなる。
なお、DLC1からの自己の固有識別番号を送信するに際し、この種のデータを送信する際には、図5(a)に示すように、スタートビットに続けて固有識別番号等のデータを送った後、最後にCRCコード(チェックサムコード)を送信することが一般的である。しかしながら、この場合には、似たような製造識別番号のデータ、例えば最下桁のみ違うデータが重なった場合、データの最後の方までエラー検出がされないことが考えられるので、エラー検出のタイミングが遅くなる。これに対処すべく、本実施の形態では、DLC1からの自己の固有識別番号の送信時の、コントローラ15に対するDLC1の応答信号のテキストフォーマットを、図5(b)に示すように、CRCコード(チェックサムコード)を1バイト目とし、続けて製造識別番号を送信する。これにより、似たような製造識別番号のDLC1が接続されていても、従来から通常行われているように、最後にCRCコードを付加した場合(図5(a)参照)と比較して、早期にエラー検出することができる利点がある。
なお、複数のDLC1が同時に応答を開始することは一定の確率で発生するので、上記のように、DLC1から異なったデータが同時に発信されて通信エラーが発生するか、自分が送信した情報と異なるデータが通信回線3にあることが検出でき、異常を検出したDLC1は直ちに応答を中止する。これにより、複数のDLC1からの応答タイミングが一致して応答信号が重なり、コントローラ15が応答信号を良好に受け取れなくなることを最小限に抑えることができる。このため、各DLC1では、製造識別番号情報をコントローラ15に対して応答する際、通信回線3を監視し(ステップS37)、ステップS38において、他のDLC1の応答を感知した場合(半二重通信の場合)や、コントローラ15からエラー応答を受け取った場合(全二重通信の場合)には、今回のポーリングコマンドに対する自己の応答モードを中止しそのコマンドに対しては応答しない。
図3に示すように、コントローラ15は、コマンド送信後に最も早く応答したDLC1の製造識別番号情報を受信して特定した際に、受信したことを応答送信し(ステップS10)、製造識別番号が重複していないことを確認(ステップS11)した後、この固有識別番号のDLC1に対して通信識別用のアドレスを設定して記憶する(ステップS12)。そして、このアドレスが8(DLC1の接続台数)より大きくないことを確認して(ステップS13)、該当する製造識別番号のDLC1に対してアドレスを送信する。
図6に示すように、アドレスを受信したDLC1は、アドレスを記憶し(ステップS50)、記憶結果をコントローラ15に送信する(ステップS51〜S54)。
このアドレスのDLC1での記憶結果をコントローラ15が受け取り、図3に示すステップS14において、アドレスの取得に成功したことを確認できた場合には、アドレスを1つ増やし、次のDLC1のアドレス設定作業に移行する。また、アドレスを取得したDLC1は、その後のアドレス設定動作時のコントローラ15からの要求コマンド(ポーリングコマンド)に応答しないようにする。
なお、ステップS11において製造識別番号が重複していた場合(通常あり得ないが、模造品などの場合を排除できる利点がある)や、ステップS13においてアドレスが8より大きかった場合、ステップS15においてアドレスの取得に失敗した結果を受け取った場合には、エラー処理を行う(ステップS17)。また、ステップS9において、製造識別番号の受信に失敗した場合には、タイムアウト時間に達するまで、受信動作を継続させる(ステップS18〜S20)。また、コントローラ15は、正常に通信データが得られなかった場合(タイムアウト、通信エラー)は再度タイムアウト分の時間が経過した後にリトライする。
以上の動作を、コントローラ15に、応答が無くなるまで(この実施の形態では、タイムアウトが3回続くまで(ステップS20〜S22))繰り返し実施することで、自動的に、各DLC1に対して自動的にアドレスを設定できる。
なお、DLC1には、アドレスを受信したかどうかを検知するためのアドレス受信フラグが設けられており、例えば、アドレスの設定作業を自動実行させる指示があったことを入力した際(或いは、計量装置を通常、電源ON状態のままで使用し、異常時以外には電源を切断しない状態で用いている際には、電源投入時に行うよう構成してもよい)に、図7に示すように、アドレス受信フラグが解除され(ステップS61)、前記乱数列の初期化(ステップS62)が行われる。
この場合に、アドレス設定作業の指示があった場合(または、計量装置の電源投入時に行うよう構成してもよい)に、各DLC1は、自己の製造識別番号によって乱数列を初期化する。この製造識別番号は、DLC1毎に異なる固有の番号であるので、乱数列を初期化した際に、同じ乱数列となる可能性を最小限に抑えることができ、これにより、全てのDLC1が同じ応答時間になってしまうことを最小限に抑えることができる。
なお、この乱数列を初期化する数字として、DLC1の製造識別番号の代わりにDLC1で計量した固有の計量値情報を用いて生成してもよい。すなわち、例えば、図8(a)に示すように、計量装置の電源投入時(あるいは電源投入の所定時間後、または、電源投入後、計量値が変化した際(図8(b)参照))に測定した計量値(計量値に基づくカウント値(風袋引きを行う前))を用い、この計量値は、DLC1毎に異なる場合が殆どであり、同一になることは殆ど無いので、この計量値をDLC1の固有識別番号として記憶し、前記計量値に基づくカウント値によって乱数列を初期化する。これによっても、乱数列を初期化した際に、同じ乱数列となる可能性を最小限に抑えることができ、これにより、全てのDLC1が同じ応答時間になってしまうことを最小限に抑えることができる。
このように、DLC1の固有識別番号として、計量値情報を用いて生成する場合に、この計量値情報は、DLC1の設置後にDLC1自身の機能によって得られる情報であり、計量装置の製品出荷時にDLC1に予め記憶させなくても済むので、計量装置の製品出荷時の手間を省くことができて、製造コストの低減化を図ることができる。つまり、固有識別番号として、DLC1固有の製造識別番号を用いる場合には、計量装置の製品出荷時に、各DLC1に製造識別番号を付与し、かつこの製造識別番号を各DLC1に予め記憶させる作業が必要であるが、DLC1の固有識別番号として計量値情報を用いて生成する場合には、このような作業を省くことができて、製造コストの低減化を図れる。
上記方法により、設置作業者等は、上記アドレス設定動作を行わせるように指示する(または、計量装置の電源を投入する)だけで、従来行っていたような各DLC1の製造識別番号の目視作業や記録作業、DLC1の通信回線3に対する分離作業や取付作業を行わなくても、アドレスの設定を自動でかつ良好に行わせることができ、多くの手間や時間を省くことができる。また、従来発生していたような、製造識別番号の見間違いや入力間違いも発生することがないので、良好な信頼性を維持できる。
また、DLC1から固有識別番号を送出するに際し、送出するコード列の最初にチェック用コードを送出することにより、DLC1から送出した固有識別番号をコントローラ15が受け取る際に、受信信号がエラーであることをより早く判定できて、より迅速にDLC1のアドレスの設定作業を行うことができる。なお、チェック用コードは、送出するコード列の最初に送出しなくてもよく、最初から2番目や3番目など最初の方に送出してもよい。
また、DLC1が、自己の固有識別番号に基づいて乱数列を初期化することにより、乱数列を初期化した際に、同じ乱数列となる可能性を最小限に抑えることができて、より確実かつ迅速にDLC1のアドレスの設定作業を行うことができる。また、DLC1の固有識別番号として、製造識別番号を用いてもよいが、このDLC1で計量した計量値情報を用いることにより、各DLC1に製造識別番号を記憶させることを省いたり、製造識別番号を付与することを省いたりすることが可能となる利点もある。
なお、上記のようにアドレスの自動設定作業が終了した際には、アドレスを設定できたDLC1の台数を指示計4の表示部22に表示させることが好ましい。また、これに代えて、設置作業者等がアドレスの設定作業を指示する際に、前もって、DLC1の台数を手動で入力するようにしたり、製造出荷時に、指示計4にDLC1の台数を予め記憶させたりしておいてもよく、この場合に、接続されている(または接続されるべき)DLC1の台数と、アドレスの設定台数とが異なった場合に、警告表示を行わせるようにしてもよい。これによれば、設置時におけるDLC1の接続不良を検出することができ、また、全てのDLC1に対して、良好にアドレスを設定できたことを自動的に確認でき、信頼性が向上する。また、上記機能を有しないDLC1が万一接続された場合でも、設置時に規定外のDLC1が接続されたことを検出できて、警告することができ、これによっても信頼性が向上する。
また、上記実施の形態では、設置作業者等が上記アドレス設定動作を行わせるように指示した際に、全てのDLC1が応答可能な状態となってアドレスの設定作業が行われる場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、上記のように、アドレス設定動作を行ったが、一部のDLC1に対して良好にアドレスを設定できなかったり、一部のDLC1の接続状態が不良であったりした場合などに対処できるように、別途の指示動作(異なる操作や、異なるボタンを設けてもよい)により、一旦正常に応答したDLC1は応答しないとともに、アドレスも保持したままで、異常なDLC1のみアドレスの設定動作が行われるよう構成してもよい。これにより、異常なDLC1のみアドレスの設定動作を行うことができ、全てのDLC1に対して再度アドレスの設定を行う場合と比較して、手間や時間を省くことができる。
また、上記実施の形態では、乱数列がDLC1において記憶されている場合を述べたが、これに限るものではなく、所定の計算式(アルゴリズム)により形成するよう構成してもよい。
また、上記実施の形態では、アドレスを取得したDLC1は、その後のアドレス設定動作時にコントローラ15からのコマンドに応答しない場合を述べ、これにより、デジタルロードセルからの応答信号が重なる可能性をより低減できて、より確実かつ迅速にデジタルロードセルのアドレスの設定作業を行うことができる。しかしながら、これに限るものではなく、アドレスを取得したDLC1が、その後のアドレス設定動作時にコントローラ15からのコマンドに応答するように構成しても、アドレス設定に時間がかかる可能性は高くなるものの、自動でアドレス設定することは可能である。
また、上記実施の形態では、コントローラは、コマンド送信後に最も早く応答したデジタルロードセルの固有識別番号情報を受信して特定したときに、この固有識別番号のデジタルロードセルに対して通信識別用のアドレスを設定して送信するよう構成した場合を述べたが、これに限るものではなく、コントローラ15がまとめて何回もポーリングを行い(つまり特定したときではなく)、特定回数のポーリングを行った情報を蓄積して、あとでまとめてアドレス設定を行うよう構成してもよい。