特許文献1に示された結露検出装置においては、VTR回転シリンダ装置の回転シリンダにおける結露生成の特性にあわせて結露センサを回転シリンダに取り付ける必要があり、単に結露センサを取り付けるだけの汎用的なセンサの使い方では結露検出ができないうえに、結露センサを回転シリンダへ取り付けるに当たり、磁気ヘッドの機能や回転体への電気信号の受給のために制限がある。
また、特許文献2に示された方法で結露を検出する場合や特許文献3や特許文献4に示された装置は、センサの温度を外部加熱したり、周囲温度よりも低くしているため、センサで計測する雰囲気は結露対象の雰囲気とは異なる温度状態になり、この結露対象の雰囲気とは異なる温度の雰囲気の湿度を検出しているため検出精度が悪くなってしまう。
特許文献5に示された結露推定方法は、測定対象である結露面にセンサを装着する必要があり、汎用的ではないという短所がある。また特許文献6に示された非接触温度測定装置は気体の温度勾配を計測することによって非接触で遠隔の物体温度を計測できるが、結露のような気液相変化を計測する方法ではない。
いずれの場合も物体表面において結露測定するとき、結露センサは、結露センサ自体に結露が発生したことを検出するものであり、対象物そのものの結露の発生を検知することはできない。
また、結露センサは対象物の結露生成の特性にあわせて熱的構造に特別の工夫が必要であり、簡単に結露センサを対象物に取り付けたり、その近傍に配置するだけの汎用的なセンサの使い方では対象物の結露発生を検出することはできない。
さらに、結露予測機能があっても、装置内の特定箇所の温度検出を加えて設定された結露予測アルゴリズムを用いシステムとして働いているので、特定の装置への適用に限られ普遍的に利用できる結露予測方式ではない。
また、測定対象である物体から離れて結露を測定するとき、鏡面冷却式露点計のような光学的手段による場合は、測定表面状態が鏡面に限られ、どのような表面に対しても汎用的に用いることができない。また、雰囲気状態を検出する湿度センサと物体温度を測定する赤外線放射温度計の組み合わせによって結露現象を検出する方式が考えられるが、表面状態によって放射率が異なるので温度が正確に得られず、既知の放射率の表面温度の部分しか測定することができないとともに測定対象である物体表面の湿度を検出しているかどうかは定かではないという短所がある。
また、画像形成装置において、記録用紙に発生するカール等の変形は、記録用紙が急激に乾燥することにより引き起こすものであって乾燥速度が直接の原因である。この記録用紙の乾燥速度は、記録用紙に含まれる水分の蒸散挙動における蒸散速度に支配される。この蒸散挙動は記録用紙の質や構造の要素や、質や構造による強度の要素が反映される。したがって特許文献7から特許文献9に示すように、記録用紙に含まれる水分量を検出しても記録用紙に生じるカール等の変形を高い精度で予測することは困難である。
この発明は、これらの短所を改善し、測定対象物に結露センサを直接取り付けずに、測定対象物に接する連続空間である周囲雰囲気の物理的状態変化から測定対象物表面への気体の凝集ならびに蒸散を、物体表面に非接触で遠隔個所で検出することができるとともに、測定対象物表面への結露が形成される過程を迅速に検出して測定対象物表面の結露をより正確に予測することができる非接触結露検出方法及び非接触結露検出装置を提供することを目的とするものである。
また、この発明の非接触結露検出装置を使用して画像を形成する記録用紙に含まれる水分の蒸散速度をリアルタイムで検出して、急激に乾燥することにより引き起こされる記録用紙のカール等の変形を高精度で予測し、記録用紙の変形を防止することができる用紙変形抑制方法並びに画像形成装置を提供することを目的とするものである。
この発明の非接触結露検出方法は、物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度と流方向又は流速と圧力及び成分の各要素のいずれか又は各要素を組み合わせて周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定し、測定した周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出し、周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所に、周囲雰囲気の気体に対して摩擦抵抗を有する壁面を、物体表面に対して近接し、かつ周囲雰囲気の気体が流れる方向に配置し、壁面を円筒状に形成された整流管で形成することを特徴とする。
物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度と流方向又は流速と圧力及び成分の各要素のいずれか又は各要素を組み合わせて周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定し、測定した周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出し、周囲雰囲気における気体の各要素を、少なくとも物体表面の近傍と物体表面から離れた遠隔の2個所で測定し、周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所に、周囲雰囲気の気体に対して摩擦抵抗を有する壁面を、物体表面に対して近接し、かつ周囲雰囲気の気体が流れる方向に配置し、壁面を円筒状に形成された整流管で形成することに特徴がある。
物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度と流方向又は流速と圧力及び成分の各要素のいずれか又は各要素を組み合わせて周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定し、測定した周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出し、周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所に、周囲雰囲気の気体に対して摩擦抵抗を有する壁面を、物体表面に対して近接し、かつ周囲雰囲気の気体が流れる方向に配置し、周囲雰囲気における気体の各要素を少なくとも壁面の近傍と物体表面から離れた遠隔の2個所で測定し、壁面を円筒状に形成された整流管で形成することに特徴がある。
さらに、前記周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所を、重力に沿った気体の輸送成分が相反する方向でそれぞれ測定し、重力に沿った気体の輸送成分が相反する方向で計測した測定値の差分により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出すると良い。
この発明の非接触結露検出装置は、計測手段と処理装置とを有し、前記計測手段は、少なくとも物体表面の近傍と物体表面から離れた遠隔の2個所に配置され、物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度を測定する温度湿度センサと、物体表面の周囲雰囲気における気体の流方向又は流速を測定するフローセンサとを有し、記処理装置は、前記温度湿度センサとフローセンサの測定結果により周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を判定して物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出し、前記計測手段を物体表面に対して近接して配置する整流管内に設けたことを特徴とする。
この発明の他の非接触結露検出装置は、計測手段と処理装置とを有し、前記計測手段は、物体表面に対して近接して配置する整流管と、該整流管の壁面の近傍と壁面からら離れた2個所に配置され、物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度を測定する温度湿度センサと、前記整流管内における気体の流方向又は流速を測定するフローセンサとを有し、前記処理装置は、前記温度湿度センサとフローセンサの測定結果により周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を判定して物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出することを特徴とする。
前記計測手段に物体表面の周囲雰囲気における気体の圧力及び成分を測定するセンサを有しても良い。
この発明の用紙変形抑制方法は、前記いずれかに記載の非接触結露検出方法により各種用紙に含まれる揮発成分の蒸散量を測定し、測定した蒸発量から単位時間当たりの蒸散量である蒸散速度を算出し、前記算出した蒸散速度があらかじめ設定した前記用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値を超えないように前記用紙の乾燥条件を設定することを特徴とする。
前記用紙を搬送しているときに、前記用紙の搬送路に沿った複数個所で前記用紙の先端部に含まれる揮発成分の蒸散量を測定することが望ましい。
この発明の画像形成装置は、前記いずれかに記載の非接触結露検出装置を有し、画像を形成する記録用紙を搬送中に記録用紙に含まれる水分の蒸散量を測定し、測定した蒸発量から単位時間当たりの蒸散量である蒸散速度を算出し、前記算出した蒸散速度があらかじめ設定した前記記録用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値を超えないように前記記録用紙の乾燥条件を設定することを特徴とする。
前記画像形成装置において、記録用紙の搬送路に沿った複数個所で前記記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散量を測定することが望ましい。
この発明の第2の画像形成装置は、前記いずれかに記載の非接触結露検出装置の複数の計測手段と変形予知制御装置とを有し、前記複数の計測手段は、記録用紙の搬送路に沿った複数個所に配置され、前記変形予知制御装置は、蒸散挙動演算処理部と変形予知処理部及び変形回避制御部を有し、前記蒸散挙動演算処理部は前記複数の計測手段から出力する計測信号に基づいて前記記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を検出して蒸散量を演算し、演算した蒸散量から単位時間当たりの蒸散量である蒸散速度を算出し、前記変形予知処理部は前記蒸散挙動演算処理部で演算した蒸散速度とあらかじめ設定された前記記録用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値とを比較し、演算した蒸散速度が基準値を超えたとき、搬送されている記録用紙に変形が生じると判定して変形予知情報を生成し、前記変形回避制御部は前記変形予知処理部で生成した変形予知情報により前記記録用紙の搬送速度と定着温度のいずれか一方又は両方を可変制御することを特徴とする。
この発明の第3の画像形成装置は、前記いずれかに記載の非接触結露検出装置の複数の計測手段とCPUとを有し、前記複数の計測手段は、記録用紙の搬送路に沿った複数個所に配置され、前記CPUは、前記複数の計測手段から出力する計測信号に基づいて前記記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を検出して蒸散量を演算し、演算した蒸散量から単位時間当たりの蒸散量である蒸散速度を算出し、演算した蒸散速度とあらかじめ設定された前記記録用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値とを比較し、演算した蒸散速度が基準値を超えたとき、搬送されている記録用紙に変形が生じると判定して前記記録用紙の搬送速度と定着温度のいずれか一方又は両方を可変制御することを特徴とする。
前記計測手段に前記記録用紙の先端を検出する位置センサを有すると良い。
この発明は、物体表面の挙動により影響を受けている周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定して無接触で物体表面における結露や蒸散の挙動を検出することにより、汎用性を高めることができる。
周囲雰囲気における気体の各要素を、少なくとも物体表面の近傍と物体表面から離れた遠隔の2個所で測定することにより、周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を正確の測定することができ、物体表面における結露や蒸散の挙動をリアルタイムで精度良く検出することができる。
さらに、周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所に、周囲雰囲気の気体に対して摩擦抵抗を有する壁面や整流空間を設けることにより、周囲雰囲気の輸送方向に沿った測定個所の距離を短くできるとともに、物体表面近傍の外界からの揺らぎの少ない雰囲気を測定することができ、周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を精度良く測定することができる。
また、周囲雰囲気における気体の各要素を測定する個所を、重力に沿った気体の輸送成分が相反する方向でそれぞれ測定してその差を求めることにより、外界からの揺らぎの影響を除去でき、周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を精度良く測定することができる。
さらに、対象物に直接結露センサを取り付けず、物体表面の結露が形成される過程等を物体表面に非接触で検出することができ、物体表面の結露や蒸散をより正確に予測して結露防止等を効率よく制御することができる。
また、各種用紙に含まれる揮発成分の蒸散量を測定し、測定した蒸発量から蒸散速度を算出し、算出した蒸散速度があらかじめ設定した用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値を超えないように用紙の乾燥条件を設定することにより、用紙に含まれる水分の蒸散により生じる用紙が変形することを防止することができる。
また、画像を形成する記録用紙を搬送中に記録用紙に含まれる水分の蒸散量を測定し、測定した蒸発量から蒸散速度を算出し、算出した蒸散速度があらかじめ設定した記録用紙に変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値を超えないように記録用紙の乾燥条件を設定することにより、記録用紙に変形が生じることを防いで、記録用紙を安定して搬送することができる。
さらに、記録用紙の搬送路に沿った複数個所で記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散量を測定することにより、記録用紙の変形に大きく影響する部分の水分蒸散により乾燥状態を検出して、記録用紙の変形を確実に抑制することができる。
また、記録用紙の搬送路に沿った複数個所で記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散量を測定することにより、記録用紙の同一個所で蒸散挙動を測定して正確な蒸散速度を得ることができる。
さらに、記録用紙の蒸散挙動を計測する計測手段に記録用紙の先端を検出する位置センサを設けることにより、記録用紙の先端部に含まれる水分の蒸散量を確実に測定することができ、正確な蒸散速度を得ることができる。
まず、物体表面に周囲雰囲気の気体が吸着して凝集して結露し、凝集した液体が蒸散するとき、物体の周囲雰囲気の状態変化について説明する。物体1の表面に周囲雰囲気2の気体が吸着して凝集するとき、図1に示すように、物体1表面から遠隔の雰囲気2の気体が物体1の表面近傍方向に流れ、物体1表面に吸着した気体が脱着するときや、物体1の表面に凝集した液体が蒸散するとき、物体1の表面近傍の雰囲気2が物体1表面から遠隔方向に流れる。
この物体1の表面への吸着・凝集に伴う周囲雰囲気2は輸送方向に沿って温度分布や密度分布が生じる。この物体1の表面温度に対する周囲雰囲気2の物体1表面からの距離に応じて変化する周囲雰囲気2の温度分布と相対湿度分布を図2(a),(b)に示す。図2(a),(b)は、遠隔場所にある周囲雰囲気2の温度がT1で物体1の表面温度がT1,T2,T3,T4、但し、T1>T2>T3>T4で、雰囲気露点温度Tdは温度T2と温度T3の間にある場合を示す。また、図2(a)は横軸に温度を示し、縦軸に物体1の表面からの距離を示し、図2(b)は横軸に相対湿度は相対を示し、縦軸に物体1の表面からの距離を示す。
物体1表面が温度T1と周囲雰囲気2の温度T1とが同一である場合、周囲雰囲気2の相対湿度はどこでも均一に分布する。また、周囲雰囲気2の温度T1に対して物体1の表面の温度が相対的に低く温度T2になると、物体1表面の近傍では、空気や水蒸気の気体分子は物体1表面との熱力学的相互作用により物体1表面近傍の周囲雰囲気2の温度が低下する。このように物体1表面近傍の周囲雰囲気2の温度が低下すると飽和水蒸気圧が小さくなるので、水蒸気圧//飽和水蒸気圧で示される相対湿度は上昇することになる。
物体表面の近傍では遠隔に比べて相対湿度が高くなる。この段階では、物体1表面で水蒸気分子を吸着する量が増えるが、物体1表面から脱着する量はまだあるので、物体1表面に水分子が形成される結露には至っていない。
周囲雰囲気の温度T1に対して物体1表面の温度がさらに低下して雰囲気露点温度Tdより低い温度T3になると、物体1表面から脱着する量よりも物体1表面で水蒸気分子を吸着する量が多くなり、物体1表面では水蒸気分子が水分子のクラスターを形成して結露に至る。物体1表面より遠隔個所から物体1表面への水蒸気分子の輸送が増すにしても、物体1表面の近傍における周囲雰囲気2の温度にもよるが、物体1表面の近傍で1mol、22400ccの水蒸気は18ccの体積の水へ凝集するので、1/1244になり物体1表面の近傍では水蒸気分子が欠乏する。したがって物体1表面が温度T3と低くなったにもかかわらず、物体1表面の近傍の周囲雰囲気2は遠隔に比べて相対湿度が低くなる。なお、物体1表面近傍と遠隔の中間の周囲雰囲気2は、図2に示すように、温度が低下するので相対湿度が高くなる。周囲雰囲気の温度T1に対して物体1表面の温度がさらに低下して温度T4になると、結露が進行し、物体1表面温度T3の場合と比較して、さらに物体1表面の近傍の周囲雰囲気2は遠隔に比べて相対湿度が低くなる。
物体1表面温度が露点Td以下である限り結露は進行するが、物体1表面温度が露点Tdを越えると蒸散して物体1表面から遠隔個所へ水蒸気分子の輸送が行われる。このように、物体1表面への周囲雰囲気2の吸着・凝集過程・平衡状態・蒸散過程を、周囲雰囲気2の温度勾配,湿度勾配、流れの状態の変化を計測することにより物体1表面から離れた場所において非接触で物体1表面の結露挙動や蒸散挙動の遠隔検出を実現することができる。
この非接触で物体1表面の結露と蒸散の挙動を遠隔検出する非接触結露検出装置3の構成を図3のブロック図に示す。図3に示すように、非接触結露検出装置3は、複数の温度湿度センサ4a,4b,4cとフローセンサ5及び処理装置6を有する。温度湿度センサ4aは、図4に示すように、物体1の表面近傍で表面から距離hだけ隔てた位置に配置され、物体1表面近傍の周囲雰囲気2の温度Taと湿度Haを検出し、温度湿度センサ4bは物体1表面近傍と遠隔の中間位置に配置され、中間位置にある周囲雰囲気2の温度Tbと湿度Hbを検出し、温度湿度センサ4cは物体1表面から遠隔の位置に配置され、物体1表面から遠隔にある周囲雰囲気2の温度Tcと湿度Hcを検出する。フローセンサ5は物体1表面近傍と遠隔の中間位置に配置され、周囲雰囲気2の流れ方向Fzや流速Waを検出する。処理装置6は操作部7と演算処理部8と記憶部9及び警報出力部10を有する。演算処理部8はあらかじめ設定された一定時間毎に温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5で検出している周囲雰囲気2の温度と周囲雰囲気2の流れ方向や流速を入力し、入力した温度と湿度や輸送方向を記憶部9に記憶させるとともに、入力した温度と湿度及び流れ方向の変化から物体1表面の結露や蒸散の挙動を判定する。警報出力部10は演算処理部8から結露信号や蒸散信号が出力されたとき、結露警報信号や蒸散信号を温度湿度制御装置に出力する。
この非接触結露検出装置3で物体1の表面の結露発生を検出するときの処理を図5のフローチャートと図4(a),(b)を参照して説明する。
処理装置6の演算処理部8は、あらかじめ設定された一定時間毎に温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5で検出している周囲雰囲気2の温度Tと湿度H及び周囲雰囲気2の流れ方向Fzを入力し、入力した温度Hと湿度H及び輸送方向Fzを記憶部9に記憶させる(ステップS1)。この状態で時刻t(n)から時刻t(n+1)に達すると(ステップS2)、演算処理部8は時刻t(n+1)で温度湿度センサ4aから入力した近傍温度Ta(n+1)と温度湿度センサ4cから入力した遠隔温度Tc(n+1)と温度湿度センサ4aから入力した近傍湿度Ha(n+1)と温度湿度センサ4cから入力した遠隔湿度Hc(n+1)を比較し(ステップS3)、近傍温度Ta(n+1)と遠隔温度Tc(n+1)が同じときは、図4(a)に示すように、物体1の表面温度T1と遠隔温度Tc(n+1)が同じであって物体1表面に対する周囲雰囲気2の水蒸気分子の吸着量が少ないと判断する(ステップS7)。また、温度湿度センサ4aで入力した近傍温度Ta(n+1)が温度湿度センサ4cで入力した遠隔温度Tc(n+1)より低く、温度湿度センサ4aで入力した近傍湿度Ha(n+1)が温度湿度センサ4cで入力した遠隔湿度Hc(n+1)より高いときは、物体1表面において周囲雰囲気2の水蒸気分子を吸着する可能性がありと判定して、一定時間前である時刻t(n)と時刻t(n+1)に温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4cで入力した湿度を比較し(ステップS4)、温度湿度センサ4aから時刻t(n+1)で入力した近傍湿度Ha(n+1)が時刻t(n)で入力した近傍湿度Ha(n)より小さく、温度湿度センサ4cから時刻t(n+1)で入力した遠隔湿度Hc(n+1)が時刻t(n)で入力した遠隔湿度Hc(n)より大きく、時刻t(n+1)でフローセンサ5から入力した周囲雰囲気2の流れ方向Fzが、図4(b)に示すように、物体1の表面側であるときは、物体1表面に対する周囲雰囲気2の水蒸気分子の吸着量が大きく凝集すると判定し、演算処理部8は警報出力部10に物体1の表面に結露が生じる可能性があることを示す結露信号を出力する(ステップS5)。警報出力部10は演算処理部8から結露信号が送られると、結露警報信号を例えば除湿装置等の温度湿度制御装置に出力する(ステップS6)。また、一定時間前である時刻t(n)と時刻t(n+1)に温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4cで入力した湿度を比較した結果(ステップS4)、時刻t(n+1)で入力した近傍湿度Ha(n+1)が時刻t(n)で入力した近傍湿度Ha(n)と同じか大きく、時刻t(n+1)で入力した遠隔湿度Hc(n+1)が時刻t(n)で入力した遠隔湿度Hc(n)と同じか大きく、時刻t(n+1)でフローセンサ5から入力した周囲雰囲気2の流れ方向Fzが物体1の表面側でない場合は物体1表面に対する周囲雰囲気2の水蒸気分子の吸着量が少ないと判断する(ステップS7)。この処理を、測定を継続している間繰り返す(ステップS8、S2)。
次に、非接触結露検出装置3で物体1表面からの蒸散発生を検出するときの処理を図6のフローチャートと図4(c)を参照して説明する。
演算処理部8は、あらかじめ設定された一定時間毎に温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5で検出している周囲雰囲気2の温度Tと湿度H及び周囲雰囲気2の流れ方向Fzを入力し、入力した温度Hと湿度H及び輸送方向Fzを記憶部9に記憶させる(ステップS11)。この状態で時刻t(n)から時刻t(n+1)に達すると(ステップS12)、演算処理部8は時刻t(n+1)で温度湿度センサ4aから入力した近傍湿度Ha(n+1)と温度湿度センサ4cから入力した遠隔湿度Hc(n+1)を比較し(ステップS13)、近傍湿度Ha(n+1)が遠隔湿度Hc(n+1)より小さいときは物体1表面からの蒸散なしと判定する(ステップS17)。また、近傍湿度Ha(n+1)が遠隔湿度Hc(n+1)より大きいときは、物体1表面から水蒸気分子が蒸散している可能性があると判定し、時刻t(n)と時刻t(n+1)のときにフローセンサ5から入力した周囲雰囲気2の流れ方向Fzが変わって、時刻t(n+1)のときの周囲雰囲気2の流れ方向Fzが物体1表面と逆方向になっているかどうかを判定し(ステップS14)、時刻t(n+1)のときの周囲雰囲気2の流れ方向Fzが、図4(c)に示すように、物体1表面と逆方向になっているときは、物体1表面から水蒸気分子が蒸散していると判定し(ステップS15)、警報出力部10に物体1表面から水蒸気分子が蒸散していることを示す蒸散信号を出力する。警報出力部10は演算処理部8から蒸散信号が送られると、蒸散警報信号を例えば除湿装置等の温度湿度制御装置に出力する(ステップS16)。また、時刻t(n+1)のときの周囲雰囲気2の流れ方向Fzが物体1表面と逆方向になっていないときは、物体1表面からの蒸散なしと判定する(ステップS17)。この処理を測定を継続している間繰り返す(ステップS18、S12)。
このようにして物体1表面に対する周囲雰囲気2の温度勾配と湿度勾配及び流れの状態の変化を計測することにより物体1表面から離れた場所において物体1表面の結露挙動や蒸散挙動を検出することができる。
前記説明では温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5を物体1表面に対して垂直方向に配置した場合について説明したが、図7に示すように、物体1表面から距離hだけ隔てた位置に、壁面11を物体1表面と垂直に設け、物体1の表面から壁面11の中間に相当する距離h1だけ隔てた位置に温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を配置し、温度湿度センサ4aとフローセンサ5を壁面11から離れた位置に配置し、温度湿度センサ4bを壁面11に近くに配置しても良い。温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5を物体1表面に対して垂直方向に配置した場合、物体1表面近傍の温度湿度センサ4aは物体1の影響を早期に受け、物体1表面より遠隔の温度湿度センサ4cは温度湿度センサ4aより物体1の影響を遅く受ける。この挙動に着目し、図7に示すように、壁面11を配置し、物体1表面から同一距離h1の位置に温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を配置し、物体1の影響を受ける時刻に差を持たせる。
このように物体1表面に対して気体の輸送摩擦抵抗となる壁面11を設けた場合、壁面11の上部から壁面11に沿って流れる層流速度が壁面11の摩擦抵抗を受ける境界層の厚さδは、壁面11の上端部から壁面11に沿った距離をx、流速をU、壁面11の摩擦抵抗をνとすると、ストークスの法則により、δ≒5*(νx/U)1/2で得られる。20℃の空気で流速Uを1mm/秒と5mm/秒と10mm/秒と100mm/秒及び1000mm/秒と変えたときの壁面11の上端部から壁面11に沿った距離xに対する境界層の厚さδの変化を図8に示す。流速U=5mm/秒の流れは0.1秒後に0.5mm移動するが、壁端面からの距離X=1mmの地点において、壁面11から離れる距離が9mm、10mm,11mmでは、壁面11の摩擦抵抗により図8の破線円内の流れFで示すようになる。
そこで温度湿度センサ4aとフローセンサ5を壁面11から離れた位置に配置し、温度湿度センサ4bを壁面11に近くに配置すると、ある時刻tにおいて、温度湿度センサ4aが検出する雰囲気2のほうが壁面11から離れているので、図7に示すように、流れが先行し、その時刻tで温度湿度センサ4bは壁面11に近いため、摩擦抵抗により流れが遅くなり、物体1表面に対する影響の到達時刻が遅く、物体1表面から離れた雰囲気2を検出することと同等になり、温度湿度センサ4a,4bで検出した雰囲気温度Ta,Tbとフローセンサ5で検出した流れ方向Fzにより、物体1表面に対する周囲雰囲気2の温度勾配と湿度勾配及び流れの状態の変化を計測することにより物体1表面から離れた場所において物体1表面の結露挙動や蒸散挙動を検出することができる。
物体1表面への吸着・凝集に伴う気体の輸送に沿って温度湿度センサ4を配置するに当たり、検出分解能を得るため輸送距離を長くする必要があり設置構造も大きくなる。これに対して図7に示すように物体1の表面に対して壁面11を設け、温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を壁面11の中間に相当する距離h1だけ隔てた位置に配置することにより、計測機構をコンパクトにすることができる。
また、気体の輸送のメカニズムによっては、輸送速度によって雰囲気状態が緩やかな勾配で変化する場合もあり、このような場合には測定が困難になるが、図7に示すように物体1の表面に対して気体の輸送摩擦抵抗となる壁面11を設けることにより、雰囲気状態に急峻な勾配を与えることができる。
さらに、物体1表面から離れた2個所に温度湿度センサ4a,4bを設置した場合、周辺雰囲気2を形成する気体の温度勾配、粘性、密度、熱伝導率、重力、の蒸気圧などの要素により、物体1表面に至る距離に応じて微小空間に密度勾配が生ずる場合もある。このような場合、物体1表面から離れると、物体1表面の影響力が小さくなり、周囲環境の揺らぎの影響が大きくなる。この現象に対して、図7に示すように、物体1の表面に対して壁面11を設け、温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を物体1表面から一定距離h1だけ隔てた位置に配置して計測機構をコンパクトにすると、周囲環境の揺らぎの影響を小さくすることができる。
なお、摩擦抵抗を有する壁面11と温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5は、周囲雰囲気2の熱的状態に影響を与えないように、熱容量が極めて小さいか、熱伝導率が周囲雰囲気2に近い材料を使用することが望ましい。
図7では温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を壁面11の中間部に配置した場合について説明したが、図9(a)に示すように、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を壁面11の物体1表面と反対側の端部近傍に配置したり、図9(b)に示すように、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を壁面11の物体1表面の近くに配置しても良い。図9(a)に示すように、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を壁面11の物体1表面と反対側の端部近傍に配置して、壁面11に沿った壁端面の距離xが零に近いほど、流速範囲が広くても境界層が壁に近くなるので、境界層の厚さδが狭い距離にまとまり、壁面11に対して温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を近くに配置でき、計測機構をよりコンパクトにして広い流速範囲を計測することができる。また、図9(b)に示すように、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を壁面11の物体1表面と反対側の端部近傍に配置することにより、壁面11の長さを短くでき、凝集と蒸散で互いに逆方向の流れる周囲雰囲気2の測定を容易に行なうことができる。
また、物体1表面の周囲雰囲気2は温度が低くなるほど比重が大きくなり、重力の影響により上昇しにくく下降しやすくなり、それに伴って温度勾配も変化する。逆に、物体1表面の周囲雰囲気2の温度が高く、湿度が低いほど比重は小さく軽くなる。この物体1表面の温度条件により物体1表面からの距離と雰囲気の温度と湿度の分布が物体1の上面と下面で相違する状態を図10(a)に示す。物体1表面の上方の周囲雰囲気2は、物体表面温度が雰囲雰囲気温度より低い場合には、物体1近傍の周囲雰囲気2が物体1表面により冷やされ、比重を増して重力によって下降して物体1表面からの熱影響を受ける距離が短くなる。物体1表面の下方の周囲雰囲気2は、物体表面温度が雰囲気温度より低い場合には、物体1近傍の周囲雰囲気2は物体1表面により冷やされ、比重を増して重力によって下降し、物体1表面からの熱影響を受ける距離が広がる。物体1表面への吸着・凝集に伴う気体の輸送方向に沿って輸送速度が微小であると外界の揺らぎの影響の方が大きい場合がある。この物体1両面の外界の揺らぎと表面状態、比熱、容量が比較的同一であって、同様な結露現象を発生させるような結露面に限定した場合、図10(b)に示すように、結露面の上面と下面でのそれぞれの結露挙動の差を得ることによって外界の揺らぎの影響を取り除くことができる。
そこで図11(a)に示すように、物体1の上方に温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置すると共に、物体1の下方にも温度湿度センサ41a,41b及びフローセンサ51を配置し、物体1の上方と下方の両方における測定値の差分により物体1表面に気体が吸着して凝集したり、凝集した液体が蒸散する挙動を検出すると、外界の揺らぎの影響を取り除くことができる。
また、例えば物体1の上方に配置したフローセンサ5により周囲雰囲気の流れ方向Fzは検出できるので、図11(b)に示すように、物体1の一方の表面側、例えば上方側だけにフローセンサ5を配置しても良い。さらに、図11(c)に示すように、物体1表面が傾斜していても重力方向に沿った周囲雰囲気2の輸送の影響を利用して外界の揺らぎの影響を取り除くことができる。なお、物体1表面である結露面の下面は上面より重力による輸送距離が長く、測定間隔が長くなって高感度になるので、輸送速度が微小であっても外界の揺らぎの程度によっては、結露面の下面だけでも結露挙動を検出することができる。
また、外界の雰囲気の揺らぎに影響されず、外乱を排除できるように温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を配置した他の計測手段について説明する。この計測手段12は、図12に示すように、円筒状に形成された整流管13の内部の流路に温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を配置し、物体1表面に対する周囲雰囲気2を整流管13で外界から隔離して、外界の雰囲気の揺らぎや外乱を排除する。ここで図12(a)は整流管13の壁面に沿って温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置した計測手段12aを示し、図12(b)は整流管13の壁面と直交して温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置した計測手段12bを示す。この図12(b)に示した計測手段12bは、整流管13の壁面で、図7に示す壁面11と同様に雰囲気状態に急峻な勾配を与えるとともに、整流管13で外界の雰囲気の揺らぎの影響を除去して外乱を排除する。この整流管13も、雰囲気の熱的状態に影響を与えないように、熱容量が小さいか熱伝導率が雰囲気に近い材料、例えば樹脂材料やセラミック材料で形成することが望ましい
また、物体1表面の周囲雰囲気2が流れるときの流速が極めて小さい場合には、整流管13を周囲雰囲気2が流れる状態を検出する温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5で得られる測定値を大きく取り出す必要がある。そこで図13(a)の斜視図と(b)の断面図に示すように、整流管13の物体1表面と反対側の断面積を物体1表面側の断面積より小さくして流速を大きくし、その領域に温度湿度センサ4bとフローセンサ5を設けて測定精度を高めると良い。
このように物体1表面に対する周囲雰囲気2の温度勾配と湿度勾配及び流れの状態の変化を計測するとき、温度湿度センサ4とフローセンサ5は、気体の輸送過程を迅速に検出でき、微細な空間分解能を有する検出能力を有するセンサを使用することが望ましい。このようなセンサとしては、例えば特許第2889909号公報や特許第2621982号公報や特許第2780911号公報あるいは特開平6−18465号公報等に記載された薄膜で微細構造に形成された抵抗体を使用したセンサを使用すれば良い。
図14は、薄膜で微細構造に形成された抵抗体を使用した温度湿度センサ4とフローセンサ5を整流管13と一体に形成した計測手段12cを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の水平方向の断面図、(c)は(a)の垂直方向の断面図である。この計測手段12cは、(b)の断面図に示すように、縦方向の中央部に溝14を有する基板15の溝14を横切って薄膜で微細構造に形成された抵抗体16を有する複数のセンサ感応部17を配置し、このセンサ感応部17の上に縦方向の中央部に溝18を有するカバー19を接合し、基板15の溝14とカバー19の溝18を流路として基板15とカバー19で整流管13を構成したものである。この基板15とセンサ感応部17やカバー19は、集積回路微細加工技術を用いたいわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術により、高精度に大量生産によって容易に作製することができる。この計測手段12cは、センサ感応部17を複数アレイ状に並べることにより物体1表面から異なる距離にそれぞれ設置でき、能力範囲や異なる機能が混載できるので、広い温度湿度範囲の条件や結露挙動の速さに対応できるとともに小型化でき、周囲雰囲気2の状態に与える影響が少なく、測定個所の設置位置精度が高く、高精度な測定値を得ることができる。また、適用場所の制限が広がり汎用性を向上することができる。さらに、同じ種類で同程度のレベルの出力信号を出力するセンサに統一できて処理装置6の処理を簡略化することができる。
図14に示した計測手段12cは整流管13すなわち基板15とカバー19の溝14,18に沿って温度湿度センサ4a〜4cとフローセンサ5を配置した場合について説明したが、図12(b)に示すように、整流管13の壁面と直交して温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置した場合も、薄膜で微細構造に形成された抵抗体を使用した温度湿度センサ4a,4bとフローセンサ5を整流管13と一体に形成することができる。この計測手段12dは、図15(a)の平面図と(b)の断面図に示すように、壁20の中央に、一定断面積を有する複数の貫通孔21を有するセンサ基板22を形成し、センサ基板22の貫通孔21の上に抵抗体16を有する複数のセンサ感応部17を配置して、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を形成したものである。この計測手段12dにおいても、図7や図12(b)に示した場合と同様に、フローセンサ5は気体の輸送摩擦抵抗となる壁20から離れた位置に設けて、測定感度を高めると良い。例えば、長さ2mmの壁20の中央に、幅1mm、長さ5mm、厚さ0.5mmのセンサ基板22を設置し、温度湿度センサ4bを壁20から距離0.5mmの位置に配置し、温度湿度センサ4aを壁20から距離3mmの位置に配置すると、20℃の空気について図8に示す境界層の厚さδの変化から、10mm/秒〜100mm/秒の雰囲気の状態を測定することができる。
また、この計測手段12dを、図16(a)の平面図と(b)の側面断面図に示すように積層して計測手段12eを形成することにより、整流機能をより向上させることができる。そして計測手段12d,12eも集積回路微細加工技術を用いたいわゆるMEMS技術により容易に作製することができる。
前記説明では物体1の表面に水蒸気分子が凝集して結露したりする場合について説明したが、温度湿度センサの代わりにガス成分センサやガス濃度センサを使用して気体の成分や密度や濃度を検出することにより、多成分のガスの精製分離技術等各種分野にも適用することができる。
例えば図12に示す計測手段12に準じて、整流管13をアクリル樹脂で内径11mm、長さ30mmで形成し、この整流管13を物体1表面から間隔1mmを隔てて配置し、温度湿度センサ4aを整流管13の下端部から2mmの位置に装着し、温度湿度センサ4bを整流管13の下端部から15mmの位置に装着し、温度湿度センサ4cを整流管13の下端部から28mmの位置に装着し、フローセンサ5を温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bの中間位置に配置して測定した結果を図17〜図19に示す。また、同時に、性能比較のため従来から用いられている計測手段の吸着水による電極間電気抵抗値変化を検出する原理の表面接触型結露センサを物体1の表面に装着して測定した。
図17は、整流管13の外界雰囲気を25℃、80%RH(露点=21.3℃)一定にし、10分経過後、物体1の表面温度を25℃から2℃ずつ階段状に降下させた場合で、28分経過時点には物体1の表面温度は外界雰囲気の露点21.3℃で、さらに降下していく状態である。温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bでは、物体1の表面温度の低下に影響され、物体1の表面温度が外界雰囲気の露点以上では、より温度が低下し相対湿度がより増加し、物体1の表面温度が外界雰囲気の露点以下になると相対湿度が減少する反応を示す。さらに、温度湿度センサ4aは温度湿度センサ4bよりも物体1の表面により近いので、物体1の表面温度が外界雰囲気の露点以上では、より温度が低下し相対湿度がより増加し、物体1の表面温度が外界雰囲気の露点以下になると相対湿度がより減少する反応を示す。また、フローセンサ5の挙動では、露点前後の傾向から、物体1の表面方向への流れが増加していることを示す。温度湿度センサ4cは物体1の表面から離れているので、物体1の表面温度の降下に影響されにくく外界雰囲気の影響が大きい。
これらの温度湿度センサ4a,4b,4cとフローセンサ5の挙動から結露発生現象が観測できることがわかる。物体1の表面の結露発生で、温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bの反応開始は29〜30分であり、表面接触型結露センサの反応開始が32分であるのより早い。したがって表面接触型結露センサより応答が早く、非接触で検出することができ、微量な結露挙動も検出することができる。
また、図18は、物体1の表面温度を20℃に保持し、整流管13の外界雰囲気を9分経過後25℃、60%RH(露点=16.7℃)から、5%RHずつ階段状に増加させた場合で、38分経過時点で外界雰囲気の露点が20℃になり、さらに増加していく状態である。温度湿度センサ4cは物体1の表面から離れているので影響されにくく,外界雰囲気の湿度影響を大きく受け相対湿度が増加していることを示す。温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bでは、物体1の表面により近いので、外界雰囲気の露点が物体1の表面温度以上になると、物体1の表面に結露が発生すると水蒸気が凝集し、水蒸気密度が減少するため影響を受け、温度湿度センサ4cに比べ相対湿度が増加しない反応を示す。また、フローセンサ5の挙動では、露点前後の傾向から、物体1の表面方向への流れが増加していることを示す。
これらの温度湿度センサ4a,4b,4cとフローセンサ5の挙動から結露発生現象が観測できることがわかる。物体1の表面の結露発生で、温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bの反応開始は38分であり、表面接触型結露センサの反応開始が40分であるのより早い。したがって表面接触型結露センサより応答が早く、非接触で検出することができ、微量な結露挙動も検出することができる。
図19は、整流管13の外界雰囲気を25℃、80%RH(露点=21.3℃)で一定にし、物体1の表面温度を19℃に保持することにより結露を生成しておき、7分経過後、物体1の表面温度を25℃に上昇させると結露水が水蒸気として蒸散される場合を示す。
物体1の表面温度を19℃から25℃へ上昇し始めると水蒸気脱着が促進され、温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bでは相対湿度が増加する反応を示し、蒸散が観測される。温度湿度センサ4aでは温度湿度センサ4bよりも物体1の表面により近いので、時間当たりの増加率が高い。フローセンサ5の挙動では、物体1の表面温度の上昇前後の傾向から、物体1の表面と逆方向への流れが増加していることを示す。
これらの温度湿度センサ4a,4b,4cとフローセンサ5の挙動から蒸散現象が観測できることがわかる。また、温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bでは、40分経過まで相対湿度の増加を示し、結露状態であって、7分から40分までの33分間が蒸散過程であることを示す。なお、温度湿度センサ4cの温度湿度挙動からも明らかで、物体1の表面温度上昇に伴う温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bの温度も上昇するので、蒸散過程の開始時よりも終了時の相対湿度の値は減少することを示している。物体1の表面からの蒸散発生は、温度湿度センサ4aと温度湿度センサ4bの反応開始は8分であり、表面接触型結露センサの反応開始が12分であるのより早い。但し、12分での表面接触型結露センサの反応は結露がなくなったことを示しているが、実際には40分まで結露状態であった。したがって表面接触型結露センサより応答が早く、非接触で検出することができ、微量な蒸散挙動もリアルタイムで検出することができる。
このように水分の蒸散挙動をリアルタイムで検出することができる非接触結露検出装置3を使用して画像が転写された記録用紙から水分が蒸散する挙動を検出して、定着装置で加熱加圧させるときに記録用紙に生じるカール等の変形を防止する画像形成装置について説明する。
画像形成装置の画像形成ユニット30は、図20の構成図に示すように、感光体ドラム31の周囲に配置された帯電装置32とレーザ光源やポリゴンミラー等が設けられ、感光体ドラム31にレーザビームを照射して画像を書き込む書込装置33と現像装置34と転写装置35及びクリーニング装置36と、加熱ローラ37と加圧ローラ38とを有し、記録用紙39に転写されたトナー像を定着する定着装置40を有する。
この画像形成ユニット30は、帯電装置32で帯電した感光体ドラム31表面に書込装置33でレーザビームを照射して静電潜像を形成し、形成した静電潜像を現像装置34で可視化してトナー像を形成する。感光体ドラム31に形成されたトナー像は、転写装置35で給紙装置あるいは手差しトレイから給紙された記録用紙39に転写される。記録用紙39にトナー像を転写した感光体ドラム31に残留しているトナーはクリーニング装置36で除去される。トナー像が転写された記録用紙39は定着装置40に送られ、熱と圧力が加えられてトナー像を定着する。画像が定着された記録用紙39は排紙装置に排出される。この定着装置40で記録用紙39に熱と圧力を加えてトナー像を定着するとき、記録用紙39は急激に乾燥してカール等の変形が生じる。この記録用紙39の乾燥速度は、記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動に支配される。
この記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動により記録用紙39が変形する状態について説明する。図21の模式図に示すように、高温度の加熱部材401上を記録用紙39が移動するとき、加熱部材401の温度を変えて、非接触結露検出装置3により記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動を調べて結果を図22及び図23に示す。図22において、蒸散A特性は加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が60℃の場合、蒸散B特性は加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が70℃の場合、蒸散C特性は加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が80℃の場合、蒸散D特性は加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が90℃の場合を示し、図22(a)は記録用紙39の加熱時間に対する記録用紙39の温度上昇の変化を示し,図22(b)は記録用紙39の加熱時間に対する記録用紙39に含まれる水分蒸散増加量の変化を示す、図22(c)は記録用紙39の加熱時間に対する記録用紙39の変位量δの変化を示す。図23(a)〜(d)は蒸散A特性と蒸散B特性と蒸散C特性及び蒸散D特性毎に記録用紙39の温度上昇と水分蒸散増加量及び変位量の変化を示す。
図22(a)と(b)に示すように、記録用紙39が加熱されて温度上昇すると、記録用紙39に含まれる水分が蒸散し、加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が60℃から90℃と大きくなるにしたがって蒸散量と蒸散速度(時間当たりの蒸散量)が次第に大きくなり、ある程度蒸散すると蒸散量は低下してくる。そして図22(b)と(c)に示すように、水分蒸散速度が大きいほど、記録用紙39の変位量δが大きく、変形量が早く推移する。このことから、記録用紙39に含まれる水分量が記録用紙39の変形の大きさに影響し、その水分の蒸散速度により記録用紙39の変形量が定まる。
また、記録用紙39から水分は蒸散するが、蒸散A特性のように記録用紙39に変位が生じない場合がある。これは記録用紙39の強度(コシの強さ)によることを示している。すなわち、記録用紙39の強度により変形が阻止されて水分が蒸散してもすぐには変形が生じないことを示す。したがって記録用紙39に含まれる水分量が多くても、その蒸散速度を緩やかにする、すなわち記録用紙39をゆっくり乾燥することにより変形量を小さくすることができる。
また、記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動による記録用紙39の変形は、図23(a)〜(d)に示すように、記録用紙39の変形開始は記録用紙39の強度により形状が維持され、水分の蒸散開始以後に発生し、蒸散速度が大きい順に変形量が大きくなる。したがって記録用紙39に変形が生じる以前の蒸散速度を測定することにより、記録用紙39の変形量を予測することができる。そこで記録用紙39に含まれる水分の蒸散開始時刻から0.1秒までの記録用紙39に変形が発生する以前の蒸散速度に対する変形開始時刻から0.1秒までの記録用紙39の変形量を図24に示す。図24に示すように、記録用紙39に変形が生じる以前の蒸散開始開始から0.1秒までの蒸散速度を測定すると、記録用紙39の変形の程度を明らかになる。
以上のことから記録用紙39の蒸散速度を測定することにより記録用紙39の変形量を判定できるし、記録用紙39に与えられる温度に対して蒸散開始時刻と変形前の蒸散速度を測定すれば、記録用紙39の変形を予知することができる。
次に、図25に加熱部材401と記録用紙39の接触温度差が70℃の場合、種類が異なる記録用紙39の水分蒸散量と変位量の変化を示す。図25において蒸散E特性は蒸散B特性より記録用紙39の厚さが薄く、熱容量が小さく水分が蒸散しやすい紙質の場合である。図25(a),(b)に示すように、蒸散E特性の方が蒸散B特性より早く蒸散し、早く変形している。すなわち記録用紙39が厚い分だけ(コシの強さ)が大きいことも示している。したがって、記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動、すなわち蒸散速度と蒸散開始時刻及び温度を検出することにより、コート紙のような特殊紙を除いた普通紙は例えば再生紙であっても、記録用紙39の種類を判別する必要なしに、記録用紙39の変形を予知できるとともに変形量も判定することができる。
そこで画像形成ユニット30の用紙搬送経路には、記録用紙39の蒸散挙動を検出するために、図20に示すように、転写装置35より上流側に第1の位置センサ41aと非接触結露検出装置3の例えば図14に示す計測手段12cと同じ第1の計測手段42aを有し、用紙搬送経路の転写装置35より下流側に第2の位置センサ41bと第2の計測手段42bを有し、定着装置40に第3の計測手段42cを有する。第1の位置センサ41aと第1の計測手段42aは略同じ位置に配置され、第2の位置センサ41bと第2の計測手段42bも略同じ位置に配置されている。
画像形成装置の制御装置には、図26のブロック図に示すように、各位置センサ41a,41bと計測手段42a〜42cの検出結果により記録用紙39の変形を予測する変形予知制御部43を有する。変形予知制御部43は蒸散挙動演算処理部44と計時部45と基準情報記憶部46と変形予知処理部47及び変形回避制御部48を有する。蒸散挙動演算処理部44は第1の計測手段42aと第2の計測手段42bと第3の計測手段42cから出力する計測信号に基づいて記録用紙39に含まれる水分の蒸散挙動を検出して蒸散量を演算し、演算した蒸散量と、第1の位置センサ41aと第2の位置センサ41bで記録用紙の先端を検出したときの時刻差から記録用紙39からの水分の蒸散速度を算出する。基準情報記憶部46には、図23に示すような記録用紙39の加熱時間に対する温度上昇と蒸散増加量及び変位量を示す基準特性と、図24に示すように記録用紙39に変形が生じる以前の蒸散開始開始から変形が生じるまでの一定時間例えば0.1秒までの蒸散速度の基準値があらかじめ格納されている。変形予知処理部47は蒸散挙動演算処理部44で算出した蒸散速度と基準情報記憶部46に格納された基準値とを比較して記録用紙39の変形を予測するとともに定着装置40で水分蒸散量がどの程度増えるかを判定する。変形回避制御部48は記録用紙39の搬送速度情報と定着装置40の定着温度情報を入力し、入力した搬送速度情報と定着温度情報を、変形予知処理部46から送られる記録用紙39の変形予測情報及び基準情報記憶部46に格納した加熱時間に対する温度上昇と蒸散増加量及び変位量を示す基準特性により可変して記録用紙39の搬送速度と定着温度の制御情報を生成して記録用紙39の搬送速度制御部49や定着温度制御部50に出力し、変形予知処理部47から送られる記録用紙39の変形予測情報と蒸散量及び搬送速度と定着温度の制御情報に異常がある場合、記録用紙39の搬送を停止させ警報部51に警報信号を出力する。
この変形予知制御部43で、画像形成ユニット30に送られて感光体ドラム31に形成されたトナー像を転写して定着装置40に搬送される記録用紙39に生じる変形を予知して変形を回避する処理を図27のフローチャートを参照して説明する。
画像形成ユニット30で画像形成処理が開始して搬送された記録用紙39の先端部を第1の位置センサ41aで検出すると(ステップS21)、蒸散挙動演算処理部44は、そのとき計時部45から出力している時刻t0を入力し(ステップS22)、第1の位置センサ41aと第1の計測手段42aの配置で定まる所定のタイミングをおいて第1の計測手段42aで計測した記録用紙39の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を示す計測情報から蒸散量H0を算出する(ステップS23)。この状態で搬送されている記録用紙39には転写装置35でトナー像が転写されて定着装置40に送られるとき、トナー像が転写された記録用紙39の先端部を第2の位置センサ41bで検出すると(ステップS24)、蒸散挙動演算処理部44は計時部45からそのときの時刻t1を入力し(ステップS25)、所定のタイミングをおいて第2の計測手段42bで計測した記録用紙39の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を示す計測情報から蒸散量H1を算出する(ステップS26)。蒸散挙動演算処理部44は第2の計測手段42bで計測した計測情報から蒸散量H1を算出すると、先に算出した蒸散量H0と今回算出した蒸散量H1及び第1の位置センサ41aと第2の位置センサ41aで記録用紙39の先端部を検出したときの時刻t0と時刻t1から蒸散速度Vを、
V=(H1−H0)/(t1−t0)
で演算し、演算した蒸散速度Vを変形予知処理部47に送る(ステップS27)。
このように記録用紙39の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を計測するのは、画像形成ユニット30に搬送される記録用紙39の端部は換気性がよく、周囲雰囲気への蒸散が多いうえ、乾燥が進みやすいとともに端部への水分供給が不足がちになるため、乾燥への挙動が迅速に現れ、記録用紙39の変形に大きく影響するためである。また、記録用紙39の先端部が第1の位置センサ41aと第2の位置センサ41bの位置に達したとき蒸散挙動を計測するのは、記録用紙39が搬送されているので記録装置39の同一個所で蒸散挙動を計測して正確な蒸散速度を得るためである。
変形予知処理部47は送られた蒸散速度Vと基準情報記憶部46に格納されている記録用紙39に変形が生じる以前の蒸散開始開始から変形が生じるまでの一定時間までの蒸散速度の基準値とを比較し、蒸散速度Vが基準値より小さいときは、搬送されている記録用紙39に変形が生じないと判定し、蒸散速度Vが基準値以上のときは、搬送されている記録用紙39に変形が生じると判定して変形予知情報を変形回避制御部48に送る(ステップS28)。変形回避制御部48は、変形予知情報が送られると、記録用紙39の搬送速度情報と定着装置40の定着温度情報を入力し、入力した搬送速度情報と定着温度情報を送られる記録用紙39の変形予測情報及び基準情報記憶部46に格納した加熱時間に対する温度上昇と蒸散増加量及び変位量を示す基準特性により可変して記録用紙39の搬送速度と定着温度の制御情報を生成して記録用紙39の搬送速度制御部49や定着温度制御部50に出力する(ステップS29)。搬送速度制御部49と定着温度制御部50は送られた搬送速度と定着温度の制御情報により記録用紙39の搬送速度を制御し定着装置40の定着温度を制御する。この搬送速度と定着温度を記録用紙39の変形回避のために制御しているとき、搬送速度と定着温度の制御情報に異常がある場合、記録用紙39の搬送を停止させ警報部51に警報信号を出力する(ステップS30,S31)。
このように記録用紙39を定着装置40に送る前に記録用紙39に含まれる水分の蒸散速度Vを演算して変形の有無を予知して変形回避処理を行うから、定着装置40で記録用紙39が加熱されたときに変形することを防止して用紙ジャムは発生することを抑制することができる。
記録用紙39の先端部が定着装置40に達して第3の計測手段42cから記録用紙39の先端部に含まれる水分の蒸散挙動を示す計測情報が蒸散挙動演算部44に入力すると、蒸散挙動演算部44は入力した計測情報から蒸散量H2を算出して変形回避制御部48に送る。変形回避制御部48は送られた蒸散量H2と基準情報記憶部46に格納した加熱時間に対する温度上昇と蒸散増加量及び変位量を示す基準特性を比較し、蒸散量H2が所定以上に増加している場合は警報部51に警報信号を出力する。
このように定着装置40で定着される記録用紙39の蒸散量H2を第3の計測手段42cの計測情報で算出することにより、最終的に記録用紙39の変形の有無を確認することができる。すなわち画像形成ユニット30に搬送された記録用紙39は定着装置40に搬送されるにしたがって次第に温度上昇し、この温度上昇により記録用紙39に含まれる水分の蒸散量が次第に多くなり、定着装置40を通過するとき最も温度が高くなり蒸散量が多くなる。そこで第3の計測手段42cの計測情報により、定着装置40に入った記録用紙39の蒸散量H2を算出して定着装置40で蒸散量がどの程度増加するかを推測できる。
また、第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cとして非接触結露検出装置3の例えば図14に示す計測手段12cを使用することにより、記録用紙39に非接触で蒸散挙動を計測するから、記録用紙39に転写されたトナー像に影響を与えずに蒸散挙動を計測することができるとともにリアルタイムで蒸散量を得ることができる。さらに、非接触結露検出装置3の例えば図14に示す計測手段12cは整流管13を構成しているから、搬送される記録用紙39により計測位置における蒸散の流れに揺らぎを与えないで精度良く蒸散挙動を計測することができる。
この第1の計測手段42aと第2の計測手段42bは、図28に示すように、記録用紙39の搬送経路の搬送ローラ52に組み込むことにより、記録用紙39との間隔を精度良く保つことができる。また、第1の計測手段42aと第2の計測手段42bを搬送ローラ52の近傍に設けても良いし、搬送手段として搬送ベルトを使用した場合には、搬送ベルトから一定位置だけ隔てた位置に第1の計測手段42aと第2の計測手段42bを設けても良い。
さらに、前記説明では第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cとして例えば図14に示す計測手段12cを使用した場合について説明したが、図12に示す計測手段12aや図13に示す計測手段12bあるいは図15に示す計測手段12dを使用しても良い。
また、図29(a)の正面図と(b)の断面図に示すように、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5の取り付け位置に空洞53を有するセンサ基板22に、温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を水分蒸散の流れ方向に沿って設け、センサ基板22の両側に蒸散の流れの揺らぎを抑制する流路板54を有する計測手段12fを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用しても良い。
また、図30(a)の斜視図と(b)の断面図に示すように、センサ基板22の上面22aに記録用紙39の搬送方向に沿ってサーモパイルや焦電構造の赤外線センサ等の焦電素子54と温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置し、センサ基板22の下面22bの焦電素子54と対向する位置に放熱素子55を配置し、センサ基板22の中央をエッチング等により除去して記録用紙39の側端部を通す空隙56を設けた計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用しても良い。この計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用した場合、放熱素子55から放射された熱は空隙56を横切って焦電素子54で検出される。この空隙56に記録用紙39が搬送されていると、放熱素子55から短時間例えば数10msec放射された微小熱量例えば数10mW程度の熱により、記録用紙39の端部の微小範囲で僅かな温度例えば0.1℃程度上昇し、微小範囲の水分が蒸散する。この蒸散の挙動を温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5で測定することにより蒸散量や温度を測定することができる。また、空隙56に記録用紙39が搬送されたとき、焦電素子54で記録用紙39を透過する赤外線量を検出することにより、記録用紙39の質(繊維密度)や含有水分量が測定でき、用紙変形の予知精度を高めることができる。
また、センサ基板22に位置センサ41を設けても良い。このようにセンサ基板22に位置センサ41を設けることにより、記録用紙39の先端部の蒸散挙動を確実に検出することができる。
前記説明では変形予知制御部43に蒸散挙動演算処理部44と変形予知処理部47及び変形回避制御部48を設けた場合について説明したが、図31のブロック図に示すように、蒸散挙動演算処理部44と変形予知処理部47及び変形回避制御部48の機能をCPU57で処理するようにしても良い。この場合は各位置センサ41a,41bや計測手段42a〜42cの計測情報を入力部58からCPU57に入力し、CPU57で蒸散挙動算出処理や変形予知処理及び変形回避処理を行い、その処理結果を出力部59から搬送速度制御部49や定着温度制御部50に送り、記録用紙39の搬送速度や定着温度を補正して記録用紙39が変形を防ぐ。
また、第1の計測手段42aと第2の計測手段42bを記録用紙39の搬送経路の上側に設けた場合について説明したが、非接触結露検出装置3の各計測手段12は小型で高速応答であるから、記録用紙39の搬送経路の下側に配置して、記録用紙39の下側から蒸散する蒸散挙動を検出して蒸散量を求めるようにしても良い。
前記説明では電子写真方式の画像形成装置について説明したが、インクジェット方式等他の方式の画像形成装置にも同様に適用して用紙ジャム等の記録用紙搬送障害の防止を行うことができる。