JP4178300B2 - 塗布膜の乾燥方法及び光学機能性フィルム - Google Patents

塗布膜の乾燥方法及び光学機能性フィルム

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Description

本発明は塗布膜の乾燥方法、及び光学機能性フィルムに係り、特に帯状の支持体を連続走行させながら、該支持体面に揮発性溶剤を溶媒とする塗布液を塗布して形成した塗布膜を乾燥する塗布膜の乾燥方法、及びその乾燥方法を用いて製造した光学機能性フィルムに関する。
揮発性溶媒を含む塗布液を支持体に塗布して形成した塗布膜を乾燥する乾燥工程においては、乾燥促進及び塗布膜から蒸発した溶剤ガスの除去を目的として乾燥ゾーンに乾燥エアの給排気を行わせるのが通常である。しかし、この給排気される乾燥エアの乱れによって直接的に塗布膜面を流動させたり、塗布膜面の乾燥速度ムラにより間接的に塗布膜面を流動させたりすることがある。これにより、製品化されたフィルムの塗布膜に膜厚ムラに起因するスジ故障が発生するという問題がある。この膜厚ムラの発生を塗布膜の厚みでみた場合、ウエット厚みで50μmを超える塗布膜の場合には塗布膜が容易に流動し易いために膜厚ムラが発生し易く、ウエット厚みで50μm以下の薄い塗布膜の場合には塗布膜が流動しにくいので比較的膜厚ムラが発生しにくいと言われている。
しかし、ウエット厚みで50μm以下の薄い塗布膜であっても、位相差膜や反射防止膜のような光学機能性フィルムを製造する際の塗布の場合には、僅かな膜厚ムラでも光学機能に悪影響を与えてしまう。特に、揮発性溶剤を溶媒とした塗布液を、ウエット厚み50μm以下で薄膜塗布する場合には乾燥速度が速いために、膜厚ムラが一旦発生するとその後のレベリングでは解消しきれずに膜厚ムラがそのまま製品に残ってしまうという問題がある。
塗布膜の膜厚むらを発生させない従来の方法としては、特許文献1のように乾燥エアの風速を0.1〜10m/秒に抑える方法や、特許文献2のように多孔板により乾燥エアを整流する方法がある。あるいは特許文献3のように塗布面上の乾燥エアを支持体幅方向に一方向の流れを形成して大気の乱れが塗布膜面で発生しないようにする方法がある。
特開2000−329463号公報 特公平2−58554号公報 特開2003−93954号公報
しかしながら、単に、従来の特許文献1〜3のように、乾燥エアの風速を抑えたり、乾燥エアを整流したり、塗布面上の乾燥エアを支持体幅方向の一方向に流しただけでは、膜厚ムラを十分に低減することができず、特に膜厚ムラが機能に影響し易い位相差膜や反射防止膜のような光学機能性フィルムを製造する場合には、従来の特許文献1〜3の方法では不十分である。
即ち、特許文献1は乾燥エアの風速を抑えることで膜厚ムラを低減する技術であるが、乾燥エアの風速が不均一な場合にも膜厚ムラは発生し、乾燥エアの風速を抑制しただけでは十分とは言えない。また、特許文献2は多孔板によって乾燥エアを整流することで膜厚ムラを低減する技術であるが、支持体の走行に伴う同伴風や塗布膜面上の溶剤を含む雰囲気の対流現象によっても膜厚ムラが生じるので、多孔板による整流だけでは十分と言えない。また、特許文献3は塗布膜面に支持体幅方向の一方向の乾燥エア流れを形成することによって膜厚ムラを低減する技術であるが、支持体に塗布する塗布量や支持体の走行に伴う同伴風等によっても膜厚ムラが発生することがあり、乾燥エアの風向きを規定だけでは十分とは言えない。
このように、膜厚ムラは色々な原因が複合して発生するものであり、乾燥エアの風速抑制、乾燥エアの整流、乾燥エアの方向規定を個々に制御するだけでは膜厚ムラを顕著に低減することはできない。これは、乾燥エアの風速、乾燥エアの整流、乾燥エアの方向は、必ずしも膜厚ムラを直接的に反映した指標ではないことを意味し、膜厚ムラを顕著に低減させるためには、膜厚ムラを直接的に反映した指標に基づいた乾燥方法が必要である。
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、帯状の支持体を連続走行させながら、該支持体面に揮発性溶剤を溶媒とする塗布液を塗布して形成した塗布膜を乾燥する際に、膜厚ムラの発生を顕著に低減することができる塗布膜の乾燥方法、及びその乾燥方法を用いて製造した光学機能性フィルムを提供する。
本発明者は、揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする塗布液を支持体に塗布して形成した塗布膜のように、塗布膜の乾燥において溶媒の蒸発が速い系では、乾燥雰囲気の乱れに起因する膜厚ムラは、表面張力勾配流れが支配的であるとの知見を得た。即ち、揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする塗布液を塗布する系においては、乾燥雰囲気の乱れがあると、主に表面張力勾配に起因する塗布液の流れによって膜厚ムラが発生するため、表面張力勾配を指標として乾燥ゾーン内の乾燥条件を制御することで、膜厚ムラを顕著に低減できることが分かった。この場合、塗布膜の膜厚ムラは、表面張力勾配の絶対値が50mN/m2 を超えると発生し易いと共に塗布膜中の残留溶剤量が高い乾燥初期で発生し易いことから、塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、表面張力勾配の絶対値を50mN/m2 以下に維持することが重要であることが分かった。更に、表面張力勾配の発生は、塗布膜面に沿った温度の変動や残留溶剤量の変動に依存するため、温度依存性の表面張力勾配と残留溶剤量依存性の表面張力勾配とのそれぞれについて制御する必要がある。また、乾燥の進行に伴う、温度依存性による表面張力の変化、及び残留溶剤量依存性による表面張力の変化は、それぞれ正の場合と負の場合とがある。そのため、両者の変化(一方は温度依存性による表面張力の変化、他方は残留溶剤量依存性とによる表面張力の変化)の正負が逆の場合、お互いにその影響を相殺しあい、実質の表面張力の変化量が小さくなることがある。このように表面張力の変化の正負を考慮するためには、両者の表面張力勾配を合計する場合、勾配を計算する向きを揃え、勾配の正負を考慮して行う必要がある。このように両者の表面張力勾配の合計を50mN/m2 以下に維持することで、膜厚ムラの発生を低減することができる。
尚、塗布膜中の残留溶剤量が30%以下に乾燥されるまで、表面張力勾配の絶対値を50mN/m2 以下に維持することがより好ましく、15%以下に乾燥されるまでは、表面張力勾配の絶対値を50mN/m2 以下に維持することが特に好ましい。更には、表面張力勾配の絶対値が20mN/m2 以下であれば一層良く、10mN/m2 以下であれば更によい。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
本発明において、揮発性溶剤とは、沸点が120°C以下の比較的低沸点の有機溶剤であり、これらの混合溶剤を含むものとする。通常、有機溶剤はある程度含水しており、また放置することで吸水するので、この程度の含水、概ね10体積%以下程度まで水を含む場合も含まれる。また、「揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする」とは、特定の効果を狙って小量の水或いは120°C以上の高沸点有機溶剤を添加する場合でも、実質的に溶剤の大部分、概ね90体積%以上が120°C以下の低沸点有機溶剤である場合を言い、本発明の範囲に含まれる。以下、同様である。
また、残留溶剤量とは、塗布直後の溶剤量を100%としたときに、乾燥中の塗布膜に残留している溶剤量として表される。以下同様である。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、帯状の支持体を連続走行させながら、該支持体面に、揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする塗布液を塗布して形成したウエット厚み50μm以下の塗布膜を乾燥エアで乾燥する塗布膜の乾燥方法において、前記塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、前記塗布膜における温度依存性の表面張力勾配と前記塗布膜における残留溶剤量依存性の表面張力勾配とを合計した表面張力勾配の絶対値が20mN/m2 以下になるように、前記支持体面に塗布する塗布液に界面活性剤を該塗布液に対して0.01〜0.50%の範囲で含有させると共に、前記塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン内においては、前記塗布膜の支持体幅方向1mm間隔当たりの膜面温度差が0.5°C以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第1の乾燥条件と、前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における風速勾配であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの風速勾配が50(1/秒)以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第2の乾燥条件と、前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における雰囲気温度差であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの雰囲気温度差が1°C以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第3の乾燥条件と、前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における蒸気圧差であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの蒸気圧差が飽和蒸気圧の20%以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第4の乾燥条件と、で乾燥することを特徴とする。
本発明の請求項によれば、塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、温度依存性の表面張力勾配と残留溶剤量依存性の表面張力勾配とを合計した表面張力勾配の絶対値が20mN/m2 以下になる乾燥条件で塗布膜を乾燥するようにしたので、塗布膜の膜厚ムラの発生を低減することができる。
尚、第1の乾燥条件の膜面温度差の更に好ましい条件は0.3°C以下であり、0.2°C以下であれば一層良い。第2の乾燥条件の更に好ましい条件は風速勾配が30(1/秒)以下であり、20(1/秒)以下であれば一層良い。第3の乾燥条件の雰囲気温度差の好ましい条件は0.7°C以下であり、0.5°C以下であれば一層良い。第4の条件の飽和蒸気圧の好ましい条件は10%以下であり、5%以下であれば一層良い。
請求項は、塗布膜の表面張力勾配を20mN/m2 以下にするための乾燥ゾーン内の乾燥条件を規定したものであり、上記した第1の乾燥条件から第4の乾燥条件を乾燥ゾーン内に形成することによって達成することができる。これら第1から第4の乾燥条件は、乾燥エアの乱れや乾燥速度ムラを抑制するためのものであり、乾燥エアの温度、風速、温度や風速の均一性、排気エアの風速や風速の均一性、溶剤を含む排気エアを乾燥ゾーンに循環させる循環量、乾燥エアと排気エアの給排気量バランス、支持体の走行速度、支持体に塗布する塗布量及び塗布液組成等の乾燥条件因子を、予備試験等において調整し、第1から第4の乾燥条件になるための設定値を設定すればよい。
更に請求項1は、前記塗布液に界面活性剤を含有させることによって前記表面張力勾配の絶対値を20mN/m2 以下にすることを特徴とする。
更に請求項1は、表面張力勾配の絶対値を20mN/m2 以下にするための塗布液の条件を示したもので、塗布液に界面活性剤を添加することにより、温度依存性や残留溶剤量依存性に起因する表面張力変化の絶対値を抑制することができる。更に、塗布液の組成と添加する界面活性剤の種類や添加量との組み合わせによっては、残留溶剤量依存性による表面張力の変化の正負を逆転させることも可能であり、温度依存性による表面張力変化と、残留溶剤量依存性による表面張力変化を相殺させることにより、両者の合計を20mN/m2 以下に抑えることもできる。揮発系溶剤を含む塗布液の系における特に好ましい界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤がある。塗布液に界面活性剤を含有させる際の添加量は、塗布液に対して0.01%〜0.50%の範囲が好ましい。添加量が0.01%未満では表面張力変化の抑制効果が不十分になり、0.50%を超えると、相分離などの他の故障が併発される虞があるためである。
更に請求項1は、前記塗布膜の厚みはウエット厚みで50μm以下であることを特徴とする。これは、塗布膜の厚みはウエット厚みで50μm以下の場合には、膜厚ムラが一旦発生するとその後のレベリングでは解消せずに膜厚ムラが製品に残ってしまうためで、本発明の塗布方法が特に有効に発揮されるからである。
本発明の請求項は前記目的を達成するために、請求項1又は2の塗布膜の乾燥方法を用いて製造されることを特徴とする光学機能性フィルムである。これにより、光学機能に優れたフィルムを製造することができる。
以上説明したように、本発明の塗布膜の乾燥方法によれば、帯状の支持体を連続走行させながら、該支持体面に揮発性溶剤を溶媒とする塗布液を塗布して形成した塗布膜を乾燥する際に、膜厚ムラの発生を顕著に低減することができる。また、この乾燥方法を用いて製造した光学機能性フィルムは、塗布膜の膜厚ムラが小さいので、光学機能に優れている。
以下、添付図面に従って、本発明に係る塗布膜の塗布方法及び光学機能性フィルムの好ましい実施態様について説明する。
図1は本発明に係る塗布膜の乾燥方法を適用する乾燥装置の実施の形態の全体構成を示す側面図であり、図2は乾燥装置の実施の形態の全体構成を示す上面図である。また、図3には、乾燥装置の要部断面図を示す。なお、図2では、後述する上蓋25を取り外して示している。
図1に示すように乾燥装置10は、搬送ローラ31,32に支持され搬送されている帯状で可撓性の支持体33にエクストルージョン型の塗布装置34で塗布液を塗布し形成された塗布膜36を乾燥させるために用いられ、7つの乾燥ゾーン11,12,13,14,15,16,17に分割される。これら各乾燥ゾーン11〜17を順次通過することにより、塗布液から溶媒ガスが蒸発して支持体33上に乾燥された塗布膜36が形成される。尚、符号30はエクストルージョン型の塗布装置34のバックアップローラであり、符号100は支持体33を走行するサクションローラである。
図2に示すようにそれぞれの乾燥ゾーン11〜17における幅方向の一端側には乾燥風の給気口41,42,43,44,45,46,47が設けられ、他端側には排気口18,19,20,21,22,23,24が設けられる。各給気口41〜47には、外気に連通する給気ダクト41A〜47Aが接続されると共に、給気ダクト41A〜47Aにはヒーター41B〜47Bと、給気ファン41B〜47Bが設けられる。ヒーター41B〜47Bは各給気口41〜47に給気する乾燥エア12d(図3参照)の温度を個々に調整できると共に、給気ファン41C〜47Cは各給気口41〜47に給気する乾燥エア12dの風速(風量)を個々に調整できる。また、各排気口18〜24には排気ダクト18A〜24Aが接続されると共に、排気ダクト18A〜24Aには各乾燥ゾーン11〜17からの排気量を個々に調整する排気ボックス40と、排気ボックス40で合流して合流ダクト40Bを流れる排気ガスを排気する排気ファン40Aが設けられる。また、排気ボックス40と排気ファン40Aとの間から循環ダクト50が分岐され、各給気ファン41C〜47Cの吸引側に接続される。
図3は、7分割された乾燥ゾーン11〜17のうち乾燥ゾーン12の断面図を示したものである。
図3に示すように、乾燥ゾーン12は、乾燥ゾーン本体12aと整風板26とが備えられている。乾燥ゾーン本体12aは、支持体33を通す通路室12bと、蒸発した溶媒ガスを排気する排気室12cとを備えており、通路室12bと排気室12cとは整風板26によって仕切られる。給気口42には給気ダクト42Aが接続されると共に、排気口12には排気ダクト19Aが接続される。給気口42と排気口12とは、支持体33幅方向における反対側位置に形成されており、支持体33の幅方向の一方方向に乾燥エア12dが流れるように構成される。整風板26の開口率、材料などは特に限定されないが、50%以下の開口率である金網やパンチングメタルなどが好ましく、開口率が20%〜40%であることがより好ましい。具体的には、300メッシュで開口率30%の金網を用いることができる。また、支持体33に形成された塗布膜36の塗布膜面36aとのクリアランスCが10mmになるように整風板26は、取り付けられている。また、支持体33裏面(塗布膜36が形成されていない面)及びサイドからの不必要な風の流れを抑制するためにシール部材である上蓋25及びサイドシール48,49を取り付けている。なお、整風板26には、開口率を調整するために金網を用いているが、本発明においては金網に限らずパンチメタル等で開口率を決定することも可能である。本発明の乾燥方法によれば、塗布膜36中の有機溶媒が蒸発した溶剤ガス(通常は、気化した溶媒が高濃度に含まれている)36bは、整風板26の穴26aを通過して、塗布膜面36aに対して整風板26の反対側を通る排気室12cの乾燥エア12dにより支持体33の幅方向に均一に排気ダクト19Aから排気される。このため、塗布膜面36aに乾燥エア12dが触れることが無く、塗布膜面36aにムラが発生することが抑制される。なお、本発明に用いられる乾燥ゾーンは、図示した形態に限定されるものではない。
また、図1に示すように乾燥ゾーン11(以下、第1乾燥ゾーンと称する)は、支持体33にエクストルージョン型の塗布装置34で塗布液を塗布した直後に設置し、新鮮な塗布室の空調風が乾燥装置10に入り込まないように設置することが重要である。
図4は、他の実施形態の乾燥装置の全体構成を示す側面図である。
図4に示した乾燥装置60は、7分割された乾燥ゾーン61,62,63,64,65,66,67から構成され、またシール部材75である上蓋75a及びサイドシール75b、並びに整風板76も取り付けられている。排気ダクト68,69,70,71,72,73,74もそれぞれのゾーンに対応した排気口(図示しない)に取り付けられている。各排気ダクト68〜74の取り付け位置が前述した形態と異なり、各乾燥ゾーン11〜17の下方に取り付けられている。本発明において、乾燥ゾーン11〜17に取り付けられる排気ダクト68〜74の取り付け位置は、図示した形態に限定されるものではない。また、乾燥装置60を構成している乾燥ゾーンも図示したように7分割されている必要はなく、複数個の乾燥ゾーンを備えていれば良く、それら乾燥ゾーンにより塗布膜中の溶媒が蒸発した溶剤ガスを均一に排気することができ、塗布膜を均一に乾燥することが可能となる。なお、特に好ましくは、2〜10の乾燥ゾーンから構成しているときである。
次に、上記の如く構成された乾燥装置10の作用を説明する。
搬送ローラ31,32に支持され搬送された支持体33にエクストルージョン型の塗布装置34で塗布液を塗布した後、塗布装置34の直後より設けられた乾燥装置10によって初期の乾燥操作が行なわれる。塗布直後の塗布膜面は溶媒過剰の状態にあり、揮発性有機性溶媒、特に沸点が120°C以下の揮発性の有機性溶媒を実質的に主成分とする塗布液を塗布した直後の初期乾燥では揮発性の有機性溶媒の蒸発の分布(ゆらぎ)によって膜面温度の分布から表面張力勾配が発生し、その結果、塗布膜面内で表面張力勾配に起因する塗布液の流動が起き乾燥の遅い部分の塗膜が薄くなり膜厚ムラとなる。そこで、塗布してから塗布膜面の流動が停止するまでの乾燥初期の間、即ち塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、乾燥雰囲気を一定にすることが重要であり、外部からのランダムな風の流入を阻止すると共に、塗布膜面近傍の溶媒濃度を常に一定に保ち、蒸発してくる溶媒ガスを均一に排除することが必要である。そこで、支持体33に塗布装置34で塗布液を塗布した後、塗布装置34の直後に図3に示すように塗布された支持体33を囲うことで、外気からの空気の乱入を抑え、開口率が30%の300メッシュの金網を貼り付けた乾燥装置10が設けられ、7分割されたそれぞれの乾燥ゾーン11〜17で幅方向で均一に排気できるようにすることで、塗布膜面近傍の溶媒濃度を常に一定に保つようにした。
更に、塗布膜面36aと整風板26との隙間が広いと空気の渦が発生し、この渦に起因する表面張力勾配が生じて塗布膜面36aに膜厚ムラが生じる原因となる。そこで、風の流れをコントロールするために、塗布膜面36aと整風板26との隙間Cを3mm〜30mmとすることが好ましく、より好ましくは、5mm〜15mmである。また、7分割された乾燥ゾーン11〜17にそれぞれ取り付けられた排気口18〜24からの排気速度を排気ボックス40で個々に制御することで、排気精度が向上し塗布膜面を流れる溶媒を含んだ風の流れを一様にでき、塗布膜面の膜厚ムラの発生を抑制できる。
また、各乾燥ゾーン11〜17に給気される乾燥エア12dの温度が高過ぎたり風速(風量)が速すぎて乾燥速度が早過ぎると、特に揮発性溶剤を実質的に主成分とする塗布液を使用してウエット厚みで50μm以下の薄層塗布の場合に乾燥速度ムラが発生しやすいので、乾燥エア12dの温度と風速を適切に設定することが重要である。そこで、各乾燥ゾーン11〜17へ給気する乾燥エア12dの温度を、各ヒータ41B〜47Bにより個別に制御できるようにすると共に、各乾燥ゾーン11〜17へ給気する乾燥エア12dの給排気バランスを、各給気ファン41C〜47Cと排気ボックス40とにより個別に制御して、各乾燥ゾーン11〜17内の排気室12cを流れる乾燥エア12dの風速を個別に制御できるようにした。これにより、乾燥速度ムラにより塗布膜に温度分布や残量溶剤分布が生じ難くなるので、表面張力勾配の発生を抑制することができる。
また、乾燥エア12dは、塗布膜面から溶剤を蒸発させると共に蒸発した溶剤を伴って排気ボックス44から排気エアとして合流ダクト40Bに排気される。排気された排気エアの一部が循環ダクト50を介して各給気ダクト41A〜47Aに合流し、新鮮エアと混合されて再び各乾燥ゾーン11〜17に給気される。この場合、新鮮エアと排気エアの混合比は給気ファン41C〜47Cの給気風量と排気ファン40Aの排気風量を調整することによって個別に設定することができる。このように、乾燥ゾーン11〜17から排気される排気エアの一部を乾燥エア12dとして循環使用することにより、乾燥エア12d中に溶剤が含有されるので、塗布膜面上に形成される溶剤ガス層が対流現象を引き起すのを抑制することができる。即ち、塗布膜面上の雰囲気には、塗布面温度における飽和蒸気圧に対応する濃度の溶剤ガスが含まれており、この溶剤ガスを含む溶剤ガス層はある程度の厚みをもって存在している。従って、新鮮エアのみの乾燥エア12dを乾燥ゾーン11〜17内に給気すると、瞬間的に溶剤ガスの濃い雰囲気部分と薄い雰囲気部分が生じることにより乾燥ゾーン11〜17内に対流現象が生じ、塗布膜面を乱す要因になる。また、溶剤ガスの濃い雰囲気部分と薄い雰囲気部分が生じることにより塗布膜面に乾燥速度ムラが生じ、この乾燥速度ムラにより塗布膜に温度分布や残量溶剤分布が生じてしまい表面張力勾配が発生する要因になる。しかし、乾燥ゾーン11〜17から排気される排気エアの一部を乾燥エア12dとして循環使用することにより、乾燥エア12dの組成が乾燥ゾーン11〜17内の溶剤ガス層の組成に近くなるので、溶剤ガス層が対流現象を引き起すのを抑制することができる。
特に、第1乾燥ゾーン11では、蒸発した溶剤ガスを排気しないことが最も好ましい。そこで、第1乾燥ゾーン11は、排気ボックス40と接続せずに排気口18に排気ダクト18A、給気口41に給気ダクト41Aが取り付けられているだけの構成でもよい。また、排気口18と給気口41にそれぞれダクトを取り付けずにそれぞれ口が開いたままであっても良い。しかしながら、本発明に用いられる第1乾燥ゾーン11は、乾燥装置10外の気体(主に空気)が混入しないように、排気口18と給気口41とを設けずに又は排気口18と給気口41とに目張りをして、無風乾燥ゾーンとすることが最も好ましい。また、排気する際にもその他の乾燥ゾーン12〜17の排気速度と同じ速度以下で排気することが、塗布膜面の膜厚ムラの発生を抑制するために必要である。
また、支持体33を吸着搬送するサクションローラ100のローラ温度と搬送される支持体33の塗布膜温度との温度差が塗布膜面に表面張力勾配を発生させて塗布膜面を流動させる原因になるので、サクションローラ100は独立した空調室(図示せず)に収納して塗布膜温度との温度差がなくなるように空調することが好ましい。
上記の如く構成された乾燥装置10によって、本発明の塗布膜の塗布方法を実施するには、塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、塗布膜における温度依存性の表面張力勾配と塗布膜における残留溶剤量依存性の表面張力勾配とを合計した表面張力勾配が20mN/m2 以下になるように塗布膜を乾燥する。これにより、支持体33面に揮発性の溶媒を実質的に主成分とする塗布液を塗布形成した塗布膜を乾燥する際に、膜厚ムラの発生を顕著に低減することができる。従って、製造された製品の塗布膜に膜厚ムラに起因するスジ故障が発生しないようにできる。
尚、塗布膜中の残留溶剤量が30%以下に乾燥されるまでは、表面張力勾配の絶対値を20mN/m2 以下に維持することが一層好ましく、残留溶剤量が15%以下に乾燥されるまでは、表面張力勾配の絶対値を20mN/m2 以下に維持することが特に好ましい。更には、表面張力勾配の絶対値が10mN/m2 以下であれば更によい。
表面張力勾配を20mN/m2 以下にするには、次の4つの乾燥条件、塗布膜の膜面温度分布、塗布膜面上の風速分布、塗布膜面上の雰囲気温度分布、塗布膜面上の雰囲気蒸気圧分布を以下説明するように設定することにより達成することが可能である。これら第1から第4の乾燥条件は、乾燥エア12dの乱れや乾燥速度ムラを抑制するためのものであり、乾燥エア12dの温度、風速、温度や風速の均一性、排気エアの風速や風速の均一性、排気エアを乾燥ゾーン11〜17に循環させる循環量、乾燥エアと排気エアの給排気量バランス、支持体33の走行速度、支持体33に塗布する塗布量及び塗布液組成等の乾燥条件因子を、予備試験等において調整し、上記した4つの乾燥条件を満足するための設定値を設定すればよい
また、表面張力勾配を50mN/m2 以下にするには、塗布液に対して界面活性剤を添加するのも良い方法である。塗布液に界面活性剤を添加することによって、温度依存性や残留溶剤量依存性に起因する表面張力変化の絶対値を抑制することができるからである。例えば、塗布液の組成と添加する界面活性剤の種類との組み合わせによっては、残留溶剤量依存性による表面張力の変化の正負を逆転させることも可能であり、温度依存性による表面張力勾配の変化と、残留溶剤量依存性による表面張力勾配の変化を相殺させることによって、表面張力勾配の絶対値を顕著に低減することができるからである。界面活性剤の種類としては、フッ素系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤が好ましい。塗布液に界面活性剤を含有させる際の添加量は、塗布液に対して0.01%〜0.50%の範囲が好ましい。添加量が0.01%未満では表面張力変化の抑制効果が不十分になり、0.50%を超えると、相分離などの他の故障が併発される虞があるためである。また、本発明において、塗布液の粘度範囲に特に制限はないが、粘度が100mPas以下の低粘度の場合において適用することが一層好ましい。
従って、上記した4つの乾燥条件と塗布液への界面活性剤との添加とを色々組み合わせて、表面張力勾配を50mN/m2 以下にするための条件を選択すれば良く、20mN/m2 であれば更に良く、10mN/m2 であれば特に良い。
(塗布膜の膜面温度分布)
塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン20内においては、塗布膜の支持体幅方向1mm間隔当たりの膜面温度差が0.5°C以下になるための乾燥条件を乾燥ゾーン20内に形成する。これを第1の乾燥条件と称することにする。
塗布膜の支持体幅方向1mm間隔おきの膜面温度を放射温度計又は熱画像装置を使用して測定する。測定された複数の膜面温度のうち、隣り合う2つの膜面温度をT1 (°C)、T2 (°C)としたときに、T1 (°C)、T2 (°C)から膜面温度差TX (°C)=T1 (°C)−T2 (°C)を計算し、塗布膜の支持体幅方向1mm間隔当たりの膜面温度差が0.5°C以下になるように上記した乾燥条件因子を設定する。即ち、測定された複数の膜面温度のうち、1mm離れて隣り合う2つの膜面温度の全てにおいて膜面温度差が0.5°C以下になるようにする。尚、膜面温度差が0.3°C以下であれば一層良く、0.2°C以下であれば特に良い。
(塗布膜面上の風速分布)
塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン20内においては、塗布膜面から5mm離間した高さ位置における風速勾配であって、支持体幅方向5mm間隔当たりの風速勾配が50(1/秒)以下になるための乾燥条件を乾燥ゾーン20内に形成する。これを第2の乾燥条件と称することにする。
風速の測定方法は、塗布膜面から5mm(0.005m)離間した高さ位置に、支持体幅方向5mm間隔おきに熱線風速計又は超音波式風速計をそれぞれ配置し、塗布膜面に吹き付けられる乾燥エア12dの風速を同時に測定する。測定された複数の風速のうち、5mm離れて隣り合う2つの風速をV1 (m/秒)、V2 (m/秒)としたときに、V1 (m/秒)、V2 (m/秒)から次式(1)によって風速勾配VX (1/秒)を計算し、風速勾配VX が50(1/秒)以下になるように上記した乾燥条件因子を設定する。即ち、測定された複数の風速のうち、5mm離れて隣り合う2つの風速の全てにおいて風速勾配VX が50(1/秒)以下になるようにする。
[数1] 風速勾配VX (1/秒)=( V1 −V2 )/0.005…(1)
風速勾配を測定する別の方法としては、乾燥エア12dに混入させた粒子などをトレーサーとして用い、ビデオ観察を行うPIV法による測定でもよい。尚、風速勾配が30(1/秒)以下であれば一層良く、20(1/秒)以下であれば特に良い。
(塗布膜面上の雰囲気温度分布)
塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン内においては、塗布膜面から5mm離間した高さ位置における雰囲気温度差であって、支持体幅方向5mm間隔当たりの雰囲気温度差が1°C以下になるための乾燥条件を乾燥ゾーン内に形成する。これを第3の乾燥条件と称することにする。
雰囲気温度の測定方法は、塗布膜面から5mm(0.005m)離間した高さ位置に、支持体幅方向5mm間隔おきに熱電対をそれぞれ配置し、塗布膜面上の雰囲気温度を同時に測定する。測定された複数の膜面温度のうち、5mm離れて隣り合う2つの雰囲気温度をt1 (°C)、t2 (°C)としたときに、t1 (°C)、t2 (°C)から雰囲気温度差tX (°C)=t1 (°C)−t2 (°C)を計算し、塗布膜の支持体幅方向5mm間隔当たりの雰囲気温度差tX が1(°C)以下になるように上記した乾燥条件因子を設定する。即ち、測定された複数の雰囲気温度のうち、隣り合う雰囲気温度の全てにおいて雰囲気温度差tX が1(°C)以下になるようにする。この場合、熱電対は空気中における応答性が66%応答で1秒程度であることが望ましい。尚、雰囲気温度差が0.7°C以下であれば一層良く、0.5°C以下であれば特に良い。
(塗布膜面上の雰囲気蒸気圧分布)
塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン内においては、塗布膜面から5mm離間した高さ位置における蒸気圧差であって、支持体幅方向5mm間隔当たりの蒸気圧差が飽和蒸気圧の20%以下になるための乾燥条件を乾燥ゾーン内に形成する。これを第4の乾燥条件と称することにする。
蒸気圧の測定は、塗布膜面から5mm(0.005m)離間した高さ位置に、支持体幅方向5mm間隔おきにチューブ管を配置して乾燥ゾーン20内の雰囲気エアをサンプリングし、接触燃焼法、水素イオン化検出法、赤外線吸収法、吸着管法の何れかで雰囲気エア中の溶剤量を定量し、定量結果から蒸気圧を計算する。得られた複数の蒸気圧のうち、5mm離れて隣り合う蒸気圧をP1 (mmHg)、P2 (mmHg)としたときに、蒸気圧P1 (mmHg)、P2 (mmHg)から蒸気圧差PX (mmHg)=P1 (mmHg)−P2 (mmHg)を計算し、蒸気圧差PX が飽和蒸気圧の20%以下になるように上記した乾燥条件因子を設定する。即ち、測定された複数の蒸気圧のうち、隣り合う2つの蒸気圧の全てにおいて蒸気圧差PX が飽和蒸気圧の20%以下になるようにする。尚、蒸気圧差が飽和蒸気圧の10%以下であれば一層良く、5%以下であれば特に良い。
これらの膜面温度分布、風速温度分布、雰囲気温度分布、雰囲気蒸気圧分布は、乾燥ゾーンの搬入口直後から搬出出直前まで支持体の走行方向全体に渡って行う必要がある。
このようにして、塗布膜面における表面張力勾配が20mN/m2 以下を達成することができたら、次に表面張力勾配を次の方法で求めることによって表面張力勾配が20mN/m2 以下になっているかを管理する。
塗布膜の表面張力(σ)を直接測定することは難しいので、予め塗布液における表面張力の温度依存性(σT)[mN/m・°C]、及び塗布液における表面張力の残留溶剤量依存性(σW)[mN/m]を測定しておいて、別の方法により塗布膜の膜面温度分布、及び塗布膜の残留溶剤量分布を測定し、これから塗布膜の表面張力勾配を計算する方法を採用するとよい。以下、温度依存性の表面張力勾配と残留溶剤量依存性の表面張力勾配の求め方を説明する。
(温度依存性の表面張力勾配の求め方)
先ず、表面張力の温度依存性(σT)は、プレート法又はリング法を用い、実際に塗布に使用する塗布液の温度を変えて表面張力を測定する。一般的な有機溶剤を使用した塗布液の場合、温度が10°C変化したときの表面張力の変化は1mN/m程度である。通常の表面張力計の精度は高々0.2mN/mであるので、表面張力の測定は、最低10°Cの温度差を置いて測定することが好ましい。また、測定時に結露を生じないように測定雰囲気を管理する必要がある。この表面張力の温度依存性(σT)は、塗布液よりも表面張力の低い液体、又は界面活性剤を添加することによって下げることができる。
次に、乾燥ゾーンを走行する支持体33における塗布膜の膜面温度分布を測定する。この測定は放射温度計又は熱画像装置を用いて測定できる。熱画像装置を使用する場合、動いている支持体の表面温度を測定するには、測定サイクルを60Hz以上にすることが好ましい。もし、測定サイクルが60Hz以上の熱画像装置がない場合には、支持体33の走行を一時的に停止して直ちに測定してもよい。そして、得られた膜面温度分布から、支持体幅方向1mm幅(0.001m幅)当たりの膜面温度差ΔTを求め、次式(2)から温度依存性の表面張力勾配を得ることができる。
[数2] ΔT(°C)
温度依存性の表面張力勾配=────────×σT(mN/m・°C)…(2) 0.001(m)
この場合、表面張力勾配を50mN/m2 以下となるように塗布膜を乾燥すると、膜厚ムラのない乾燥を行うことができる。ここで、温度依存性の表面張力勾配を小さくするには、ΔT及びσTを小さくすればよいが、ΔTを小さくするには上記した乾燥条件因子のうち乾燥ゾーン20内での乾燥エア12dの風速を1.0m/秒以下にすることが有効である。また、σTを小さくするには乾燥条件因子の他に上記したように塗布液に界面活性剤を添加した塗布液組成にすることが有効である。尚、塗布液の温度依存性は、溶媒が40%ほど蒸発してもそれほど変わるものではなく、多くの場合、塗布前に測定した塗布液の温度依存性を使用することができる。
(残留溶媒依存性の表面張力勾配の求め方)
先ず、表面張力の残留溶剤量依存性(σW)は、表面張力の温度依存性の場合と同様に、プレート法又はリング法により測定する。例えば、残留溶剤量(質量分率W)がW=1(溶剤が塗布時と同じだけ残留)の場合とW=0.5(溶剤が塗布時の半分だけ残留)の場合の2つの塗布液について、塗布条件の温度環境下で表面張力σ1、σ2を測定し、計算式σW=(σ1−σ2)/(1−0.5)から表面張力の残留溶剤量依存性(σW)を得ることができる。
次に、乾燥ゾーンを走行する支持体33における塗布膜の残留溶剤量分布を測定する。残留溶剤量分布を測定する方法としては、膜面温度差ΔT、溶剤塗布量G(g/m2 )、溶剤の蒸発潜熱H(J/kg)、塗布膜を含む支持体の面積当たりの熱容量C(J/m2 ・K)から、直接的に残留溶剤差ΔW=ΔT×1000C/G・Hを求めることができる。また、膜厚計を用いて膜厚を求め、残留溶剤量に換算する方法がある。そして、得られた残留溶剤量分布から、支持体幅方向1mm幅(0.001m幅)当たりの残留溶剤差ΔWを求め、次式(3)から残留溶剤依存性の表面張力勾配を得ることができる。
[数3] ΔW
残留溶剤依存性の表面張力勾配=────────×σW(mN/m)…(3) 0.001(m)

以上説明したように、本発明では、色々な原因が複合して発生する膜厚ムラに密接に関係する表面張力勾配を指標として、塗布膜の乾燥を行うようにしたので、帯状の支持体33を連続走行させながら、該支持体33面に揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする塗布液を塗布して形成した塗布膜を乾燥する際に、膜厚ムラの発生を顕著に低減することができる。これにより、膜厚むらに起因するスジ故障がないか、あっても極僅かなフィルムを製造することができる。また、この乾燥方法を用いれば、膜厚ムラが機能に影響し易い位相差膜や反射防止膜のような光学機能性フィルムであっても光学特性に優れた光学機能性フィルムを製造することができる。
本発明で使用される支持体33としては、一般に幅0.3m〜5m、長さ45m〜10000m、厚さ5μm〜200μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフイルムなどが挙げられる。また、紙および紙にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートしたものも挙げられる。さらに、アルミニウム、銅、錫等の金属箔等も挙げられる。そして、これら支持体33の表面に予備的な加工層を形成させたものを用いても良い。さらに支持体33には、光学補償シート塗布液、磁性塗布液、写真感光性塗布液、表面保護、帯電防止あるいは滑性用塗布液等がその表面に塗布され、乾燥された後、所望する長さ及び幅に裁断されるものも含まれ、これらの代表例としては、光学補償シート、各種写真フイルム、磁気テープ等が挙げられる。
本発明に用いることができる塗布液(溶液)は、支持体33上に塗布膜を形成するものであれば、公知のいずれの塗布液を用いることができる。尚、本発明の塗布膜のウエット膜厚は、1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは1μm〜20μmであり、最も好ましくは1μm〜10μmである。さらに、本発明はウェット膜厚が1μm未満の薄膜形成にも適用することが可能である。
塗布液の溶媒である揮発性溶剤としては、例えば有機溶剤を一般的に使用することができ、有機溶剤としてはメチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ノルマルプロピルアルコール(n−prOH)、N−メチルピロリドン(NMP)等を使用することができる。
上記塗布液の塗布方法としては、バーコーティング、カーテンコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、スプレーコーティング及びスライドコーティングを挙げることができる。特にバーコーティング、エクストルージョンコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティングが好ましい。
本発明において同時に塗布される塗布液の塗布層の数は単層に限定されるものではなく、必要に応じて同時多層塗布方法にも適用できる。
次に、本発明の乾燥装置を用いた製造ラインとして、光学機能性フィルム例えば光学補償フィルム、防眩性フィルム、反射防止フィルム等の製造ラインのように、揮発性溶媒を含む塗布液を支持体に薄層塗布した塗布膜を乾燥する場合について説明する。
図5は、上記した乾燥装置10を用いて構成された防眩性反射防止フィルムの製造ラインを示す。
図5に示すように、送り出し機80から支持体33が送り出され、搬送ローラ81によって支持されながら、除塵機82により、支持体33の表面に付着した塵が取り除かれる。そして、塗布装置34により防眩層を形成する塗布液が塗布された後に、乾燥装置10により初期乾燥がなされる。その後、さらに搬送ローラ81で支持されながら、支持体33は本乾燥機83、加熱機84を通り防眩層が形成される。さらに、紫外線ランプ85を支持体33の表面に形成された防眩層に照射して、所望のポリマーを形成する。ポリマーが形成された支持体33は、巻き取り機86により巻き取られる。さらに、防眩層が形成された支持体33に低屈折率層を形成することも可能である。防眩層が形成された支持体33をもう一度送り出し機80に取り付け、塗布装置と乾燥装置とにより低屈折率層用塗布液を塗布して乾燥させて低屈折率層を防眩層の上に形成し、防眩性反射防止シートを得ることができる。なお、低屈折率層は、1層でも良いし、複数層を形成させても良い。
図6は、光学補償フィルムの製造ラインを示したものであり、図5の構成にラビング処理を行うラビング処理装置を設け、更に乾燥装置として、無風乾燥ゾーン130と乾燥風ゾーン132を備えた乾燥装置118を組み込んだものである。また、塗布機としてはワイヤーバー型の塗布装置114を使用した。
図6に示すように、送り出し機155から支持体112が送り出され、複数の搬送ローラ156、156…に支持されながら、ラビング処理装置158のラビングローラ168によりラビング処理が成される。その後、除塵機169により、支持体112の表面に付着した塵が取り除かれる。そして、塗布装置114のワイヤーバー114Aにより光学補償層を形成する塗布液が塗布された後に、乾燥装置118により初期乾燥がなされた後、本乾燥機160、加熱機162、紫外線ランプ164を通過して巻き取り機166で巻き取られる。尚、符号120、122、124は塗布装置114及び乾燥装置118におけるガイドローラであり、符号100はサクションローラである。
以下に、ポリマー溶液を塗布した際の膜厚分布に関する実施例1と、光学機能フィルム製造へ本発明を適用した実施例2を説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)PVB −MIBKの例
メチルイソブチルケトン(MIBK)にポリビニルブチラール(PVB300、和光純薬工業(株))を固形分で13%溶解し、13(mPa・s)の塗布液を得た。これを図1のエクストリュージョン塗布機34を用いて、幅600mm に裁断したPET フィルム上(テイジンテトロンフィルム:帝人デュポンフィルム(株)製)に塗布し、ウェット膜厚50μm の塗布膜36を作成した。PET (ポリエチレンテレフタレート)フィルムの厚みは100 μmとした。
乾燥装置10は、乾燥ムラを抑えるために第1乾燥ゾーン11には風を送風せず無風乾燥ゾーンとするため、乾燥風の給気口及び排気口には目張りをした。そして、第2乾燥ゾーン12から第7乾燥ゾーン17までの風速を調整し、塗布膜36の面状を比較した。風速の設定は、熱線風速計を用い、各乾燥ゾーン11〜17の中央で支持体33の搬送・塗布を行わない状態において、支持体33からの距離が5mm となる位置にて測定し、各乾燥ゾーンへの給気圧力を調整することで行った。各乾燥ゾーン11〜17の長さは500mm であり、搬送速度は8m/ 分とした。
乾燥装置10を出た塗布膜36は、130 °Cの恒温乾燥ゾーンを1分間かけて通過させた後、巻き取り機に巻き取った。
こうして得られた塗布膜36の評価は、光干渉式の膜厚センサZ5FM-200(オムロン株式会社製)を用いた膜厚分布測定により行った。支持体幅方向に給気側の塗布端部10mmから中央部付近まで長さ300mm にわたり、2mm 間隔にて膜厚を測定した。膜厚の測定は、ポリエチレンテレフタラートフィルムと塗布膜との界面と、塗布膜表面との距離として測定した。こうして得られた膜厚分布からグラフを作成し、15mm幅内で見たときに最も厚い箇所と最も薄い箇所の差を膜厚差と定義し、そのうち300mm 幅全体で最大のものを、最大膜厚差(表1〜3には膜厚分布として示した)として指標に用いた。その際、耳部厚塗りとわかるものは除外した。
各乾燥ゾーン11〜17における風速分布は、熱線風速計を用い、塗布している環境において測定した。
塗布膜36面の表面張力勾配は、熱画像装置による塗布膜温度分布測定と、上記した表面張力の温度依存性、残留溶剤量依存性の測定から算出した。表面張力の温度依存性は、5 °C、15°C、25°Cにおける測定の結果、0.1 (mN/m・K )であった。一方、表面張力の残留溶剤量依存性は2mN/m2 となった。塗布膜の熱容量、溶剤の蒸発潜熱、溶剤塗布量から、溶剤量の変化を温度変化で捉えると、表面張力の残留溶剤量依存性は温度換算で0.03(mN/m ・K)となった。また、各乾燥ゾーン11〜17内を通過する塗布膜36の表面温度分布を熱画像装置によって測定するために、各乾燥ゾーンの中央部は、φ120 の蓋を開けられるようにし、測定時には赤外透過材料であるフッ化カルシウムによる窓と交換した。そして、マイクロボロメータータイプの熱画像装置により、塗布中における塗布膜の熱画像を60Hzの速度で10cm角程度の範囲が映るように10秒間撮影した。そして、その中で最大の温度勾配から表面張力勾配を計算し、指標として用いた。
<実験1>
第2乾燥ゾーン12における設定風速を0.05、0.1 、0.4 、0.8 、1.5m/sと変えたとき( 試験1〜5)、乾燥ゾーンにおける風速勾配、塗布膜36の表面張力勾配mN/m2 がどのようになるかを測定した。そのとき、第3乾燥ゾーン13〜17以降は、風速条件を0.05m/s とした。また、比較のため、界面活性剤であるメガファックF-781-F (大日本インキ化学工業製)を塗布液に対して0.1 %添加した場合(試験6)、乾燥装置10を取り外して自然乾燥させた場合(試験7)についても実験を行った。後者の場合に得られた風速は、機内の空調系によるものである。
尚、膜厚分布50nmは乾燥膜厚5μm(5000nm)の1%に相当し、0.2%までは極めて高品位なレベルであり、0.4%までは高品位なレベルであり、0.6%までは同程度の薄膜としては通常のレベルであり、1.0%以上では、通常の薄膜としても膜厚分布が問題となってくるレベルである。このことから、表1には、レベル評価として、膜厚分布が乾燥膜厚5μm対して何%に相当するかを示した。
[表1]
風速 風速勾配 表面張力勾配 膜厚分布 レベル評価 界面活性剤
(m/s) (sec -1) (mN/m2 ) (nm) (%)
試験1 0.05 8 10 9 0.18 なし
試験2 0.10 10 14 12 0.24 なし
試験3 0.40 35 32 29 0.58 なし
試験4 0.80 55 52 51 1.02 なし
試験5 1.5 75 68 62 1.24 なし
試験6 0.80 50 8 8 0.16 あり
試験7 0.20 45 47 41 0.82 なし
表1 の試験1〜試験5 の結果から分かるように、第2乾燥ゾーン12の風量を変えていくと、それに従って風速勾配、塗布膜の表面張力勾配が増加していることがわかる。また、更に表面張力勾配が増加すると膜厚分布も増加する傾向が見て取れる。
試験6から、界面活性剤を添加すると、風速勾配は同じでも表面張力勾配が下がった結果、膜厚分布も小さくなっていることがわかる。
試験7は、乾燥装置10を設置せず、大気中を搬送させて乾燥させたときの結果である。この場合、整流作用のない風が当たっているため、風速分布は同じ風速の場合よりも大きくなる傾向を示し、膜厚分布も悪化している。この結果から、膜厚ムラの指標として、風速ではなく、風速勾配がより有効であることが示唆される。
<実験2>
次に、乾燥ゾーンの位置と膜厚分布の起こりやすさの関係を調べるため、第2乾燥ゾーン12から第5乾燥ゾーン15のうち、一箇所のみ風速0.8m/sに設定し、残りのゾーンを0.05m/s としたときに、乾燥ムラがどのようになるかを調べた。また、各乾燥ゾーンの入口に膜厚計を取り付けて、0.8m/s設定の乾燥ゾーン直前における塗布膜36の残留溶剤量も調べた。ここで用いた塗布液について、溶媒を蒸発させながら粘度を測定し、残留溶剤量に対する粘度の関係を求め、その関係式から、ある残留溶剤量に対応する粘度を推算した。粘度測定には、振動式粘度計CJV−5000((株)エーアンドディー製)を使用した。残留溶剤量とは、前述したように、塗布直後の溶剤量を100%としたときに、乾燥中の塗布膜に残留している溶剤量として表される。
[表2]
風速条件(m/s) 0.8m/s ゾーン 表面張力勾配 膜厚分布 粘度
第2 第3 第4 第5 残留溶剤量 (mN/m 2 ) (nm) (mPa ・s)
試験1 0.8 0.05 0.05 0.05 94% 52 51 15
試験2 0.05 0.8 0.05 0.05 72% 44 29 35
試験3 0.05 0.05 0.8 0.05 50% 39 11 150
試験4 0.05 0.05 0.05 0.8 35% 10 10 900
実験2のように、0.8m/s設定の乾燥ゾーンを乾燥の後半に配置するにつれて、膜厚分布が小さくなっていくことが分かった。これは、乾燥の進行に従って粘度が増加し、同じ表面張力勾配でも流動が起こりにくくなっているためと推定される。つまり、本発明は、特に乾燥前半の粘度が低い領域にて適応されるとより効果的であることが分かる。
<実験3>
実験3では、塗布液に添加するフッ素系界面活性剤メガファックF-781-F (大日本インキ化学工業製)の添加量と表面張力勾配、膜厚分布の関係を調べた。風速条件は、第2 乾燥ゾーン12が0.8m/s、第3乾燥ゾーン13〜17以降は0.1m/sとした。表3において、添加量とは界面活性剤の添加量(塗布液に対する%)である。また、温度依存性とは温度依存性の表面張力勾配であり、残留溶剤量依存性とは残留溶剤量依存性の表面張力勾配である。また、合計とは温度依存性の表面張力勾配と残留溶剤量依存性の表面張力勾配の合計である。
[表3]
残留溶剤量
添加量 温度依存性 依存性 合計 膜厚分布
( %) (mN/m 2 ) (mN/m 2 ) (mN/m 2 ) (nm)
試験1 なし 35 17 52 51nm
試験2 0.005 28 8 36 32nm
試験3 0.01 22 2 24 21nm
試験4 0.10 18 -3 15 12nm
試験5 0.50 16 -7 9 10nm
このように、界面活性剤の添加量を増やしていくと、温度依存性がほぼ半減し、残留溶剤量依存性は正負が反転するために、結果として、表面張力勾配の合計値が小さくなり、膜厚分布もそれに対応して小さくなっていることが分かる。
(実施例2)光学補償フィルムの例
図6に示した光学補償フィルムの製造工程に、無風乾燥ゾーン130と乾燥風ゾーン132を備えた乾燥装置118を組み込んだ本発明の実施例である。比較例は、同じ装置にて風速設定条件を変え、乾燥が乱れた状態にて行った。塗布機としてはワイヤーバータイプのものを使用した。
支持体112としては、厚さ100 μm のトリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を使用した。そして、支持体112の表面に、長鎖アルキル変性ポバール(MP−203、クラレ(株)製)の2重量パーセント溶液をフィルム1m2 当たり25mL塗布後、60°Cで1 分間乾燥させて作られた配向膜用樹脂層を形成した支持体112を18m/分で搬送走行させながら、樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成した。ラビング処理におけるラビングローラ168の押し付け圧力は、配向膜樹脂層の1cm 2 当たり98Pa (10kgf/cm2 ) とすると共に、回転周期を5.0m/ 秒とした。
次にラビング処理して得られた配向膜が形成された支持体112は、連続して塗布機114に搬送した。塗布液としては、ディスコティック化合物TE−8のR(1)とTE−8のR(2)の重量比で4:1 の混合物に光重合開始剤であるイルガキュア907 (日本チバガイキー(株)製)を前記混合物に対して1 %添加した混合物の40%メチルエチルケトン溶液からなる液晶性化合物を含む塗布液を使用した。支持体112を搬送速度18m/分にて走行させながら、この塗布液を配向膜上に、塗布液量が支持体112の1m2 あたり支持体厚みで5 μm になるようにワイヤーバー114Aで塗布した。そして、塗布直後に、乾燥装置118を使用して乾燥を行った。
Figure 0004178300
次に、支持体112は、100 °Cに調整された本乾燥機160及び、130 °Cに調整された加熱機162を通過させてネマティック相を形成した後、この配向膜及び液晶性化合物が塗布された支持体112を連続搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプ164により紫外線を照射し、被塗布物を重合、固定した。
この光学補償フィルムの面状評価は、ライトテーブルを用い、クロスニコル下の対角位にて観察して行った。本評価法によると、乾燥工程で発生する膜厚ムラは、ぼやっとした黒いスジとして視認することができる。本実施例では、スジの強度を官能評価により、1を最良、5を最悪として5段階評価を行った。
また、風速分布、表面張力勾配の測定は実施例1に準じて行った。
<実験4>
第2乾燥ゾーンの設定風速を0.1 、0.4 、1.0m/sのように変えたときに、風速勾配や塗布膜36の表面張力勾配mN/mがどのように変化するかを調べた。このとき、第1乾燥ゾーン130は、乾燥風の給気口及び排気口に目張りをして無風乾燥ゾーンとし、第3乾燥ゾーン以降は0.1m/sで統一した。また、設定風速を変えた例のほかに、乾燥装置118を取り外し、自然乾燥させた例(試験4 )も行った。このとき、設定風速は、塗布、搬送なしの状態で測定した平均風速とした。
[表4]
設定風速 風速勾配 表面張力勾配 膜厚ムラ
(m/s) (sec -1) (mN/m2 )
試験1 0.1 10 18 2
試験2 0.4 35 46 3
試験3 1.0 60 68 5
試験4 0.2 (乾燥装置なし) 50 62 5
まず、試験1〜3の比較により、設定風速が小さいと、結果として生じる風速勾配も小さくなり、膜厚ムラが抑えられるという結果となった。また、乾燥装置118をつけないで塗布した場合、試験4のように、平均風速は小さくても、揺らぎが大きいため、風速勾配は大きくなり、その結果、生じた膜厚ムラも大きくなった。
<実験5>
次に、乾燥ゾーンの位置と膜厚ムラの起こりやすさの関係を調べるため、第2乾燥ゾーンから第5乾燥ゾーンのうち、一箇所のみ風速0.6m/sに設定し、残りのゾーンを0.1m/sとしたときに、膜厚ムラがどのようになるかを調べた。また、各ゾーン入口に膜厚計を取り付けて、0.6m/s設定のゾーン直前における塗布膜の残留溶剤量も調べた。表5において、第2〜第5は乾燥ゾーンの番号である。尚、風速0.6m/sとした場合、風速勾配は50(sec-1) であった。
[表5]
風速条件(m/s) 0.6m/sゾーン 表面張力勾配 膜厚ムラ
第2 第3 第4 第5 残留溶剤量 (mN/m2 ) 試験1 0.6 0.1 0.1 0.1 90% 61 5
試験2 0.1 0.6 0.1 0.1 58% 52 3
試験3 0.1 0.1 0.6 0.1 31% 38 2
試験4 0.1 0.1 0.1 0.6 15% 12 1
表5の結果から、蒸発が進行して塗布膜の粘度が上昇すると、乾燥ムラに対する耐性が上がるため、表面張力勾配が高くとも、膜厚ムラは抑えられることが分かる。つまり、本発明は、乾燥の初期、残留溶剤量が多い領域にて効果的であるということができる。
<実験6>
実験6では、塗布液に添加するフッ素系界面活性剤メガファックF-781-F (大日本インキ化学工業製)の添加量(塗布液に対する%)と表面張力勾配mN/m、膜厚ムラの関係を調べた。風速条件は、第1乾燥ゾーンを無風、第2 乾燥ゾーンを0.6m/s、第3乾燥ゾーン以降を0.1m/sとした。温度依存性とは温度依存性の表面張力勾配であり、残留溶剤量依存性とは残留溶剤量依存性の表面張力勾配である。また、合計とは温度依存性の表面張力勾配と残留溶剤量依存性の表面張力勾配の合計である。尚、風速0.6m/sとした場合、風速勾配は50(sec-1) であった。
[表6]
残留溶剤量
添加量 温度依存性 依存性 合計 膜厚ムラ
( 重量%) (mN/m2 ) (mN/m 2 ) (mN/m2 )
試験1 なし 21 40 61 5
試験2 0.005 19 32 51 4
試験3 0.01 17 6 23 2
試験4 0.10 12 -9 3 1
試験5 0.50 11 -16 -5 1
このように、光学補償シートの塗布液においても、界面活性剤の添加量を増やしていくと、温度依存性がほぼ半減し、残留溶剤量依存性は正負が反転するために、結果として、表面張力勾配の合計値が小さくなり、膜厚ムラもそれに対応して小さくなっていることが分かる。
本発明の塗布膜の乾燥方法を実施する乾燥装置の側面概略図 図1の乾燥装置の上面図 図1の乾燥装置の要部断面図 本発明の塗布膜の乾燥方法を実施する他の実施形態の乾燥装置の側面概略図 本発明の乾燥方法を行う乾燥装置を用いた防眩性反射防止フィルムの製造ラインの構成図 本発明の乾燥方法を行う乾燥装置を用いた光学補償フィルムの製造ラインの構成図
符号の説明
10、60、118…乾燥装置、11,12,13,14,15,16,17…乾燥ゾーン、12a…乾燥ゾーン本体、12b…通路室、12c…排気室、12d…乾燥エア、19a…排気ダクト、25…上蓋、26…整風板、33…支持体、34…塗布装置、36…塗布膜、36a…塗布膜面、36b…ガス、40…排気ボックス、40A…排気ファン、41〜47…給気口、41A〜47A…給気ダクト、41B〜47B…ヒーター、41C〜47C…給気ファン、18A〜24A…排気ダクト、50…循環ダクト、100…サクションローラ

Claims (3)

  1. 帯状の支持体を連続走行させながら、該支持体面に、揮発性溶剤を実質的に溶媒の主成分とする塗布液を塗布して形成したウエット厚み50μm以下の塗布膜を乾燥エアで乾燥する塗布膜の乾燥方法において、
    前記塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでは、前記塗布膜における温度依存性の表面張力勾配と前記塗布膜における残留溶剤量依存性の表面張力勾配とを合計した表面張力勾配の絶対値が20mN/m2 以下になるように、
    前記支持体面に塗布する塗布液に界面活性剤を該塗布液に対して0.01〜0.50%の範囲で含有させると共に、
    前記塗布膜中の残留溶剤量が60%以下に乾燥されるまでの乾燥ゾーン内においては、
    前記塗布膜の支持体幅方向1mm間隔当たりの膜面温度差が0.5°C以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第1の乾燥条件と、
    前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における風速勾配であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの風速勾配が50(1/秒)以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第2の乾燥条件と、
    前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における雰囲気温度差であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの雰囲気温度差が1°C以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第3の乾燥条件と、
    前記塗布膜面から5mm離間した高さ位置における蒸気圧差であって、前記支持体幅方向5mm間隔当たりの蒸気圧差が飽和蒸気圧の20%以下になるための乾燥条件を前記乾燥ゾーン内に形成する第4の乾燥条件と、で乾燥することを特徴とする塗布膜の乾燥方法。
  2. 前記合計した表面張力勾配の絶対値が10mN/m2 以下であることを特徴とする請求項1の塗布膜の乾燥方法。
  3. 請求項1又は2の塗布膜の乾燥方法を用いて製造されることを特徴とする光学機能性フィルム。
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