JP4809516B2 - 即時脱型コンクリート製品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は即時脱型コンクリート製品の製造方法に関し、特に、建築用、土木用あるいは道路用等、広い分野で利用される各種ブロック類等の、硬練りコンクリートを用いた即時脱型コンクリート製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート製品を製造する際の生産性の向上と製造価格の低減とを目的として、水セメント比が小さい硬練りコンクリートを型枠に投入し、これに振動又は振動と圧力とを加えて締め固めを行い、締め固め終了後、直ちに型枠を取り外すコンクリート製品の製造方法、すなわち即時脱型方法は公知であり(例えば、特許第606164号公報参照)、各種のブロック等の製造において広く実施されてきた。
【0003】
この即時脱型方法は、初期には小型の積みブッロク等を対象製品としていたが、近年生産性の向上や原価低減がますます厳しく要求されてきたため、大型の製品や薄厚の複雑な部材等にも適用範囲が拡大してきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
即時脱型コンクリート製品の製造においては、硬練りコンクリート、すなわち、水分が少なく流動性がほとんど無い状態の未硬化コンクリートに強力な振動や圧縮力を加えて締め固めを行い、直ちに脱型するため、該コンクリートに対して、充填しやすく、脱型も容易で、脱型後に変形や角欠けが起きないことが要求される。また我が国においては、コンクリートの外観が問題になることも多い。
【0005】
即時脱型コンクリートが小型の積みブロック等を対象製品としていた時期においては、製品の強度や外観に対する要求も厳しくなく、また何よりも製品が小さく、形状が単純であったため、極端に硬練りのコンクリートに強力な振動を加えることによって、製品化が可能であったが、上記のように大型製品や複雑形状の製品に適用範囲が広がると、そのような超硬練りコンクリートの型枠への充填が困難になってきた。このため潤滑、湿潤、乳化、分散、気泡形成等といった効果を期待して、界面活性剤や助剤を幾つか組み合わせた混和剤の利用が近年多くなっている。
【0006】
上記のように、生産性が高く、低価格化が可能な即時脱型コンクリート製品製造方法を大型製品や複雑形状製品にまで適用して、コンクリート製品の低価格化を実現するためには、適度の硬練りコンクリートを用いて即時脱型を行うことが必要である。すなわち、型枠に十分充填できる程度の硬練りコンクリートを型枠に充填し、充填が終了すると直ちに脱型し、かつ短時間でパレットから外して養生地に運ぶことができなければならない。しかしながら、上記のような従来の技術では、製品の変形や角欠けを完全に無くすためには、締め固め終了後から脱型するまでの時間や、製品をパレットから外すまでの時間を長く設定しなければならず、期待通りに時間を短縮することが困難であった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その課題は、充填終了直後の脱型を行っても、可能製品の変形や角欠けが起こらない即時脱型コンクリート製品の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載のように、
硬練りコンクリートを型枠に投入して振動締め固め又は振動加圧締め固めを行った後、脱型する即時脱型コンクリート製品の製造方法において、上記硬練りコンクリートに、亜硝酸カルシウムと硝酸カルシウムとの混合物をセメント重量の0.25〜2.5%、並びにコンクリートの流動性改善効果を有する、アニオン界面活性混和剤、非イオン界面活性混和剤のうちの少なくとも1つを添加することを特徴とする即時脱型コンクリート製品の製造方法を構成する。
【0009】
コンクリートを充填後直ちに型枠を外すためには、締め固めを行った直後のコンクリートに全く変形を起こさないように形状を保持させることが必要である。また、コンクリートを型枠に緊密に充填するためには、振動締め固め時に、振動によってコンクリートの流動性が増すように、凝結初期のコンクリートにチキソトロピー性を保持させておくことが必要である。また、短時間で製品をパレットより外して養生地に運ぶためには速やかに硬化を進行させなければならない。さらに、凝結、硬化が速くても、製品の最終的な強度が低下せず十分高いことが必要である。すなわち、高品質の即時脱型コンクリート製品を製造するには、凝結初期すなわち締め固め中におけるチキソトロピー性の保持、締め固め直後に脱型可能な保形性、高速硬化性および高強度の全てを備えたコンクリートを造り出す技術を開発しなければならない。
【0010】
コンクリートを締め固めた後、時間をおかず即時脱型を行うことができる程度に保形性を高めるには、フレッシュコンクリートの水セメント比を極端に低くした超硬練りコンクリート組成とすればよいが、このようにするとコンクリートの充填性が低下し、内部も外観も共に粗悪な製品となる。特に上記のように、大型製品や複雑形状の製品の場合には超硬練りコンクリートでは品質の優れた製品は得られない。したがって、この欠点を解消するためには、極端な超硬練りを避け、十分型枠に充填できる適度の硬練りで即時脱型が行えるようにコンクリート組成を改良しなければならない。この課題に対しては、コンクリートの凝結、硬化を促進する促進剤を効果的に使用することが極めて有効である。
【0011】
コンクリートの凝結、硬化促進剤には、塩化カルシウム等の塩素化合物、亜硝酸塩、硝酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩等がある。塩化カルシウムは優れた硬化促進剤であるが、塩素による鉄筋の腐蝕やアルカリ骨材反応の助長等の問題があり、現在使用が制限されている。またチオ硫酸塩、チオシアン酸塩等のイオウの含有量が高い化合物もコンクリートに悪影響を及ぼす恐れがあり、多量に使用するのは好ましくない。したがって亜硝酸塩や硝酸塩が促進剤として適当である。ただし、従来の実験結果によると、これらの塩類のコンクリートの硬化促進性能は、塩素系化合物やチオ硫酸塩等に比して劣っている。
【0012】
一方、コンクリートの硬化を著しく促進する作用がある混和剤として急結剤がある。急結剤にはアルミン酸塩、炭酸塩等があり、トンネル内の吹き付け用モルタルのような急結を要求されるものに使用されている。
【0013】
コンクリートの急速硬化に関する研究によると、初期強度はセメントの初期水和物であるエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)の生成に依存していることが明らかになっている。急結剤の急硬性能は、
無機塩<カルシウムアルミネート<カルシウムスルフォアルミネート
のような順序であって、急硬性能という点ではアルミネートが優れており、無機塩は劣っている。ただし、即時脱型コンクリート製品の製造には、反応が著しく速いアルミネート等の急結剤は使い勝手が悪く、使用が難しいため、反応速度を制御しやすい無機塩が適している。
【0014】
即時脱型コンクリート製品の製造に凝結、硬化促進剤として無機塩を使用する場合には、上記のように、亜硝酸塩や硝酸塩がよいと考えられるが、これらの塩は、促進効果が低い、多量に使うには高価である、等のために、現在コンクリート分野では、促進剤としての利用は少なく、鉄筋の防錆剤や寒冷期におけるコンクリートの凍結防止剤として使用されている。
【0015】
亜硝酸カルシウムや硝酸カルシウムは水に溶けてアルカリ性又はほぼ中性を示す無機塩である。これらの化合物はセメントクリンカーを構成する組成物のうち、水和反応速度が最も大きいアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)に作用してエトリンガイトの生成を促進すると考えられる。エトリンガイトは針状結晶で、CaO濃度が高くかつ水素イオン濃度が低い溶液(アルカリ性溶液)では長い結晶には成長せず、小さな細かい結晶になることが知られている(後藤、大門:セメント化学雑論[13]エトリンガイト:57頁(昭和60年))。すなわち、乾燥状態のコンクリート組成物に水を加えると直ちにエトリンガイトの針状結晶が生成するが、亜硝酸カルシウムや硝酸カルシウムはこの反応を促進し、その際エトリンガイトは細かい針状結晶として生成すると考えられる。エトリンガイトの生成によってコンクリートのゲル化、すなわち凝集が急速に進むが、該エトリンガイトが細かい針状結晶であるとゲル化によるチキソトロピー性の低下は長い針状結晶が生成した場合に比して大幅に抑えられる。したがって、このエトリンガイトの細かい針状結晶が生成し始めた凝結初期のコンクリートに振動を加えると該コンクリートの流動性が増し、高密度の充填が実現する。この際界面活性物質はコンクリートの流動性を助ける重要な役割を果たしている。
【0016】
凝結、硬化促進剤を含有するコンクリートでは、締め固め中もコンクリートの凝結に対して促進剤が働き、該コンクリートが水セメント比が低い硬練りコンクリートであることと相俟って、締め固め終了とともに即時脱型が可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは基礎的な実験を積み重ねた結果、アルカリ土類金属の亜硝酸塩や硝酸塩、特にカルシウム塩が、アニオン界面活性混和剤又は非イオン界面活性混和剤の存在下で、即時脱型コンクリートを製造する際の硬化促進剤として極めて優れていることを見出した。すなわち、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、又は亜硝酸カルシウムと硝酸カルシウムとの混合物を、アニオン界面活性混和剤、非イオン界面活性混和剤のうちの少なくとも1つと共に添加したコンクリートは、型枠への充填が容易でありながら、締め固め直後に脱型可能な保形性があり、しかも硬化反応が速く、反応熱により外部から熱を加えなくても、工場内に静置した状態で温度が上昇して硬化が速やかに進行し、脱型後5時間以内で製品をパレットから外して養生地に運ぶことができた。上記、添加効果を有するアニオン界面活性混和剤としては各種アニオン界面活性剤および各種アニオン界面活性減水剤があり、非イオン界面活性混和剤としては非イオン界面活性剤および非イオン界面活性減水剤がある。
【0018】
亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、又は亜硝酸カルシウムと硝酸カルシウムとの混合物の添加量はセメント重量の0.25〜2.5%が良好であった。アニオン又は非イオン界面活性混和剤をコンクリート重量の0.2〜0.8%添加したコンクリートに、亜硝酸カルシウムや硝酸カルシウムを0.25%添加すると、コンクリート練混ぜ後室温で15分経た時点で十分脱型可能であった。上記カルシウム塩の添加量がこれよりも少ないと製品が脱型後の応力に十分耐える程度に凝集するのに時間を要し、即時脱型の目的が達せられなかった。また、上記カルシウム塩の添加量が2.5%を越えると、練混ぜたコンクリートを型枠に投入して締め固めを行っている最中に凝集が進み過ぎて作業性が低下することが分かった。
【0019】
即時脱型コンクリートの製造には、セメントとして普通ポルトランドセメント、早強セメント、超早強セメント等を使用する。骨材としては川砂、海砂、川砂利、砕骨材等を使用する。また混和材として石灰石微粉末、高炉スラッグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等の粉末を使用することができる。またアニオン界面活性混和剤又は非イオン界面活性混和剤としては、各種のアニオン系あるいは非イオン系の界面活性剤や、各種のアニオン系あるいは非イオン系の界面活性減水剤から適宜選択して使用することができる。さらに、本発明においては上記のコンクリート組成物にカルシウムの亜硝酸塩、硝酸塩又は亜硝酸塩と硝酸塩との混合物を添加する。
【0020】
即時脱型コンクリートは水セメント比(W/C)が極めて低いのが特徴である。したがって、このコンクリートはスランプ零の硬練りコンクリートである。本発明を適用すると、コンクリート練混ぜ後15分程度経過した時点で脱型可能であり、また室温で数時間放置すると製品の移動が可能な程度に硬化が進行するが、特に硬化を速めたいときには高温蒸気養生を行ってもよい。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施の形態を実施例により比較例を引用しながら示す。
【0022】
本実施例および比較例においては、即時脱型コンクリート製品として片面歩車道境界ブロックC(JIS規格のJIS A 5307)を作製した。
【0023】
表1に実施例1および2と比較例1〜3のコンクリート配合を示した。比較例2は通常の即時脱型コンクリート製品を製造する際の配合と同じである。実施例、比較例とも供試体は3個ずつ作製した。
【0024】
【表1】
表1において、セメントは普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)、砂は多摩川系川砂、粗骨材は最大粒径25mmの砕石、混和材は石灰石微粉末(秩父石灰工業(株)製)、混和剤1は亜硝酸カルシウム・硝酸カルシウム系促進剤(日産化学工業(株)製CANI-45A)、混和剤2は特殊アニオン系界面活性剤((株)富士ファインケミカル製ビームグリーンテン)、混和剤3はアニオン系界面活性混和剤の1種であるメラミンスルホン酸系減水剤(日産化学工業(株)製アクセリート100)である。
【0025】
水セメント比は約33〜34%で極めて硬練りであり、スランプは零である。この硬練りコンクリートは強制練りミキサーで練混ぜて造り、直ちに型枠に投入して、振動と圧力を加えて締め固めた。また実施例1と比較例2の供試体それぞれ1個にはコンクリート投入時に温度測定用の熱電対を埋め込んだ。
【0026】
締め固め終了後直ちに型枠をはずしてパレット上に静置し、供試体の目視による外観評価、温度測定、強度測定等を行った。強度測定として、JIS規格に準じて試験片を切り取り(JIS A 1107)、圧縮強度を測定した( JIS A 1108)。
【0027】
表2に実施例1および比較例2の供試体の室温養生中の初期温度変化を示した。
【表2】
温度測定は締め固め終了時を起点として1時間おきに5時間まで行った。表2にみられるように、工場内に放置した実施例1の供試体は、2時間後には10℃以上の温度上昇を示すことが観測された。これに対して比較例2の供試体では、5時間で5℃程度の変化が認められたに過ぎない。この結果は亜硝酸カルシウム・硝酸カルシウム系促進剤によりコンクリートの硬化反応が急速に進行して反応熱が生じたことを示している。
【0028】
表3に材令6時間、1日および14日目の圧縮強度の測定結果を示した。
【0029】
【表3】
なお比較例2および3においては、材令6時間では試験片を壊さずに切り出すことができなかったため測定を行わなかった。
【0030】
実施例1および2においては、6時間で約15N/mm2の圧縮強度が得られ、この時点で製品をパレットより外して養生地に運ぶことができることが分かった。これに対して、この時点においては、比較例のいずれもが、製品をパレットより外して養生地に運ぶに十分な強度を示さなかった。
【0031】
また、表3から明らかなように、比較例のすべてにおいて、程度の差はあるものの、角欠けが起こっていた。
【0032】
以上の優劣の差は、実施例における硬練りコンクリートが亜硝酸カルシウムと硝酸カルシウムとの混合物および界面活性混和剤の両方を含有しているのに対して、比較例における硬練りコンクリートは上記混和物のいずれか一方のみを含有しているだけであることに基づいている。このような、上記混和物の両方を硬練りコンクリートに添加した場合に現れる優れた効果は、本発明者らによってはじめて発見されたものであり、いかなる従来技術からも示唆されるものではない。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、充填終了直後の脱型を行っても、可能製品の変形や角欠けが起こらない即時脱型コンクリート製品の製造方法を提供することができる。
【0034】
本発明によって、コンクリートを締め固めた後直ちに脱型しても変形を起こさず、また角欠け等により製品の外観や強度を損なうことがなく、高品質の製品が得られる即時脱型製品の製造技術が確立されたので、コンクリート製品の生産性向上と価格低減とが可能となり、本発明の効果は極めて著しい。
Claims (1)
- 硬練りコンクリートを型枠に投入して振動締め固め又は振動加圧締め固めを行った後、脱型する即時脱型コンクリート製品の製造方法において、上記硬練りコンクリートに、亜硝酸カルシウムと硝酸カルシウムとの混合物をセメント重量の0.25〜2.5%、並びにコンクリートの流動性改善効果を有する、アニオン界面活性混和剤、非イオン界面活性混和剤のうちの少なくとも1つを添加することを特徴とする即時脱型コンクリート製品の製造方法。
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