JP2004331482A - モルタル・コンクリート組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い膨張圧を生起できる遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材を使用し、コンクリートやモルタルの収縮を、少なくとも収縮に因るひび割れ発生を十分防ぐことができる程度に低減させた、配合設計や調配合作業の極めて容易なモルタル・コンクリート組成物を提供する。
【解決手段】遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材及びH.M.が2.10以上かつSiO2含有量が21.0重量%以上のセメントを含有してなるモルタル・コンクリート組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材及びH.M.が2.10以上かつSiO2含有量が21.0重量%以上のセメントを含有してなるモルタル・コンクリート組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ひび割れ発生が起り難いモルタル・コンクリート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント系のコンクリートやモルタルの自己収縮及び/又は乾燥収縮に起因するひび割れ発生抑制策として、水和膨張性物質を有効成分とする膨張性混和材を加え、収縮量を大幅に低減させることが行なわれている。水和膨張性物質による収縮低減効果はセメントの凝結及び強度発現性と密接な関係があり、セメントの凝結が十分進んでいない段階、即ちモルタル・コンクリートが流動状態の時に、水和膨張性物質が水和反応によって膨張しても、ひび割れ抑制に繋がるような収縮低減が図れ無い。またモルタル・コンクリートの強度が十分高くなった段階で該膨張性物質の水和反応が起っても、強固なコンクリート硬化構造が膨張力の抵抗になり、収縮を防ぐほどの膨張作用は殆ど発揮できない。
【0003】
公知の膨張性混和材のうち、遊離生石灰(CaO結晶)を主要膨張成分とするものは水和反応によって非常に高い膨張圧を生起することが知られている。(例えば、特許文献1参照)しかるに、生石灰のような膨張性物質は、通常のセメントの水和反応よりは速く水和反応が進行するため、モルタル・コンクリートの収縮抑制に最適とされる膨張発現時期よりも速い時期に膨張作用が集中し易く、収縮に因るひび割れ抑制効果は必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
生石灰系膨張性混和材使用時のモルタル・コンクリートの収縮抑制効果をより高めるためには、(a)更に収縮低減剤を加える(例えば、特許文献2参照)、(b)生石灰とは水和反応時期の異なる他の水和膨張性物質を補完的に併用する(例えば、特許文献3参照)、(c)生石灰結晶を粗大化し、反応活性を低下させて水和反応を長期化させる(例えば、特許文献4参照)、(d)生石灰の水和反応時期を遅延させるか、若しくはセメントの水和反応時期を早期化させるための水和反応調整剤を加える等の方策が考えられてきた。このうち、(a)の収縮低減剤は収縮量を減少できるが、膨張作用を全く有しないため、特に大型成形物等では収縮による亀裂発生の危惧を十分払拭できない。またモルタル・コンクリートに対する生石灰の最適膨張作用時期の不整合を直接改善するものではない。また(b)も生石灰の高い膨張能力を収縮の抑制に十分活用することへの改善には繋がらず、モルタル・コンクリート中の全膨張成分が他の性状に影響が出る程の高含有率になりかねない割には膨張作用効率が上がり難い。また(c)は生石灰の高い反応活性の喪失に留まらず、高い膨張圧も失うため、所望の収縮低減効果が得られ難い。(d)は、水和反応調整剤をセメント或いは膨張性混和材の何れかの水和反応に選択的に作用させることは甚だ困難であり、両者の水和反応時期の最適整合化は図り難い。更には(a)〜(d)の何れか2種以上を併用することで互いの弱点を補い、収縮抑制効果の向上を図ることもできるが、配合成分が多岐に渡ることから配合設計が複雑になり、調配合作業にも手間がかかる等の問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−13650号公報
【特許文献2】
特開2002−356355号公報
【特許文献3】
特開2002−29797号公報
【特許文献4】
特開平4−83012号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点の解決、即ち高い膨張圧を生起できる遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材を使用し、コンクリートやモルタルの収縮を、少なくとも収縮に因るひび割れ発生を十分防ぐことができる程度に低減せしめた、配合設計や調配合作業の極めて容易なモルタル・コンクリート組成物の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、遊離生石灰を主要膨張成分として含む膨張性混和材の高膨張性をモルタルやコンクリート等の収縮抑制に効率良く反映させるべく鋭意検討を重ねた結果、特定のH.M.及びSiO2含有量のセメントを使用すれば、遊離生石灰の水和反応時期とセメントの水和反応時期との整合を容易に図ることができ、最適な膨張発現時期となって、モルタルやコンクリートの収縮が十分抑制され、該収縮に起因するひび割れが発生しなかったこと等から本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)のモルタル・コンクリート組成物である。(1)遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材及びH.M.が2.10以上かつSiO2含有量が21.0重量%以上のセメントを含有してなるモルタル・コンクリート組成物。(2)セメントが、I.M.が1.70以上かつAl2O3含有量が5重量%以上のセメントである前記(1)のモルタル・コンクリート組成物。(3)セメントが、SO3含有量2.0重量%以上のセメントである前記(1)又は(2)のモルタル・コンクリート組成物。(4)膨張性混和材が、3CaO・SiO2を15〜80重量%含有する前記(1)〜(3)のモルタル・コンクリート組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のモルタル・コンクリート組成物は、遊離生石灰(CaO結晶)を主要膨張成分とする膨張性混和材を含有するものであり、遊離生石灰が水と反応することで高い膨張が生起される。該膨張性混和材の遊離生石灰含有割合は特に限定されないが、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上とする。20重量%未満では収縮抑制効果が得難いので好ましくない。また、該膨張性混和材は、本発明の効果を損なわない限り、遊離生石灰以外の成分を含むものであっても良く、このような成分として例えば、カルシウムシリケート、無水石膏や他の水硬性物質、潜在水硬性物質等を挙げることができる。好ましくは遊離生石灰以外の成分として3CaO・SiO2(エーライト)を15〜80重量%含むものが良い。3CaO・SiO2を15重量%以上含む膨張性混和材を使用することでモルタルやコンクリートの強度低下を防ぐことができるが、80重量%を超えると所望の膨張量を得るための膨張成分含有量が不足するので好ましくない。本発明で使用する膨張性混和材の製法は特に限定されるものではなく、一例を示すと、カルサイト等の石灰質原料或いはこれにSiO2、Al2O3、CaSO4、Fe2O3等から選定される原料を適宜加えたものを、およそ1350〜1450℃で焼成し、得られたクリンカを粉砕することで製造できる。また、このようなクリンカ粉砕物に、生石灰以外の膨張性物質、水硬性物質、潜在水硬性物質或いはポゾラン反応性物質等の無機粉末を混合したものでも良い。
【0010】
本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、H.M.が2.10以上かつSiO2含有量21.0重量%以上のセメントとする。H.M.(Hydraulic Modulus:硬化率)は、セメントクリンカ中の塩基成分(例えばCaO)の量と酸基成分(例えばSiO2、Al2O3、Fe2O3)の量の比率(塩基成分量/酸基成分量。但し、塩基成分量はSO3量×0.7を減じた値)であり、H.M.が高いセメントクリンカではクリンカ鉱物として3CaO・SiO2(エーライト)の生成量が増加するため、セメント水和後の固化速度が速くなる。H.M.を2.10以上のセメントとすることで、本発明で使用する膨張性混和材の膨張発現時期に適うようにモルタル・コンクリートの固化を早めることができる。H.M.が2.10未満のセメントでは固化速度が不足し、生石灰の水和によって生じる膨張圧がモルタル・コンクリートが固まらない段階で多く作用するので収縮抑制に繋がり難く、好ましくない。また、SiO2含有量21.0重量%未満のセメントでは、収縮抑制に繋がるような速いセメント固化速度を発現する上で必要な3CaO・SiO2量が確保され難いので好ましくない。以上の作用効果に加え、H.M.が2.10以上かつSiO2含有量21.0重量%以上のセメントでは、温度が多少下がっても固化速度の低下が殆ど見られないことなどから、温度による膨張量の変動が少なくなり、使用温度に大きく左右されることなく概ね安定した収縮抑制効果を得ることもできる。尚、本発明で使用するセメントの粉末度は、市販の各種ポルトランドセメントと同程度でも良いが、望ましくは比較的高い反応活性が得られることからブレーン比表面積が3300cm2/g以上のものとする。
【0011】
また本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、前記のH.M.値及びSiO2含有量のものであると共に、好ましくはI.M.が1.70以上かつAl2O3含有量5重量%以上のものとする。I.M.(Iron Modulus:鉄率またはアルミナ鉄比)は、セメントクリンカ中の酸化鉄(Fe2O3)の量と酸化アルミニウム(Al2O3)の量の比率(Al2O3/Fe2O3)であり、I.M.が高いセメントクリンカでは一般にクリンカ鉱物として4CaO・Al2O3・Fe2O3の生成量が少なくなる反面、3CaO・Al2O3の生成量が増大し、セメント水和後の固化速度が速くなる。I.M.を1.70以上のセメントにすると、固化速度が更に速くなるため、モルタル・コンクリートに一層効率良く膨張作用を及ぼすことができる。I.M.が1.70未満のセメントでは固化速度の速度向上が鈍化するので好ましくない。また、Al2O3含有量5重量%未満のセメントでは、速い固化速度を発現する上で必要な3CaO・Al2O3量が確保し難くなるので好ましくない。
【0012】
また、本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、SO3含有量2重量%以上のものが好ましい。SO3はセメント中では殆どがアルカリ土類金属やアルカリ金属との硫酸塩で存在する。セメント中に存在するこのような硫酸塩は、膨張性混和材による膨張をモルタル・コンクリートの硬化がより進んだ段階で作用させることには寄与するが、SO3含有量が2重量%未満のセメントでは硬化がより進んだ段階での膨張発現に寄与するほどの硫酸塩の量にはならないので好ましくない。
【0013】
本発明のモルタル・コンクリート組成物は、本発明の効果を概ね損なわない限り、前記の膨張性混和材及びセメント以外の成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂などの細骨材、川砂利、海砂利、砕石などの粗骨材、減水剤(高性能減水剤や高性能AE減水剤を含む)、収縮低減剤、空気連行剤、防錆剤、消泡剤、繊維、顔料等が挙げられる。
【0014】
本発明のモルタル・コンクリート組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば前記膨張性混和材及びセメントと、骨材などの適宜選定された他の成分をホバートミキサー、パン型ミキサー、二軸強制練りミキサー等の慣用混合機に水と共に投入し、混合すれば良い。水の配合量は、水セメント比で概ね15〜55%が望ましい。水セメント比が15%未満では流動性が乏しく、作業性が低下するので好ましくない。また水セメント比が55%を超えるとモルタル・コンクリートの強度が低下し、かつ乾燥収縮量が大きくなる可能性があるので好ましくない。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表1記載の化学成分、H.M.、I.M.及びブレーン比表面積のセメントと、遊離生石灰を主要膨張成分とする市販の膨張性混和材(商品名「太平洋エクスパン(構造用)」;太平洋マテリアル株式会社製)、細骨材(北九州市小倉南区産砕砂70重量%と長崎県壱岐郡郷ノ浦沖合海砂30重量%の混合品)、水和反応遅延剤としてグルコン酸(試薬)及び水を表2記載の配合量となるようホバートミキサに一括投入し、温度20℃で約10分間低速混練を行なった。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
得られた混練物を成形型に充填し、16時間後に脱型して4×4×16cmのモルタル供試体を作製した。モルタル供試体は、JIS A 1129に準拠した方法で長さ変化を調べた。即ち、脱型直後の供試体長さを基長とし、脱型直後から供試体を20℃に恒常した水中で7日間養生し、養生7日後の長さ変化量を測定した。測定した長さ変化量からモルタル供試体の膨張率を算出した。その結果を表3に記す。
【0019】
【表3】
【0020】
また、同様に作製した4×4×16cmのモルタル供試体の材齢1、7及び28日の圧縮強度をJIS R 5201に準拠した方法で測定した。この測定結果も表3に併せて記す。表3から明らかなように、本発明によるモルタル供試体は何れも高い膨張を呈した。また、水和反応遅延剤を配合したもの(比較例3)は、配合しないもの(例えば、比較例2)と比較し、初期強度発現性が低下したことと膨張率の向上が殆ど見られなかったことから、生石灰の水和時期の遅延と共にセメントの水和も遅延されたことがわかる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のモルタル・コンクリートは、高い膨張発現性を有する生石灰系膨張性混和材を、その膨張発現性を調整・制御するための種々の混和剤・材や他の膨張発現成分・収縮抑制成分等を併用することなく、そのまま使用しても当該膨張特性をひび割れに繋がるような収縮の抑制に十分活かせる。このため、モルタル・コンクリートの配合を極めて簡易なものにすることができ、調合時の作業負荷も余り要さず、また膨張混和材を大量に使用しなくても高い収縮抑制効果が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ひび割れ発生が起り難いモルタル・コンクリート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント系のコンクリートやモルタルの自己収縮及び/又は乾燥収縮に起因するひび割れ発生抑制策として、水和膨張性物質を有効成分とする膨張性混和材を加え、収縮量を大幅に低減させることが行なわれている。水和膨張性物質による収縮低減効果はセメントの凝結及び強度発現性と密接な関係があり、セメントの凝結が十分進んでいない段階、即ちモルタル・コンクリートが流動状態の時に、水和膨張性物質が水和反応によって膨張しても、ひび割れ抑制に繋がるような収縮低減が図れ無い。またモルタル・コンクリートの強度が十分高くなった段階で該膨張性物質の水和反応が起っても、強固なコンクリート硬化構造が膨張力の抵抗になり、収縮を防ぐほどの膨張作用は殆ど発揮できない。
【0003】
公知の膨張性混和材のうち、遊離生石灰(CaO結晶)を主要膨張成分とするものは水和反応によって非常に高い膨張圧を生起することが知られている。(例えば、特許文献1参照)しかるに、生石灰のような膨張性物質は、通常のセメントの水和反応よりは速く水和反応が進行するため、モルタル・コンクリートの収縮抑制に最適とされる膨張発現時期よりも速い時期に膨張作用が集中し易く、収縮に因るひび割れ抑制効果は必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
生石灰系膨張性混和材使用時のモルタル・コンクリートの収縮抑制効果をより高めるためには、(a)更に収縮低減剤を加える(例えば、特許文献2参照)、(b)生石灰とは水和反応時期の異なる他の水和膨張性物質を補完的に併用する(例えば、特許文献3参照)、(c)生石灰結晶を粗大化し、反応活性を低下させて水和反応を長期化させる(例えば、特許文献4参照)、(d)生石灰の水和反応時期を遅延させるか、若しくはセメントの水和反応時期を早期化させるための水和反応調整剤を加える等の方策が考えられてきた。このうち、(a)の収縮低減剤は収縮量を減少できるが、膨張作用を全く有しないため、特に大型成形物等では収縮による亀裂発生の危惧を十分払拭できない。またモルタル・コンクリートに対する生石灰の最適膨張作用時期の不整合を直接改善するものではない。また(b)も生石灰の高い膨張能力を収縮の抑制に十分活用することへの改善には繋がらず、モルタル・コンクリート中の全膨張成分が他の性状に影響が出る程の高含有率になりかねない割には膨張作用効率が上がり難い。また(c)は生石灰の高い反応活性の喪失に留まらず、高い膨張圧も失うため、所望の収縮低減効果が得られ難い。(d)は、水和反応調整剤をセメント或いは膨張性混和材の何れかの水和反応に選択的に作用させることは甚だ困難であり、両者の水和反応時期の最適整合化は図り難い。更には(a)〜(d)の何れか2種以上を併用することで互いの弱点を補い、収縮抑制効果の向上を図ることもできるが、配合成分が多岐に渡ることから配合設計が複雑になり、調配合作業にも手間がかかる等の問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−13650号公報
【特許文献2】
特開2002−356355号公報
【特許文献3】
特開2002−29797号公報
【特許文献4】
特開平4−83012号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点の解決、即ち高い膨張圧を生起できる遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材を使用し、コンクリートやモルタルの収縮を、少なくとも収縮に因るひび割れ発生を十分防ぐことができる程度に低減せしめた、配合設計や調配合作業の極めて容易なモルタル・コンクリート組成物の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、遊離生石灰を主要膨張成分として含む膨張性混和材の高膨張性をモルタルやコンクリート等の収縮抑制に効率良く反映させるべく鋭意検討を重ねた結果、特定のH.M.及びSiO2含有量のセメントを使用すれば、遊離生石灰の水和反応時期とセメントの水和反応時期との整合を容易に図ることができ、最適な膨張発現時期となって、モルタルやコンクリートの収縮が十分抑制され、該収縮に起因するひび割れが発生しなかったこと等から本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)のモルタル・コンクリート組成物である。(1)遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材及びH.M.が2.10以上かつSiO2含有量が21.0重量%以上のセメントを含有してなるモルタル・コンクリート組成物。(2)セメントが、I.M.が1.70以上かつAl2O3含有量が5重量%以上のセメントである前記(1)のモルタル・コンクリート組成物。(3)セメントが、SO3含有量2.0重量%以上のセメントである前記(1)又は(2)のモルタル・コンクリート組成物。(4)膨張性混和材が、3CaO・SiO2を15〜80重量%含有する前記(1)〜(3)のモルタル・コンクリート組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のモルタル・コンクリート組成物は、遊離生石灰(CaO結晶)を主要膨張成分とする膨張性混和材を含有するものであり、遊離生石灰が水と反応することで高い膨張が生起される。該膨張性混和材の遊離生石灰含有割合は特に限定されないが、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上とする。20重量%未満では収縮抑制効果が得難いので好ましくない。また、該膨張性混和材は、本発明の効果を損なわない限り、遊離生石灰以外の成分を含むものであっても良く、このような成分として例えば、カルシウムシリケート、無水石膏や他の水硬性物質、潜在水硬性物質等を挙げることができる。好ましくは遊離生石灰以外の成分として3CaO・SiO2(エーライト)を15〜80重量%含むものが良い。3CaO・SiO2を15重量%以上含む膨張性混和材を使用することでモルタルやコンクリートの強度低下を防ぐことができるが、80重量%を超えると所望の膨張量を得るための膨張成分含有量が不足するので好ましくない。本発明で使用する膨張性混和材の製法は特に限定されるものではなく、一例を示すと、カルサイト等の石灰質原料或いはこれにSiO2、Al2O3、CaSO4、Fe2O3等から選定される原料を適宜加えたものを、およそ1350〜1450℃で焼成し、得られたクリンカを粉砕することで製造できる。また、このようなクリンカ粉砕物に、生石灰以外の膨張性物質、水硬性物質、潜在水硬性物質或いはポゾラン反応性物質等の無機粉末を混合したものでも良い。
【0010】
本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、H.M.が2.10以上かつSiO2含有量21.0重量%以上のセメントとする。H.M.(Hydraulic Modulus:硬化率)は、セメントクリンカ中の塩基成分(例えばCaO)の量と酸基成分(例えばSiO2、Al2O3、Fe2O3)の量の比率(塩基成分量/酸基成分量。但し、塩基成分量はSO3量×0.7を減じた値)であり、H.M.が高いセメントクリンカではクリンカ鉱物として3CaO・SiO2(エーライト)の生成量が増加するため、セメント水和後の固化速度が速くなる。H.M.を2.10以上のセメントとすることで、本発明で使用する膨張性混和材の膨張発現時期に適うようにモルタル・コンクリートの固化を早めることができる。H.M.が2.10未満のセメントでは固化速度が不足し、生石灰の水和によって生じる膨張圧がモルタル・コンクリートが固まらない段階で多く作用するので収縮抑制に繋がり難く、好ましくない。また、SiO2含有量21.0重量%未満のセメントでは、収縮抑制に繋がるような速いセメント固化速度を発現する上で必要な3CaO・SiO2量が確保され難いので好ましくない。以上の作用効果に加え、H.M.が2.10以上かつSiO2含有量21.0重量%以上のセメントでは、温度が多少下がっても固化速度の低下が殆ど見られないことなどから、温度による膨張量の変動が少なくなり、使用温度に大きく左右されることなく概ね安定した収縮抑制効果を得ることもできる。尚、本発明で使用するセメントの粉末度は、市販の各種ポルトランドセメントと同程度でも良いが、望ましくは比較的高い反応活性が得られることからブレーン比表面積が3300cm2/g以上のものとする。
【0011】
また本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、前記のH.M.値及びSiO2含有量のものであると共に、好ましくはI.M.が1.70以上かつAl2O3含有量5重量%以上のものとする。I.M.(Iron Modulus:鉄率またはアルミナ鉄比)は、セメントクリンカ中の酸化鉄(Fe2O3)の量と酸化アルミニウム(Al2O3)の量の比率(Al2O3/Fe2O3)であり、I.M.が高いセメントクリンカでは一般にクリンカ鉱物として4CaO・Al2O3・Fe2O3の生成量が少なくなる反面、3CaO・Al2O3の生成量が増大し、セメント水和後の固化速度が速くなる。I.M.を1.70以上のセメントにすると、固化速度が更に速くなるため、モルタル・コンクリートに一層効率良く膨張作用を及ぼすことができる。I.M.が1.70未満のセメントでは固化速度の速度向上が鈍化するので好ましくない。また、Al2O3含有量5重量%未満のセメントでは、速い固化速度を発現する上で必要な3CaO・Al2O3量が確保し難くなるので好ましくない。
【0012】
また、本発明のモルタル・コンクリート組成物に含有されるセメントは、SO3含有量2重量%以上のものが好ましい。SO3はセメント中では殆どがアルカリ土類金属やアルカリ金属との硫酸塩で存在する。セメント中に存在するこのような硫酸塩は、膨張性混和材による膨張をモルタル・コンクリートの硬化がより進んだ段階で作用させることには寄与するが、SO3含有量が2重量%未満のセメントでは硬化がより進んだ段階での膨張発現に寄与するほどの硫酸塩の量にはならないので好ましくない。
【0013】
本発明のモルタル・コンクリート組成物は、本発明の効果を概ね損なわない限り、前記の膨張性混和材及びセメント以外の成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂などの細骨材、川砂利、海砂利、砕石などの粗骨材、減水剤(高性能減水剤や高性能AE減水剤を含む)、収縮低減剤、空気連行剤、防錆剤、消泡剤、繊維、顔料等が挙げられる。
【0014】
本発明のモルタル・コンクリート組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば前記膨張性混和材及びセメントと、骨材などの適宜選定された他の成分をホバートミキサー、パン型ミキサー、二軸強制練りミキサー等の慣用混合機に水と共に投入し、混合すれば良い。水の配合量は、水セメント比で概ね15〜55%が望ましい。水セメント比が15%未満では流動性が乏しく、作業性が低下するので好ましくない。また水セメント比が55%を超えるとモルタル・コンクリートの強度が低下し、かつ乾燥収縮量が大きくなる可能性があるので好ましくない。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表1記載の化学成分、H.M.、I.M.及びブレーン比表面積のセメントと、遊離生石灰を主要膨張成分とする市販の膨張性混和材(商品名「太平洋エクスパン(構造用)」;太平洋マテリアル株式会社製)、細骨材(北九州市小倉南区産砕砂70重量%と長崎県壱岐郡郷ノ浦沖合海砂30重量%の混合品)、水和反応遅延剤としてグルコン酸(試薬)及び水を表2記載の配合量となるようホバートミキサに一括投入し、温度20℃で約10分間低速混練を行なった。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
得られた混練物を成形型に充填し、16時間後に脱型して4×4×16cmのモルタル供試体を作製した。モルタル供試体は、JIS A 1129に準拠した方法で長さ変化を調べた。即ち、脱型直後の供試体長さを基長とし、脱型直後から供試体を20℃に恒常した水中で7日間養生し、養生7日後の長さ変化量を測定した。測定した長さ変化量からモルタル供試体の膨張率を算出した。その結果を表3に記す。
【0019】
【表3】
【0020】
また、同様に作製した4×4×16cmのモルタル供試体の材齢1、7及び28日の圧縮強度をJIS R 5201に準拠した方法で測定した。この測定結果も表3に併せて記す。表3から明らかなように、本発明によるモルタル供試体は何れも高い膨張を呈した。また、水和反応遅延剤を配合したもの(比較例3)は、配合しないもの(例えば、比較例2)と比較し、初期強度発現性が低下したことと膨張率の向上が殆ど見られなかったことから、生石灰の水和時期の遅延と共にセメントの水和も遅延されたことがわかる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のモルタル・コンクリートは、高い膨張発現性を有する生石灰系膨張性混和材を、その膨張発現性を調整・制御するための種々の混和剤・材や他の膨張発現成分・収縮抑制成分等を併用することなく、そのまま使用しても当該膨張特性をひび割れに繋がるような収縮の抑制に十分活かせる。このため、モルタル・コンクリートの配合を極めて簡易なものにすることができ、調合時の作業負荷も余り要さず、また膨張混和材を大量に使用しなくても高い収縮抑制効果が得られる。
Claims (4)
- 遊離生石灰を主要膨張成分とする膨張性混和材及びH.M.が2.10以上かつSiO2含有量が21.0重量%以上のセメントを含有してなるモルタル・コンクリート組成物。
- セメントが、I.M.が1.70以上かつAl2O3含有量が5重量%以上のセメントである請求項1記載のモルタル・コンクリート組成物。
- セメントが、SO3含有量2.0重量%以上のセメントである請求項1又は2記載のモルタル・コンクリート組成物。
- 膨張性混和材が、3CaO・SiO2を15〜80重量%含有する請求項1〜3何れか記載のモルタル・コンクリート組成物。
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JP2009001449A (ja) * | 2007-06-21 | 2009-01-08 | Taiheiyo Material Kk | 膨張性組成物 |
JP2009080087A (ja) * | 2007-09-27 | 2009-04-16 | Sumitomo Osaka Cement Co Ltd | セメント硬化体に用いられたセメントのクリンカ品種の推定方法 |
-
2003
- 2003-05-12 JP JP2003133069A patent/JP2004331482A/ja active Pending
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