JP4806843B2 - 易剥離性フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装容器の蓋材として好適に用いることができる易剥離性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
カップ、ボウル、トレイなどの形状の容器の開口部をフィルムからなる蓋材で密封する包装において、蓋材には、容器内の内容物を保護することができると同時に、開封のために蓋材を剥離し易いことが求められ、このような要求を満たす蓋材として、易剥離性フィルムが用いられている。これまでに、異種樹脂をブレンドしてなる樹脂組成物を利用した易剥離性フィルムは種々知られているが、ポリエステル系樹脂容器に対するこれらの接着・剥離性能は十分であるとは言えない。
【0003】
ポリエステル系樹脂容器に対して易剥離性を有するフィルムとして、例えば、ヒートシール性ポリエステル樹脂層とオレフィン/無水マレイン酸共重合体層とポリオレフィン層を順に積層し、ヒートシール性ポリエステル層とオレフィン/無水マレイン酸共重合体層との層間にて剥離する易剥離性フィルムが知られている(特開平4−94933号公報)。しかしながら、このフィルムは、シール層であるヒートシール性ポリエステル樹脂層の一部が剥離後に容器縁部に糸状に残る現象(いわゆる糸引き)を起こすことがあり、改良が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル系樹脂からなる容器用の蓋材に求められる良好な易剥離性を有し、かつ剥離時にシール層が糸引きを起こさない易剥離性フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
かかる状況において本発明者らは、ポリエステル系樹脂からなる特定厚さのシール層、および該シール層に隣接し、特定のエチレン系共重合体からなる層を有するフィルムが上記要求を満たすことを見出し、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ポリエステル系樹脂からなる厚さ1〜20μmのシール層、および該シール層に隣接し、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体およびエチレン/酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種類のエチレン系共重合体からなる層を有する易剥離性フィルムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の易剥離性フィルムにおけるシール層とは、ポリエステル系樹脂からなる容器と熱融着される層であって、易剥離性フィルムの一方の表面を構成する層であり、ポリエステル系樹脂からなる。ポリエステル系樹脂とは、多塩基酸と多価アルコールとが重縮合されてなる樹脂である。多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオールが挙げられる。上記の多塩基酸と多価アルコールは、任意の組み合わせで用いられる。
具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール共重合体やテレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール三元共重合体、2,6−ナフタレンジカルボン酸/エチレングリコール共重合体、テルフタル酸/1,4−ブタンジオール共重合体などが挙げられる。ポリエステル容器との低温シール性の点では、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール三元共重合体が好ましい。
【0008】
このシール層の厚さは、1〜20μmであり、好ましくは3〜10μmである。シール層の厚さが1μm未満の場合には、被着体(容器)とのシール強度が不十分になることがある。また、シール層の厚さが20μmを超えると、容器からの剥離時にシール層が円滑に断裂せず、糸引きを発生するおそれがある。
【0009】
本発明におけるシール層に隣接する層は、エチレン/不飽和カルボン酸エステルおよびエチレン/酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種類のエチレン系共重合体からなる。具体的には、エチレン/不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸n−ブチル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、シール層の糸引き防止の点では、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましく、特に、エチレン/アクリル酸メチル共重合体およびエチレン/メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0010】
これらのエチレン系共重合体中のエチレン成分含量は、50〜85重量%であることが、シール層とそれに隣接するエチレン系共重合体層との層間強度が程よく制御され、シール層の糸引きが生じ難いために好ましい。エチレン系共重合体中のエチレン成分含量は、特に好ましくは60〜80重量%である。
【0011】
シール層に隣接する層を構成するエチレン系共重合体は、本発明の効果が著しく損なわれない限り、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂やポリプロピレン、プロピレン/α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などを含有してもよい。
【0012】
また、シール層に隣接する層を構成するエチレン系共重合体は、必要に応じて相溶化剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤などを含有してもよい。
【0013】
シール層に隣接するエチレン系共重合体からなる層のシ−ル層がない側には、本発明の効果が著しく阻害されない限り、基材層などが設けられていてもよい。
【0014】
基材層としては、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸エチレン/ビニルアルコール共重合体フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムやそれらの印刷物、塗工物、蒸着物が挙げられ、また、アルミ箔や紙なども適用可能である。基材層の材質は、易剥離性フィルムが有すべき性質に応じて自由に選択することができる。
【0015】
また、シール層に隣接するエチレン系共重合体層と基材層との間、あるいは一の基材層と他の基材層との間には、これらの層同士を接合するための熱可塑性樹脂からなる層が設けられていてもよい。この目的で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン/プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂や、エチレン/不飽和カルボン酸エステル、エチレン/酢酸ビニルなどのエチレン系共重合体などが挙げられる。エチレン系共重合体としては、特にエチレン成分含量が85〜98重量%の共重合体が好ましい。
【0016】
本発明の易剥離性フィルムの厚さは特に限定されないが、10〜100μmが取り扱い易さの点で好ましい。
【0017】
本発明の易剥離性フィルムは、インフレーション成形法、Tダイキャスト成形法、押出ラミネート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出Tダイキャスト成形法、共押出押出ラミネート成形法などの成形方法で製造することができる。
【0018】
シール層に隣接するエチレン系共重合体の層と基材層とは押出ラミネート法やドライラミネート法などの積層方法で積層することができる。例えば、アルミ箔との積層は以下のようにして行うことができる。まず、予め形成されたエチレン系共重合体からなる層の表面にコロナ処理などの表面処理を施し、一方、アルミ箔の表面には接着剤を塗布する。次いで、前記エチレン系共重合体層とアルミ箔とをそれぞれの処理表面を向き合わせて重ね、例えばドライラミネーターにて圧着し、その後、エージングする。
【0019】
本発明の易剥離性フィルムは、容器、特にポリエステル系樹脂容器の蓋材として好適に用いることができる。具体的には、易剥離性フィルムのシール層と容器のフランジ部とを重ね、その重ねた部分に熱などのエネルギーを作用させてシールすることにより、容器の蓋材として用いられる。被着体、例えばポリエステル系樹脂容器に貼合された本発明の易剥離性フィルムを該被着体から剥離する際には、図1(A)〜(D)に示すように、被着体4と易剥離性フィルム1とが貼合されている領域(貼合部分)12ではシール層2と該シール層に隣接するエチレン系共重合体層3との層間で剥離が起こり、貼合部分12と非貼合部分11、13との境界付近では、シール層2の断裂が起こる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の易剥離性フィルムを容器、特にポリエステル系樹脂容器の蓋材として使用すると、剥離開封時に蓋材のシール層の糸引きが起こらず、円滑な開封が可能となる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
(1)易剥離性
70mm×90mmに切り出した非晶性ポリエステルシート(東洋紡績(株)製:A560GE0R、厚さ=300μm)に被試験フィルムのシール層を密着させ、圧力:3kg/cm2、加圧時間:1秒、および表1に示した温度の条件にて、巾20mmの帯状に、帯の長手方向が前記ポリエステルシートの90mmの辺と平行になるようにヒートシールした。この積層シートを、その帯状シール部分の長手方向に垂直に15mm巾に切り出して15mm×70mmの短冊である試験片を得た。
この試験片を島津製作所(株)製オートグラフAGS―500型引張試験機を使用して、300mm/分の引張速度で180度剥離し、そのときの剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
(2) 糸引き
上記易剥離性試験(1)の後に、前記ポリエステルシートのシールされていた部分を目視観察した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例1
シール層にはテレフタル酸/エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール三元共重合体(イーストマン・ケミカル社製PETG6763)を用い、また該シール層に隣接するエチレン系共重合体の層にはエチレン/アクリル酸メチル共重合体(住友化学工業(株)製アクリフトCG4002、エチレン含量69重量%)を用いた。さらに、前記シール層とエチレン系共重合体の層との間にあって両層を接合する層(以下、ラミネート層と称する)としてエチレン/酢酸ビニル共重合体(住友化学工業(株)製、エバテートD3022、エチレン含有量:93重量%)を用いた。これら三種類の樹脂を、シール層、エチレン系共重合体層およびラミネート層の厚さがそれぞれ5μm、10μmおよび20μmとなるように中外テック(株)製3層共押出Tダイにて共押出し、積層フィルムを得た。その後、ラミネート層の露出面をコロナ処理し、二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、東洋紡エステルフィルムE5102、厚さ12μm)とドライラミネートした。ドライラミネートには、脂肪族エステル系接着剤(主剤=武田薬品(株)製、商品名「タケラック A515」;硬化剤=武田薬品(株)製、商品名「タケネートA50」)を用いた。
評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004806843

【図面の簡単な説明】
【図1】被着体に貼合された本発明の易剥離性フィルムの剥離過程を示す概略図である。
【符号の説明】
1: 易剥離性フィルム
11: 非貼合部分
12: 貼合部分
13: 被貼合部分
2: シール層
3: エチレン系共重合体層
4: 被着体

Claims (2)

  1. テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール三元共重合体であるポリエステル系樹脂からなる厚さ3〜10μmのシール層、および該シール層に隣接し、エチレン/アクリル酸メチル共重合体又はエチレン/メタクリル酸メチル共重合体からなる層を有することを特徴とする易剥離性フィルム。
  2. 前記エチレン/アクリル酸メチル共重合体又は前記エチレンメタクリル酸メチル共重合体中のエチレン成分含有量が50〜85重量%であることを特徴とする請求項1に記載の易剥離性フィルム。
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