JP4806159B2 - 多孔性フィルム - Google Patents
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Description
近年、多孔性フィルムは、農業用、畜産用、建材用、光拡散板等に用途が広がり、また、電池用セパレータとしても展開されている。しかし、農業用、畜産用、建材用、光拡散板等に用いた場合には、上記衛生用品として汎用されている柔らかいフィルムでは剛性がないため扱いにくいという問題がある。
例えば、リチウムイオン二次電池のセパレータは、正極と負極と直接接触させて介在させるために、内部短絡の防止の点から絶縁性が要求され、かつ、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造とし、さらに、異常発熱時に孔を溶融・遮断するシャットダウン機能が要求される。
しかし、シャットダウン後も何らかの理由で電池温度の上昇が続いてセパレータの耐熱温度を超えると、セパレータが溶融し、正極と負極との隔離性が著しく低下するため、電池内でショートが発生すると共に、最悪の場合に電池が発火する恐れがある。
例えば、特開2003−082139号(特許文献1)では、オレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂に充填剤および低分子量化合物を配合した多孔性フィルムおよび該フィルムよりなるセパレータが提案されている。この多孔性フィルムは延伸により多孔が設けられているため、他の多孔膜の製造方法(発泡法、抽出法、焼結法)と比較して安価で透気度の高い多孔性フィルムを得ることができる。
また、特開平10−50287号(特許文献2)ではポリオレフィン系樹脂と無機粉体等から構成された無機多孔膜からなるセパレータが開示されている。該セパレータは耐熱性の優れた無機粉体等を用いて、耐熱性の優れたセパレータとしている。
上記可塑剤として、エステル化合物、アミド化合物、側鎖を有する炭化水素重合体、シリコーンオイル、鉱油、ワックス類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用い、
上記非晶質熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記充填剤を50質量部以上400質量部以下、上記可塑剤を1質量部以上30質量部以下とし、
上記フィルムは延伸により空孔が設けられていることを特徴とする多孔性フィルムを提供している。
さらに、非晶質熱可塑性樹脂に比較的多くの充填剤(好ましくは、無機フィラー)を添加して更に耐熱性を高めたフィルムを作成し、このフィルムを延伸して充填剤との界面剥離で孔を設けることにより、良好な透気性を保持したまま、剛性および強度を向上させるとともに、引張強度が高く伸びの少ない優れた多孔性フィルムとしている。
上記ガラス転移温度Tgは、好ましくは40℃以上、最も好ましくは100℃以上である。
該非晶質ポリオレフィン系樹脂としては、結晶化を抑制すべくポリマー主鎖に立体的に嵩高い官能基を導入した6−メチル−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンの開環重合体の水素添加物であるゼオネックス(日本ゼオン社の商品群名)、ノルボルネン樹脂系のアートン(JSR社の商品群名)、エチレン−ノルボルネン付加共重合体やエチレン−テトラシクロドデセン付加重合体であるアペル(三井石油化学社の商品群名)、TOPAS(Hoechst社製)等が挙げられる。
充填剤の平均粒径は、好ましくは0.5〜5μm程度である。
上記無機化合物としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカなどの酸化物のほか、タルク、クレー、マイカなどのケイ酸塩等が挙げられる。好ましくは硫酸バリウム、炭酸カルシウム、最も好ましくは硫酸バリウムである。
上記無機充填剤は樹脂中での分散性向上のため、表面処理剤で無機充填剤の表面を被覆して疎水化しておいてもかわまない。この表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩を挙げることができる。
該有機化合物の充填剤としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられ、特に、架橋させたポリスチレンが好ましい。
上記配合比としているのは、充填剤を50質量部未満とすると、目的とする良好な透気性が発現されにくくなり、外観、風合いも悪くなりやすいからである。一方、400質量部を超えると、フィルム成形の際に樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなり、フィルム強度も大幅に低下するからである。
より好ましくは、非晶質熱可塑性樹脂100質量部に対して充填剤を60質量部以上150質量部以下である。
この可塑剤としては、沸点が140℃以上あるいは/および140℃で1時間加熱した後の重量の減少率が加熱前の重量に対して10%以下の有機化合物を用いている。さらに、該可塑剤は融点が25℃以上であることが好ましい。
可塑剤の沸点を140℃以上としているのは、140℃未満ではフィルム化する際に可塑剤が揮発して大きな空隙が発生し、フィルムとして形成できなくなるからである。また、140℃で1時間加熱した後の重量の減少率が加熱前の重量に対して10%以下としているのは、10%を越えると分解物が発生して大きな空隙が発生し、フィルムとして形成出来なくなるからである。
エステル化合物としては、テトラグリセリントリステアレート、グリセリントリステアレート、ステアリルステアリレート、エチレンカーボネート、ジステアリルカーボネート等が挙げられる。
アミド化合物としては、エチレンビステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリαーオレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有するオリゴマー領域のものが好ましいが、エチレン−プロピレン共重合体、そのマレイン酸誘導体、イソブチレンの重合体、又はブタジエン、イソブチレンのオリゴマー及びその水添物やこれらの誘導体が挙げられる。
シリコーンオイルは公知のもので良く、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
鉱油としては、流動パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。
具体的には、エステル化合物、アミド化合物、脂肪酸、長鎖アルコール、パラフィンワックス、長鎖脂肪酸塩、長鎖アミン塩、長鎖アミン等の中で、融点が25℃以上で且つ140℃で固体もしくは液体であればよい。
可塑剤を1質量部未満とすると、目的とする良好な延伸性が発現されにくくなり、外観、風合いも悪くなりやすいからである。一方、可塑剤が30質量部を超えると、フィルム成形の際に樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなるからである。
より好ましくは、非晶質熱可塑性樹脂100質量部に対し、充填剤は60〜200質量部、可塑剤が1〜20質量部の配合比とする。
その後、ペレットを非晶質熱可塑性樹脂の融点以上、好ましくは融点+20℃以上で分解温度未満の温度条件下において、押出成形機等を用いて、溶融、製膜することによりフィルムを得ている。具体的には、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、プレス成形等が挙げられる。なお、ペレット化せずに直接成形機で製膜することもできる。
本発明では、通常、上記ペレットの水分率が1000ppm以下、好ましくは700ppm以下にして溶融成形してフィルム化している。ペレットの水分が1000ppmより大きいとゲル、ピンボールが極度に発生して好ましくないためである。一方、溶融混合物はペレット化せずに直接成形工程にもって行くことも可能であるが、この場合も溶融混合物の水分率が1000ppm以下となるように、溶融混練工程から成形工程までの途中で真空脱気もしくは解放脱気を行い、所定の水分率以下にして溶融樹脂のまま、次工程の押出機の供給口に投入し、溶融成形でフィルムとしても良い。
2軸方向に延伸する場合は、最初にフィルムの長手方向(縦方向)、またはそれと直角をなす方向に1軸延伸し、次いで、該方向と直角をなす方向に2軸目の延伸を行う方法、および、フィルムの縦横両方向に同時に2軸延伸する方法を用いる。また、延伸した後には、必要に応じ、開孔径を安定させるために、熱固定処理を行ってもよい。
好ましくは厚みの最大値と最小値が厚みの平均の±25%以内とし、捲回する際、部分的に圧力がかかりセパレータの絶縁性が低下するのを防止している。
本発明の多孔性フィルムからなるセパレータでは、充填剤の含有量を多くしているため、充填剤の含有量が少ない或いは含有していないフィルムからなるセパレータと比較して強度が低下するが、厚みおよび厚みの振れの範囲を制御することで、所要の強度を持たせている。
上記範囲に設定しているのは、透気度が10[sec/100cc]未満であると正極と負極とが短絡しやすいからであり、1000[sec/100cc]を越えるとイオンの移動が妨げられ、電池性能が低下するためである。
上記透気度(ガーレ値)はJIS P8117に準拠して、透気度(秒/100cc)を測定している。
引張弾性率を1000MPa以上4000MPa以下としているのは、1000MPa未満であるとフィルムの腰が弱く、渦巻き状に巻回する際に取り扱いにくいものとなる一方、4000MPaを越えると硬すぎて巻回時にクラックが生じやすいからである。該弾性率はJIS K7161に準拠して測定している。
また、微細孔構造を持たせるために延伸法を採用しているため、製造コストも安価にできる等の種々の利点を有する。
図1は多孔性フィルムの断面模式図であり、多孔性フィルム1は三次元網状の空孔1aを備え、該空孔1aは多孔性フィルムの両面1b、1cに連通し、多孔性フィルムの透気度は10〜1000[sec/100cc]の範囲内としている。
多孔性フィルム1aの厚さは5〜300μm、空孔1aの径は0.3μm以下としている。また、該多孔性フィルムの引張弾性率は1000MPa〜4000MPaとしている。
このフィルムを2軸延伸機で、まず、フィルムの長手方向(縦方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、ついで、長手方向と直交方向(横方向)に延伸倍率4倍で延伸している。
上記多孔性フィルム1は、連続材からなるフィルム10を連続的に2軸延伸することで、連続材として得られ、コイル状に巻き取っている。
非晶質ポリオレフィン[日本ゼオン社製 ZEONOR 1410R(ガラス転移温度136℃)]100質量部に、可塑剤としてプロピレンカーボネート[和光純薬工業社製 試薬 融点−49℃]6質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]100質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。上記硫酸バリウムは平均粒径0.66μmであった。
次に、上記溶融したコンパウンドを温度200℃でTダイに充填して成形を行い、原反シート(フィルム)を得た。原反シートの厚みは平均250μmであった。
次に、得られた原反シートを135℃でシートの長手方向(縦方向)に4.5倍、次いで145℃て横方向に4倍の延伸倍率で逐次延伸を行い、厚み平均25μmの多孔性フィルムを得た。
非晶質ポリオレフィン[日本ゼオン社製 ZEONEX R480R (ガラス転移温度138℃)]100質量部に、充填剤として炭酸カルシウム[日東粉化社製 NCC#2310]110質量部、可塑剤としてグリセリントリ(12−ヒドロキシステアレート)[豊国製油社製 HY−CASTOR OIL 融点 87℃]5質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。上記炭酸カルシウムは平均粒径0.97μmであった。
次ぎに、上記コンパウンドを温度200℃でTダイ成形を行い原反シート(フィルム)を得た。該シートを135℃でシートの長手方向に4.5倍延伸し、次いで横方向に150℃で4倍延伸を行い、厚み平均200μmの多孔性フィルムを得た。
非晶質ポリオレフィン[三井化学社製 アペルAPL6015(ガラス転移温度145℃)]100質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]120質量部、可塑剤としてトリメリット酸トリ2エチルヘキシル[花王社製 トリメックスT一08 融点−45℃、]7質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。該コンパウンドを温度200℃でTダイ成形を行い原反シート(フィルム)を得た。
該シートを140℃で縦方向に4.5倍延伸し、次いで横方向に150℃で4倍延伸し、厚み平均 25μmの多孔性フィルムを得た。
ポリスチレン(旭化成(株)製“スタイロン”666、ガラス転移温度105℃)100質量部、可塑剤としてエチレンビスステアリン酸アミド[日本油脂社製 アルフロ−H−50L 融点114℃]8質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]120質量部をブレンドしてコンパウンドを行った、該コンパウンドを温度170℃でTダイ成形を行い原反シート(フィルム)を得た。該原反シートを120℃で縦方向に4.5倍、次いで125℃で横方向に4倍の逐次延伸を行い、厚み平均45μmの多孔性フィルムを得た。
線状低密度ポリエチレン[三井化学社製 ウルトゼックス2023FP、密度;0.920g/cm3、メルトフローレート;2.1g/10min]、充填剤として炭酸カルシウム[日東粉化社製 NCC#2310]100質量部、可塑剤としてジメチルシリコーン[GE東芝シリコーン社製 商品名TSF451−100 25℃での動粘度100mm2/sec]6質量部、をブレンドしてコンパウンドを行った。該コンパウンドを温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。得られた原反シートを80℃でシートの縦方向に4.5倍、次いで115℃で横方向に4倍の逐次延伸を行い、厚み平均30μmの多孔性フィルムを得た。
ポリプロピレン[出光石油化学社製 F−200S、密度;0.900g/cm3、メルトフローレート;2.0g/10min]、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]100質量部、可塑剤としてグリセリントリステアレート[和光純薬工業社製 試薬 融点72℃]8質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。該コンパウンドを温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。得られた原反シートを110℃でシートの縦方向に4.5倍、次いで145℃で横方向に4倍の逐次延伸を行い、厚み平均60μmの多孔性フィルムを得た。
透気度(ガーレ値)はJIS P8117に準拠して、通気度(秒/100cc)を測定している。
上記弾性率はJIS K7161に準拠して測定している。
一方、実施例1〜4の透気度〔sec/100cc〕は、実施例1が310、実施例2は140、実施例3は230、実施例4は360、比較例1は330、比較例2は400で、いずれも100〜1000〔sec/100cc〕の範囲内であり、実施例1〜4は引張弾性率を高めているにかかわらず、比較例1、2と同様な肉厚で透気性は同等であった。
1a 空孔
1’セパレータ
10 フィルム
11 樹脂
12 充填剤
20 電池
21 正極板
22 負極板
Claims (5)
- ガラス転移温度Tgが10℃〜200℃の非晶質熱可塑性樹脂と、平均粒径が0.1〜50μmの充填剤と、沸点が140℃以上あるいは/および140℃で1時間加熱した後の重量の減少率が加熱前の重量に対して10%以下の有機化合物を可塑剤として含む樹脂組成物からなるフィルムで、
上記可塑剤として、エステル化合物、アミド化合物、側鎖を有する炭化水素重合体、シリコーンオイル、鉱油、ワックス類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用い、
上記非晶質熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記充填剤を50質量部以上400質量部以下、上記可塑剤を1質量部以上30質量部以下とし、
上記フィルムは延伸により空孔が設けられていることを特徴とする多孔性フィルム。 - 上記非晶質熱可塑性樹脂が非晶質ポリオレフィンである請求項1に記載の多孔性フィルム。
- 上記充填剤が、硫酸バリウム、炭酸カルシウムを含む無機化合物から選択されたものである請求項1または請求項2に記載の多孔性フィルム。
- 上記延伸は縦横方向のいずれか一方向に少なくとも1.5倍以上二軸延伸されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔性フィルム。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の多孔性フィルムを非水電解質電池用セパレータとして収容している電池。
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