この発明の実施の形態を説明する前に、該実施の形態の構成・作用をより分かり易くするため、この出願人による蓄電装置の残容量であるSOC(State Of Charge)を表示するSOCメータ(ガソリン車の場合の燃料計に対応する。)に関する比較例1、2と、この発明による表示例について説明する。
なお、以下の説明においては、蓄電装置をバッテリともいい、蓄電装置の残容量をバッテリのSOC(バッテリSOCあるいは単にSOC)ともいう。
このバッテリSOCは、例えば、バッテリの両端の開放電圧と、充放電しているときの実際の電圧と、電流と、並びにバッテリ温度を所定周期、いわゆるサンプリング周期毎に測定することで算出できることが周知である。
また、以下の説明において、バッテリSOCは、分かり易さを考慮し、バッテリの満充電容量を基準の100[%]としてパーセント表示で表す。
さらに、SOCメータでは、分かり易さを考慮し、バッテリSOCの10[%]当たり、基本的には、セグメント1(1単位)ずつ表示が増減するものとして説明する。
[比較例1についての説明]
図13Aは、バッテリSOC(実際の残容量)の時間変化例を示し、図13Bは、その時間変化に対するSOCメータ上での表示(セグメント数表示)残容量の例を示している。この場合、図13Aの10[%]刻みの横線は、バッテリSOCに対する表示残容量を算出するためのSOCセグメント算出テーブル301として機能する。
すなわち、時点t1でバッテリSOCが30[%]を超えたので、時点t1からSOCメータは、表示残容量がセグメント数「3」表示からセグメント数「4」表示に変更される。以下、同様である。バッテリの使用可能範囲は、図13Aに太線で示すように、モードAでは、0〜80[%]であり変更されない。
なお、この図13A、図13Bに示す、冬季以外の通常季(春季、夏季、秋季、代表して夏季ともいう。)におけるSOCメータのモードA制御時において、バッテリSOCが80[%]のとき、SOCメータでは、セグメント数「8」表示のフルスケール、いわゆる満充電状態であるように運転者に見えるように表示を構成している。
その一方、冬季時には、安定な起動等を確保するために、バッテリの使用可能範囲の上下限を、それぞれ、例えば20[%]上昇させ、20〜100[%]の間で使用に供するように制御する。この冬季時におけるSOCメータの表示制御は、SOCメータのモードB制御という。
図14A、図14Bは、外気温が所定温度以下に低下したことに基づき、時点t14で制御を通常季のモードA制御から、冬季のモードB制御に切り替えた遷移時を含むバッテリSOCの時間変化及びSOCメータの表示変更例をそれぞれ示している。
冬季制御に係るSOCメータのモードB制御の比較例1では、冬季時の始動性を向上するために、バッテリSOCの使用可能範囲0〜80[%]を、20〜100[%]に変更しているが、この比較例1では、バッテリSOCに対する表示残容量を算出するためのSOCセグメント算出テーブル301は、図13Aに示したものと同様のものを使用するので、SOCメータの表示の仕方は、変更されない。
そのため、例えば、時点t14〜t15の間では、SOCメータでは、セグメント数「3」と表示され、まだまだ残容量があるように見えるのにアクセルを踏んでもアシスト量が少ない等の違和感がある。また、時点t17〜t18の間では、SOCメータには充電されているように見えるのに回生が多く行なわれる等の違和感がある。同様に、時点t17〜t18の間では、バッテリ残容量が十分あるように見えるのにアイドルストップ(走行中の停車時に燃料をカットする操作。)に入らない等の違和感がある。
[比較例2についての説明]
図15A、図15Bは、外気温が所定温度以下に低下したことに基づき、時点t14で制御を通常季のモードA制御から、冬季のモードB制御に切り替えた遷移時を含むバッテリSOCの時間変化及びSOCメータの表示変更例をそれぞれ示している。
冬季制御に係るSOCメータのモードB制御の比較例2では、比較例1と同様、冬季時の始動性を向上するために、バッテリSOCの使用可能範囲0〜80[%]を、20〜100[%]に変更するのに伴い、SOCメータの表示の仕方を変更している。すなわち、モードAでは、上記と同様のセグメント算出テーブル301を使用するが、モードBでは、バッテリSOC20[%]をセグメント数「0」表示、100[%]をセグメント数「8」表示とするSOCセグメント算出テーブル302を使用する。
しかしながら、このように、モード(通常季のモードA又は冬季のモードB)によって、SCOメータの表示の仕方、換言すれば、SOCセグメント算出テーブルを切り替えた場合には、運転中(走行中又はアイドルストップ時)に、例えば、時点t14で、セグメント「4」表示がいきなり(急激に)セグメント「1」表示に変化(急変)して、いわゆるセグメント跳びが発生し運転者に違和感を与えるという課題が解決されない。
[この発明による表示例]
図12A、図12Bは、外気温が所定温度以下に低下したことに基づき、時点t24で制御が通常季のSOCメータのモードA制御から、冬季のモードB制御に変化した遷移時を含むバッテリSOCの時間変化及びSOCメータのこの発明の一例による表示変更例をそれぞれ示している。
冬季制御に係るSOCメータのモードB制御では、冬季時の始動性を向上するために、バッテリSOCの使用可能範囲0〜80[%]を、20〜100[%]に変更するのに伴い、SOCメータの表示の仕方を変更している。すなわち、モードAでは、上記と同様のセグメント算出テーブル301を使用するが、モードBでは、バッテリSOC20[%]をセグメント数「0」表示、100[%]をセグメント数「8」表示とするSOCセグメント算出テーブル302を使用するとともに、モードAからモードBへ切り替える際、徐々に変更後の使用可能範囲に対応する残容量に近づけるように表示する変更期間(時点t24〜t25)では、時間に応じて表示用閾値が徐々に変化するSOCセグメント算出テーブル303を使用して表示を制御する。
このように制御することによって、通常季のモードA制御から冬季のモードB制御に移る際、SOCの使用可能範囲を0〜80[%]から20〜100[%]に変更しても、SOCの使用可能範囲に対するSOCメータの表示残容量のイメージがずれない。また、SOCメータは、1セグメントずつ変化するので、セグメント跳びが発生せず、運転者に違和感を与えることがない。なお、冬季のモードB制御から通常季のモードA制御へのSOCメータの変化の場合にも、逆方向に、同様に表示制御すればよいので、違和感が発生しない。
[実施形態]
以下、この発明の実施形態について図1〜図11を参照して詳しく説明する。
図1は、この発明の電動車両の一実施形態が適用された燃料電池車両12の概略構成図である。
図2は、燃料電池車両12の主要構成の概略配置説明図である。
この燃料電池車両12は、基本的には、車両のセンタートンネル部に配置される燃料電池14と、この燃料電池14の発電出力を補助するエネルギストレージであり後部座席後方に配置される蓄電装置(バッテリという。)16とから構成されるハイブリッド電源と、このハイブリッド電源からの電流(電力)が図示しないインバータを通じて供給されフロントフード(ボンネット)下に配置されるモータ18とから構成される。バッテリ16は、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池、又はキャパシタを利用することができる。
燃料電池14の電流出力は、配線101を通じて、VCU(Voltage Control Unit:電圧制御装置)20の一端側とモータ18とに接続される。VCU20の他端側の配線102は、バッテリ16に接続されている。
VCU20は、例えば、双方向DC/DCコンバータであり、バッテリ16の電力を電圧変換してモータ18に供給するとともに、燃料電池14の電力及び(又は)モータ18の回生電力を電圧変換してバッテリ16に充電用として供給しかつエア圧縮機24等に供給する。
すなわち、VCU20は、配線101上に現れる高電圧(燃料電池14の電圧)と、配線102上に現れる低電圧(バッテリ16の電圧)との間で電圧変換を行い、VCU20の両端間に接続される電気負荷間での電力の出し入れを制御する。
燃料電池14及びバッテリ16の電力は、駆動系デバイス{DT(Drive Train)系デバイスという。}30に供給されるとともに、DT系冷却水ポンプ28及び燃料電池14を冷却する冷却水ポンプ26に供給される。
この実施形態においてDT系デバイス30は、モータ18と、VCU20と、フロントフード下に配置される空気調和装置(エアコンという。)22と、空気圧縮機(エア圧縮機という。)24とから構成される。
これらDT系デバイス30は、冷却水流路32に連通するDT系ラジエータ34及びDT系冷却水ポンプ28により冷却液体を通じて冷却される。
燃料電池14は、冷却水流路36に連通するFC(Fuel Cell:燃料電池)系ラジエータ38及び冷却水ポンプ26により冷却液体を通じて冷却される。なお、FC系ラジエータ38及び冷却水ポンプ26もフロントフード下に配置される。
DT系ラジエータ34やFC系ラジエータ38は、車速に応じた風速を有する外気による風(車速風という。)39によって熱交換を行う。
燃料電池14は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んで保持して構成される燃料電池セルを、複数積層させて一体化させたスタック構造である。各燃料電池セルは、電解質膜(固体高分子電解質膜)・電極構造体を挟んで保持する金属のセパレータとを備える。一方のセパレータの電解質膜・電極構造体のカソード電極に対向する面には、酸化剤ガス流路(反応ガス流路ともいう。)が設けられる。他方のセパレータの電解質膜・電極構造体のアノード電極に対向する面には、燃料ガス流路(反応ガス流路ともいう。)が形成される。
燃料電池14の燃料ガス流路には、燃料ガス供給流路44を通じて燃料供給システム46から燃料ガス、例えば水素(H2)が供給される。燃料供給システム46は、制御部100により遮断弁のオンオフ等が制御される。
燃料電池14の燃料ガス流路から排出される未使用の水素ガスを含むガスは、燃料ガス循環流路48を通じて燃料ガス供給流路44に戻される。燃料ガス供給流路44には図示しないエゼクタが設けられ、そのエゼクタによって発生される負圧により燃料ガス循環流路48からのガスが燃料電池14の燃料ガス流路にもどされる。
燃料電池14の酸化剤ガス流路には、酸化剤ガス供給流路50を通じてエア圧縮機24から圧縮空気が供給され、圧縮空気は燃料電池14の酸化剤ガス流路を通過し、これに連通する酸化剤ガス排出流路52を通じて外気に排出される。
燃料電池車両12には、モータ18、エア圧縮機24を含むDT系デバイス30等の電気負荷、及びDT系冷却水ポンプ28や冷却水ポンプ26等の電気負荷を制御するための各種温度センサが設けられている。
エア圧縮機24に外気である空気を導入する酸化剤ガス導入流路56には、吸気温度Tsを検出する吸気温度センサ201が設けられている。
モータ18には、モータ温度Tmを監視するモータ温度センサ202が設けられている。
冷却水流路32には、DT系水温Trを検出するDT系水温センサ203が設けられている。
バッテリ16には、バッテリ温度Tbを検出するバッテリ温度センサ204が設けられている。
燃料電池14の冷却水流路36には、FC系水温Twを検出するFC系水温センサ205が設けられている。
また、燃料電池14の燃料ガス循環流路48には、燃料電池14の燃料ガス温度Taを検出するアノード温度センサ206が設けられ、燃料電池14の酸化剤ガス温度Tcを検出するカソード出口温度センサ207が、酸化剤ガス排出流路52に設けられている。
さらに、車速風39の温度をエアコン22を制御するためのエアコン用気温Tvとして検出するエアコン用気温センサ208が設けられている。
モータ温度センサ202により監視されるモータ温度Tm、DT系水温センサ203により検出されるDT系水温Tr、バッテリ温度センサ204により検出されるバッテリ温度Tb、FC系水温センサ205により検出されるFC系水温Tw、アノード温度センサ206により検出される燃料ガス温度Ta、カソード出口温度センサ207により検出される酸化剤ガス温度Tc、及びエアコン用気温センサ208により検出されるエアコン用気温Tvが、制御部100により検出される。
この図1例の燃料電池車両12では、外気温を検出する専用の高精度温度センサを設けていないが、外気温を検出する専用の高精度な温度センサを設けてもこの発明を実施することができる。
制御部100には、燃料電池車両12(燃料電池14)を起動する起動信号を出力するとともに、燃料電池車両12(燃料電池14)を停止する停止信号を出力するイグニッションスイッチ(IGSW)60(起動スイッチ)及びバッテリ16の残容量(SOC)をセグメントの数で表示するSOCメータ(燃料計)等を表示するためのディスプレイを有する表示部158が接続されている。
なお、表示部158のSOCメータにセグメント数で表示される残容量は、運転者の確認用であって、通常、実際の(真の)残容量とは異なる値とされている。実際の残容量(SOC)≧表示用残容量(SOCD)である。
制御部100は、燃料電池車両12の各種弁の開閉、DT系デバイス30の制御、バッテリ16の充放電制御等を含め、燃料電池車両12全般の動作を制御する。
制御部100は、CPU、メモリ(ROM、RAM)、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等を含むコンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)により構成され、各種入力に基づきメモリに記憶されているプログラムを実行することで各種の機能を実現する機能手段(機能部)として動作する。
この実施形態において、制御部100は、起動時必要電力増加部110、停止時充電量決定部112、冬季判定部114、冬季判定禁止・解除部116、冬季切替判断部150、バッテリ16の残容量算出部(SOC算出部)152、バッテリ16の使用可能範囲変更部154、表示制御部156等として機能する他、掃気制御部、RTC(Real Time Clock)制御部、SOC閾値持ち替え部(SOC閾値変更部)等として機能する。なお、SOC算出部152は、所定周期毎に、実際の残容量SOCを算出するとともに、当該バッテリ16の使用可能範囲に基づいて当該バッテリ16のSOCメータへの表示用残容量SOCDを算出する表示用残容量算出部としても機能する。
実際上、SOC(真の残容量)は、バッテリ16に組み込まれたバッテリ制御部(不図示)により当該バッテリ16の入出力電流、出力電圧、バッテリ温度Tb等が参照されて検出され、制御部100に通知される。また、制御線を図示はしていないが、制御部100は、後述するようにVCU20の通過電流{モータ18からの回生電流、燃料電池14からの発電電流、バッテリ16からのモータ18へのバッテリ電流(駆動電流)}を制御する信号をVCU20に送出する。制御部100は、バッテリ16のエネルギ管理を含め、燃料電池車両12全体のエネルギ管理制御部としても機能している。
基本的には以上のように構成される燃料電池車両12の動作について次に説明する。
この燃料電池車両12は、燃料電池車両12の停止中であるソーク中または発電中(走行中)に車載の温度センサ201〜208中、外気温Teaに対する追従性が良好な特定の温度センサ(後述)の検出温度Txを監視し、検出温度Txから冬季(例えば、0[゜C]以下の外気温になる可能性が高い季節)であるか否かを判別し、冬季と決定した場合には、燃料電池車両12の運転中にバッテリ16の充電量を増加し、SOC常用域を高めに推移させるように構成される。
温度センサ201〜208は、運転中に電気負荷を制御するために車両に設けられたセンサであり、いずれも高精度である。
ここで、車載の温度センサ201〜208中、吸気温Tsを検出する吸気温度センサ201、モータ温度Tmを検出するモータ温度センサ202、DT系水温Trを検出するDT系水温センサ203、及びエアコン用気温Tvを検出するエアコン用気温センサ208の外気温追従性{(1)ソーク時外気温追従性、(2)走行中又はアイドルストップ時外気温追従性}について検討(実験・確認)したのでその検討結果について図3を参照して説明する。
5hソーク後以降の起動時に外気温Teaへの追従性は、検討した全ての温度センサ201〜203、208が最良である。
ソーク時間が少ない場合の起動時にはエアコン用気温センサ208の外気温追従性が最良である。
燃料電池14への燃料の供給を停止する車両停止中のアイドルストップ時には、エアコン用気温センサ208及びモータ温度センサ202の外気温追従性が最良である。
燃料電池14から大電流を取り出した高負荷後のアイドルストップ時には、DT系水温センサ203の外気温追従性が最良である。
坂道において、モータ18の前進トルクと車両の滑り落ちる力が拮抗している停止中において、いわゆるヒルホールド時においては、DT系水温センサ203の外気温追従性が最良である。
また、実際の走行中において、低車速及び高車速高負荷時のいずれの場合にも、DT系水温センサ203及びエアコン用気温センサ208の外気温追従性が最良である。
以上の結果から、外気温追従性{(1)ソーク時外気温追従性、(2)走行中又はアイドルストップ時外気温追従性}の良好な温度センサとして、ハッチングを施したDT系水温Trを検出するDT系水温センサ203及びエアコン用気温Tvを検出するエアコン用気温センサ208を採用することとする。これらの検出温度Tx(Tx=Tr又はTv)を制御に用いる。
以上が、(1)ソーク時に(2)走行中等に外気温追従性の良好な温度センサについての検討結果の説明である。
次に、冬季判定部114により冬季と判定された場合の起動時必要電力増加部110、停止時充電量決定部112、及びバッテリ16の使用可能範囲変更部154によるSOC使用可能範囲の変更、車両起動のためのSOC及び必要電力について図4、図5、図5を参照して説明する。
図4Aは、冬季判定部114が冬季と決定した場合の使用可能範囲変更部154による使用可能範囲306(306s、306w)の変更の一例について説明している。冬季と判定された場合、夏季(通常季)の使用可能範囲306sである0〜80[%]を、冬季の使用可能範囲306Wである20〜100[%]にシフトする。
図4Bは、冬季と決定した場合の停止時充電量決定部112によるSOCの閾値の持ち替えの一般的な概念を示している。冬季判定部114が冬季と決定した場合、停止時充電量決定部112は、SOCを夏季(冬季以外の春季、秋季も含む。)時のSOCからより大きな値の冬季時のSOCに持ち替える。
具体的には、下限閾値を閾値SOCls(≒0)から閾値SOClw(≒20)に持ち替え、上限閾値を閾値SOCus(≒80)から閾値SOCuw(≒100)に持ち替える。また、アイドルストップを禁止するSOCの閾値を閾値SOCis(≒40)からより大きな閾値SOCiw(≒60)に持ち替える。同様に、目標SOC(又は停止時の充電量の閾値)をSOCts(≒50)からSOCtw(≒70)に持ち替える。
起動時必要電力増加部110は、冬季判定部114が冬季と決定した場合には、この目標SOC(夏季の目標SOCts、冬季の目標SOCtw)となるように燃料電池車両12(燃料電池14)の運転中におけるバッテリ16の充電量を増加する。この場合、制御部100は、バッテリ16の電圧や充放電量を監視し、バッテリ16を充電するための燃料電池車両12(燃料電池14)の運転中における燃料電池14の出力電流が大きくなるように制御する。
なお、運転中の充電量の増量が不足する場合には、イグニッションスイッチ60のオフ時に、バッテリ16のSOCを検出し、検出したSOCが、目標SOCts(夏季)又は目標SOCtw(冬季)となるまで燃料電池14を発電させた後、停止させる。
図5は、冬季判定部114が冬季と決定した場合の停止時充電量決定部112による放電禁止のSOCの閾値の持ち替えの一般的な概念を示している。縦軸は、バッテリ上限出力[kW]である。冬季判定部114が冬季と判定した場合、停止時充電量決定部112は、放電禁止のSOC閾値を閾値SOC5からより大きい閾値SOC6に持ち替える。つまり、より大きな閾値SOC6以上でバッテリ上限出力[kW]を出力できるように制御する。
起動時必要電力増加部110は、この大きい閾値SOC6となるように、燃料電池14の運転中及び(又は)燃料電池14の停止時におけるバッテリ16の充電量を増加する。
これにより冬季走行時におけるドライバビリティを夏季と同等にすることができる。
図6は、冬季判定部114が冬季と決定した場合の停止時充電量決定部112による燃料電池14に対する電力要求出力[kW]の一般的な概念を示している。
冬季判定部114が冬季と決定した場合、停止時充電量決定部112は、夏季の車両停止時の燃料電池14に対する電力要求出力P1を冬季の電力要求出力P2に持ち替え、夏季の車両走行時の燃料電池14に対する電力要求出力P2を冬季の電力要求出力P4に持ち替える。
起動時必要電力増加部110は、この大きい要求出力P2、P4となるように、上記したようにバッテリ16の充電量を増加する。
以上の説明が、冬季判定部114により冬季と決定された場合の使用可能範囲変更部154による使用可能範囲306の変更並びに停止時充電量決定部112による車両起動のためのSOC及び必要電力についての説明である。
次に、燃料電池車両12の表示部158のSOCメータの表示に係わる動作の詳細について、図7の全体フローチャート、図8の表示制御のフローチャート、図9のタイムチャート、図10の表示変更説明図を参照しながら説明する。
ステップS1において、制御部100は、イグニッションスイッチ60がオンにされたかどうかを監視し、オンにされたと判定したとき、ステップS2において、冬季判定部114は、冬季決定フラグFwがセット(Fw=1で冬季を表す。)されているかどうかを判定する。
ステップS2において、冬季決定フラグFwがセットされていなかった場合(Fw=0)、ステップS3において、冬季判定部114は、DT系水温センサ203とエアコン用気温センサ208から、それぞれDT系水温Trとエアコン用気温Tvを検出し、検出したDT系水温Tr又はエアコン用気温Tvのいずれかの検出温度Tx(Tx=Tr又はTv)が0[℃]以下になっているかどうかを判定する(Tx≦0[℃])。
なお、検出余裕やセンサ誤差を考慮して実際には、0[℃]に+α[℃]した、温度以下(Tx≦0+α[℃])になっているかどうかを判定する。
いずれの温度も0[℃]を上回っていた場合、冬季と決定しないで、換言すれば、冬季以外の夏季(春季、秋季を含む。冬季との対比で通常季ともいう。)と決定し、当該ステップS3又はステップS4において、通常季の制御に対応して、使用可能範囲変更部154及び停止時充電量決定部112は、図4A、図4B、図5、図6に示した夏季の状態での上記したSOCの使用可能範囲306s、SOC(下限SOCls、アイドルストップ禁止SOCis、目標SOCts、上限SOCus)及び要求出力(P1、P3)に決定する。
起動時必要電力増加部110は、ステップS4において、この使用可能範囲306s、SOC及び要求出力になるよう燃料電池14を通常の制御で運転し、あるいは冬季用制御であった場合には通常季(通常)の制御に切り替えて運転しバッテリ16を充電する。
ステップS3の判定において、DT系水温Tr又はエアコン用気温Tvの温度が0[℃]以下であった場合(ステップS3:YES)、ステップS5において、冬季判定部114は冬季と決定し冬季決定フラグFwをセットする(Fw←1)。
次いで、ステップS51において、起動時又はアイドルストップの解除時であるかを判定する。起動時は、イグニッションスイッチ60がオフからオンにされたときでステップS1又は後述するステップS15が肯定となったときに該当する。また、アイドルストップの解除は、アイドルストップ状態から走行状態への遷移状態を判定すればよく、例えば図示しないアクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度でもよい。)、車速が所定の低速度以上、例えば5[km/h]以上であるかどうか等により判定することができる。
ステップS51の判定結果が、起動時又はアイドルストップ解除時に該当するときには、ステップS6において、停止時充電量決定部112は、図4A、図4B、図5及び図6を参照して説明したように、夏季の状態から冬季の状態での使用可能範囲306s、SOC及び要求出力に決定する。そして、冬季切替判断部150は、各部に冬季制御切替指令を送出する。この指令に基づき、起動時必要電力増加部110は、前記S0C及び要求出力を確保するように燃料電池14のシステムを冬季用制御に切り替えて運転させる。
ただし、ステップS51の判定が肯定とならなかったときには、ステップS4において、運転を冬季用制御に切り替えないで通常の制御で運転する。表示部158のSOCメータの表示更新処理を、運転者にできるだけ違和感を感じさせないために、表示部158のSOCメータが低輝度状態(又は消灯状態)となっている起動時又はアイドルストップ解除時に行うためである。なお、走行時に、SOCメータは通常輝度で表示される。
次いで、ステップS61において、表示制御部156が図8のフローチャートによる表示制御処理を行う。
通常の制御の場合、ステップS61aにおいて、残容量算出部152が算出した実際のSOCを取得し、ステップS61bにおいて、夏季用のSOCメータのモードA用のSOC表示割付を算出する(実際のSOCをSOC表示割付Aとする。図12Aの時点t24までを参照。)とともに、冬季用の、SOCメータの使用モードB用のSOC表示割付(実際のSOCから20[%]を引いた値をSOC表示割付Bとする。図12Aの時点t25〜t28を参照)を算出する。
次いで、ステップS61cにおいて、現在の設定がモードAであるかモードBであるのかを冬季判定フラグFwから判定する。Fw=0のときモードA、Fw=1のときモードBと判定することができる。
モードAであるときステップS61dにおいて、夏季用のSOCメータのモードA用のSOC表示割付Aに係るSOCセグメント算出テーブル301(図12A参照)の使用を決定する。
そして、ステップS61eにおいて、SOCセグメント算出テーブル301をステップS61aで算出したSOCで検索し、SOCセグメントの個数を決定する。
ステップS61eでSOCメータのセグメント表示を更新する。
その一方、ステップS61cにおいて、現在の設定がモードBと判定したとき、ステップS61fにおいて、係数Kが使用可能範囲変更(302sから302w)後の最終値であるK=1となっているかどうかを判定する。
係数KがK=1になっていなかった場合、ステップS61hにおいて、次の(1)式により係数Kを所定期間毎に更新する。
K←K(前回値)+ΔK …(1)
ここで、ΔKの値は、例えば、ΔK=0.01である。
次いで、ステップS61iにおいて、次の(2)式により、所定期間毎に、SOCセグメント算出テーブル303(図12A参照)の内容を更新する。
(1−K)×SOC表示割付A+K×SOC表示割付B …(2)
次いで、ステップS61eにおいて、更新されたSOCセグメント算出テーブル303をステップS61aで算出したSOCで検索し、SOCセグメントの個数を決定し、SOCメータのセグメント表示を更新する。
この実施形態では、モードAからモードBに変更された場合、ステップステップS61e以降、ステップS7のイグニッションスイッチ60へのオフ状態への変化がない場合(オン状態の継続)、ステップS7:NO→ステップS2:YES→ステップS6→ステップS61の処理が100回繰り返されて、ステップS61fの判定である係数KがK≧1が成立して、SOCセグメント算出テーブル303がSOC表示割付Bに係るSOCセグメント算出テーブル302に変更される{SOCセグメント算出テーブル←(1−1)×SOC表示割付A+1×SOC表示割付B}。
図9は、通常季のモードAから冬季のモードBへのバッテリSOCに対するSOCセグメント算出テーブルの変化を模式的に示す説明図である。
時点t31〜時点t32の間では、ステップS61dの処理に係る「SOCセグメント算出テーブル←SOC表示割付A」に基づき、ステップS61eでのSOCセグメント算出テーブル301を利用したSOCセグメント算出処理が実行される。図9の下側にSOCメータのセグメント数の算出を示している。
時点t32でモードAからモードBに切り替えられると、時点t37までの間に係数Kが所定期間毎に増加され、K=0からK=0.01…K=1にされ、ステップS61iの処理に係る「SOCセグメント算出テーブル←(1−K)×SOC表示割付A+K×SOC表示割付B」に基づき、ステップS61eでのSOCセグメント算出テーブル303を利用したSOCセグメント算出処理が実行される。図9の下側にSOCメータのセグメント数の算出を示している。
時点t37以降では、ステップS61gの処理に係る「SOCセグメント算出テーブル←SOC表示割付B」に基づき、ステップS61eでのSOCセグメント算出テーブル302を利用したSOCセグメント算出処理が実行される。図9の下側にSOCメータのセグメント数の算出を示している。
図10は、図9の時点t31から時点t38までの間の車速の変化、SOCの変化(図9のバッテリSOCと同じ変化であるが縮小して描いている。)、バッテリ16に流れる放電電流(放電電力を計算できる。)と充電電流(充電電力を計算できる)の変化、係数KのK=0から1までの変化、及び係数Kの増加の割合ΔK/Δt(Δtは、所定時間)を示す説明図である。
図10を参照して、時点t32から時点t37までの係数Kの増加の割合ΔK/Δtについて説明すると、回生等によるバッテリ16の充電中には充電電力に応じて係数Kを急速に増加する。アイドルストップ中及び放電中並びにバッテリ16のアシストがなく、燃料電池14からの発電電流のみでモータ18が駆動されている定常状態では、は下限(ΔK/Δt=0.01/Δt)ベースで増加させる。
次に、ステップS7において、制御部100は、イグニッションスイッチ60がオフとされたことを検出したとき、ステップS8において、冬季判定結果(冬季判定フラグFw)及び表示制御結果をメモリにバックアップする。
次いで、ステップS9のソーク中において、ステップS10では、制御部100は、起動停止後からのソーク時間が所定時間Tth(ここでは、5h)を経過したかどうかを判定する。
ステップS10において、所定時間Tthが経過した時点で、冬季判定部114は、ステップS11において、ソーク時外気温追従性最良好温度特性を呈する温度センサであるDT系水温センサ203及びエアコン用気温センサ208により検出したDT系水温Tr又はエアコン用気温Tvのいずれかの検出温度Txが0[゜C]より低い温度となっているかどうかを判定する(Tx≦0[℃])。
ステップS11の判定において、0[゜C]以下の温度となっていた場合には、ステップS12で冬季と決定し、冬季決定フラグFwをセットする(Fw←1)。冬季決定フラグFwが既にセットされていた場合には、冬季決定を継続する。
ステップS11の判定において、0[゜C]を上回る温度となっていた場合には、ステップS13において冬季決定を解除すると決定し、冬季判定フラグFwをリセットする(Fw←0)。すなわち、冬季判定禁止・解除部116は、冬季決定を解除し、冬季判定部114は、冬季制御解除指令を各部に送出する。
次に、制御部100は、ステップS14において、判定結果をメモリにバックアップする。
ステップS12において、一度、冬季と決定された場合、次にイグニッションスイッチ60をオンに切り替えた時点(ステップS1:YES)の起動時で、ステップS2の冬季判定フラグFwの確認は必ず成立するので、結果、ステップS6において、燃料電池14の運転中にSOC及び要求出力が冬季用制御に切り替えられて運転され、バッテリ16に必要な充電量を充電することができる。また、ステップS61では冬季用表示制御が実行される。なお、ステップS1:YESの後の最初の判定で、ステップS2:YES(Fw=1)となっていた場合には、ステップS61の表示制御において、係数Kを瞬時にK=1からK=10に切り替えても、ステップS10における所定時間経過後の起動であるので、SOCメータのセグメント数に万一若干の変動があっても、それ程、違和感がない。
以上説明したように上述した実施の形態に係る電動車両は、バッテリ16からの電力によりモータ18を駆動する燃料電池車両12であって、バッテリ16使用可能範囲に基づいてバッテリ16の表示用残容量を所定周期毎に算出する残容量算出部152(表示用残容量算出部としても機能する。)と、前記所定周期毎に算出される前記表示用残容量をSOCメータでセグメント表示する表示部158と、当該燃料電池車両12の運転状況に基づいてバッテリ16の使用可能範囲における上限又は下限を変更する使用可能範囲変更部154と、使用可能範囲変更部154により上限又は下限が変更された場合に、表示部158にSOCメータとして表示されている残容量が、変更後の使用可能範囲に基づいて算出された表示用残容量に前記所定周期の複数周期の変更期間(図9、図10では、時点t32〜t37、図12Bでは、時点t24〜t25の間)で徐々に近づくように表示部158に表示させる表示制御部156と、を備える。
なお、好ましくは、バッテリ16の充電時又は放電時は、充放電をしていない状態に比べて、変更後の使用可能範囲に対応する残容量に近づけるように表示する変更期間を修正する。
上述のように、バッテリ16の使用可能範囲に基づいて表示用残容量を所定周期毎に算出するとともに、使用可能範囲の上限又は下限が変更された場合に、前記所定周期の複数周期の間、徐々に滑らかに、あるいは段階的に、急変させないで、変更後の使用可能範囲に対応する表示残容量に近づけるように表示を変更するので、表示された残容量が十分にあるのにバッテリ16によるアシストがなされない、表示された残容量が少なく見えるのに回生しない、あるいは走行中に残容量表示がリアルタイムに変化してしまう等の不必要な違和感を運転者に与えることを極力少なくすることができる。
すなわち、この実施形態では、残容量表示の変更後であっても、運転者を含む搭乗者が実際に使用可能な残容量と表示部158にSOCメータとして表示された残容量との間での乖離が生じないようにセグメント数(表示残容量)を決めているので、搭乗者に不必要な違和感を与えない。なお、セグメント数による階段的な残容量表示ではなく、バーグラフ等の連続的な残容量表示であっても同様に制御することで搭乗者に違和感を与えることを極力少なくすることができる。
なお、バッテリ16の充電時又は放電時は、充放電をしていない状態に比べて、変更後の使用可能範囲に対応する残容量に近づけるように表示する変更期間を修正するようにすることで、運転者に与える違和感を、より一層少なくすることができる。
例えば、図11に示す制御表のように制御を早くしたり(「急」)遅くしたり(「遅」)することができる。
図11の制御表において、組み合わせとしては、縦軸の上段側から下段側に向かって、使用可能範囲のSOCの上限のみを増加させた場合、SOCの上限値のみを減少させた場合、SOCの下限のみを増加させた場合、SOCの下限のみを減少させた場合の4通りを考えることができる。
横軸の最上段の「定常」とは、バッテリ16は充放電をしていなく、燃料電池14のみが発電している状態、あるいはアイドルストップ時をいう。
また、図11の制御表中、「動き」とは、上記各場合としたときの直後に発生する可能性のあるセグメント数の増減状態を示し、下向きの矢印はセグメント数が急激に少なくなり、横向きの矢印はセグメント数が横ばいであり、斜め下向きの矢印はセグメント数が徐々に少なくなり、斜め上向きの矢印はセグメント数が徐々に多くなることを意味している。
さらに、図11の制御表において、放電中における処理Da、Db、Dc、Ddは、それぞれ以下の内容を意味する。処理Daは、「基本的には、定常どおりでよいが、見かけ上他の運転期間よりSOCの減りが早くなるため表示残容量の変更速度を下げて(変更期間を長くして)違和感を無くしても良いし、逆に変化している最中なので変更速度を上げて(変更期間を短くして)早めに変更を終わらせて違和感を無くしても良い。」を意味する。
また、処理Dbは、「変更速度を上げる(変更期間を長くする)場合は固定値が良い。」を意味する。
さらに、処理Dcは、「放電によりセグメントが少なくなってから、変更完了した際にセグメントが増加する可能性がある。そのため変更速度を早めに(変更期間を短く)したほうが良い」を意味する。
さらにまた、処理Ddは、「変更速度の方が速いため(変更期間の方が短いため)、放電しているのにセグメントの数が増加するという事象(使用可能量は確かに増量されているのだが)が起きるため、違和感を無くすために変更速度を遅くする(変更期間を長くする)のが良い。」を意味する。
図11の制御表において、充電中における処理Ca、Cb、Ccは、それぞれ以下の内容を意味する。処理Caは、「充電によりセグメント数が増加してから、変更完了した際にセグメント数が減少する可能性がある。そのため変更速度を速めた方(変更期間を短くした方)が良い。」を意味する。
また、処理Cbは、「変更速度の方が速いため(変更期間の方が短いため)、充電しているのにセグメントの数が減少するという事象(使用可能量は確かに減量されているのだが)が起きるため、違和感を無くすために変更速度を遅くする(変更期間を長くする)のが良い。」を意味する。
さらに、処理Ccは、「基本的には、定常どおりで良いが、見かけ上他の運転期間よりセグメント数の増加が早くなるため変更速度下げて(変更期間を長くして)違和感を無くしても良いし、逆に変化している最中なので変更速度を上げて(変更期間を短くして)早めに変更を終わらせて違和感を無くしても良い。変更速度を上げる(変更期間を短くする)場合は固定値が良い。」を意味する。
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。