JP4804632B2 - 被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥効を長期間に渡って持続することができる被覆粒状肥料に関する。さらに詳しくは、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型の溶出パターンを持ち、かつ、使用前の被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出パターンの変動が小さい、被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料に関する。本発明の被覆粒状肥料は、溶出終了後の被膜が、田畑において自然分解される。
【0002】
【従来の技術】
粒状肥料を樹脂などで被覆してカプセル化することにより、肥料成分を持続的に供給する機能を持った被覆粒状肥料は、農業の省力化、肥料成分の環境負荷低減等に対する効果が大きく、近年その発展が著しい。
すなわち、被覆粒状肥料が、過剰施肥を防止して作物への肥料成分の利用効率を高め、かつ、河川等への肥料成分の流失を低減させ、さらに、施肥回数の低減を図れる等の顕著な効果を発揮し、施肥の省力化及び効率化、また、環境保全に対して著しい成果を挙げているのは周知の事実である。
被覆粒状肥料の最も重要な性能は、被覆粒状肥料中に含まれる肥効成分の溶出特性であり、25℃において肥効成分の80%が溶出する日数(溶出タイプ)と、溶出パターンにより差別化される。肥効成分の溶出パターンは、施用初期から溶出が開始するリニア型溶出パターンと、一定の溶出抑止期間を経た後に、急激な溶出を開始するシグモイド型溶出パターンに大別される。
【0003】
シグモイド型溶出パターンを示すシグモイド溶出型被覆粒状肥料については、近年、その研究が盛んに行われている。その背景としては、施肥法の省力化が進んでいることが挙げられ、その究極的な施肥法として、例えば、水稲に代表される育苗時全量施肥法が近年、急速に普及しつつある。これは、水稲が一生の内に必要とする全肥料成分を播種と同時に育苗箱に全量投入するものであり、その後は本田に移植しても一切追肥などを行わない。水稲は、育苗期にはほとんど養分を要求せず、その後、本田に移植されてから急激に養分を吸収するという養分吸収パターンを持つ。通常のリニア溶出型被覆粒状肥料では、初期から苗に不要な多量の肥料成分の放出があり、水稲の一生分の成分を全量投入した場合には、苗は枯死するので全く対応ができない。また、シグモイド溶出型被覆粒状肥料であっても、溶出抑止期間中の溶出量(初期溶出量)が多いものは、苗が徒長あるいは枯死する等の生育障害が発生する。また、シグモイド溶出型被覆粒状肥料であっても、溶出抑止期間後の溶出が充分でないものは、本田に移植された後の水稲の養分供給を満たすことができず、穂数の確保が困難となり、収量の低下をもたらす。この施肥法を成功させるには、極めて初期溶出量の少ない溶出抑止期間を持ち、かつ、溶出抑止期間後に充分な溶出を示す高機能なシグモイド溶出型被覆粒状肥料が必須となる。育苗時全量施肥法は、水稲と同様の概念で、キャベツ、レタス等の野菜においても、セル育苗という育苗法で、近年、盛んに研究されている。
【0004】
シグモイド溶出型被覆粒状肥料の溶出パターンとしては、上述したとおり、溶出抑止期間、溶出抑止期間中の溶出量(初期溶出量)が極めて重要なファクターとなる。前述の育苗時全量施肥法では、初期溶出量を極めて厳しく制御したものでなければ、苗が枯死する事態を招く。また、溶出タイプについては、作物の初期生育を確保するため、溶出抑止期間後に充分な単位期間あたりの成分溶出があること、すなわち、溶出タイプが溶出抑止期間に対して、必要以上に長くならないことが望まれる。
【0005】
例えば、水稲の育苗時全量施肥法では、初期溶出率が25℃水中溶出において、25日間3.0%以下、かつ、溶出タイプが60〜100日のものが望まれており、キャベツのセル育苗では、初期溶出率が25℃水中溶出において20日間1.0%以下、かつ、溶出タイプが45日のものが望まれている。
また、近年、被覆粒状肥料のもう一つの機能性として、被膜の分解性が盛んに研究されている。溶出を制御する被膜は、溶出終了後は必要なく、できるだけ速やかに田畑で自然に分解することが好ましい。実際、水田に使用された被覆粒状肥料の殻が川に流れ込むといった現象も各地で散見されており、優れた溶出制御性と被膜の分解性を併せ持った被覆粒状肥料の早期開発が望まれている。
【0006】
これまで述べてきたように、被覆粒状肥料の開発としては、シグモイド溶出型被覆粒状肥料(A)及び被膜分解性の被覆粒状肥料(B)が2大テーマである。
このうち、(A)のシグモイド溶出型被覆粒状肥料としては、例えば、特公平5−29634号公報に記載の特定被膜構成の多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平4−202078号公報に記載のアルカリ物質を添加した第1層被膜とアルカリ可溶性物質を含む第2層被膜からなる多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平2−275792号公報、特開平4−202079号公報等に記載の親水性物質/水膨潤性物質含有被膜と疎水性物質含有被膜からなる多層被覆の被覆粒状肥料、特開平9−30883号公報に記載のワックスからなる第1層被膜とポリオレフィンからなる第2層被膜からなる多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平9−132493号公報に記載の特定構造のポリアルキレングリコールを被膜に含む被覆粒状肥料、特開平10−17389号公報に等に記載の糖重合体等を被膜に含む被覆粒状肥料、特開平10−203886号公報等に記載のポリオレフィンとエチレン−α−オレフィンコポリマーを含む被膜の被覆粒状肥料等が挙げられる。
【0007】
また、(B)の被膜分解性の被覆粒状肥料としては、例えば、米国特許3,295,950号明細書に記載の硫黄被覆とワックス類被覆による多層被覆の被覆粒状肥料、米国特許3,372,019号明細書、カナダ特許758、968号明細書等に記載のワックスとエチレン酢酸−ビニル共重合体の溶融混合物による被覆粒状肥料、特公平7−91143号公報、特公平2−23516号公報、特開平8−59382号公報等に記載の光分解性被膜の被覆粒状肥料、特公平2−23517号公報、特開平3−146492号公報、特開平3−146492号公報、特開平7−315976号公報、特開平7−33576号公報、特開平7−33577号公報等に記載の生分解性樹脂を組み合わせた被膜による被覆粒状肥料、さらに、本出願人による特開平10−231190号公報等に記載の特定の重量平均分子量を有するポリオレフィン及び/または石油ワックス化合物を組み合わせた被膜による粒状被覆肥料が挙げられる。
【0008】
しかしながら、これらの(A)のシグモイド溶出型であり、かつ、(B)の被膜分解性の被覆粒状肥料である被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料に関しては、未だに提供されていないのが現実である。
例えば、特開平6−144981号公報に記載の酸化性被膜のシグモイド溶出型被覆粒状肥料は、製造直後から酸化性物質による酸化分解が進んでしまうものであり、長期保管後には溶出開始時期が早まって、保管前の溶出特性と保管後の溶出特性が著しく異なる恐れがあり、充分なものとはいえなかった。
【0009】
また、本発明者らは、既に特開平11−71192号公報において、特定分子量のポリオレフィン及び/または石油ワックスと特定のエチレン−α―オレフィン共重合体を含む被膜で被覆することにより、被膜分解性の被覆粒状肥料の発明を成し遂げたが、該発明は、被膜分解性の被覆粒状肥料に関する発明であり、シグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。
さらに、本発明者らは、特開2000−239090号公報において、特定分子量のポリオレフィン及び/または石油ワックスと、特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーと糖重合体を主成分とする粉体を含む被膜からなる被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料の発明を成し遂げたが、溶出抑止期間中の初期溶出量は、前述の育苗時全量施肥法に使用できるレベルまで低下しておらず、こちらも被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料として十分に満足のいくものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上に述べたとおり、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型の溶出パターンを持ち、かつ、使用前の被覆強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点について鋭意検討した結果、特定の重量平均分子量を有する低分子量域ポリエチレン及び/または石油ワックス、特定のエチレン−α−オレフィンエラストマー、特定のα−オレフィン重合体、及び糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体を、各々特定量組み合わせた被膜の被覆粒状肥料が、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0012】
本発明によれば、高温状態で保存された場合にも、溶出パターンの変化が少なく長期保管が可能であり、かつ、施用時に極めて優れた初期溶出抑制能を示し、さらに、被膜強度に優れながらも、使用後の被膜が溶出終了後に田畑で分解される実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料が得られる。
すなわち、[AA]下記に示す式(1)〜(3)を満たす下記A、B及びCで構成される樹脂成分と、糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体を含む被膜で被覆されていることを特徴とする被覆粒状肥料であり、
0.2≦a/(a+b+c)≦0.6…式(1)
0.1≦b/a≦2.0 …式(2)
0.1≦c/a≦2.0 …式(3)
A:重量平均分子量が300〜10,000の低分子量域ポリエチレン(その重量%をaとする。)
B:密度が0.830〜0.910g/cm3、かつ、メルトインデックスが0.1〜50g/10分の、エチレンと炭素数3〜10の一または複数のα−オレフィンとをランダム共重合させて得られる、エチレン−α−オレフィン共重合体(その重量%をbとする。)
C:重量平均分子量が20,000以上のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも一種の、α−オレフィン単独重合体および/またはα−オレフィン−ビニルエステル共重合体(その重量%をcとする。)
さらに好ましくは、[BB]被覆中に糖重合体もしくはその誘導体を1〜20重量%含むことを特徴とする[AA]の被覆粒状肥料であり、特に好ましくは、[CC]被膜中に、有機金属錯体を0.0002〜2重量%含むことを特徴とする[AA]または[BB]の被覆粒状肥料である。また、[DD]被膜中に球状および/または板状の無機充填剤を含むことも好ましく、[EE]被膜中に前記無機充填剤を0.1〜60重量%含むことがより好ましい。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)低分子量域ポリエチレン、石油ワックス
本発明で使用する低分子量域ポリエチレンとは、(a)エチレンを単独重合させて得られる重合法低分子量ポリエチレン、(b)重量平均分子量が10,000を越える高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンを熱分解させて得られる分解法低分子量ポリエチレン、(c)同様に、重量平均分子量が10,000を越える高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンを酸化剤、あるいは高温の有酸素状態で酸化分解させて得られる分解法低分子量ポリエチレン酸化物、(d)または上記の熱分解あるいは酸化分解時に、無水マレイン酸等の不飽和化合物を添加して、不飽和化合物のグラフト反応により得られる分解法低分子量ポリエチレン変性物、(e)スラリー法による高密度ポリエチレン、あるいは直鎖法低密度ポリエチレン等のポリエチレンの製造プロセスにおける溶媒精製工程等で副生した低分子量ポリエチレン、及び、この副生した低分子量ポリエチレンをさらに溶媒抽出等で精製して得られる副生法低分子量ポリエチレン、及び(f)これらの混合物である。
【0014】
これらの低分子量ポリエチレンのゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)は、300〜10,000である(ポリマーラボラトリー社製高温GPC装置 型式PL−GPC 210型)。重量平均分子量(Mw)が300より小さい場合は、被膜の土中での生分解速度が早く、溶出抑止期間中に被膜の分解が発生しやすく、また、被膜強度も低下して、溶出制御が困難となる。また、Mwが10,000より大きい場合は、溶出終了後の被膜の分解性が不充分となる。
生分解速度と被膜の力学強度のバランスから、より好ましい重量平均分子量(Mw)は、630〜5,100であり、最も好ましいのは630〜3,000である。
【0015】
本発明においては、石油ワックスを使用することができる。石油ワックスのゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)は、一般に1,000以下である。また、石油ワックスの融点は、50〜120℃が好ましい。融点が50℃より小さいと被覆時の装置への付着が問題となり、また、120℃より大きいものは工業的に生産し難く、入手が困難である。
これらの低分子量ポリエチレン及び/または石油ワックスは、各々単独で使用てもよいし、両者の2種以上を混合して使用してもよい。しかしながら、微生物による生分解速度が適切であり、さらに、被膜の力学的強度がより優れている点から低分子量ポリエチレンが好ましい。
【0016】
(2)エチレン−α−オレフィンエラストマー
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレンとα−オレフィンをランダム共重合させて得られるものであり、かつ、密度が0.830〜0.910g/cm3、メルトインデックス(MI)が0.1〜50g/10分の高分子量ポリマーである。
エチレンと共重合するα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のα−オレフィン、及びこれらのα−オレフィンを複数用いたものである。また、被膜強度の強さ、及びエラストマーの入手のしやすさから、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜8のα−オレフィンを用いたエチレン−α−オレフィン共重合体がさらに好ましい。
【0017】
また、エチレン−α−オレフィン中に含まれるα−オレフィンは、下記に示す密度の制限内となる含有率である1〜49モル%、好ましくは2〜49モル%である。
本発明に用いるエチレンーα―オレフィンエラストマーの密度は、0.830〜0.910g/cm3 である。密度が0.830g/cm3 未満では、融点が低く、被膜形成時に被膜欠陥が発生したり、粒同士が融着して塊が発生してしまう問題が発生し、密度が0.910g/cm3 を越えると、被膜強度が低下する。これらのバランスから更に好ましい密度は、0.840〜0.900g/cm3 であり、特に好ましい密度は、0.845〜0.890g/cm3 であり、最も好ましい密度は、0.850〜0.880g/cm3 である。
【0018】
本発明に用いるエチレンーα―オレフィンエラストマーのメルトインデックス(MI)は、0.1〜50g/10分である。0.1g/10分未満では、被膜形成時の成形性が悪いことから、被覆欠陥が生じ、溶出抑止期間中に漏れだしが発生しやすく、また、50g/10分を越えると、被膜強度が低下する。これらのバランスから、さらに好ましいMIの範囲は、0.4〜30g/10分である。
本発明に用いるエチレンーα―オレフィンエラストマーの重量平均分子量(Mw)は、25,000〜160,000である。25,000未満では、被膜強度が低下し、160,000を越えると被膜形成時の成形性が悪いことから、被覆欠陥が生じ、溶出抑止期間中に漏れだしが発生しやすい。これらのバランスから、さらに好ましいMwの範囲は、30,000〜150,000である。
【0019】
また、上記のエチレンーα―オレフィンエラストマーは、分子量分布が狭いほど被膜強度に優れ、例えば、分子量分布の尺度である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1〜10のものを用いると好適である。より好ましくは、Mw/Mnが1〜6であり、さらに好ましくはMw/Mnが1〜5であり、特に好ましくはMw/Mnが1〜4であり、最も好ましくはMw/Mnが1〜3である。Mw/Mnが小さいほど被膜強度を高くできる。
【0020】
また、本発明に用いるエチレンーα―オレフィンエラストマーの引張破断伸び(試験法:ASTM D−1238)は、700〜1,250%であり、さらに好ましくは750〜1100%であり、特に好ましくは800〜950%である。
また、本発明に用いるエチレンーα―オレフィンエラストマーの表面硬度(試験法:ASTM D−2240)は、60〜90ショアAであり、さらに好ましくは70〜80ショアAである。
【0021】
(3)α−オレフィン重合体
本発明におけるα−オレフィン重合体とは、α−オレフィンの単独重合体及びα−オレフィン−ビニルエステル共重合体である。
α−オレフィンの単独重合体としては、例えば、高密度ないしは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテンなどのα−オレフィン単独重合体の内、重量平均分子量が20,000以上のものである。α−オレフィン重合体の分子量はGPCで測定され、ポリエチレンについては市販の標準サンプルで校正された値を、その他の重合体についてはポリスチレンで校正された値とする。
【0022】
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンを好ましい例として挙げることができるが、溶出コントロール性や被膜強度の面から最も好ましくはポリエチレンである。
また、溶出を制御する目的で、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなα−オレフィン−ビニルエステル共重合体を用いることができる。
上記のα−オレフィン単独重合体とα−オレフィン−ビニルエステル共重合体は、同時に使用してもよい。
上記α−オレフィン重合体はその強度上、分子量は20,000以上であることが必要であり、さらに好ましくは30,000を越える重量平均分子量を有することが好ましい。
【0023】
(4)被膜中の樹脂成分の構成割合
被膜中の樹脂成分の構成割合は、下記の式で表される。ここでaとは、重量平均分子量が300〜10,000の低分子量域ポリエチレン及び/または石油ワックスの重量%であり、bとは、密度が0.830〜0.910g/cm3 、かつ、メルトインデックスが0.1〜50g/10分のエチレン−α−オレフィンエラストマーの重量%であり、cとは、重量平均分子量が20,000以上のα−オレフィン重合体の重量%である。
0.2≦a/(a+b+c)≦0.6…式(1)
0.1≦b/a≦2.0 …式(2)
0.1≦c/a≦2.0 …式(3)
【0024】
式(1)で示されるように、全樹脂成分を100重量%とした場合に、低分子量域ポリオレフィン及び/または石油ワックスの配合量は、20〜60重量%であり、好ましくは25〜60重量%であり、特に好ましくは30〜55重量%である。
また、式(2)及び(3)で示されるように、低分子量域ポリエチレン及び/または石油ワックスに対するエチレン−α−オレフィンエラストマー及びα−オレフィン重合体の配合比は、低分子量域ポリオレフィン及び/または石油ワックス配合量100重量部に対して、エチレン−α−オレフィンエラストマー10〜200重量部及びα−オレフィン重合体10〜200重量部となることが好ましく、エチレン−α−オレフィンエラストマー20〜160重量部及びα−オレフィン重合体20〜160量部となるのがさらに好ましく、エチレン−α−オレフィンエラストマー30〜120重量部及びα−オレフィン重合体30〜120重量部となるのが最も好ましい。
【0025】
(5)糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体
本発明に用いる糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体は、グルコース、フラクトース等の6炭糖及びその誘導体、あるいはキシロース、アラビノース、リボース等の5炭糖及びその誘導体の1種以上よりなる重合体の粉体である。
例えば、澱粉、セルロース等の多糖類等が挙げられ、こららの中でも、特に澱粉が好ましい。
これらの糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体は、単独でも、あるいは複数を組み合わせて使用してもよく、例えば、水膨潤性の高い糖重合体と水膨潤性の低い糖重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
澱粉は、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、米等の穀物、あるいは根菜類由来の粉体が用いられる。これらの澱粉を加工した加工澱粉、例えば、アルキルエーテル澱粉、α化澱粉、α化澱粉変成物、脂肪酸エステル澱粉、酢酸澱粉あるいは燐酸澱粉等のエステル化澱粉及びその誘導体、カルボキシメチル澱粉あるいはアリルエーテル澱粉等のエーテル型澱粉誘導体、酸化澱粉、及びこれらの混合物を用いることができる。これらの澱粉粉体は、例えば、表面シリコーン処理等により、撥水性、取り扱い性を改良して用いてもかまわない。
【0027】
セルロースは、粗セルロースを酸またはアルカリにより加水分解処理して微粉化したものや、微粉のセルロース誘導体を使用できる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース金属塩等のセルロース誘導体金属塩等を用いることができる。
本発明の糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体は、レーザー回析式粒度分布測定機により測定された値で、粒径の小さい方から積算して50%にあたる粒子径である50%粒子径が5〜40μmの範囲のものが好ましい。さらに好ましくは50%粒子径が6〜30μmであり、特に好ましくは8〜25μmである。これらの平均粒子径のものを使用すれば、より好適なシグモイド型の溶出パターンを得ることができる。
【0028】
また、本発明の糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体は、より狭い範囲の粒度分布を持つものが好ましい。例えば、レーザー回析式粒度分布測定機により測定された粒径の小さい方から10%積算の粒子径である10%粒子径(X10)、50%粒子径(X50)、90%積算の粒子径である90%粒子径(X90)の関係が、0<(X90−X10)/X50≦1.7のものを好適に用いることができる。より好適なシグモイド型の溶出パターンを得るためには、好ましくは(X90−X10)/X50が1.50以下であり、さらに好ましくは(X90−X10)/X50が1.25以下である。
【0029】
本発明では、これらの糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体を使用する際に、乾燥して用いる。特に、高温の有機溶媒に分散させて使用する際には、予め、湿状態基準で3%以下の含水率とすることが好ましい。
また、これらの糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体の被膜中の含有率は、1〜20重量%である。1重量%未満では、初期の溶出抑止期間後の本溶出速度が不充分となって、好適なシグモイド型の溶出パターンが得られず、また、20重量%を越えると、初期の溶出抑制が不充分となり、さらに、被膜強度も低下する。溶出特性と被膜強度のバランスから、より好ましい糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体の被膜中の含有率は1〜15重量%である。
【0030】
(6)無機充填材
本発明に使用できる無機充填材は、球状及び/または板状の無機充填材である。例えば、タルク、クレー、珪藻土、カオリン、ベントナイト、マイカ、ガラス、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらの内、初期溶出の抑制効果が優れている点から、親水性の低いタルク、クレーが好ましい。
これらの無機充填材のレーザー回析式粒度分布測定機により測定された50%粒子径は、0.1〜40μmが好ましく、さらに好ましくは0.2〜30μmである。粒径の小さな無機充填材が好ましいが、0.1μm未満では逆に膜形成時に凝集して実質的に大粒径となりやすく、また、40μmを越えると被膜の欠陥が多く発生し、溶出の制御性の低下を招き好ましくない。
【0031】
これらの無機充填材の被膜中の含有率は、60重量%以下である。60重量%を越えると初期の溶出抑制が不充分となり、さらに、被膜強度が低下する。
無機充填材を使用すると、被膜形成時に被膜欠陥が減少し、以て初期溶出をより厳密に抑制でき、また、使用後の被膜分解時には、膜の崩壊を促進することができる。初期溶出抑制の厳密さ、被膜分解性、被膜強度のバランスから、より好ましくは無機充填材の被膜中の含有率は、0.1〜60重量%であり、さらに好ましくは2〜55重量%である。
【0032】
(7)有機金属錯体
本発明において、被膜に有機金属錯体を含有させることは、さらに好ましい。
本発明における有機金属錯体とは、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、銀、パラジウム、モリブデン、クロム、タングステン、セリウム等の金属元素とアセチルアセトン等のβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、ジアルキルジチオカーバメイト、ジアルキルチオホスフェート、アルキルサンテート、メルカプトベンゾチアゾール等の錯形成材が、酸素原子あるいは硫黄原子を介して錯形成したものであり、これらの有機金属錯体は単独でもよいし、2種以上組み合わせてもかまわない。例えば、アセチルアセトン第二鉄、鉄アセトニルアセテート、鉄ジエチルジチオカーバメート、鉄ジブチルジチオカーバメート、鉄ジイソノニルジチオカーバメート、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ニッケルジメチルジチオカーバメート、ニッケルジイソノニルジチオカーバメート、マンガンジエチルジチオカーバメート、亜鉛ジブチルジチオカーバメート、亜鉛イソプロピルジチオホスフェート等を用いることができる。
【0033】
さらに好ましくは有機鉄錯体、有機ニッケル錯体、及びこれらの混合物である。
有機金属錯体の効果を発揮させるには、被覆粒状肥料の被膜中の含有率は、0.0002〜2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜1重量%であり、特に好ましくは0.005〜0.5重量%である。有機金属錯体を2種以上用いる場合の有機金属錯体の被膜中の合計の含有率も同様に、0.0002〜2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜1重量%であり、特に好ましくは0.005〜0.5重量%である。
【0034】
(8)粒状肥料
本発明で用いる粒状肥料は特に制限はなく、公知の粒状化学肥料を用いることができる。具体例を挙げるならば、尿素、ホルムアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素等のアルデヒド縮合尿素類、硫酸グアニル尿素類、石灰窒素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムなどのアンモニウム化合物、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム塩、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム塩、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩酸第一鉄、塩酸第二鉄の鉄塩、及びこれらの複塩、ないしはこれらを二つ以上複合したものが挙げられる。
【0035】
これらの粒状肥料は、粒状としての形態と力学的強度を維持する目的で、従来公知の結着剤が含まれている場合がある。結着剤の例としては、糖蜜、リグニン、及びそれらの変成物が挙げられる。粒状肥料は表面が平滑で球形に近い方が好ましい。具体的には、粒状肥料粒子を平面画像として捉えた時の面積をS、外周長さをAとする時、A2 /4πSが1.00〜1.15の範囲にある粒子が全体の60%以上であることが好ましい。また、粒状肥料の押しつぶし強度は、0.4kg以上あることが好ましく、さらに好ましくは1.0kg以上である。
粒状肥料の粒子径は、好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは1〜6mmである。また、篩分処理等によって、原料肥料粒子の粒度分布を狭くして、粒子毎のバラツキを小さくする方法を用いるとよい。
【0036】
(9)その他の被膜成分
本発明の被膜には、必要に応じて、(I)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合によるポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、ポリエチレエングリコール−オクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール−アルキルエーテル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール−アルキルエステル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエステル等のエステル型ノニオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、及びこれらの混合物等によって溶出速度を調整したり、(II)有機顔料、カーボンブラック等の着色剤の添加によって被覆粒状肥料の区別を容易にしたり、あるいは、(III) ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ジオール−ジカルボン酸型の脂肪族ポリエステルの部分架橋物等の生分解樹脂を添加することによって、土壌中での被膜分解速度を調整することもできる。
【0037】
また、被覆粒状肥料の被膜は、粒状肥料の表面に施されたものであり、粒状肥料100重量部あたり1〜50重量部の割合で被覆される。被膜が1重量%未満では、粒状肥料の全粒の周囲全体に均一に被膜を形成させることが困難であって、溶出制御ができない。また、被膜が50重量部を越えると、被覆粒状肥料の含有肥料成分量が低下して好ましくない。好ましくは粒状肥料100重量部あたり被膜が2〜35重量部であり、特に好ましくは3〜20重量部である。
【0038】
(10)被膜形成の方法
本発明の被膜の形成方法に特に制限はないが、噴流塔で流動する肥料に、被覆材料を必要に応じて溶媒と供に供給して、熱風で乾燥させる噴流方式、転動ドラム内で転動する肥料に被覆材料を必要に応じて溶媒と供に供給して、熱風で乾燥させる回転パン方式、及びこれらを組み合わせたもの、例えば、噴流パン方式等を用いることができる。被覆材料を溶媒と供に供給する場合のスプレーノズルに関しても特に制限はなく、1液型のノズル、ガスアシストによる2液型のノズル等を使用することができる。
【0039】
(11)本発明における好適なシグモイド溶出型パターンの定義
本発明においては、溶出抑制の厳密さについて、5日目溶出率を算出し、この値が1%未満であるものを溶出抑制の厳密さが良好なレベルとし、かつ、溶出抑止期間が20日以上であり、かつ、溶出抑止期間を溶出タイプで除した値が0.40以上であるものを、育苗時全量施肥法に好適なシグモイド型の溶出パターンとした。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明の実施の形態、及び効果を説明する。
(I)実施例で使用した材料
1)低分子量域ポリエチレン(LPEと略記)
副生法低分子量ポリエチレン(商品名 ポリレッツ90SZ チュセイワックスポリマー(株)製)を使用した。
ポリマーラボラトリー社製高温GPC装置(PL−GPC 210型)に、同社製カラム(PL gel MIXED−B、2本)を装着し、オーブン温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶離液として測定した。重量平均分子量は910であった。なお、標品は同社の標準ポリエチレンを使用した。
【0041】
2)エチレン−1−オクテン−エラストマー(EOEと略記)
MIが0.5g/10分、密度が0.868g/cm3、Mwが130000、Mw/Mnが2.3、引張破断伸びが880%、表面硬度が75ショアAのエチレン−1−オクテン−エラストマー(商品名 エンゲージ8150 デュポンダウエラストマーズ(株)製)を使用した。
【0042】
3−1)α−オレフィン重合体(POIと略記)
低密度ポリエチレン(商品名 サンテックM2270 旭化成(株)製)を使用した。上記のLPEと同様の方法で測定したサンテックM2270の重量平均分子量は、74,000であった。
3−2)α−オレフィン重合体(POIIと略記)
エチレン酢酸ビニル共重合体(商品名 エバフレックス360 三井ポリデュポンケミカル(株)製)を使用した。上記のLPEと同様の方法で測定したエバフレックス360の重量平均分子量は、205,000であった。
【0043】
4)タルク:無機充填材
FM77(富士タルク(株)製)を使用した。レーザー回析式粒度分布測定機により測定された50%粒子径は、5μであった。
5)澱粉:糖重合体
LMスターチ(コーンスターチ:王子コーンスターチ(株)製)を使用した。
粒度分布をレーザー回析式粒度分布測定機(LA−700 堀場製作所(株)製)で測定した。10%粒子径、50%粒子径、90%粒子径は、それぞれ10.1μm、19.1μm、34.9μmであった。
赤外線水分計(FD−240 KETTO(株)製 加熱温度100℃)で測定した含水率は、湿状態基準で0.8%であった。
【0044】
6)界面活性剤(SAと略記)
ソフタノール70(ポリエチレングリコール−第二級アルコールエステル:日本触媒(株)製)を使用した。
7)有機金属錯体−鉄錯体(錯体Aと略記)
鉄(III) アセチルアセトナート(試薬)を使用した。
8)粒状肥料
粒状尿素(46−0−0:全窒素として46重量%を含有)を3.03mm〜3.88mmの篩いで篩分して使用した。
【0045】
(II)溶出タイプ及び溶出抑止期間の測定
下記に示すとおり、25℃水中での溶出評価を行った。
被覆粒状肥料5gをポリエチレン製の溶出瓶に入れ、200mlの蒸留水を満たして密栓する。この溶出瓶を25℃のインキュベータに保存し、一定時間経過毎に蒸留水に溶けだした全窒素を測定した。被覆粒状肥料の溶出率は、もとの被覆粒状肥料含まれていた全窒素に対する溶出してきた全窒素の百分率で表示する。
上記溶出率を経過日数毎にグラフ等にプロットすると、溶出率が5%に達した日数として溶出抑止期間が、溶出率が80%に達した日数として溶出タイプが得られる。
【0046】
(III) 被膜強度試験(動力散布機試験)
背負い型動力散布機(丸山製作所、MDJ60GTS−26)を使用し、エンジンスロットル4、シャッター開度7の条件で、被覆粒状肥料500gを散布し、噴管先端から吐出される被覆粒状肥料を回収した。
試験前の被覆粒状肥料20gと散布機から回収した被覆粒状肥料20gを各々、蒸留水400mlと共にポリエチレン製の溶出瓶に仕込み、25℃のインキュベーターで保管した。10日後に、各々の溶出瓶をインキュベーターから抜き出し、試料液を採取した後、全窒素の測定を行って各々の被覆粒状肥料の溶出率を算出した。散布機試験後の被覆粒状肥料の溶出率から、試験前の被覆粒状肥料の溶出率を差し引いた値が、1%以下のものを、被膜強度が良好であるとした。
【0047】
(IV)長期保管試験
被覆粒状肥料100gを150μ厚みのポリエチレン袋に入れてヒートシールを行い、さらにもう1回、150μ厚みのポリエチレン袋に入れてヒートシールを行って、被覆粒状肥料を完全に密封した。この作業を2度繰り返し、2つの試料を作成した。
その内、1つは25℃のインキュベーターで3年保管し、3年経過後に袋を開封して上記(I)と同様に、25℃水中での溶出評価を行った。
残りの1つは、45℃のインキュベーターで1年保管し、1年経過後に袋を開封して上記と同様に、25℃水中での溶出評価を行った。
それぞれの保管条件において、保管後の溶出タイプと、保管前の溶出タイプとの比率が、0.95〜1.05であるものを、長期保管性が良好であるとした。
【0048】
(V)分解性試験
静岡県岩本地区から採取した黒ボク土1kgに被覆粒状肥料1000粒を混合し、底のない枠に入れて屋外に放置し、1月あたり1回の頻度で混合操作を行いながら、2年経過後、3年経過後に被覆粒状肥料を取り出した。
試験用の篩いで肥料殻と土を選別し、溶出終了後の形状である球状を50%以上維持している肥料殻を選択し、1000から差し引くことで分解粒を把握し、1000粒に対する分解粒の百分率を分解率とした。本発明では、3年後の分解率が90%以上のものを被膜崩壊型の被覆粒状肥料とした。なお、この分解率が95%以上のものは、土と選別しようとした際に、極めて殻らしき残骸が見つけづらいものであった。
以下、実施例により本発明の効果を示す。なお、実施例、比較例の結果は表1にまとめて記した。
【0049】
【実施例1】
噴流塔型被覆装置を使用して被覆粒状肥料を製造した。
(1)被覆液の調整
57kgのテトラクロロエチレンに、LPE750g、EOE450g、POI300gを秤量して投入し、該溶剤の沸点まで加熱リフラックスさせて、これらの樹脂を溶解させた。さらに、この溶液にタルク1350g、澱粉150gを加え、十分に攪拌して被覆液を調整した。
【0050】
(2)被覆粒状肥料の製造
粒状尿素30kgを噴流塔に投入し、熱風を送風して安定な噴流状態を形成させた。塔内の温度は65℃であった。次に、上記で調整した被覆液を送液ポンプにより、スプレーノズルから18分を要して噴流塔内に供給し、粒状肥料に全量被覆させた。この間、噴流塔内は65±2℃となるよう熱風の温度を調整した。その後、熱風を冷風に切り替え、45℃以下となった時点で噴流塔から製品を抜き出した。
製造された被覆粒状肥料の重量は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
【0051】
(3)被覆粒状肥料の評価
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0052】
【実施例2】
EOEを300g、POIを450gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0053】
【実施例3】
EOEを300g、POIを300g、POIIを150gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0054】
【実施例4】
LPEを600g、タルクを1500gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0055】
【実施例5】
LPEを600g、EOEを300g、POIを450g、タルクを1500gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0056】
【実施例6】
LPEを600g、EOEを300g、POIを450g、錯体Aを1.8g、タルクを1498.2gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0057】
【実施例7】
LPEを450g、EOEを300g、タルクを1800gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、かつ、被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残さの自然分解性に優れ、さらに、長期保管による溶出の変動が小さい実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であった。
【0058】
【比較例1】
LPEを1200g、EOEを600g、POIを0g、タルクを1200g、澱粉を0gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0059】
【比較例2】
LPEを1200g、EOEを0g、POIを600g、タルクを1200g、澱粉を0gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び常温かつ高温での長期保管性が充分なレベルではなかった。
【0060】
【比較例3】
LPEを1200g、EOEを600g、POIを0g、タルクを1050gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0061】
【比較例4】
EOEを750g、POIを0gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0062】
【比較例5】
EOEを0g、POIを750gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0063】
【比較例6】
EOEを750g、POIを0g、澱粉を0g、タルクを1470g、SA30gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0064】
【比較例7】
LPEを600g、EOEを600g、POIを0g、タルクを1650gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0065】
【比較例8】
LPEを450g、POIを0g、タルクを1950gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、被膜分解性が良好であったが、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。また、被膜強度及び高温での長期保管性も充分なレベルではなかった。
【0066】
【比較例9】
LPEを240g、EOEを300g、POIを960gとした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は33kgであり、供給された固形分のほぼ全量が被覆されていたことがわかった。
得られた被覆粒状肥料の各物性を評価した結果を表1に示す。得られた被覆粒状肥料は、厳密な溶出抑止期間を持ったシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、実用強度及び高温での長期保管性も充分なレベルであったが、被膜分解性が不充分であり、被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料ではなかった。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、育苗時全量施肥法に使用可能なシグモイド型溶出パターン(5日目溶出率が1%未満及び溶出抑止期間が20日以上で、かつ、溶出抑止期間を溶出タイプで除した値が0.40以上)を示しながらも、溶出終了後の被膜残さが田畑で自然分解される高機能な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料が得られる。また、本肥料は、常温は勿論、特に高温で長期保存された場合にも溶出のパターンの変動が少なく、かつ、使用前の被膜強度にも優れた実用的な被膜分解性のシグモイド溶出型被覆粒状肥料である。
Claims (5)
- 下記に示す式(1)〜(3)を満たす下記A、B及びCで構成される樹脂成分と、糖重合体もしくはその誘導体を主成分とする粉体を含む被膜で被覆されていることを特徴とする被覆粒状肥料。
0.2≦a/(a+b+c)≦0.6…式(1)
0.1≦b/a≦2.0 …式(2)
0.1≦c/a≦2.0 …式(3)
A:重量平均分子量が300〜10,000の低分子量域ポリエチレン(その重量%をaとする。)
B:密度が0.830〜0.910g/cm3、かつ、メルトインデックスが0.1〜50g/10分の、エチレンと炭素数3〜10の一または複数のα−オレフィンとをランダム共重合させて得られる、エチレン−α−オレフィン共重合体(その重量%をbとする。)
C:重量平均分子量が20,000以上のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも一種の、α−オレフィン単独重合体および/またはα−オレフィン−ビニルエステル共重合体(その重量%をcとする。) - 被膜が、糖重合体もしくはその誘導体を1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆粒状肥料。
- 被膜が、有機金属錯体を0.0002〜2重量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
- 被膜が、球状および/または板状の無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
- 被膜が、前記無機充填剤を0.1〜60重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の被覆粒状肥料。
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