JP4256549B2 - 被膜分解性の被覆粒状肥料 - Google Patents

被膜分解性の被覆粒状肥料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥効を長期間に亘って持続できる被覆粒状肥料に関する。
更に詳しくは、溶出抑制期間を持ったシグモイド溶出型の溶出パターンを持ち、かつ、使用前の被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残査の自然分解性に優れ、さらに、長期貯蔵による溶出パターンの変動が小さい、被膜分解型の被覆粒状肥料に関する。
本発明の被覆粒状肥料は、使用後に残留する被膜残査が、田畑において自然分解される。
【0002】
【従来の技術】
粒状肥料を樹脂で被覆してカプセル化することにより、肥料成分の持続的な放出を制御できる機能を持った被覆粒状肥料は、農業の省力化、肥料成分の環境負荷低減等の効果が大きく、近年その発展が著しい。
すなわち、被覆粒状肥料が、過剰施肥を防止して作物への肥料成分の利用効率を高め、かつ河川等への肥料成分の流失を低減させ、さらに施肥回数の低減を図れる等の顕著な効果を発揮し、省力化、効率化、環境保全に対して充分な成果を挙げていることは周知の事実である。
【0003】
被覆粒状肥料の性能の中で最も重要な点は、被覆粒状肥料中に含まれる肥効成分の溶出の制御である。一般的には、25℃において肥効成分の80%を溶出するのに必要な日数を「溶出タイプ」として差別化しており、溶出タイプが小さいほど短期肥効、大きいほど長期肥効の被覆粒状肥料となる。被覆粒状肥料は、対象とする作物ごとに最適な溶出タイプ、最適な肥効成分を含有したものを選択し、被覆肥料単独、あるいは化成肥料及び/又は有機肥料と混合して、施肥時に用いる。
【0004】
これらの被覆粒状肥料は、近年、さらにその技術開発が進み、特に、(1)肥料成分の溶出パターンを植物の生育パターンに合わせて、更なる省力化、利用率向上を図るシグモイド溶出型(あるいは時限溶出型)被覆粒状肥料、及び、(2)肥料成分溶出終了後の被覆粒状肥料の被膜残査が、田畑に残留することを防ぐ、分解性被膜の被覆粒状肥料等が重点的に研究されている。
【0005】
このうち、(1)のシグモイド溶出型の被覆肥料の技術としては、例えば、特公平5−29634号公報に記載の特定被膜構成の多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平4−202078号公報に記載のアルカリ物質を添加した第1層被膜とアルカリ可溶性物質を含む第2層被膜からなる多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平6−87684号公報、特開平10−17389号公報等に記載の糖重合体等を被膜に含む被覆粒状肥料、特開平2−275792号公報、特開平4−202079号公報等に記載の親水性物質/水膨潤性物質含有被膜と疎水性物質含有被膜からなる多層被覆の被覆粒状肥料、特開平10−203886号公報等に記載のポリオレフィンとエチレン−α−オレフィンコポリマーを含む被膜の被覆粒状肥料、特開平9−30883号公報に記載のワックスからなる第1層被膜とポリオレフィンからなる第2層被膜からなる多層被覆を用いた被覆粒状肥料、特開平9−132493号公報に記載の特定構造のポリアルキレングリコールを被膜に含む被覆粒状肥料等が挙げられる。
【0006】
これらのシグモイド溶出型の被覆粒状肥料は、従来型の非シグモイド型溶出の被覆粒状肥料に比べて、施肥効率が高く、さらに省力化が可能な高性能な肥料である。
シグモイド溶出型の被覆粒状肥料の施肥設計は、一般的な溶出抑制期間のないリニア型溶出の被覆粒状肥料の場合と同様に、使用する作物種、平均地温によって最適な溶出タイプを選択するが、さらに、本溶出の早期化による枯死、萎縮を防止する意味でも、厳密に初期の溶出抑制期間、抑制期間の溶出漏れ出し量を考慮した施肥設計が行われる。
【0007】
また、(2)の分解性被膜の被覆粒状肥料の技術てしては、例えば、米国特許3,295,950号明細書に記載の硫黄被覆とワックス類被覆による多層被覆の被覆粒状肥料、米国特許3,372,019号明細書、カナダ特許758,968号明細書等に記載のワックスとエチレン−酢酸ビニル共重合体の溶融混合物による被覆粒状肥料、特公平7−91143号公報、特公平2−23516号公報、特開平8−59382号公報等に記載の光分解性被膜の被覆粒状肥料、特公平2−23517号公報、特開平3−146492号公報、特開平7−315976号公報、特開平7−33577号公報、特開平7−33576号公報等に記載の生分解性樹脂を組み合わせた被膜による被覆粒状肥料、さらに、本出願人による特開平10−231190号公報等に記載の特定の重量平均分子量を有するポリオレフィン及び/又は石油ワックス化合物を組み合わせた被膜による被覆粒状肥料等が挙げられる。
【0008】
しかしながら、これらの(1)のシグモイド溶出型であり、かつ、(2)の分解性被膜の被覆粒状肥料であることを同時に満足できる、優れた機能の被覆粒状肥料に関する技術は充分なものではなかった。例えば、特開平6−144981に記載の酸化性被膜のシグモイド溶出型被覆粒状肥料では、製造直後から酸化性物質による酸化分解が進んでしまうものであり、長期貯蔵後の被覆粒状肥料を用いた場合に、溶出を抑制しなければならない初期の溶出抑制時期に予想外の溶出が始まってしまうこともあって、充分なものとは云えなかった。
【0009】
また、本出願人は、既に特願平10−52707号において、特定分子量のポリオレフィン及び/または石油ワックスと、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む被膜の分解性被膜被覆粒状肥料の発明を成し遂げたが、該特願は、上記(2)の分解性被膜の被覆粒状肥料に関する発明であり、上記(1)のシグモイド溶出型、及び、長期保存後の溶出変動の少なさに関することにまで及んでおらず、不充分なものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上に述べたとおり、溶出抑制期間を持ったシグモイド溶出型の溶出パターンを持ち、かつ、使用前の被膜強度に優れながらも、溶出終了後の被膜残査の自然分解性に優れ、さらに、長期貯蔵による溶出パターンの変動が小さい、実用的な環境調和型の被覆粒状肥料を提供することを目的とする。
本発明によれば、長期保存後の被覆粒状肥料を使用する際に、思わぬ被膜分解による初期の溶出抑制期間の溶出漏れ出しが発生せず、かつ、シグモイド型溶出による高い肥効、省力化が得られ、さらに、使用後の被覆粒状肥料の被膜の殻が田畑で分解される、高機能な被覆粒状肥料が得られる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点について種々検討した結果、特定の重量平均分子量を有する低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックスと、特定のエチレン−α−オレフィンエラストマーと、糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体を、各々特定量組み合わせた被膜の被覆粒状肥料が、上記問題点を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、[A](a)重量平均分子量が300〜10,000の低分子量ポリオレフィンおよび/又は石油ワックス(たとえば低分子量ポリエチレンが好ましい。)を10〜95重量%と、(b)密度が0.830〜0.910g/cm3 、かつメルトインデックスが0.1〜50g/10分のエチレン−α−オレフィンエラストマー(たとえばエチレン−オクテン1エラストマーが好ましい。)を89〜4重量%と、(c)糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体を1〜30重量%を含む被膜により被覆されていることを特徴とするシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、さらに好ましくは、[B]被膜中に、無機充填剤を1〜60重量%含むことを特徴とする[A]のシグモイド溶出型被覆粒状肥料であり、特に好ましくは、被膜中に、有機金属錯体を0.0002〜2重量%を含むことを特徴とする[A]または[B]のシグモイド溶出型被覆粒状肥料である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)低分子量ポリオレフィン、石油ワックス
本発明で使用する低分子量ポリオレフィンは、(a)エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンを単独重合、または2種以上を共重合させて得られる重合法低分子量ポリオレフィン、(b)重量平均分子量が10,000を超える高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ブテン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂を、熱分解させて得られる分解法低分子量ポリオレフィン、(c)同様に、重量平均分子量が10,000を超える高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ブテン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂を、酸化剤、あるいは高温の有酸素状態で酸化分解させて得られる分解法低分子量ポリオレフィン酸化物、(d)または、上記の熱分解、あるいは酸化分解時に、無水マレイン酸等の不飽和化合物を添加して、不飽和化合物のグラフト反応により得られる分解法低分子量ポリオレフィン変性物、(e)スラリー法による高密度ポリエチレン、あるいは直鎖法低密度ポリエチレン等のポリオレフィンの製造プロセスにおける溶媒精製工程等で副生した低分子量ポリオレフィン、及び、この副生した低分子量ポリオレフィンを更に溶媒抽出等で精製して得られる副生法低分子量ポリオレフィン、及び(f)これらの混合物である。
【0014】
これらのうち、ポリエチレン構造が主体である重合法低分子量ポリエチレン、重合法低分子量エチレン−α−オレフィン共重合体、分解法低分子量の高密度ポリエチレン、分解法低分子量の低密度ポリエチレン、分解法低分子量のエチレン−α−オレフィン共重合体、副生法低分子量ポリエチレン、及び官能基の豊富な分解法低分子量ポリオレフィン酸化物、分解法低分子量ポリオレフィン変性物が好ましい。
【0015】
これらの低分子量ポリオレフィンの、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)は、300〜10,000である。重量平均分子量(Mw)が300より小さい場合は、被膜の土中での生分解速度が速く、溶出制御期間中に被膜の分解が発生しやすく、又、被膜強度も低下して、溶出制御が困難となる。また、Mwが10,000より大きい場合は、溶出終了後の被膜の分解性が不十分となる。
【0016】
生分解速度と被膜の力学強度のバランスから、より好ましい重量平均分子量(Mw)は630〜10,000であり、さらに好ましいMwは630〜8,000であり、特に好ましいMwは630〜5,100であり、最も好ましいMwは630〜3,000である。
本発明で使用する石油ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロタムなどの石油系ワックスである。この内、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0017】
これらの石油ワックスの、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)は、一般に1,000以下である。
また、石油ワックスの融点は50〜120℃が好ましい。融点が50℃より小さいと被覆時の装置への付着が問題となり、120℃より大きいものは工業的に入手が困難である。
【0018】
これらの低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックスは各々単独で使用しても良いし、両者の2種以上を混合して使用しても良い。しかしながら、微生物分解速度が適切であり、さらに被膜の力学的強度がより優れている点から低分子量ポリオレフィンが好ましい。
また、これらの低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックスの被膜中の含有率は10〜95重量%である。10%未満では被膜の分解性が不充分となり、95%を超えると被膜強度が低下する。
【0019】
被膜分解性と被膜強度のバランスがより好ましい、低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックスの被膜中の含有率は20〜94%であり、更に好ましい含有率は30〜93%である。
(2)エチレン−α−オレフィンエラストマー
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンエラストマーは、エチレンとα−オレフィンをランダム共重合させて得られるものであり、かつ、密度が0.830〜0.910g/cm3、メルトインデックス(MI)が0.1〜50g/10分の高分子量ポリマーである。
【0020】
メルトインデックス(MI)と重量平均分子量(Mw)は相関が高く、一般に、低Mwのエチレン−α−オレフィンエラストマーは、高MIを示す。該エチレン−α−オレフィンエラストマーの使用上限である50g/10分のMIは、GPCによるMwの少なくとも25,000以上に相当し、低分子量ポリオレフィンの使用上限であるMwの10,000に比べて2倍以上となることから、該エチレン−α−オレフィンエラストマーは、前述の低分子量ポリオレフィンに比べて高分子量ポリマーである。
【0021】
エチレンと共重合するα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のα−オレフィン、及びこれらのα−オレフィンを複数用いたものである。また、被膜強度の高さ、及びエラストマーの入手のしやすさから、1−ブテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜8のα−オレフィンを用いたエチレン−α−オレフィン共重合体が、更に好ましい。
【0022】
また、エチレン−α−オレフィン中に含まれるα−オレフィンは、下記に示す密度の制限内となる含有率である1〜49モル%、好ましくは2〜49モル%である。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンエラストマーの密度は、0.830〜0.910g/cm3である。密度が0.830g/cm3未満では融点が低く、被膜形成時に被膜欠陥が発生したり、粒同士が融着して塊が発生してしまう問題が発生し、密度が0.910g/cm3を超えると、被膜強度が低下する。これらのバランスから、更に好ましい密度は、0.840〜0.900g/cm3であり、特に好ましい密度は、0.845〜0.890g/cm3であり、最も好ましい密度は、0.850〜0.875g/cm3である。
【0023】
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンエラストマーのメルトインデックス(MI)は、0.1〜50g/10分である。0.1g/10分未満では、被膜形成時の成形性が悪いことから、被膜欠陥による溶出抑制期間の漏れだしが発生しやすく、また、50g/10分以上では、被膜強度が低下する。これらのバランスから、更に好ましいMIの範囲は、0.5〜30g/10分である。
また、上記のエチレン−α−オレフィンエラストマーは、分子量分布が狭いほど被膜強度に優れ、例えば、分子量分布の尺度である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1〜10のものを用いると好適である。より好ましくはMw/Mnが1〜6であり、更に好ましくはMw/Mnが1〜5であり、特に好ましくはMw/Mnが1〜4であり、最も好ましくはMw/Mnが1〜3である。Mw/Mnが小さいほど被膜強度を高くできる。
【0024】
また、これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーの被膜中の含有率は89〜4重量%である。4重量%未満では被膜強度が不充分となり、89重量%を超えると被膜の分解性が低下する。
被膜分解性と被膜強度のバランスがより好ましい、エチレン−α−オレフィンエラストマーの被膜中の含有率は70〜4重量%であり、さらに好ましくは50〜4重量%であり、特に好ましくは40〜4重量%であり、最も好ましくは30〜5重量%である。
【0025】
これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーと、低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックスの配合比は、低分子量ポリオレフィン及び/又は石油ワックス配合量100重量部に対して、エチレン−α−オレフィンエラストマーが5〜200重量部となることが好ましく、5〜100重量部となるのが更に好ましい。
(3)糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体
本発明に用いる糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体は、グルコース、フラクトース等の6炭糖及びその誘導体、あるいは、キシロース、アラビノース、リボース等の5炭糖及びその誘導体の1種以上よりなる重合体の粉体である。
【0026】
例えば、澱粉、セルロース等の多糖類、キトサン、キトサン誘導体、キチン、キチン誘導体等が挙げられ、こららの中でも、特に澱粉が好ましい。
これらの糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体は、単独でも、あるいは複数を組み合わせて使用しても良く、例えば、水膨潤性の高い糖重合体と水膨潤性の低い糖重合体を組み合わせても良い。
澱粉は、トウモロコシ、タピオカ、小麦、馬鈴薯、米等の穀物、あるいは根菜類由来の粉体が用いられる。これらの澱粉を加工した加工澱粉、例えば、アルキルエーテル澱粉、α化澱粉、α化澱粉変性物、脂肪酸エステル澱粉、酢酸澱粉あるいは燐酸澱粉等のエステル化澱粉及びその誘導体、カルボキシメチル澱粉あるいはアリルエーテル澱粉等のエーテル型澱粉誘導体、酸化澱粉、及びこれらの混合物を用いることができる。こららの澱粉粉体は、例えば、表面シリコーン処理等により、撥水性、取り扱い性を改良して用いても構わない。
【0027】
セルロースは、粗セルロースを酸またはアルカリにより加水分解処理して微粉化したものや、微粉のセルロース誘導体が用いられる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または、カルボキシメチルセルロース金属塩等のセルロース誘導体金属塩等を用いることができる。
本発明の糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機により測定された数値で、50%粒子径が5〜40μmの範囲が好ましい。さらに好ましくは50%粒子径が6〜30μmであり、特に好ましくは50%粒子径が8〜25μmである。こららの平均粒子径のものを用いることにより、より好適なシグモイド溶出パターンを得ることができる。
【0028】
また、本発明の糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体は、より狭い粒度分布を持つものが好ましい。例えば、レーザー回折式粒度分布測定機により測定された小さい方から10%積算の粒子径(R10)、50%粒子径(R50)、90%粒子径(R90)の関係が、0<(R90−R10)/R50≦1.7のものを好適に用いることができる。より狭い粒度分布の糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体を用いることにより、より好適なシグモイド溶出パターンを得ることができる。
【0029】
本発明では、これらの糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体を使用する際に、乾燥して用いる。特に、高温の有機溶媒に分散させて使用する際は、あらかじめ、湿状態基準で3%以下の水分率とすることが好ましい。
また、これらの糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体の被膜中の含有率は1〜30重量%である。1重量%未満では、初期の溶出抑制期間後の本溶出速度が不充分となって、良好なシグモイド型の溶出パターンが得られず、また、30重量%を超えると初期の溶出抑制が不充分となるばかりでなく、被膜強度が低下する。
より好ましくは、糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体の被膜中の含有率は1〜20重量%であり、特に好ましくは、1〜15重量%である。
【0030】
(4)無機充填剤
本発明の効果をより好ましくできる無機充填剤は、球状、及び/又は板状の無機充填剤である。例えば、タルク、クレー、ケイソウ土、カオリン、ベントナイト、シリカ、マイカ、ガラス、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらのうち、初期溶出の抑制効果が優れている点から、親水性の低い、タルク、クレーが好ましい。
【0031】
これらの無機充填材のレーザー回折式粒度分布測定機により測定された、50%粒子径は0.1〜40μmが好ましく、さらに好ましくは、0.2〜30μmである。粒径の小さい充填剤が好ましいが、0.1μm未満では、逆に膜形成時に凝集して、実質的に大粒径となりやすく、また、40μmを超えると被覆の欠陥が多く発生し、溶出の制御性が低下して好ましくない。
これらの無機充填剤の被膜中の含有率は60重量%以下である。60重量%を超えると初期の溶出抑制が不充分となるばかりでなく、被膜強度が低下する。
【0032】
無機充填材を含有させることにより、被膜成型時の被膜欠陥が少なくなり、以て初期の溶出抑制をより厳密にできると共に、被膜分解時の膜のボロボロさ等の崩壊状況を顕著化できることから、より好ましくは、無機充填剤の被膜中の含有率は1〜60重量%以下である。更に好ましくは、無機充填剤の被膜中の含有率を2〜50重量%とすることにより、初期の溶出抑制を厳密さ、被膜分解時の膜のボロボロさ等の崩壊状況の顕著化、被膜強度のバランスを良好にできる。特に好ましくは5〜45重量%である。
【0033】
(5)有機金属錯体
本発明は、被膜に有機金属錯体を含ませることにより、更に好ましくできる。
本発明で言う有機金属錯体とは、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、銀、パラジウム、モリブデン、クロム、タングステン、セリウム等の金属元素と、アセチルアセトン等のβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、ジアルキルジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、メルカプトベンゾチアゾール等の錯形成剤が、酸素原子あるいは硫黄原子を介して錯形成したものであり、これらの有機金属錯体は単独でも良いし、2種以上組み合わせて用いてもかまわない。例えば、アセチルアセトン第二鉄、鉄アセトニルアセテート、鉄ジエチルジチオカーバメート、鉄ジブチルジチオカーバメート、、鉄ジイソノニルジチオカーバメート、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ニッケルジメチルジチオカーバメート、ニッケルジイソノニルジチオカーバメート、マンガンジエチルジチオカーバメート、亜鉛ジブチルジチオカーバメート、亜鉛ジイソプロピルジチオホスフェート等を用いることができる。
【0034】
さらに好ましくは、有機鉄錯体、有機ニッケル錯体、及びこれらの混合物である。
有機金属錯体の効果発揮には被覆肥料の被膜中の含有率は、0.0002〜2重量%が好ましく、更に好ましくは0.001〜1重量%であり、特に好ましくは0.005〜0.5重量%である。有機金属錯体を2種以上用いる場合の有機金属錯体の被膜中の合計の含有率も同様に、0.0002〜2重量%が好ましく、更に好ましくは0.001〜1重量%であり、特に好ましくは0.005〜0.5重量%である。
【0035】
(6)粒状肥料
本発明で用いる粒状肥料には特に制限はなく、公知の粒状化学肥料を用いることができる。例えば(a)尿素、イソブチリデン尿素等の有機合成肥料、あるいは(b)アンモニア態窒素、硝酸態窒素、燐酸、加里から選ばれる1種以上の成分を含む複塩、例えば燐硝安加里、加燐硝安、NK化成、硫安、塩安、硝安、塩化加里、硫酸加里、硝酸ソーダ、硝酸石灰、第一燐安、第二燐安、燐酸加里、燐酸石灰等の無機肥料(化成肥料)、及び(c)これらにマグネシウム塩、鉄塩、モリブデン塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、及びホウ酸塩等の微量要素を加えたもの、を用いることができる。これらは(a)、(b)、(c)から選ばれる2種以上を混合してもかまわない。
【0036】
粒状肥料の形は球状、角状、円柱状のいずれでもかまわないが、被覆欠陥の防止の為、球状が好ましい。さらに好ましくは、短/長径比の平均が0.8以上の球状の粒状肥料であり、特に好ましくは、真球状である。
その大きさは0.2〜10mm径が好ましい。0.2mm径未満、あるいは10mm径を超えるものは、施肥時の取扱いが困難となって好ましくない。また、篩処理等によって原料肥料粒子の粒度分布を狭くして、粒子毎のバラツキをなくす方法を用いてもかまわない。
【0037】
(7)その他の被膜成分、及び被膜形成の方法
本発明の被膜には必要に応じて、(a)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合によるポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、ポリエチレングリコール−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール−オクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール−アルキルエーテル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール−アルキルエステル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエステル等のエステル型ノニオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、及びこれらの混合物等によって溶出速度を調整したり、(b)有機顔料、カーボンブラック等の着色剤の添加によって被覆粒状肥料の区別を容易にしたり、あるいは、(c)ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ジオール−ジカルボン酸型の脂肪族ポリエステル、ジオール−ジカルボン酸型の脂肪族ポリエステルの部分架橋物等の生分解性樹脂等を添加することによって土壌中の分解速度を調整することもできる。
【0038】
また、被覆粒状肥料の被膜は、粒状肥料の表面全体に施されたものであり、粒状肥料100重量部あたり1〜50重量部の被膜で被覆される。被膜が1重量部未満では粒状肥料全粒の周囲全体に均一に被膜を形成させることが困難であって、その溶出制御が難しく、50重量部を超えると被覆粒状肥料の肥料成分の品位が低下して好ましくない。好ましくは、粒状肥料100重量部あたり被膜が2〜35重量部であり、特に好ましくは、粒状肥料100重量部あたり被膜が3〜20重量部である。
【0039】
本発明の被膜の形成方法に特に制限はないが、噴流搭で流動する肥料に、被覆材料を必要に応じて溶媒と共に供給して、熱風で乾燥させる噴流方式、転動ドラム内で転動する肥料に、被覆材料を必要に応じて溶媒と共に供給して、熱風で乾燥させる転動方式、回転パン内で転動する肥料に、被覆材料を必要に応じて溶媒と共に供給して、熱風で乾燥させる回転パン方式、及びこれらを組合せたもの、例えば噴流パン方式等を用いることができる。被覆材料を溶媒と共に供給する場合のスプレーノズルにも特に制限はなく、1液型のノズル、ガスアシストによる2液型のノズル等を用いることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明の実施の形態、及び効果を説明する。
(A)実施例で用いた材料
1)LPO:低分子量ポリオレフィン
副生法低分子量ポリエチレン(ポリレッツ90SZ;チュウセイワックスポリマー製)を用いた。
ポリマーラボラトリー社製高温GPC装置(PL−GPC 210型)に、同社製カラム(PL gel MIXED−B、2本)を装着し、オーブン温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶離液として測定した、重量平均分子量は910であった。尚、標品は同社の標準ポリエチレン試料を用いた。
【0041】
2)EOE:エチレン−α−オレフィンエラストマー
MIが0.5g/10分、密度が0.868g/cm3、Mw/Mnが2.3のエチレン−オクテン1−エラストマー(エンゲージ8150;デュポンダウエラストマーズ製)を用いた。
3)タルク:無機充填剤
NKタルク(ワンドー工業製)を用いた。
4)澱粉:糖重合体
10%粒径が10.1μm、50%粒径が19.1μm、90%粒径が34.9μm、水分率0.8%のコーンスターチを用いた。
5)SA:界面活性剤
ソフタノール70(ポリエチレングリコール−第二級アルキルエーテル;日本触媒製)を用いた。
【0042】
6)錯体A:有機金属錯体−鉄錯体
鉄(III)アセチルアセトナート(試薬)を用いた。
7)錯体B:有機金属錯体−ニッケル錯体
ニッケル−ジブチルジチオカーバメート(試薬)を用いた。
8)粒状肥料
粒状尿素(46−0−0:尿素態窒素として46重量%を含有)を6〜8メッシュの篩で篩って使用した。
【0043】
(B)溶出タイプ、及び溶出抑制期間の測定
下記に示す、25℃、水分率60%の土中溶出評価を用いた。
土中溶出に用いた土は、静岡県富士市岩本地区の黒ボク土(最大容水量は121g/100g乾燥土;朝倉書店発行「改訂新版実験農芸化学」上巻[昭和50年5月1日発行20版]の第70頁に記載されるB.最大容水量の方法により算出した)である。この黒ボク土は2mm篩の篩下のものを用い、ボトル仕込み直前に測定した含水量は51g/100g乾燥土であった。
【0044】
被覆粒状肥料5gと、土264.25g(乾燥土175gと水89.25g)と、蒸留水37.8gを混合してポリエチレン製ボトルに仕込み、密栓した。この条件は、乾燥土175gの最大容水量の211.75gに対して、含まれる水が127.05gであることから、水分率60%である。該ボトルを25℃のインキュベーターに保存し、所定日数毎に抜き取って、土を除いた後に被覆肥料をすりつぶして評価液を得た。溶出率は、すりつぶした被覆肥料から抽出して得られた液に含まれる全窒素量を、予め測定しておいた被覆粒状肥料に含まれる全窒素量で割り返して、期間毎の残存率とし、100%から差し引いて溶出率を算出した。
【0045】
土中溶出の結果を経過日数毎にプロットし、溶出率が10%となった日数を溶出抑制期間、及び溶出率が80%に達した日数を溶出タイプとした。本発明では、溶出抑制期間が15日以上であり、かつ、溶出抑制期間を溶出タイプで除した数値が0.3以上となるものをシグモイド溶出型(「Sタイプ」と記す)とした。また、溶出抑制期間を溶出タイプで除した数値が0.3未満となるものを非シグモイド型のレギュラー溶出型(「Rタイプ」と記す)とした。
【0046】
(C)長期保管性試験
被覆粒状肥料100gを150μm厚みのポリエチレン袋に入れてヒートシールを行った後、さらにもう1回、150μm厚みのポリエチレン袋に入れてヒートシールを行い、被覆粒状肥料と外部の湿気を完全に遮断した。
25℃のインキュベーター中で3年間保管し、3年経過後に袋を開封して、上記(B)と同じように、25℃、水分率60%の土中溶出評価を用った。
長期保管後の溶出タイプと、元々の溶出タイプの比率が0.95〜1.05であるものを、長期保管性が良好とした。
【0047】
(D)分解試験
上記の溶出率測定に使用した黒ボク土1kgに被覆粒状肥料1,000粒を混合し、底のない枠に入れて屋外に放置し、1回/月の頻度で混合操作を行いながら、2年経過後、及び3年経過後に取り出した。
篩によって肥料殻と土を選別し、溶出終了後の形状である球状を50%以上維持している肥料殻を選択して、1,000から差し引くことで分解粒を把握し、1,000粒に対する分解粒の100分率を分解率とした。本発明では、3年後の分解率として90%以上のものを崩壊型とした。尚、95%以上の数値のものは、土と選別する前の状態では、殻らしき残骸が、極めて見つけづらいものであった。
【0048】
(E)耐磨耗試験
被覆粒状肥料を15gと、シリカサンド日光4号(川鉄鉱業製)を250gと、25mmφの磁製ボールを3個、ボールミルに入れ、78rpmで3時間回転させた。
次いで、試験前の被覆粒状肥料10gと、試験後にシリカサンド日光4号と仕分けした被覆粒状肥料10gを、各々、純水200mlと共にポリエチレン製ボトルに仕込んで密栓した。
該ボトルを所定温度設定の25℃のインキュベーターに保存し、3日後の溶出水を抜き取って、各々の評価液を得た。溶出率は、該評価液に含まれる全窒素量を、予め測定しておいた被覆粒状肥料に含まれる全窒素量で割り返して算出した。
耐磨耗試験後の試料の3日後の溶出率から、試験前の試料の3日後の溶出率を差し引いた差が、2%以下のものを耐磨耗性良好とした。
【0049】
(F)耐衝撃試験
被覆肥料20kgをポリエチレン製袋に入れ、2mの高さから10回落下後、底部の被覆肥料を採取した。
次いで、試験前と試験後の被覆粒状肥料10gを、各々、純水200mlと共にポリエチレン製ボトルに仕込んで密栓した。
該ボトルを所定温度設定の25℃のインキュベーターに保存し、3日後の溶出水を抜き取って、各々の評価液を得た。溶出率は、該評価液に含まれる全窒素量を、予め測定しておいた被覆粒状肥料に含まれる全窒素量で割り返して算出した。
耐衝撃試験後の試料の3日後の溶出率から、試験前の試料の3日後の溶出率を差し引いた差が、2%以下のものを耐衝撃性良好とした。
以下、実施例により本発明の効果を示す。尚、実施例、比較例の結果は表1にまとめて記した。
【0050】
【実施例1】
(1)被膜原料溶液の調合
LPOを120g、EOEを60g秤量した後、6kgのテトラクロロエチレンに投入し、テトラクロロエチレンを沸騰させて、LPOとEOEをテトラクロロエチレンに完全に溶解させた。次いで、攪拌しながらタルクを105g、澱粉を15g添加し、被膜原料溶液を作成した。
【0051】
(2)被覆粒状肥料の製造
粒状肥料3,000gを噴流型被覆装置に仕込み、110℃の熱風を150Nm3/時間の風量で送風しながら、被膜原料溶液を全量スプレーし、12分間で被膜を形成させた。被膜形成時のベッド温度は65℃に保持し、被膜原料溶液の供給終了後は、熱風から20℃の冷風に切り替え、ベッド温度が40℃となったところで、被覆粒状肥料を取り出した。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
(3)被覆粒状肥料の評価
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は28日、溶出タイプは72日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.39の比率であり、Sタイプが得られた。
【0052】
また、耐磨耗試験前の溶出率が0.5%、試験後が1.4%であり、その差が0.9%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が0.5%、試験後が1.2%であり、その差が0.7%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが72日であって変化はなく、元々の溶出タイプとの比率が1.00と良好であり、また、2年後の分解率が45.4%、3年後の分解率が99.7%と、分解性も良好であった。
以上の通り、シグモイド型溶出であり、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られた。
【0053】
【実施例2】
LPOを150g、EOEを60g、タルクを60g、澱粉を30gとした以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は24日、溶出タイプは59日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.41の比率であり、Sタイプが得られた。
【0054】
また、耐磨耗試験前の溶出率が0.8%、試験後が1.6%であり、その差が0.8%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が0.8%、試験後が0.8%であり、その差が0.8%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが60日であって、元々の溶出タイプとの比率が1.02と良好であり、また、2年後の分解率が49.8%、3年後の分解率が100.0%と、分解性も良好であった。
以上の通り、シグモイド型溶出であり、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られた。
【0055】
【実施例3】
LPOを165g、EOEを90g、澱粉を45gとして、タルクを加えなかった以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は20日、溶出タイプは58日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.34の比率であり、Sタイプが得られた。
【0056】
また、耐磨耗試験前の溶出率が1.8%、試験後が3.1%であり、その差が1.3%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が1.8%、試験後が3.3%であり、その差が1.5%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが56日であって、元々の溶出タイプとの比率が0.97と良好であり、また、2年後の分解率が42.1%、3年後の分解率が91.6%と、分解性も良好であった。
以上の通り、シグモイド型溶出であり、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られた。
【0057】
【実施例4】
LPOを120g、EOEを60g、タルクを104.8g、澱粉を15g、錯体Aを0.18g、錯体Bを0.02gとした以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は28日、溶出タイプは72日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.39の比率であり、Sタイプが得られた。
【0058】
また、耐磨耗試験前の溶出率が0.5%、試験後が1.4%であり、その差が0.9%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が0.5%、試験後が1.2%であり、その差が0.7%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが72日であって変化なく、元々の溶出タイプとの比率が1.00と良好であり、また、2年後の分解率が57.5%、3年後の分解率が100.0%と、分解性も良好であった。
以上の通り、シグモイド型溶出であり、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られた。
【0059】
【比較例1】
LPOを120g、EOEを60g、タルクを120gとして、澱粉を加えなかった以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は65日、溶出タイプは386日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.17の比率であり、Rタイプが得られた。
【0060】
また、耐磨耗試験前の溶出率が0.6%、試験後が1.4%であり、その差が0.8%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が0.6%、試験後が1.3%であり、その差が0.7%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが394日であって、元々の溶出タイプとの比率が1.02と良好であり、また、2年後の分解率が43.2%、3年後の分解率が98.1%と、分解性も良好であった。
以上の通り、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られたが、シグモイド型溶出とはならなかった。
【0061】
【比較例2】
LPOを180g、タルクを105g、澱粉を15gとして、EOEを加えなかった以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は1日、溶出タイプが7日であり、溶出抑制期間を持たないRタイプが得られた。
【0062】
また、耐磨耗試験前の溶出率が28.1%、試験後が100%であって被膜が破壊されており、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が28.1%、試験後が100%であって、同様に被膜が破壊されており、耐磨耗性、耐衝撃性共に極めて低いものであった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが5日であって、元々の溶出タイプとの比率が0.71と変動が大きかったが、2年後の分解率が48.8%、3年後の分解率が100.0%と、分解性は良好であった。
以上の通り、被膜崩壊型であったが、被膜強度、保存安定性が低い、非シグモイド型溶出の被覆粒状肥料が得られた。
【0063】
【比較例3】
LPOを120g、EOEを60g、タルクを116.8g、SAを3g、錯体Aを0.18g、錯体Bを0.02gとして、澱粉を加えなかった以外は、実施例1と同じ方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料は3,300gであり、供給した被膜原料が全量被覆されていることを確認した。
得られた被覆粒状肥料の溶出抑制期間は16日、溶出タイプは165日、溶出抑制期間が溶出タイプの0.10の比率であり、Rタイプが得られた。
【0064】
また、耐磨耗試験前の溶出率が6.6%、試験後が7.1%であり、その差が0.5%と小さく、さらに、耐衝撃試験前の溶出率が6.6%、試験後が7.3%であり、その差が0.7%と小さく、耐磨耗性、耐衝撃性共に良好であった。
3年経過後の保存性評価でも、溶出タイプが168日であって、元々の溶出タイプとの比率が1.02と良好であり、また、2年後の分解率が49.9%、3年後の分解率が98.4%と、分解性も良好であった。
以上の通り、使用前の被膜強度に優れ、かつ保存安定性の優れる被膜崩壊型の被覆粒状肥料が得られたが、シグモイド型溶出とはならなかった。
【0065】
【表1】
Figure 0004256549
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、長期保存後の被覆粒状肥料を使用する際に、思わぬ被膜分解による初期の溶出抑制期間の溶出漏れ出しが発生せず、かつ、シグモイド型溶出による高い肥効、省力化が得られ、さらに、使用後の被覆粒状肥料の被膜の殻が田畑で分解する、高機能な被覆粒状肥料を提供できる。

Claims (3)

  1. (a)重量平均分子量が300〜10,000の低分子量ポリエチレンを10〜95重量%と、(b)密度が0.830〜0.910g/cm3 、かつメルトインデックスが0.1〜50g/10分のエチレン−オクテン1エラストマーを89〜4重量%と、(c)糖重合体若しくはその誘導体を主成分とする粉体を1〜30重量%を含む被膜により被覆されていることを特徴とするシグモイド溶出型被覆粒状肥料。
  2. 被膜中に、無機充填剤を1〜60重量%含むことを特徴とする請求項1に記載のシグモイド溶出型被覆粒状肥料。
  3. 被膜中に、有機金属錯体を0.0002〜2重量%を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシグモイド溶出型被覆粒状肥料。
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