JP4804203B2 - 多層延伸フィルムとその製造方法 - Google Patents
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Description
この収縮包装は、フィルムに少し余裕を持たせて被包装物を熱収縮性フィルムで包み、開口部を密封シールして予備包装体を形成した後、熱風トンネルを通過させてあらかじめ設けられた脱気孔または密封シールした後に設けた脱気孔から空気を抜きながら該フィルムを熱収縮させて被包装物に密着させる方法である。該予備包装体のシール方法としては、その底部を合掌シールまたはオーバーラップ自己密着シールする方法、オーバーラップ静電シールによる縦シールして前後二方を横シールする方法(ピロー包装方式)、フィルムを半折して開口部である三方をシールする方法(半折フィルム方式)、二枚のフィルムを重ね合わせて四方をシールする方法(上下フィルム方式)等がある。これらの方法においては密封性を高めるために脱気孔をなくして事前に中の気体を適度に排除した予備包装体を収縮包装する場合もある。
一方、近年、自動包装機による包装速度の高速化が進み、また商品としての包装体に対する要求品質もますます高度なものになってきており、多色の印刷が施された容器や化粧トレーが増えており、シュリンク包装後においても本来の印刷の鮮明さの維持や容器、トレーに変形が極力ないことが求められており、これらの要求特性は、従来シュリンク包装時にフィルムの収縮力によって湾曲しやすかったノート類や書籍類を包装する場合にも同様である。
環境適性を考慮したシュリンク包装可能なフィルムとして特許文献1及び2が知られている。特許文献1は、ポリ乳酸系樹脂を用いて特定の収縮率を付与した架橋された熱収縮性フィルムに関するもので、このフィルムは生分解性を有し、かつ十分な収縮率があるために被包装物に密着して緊張したシワのない美麗な包装ができることが開示されている。特許文献2においては、ポリ乳酸を主成分とする層とポリオレフィン系樹脂を主成分とする層を有する多層の熱収縮性フィルムが開示されており、生産性に優れたインフレーション法により比較的低温で高い収縮率、及び破断強度が改善された柔軟な収縮シート状物が得られることが記載されている。
1.少なくとも片側の表面層がヒートシール性樹脂からなり、架橋助剤を含むポリ乳酸系樹脂層を内部層に含み、少なくとも1層が架橋されており、以下の1)及び2)の熱収縮特性を有することを特徴とする多層延伸フィルム。
1)120℃における、MD又はTD方向の熱収縮率が30%以上である。
2)80℃〜120℃の全温度範囲において、MD及びTDの熱収縮力が650mN/cm幅以下であり、かつ80℃〜120℃のいずれかの温度において、MD及びTDの熱収縮応力が0.70MPa以上である。
2.ヒートシール性樹脂が、エチレン系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、プロピレン系共重合体、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1.に記載の多層延伸フィルム。
3.少なくとも片側の表面層がヒートシール性樹脂からなり、架橋助剤を含むポリ乳酸系樹脂層を内部層に含む多層構成になるように各層の樹脂を多層ダイにより溶融共押出して急冷し、延伸用原反を採取した後、エネルギー線照射による架橋処理する工程を含み、原反を加熱して少なくとも1方向に面積延伸倍率で5〜60倍に延伸することを特徴とする熱収縮性多層延伸フィルムの製造方法。
本発明の多層延伸フィルムは少なくとも片側の表面層がヒートシール性樹脂からなり、被包装物の保護のためにヒートシールによって密封包装を行うための層である。同一面同士が向き合う合掌シールによって密封するピロー包装の場合は片側の表層がヒートシール性樹脂から構成されていればよく、オーバーラップシールのように両表面層が互いに向き合ってシール面を形成する場合には両表面層がヒートシール性樹脂から構成されていればよい。いずれのヒートシール方法にも対応できる点で、両表面層がヒートシール性樹脂からなることが好ましく、各表面層に使用する樹脂は同じでも、異なっていてもよい。
エチレン系重合体を製造する際に用いられる重合触媒は特に限定されないが、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒等のいずれでもよく、線状低密度ポリエチレン及び超低密度線状ポリエチレンにおいては、押出し成形時の目やにの発生が少なく、滑り性も良好で低温ヒートシール性や耐引き裂き強度もが得られやすい点で、シングルサイト触媒が好ましい。
エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1〜C8のアルコール成分より選ばれる)共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等のC1〜C8のアルコール成分より選ばれる)共重合体等が挙げられる。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、及びその誘導体とは、スチレンを代表とするビニル芳香族炭化水素が主体であるブロックと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンを主体とするブロックとからなるブロック共重合体、又は二重結合の少なくとも一部を水素添加処理したもの等が挙げられる。
ヒートシール性樹脂層を構成する樹脂は、上述した樹脂のうち1種又は2種以上の混合物であってもよい。
本発明のフィルムは、内部層として植物由来樹脂層を含むが、植物由来樹脂は本発明の目的の一つである、フィルムに環境適性を付与させるためのものである。植物由来樹脂層を構成する植物由来樹脂は、さとうきび、大豆、とうもろこし、サツマイモ等の植物資源を主原料として生物及び/または化学プロセスによって生産される樹脂である。植物由来樹脂層には、植物由来樹脂の他に任意の樹脂を含んでいてもよく、最終樹脂成分中に占める植物資源に由来する原料の重量比率は50wt%以上が好ましい。
植物由来樹脂の例としては、ポリ乳酸系樹脂、でんぷん系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、中でも透明性、剛性、加工性に優れるポリ乳酸系樹脂が好ましい。
ポリ乳酸系樹脂は、植物中などの澱粉を乳酸発酵して、モノマーである乳酸を得た後直接重縮合する方法、乳酸のプレポリマーを解重合して得たラクチドを開環重縮合する方法等によって製造することができる。
これら乳酸と共重合可能なものとしては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシカプロン酸、カプロラクトン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、コハク酸、アジピン酸等が挙げられる。L−乳酸またはD−乳酸単独からなるポリ乳酸系樹脂は結晶性が高いことによって融点が高いためにフィルムに耐熱性があり、高速包装においてもヒートシール性が安定する。一方、L−乳酸またはD−乳酸のモル比が各20%のものでは結晶性がほとんど失われるために、高倍率での延伸が容易になり、高収縮性のフィルムが得られやすい。
本発明に用いる植物由来樹脂には、その他任意の熱可塑性樹脂を50wt%以下の範囲で混合してもよい。例として、グリセリンジアセトモノカプリレート等のグリセリン脂肪酸エステル、乳酸エステル類、乳酸と脂肪族ポリエステルのブロック共重合体等の可塑剤、エポキシ基を含有したアクリル−スチレン系共重合樹脂等の改質材の他、植物由来以外の生分解性樹脂(例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリビニールアルコール等)、脂肪族ポリエステル、非晶性ポリエステル類等が挙げられる。
内部層には、植物由来樹脂層の隣層に接着層を設けてもよく、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、またエチレンと上記の共重合する各単量体の自由な組み合わせの少なくとも2種からなる多元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、少なくとも1種の炭素数2以上のα−オレフィンと一酸化炭素及び酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルの各々より選ばれる少なくとも1種の単量体とからなる少なくとも3種の単量体で構成される共重合体、熱可塑性ポリウレタン、その他上記の樹脂及びポリオレフィン系樹脂を酸またはエポキシ基等の各種官能基で変性されたもの等が挙げられる。
架橋した層の好ましいゲル分率は、植物由来樹脂層の場合1〜80%、より好ましくは1〜70%、植物由来樹脂層以外の層の場合は1〜60%が好ましく、より好ましくは1〜50%である。
本発明の多層延伸フィルムは、120℃における流れ方向(MD)又はそれに垂直な方向(TD)の熱収縮率が30%以上であり、80〜120℃の間の全温度範囲においてMD及びTDの熱収縮力が650mN/cm以下、かつ80℃〜120℃のいずれかの温度において、MD及びTDの熱収縮応力が0.70MPa以上であることが肝要である。
一方、熱収縮力及び熱収縮応力を80〜120℃の範囲で規定する理由は、通常、被包装物は不定形で、かつ容器やトレーを用いた場合には収納物(例えば精肉または惣菜等の加工食品など)の温度と収納の状態によって容器やトレー各部の温度が不均一であるため、シュリンク包装時にフィルムが被包装物に接触するタイミングがフィルム面内において必ずしも同時ではなく被包装物とフィルムとの接触温度の不均一性も考慮して、包装時の被包装物の変形抑制や緩みや弛みの抑制効果を有効に推し量るための温度域である。
本発明のフィルムは80〜120℃のいずれかの温度において、熱収縮力から換算されるMD及びTDの熱収縮応力が0.70MPa以上であり、好ましくは0.80MPa以上、より好ましくは0.90MPa以上である。熱収縮応力とは、前述した熱収縮力を測定前の元のフィルムの断面積で除した値である。熱収縮応力が0.70MPa以上の場合、包装時にタイトな包装体が得られ、輸送やハンドリング後においてもフィルムに緩みや弛みが生じにくく、良好な包装外観が維持される。熱収縮応力の上限は、フィルム厚み要因が加わったフィルム全体としての熱収縮力が650mN/cm幅を越えない範囲におのずと制限される。
延伸した後のフィルムにエネルギー線照射による架橋処理を行ってもよい。用いるエネルギー線としては紫外線、電子線、X線、γ線等の電離性放射線が挙げられ、好ましくは電子線であり、10〜300KGyの照射量範囲で使用されることが好ましい。照射によって架橋する層は目的に応じて任意に選択することが可能であり、表面層付近を主に架橋したい場合は、延伸原反の厚みに応じて加速電圧を調整することにより厚み方向での線量分布を調整して照射する方法、アルミ等の遮蔽板使用によって同様に線量分布を調整するマスク照射法、電子線を延伸原反面に対して斜め方向より照射する方法等がある。
延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で5〜60倍が好ましく、より好ましくは8〜50倍であり、用途に応じて適宜選択されるが、必要に応じて延伸後に熱処理を行ってフィルムの収縮率や収縮力の調整を行ってもよい。延伸方法は二軸に延伸される方法が好ましく、より好ましくは前述のサーキュラーダイで得られた延伸原反を加熱二軸延伸するチューブラー法(またはダブルバブル法とも言う)である。
本発明で用いる評価方法は、下記の通りである。
(1)熱収縮率
100mm角のフィルム試料を120℃の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で10分間処理した後、それぞれ向き合う辺の中心点間距離を測定してフィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比でMD及びTDの収縮率を表す。測定数は2とし、その平均値を用いる。
(2)熱収縮応力及び熱収縮力
フィルムをMD、TDの各方向ごとに幅15mmの短冊状にサンプリングし、それをストレインゲージ付のチャックにチャック間50mmに緩めることなくセットする。測定温度は80℃を起点として、120℃までの間において、10℃間隔で測定する。
フィルムを所定温度に加熱したシリコーンオイル中に浸漬し、10秒間の収縮力をMD、TDのそれぞれについて各温度で測定し、得られた最大値を1cm幅に換算して、各温度におけるフィルムの収縮力とする。また、得られた収縮力の値を浸漬前のフィルムの断面積で除した値を熱収縮応力とする。測定数は各温度で各方向に5とし、その平均値を用いる。
(3)収縮後ヘイズ
中がくりぬかれた状態の金枠を用いてフィルムをMD、TDともに15%の寸法余裕を持たせて金枠に両面テープで固定し、ケーユーシステム(株)製、熱風シュリンクトンネル(FB800)を用いて120℃、4秒間の条件で熱収縮させ、ASTM−D−1003により測定する。
得られた各フィルムを所定の幅にスリットして、(株)フジキカイ製、ピローシュリンク包装機FW−3451A−αVを用いて、内部に約150gの粘土をいれたエフピコ製、PSPトレーKS−A12−30(白)及び同じくエフピコ製、内外かん合式蓋付容器FT−420を用いて包装速度40パック/分で120〜150℃のシュリンク温度範囲において目視による透明性が明らかに低下しない範囲で最もタイトに仕上がる条件で30個包装し、以下の外観評価を行う。
○:トレー、容器に湾曲等の変形及び前後のヒートシール線の端部に角残りがほとんどな
く、商品性に優れる。
△:トレー、容器に若干の変形が見られるか、又は前後のヒートシール線の端部に小さな
角残りが認められ、商品性に若干問題有り。
×:トレー、容器に明らかな変形が認められるか、前後のヒートシール線の端部に収縮不
足による明らかな角残りが認められ、商品性に問題有り。
上記(4)で得たPSPトレー包装品及び蓋付容器の包装品について、それぞれ1段あたり4個を2段に積載して計8個をダンボールに箱詰し、JIS Z0232の包装貨物−振動試験方法に準拠して振動を与えた後、包装体を取り出して以下の評価を行う。振動試験条件は、ダンボール箱は固定し、加速度0.75G、振動数5〜50Hzで垂直方向に40分間、水平横方向に20分間、水平縦方向に20分の合計80分で行う。
○:ほとんどすべての包装品に目立った緩みや弛みが認められず、商品性を維持している
。
△:一部の包装品に緩みもしくは弛みが認められ、商品性に若干問題有り。
×:ほとんどすべての包装品に明らかな緩み弛みが認められ、商品性に問題有り。
上記(5)と同様に振動を与えた包装品について擦れによる耐ピンホール性を以下のように評価する。
○:すべての包装品にピンホールなし。
△:8個の包装品中1個に微小なピンホールが認められる。
×:8個の包装品中2個以上にピンホールが認められる。
(7)ゲル分率
植物由来樹脂以外の層については、該当する層を剥離、又は削り取って試料とし、沸騰パラキシレン中で12時間抽出し、不溶解分の割合を次式により表示したもので架橋度の尺度として用いる。
ゲル分率(重量%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)×100
植物由来樹脂層のゲル分率については、溶媒をクロロホルム、抽出時間を24時間に変更して上記と同様にしてゲル分を測定する。
LL1:シングルサイト系超低密度線状ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=ヘキセ
ン−1)、密度=0.900g/cm3、メルトインデックス=4.0
LL2:シングルサイト系超低密度線状ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=ヘキセ
ン−1)、密度=0.913g/cm3、メルトインデックス=2.0
LL3:シングルサイト系線状低密度ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=ヘキセン
−1)、密度=0.917g/cm3、メルトインデックス=4.0
LL4:マルチサイト系線状低密度ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=オクテン−
1)、密度=0.926g/cm3、メルトインデックス=2.0
PE1:高圧法低密度ポリエチレン、密度0.921g/cm3、メルトインデックス=
0.4
PP1:メタロセン系プロピレン−エチレンランダムコポリマー(融点:126℃、MF
R=2.0)
PP2:プロピレン−エチレン共重合体エラストマー、ダウケミカル社製バーシファイ2
300(MFR=2)
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、コモノマー含有量:15wt%、MI=2.
3
EVA2:エチレン−酢酸ビニル共重合体、コモノマー含有量:26wt%、MI=3
EAA:エチレン−アクリル酸共重合体、コモノマー含有量:6.5wt%、MI=5.
5
EMMA:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、コモノマー含有量:18wt%、M
I=7
PS1:スチレン−ブタジエン共重合体エラストマー、BASF製Styroflex(R)
2G66(分子量:130000g/mol、スチレン比:70wt%)
PS2:水添スチレン系熱可塑性エラストマー、旭化成ケミカルズ(株)製タフテックH
1221(スチレン比:12wt%、MFR(230℃、2.16kgf):4
.5)
LA1:ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=99/1、融点171℃、ガラス転移温度:5
7℃、重量平均分子量:200000)
LA2:ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=96/4、融点157℃、ガラス転移温度:5
7℃、重量平均分子量:200000)
LA3:ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=88/12、ガラス転移温度:57℃、重量平
均分子量:200000)
BDP:ポリブチレンサクシネートアジペート、昭和高分子(株)製ビオノーレ#300
1(融点:95℃、ガラス転移温度:−45℃)
EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン含量44モル%、メルトイン
デックス(190℃、2.16kgf)=2.5
AD1:ポリ乳酸用フィルム柔軟性付与改質材、大日本インキ化学工業(株)製プラメー
トPD350
AD2:ポリ乳酸用可塑剤、グリセリンジアセトモノカプリレート
シングルサイト系超低密度線状ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=ヘキセン−1):LL1にアンチブロッキング剤としてアルミノシリケート系化合物(シルトンJC30)を0.1wt、エルカ酸アミド0.5wt%、及びグリセリンモノオレートとジグリセリンオレートを1:1で混合したものを1.0wt%添加した樹脂組成物をヒートシール層とし、植物由来樹脂としてポリ乳酸系樹脂:LA2を用い、これに柔軟性付与改質剤:AD1を15wt%とトリアリルイソシアヌレート1wt%添加したものを植物由来樹脂層、更に両層の接着層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体:EVA1を用いて、層配置がLL1/EVA1/(LA2+AD1)/EVA1/LL1で、各層の厚み比率(%)が15/10/50/10/15となるように環状5層ダイを用いて押出した後、冷水にて急冷固化して折り幅130mm、厚み約300μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状延伸原反を採取した。ついでこの原反を500kVの電子線照射装置に誘導して、80kGyの吸収線量で架橋処理し、これを2対の差動ニップロール間に通し、延伸開始点の加熱温度を約150℃になるようにしてエアー注入してバブルを形成させ、MDに4.5倍、TDに6.8倍延伸を行い(面積延伸倍率で31倍)、厚み10μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。高収縮性に富み、容器の変形もほとんど無い透明性が良好でタイトな包装体が得られた。この包装体は輸送後の緩み、弛み及びピンホール発生がなく、さらに包装後に30℃、70%相対湿度下に1ケ月放置してもフィルムに全く緩みを生じることが無い、美麗性の維持効果の高いフィルムであった。
植物由来樹脂層として実施例1と同様な組成(ポリ乳酸系樹脂:LA2、柔軟性付与改質剤:AD1を15wt%、トリアリルイソシアネート1wt%)を用い、これを単層構成として以下実施例1と同様にして延伸を行った。延伸倍率はMDに4.2倍、TDに6.5倍であり、得られたフィルムの厚みは11μmであった。
このフィルムの評価結果を表2に示すが、包装時の仕上がりは良好であるものの、前後のヒートシール線の端部が小さく尖って硬く、また振動試験においてシール部分で破れの発生が認められた。更に包装体を30℃、70%相対湿度下に約1ケ月放置したものはフィルムに明らかな緩みが観察された。
シングルサイト系超低密度線状ポリエチレン(αオレフィンコモノマー=ヘキセン−1):LL1にアンチブロッキング剤としてアルミノシリケート系化合物(シルトンJC30)を0.1wt、エルカ酸アミド1.0wt%、及びグリセリンモノオレートとジグリセリンオレートを1:1で混合したものを1.0wt%添加した樹脂組成物をヒートシール層とし、植物由来樹脂としてポリ乳酸系樹脂:LA2を用い、これに柔軟性付与改質剤:AD1を30wt%添加したものを植物由来樹脂層、更に両層の接着層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体:EVA1を用いて、層配置がLL1/EVA1/(LA2+AD1)/EVA1/LL1で、各層の厚み比率(%)が20/10/40/10/20となるように環状5層ダイを用いて押出した後、冷水にて急冷固化して折り幅200mm、厚み約180μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状延伸原反を採取した。
次にこの原反を2対の差動ニップロール間に通し、延伸開始点の加熱温度を約65℃になるようにしてエアー注入してバブルを形成させ、MD方向に4.2倍、TD方向に3.8倍延伸を行い(面積延伸倍率で16.0倍)、厚み11.3μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。特に低温高収縮性に富み、容器の変形もほとんど無い透明性が良好なタイトな包装体が得られ、実施例1と同様、輸送後の緩みやピンホール発生がなく、さらに包装後に30℃、70%相対湿度下に1ケ月放置してもフィルムに全く緩みを生じることが無かった。
参考例1の樹脂構成(層配置がLL1/EVA1/(LA2+AD1)/EVA1/LL1で、各層の厚み比率(%)が20/10/40/10/20)をそのまま用い、環状ダイからの押出し温度を190℃に調整し、インフレーション法によってブローアップ比率6倍で厚み12.5μmのフィルムを得た。このフィルムの評価結果を表2に示すが、包装直後においては容器に変形はないもののヒートシール線端部に小さな角残りが認められた。得られた包装体を指で押すとその部分が容易に緩み、更に振動試験後はいずれの包装体にも緩みや弛みが認められた。また、透明性にも劣るものであった。
表1及び表3に示す層構成を用いて、実施例1と同様にしてチューブ状原反を採取し、次いで40〜100kGyの範囲で吸収線量を適宜変えて電子線照射処理を行った後、同様な延伸を行い各フィルムを得た。なお各フィルムの表層には実施例1の表層と同様の添加剤を添加した。得られたフィルムはいずれも透明性に優れ、包装時の仕上がりが良好で輸送後においてもその美麗性を持続可能な実用性の高いものであった。
実施例1における層構成のうち、ヒートシール層の樹脂:LL1をマルチサイト系線状低密度ポリエチレン:LL4に変更し、また植物由来樹脂層から柔軟性付与改質剤:AD1を除去した層構成を用いて、実施例1と同様に電子線照射処理を行い、延伸開始温度を約115℃に調整して厚み25μmのフィルムを得た。評価結果を表2に示すが、得られたフィルムは、MDの熱収縮力が491mN/cm幅、TDの熱収縮力が674mN/cm幅であり、収縮包装結果はトレーが大きく変形し、また蓋付容器においては一部蓋が容器本体から外れて浮き上がるといった問題が生じた。
比較例3のフィルムを約100℃の熱風炉で熱弛緩処理し、厚みが31μmでMDの熱収縮力を307mN/cm幅、TDの熱収縮力を477/cm幅に調整し、120℃におけるMDとTDの熱収縮率が各々23%、27%のフィルムを得た。包装仕上がりを評価したが、ヒートシール線両端部に明らかな膨らみが残っており、美麗性に劣るものであった。
表3及び表4に示す層構成で、実施例1または参考例1と同様な方法で、延伸条件を変更してフィルムを作成した。フィルムの評価結果を同様に表3及び表4に示す。なお、各フィルムの表層には実施例1の表層と同様の添加剤を添加し、電子線照射処理をした場合は40〜80kGyの吸収線量範囲で適宜行った。
また、各実施例の延伸開始温度(℃)と延伸倍率(MD/TD)は、実施例8から順に約65℃と3.7/4.1、約110℃と4.1/4.5、約110℃と4.3/4.7、約150℃と5.4/6.8、そして実施例12が約100℃と4.1/4.5であった。
Claims (3)
- 少なくとも片側の表面層がヒートシール性樹脂からなり、架橋助剤を含むポリ乳酸系樹脂層を内部層に含み、少なくとも1層が架橋されており、以下の1)及び2)の熱収縮特性を有することを特徴とする多層延伸フィルム。
1)120℃における、MD又はTD方向の熱収縮率が30%以上である。
2)80℃〜120℃の全温度範囲において、MD及びTDの熱収縮力が650mN/cm幅以下であり、かつ80℃〜120℃のいずれかの温度において、MD及びTDの熱収縮応力が0.70MPa以上である。 - ヒートシール性樹脂が、エチレン系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、プロピレン系共重合体、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の多層延伸フィルム。
- 少なくとも片側の表面層がヒートシール性樹脂からなり、架橋助剤を含むポリ乳酸系樹脂層を内部層に含む多層構成になるように各層の樹脂を多層ダイにより溶融共押出して急冷し、延伸用原反を採取した後、エネルギー線照射による架橋処理する工程を含み、原反を加熱して少なくとも1方向に面積延伸倍率で5〜60倍に延伸することを特徴とする熱収縮性多層延伸フィルムの製造方法。
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