JP4803877B2 - 炭化珪素質焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結体表面に化学的若しくは物理的にコーティングを行う用途に用いる炭化珪素質焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1974年に米国のProchazkaによりサブミクロン粒径のβ−SiCに焼結助剤として少量のホウ素と炭素を添加することにより緻密な焼結体となることを発表して以来、炭化珪素焼結体は、高温、高応力負荷条件を克服できる材料として広く一般に用いられてきた。
【0003】
また、一般的に緻密化が進むほど、強度、硬度、熱伝導率等の機械的、熱的な材料特性が上がる為、より緻密な炭化珪素焼結体を製造する方法が研究、考案されてきた。本発明者も炭化珪素焼結体を緻密化させることにより、熱伝導率で190W/mK以上の炭化珪素焼結体を得るに至っている。
【0004】
同様に、易焼結性、及び焼結体の破壊靭性を向上させる目的で焼結助剤として酸化アルミニウム等の焼結過程に於いて結晶粒界周囲に液層成分を生じる物質を添加する炭化珪素も考案されてきた。
【0005】
また一方、炭化珪素焼結体を摺動部材として用いる際に、摺動特性を向上させるため、気孔率の高い多孔質炭化珪素も研究されてきた。
【0006】
また、しばしば、これらセラミック製構造材料にCVD、PVD等の生成膜をコーティングすることがある。また別に有機・無機等の各種接着剤等を使用して他の物体を該セラミック製構造部材に接着することがある。
【0007】
ここで問題となってくるのが、セラミック焼結体と生成膜・各種接着剤との濡れ性であるが、これを向上させるために、結晶粒界をガラス質のマトリックスとして覆う形で存在するセラミック焼結体表面では化学的な薬品処理等でエッチングして、表面に微細な凹凸を生じさせ、濡れ性を向上させる手法がよく用いられる(鈴木宏茂著 高温セラミック材料 日刊工業新聞社刊 参照)。
【0008】
たとえばアルミナ焼結体や焼結助剤として酸化アルミニウムを添加する炭化珪素焼結体は、結晶粒界をガラス質のマトリックスとして覆う形で存在するため、化学的なエッチングを行うと、その結晶粒界のガラス質のマトリックスが選択的にエッチングされるため、結果的に焼結体表面に結晶粒径前後の微細な凹凸を生じやすく、生成膜や各種接着剤等が、その凹凸に入り込むことにより、入り込んだ生成膜や各種接着剤等がくさびとなり生成膜や各種接着剤等と焼結体との密着性が向上するという、すなわちアンカー効果が生じる。
【0009】
そのアンカー効果により、生成膜や各種接着剤の濡れ性が向上するというメカニズムによるものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、焼結助剤としてホウ素や炭素を添加する炭化珪素質焼結体は、他の焼結体と比べて生成膜や各種接着剤の濡れ性が悪いという問題がある。
【0011】
つまり、図1に示すように焼結助剤にホウ素や炭素を添加する炭化珪素質焼結体は、その焼結過程で液層成分を生じない固層焼結であり、焼結体の結晶粒界周囲にガラス質のマトリックスを持たないため、化学的エッチングを行っても、その効果が薄く、微細な凹凸をあまり生じず、アンカー効果が十分ではなく、濡れ性の向上があまり得られないのである。
【0012】
また別の手法としては、相対密度で90%未満の多孔質炭化珪素を使用する方法があるが、この焼結体は表面に多くの気孔を有するため生成膜や接着剤の濡れ性は良いが、緻密体で無いため、機械的特性や熱的特性が、緻密体と比較して大きく劣るものであった。
【0013】
例えば半導体製造装置の研磨加工用の治具であるラッププレートは、被研磨材であるシリコンウエーハをワックスにて固定する。また付加的な性能を与えるため、CVD、PVD等の方法により、表面に成膜を行う場合がある。
【0014】
この炭化珪素製ラッププレートでは、熱伝導率、耐摩耗性等の観点から、焼結助剤としてホウ素、炭素を添加する炭化珪素質焼結体の利用が期待されているが、上述した理由により、生成膜の密着強度が低くなるため、表面をコーティングする生成膜や、シリコンウエーハを接着する為に用いるワックスが剥離し易いという問題があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような従来技術の問題点を鑑み、焼結助剤にホウ素や炭素を添加する炭化珪素質焼結体に於いて、比較的緻密度を高くして、エッチング等の化学的手段により、表面に微細な凹凸を形成し、そのアンカー効果により接着剤や生成膜の密着性が高い、炭化珪素質焼結体の製造方法を考案した。
【0016】
即ち、本発明は、炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法を用いて焼結体の表面部の結晶粒界層を除去して作製された炭化珪素質焼結体であって、焼結体に平均直径が5〜40μmの気孔を有し、平均結晶粒子径が5〜40μm、相対密度が90〜99.5%であり、上記表面部に結晶粒界層を除去した微細な凹凸を形成したことを特徴とする。また、上記表面部の結晶粒界層が硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩によって除去されたことを特徴とする。
【0017】
更にその製造方法として炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法、例えば硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩を用いて焼結体表面部の結晶粒界層を除去した。
【0018】
この様にして得られた焼結体は、比較的緻密化しつつも、大きく成長した結晶粒の周囲に空隙を有する為、エッチング処理を行なった後には、適度に分散された微細な凹凸を有する焼結体母材表面を得ることが出来る。
【0019】
その結果、濡れ性が非常に良好でアンカー効果が高いため、生成膜や接着剤に対し非常に高い密着性が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の炭化珪素質焼結体は、炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法を用いて焼結体の表面部の結晶粒界層を除去して作製された炭化珪素質焼結体であって、平均直径が5〜40μmの気孔を有し、平均結晶粒子径が5〜40μm、相対密度が90〜99.5%であり、表面の粒界層を除去して凹凸を形成したものである。これにより、気孔の無い部分と気孔部の凹凸差によるくさび効果が高まり、該焼結体表面に対する化学的若しくは物理的方法によりコーティング膜を生成させる場合や、有機、無機等の接着剤等を塗布する場合の濡れ性が高くなる。
【0022】
ここで平均結晶粒径及び平均気孔径が5μm未満のときはくさび効果が低く、膜の密着性が低くなる。また、逆に平均結晶粒径及び平均気孔径が40μmを越えるときは相対密度90%未満の多孔質体となるため、緻密化が充分では無く、機械的特性、熱的特性が劣る。また、相対密度が99.5%を越えるときはくさび効果が低く、膜の密着性が低い。
【0023】
この様に本発明の炭化珪素質焼結体は、相対密度が90〜99.5%と比較的緻密な焼結体であり、かつ表面の粒界層を化学的方法により除去して平均直径が5〜40μmと大きな気孔を存在させるようにしたものである。
【0024】
結晶粒径及び気孔径の測定についてはSEM(走査型電子顕微鏡)による表面写真の観察、若しくはそのSEM写真を元にルーゼックスなどの画像解析により行う。
【0025】
ここで、結晶粒径及び気孔の平均直径とは、SEMによる表面写真の観察、若しくはそのSEM写真の画像解析により、球で有るという仮定での換算値を指す。
【0026】
一方、相対密度の測定には焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、理論密度3.21g/cm3で除することにより算出する。
【0027】
又、上記表面部の結晶粒界層の除去は、エッチングなどの化学的手段により行う。
【0028】
その具体的な方法の一例として、粒界層の除去に、硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩を用いることが好ましい。
【0029】
図2に上述した炭化珪素質焼結体の、焼結後の研削加工表面の写真を示し、エッチングにより焼結後の表面の粒界層を除去した後の表面の写真を図3に示す。
これらの図において、黒い部分が凹み、即ち気孔を示している。
【0030】
即ち、硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩を用いたエッチングにより、焼結体表面部の結晶粒界に存在する粒界層を除去し、図3に示すとおり、該表面部において直径5〜40μm程度の気孔をより多く生成できる。例えば、直径5〜40μmの気孔の数が、従来例である図1では5個程度、本発明により得られた焼結体のエッチングなどの化学的手段を用いない場合の焼結後の研削加工表面を示す図2では3個程度であるのに対し、本発明実施例である図3では40個以上確認できる。
【0031】
そのため図3に示す本発明の炭化珪素質焼結体は、図2にあるような焼結体と比較して、該焼結体表面に対する化学的若しくは物理的方法によりコーティング膜を生成させる場合や、有機、無機等の接着剤等を塗布する場合の濡れ性を高くすることができる。
【0032】
次に本発明の炭化珪素質焼結体の製造方法を説明する。
【0033】
本発明では第一に、焼結助剤として添加するホウ素や炭素の量を制御することで、その焼結過程に於いて、結晶粒の成長は促進させるが、緻密化を若干抑えるような配合とした。
【0034】
炭化珪素の焼結メカニズムにおいて、ホウ素と炭素の役割はきわめて重要であるが、その添加量に対してこれまで多くの研究が成されてきた。
【0035】
殊に、従来は炭化珪素の緻密化に対しての研究が殆どであり、緻密化に最適なホウ素、炭素の添加量は、かなり研究されて分かってきている。
【0036】
すなわち、ホウ素と炭素の添加量を適正に持ってくれば、結晶粒の成長を抑えながら緻密化を促進させることができる。本研究者も、ホウ素、炭素の添加量を任意に変更してもっとも緻密化する配合量を実験にて検証した。
【0037】
しかしながら、本発明は、完全に緻密化させる前の段階で、結晶粒をある程度成長させておき、緻密化の段階で、成長した結晶粒がそれ以上の緻密化を阻害するため、ある程度の緻密化はするものの、焼結後も大きく成長した結晶粒の周囲に気孔が存在するようにした。
【0038】
特に、ホウ素は最適な添加量である0.2〜0.4重量%とし、炭素の添加を最適量である1.0〜2.0重量%とすることで上述した作用を成すことを見出した。
【0039】
炭化珪素を主成分として、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を有する出発原料として焼結体を焼結させることにより、機械的、熱的特性は十分保ちつつ、過度の緻密化を抑え、粒成長は促進し、上述した本発明の炭化珪素質焼結体を製造することができる。
【0040】
ここで、炭素源が2.0重量%を、ホウ素源が0.4重量%を越えるときは緻密化を抑えることができるが、炭化珪素粒子の表面拡散が抑制されすぎ、粒成長を阻害する。そのため、炭素添加量として1.0〜2.0重量%、ホウ素添加量として0.2〜0.4重量%とする。
【0041】
尚、出発原料における炭素源、ホウ素源の含有%は、添加量の重量測定、及び原料粉末のX線回折より求めた、炭素又はホウ素単体での換算量である。
【0042】
第二に、本発明の製造方法では、焼成プロセス中で焼結体が収縮挙動を示す前に、焼結体結晶の粒成長を促進させておくことで、収縮挙動が始まった後にも大きく成長した結晶に阻まれる形で緻密化を抑えるようにした。
【0043】
そのためには、緻密化が行われる温度域における昇温時の温度勾配を、非常に緩やかに、好ましくは階段状に途中で保温時間を設けながら焼成を行えば良く、具体的には、焼結させる際には、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃とする。
【0044】
従来は、炭化珪素質焼結体を焼結させる際に、結晶の過度の成長を抑制しより緻密な焼結体を得る為に、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり200℃以上とすることで、粒成長を防止し、成長した結晶粒に阻まれることなく緻密化させる方法が行われてきた。
【0045】
しかし、本発明においては焼結させる際に、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃と緩やかにする事で、体積拡散による緻密化が急速に起こる前の温度域において充分な焼結エネルギーを与えて粒成長を促進させ、成長した結晶粒に阻まれることで緻密化を有る程度抑えるようにした。
【0046】
また、最高焼成温度が2000℃未満のときは機械的、熱的特性が下がり、最高焼成温度が2200℃を越えるときは、2次再結晶により、結晶粒子が成長しすぎ、非常に大きな板状晶を生じ、その結晶の脱粒により、焼結体表面の研削加工面が粗すぎるため、最高焼成温度を2000〜2200℃とした。これによって、機械的特性、熱的特性を大幅に損なうことなく、過度の緻密化を抑え、粒成長は促進し、図3にあるような、生成膜、接着剤等の濡れ性の良い炭化珪素質焼結体を製造することができる。
【0047】
尚、炉内温度の測定は、熱電対若しくは光高温計を用いて行う。
【0048】
この様にして得られた、生成膜・接着剤等の濡れ性の良い、本発明の炭化珪素質焼結体は、半導体Siウエハを製造する際に使用するラッププレートに用いることが出来る。このラッププレートに樹脂膜、PVD、CVDによる金属・セラミック生成膜を成膜する場合や、同じくラッププレートにSiウエハをワックスにより固定する場合等に濡れ性を良好に出来る。あるいは、半導体製造装置のエッチング工程で用いられるチャンバー部材に本発明の炭化珪素質焼結体を用いれば、内面に付着する反応生成物の落下防止や、耐食性を高める目的でチャンバー部材の内面に、PVD、CVDによるセラミック生成膜を成膜する場合等にも効果を発揮する。その他、金属とセラミックの接着による固定、セラミックへの各種メタライズを施すような用途にも効果を発揮することが期待される。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、本実施例は、一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
(実験例1)ホウ素源として炭化ホウ素をホウ素単体の換算での添加量が0.33重量%となるように添加し、炭化ホウ素に含まれる炭素の量も含めて炭素の添加量を0.5、1.0、2.0、4.0重量%までの範囲で変えて、それぞれの添加量において、φ60×5tの成形体を作成し、焼成最高温度を、それぞれ2000、2025、2050、2100、2200℃と変化させて焼成した。なお、焼成は炭化珪素の分解を防ぐため、Ar雰囲気中で焼成し、炉内圧力は大気圧よりも若干正圧、即ち0.5kgf/cm2とした。また、焼成の温度プロファイルとしては、室温から1500〜1950℃の昇温時の温度勾配を時間当たり50°とし、50°毎に1時間の保温時間を設けた。得られた焼結体の密度を測定した結果、表1及び図4に示す通り、焼成最高温度の高低にかかわらずどの最高焼成温度においても、炭素添加量2.0重量%が最も緻密化した。
【0050】
この状態は図1に示すような、気孔の小さな焼結体であるため、アンカー効果が低く、該焼結体表面に対する化学的若しくは物理的方法によるコーティング膜や、有機、無機等の接着剤等の濡れ性が低い。
【0051】
これに対し、炭素添加量を2.0重量%より減らすことによって急激に緻密化が抑制され、気孔の大きな焼結体を得ることが出来る。
【0052】
表1及び図4から分かる通り、炭素添加量が1.0重量%であれば、2100〜2200℃で焼成することにより、2.0重量%であれば、2000〜2200℃で焼成することにより、相対密度が90%以上となり、炭化珪素緻密体として機械的、熱的特性を満足する。
【0053】
また、ホウ素、炭素添加量と、焼成の温度プロファイルの効果、またエッチングでの結晶粒界層の除去の有無による焼結体表面の気孔径の変化、及びアンカー効果の変化を比較検証した。比較例として、図1に示す従来製法による焼結体と、図2に示す、炭素添加量が1.0%で最高焼成温度が2000℃×1時間の焼結体でエッチングを行わないものとを用意し、本発明実施例として、図3に示すように、エッチングを行ったものを用意した。これら3種類により、φ60×5tの成形体の焼結体において、実際にCVDによりコーティング膜を成膜して、その密着性を検証した。
【0054】
ここで本発明実施例において、エッチングに硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩を用いた。
【0055】
その結果、表2に示すとおり、直径5〜40μmの気孔の数が、比較例である図1では5個程度、エッチングを行わない図2では3個程度であるのに対し、本発明実施例である図3では40個以上確認できる。
【0056】
更に表2に示すとおり、図1に示す比較例の焼結体では、焼結体表面の全面積において殆ど密着せずに剥離し、図2に示すものでは、数カ所で剥離が見られた。
これに対し、図3に示す炭化珪素質焼結体にエッチングを施した本発明実施例ではコーティング膜が焼結体表面の全面積において完全に密着していた。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法を用いて焼結体の表面部の結晶粒界層を除去して作製された炭化珪素質焼結体であって、平均直径が5〜40μmの気孔を有し、平均結晶粒子径が5〜40μm、相対密度が90〜99.5%であり、表面部の結晶粒界層が除去されて微細な凹凸を有する炭化珪素質焼結体とし、エッチングを施したことによって、気孔の無い部分と気孔部の凹凸差によるアンカー効果が高まり、該焼結体表面に対する化学的若しくは物理的方法によるコーティング膜や、有機、無機等の接着剤等の濡れ性を高くすることができる。
【0060】
又、本発明の製造方法によれば、炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩等による化学的なエッチングにより、焼結体表面部の結晶粒界に存在する粒界層を除去することにより、機械的、熱的特性は十分保ちつつ、過度の緻密化を抑え、粒成長は促進し、生成膜、接着剤等の濡れ性の良い炭化珪素質焼結体を製造することができる。
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の炭化珪素質焼結体の表面のSEM写真である。
【図2】 本発明の炭化珪素質焼結体の研削加工面でのSEM写真である。
【図3】 図2の焼結体の研削加工面にエッチングを施したもののSEM写真である。
【図4】 本発明の炭化珪素質焼結体における炭素添加量と密度の関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法を用いて焼結体の表面部の結晶粒界層を除去して作製された炭化珪素質焼結体であって、平均直径が5〜40μmの気孔を有し、平均結晶粒子径が5〜40μm、相対密度が90〜99.5%であり、上記表面部に結晶粒界層が除去された微細な凹凸を有することを特徴とする炭化珪素質焼結体。
- 上記表面部の結晶粒界層が硝酸カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶融塩によって除去されたことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素質焼結体。
- 炭化珪素を主成分とし、1.0〜2.0重量%の炭素源、及び0.2〜0.4重量%のホウ素源を含有する出発原料を所定形状に成形し、室温から1500〜1950℃迄の昇温速度勾配を1時間当たり20〜200℃、最高焼成温度を2000〜2200℃として焼成した後、化学的な方法を用いて焼結体の表面部の結晶粒界層を除去することを特徴とする炭化珪素質焼結体の製造方法。
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