JP4798896B2 - マグネットローラの成型用金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円柱状本体部の周面にバリのないマグネットローラを成型する金型の改良に関し、特に、周面以外でも、バリの発生を抑制する金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などにおいて、感光ドラム等の潜像保持体上の静電潜像を可視化する現像方式として、回転するスリーブ内に樹脂磁石により形成されたマグネットローラを配設し、スリーブ表面に担持したトナーをマグネットローラの磁力特性により潜像保持体上に飛翔させる、ジャンピング現象によって、潜像保持体表面にトナーを供給し、静電潜像を可視化する現像方法が知られている。
【0003】
このマグネットローラは、磁性材料よりなり、所定のパターンの磁力特性を具えた周面をもつ柱状の本体部と、その両端から突出した小径軸部とを具えている。本発明は、本体部と小径軸部とを一体成型した樹脂磁石よりなるマグネットローラに関するするものであり、この一体成型マグネットローラを製造するに際し、ナイロンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂のバインダーにフェライト等の磁性粉体を混合分散した樹脂材料を、本体部と小径軸部とを一体に成型するキャビティの磁場中に射出することによって、製品形状に成型すると共に、磁性粉体を所望の磁力特性に適した配向状態とし、この成形と同時又は成形後に所望の磁力特性に着磁させることにより、製造されるのが一般的である。
【0004】
この成型された一体成型マグネットローラを、金型より取り出す際の金型の分割方法に、半円分割方法と軸分割方法とがある。半円分割方法は、円筒状キャビティの軸線を通る平面で、金型を分割する方法であり、一方、軸分割方法は、本体部周面を形成する一体の金型本体と、小径軸部の外表面を形成する入れ子とに、金型を分割する軸分割方法とが知られている。前者は、所定の磁力パターンを具えるべきマグネットローラ本体部周面に、長手方向に延在するバリを発生させるので、バリ取りのための生産性低下の問題がありのに対して、金型本体を一体に構成し、本体部周面形成部に金型分割面が現れない後者の軸分割方法は、マグネットローラ本体部周面にバリを発生させないので、利用されつつある。
【0005】
図3は、一体成型マグネットローラ60を示す正面図であり、このマグネットローラ60を軸分割方法にて成型する従来の金型50を、図4に断面図で示す。一体成型マグネットローラ60は、本体部61とその両端に連続する小径軸部62、63とによりなっている。
【0006】
金型50のキャビティ55は、マグネットローラ60の本体部61の周面66を形成する本体部周面形成部56を有する一体の金型本体51と、マグネットローラ60の両方の小径軸部62、63の外表面とこれら外表面に連続する本体部61のそれぞれの端面67とを形成する反ゲート側入れ子52およびゲート側入れ子53とにより形成される。
【0007】
反ゲート側入れ子52は、金型本体51に固定して取り付けられ、ゲート側入れ子53は、樹脂材料を注入するゲートを有するとともに、金型本体51に対してその軸線方向と平行に移動可能に設けられていて、マグネットローラ60の成型後、マグネットローラ60を金型50から取り出す際、図4の右方に変位して、成型したマグネットローラ60を右方に引き出せるよう構成されている。
【0008】
また、この従来の金型では、それぞれの入れ子52、53を、金型本体51の、本体部周面形成部56の両側に延長する延長部分に嵌入して、キャビティ55を形成しており、キャビティ55の軸線を通るいずれの断面においても、それぞれの入れ子52、53と金型本体51との隣接面58の接線を、キャビティ表面との交点において、キャビティ55の軸線に対して平行に向けて構成している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この金型50おいては、金型本体51を一体で構成しているので、マグネットローラ60の本体部61の周面66にバリを発生させることはない。しかし、この金型50で、繰り返し同じ製品を成型するにつれ、図3に示す、マグネットローラ60の本体部周面66の両端部に軸方向に向いたバリ70が発生することが観測された。
【0010】
図5は、ショット回数を横軸にとり、発生したバリ70の高さを縦軸にとって、ショット毎にバリ70が成長することを示すグラブである。図5に示すように、バリ70の高さは、ショット数にほぼ比例して増加してことがわかる。それぞれの入れ子52および53を、金型本体51に嵌入してキャビティ55を形成させる際の嵌合精度は、使用初期においては、0.01mm〜0.03mmであったが、この嵌合面の、キャビティ55の表面での隙間は、ショット数の増加に伴って、広がることも分かった。これは、樹脂の流動や製品の取り出しに伴い、金型部品の接合部や角部が、長期の使用に伴って磨耗し、バリの高さが高くなるものと推定される。しかも、成形したマグネットローラをその軸と平行な方向に取り出すので、これらのバリは、金型には残らず、マグネットローラの側に残る。
【0011】
マグネットローラ60の本体部周面66の端部に軸方向に向いたバリ70は、この高さがある限度を越えると、マグネットローラ60をスリーブ内に装着する際、突出したバリ70がスリーブと干渉する可能性があり、そのため、マグネットローラ60を出荷する前に、バリ70の高さを、規格値で定められた所定の数値以下にしておく必要がある。このためには、成型後のバリ高さをいつもチェックする必要があり、さらに、バリ高さが規格値を越えた場合は、バリ取り作業を余儀なくされ、生産性が大幅に低下する。あるいは、別の方策として、マグネットローラ60を成型する段階で、バリ70を発生させないようにする場合は、きめ細かく前記クリアランスを管理する必要があり、そのためのメンテナンス、例えば、前記摺動面の再コーティングと研磨を定期的に行う必要がありコストアップを招いていた。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、マグネットローラの本体部周面の端部のバリの発生を抑制し、バリ取り作業に伴う生産性の低下を防止し、もしくは、バリを発生させないための、金型の管理・修理に要する費用を抑制できるマグネットローラ成型用金型を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明はなされたものであり、その要旨構成ならびに作用を以下に示す。
【0014】
請求項1に記載のマグネットローラの成型用金型は、円柱状の本体部と、この本体部の両端から突出する小径軸部とを具えるマグネットローラのキャビティを、ローラ本体部の周面を形成する一体の金型本体と、ローラ小径軸部の外表面およびこの外表面に連続する本体部の端面を形成するそれぞれの入れ子とで形成してなるマグネットローラ成型用金型において、前記入れ子として、前記金型本体に固定される固定入れ子と、移動可能に設けた可動入れ子とを含み、前記金型本体に設けた、前記ローラ本体部の周面を画定する前記キャビティの本体部周面形成部より大きい径とした拡径部分で、前記キャビティの軸線を通るいずれの断面においても、前記それぞれの入れ子と前記金型本体との隣接面の接線、キャビティ表面との交点を始点とすると共に、キャビティの軸線に対して直交もしくは傾斜させてなるものである。
【0015】
本発明にかかるマグネットローラの成型用金型によると、キャビティの軸線を通るいずれの断面においても、それぞれの入れ子と金型本体との隣接面を、キャビティ表面との交点において、キャビティの軸線に対して傾斜させているので、入れ子が金型本体に固定して取り付けられた固定入れ子の場合、磨耗によってこの交点部分にバリが発生しても、成型したマグネットローラを金型から取り出す際、このバリは金型側に残り、製品側には残らない。
【0016】
また、入れ子が金型本体に対して移動可能に設けられた可動入れ子の場合は、この入れ子と金型本体との隣接面は、金型閉止時の締付け面となり、前記交点部分が磨耗したとしても、締付け力により、交点部分のキャビティの突出を抑えるので、この部分にバリが発生することはない。
【0017】
よって、固定入れ子、可動入れ子のいずれの場合にも、入れ子と金型本体との隣接面とキャビティとが交わる部分に対応するマグネットローラの表面部分に発生するバリを抑制することができる。
【0018】
請求項2に記載のマグネットローラの成型用金型は、請求項1に記載するところにおいて、前記隣接面の接線をキャビティの軸線に対して直交させてなるものである。
【0019】
このマグネットローラの成型用金型は、前記隣接面の接線をキャビティの軸線に対して直交させたので、バリの発生を、より一層確実に抑制することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るマグネットローラの成型用金型を示す断面図である。
【0021】
金型10のキャビティ15は、図3に示すマグネットローラ60の本体部61の周面66を形成する本体部周面形成部16を有する一体の金型本体11と、マグネットローラ60の両方の小径軸部62、63の外表面とこれらの外表面に連続する本体部61のそれぞれの端面67とを形成する反ゲート側入れ子12およびゲート側入れ子13とにより形成される。
【0022】
反ゲート側入れ子12は、金型本体11に固定して取り付けられ、ゲート側入れ子13は、樹脂材料を注入するゲートを有するとともに、金型本体11に対してその軸線方向と平行に移動可能に設けられていて、マグネットローラ60の成型後、マグネットローラ60を金型10から取り出す際、図1の右方に変位して、成型したマグネットローラ60を右方に引き出せるよう構成されている。
【0023】
また、それぞれの入れ子12、13を、金型本体11の、本体部周面形成部16の径より大きい径の面19に嵌入して、キャビティ15を形成していて、キャビティ15の軸線を通るいずれの断面においても、金型本体11と入れ子12、13との隣接面17、18の接線は、キャビティ15の表面との交点において、すべて軸線と直角の方向を向いている。
【0024】
この金型10において、反ゲート側入れ子12と金型本体11との隣接面17の隙間は、軸線と直角の方向に向いて、キャビティ15に開口し、よって、この開口部が、経時磨耗に伴い広くなったとしても、ここに発生するバリは、キャビティの軸線と直角の方向に延在するバリであるので、マグネットローラ60を取り出す際、バリは金型に残る。
【0025】
一方、ゲート側入れ子13と金型本体11との隣接面18も、その隙間がキャビティ15に開口する部分は、磨耗によって広くなるが、この隣接面17には、金型閉止時、締付け力が作用し、この広がった開口部を締付けて狭めるので、この部分でのバリの発生を防ぐことができる。
【0026】
よって、両方の入れ子12、13のいずれについても、金型本体11との隣接面17、18の隙間を、軸線と直角の方向に向けて、キャビティ15に開口させることにより、成型後のマグネットローラ60にバリを残るのを抑制することができる。
【0027】
図2は、本発明に係る他の実施形態のマグネットローラ成型用金型30を示す断面図である。この金型30では、キャビティ35の軸線を通るいずれの断面においても、金型本体31と両方の入れ子32、33とのそれぞれの隣接面37、38の接線を、キャビティ35の表面において、軸線に対して、直角ではなく、緩やかに傾斜させている点だけが、前述の実施形態と異なっているが、この場合も同様の効果をもたらすことは、前述の説明の通り、明らかである。
【0028】
そして、この実施形態では、隣接面37、38をコーン状に形成しているので、これらの隣接面によって、金型本体31とそれぞれの入れ子32、31との位置決めを、軸方向だけでなく、半径方向に対しても同時に行わせることができ、よって、簡易に金型を構成することができる。
【0029】
【実施例】
図5に、ショット数とバリ高さの関係を評価結果として示した、従来の金型で成型した実験を比較例として、同じマグネットローラを、図1に示す実施形態の金型を用いて成型し、バリの高さを測定した。測定結果は、2万5千回のショットの後でも、金型10の本体部周面形成部16の端部には、測定可能な高さのバリを観察できなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたところから明らかなように、本発明によれば、キャビティの軸線を通るいずれの断面においても、金型本体と両方の入れ子とのそれぞれの隣接面の接線を、キャビティ表面との交点において、キャビティの軸線に対して直交もしくは傾斜させたので、本体部周面端部にバリを発生させないマグネットローラを成型することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施形態のマグネットローラの成型用金型を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る他の実施形態のマグネットローラの成型用金型を示す断面図である。
【図3】 一体成型マグネットローラを示す正面図である。
【図4】 従来のマグネットローラの成型用金型を示す断面図である。
【図5】 従来のマグネットローラにおけるショット数とバリの高さの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10、30 金型
11、31 金型本体
12、32 反ゲート側入れ子
13、33 ゲート側入れ子
15、35 キャビティ
16 本体部周面形成部
17、18、37、38 金型本体と入れ子との隣接面
60 マグネットローラ
61 本体部
62、63 小径軸部
66 本体部周面
67 本体部端面
70 バリ

Claims (2)

  1. 円柱状の本体部と、この本体部の両端から突出する小径軸部とを具えるマグネットローラのキャビティを、ローラ本体部の周面を形成する一体の金型本体と、ローラ小径軸部の外表面およびこの外表面に連続する本体部の端面を形成するそれぞれの入れ子とで形成してなるマグネットローラ成型用金型において、
    前記入れ子として、前記金型本体に固定される固定入れ子と、移動可能に設けた可動入れ子とを含み、
    前記金型本体に設けた、前記ローラ本体部の周面を画定する前記キャビティの本体部周面形成部より大きい径とした拡径部分で、
    前記キャビティの軸線を通るいずれの断面においても、前記それぞれの入れ子と前記金型本体との隣接面の接線、キャビティ表面との交点を始点とすると共に、キャビティの軸線に対して直交もしくは傾斜させてなるマグネットローラの成型用金型。
  2. 前記隣接面の接線をキャビティの軸線に対して直交させてなる請求項1に記載のマグネットローラの成型用金型。
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