JP4798745B2 - 弾性ホイール - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、車両の車輪に用いられる弾性ホイールに関し、詳しくは乗り心地性能、防振性能および防音性能に優れ、しかも操縦安定性に優れた弾性ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性ホイールは、一般に車軸ハブに固着されるディスクとタイヤを支承するリムとを備えており、かかるディスクとリムとの間に防振体を設け、防振性能や乗り心地性能を高めた弾性ホイールはこれまで種々提案されている。例えば、実開昭59−188701号公報には、防振体としてばねを用いて乗り心地の向上を図ったタイヤ用ホイールが提案されている。
【0003】
また、防振体としてゴムを使用し、これをリムとディスクとの間に配置したものも知られており、例えば、実開昭57−73203号公報に、リムがゴム様弾性体を介してディスクに連結される構成の弾性ホイールが提案されている。さらに、特開平5−338401号公報には、リムと弾性ホイールとの間に隙間を形成し、そこに防振ゴムを介装させた弾性ホイールが開示されている。さらにまた、WO98/33666号公報には、リムと同一プロファイルを有する内側リムとリムとの間にゴムの環状ストリップを配置したホイール・バリア組立体が開示されている。
【0004】
しかしながら、防振体としてゴムを使用し、これをリムとディスクとの間に一様に配置した従来の弾性ホイールにおいては、リムの内周面とディスクの外周面との間に夫々に加硫接着されたゴム弾性体が配設されているため、このゴム弾性体によりリムからディスクに伝わる軸方向、径方向および回転方向の各振動を的確に抑制することができるものの、大荷重時のゴム弾性体の変位を抑制することはできないという問題があった。すなわち、ゴムの断面が一様であり、小入力時から大入力時までそれぞれにおいて適切な振動防止特性を得ることが困難であった。この点について、防振体としてばねを用いても同様の問題があった。
【0005】
また、リムとディスクとの間に配置するゴムと防音性能および操縦安定性との関係については必ずしも明確にされておらず、防音および操縦安定性の面ではなお改良の余地があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、小入力時から大入力時に至るまで、耐久性、安全性、さらには操縦安定性を損なうことなく乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を図った弾性ホイールを提供することにある。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、防振体としてのゴム弾性体の特徴を活かしつつ前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成とすることにより前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の弾性ホイールは下記に示す通りである。
【0008】
即ち、本発明は、ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールであって、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも狭く、かつ前記一対のガイドのホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略U字状をなし、該略U字状のガイドの内周面に、前記ディスクまたは前記ベースリムの外周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、かつ、前記略U字状のガイドの内周面に介装されたゴム弾性体と、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に形成されたゴム弾性体と、が一体となり、一体となった該ゴム弾性体の内周面に少なくとも1枚のベルトが環状に配設されているか、あるいは、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも広く、かつ前記一対の壁部のホイール半径方向外方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略逆U字状をなし、該略逆U字状の壁部の外周面に、前記リムの内周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、かつ、前記略逆U字状の壁部の外周面に介装されたゴム弾性体と、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に形成されたゴム弾性体と、が一体となり、一体となった該ゴム弾性体の外周面に少なくとも1枚のベルトが環状に配設されていることを特徴とする弾性ホイールである。
【0009】
これにより、設置されたゴム弾性体の剪断変形で振動を吸収し、特に、小入力に対して乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を図ることができる。また、防音性能については100Hz以上の高周波数領域の防音に極めて効果的である。さらに、ゴム弾性体に配設した少なくとも1枚のベルトにより、単にゴム弾性体のボリュームアップを図った場合に比し、ホイール偏心方向のばね定数に対しホイール軸方向およびねじり方向のばね剛性比が高くなり、操縦安定性が向上する。また、大入力に対しては略U字状のガイドの内周面または略逆U字状の壁部の外周面に設置されたゴム弾性体の圧縮作用により大変形を防止することができる。
【0010】
また、前記弾性ホイールにおいて、前記ベルトがゴム中にスチールコードが埋設されてなるスチールベルトであることが好ましく、特に好ましくは、前記スチールベルトの打込み角度がホイール周方向に対し略直角である。これにより、上述の発明の効果をより確実に得ることができ、特には軸方向のばね剛性比を良好に高めることができる。
【0011】
また、本発明は、ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールにおいて、前記ゴム弾性体が固着されている前記側面のいずれか一方または双方が凹凸を有することを特徴とする弾性ホイールである。
【0012】
これにより、設置されたゴム弾性体の剪断変形で振動を吸収し、特に、小入力に対して乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を図ることができる。また、防音性能については100Hz以上の高周波数領域の防音に極めて効果的である。さらに、ゴム弾性体が固着される面に凹凸を形成せしめたことで固着面積が広くなり、平坦な面の場合に比し、より強固にゴム弾性体を固着させることができるとともに、ホイールのねじり剛性が向上し、操縦安定性の改善が可能となる。
【0013】
ここで、前記凹凸は波形であることが好ましい。これにより、ゴム弾性体が固着されるガイドおよび壁部の強度を損なうことなく、上述の効果を確実に得ることができ、また、ホイールの上下方向の剛性上昇が抑えられ、防音性能および乗り心地性能を保つことができる。また、前記ゴム弾性体が固着されている前記側面の双方に凹凸を有し、対向する面同士の凹凸が互い違いになっていることが好ましい。これにより、ゴム弾性体の剪断変形を効果的に行わしめることができ、上述の効果を確実に得ることができ、また、ホイールの上下方向の剛性を小さくし、かつ周方向での剛性のバラツキを抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールにおいて、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも狭く、かつ前記一対のガイドのホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略U字状をなし、該略U字状のガイドの内周面に、前記ディスクまたは前記ベースリムの外周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、該ゴム弾性体が、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に介装されたゴム弾性体と一体となっており、かつ、一体となった前記ゴム弾性体内に、ホイール周方向に沿ってスプリングが巻回されていることを特徴とする弾性ホイールであるか、あるいは、ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面に環状に固設された一対の壁部と、前記リムの内周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対のガイドとを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールにおいて、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも広く、かつ前記一対の壁部のホイール半径方向外方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略逆U字状をなし、該略逆U字状の壁部の外周面に、前記リムの内周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、該ゴム弾性体が、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に介装されたゴム弾性体と一体となっており、かつ、一体となった前記ゴム弾性体内に、ホイール周方向に沿ってスプリングが巻回されていることを特徴とする弾性ホイールである。
【0015】
これにより、設置されたゴム弾性体の剪断変形で振動を吸収し、特に小入力に対して乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を図ることができるとともに、ゴム弾性体内に埋設されたスプリングの作用により、上下方向に比して横と周方向のホイール剛性を高めることで、操縦安定性を高めることができる。また、防音性能については100Hz以上の高周波数領域の防音に極めて効果的である。
【0016】
ここで、前記弾性ホイールにおいて、前記スプリングが、前記ゴム弾性体内においてホイール軸方向の全幅にわたって巻回されていることが好ましい。これにより、ゴム弾性体に掛かる負荷に対する抗力を一様に高めることができ、最も良好に上述の効果を得ることができる。また、前記スプリングの巻回数が、ホイール軸方向の幅10mm当たり2〜9回であることが好ましく、また、前記スプリングの鋼線の断面積が0.8〜7mm2であることが好ましい。これにより、埋設するスプリングの最適化を図ることができ、適切に剛性の調整を図ることが可能となる。更に、前記スプリングの鋼線の断面形状は矩形状とすることができ、この場合も、剛性の向上効果を良好に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1図に示す本発明の一実施の形態に係る弾性ホイールは、車軸ハブ(図示せず)に固着されるディスク1がベースリム2を備えている。ディスク1とベースリム2とは一体的に成型されたもの、あるいはスポークやメッシュ等の支持体と組合わせたスポークホイールやメッシュホイール等であってもよい。ディスク1の材質は、スチール、アルミニウム、マグネシウム、合成樹脂等、いずれの材質でもよいが、軽量化に主眼を置くときはアルミニウムまたは合成樹脂が好ましい。
【0018】
また、タイヤ20を支持するリム3の内周面には一対のガイド4が環状に固設され、一対のガイド4のホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が全体として略U字状をなしている。かかるガイド4は、ホイール軸方向断面を略U字状とすることによりその内周面4aと、後述するゴム弾性体7と相まって大入力に対するストッパの機能を果たす。リム3の形状は特に制限されるべきものではなく、規格品以外に、両端でリム径が異なるもの等、その用途に応じ適宜選定することができる。また、かかる一対のガイド4を、リム3のホイール軸方向断面を凹状に、すなわちホイール半径方向内方に突出させることにより形成せしめてもよい。
【0019】
ベースリム2の外周面上における軸方向両端には一対の壁部5がガイド4間のホイール軸方向の幅よりも広い状態で環状に固設されており、ガイド4の両外面と壁部5の両内面との間にそれぞれ、例えば、加硫接着等の接着手段により接着されたゴム弾性体6が環状に介装され、このゴム弾性体6の外周面には、第2図に拡大して示すようにベルト8が配設されている。
【0020】
本発明においてベルト8の配置箇所は、必ずしもゴム弾性体6の外周面に限定されるものではなく、内周面でもよく、さらにはベルト8の上下面にゴム弾性体を配置してもよい。また、図示する例ではゴム弾性体6のホイール軸方向全幅にわたりベルト8が配設されているが、部分的であってもベルト配設による効果を得ることができる。さらに、ベルト8のコード打込み角度によって、ホイール軸方向およびねじり方向のばね剛性比の上昇割合が異なるため、用途に応じ適宜コード打込み角度を選定することが好ましい。さらにまた、ベルト8は1枚に限定されず、複数枚を積層して用いてもよい。この際、上下のベルト間で埋設コード9を交差させることで、ホイール軸方向およびねじり方向のばね剛性比を適切な関係で高めることができる。
【0021】
本発明において使用し得るベルト8は、ラジアルタイヤ等において使用されているベルトと同様のものを使用することができ、例えば、補強コード9としてはスチールコードの他、アラミド繊維の如き有機繊維コードを使用することができる。また、コード打込み数についてもラジアルタイヤ等において慣用されている範囲内とすることができる。さらに、被覆ゴム10についても特に制限されるべきものではないが、ゴム弾性体6と同種のゴムまたはこのゴム弾性体6との接着性が良好なゴムを選択することが好ましい。
【0022】
第1図に示す好適例においては、ガイド4の内周面4aとベースリム2の外周面との間にもゴム弾性体7が環状に介装されている。このゴム弾性体7はベースリム2の外周面に、例えば加硫接着等の接着手段により接着され、ガイド4の内周面4aとの間には隙間が存在する。あるいは、ゴム弾性体7をガイド4の内周面4aに接着させ、ベースリム2の外周面との間に隙間を設けてもよい。
【0023】
次に、本発明の他の実施の形態に係る弾性ホイールについて説明する。この好適例は、第3図に示すように、ベースリム2の外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に固設される一対の壁部5間のホイール軸方向の幅が一対のガイド4間のホイール軸方向の幅よりも狭くなっている場合である。この場合は、ガイド4の両内面と壁部5の両外面との間にそれぞれゴム弾性体6が環状に介装され、また、一対の壁部5のホイール半径方向外方端部同士を図示するように結合させ一体的にしてホイール軸方向断面を略逆U字状とし、かかる壁部5間に形成された外周面5aとリム3の内周面との間にもストッパとしてのゴム弾性体6が環状に介装させている。ここで、壁部5は、ディスク1の外周面に直接形成せしめてもよく、例えば、ディスク1の外周面に周方向に環状に凸部を形成せしめることにより壁部を設けてもよい。
【0024】
ゴム弾性体6は、第3図に示すように、ゴム弾性体6を外周面5a上まで延在せしめて両者を一体化させることによりストッパとしての機能を併せ持つようにしてある。これにより、第1図に示す本発明の好適例である弾性ホイールと全く同様の効果を得ることができる。すなわち、入力がさほど大きくないときはゴム弾性体6の剪断作用により乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を十分に図ることができる。また、入力が大きくなったときは外周面5a上のゴム弾性体6の圧縮作用により大変形を防止することができる。
【0025】
また、第3図に示す好適例においては、ベルト8が、ガイド4間に一体的に形成されたゴム弾性体6の外周面に配設されている。ベルト8の構造および配置は上述の場合と同様に用途等に応じ適宜選定すればよく、これにより防振、防音効果とともに所望の操縦安定性を得ることができる。
【0026】
第4図に示す本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールは、車軸ハブ(図示せず)に固着されるディスク101がベースリム102を備えている。ディスク101とベースリム102とは一体的に成型されたもの、あるいはスポークやメッシュ等の支持体と組合わせたスポークホイールやメッシュホイール等であってもよい。ディスク101の材質は、スチール、アルミニウム、マグネシウム、合成樹脂等、いずれの材質でもよいが、軽量化に主眼を置くときはアルミニウムまたは合成樹脂が好ましい。
【0027】
また、タイヤ120を支持するリム103の内周面には一対のガイド104が環状に固設され、一対のガイド104のホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が全体として略U字状をなしている。かかるガイド104は、ホイール軸方向断面を略U字状とすることによりその内周面104aと、後述するゴム弾性体107と相まって大入力に対するストッパの機能を果たす。リム103の形状は特に制限されるべきものではなく、規格品以外に、両端でリム径が異なるもの等、その用途に応じ適宜選定することができる。また、かかる一対のガイド104を、リム103のホイール軸方向断面を凹状に、すなわちホイール半径方向内方に突出させることにより形成せしめてもよい。
【0028】
ベースリム102の外周面上における軸方向両端には一対の壁部105がガイド104間のホイール軸方向の幅よりも広い状態で環状に固設されており、ガイド104の両外面と壁部105の両内面との間にそれぞれ、例えば、加硫接着等の接着手段により接着されたゴム弾性体106が環状に介装されている。
【0029】
本発明においては、ガイド104の両外面と壁部105の両内面との間にそれぞれ凹凸を有することが重要であり、これにより平坦な面の場合に比しゴム弾性体との接着面を増大させ、より強固にゴム弾性体を加硫等により固着させることが可能となる。凹凸形状は特に制限はないが、加工性および強度等の面から、波形とすることが好ましい。具体的には、第4図のA−A線に沿う周方向断面を示す第5図の(イ)〜(ニ)に見られるような凹凸とすることができる。この際、対向する面同士の凹凸を互い違いとすることが、ゴム弾性体106の剪断変形を効果的に行わしめ、ホイールの上下方向の剛性上昇を抑え、かつ周方向での剛性のバラツキを抑えることができ、好ましい。尚、第5図の(ニ)に見られるような凹凸の場合は、当該凹凸を周上に等間隔で数箇所、好ましくは6〜8箇所設ければよい。
【0030】
第4図に示す好適例においては、ガイド104の内周面104aとベースリム102の外周面との間にもゴム弾性体107が環状に介装されている。このゴム弾性体107はベースリム102の外周面に、例えば加硫接着等の接着手段により接着され、ガイド104の内周面104aとの間には隙間が存在する。あるいは、ゴム弾性体107をガイド104の内周面104aに接着させ、ベースリム102の外周面との間に隙間を設けてもよい。
【0031】
本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールは、第6図に示すように、ベースリム102の外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に固設される一対の壁部105間のホイール軸方向の幅が一対のガイド104間のホイール軸方向の幅よりも狭くなっている場合である。この場合は、ガイド104の両内面と壁部105の両外面との間にそれぞれゴム弾性体106が環状に介装される。また、一対の壁部105のホイール半径方向外方端部同士を図示するように結合させ一体的にしてホイール軸方向断面を略逆U字状とし、かかる壁部105間に形成された外周面105aとリム103の内周面との間にストッパとしてのゴム弾性体を環状に介装させる。ここで、壁部105は、ディスク101の外周面に直接形成せしめてもよく、例えば、図示はしないが、ディスク101の外周面に周方向に環状に凸部を形成せしめることにより壁部を設けてもよい。
【0032】
ゴム弾性体を環状に介装させる仕方は、例えば、ゴム弾性体をリム103の内周面に接着させ、壁部の外周面105aとの間に隙間を設けるか、あるいは、ゴム弾性体を外周面105aに接着させ、リム103の内周面との間に隙間を設ける手法の他、第6図に示すように、一対のゴム弾性体106を外周面105a上まで延在せしめて両者を一体化させることによりストッパとしての機能を併せ持つようにしてもよい。これにより、第4図に示す本発明の好適例である弾性ホイールと全く同様の効果を得ることができる。すなわち、入力がさほど大きくないときはゴム弾性体106の作用により乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を十分に図ることができる。また、入力が大きくなったときは外周面105a上のゴム弾性体106の圧縮作用により大変形を防止することができる。
【0033】
ここで、本発明においては、少なくともガイド104の両内面にそれぞれ凹凸を有することが重要である。具体的には、第6図のB−B線に沿う周方向断面を示す第7図の(イ)および(ロ)に見られるような凹凸とすることができる。(イ)においては、ガイド104の両内面に凹凸を設け、壁部105の外面は平坦なままである。一方、(ロ)においては、ガイド104の両内面と壁部105の外面の双方に凹凸を設けてある。なお、凹凸の形状については上述の好適例と同様に特に限定されるべきものではない。
【0034】
第8図に示す本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールは、車軸ハブ(図示せず)に固着されるディスク201がベースリム202を備えている。ディスク201とベースリム202とは、第9図または第10図に示すように一体的に成型されたものでもよく、またスポークやメッシュ等の支持体と組合わせたスポークホイールやメッシュホイール等であってもよい。ディスク201の材質は、スチール、アルミニウム、マグネシウム、合成樹脂等、いずれの材質でもよいが、軽量化に主眼を置くときはアルミニウムまたは合成樹脂が好ましい。
【0035】
また、タイヤ220を支持するリム203の内周面上におけるホイール軸方向両側部領域には、一対のガイド204が環状に固設されている。リム203の形状は特に制限されるべきものではなく、規格品以外に、両端でリム径が異なるもの等、その用途に応じ適宜選定することができる。また、かかる一対のガイド204を、リム203のホイール軸方向断面を凹状に、すなわちホイール半径方向内方に突出させることにより形成せしめてもよい。
【0036】
さらに、ベースリム202の外周面には、一対の壁部205がガイド204間のホイール軸方向の幅よりも狭い状態で環状に固設され、一対の壁部205のホイール半径方向外方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略逆U字状をなし、ガイド204の両内側面と壁部205の両外側面との間にそれぞれ、例えば、加硫接着等の接着手段により接着されたゴム弾性体206が環状に介装されている。このゴム弾性体206は、図示するように、壁部205間に形成された略逆U字状の外周面にまで延在し、リム203の内周面との間にも、間に隙間をもってゴム弾性体206が存在し、大入力に対するストッパとしての働きをする。なお、壁部205は、第9図および第10図に示すように、ディスク201の外周面に環状に凸部を設けることにより形成せしめることもできる。
【0037】
第8図に示す好適例においては、一体となって一対のガイド204間にわたり介装されているゴム弾性体206の内部に、ホイール周方向に沿ってスプリング207が巻回されている。このスプリング207により、上下方向に比較して横と周方向の剛性を高めることができ、ゴム弾性体206の剪断変形で振動を吸収することによる小入力時の乗り心地性能、防振性能および防音性能向上効果に加え、操縦安定性の向上が可能となる。これにより、本発明においては、小入力時から大入力時までの各性能を良好に向上することができる。
【0038】
また、図示する場合とは逆に、リム203の内周面に固設される一対のガイド204間のホイール軸方向の幅が一対の壁部205間のホイール軸方向の幅よりも狭く、ガイド204のホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略U字状をなしている場合には、ガイド204の両外側面と壁部205の両内側面との間にそれぞれゴム弾性体206を環状に介装し、さらに、該略U字状のガイド204の内周面までゴム弾性体206を延在させて、ベースリム202の外周面との間に、隙間をもってゴム弾性体206を存在させる。この場合にも、一体となって一対の壁部205間にわたり介装されているゴム弾性体206の内部に、スプリング207を埋設することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0039】
スプリング207の仕様や配置、配設層数等には特に制限はなく、所望の剛性が得られるよう適宜選択することが可能である。特には、ゴム弾性体206に掛かる負荷に対する均一な剛性向上効果を得るために、スプリング207をゴム弾性体206内においてホイール軸方向の全幅にわたって一様に巻回することが好ましいが、第10図に示すように、ホイール軸方向の幅においてベースリム202および壁部205と一体化したディスク201の存在しない、ゴム弾性体206の両側部領域のみに設けてもよい。使用するスプリングとしては、巻回数が、ホイール軸方向の幅10mm当たり2〜9回であるものが好ましい。また、スプリングの鋼線の断面形状は、第8図および第10図に示す円形状よりも第9図の矩形状の方がより剛性向上効果が高いが、疲労耐久性においてはやや劣る。さらに、鋼線の断面積は、好ましくは0.8〜7mm2である。
【0040】
図8〜10に示す好適例においては、ゴム弾性体206は、略逆U字状の壁部205の両外側面とガイド204の両内側面との間から、略逆U字状の壁部205の外周面まで延在して介装されているために、入力が大きくなったときは壁部205の外周面とリム203の内周面との間でストッパとしての機能をも有し、入力がさほど大きくないときは壁部205とガイド204との間のゴム弾性体206の剪断作用により乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を十分に図ることができる一方、この部分のゴム弾性体206の圧縮作用により大変形を防止する役割をも担うことができる。
【0041】
本発明において使用し得るゴム弾性体は、防振ゴムとして既知のものを用いることができ、天然ゴムや合成ゴム、例えば、ブタジエンゴム、スチレンブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム等のジエン系ゴムに適宜配合剤、例えば、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤、カーボンブラック等を適宜配合することにより調製することができる。かかるゴム弾性体のJIS−A硬度(Hd)は、振動吸収特性と耐久性の観点から、好ましくは30〜80°であり、弾性率は1×103〜1×105N/cm2である。
【0042】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
実施例1
下記の条件にて第3図に示す構造を有する弾性ホイールを作製した。
(リム)
サイズ :15インチ
幅 :5.5J
(ゴム弾性体)
寸法 :縦11mm、横15mm
JIS−A硬度:60°
弾性率 :4×104N/cm2
リムとベースリムとの間のホイール半径方向距離:25mm
ゴム弾性体6の外周面とリム3の内周面との距離:6mm
(ベルト)
ベルト枚数 :1枚
コード :スチールコード(1×5×0.23(mm))
コード打込み角度 :周方向に対し90°
コード打込み数 :36本/50mm
埋設ゴム :上記ゴム弾性体と同種
【0043】
実施例2
ベルト8のコード打込み角度を周方向に対し45°とした以外は実施例1と同様にして弾性ホイールを作製した。
【0044】
実施例3
ベルトのコード打込み角度を周方向に対し0°とした以外は実施例1と同様にして弾性ホイールを作製した。
【0045】
比較例1
ベルト8を設けなかった以外は実施例1と同様にして弾性ホイールを作製した。
【0046】
実施例1〜3および比較例1の弾性ホイールについて、弾性部の上下ばね、ホイール軸方向ばねおよびねじりばねの定数を夫々測定したところ、下記の第1表に示すような結果となった。
【0047】
【0048】
また、実施例1〜3および比較例1の弾性ホイールにサイズ185/55R15のタイヤを装着して操縦安定性について評価したところ、いずれの実施例のゴム弾性ホイールも比較例の弾性ホイールに比し、操縦安定性の面で優れていることが確かめられた。なお、実施例および比較例の弾性ホイールはともに、小入力時にはゴム弾性体の剪断変形により振動を吸収し、かつ大入力時にはもう一方のゴム弾性体の圧縮入力により大変形を抑制することができ、また、防音特性試験の結果では、100Hz以上の高周波数領域の防音に極めて効果的であることがわかった。
【0049】
実施例4
下記の条件にて第6図に示す構造を有し、第7図の(イ)に示す形状のゴム弾性体が環状に介装された弾性ホイールを試作し、これにサイズ185/55R15のタイヤを装着して振動吸収特性、防音性能および耐久性について評価した。
(リム)
サイズ :15インチ
幅 :5.5J
(ゴム弾性体)
寸法 :縦11mm、横15mm
JIS−A硬度:60°
弾性率 :4×104N/cm2
リムとベースリムとの間のホイール半径方向距離:25mm
ゴム弾性体106の外周面とリム103の内周面との距離:6mm
【0050】
比較例2
また、比較のために、ガイド104の両内面と壁部105の両外面をともに平坦なままとした以外は実施例と同様にして弾性ホイールを試作した。
【0051】
実施例4および比較例2の弾性ホイールともに、小入力時にはゴム弾性体の剪断変形により振動を吸収し、かつ大入力時にはもう一方のゴム弾性体の圧縮入力により大変形を抑制することができることが確かめられたが、実施例4のゴム弾性体106の方が比較例2のそれに比し、より強固にガイド104の両内面に固着されていることが確かめられた。また、実施例4の弾性ホイールの方が比較例2の弾性ホイールよりも操縦安定性および乗り心地性に優れていた。さらに、実施例4および比較例2の弾性ホイールともに、防音特性試験の結果、100Hz以上の高周波数領域の防音に極めて効果的であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明してきたように、本発明の弾性ホイールは、小入力時から大入力時に至るまで、耐久性、安全性、さらには操縦安定性を損なうことなく乗り心地性能、防振性能および防音性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第2図は、第1図の円内の拡大図である。
第3図は、本発明の他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第4図は、本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第5図は、第4図のA−A線に沿う断面図である。
第6図は、本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第7図は、第6図のB−B線に沿う断面図である。
第8図は、本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第9図は、本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
第10図は、本発明の更に他の実施の形態に係る弾性ホイールの拡大部分断面図である。
Claims (13)
- ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールであって、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも狭く、かつ前記一対のガイドのホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略U字状をなし、該略U字状のガイドの内周面に、前記ディスクまたは前記ベースリムの外周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、かつ、前記略U字状のガイドの内周面に介装されたゴム弾性体と、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に形成されたゴム弾性体と、が一体となり、一体となった該ゴム弾性体の内周面に少なくとも1枚のベルトが環状に配設されていることを特徴とする弾性ホイール。
- ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールであって、前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも広く、かつ前記一対の壁部のホイール半径方向外方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略逆U字状をなし、該略逆U字状の壁部の外周面に、前記リムの内周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、かつ、前記略逆U字状の壁部の外周面に介装されたゴム弾性体と、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に形成されたゴム弾性体と、が一体となり、一体となった該ゴム弾性体の外周面に少なくとも1枚のベルトが環状に配設されていることを特徴とする弾性ホイール。
- 前記ベルトがゴム中にスチールコードが埋設されてなるスチールベルトである請求項1または2記載の弾性ホイール。
- 前記スチールベルトの打込み角度がホイール周方向に対し略直角である請求項3記載の弾性ホイール。
- 前記ゴム弾性体が固着されている前記側面のいずれか一方または双方が凹凸を有する請求項1または2記載の弾性ホイール。
- 前記凹凸が波形である請求項5記載の弾性ホイール。
- 前記ゴム弾性体が固着されている前記側面の双方に凹凸を有し、対向面同士の凹凸が互い違いになっている請求項5または6記載の弾性ホイール。
- ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記リムの内周面に環状に固設された一対のガイドと、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対の壁部とを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールにおいて、
前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも狭く、かつ前記一対のガイドのホイール半径方向内方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略U字状をなし、該略U字状のガイドの内周面に、前記ディスクまたは前記ベースリムの外周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、該ゴム弾性体が、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に介装されたゴム弾性体と一体となっており、かつ、
一体となった前記ゴム弾性体内に、ホイール周方向に沿ってスプリングが巻回されていることを特徴とする弾性ホイール。 - ディスクと、タイヤを支承するリムとを備えた弾性ホイールであって、前記ディスクまたは該ディスクの外周面に配置されたベースリムの外周面に環状に固設された一対の壁部と、前記リムの内周面上におけるホイール軸方向両側部領域に環状に固設された一対のガイドとを有し、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に、それぞれゴム弾性体が環状に介装されている弾性ホイールにおいて、
前記一対のガイド間のホイール軸方向の幅が前記一対の壁部間のホイール軸方向の幅よりも広く、かつ前記一対の壁部のホイール半径方向外方端部同士が結合してホイール軸方向断面が略逆U字状をなし、該略逆U字状の壁部の外周面に、前記リムの内周面との間に隙間をもってゴム弾性体が環状に介装され、該ゴム弾性体が、前記ガイドの側面と前記壁部の側面との間に環状に介装されたゴム弾性体と一体となっており、かつ、
一体となった前記ゴム弾性体内に、ホイール周方向に沿ってスプリングが巻回されていることを特徴とする弾性ホイール。 - 前記スプリングが、前記ゴム弾性体内においてホイール軸方向の全幅にわたって巻回されている請求項8または9記載の弾性ホイール。
- 前記スプリングの巻回数が、ホイール軸方向の幅10mm当たり2〜9回である請求項8〜10のうちいずれか一項記載の弾性ホイール。
- 前記スプリングの鋼線の断面形状が矩形状である請求項8〜11のうちいずれか一項記載の弾性ホイール。
- 前記スプリングの鋼線の断面積が0.8〜7mm2である請求項8〜12のうちいずれか一項記載の弾性ホイール。
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