JP4797251B2 - アゾ化合物の異性体分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の異性体混合物を、安全且つ効率よく分離取得する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子分野では、重合率の向上を目的として、重合速度を早める研究が行われている。
【0003】
一方、低温活性アゾ化合物は、有用な重合開始剤であり、ラセミ体とメソ体の異性体混合物として存在し、通常混合物のまま使用されているが、ラセミ体の方が、メソ体よりも有機溶媒に対する溶解度が高いことが知られている。
【0004】
従って、このようなアゾ化合物の異性体混合物からラセミ体を分離取得し、これを重合開始剤として使用すれば、当該ラセミ体の有機溶媒に対する溶解度が高いことから、反応溶媒中の重合開始剤濃度が高くなり、重合速度を早めることが可能となる。
【0005】
さらに、当該アゾ化合物は、ラジカル反応開始剤としても有用な化合物であり、室温下、ラジカル付加反応を特異的に進行させるため、光反応に変わるラジカル反応開始剤としても利用可能である。この目的にもラセミ体の方が好ましいことが知られており、これは当該アゾ化合物のトランス体−シス体の異性化という立体構造上の違いによるものと考えられているが、詳細は明らかではない。
【0006】
即ち、例えばブロモマロノニトリル(BrCH(CN)2)と2,3-ジメチル-2-ブテンを、当該アゾ化合物のラセミ体をラジカル開始剤として用いてラジカル付加反応させると、95%の収率で目的とする付加体が得られるのに対し、同一条件下で、メソ体をラジカル反応開始剤として用いると、7%しか付加体を得ることができない。
【0007】
以上の如く、低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の異性体混合物からラセミ体とメソ体を効率よく分離し、ラセミ体のみを重合開始剤やラジカル付加反応開始剤として使用したいという要望が高まっている現状にある。
【0008】
アゾ化合物のラセミ体とメソ体の異性体混合物よりラセミ体を分離する方法としては、低温活性アゾ化合物のラセミ体が、メソ体よりも有機溶媒に対する溶解性が高いことを利用して、アゾ化合物の異性体混合物からラセミ体をエーテルで抽出し、濾過により残存したメソ体を濾取し、一方、ラセミ体が溶解している濾液からエーテルを濃縮留去し、目的とするラセミ体を得る方法(Chim.Ind.(Milan) 1970, 52(11), 1116-20(Ital))等が知られている。
【0009】
しかし、この方法は、加熱操作を必要とするため、室温で不安定な低温活性アゾ化合物が分解してしまい、安全上好ましくないばかりか、引火性の高いエーテルを使用しているため、火災爆発の危険性を伴う等の問題点を有している。そこで、低温活性アゾ化合物の異性体混合物から、引火性の高いエーテルを使用せずに、低温下、ラセミ体を安全に、且つ効率よく分離する方法の開発が強く望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、安全且つ効率よく低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の異性体混合物からラセミ体とメソ体とを分離取得する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のラセミ体とメソ体の混合物をメタノールで抽出処理することを特徴とする、該ラセミ体とメソ体との分離方法の発明である。
【0012】
また、本発明は、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のラセミ体とメソ体の混合物をメタノールで抽出処理することを特徴とする、該ラセミ体の取得方法の発明である。
【0019】
即ち、本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式[1]で示される室温で不安定な低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の異性体混合物を水溶性有機溶媒で処理することにより、該ラセミ体とメソ体を安全且つ効率よく分離取得し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
一般式[1]に於いて、R1〜R4で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも分枝状或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、sec-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、tert-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
R5で示される低級アルコキシ基としては、直鎖状でも分枝状或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
これら一般式[1]で示されるアゾアミド化合物の具体例としては、例えば式[1]
【0023】
【化5】
【0024】
で示される2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製:商品名 V-70)、式[2]
【0025】
【化6】
【0026】
で示される2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製:商品名 V-65)等が挙げられ、中でも2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0027】
本発明の、低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の混合物から該ラセミ体とメソ体を分離取得する方法は、具体的には以下のようにして実施される。
【0028】
即ち、一般式[1]で示される低温活性アゾ化合物のラセミ体とメソ体の混合物を、低温下、水溶性有機溶媒に接触させ、ラセミ体を水溶性有機溶媒中に抽出する操作を行う。次いで、得られた懸濁液を濾過し、得られた濾液からラセミ体を晶析させる。一方、メソ体は、濾過操作により残存した結晶として得られる。このようにして、高純度の該ラセミ体及びメソ体が得られる。
【0029】
この際に用いられる水溶性有機溶媒は、ラセミ体に対する溶解度が高く、メソ体に対する溶解度が低いものが好ましく、具体的には、約20℃でのラセミ体の溶解度が25g/dl以上であって、メソ体の溶解度が6g/dl未満のもの、好ましくは、ラセミ体の溶解度が40g/dl以上であって、メソ体の溶解度が2g/dl未満のもの、より好ましくは、ラセミ体の溶解度が40g/dl以上であって、メソ体の溶解度が1g/dl未満のものが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール類、例えばアセトン,メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、中でもメタノールが好ましい。これらは夫々単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
水溶性有機溶媒の使用量は、使用するアゾ化合物のラセミ体とメソ体の比率、該アゾ化合物の使用量、抽出温度等により異なるが、通常、使用するアゾ化合物に対して1〜10倍重量 、好ましくは1〜5倍重量である。
【0031】
抽出温度は、低すぎると溶媒に対するラセミ体の溶解度が低くなり抽出効果が低下してしまい、高すぎると溶媒中に溶解しているラセミ体の分解が起きてしまうため、通常-10〜20℃、好ましくは5〜15℃である。
【0032】
ラセミ体の晶析は、通常この分野で行われる方法、例えばラセミ体を含む溶媒に、水を加えること等により行うことができる。
【0033】
晶析溶媒である水の使用量は、最終的に得ようとするラセミ体の理論量に対して通常1〜15倍重量である。
【0034】
尚、ラセミ体を晶析させた後、晶析物を水で、例えば練洗等により洗浄することにより、容易に高純度のラセミ体が得られる。
【0035】
晶析後は、脱液し、例えば減圧乾燥、送風乾燥等の通常行われる方法で処理し、高純度の目的物を得る。
【0036】
上記以外の反応操作及び後処理方法等は、通常行われる同種反応に準じて行われる。
【0037】
本発明の方法により得られた低温活性アゾ化合物のラセミ体は、温和な加熱又は光照射によって容易にアゾ基が分解し窒素ガスの発生と共にラジカル種を生じるので、その際に各種の重合性モノマーが存在すれば速やかに重合を起こす。更に、当該アゾ化合物のラセミ体は、溶媒に対する溶解度が高いので、反応溶媒中のアゾ化合物の濃度を高めることができる為、反応効率は向上し、これにより反応中の溶媒量の減少又は1回の反応の仕込量を増加することが可能となる。
【0038】
即ち、本発明の方法により得られたアゾ化合物のラセミ体を重合開始剤として用いて、重合性モノマーと適当な溶媒中、或いは無溶媒で、要すれば不活性ガス雰囲気下で常法に従って重合反応を行うことにより、ポリマーが得られる。
【0039】
重合反応後の後処理等はこの分野に於いて通常行われる後処理法に準じて行えばよい。
【0040】
尚、重合反応を行う際に、必要に応じて連鎖移動剤(例えばラウリルメルカプタン, オクチルメルカプタン, ブチルメルカプタン, 2-メルカプトエタノール, チオグリコール酸ブチル等。)を添加し、分子量の調節を行ってもよい。
【0041】
上記重合反応としては、例えば溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等すべての重合方法で行うことができる。
【0042】
α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば下記一般式[2]
【0043】
【化7】
【0044】
(式中、R6は水素原子、低級アルキル基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基又はアルデヒド基を表し、R7は水素原子、低級アルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R8は水素原子、低級アルキル基、ハロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、脂肪族ヘテロ環基、芳香族ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、含シアノアルキル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アルデヒド基、カルバモイル基又はN−アルキルカルバモイル基を表す。また、R6とR7とが結合し、隣接する-C=C-と一緒になって脂肪族環を形成していてもよい。)で示されるもの等が挙げられる。
【0045】
一般式[2]に於いて、R6〜R8で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,tert-ブチル基,sec-ブチル基,n-ペンチル基,イソペンチル基,tert-ペンチル基,1-メチルペンチル基,n-ヘキシル基,イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
R6及びR8で示されるカルボキシアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がカルボキシル基に置換されたもの等が挙げられ、具体的には、例えばカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
R6〜R8で示されるアルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数2〜11のものが好ましく、具体的には、例えばメトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基,プロポキシカルボニル基,ブトキシカルボニル基,ペンチルオキシカルボニル基,ヘキシルオシカルボニル基,ヘプチルオキシカルボニル基,2-エチルヘキシルオキシカルボニル基,オクチルオキシカルボニル基,ノニルオキシカルボニル基,デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0048】
R7及びR8で示されるハロゲン原子としては、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素等が挙げられる。
【0049】
R8で示されるハロアルキル基としては、例えば上記低級アルキル基がハロゲン化(例えばフッ素化,塩素化,臭素化,ヨウ素化等)された炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばクロロメチル基,ブロモメチル基,トリフルオロメチル基,2-クロロエチル基,3-クロロプロピル基,3-ブロモプロピル基,3,3,3-トリフルオロプロピル基,4-クロロブチル基,5-クロロペンチル基,6-クロロヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
R8で示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられ、また、該置換基としては、例えば低級アルコキシ基等が挙げられる。置換アリール基の具体例としては、例えばメトキシフェニル基,tert-ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0051】
R8で示される脂肪族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子,酸素原子,硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく挙げられ、具体例としては、例えばピロリジル-2-オン基,ピペリジル基,ピペリジノ基,ピペラジニル基,モルホリノ基等が挙げられる。
【0052】
R8で示される芳香族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子,酸素原子,硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく挙げられ、具体例としては、例えばピリジル基,イミダゾリル基,チアゾリル基,フラニル基,ピラニル基等が挙げられる。
【0053】
R8で示される含シアノアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がシアノ基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばシアノメチル基,2-シアノエチル基,2-シアノプロピル基,3-シアノプロピル基,2-シアノブチル基,4-シアノブチル基,5-シアノペンチル基,6-シアノヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
R8で示されるアシルオキシ基としては、例えば炭素数2〜20のカルボン酸由来のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチルオキシ基,プロピオニルオキシ基,ブチリルオキシ基,ペンタノイルオキシ基,ヘキサノイルオキシ基,ヘプタノイルオキシ基,オクタノイルオキシ基,ノナノイルオキシ基,デカノイルオキシ基,ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0055】
R8で示されるN-アルキルカルバモイル基としては、カルバモイル基の水素原子の一部がアルキル基で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばN-メチルカルバモイル基,N-エチルカルバモイル基,N-n-プロピルカルバモイル基,N-イソプロピルカルバモイル基,N-n-ブチルカルバモイル基,N-tert-ブチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0056】
また、R6とR7とが結合し、隣接する-C=C-と一緒になって脂肪族環を形成している場合としては、炭素数5〜10の不飽和脂肪族環を形成している場合が挙げられ、環は単環でも多環でもよい。これら環の具体的としては、例えばノルボルネン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環、シクロデセン環等が挙げられる。
【0057】
一般式[2]で示されるα,β-エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、例えばエチレン,プロピレン,ブチレン,イソブチレン等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和脂肪族炭化水素類、例えばスチレン,4-メチルスチレン,4-エチルスチレン,ジビニルベンゼン等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和芳香族炭化水素類、例えばギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酢酸イソプロペニル等の炭素数3〜20のアルケニルエステル類、例えば塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニリデン,テトラフルオロエチレン等の炭素数2〜20の含ハロゲンエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリル酸,メタクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,フマル酸,クロトン酸,ビニル酢酸,アリル酢酸,ビニル安息香酸等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和カルボン酸類(これら酸類は、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等、塩の形になっているものでもよい。)、例えばメタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2-エチルヘキシル,メタクリル酸ラウリル,メタクリル酸ステアリル,アクリル酸ラウリル,アクリル酸ステアリル,イタコン酸メチル,イタコン酸エチル,マレイン酸メチル,マレイン酸エチル,フマル酸メチル,フマル酸エチル,クロトン酸メチル,クロトン酸エチル,3-ブテン酸メチル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル類、例えばアクリロニトリル,メタクリロニトリル,シアン化アリル等の炭素数3〜20の含シアノエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリルアミド,メタクリルアミド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アミド化合物類、例えばアクロレイン,クロトンアルデヒド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アルデヒド類、例えばN-ビニルピロリドン,ビニルピペリジン等の炭素数5〜20のエチレン性不飽和脂肪族ヘテロ環状アミン類、例えばビニルピリジン,1-ビニルイミダゾール等の炭素数5〜20のエチレン性不飽和芳香族ヘテロ環状アミン類等が挙げられる。
【0058】
これらは夫々単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0059】
溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,ジオキサン等のエーテル類、例えばクロロホルム,塩化メチレン,1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、例えばn-ヘキサン,石油エーテル,トルエン,ベンゼン,キシレン等の炭化水素類、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール等のアルコール類、例えばアセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類、例えばアセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は夫々単独で用いても、二種以上適宜組合せて用いてもよい。
【0060】
不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0061】
上記重合反応を行う際の本発明の方法により得られたアゾ化合物のラセミ体の使用量は、使用する重合性モノマーの種類によっても異なるが、重合性モノマーに対して通常0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜50重量%である。
【0062】
反応温度は、通常30〜130℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜90℃である。
【0063】
また、反応時間は、反応温度や重合性モノマーや本発明に係るアゾ化合物の種類や量等の反応条件により異なるが、通常2〜24時間である。
【0064】
上記以外の反応操作及び後処理等は、通常行われる同種反応に準じて行えばよい。
【0065】
上記の如く、本発明は、従来法のように溶媒濃縮に必要な加熱操作を行う必要がなく、且つ引火性の高いエーテルを使用する必要もないので、アゾ化合物の異性体混合物から、これらのラセミ体とメソ体とを、安全、且つ高収率で得られるという利点を有する。
【0066】
また、本発明の方法は、抽出及び晶析操作により行われるので、得られるラセミ体及びメソ体は高純度の結晶化物として得ることができる。
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0068】
【実施例】
実施例1.
液温を10℃としたメタノール 280mlに2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 108.1g(和光純薬工業(株)製:商品名V-70、NMR分析による比率 メソ体:ラセミ体=54.0:46.0、m.p. 58.9〜87.9℃、乾燥減量 7.5%)を撹拌下に投入した後、その懸濁液を5℃下で30分間撹拌させた。残った結晶(メソ体)を濾取し、メタノール 50mlで洗浄し、メソ体 54.2gを得た。(収率 97.7%、純度 97.3%、m.p. 92.4〜96.5℃)
次いで、濾液を-7℃に保ちながら、水 495mlを注入し、1時間撹拌し、ラセミ体を晶析させた。得られた晶析物を濾取し、水 75mlで洗浄後乾燥して、ラセミ体 43.3gを得た。(収率 91.7%、純度97.4%、m.p. 58.6〜60.1℃)
【0069】
実施例2.
液温を20℃としたメタノール150mlに2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 108.1g(和光純薬工業(株)製:商品名V-70、NMR分析による比率 メソ体:ラセミ体=54.0:46.0、m.p. 58.9〜87.9℃、乾燥減量 7.5%)を撹拌下投入した後、その懸濁液を20℃下で30分間撹拌させた。残った結晶(メソ体)を濾取後乾燥し、メソ体 54.7gを得た。(収率 95.5%、純度 94.3%)
以下、濾液を0℃に保ちながら、メタノールと同量の水 150mlを注入し、1時間撹拌し、ラセミ体を晶析させた。得られた晶析物を濾取し、水 75mlで洗浄後乾燥して、ラセミ体を 41.6gを得た。(収率87.7%、純度97.0%)
【0070】
実施例3.
液温を15℃としたメタノール200mlに2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 108.1g(和光純薬工業(株)製:商品名V-70、NMR分析による比率 メソ体:ラセミ体=54.0:46.0、m.p. 58.9〜87.9℃、乾燥減量 7.5%)を撹拌下投入した後、その懸濁液を15℃下で30分間撹拌させた。
以下、濾液への添加水量を200mlとした以外は、実施例2.と同様に処理し、目的とするメソ体及びラセミ体を得た。
メソ体:55.9g(収率98.0%、純度94.7%)
ラセミ体:40.9g(収率86.4%、純度97.2%)
【0071】
実施例4.
液温を5℃としたメタノール 450mlに2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)108.1 g(和光純薬工業(株)製:商品名V-70、NMR分析による比率 メソ体:ラセミ体=54.0:46.0、m.p. 58.9〜87.9℃、乾燥減量 7.5%)を撹拌下に投入した後、その懸濁液を5℃下で30分間撹拌させた。
以下、濾液への添加水量を450mlとした以外は、実施例2.と同様に処理し、目的とするメソ体及びラセミ体を得た。
メソ体:55.3g(収率 98.5%、純度 96.2%)
ラセミ体:39.5g(収率 83.3%、純度97.0%、)
【0072】
実施例5.
液温を0℃としたメタノール778mlに2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) 108.1g(和光純薬工業(株)製:商品名V-70、NMR分析による比率 メソ体:ラセミ体=54.0:46.0、m.p. 58.9〜87.9℃、乾燥減量7.5%)を撹拌下投入した後、その懸濁液を0℃下で30分間撹拌させた。
以下、濾液への添加水量を778mlとした以外は、実施例2.と同様に処理し、目的とするメソ体及びラセミ体を得た。
メソ体:54.0g(収率97.4%、純度97.4%)
ラセミ体:36.7g(収率77.7%、純度97.4%)
【0073】
実施例6.
ジメチルスルホキシド 10ml中にアクリロニトリル 2.0g、及び実施例1で得られた2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V−70)のラセミ体 0.136g(0.44mmol)を重合開始剤として加えた。このジメチルスルホキシド溶液 10mlを、ガラス管(コーニング社製:商品名 パイレックス)より作製した重合管中に加え、管内の空気を窒素ガスに置換し、溶存酸素を減圧下除去した後、重合管を溶封した。溶封した重合管を45℃で重合反応を行った後、所定時間毎に重合管を開封し、この反応溶液をメタノール150mlに注入し、析出、沈殿させることにより各生成ポリマーを得た。次式より各生成ポリマーの重合率を算出した。
重合率(%)=(生成ポリマー量(g))÷(仕込みアクリロニトリル量(g))×100
所定時間毎の重合率の結果を表1に示す。
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明は、低温活性アゾ化合物の異性体混合物から、ラセミ体とメソ体を安全且つ容易に分離する方法を提供するものであり、本発明の方法によれば、従来の方法のように、引火性の高いエーテル溶媒を使用する必要もなく、且つ抽出溶媒を加熱留去する必要もないため、極めて安全に、且つ効率よく高純度な該ラセミ体とメソ体を製造し得る。
Claims (6)
- 2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のラセミ体とメソ体の混合物をメタノールで抽出処理することを特徴とする、該ラセミ体とメソ体との分離方法。
- メタノールによる処理を20℃以下で行う、請求項1に記載の分離方法。
- メタノールによる処理を-10〜20℃で行う、請求項1に記載の分離方法。
- 2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のラセミ体とメソ体の混合物をメタノールで抽出処理することを特徴とする、該ラセミ体の取得方法。
- メタノールによる処理を20℃以下で行う、請求項4に記載の取得方法。
- メタノールによる処理を-10〜20℃で行う、請求項4に記載の取得方法。
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