JP4797205B2 - 排水トラップ - Google Patents
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防水パンは、浴室や洗濯機など、使用時に排水が生じる場所に用いられる排水機器であって、流れた排水を受け止める機能を有し、底面の最も低い位置に取付部を開口してなる。
排水トラップは、後記するトラップ本体とフランジ部材からなる。
トラップ本体は、有底円筒形状であって、上方に雌ねじを設けた開口である雌ねじ部を有し、さらに後述する封水部、及び封水部を溢れた排水が流れる通水路、通水路の側面に設けた排出口を備えて成る。
封水部は有底円筒状で、上方に排水が流入する開口を設けてなる。
排出口は前記トラップ本体内の排水を下水側配管へ排出するための開口であって、通水部の側面から外方向に向かって形成され、内部はトラップ本体内部の通水部と連通してなる。ここで、トラップ本体内部に、後述する防臭筒から、封水部の上端縁部を介して排出口に至る排水流路が形成される。
フランジ部材は、上下に開口した円筒形状の部材であって、上端には鍔部を設け、また外周面には前記したトラップ本体の開口の雌ねじと螺合する雄ねじを設け、またその内周側には排水口を開口している。
防臭筒は、上方、下方とも開放された円筒体であり、上方は前記フランジ部材の排水口と着脱自在且つ水密的に嵌合され、下端の開口部は前記封水部内に配置されてなる。
防水パンの取付部を間に介した状態で、フランジ部材の雄ねじ部をトラップ本体の雌ねじ部に螺合させることで、防水パンの取付部周縁が、フランジ部材の鍔部下面と、トラップ本体の開口周縁とで挟持され、防水パンにトラップ本体及びフランジ部が取り付け固定される。
更にフランジ部材の排水口に、防臭筒を着脱自在且つ水密的に嵌合させる。このとき、防臭筒下端は前記封水部内に配置されてなる。
また、トラップ本体の排出口に、床下配管を接続させ、排水トラップの施工が完了する。
また、このとき封水部に排水が溜まることで、排水トラップ内に形成された排水流路の少なくとも一部に、封水と呼ばれる排水が溜まった状態が生じる。下水側から臭気や害虫類が逆流してきた場合でも、これら臭気や害虫類がこの封水を乗り越える事ができないため、屋内側に臭気や害虫類が進入することを防止することができる。尚、この下水側から屋内側に臭気や害虫類が進入することを防止する機能を、「トラップ機能」と呼ぶ。
前述の排水トラップ配管において、床下配管に負圧(空気の圧力が、通常の大気圧である1気圧よりも低くなった状態)となる場合がある。
床下排水に負圧が発生する理由は様々であるが、良く知られている原因としては、以下に記載した自己サイホンという場合がある。
自己サイホンとは、排水トラップから床下配管に排水を行う際に、排水が床下配管内の空気を巻き込んで流れ、その分床下配管内の空気が減少して負圧になる現象である。
自己サイホンその他の理由によって、床下配管内に負圧が発生すると、失われた空気を供給するため、大気解放されている排水口から空気を取り込もうとする力が働く。この過程において、排水トラップ内部の封水部内の封水が、通水路を介し、排出口から床下配管側に引き込まれて排出される場合がある。
このような現象が起きると、次のような問題が生じる。
1.排水の際、空気が防臭筒の開口部まで到達することから、開口部の大きさに比例した大きな空気の塊(気泡)が排水中を流れ、「ゴボゴボ」と不快な騒音を発生する。
2.封水部に溜まっていた封水が排出口から排出され、防臭筒の開口部よりも下方にまで封水の水面が降下する。このような状態になると、「排水トラップ内に形成された排水流路の少なくとも一部に、封水と呼ばれる排水が溜まった状態」では無くなり、「トラップ機能」が失われ、臭気や害虫類が下水側から屋内側に進入可能となる。このような状態を「破封」状態という。実際には排水が終了に近づき、排水の勢いが弱くなるにつれて、自己サイホンが収まると共に、少量の排水が比較的緩やかに流れて封水部に溜まるため、完全な破封状態になることは希であるが、封水の水面は封水部の上端よりも低い位置に留まり、トラップ機能が充分に機能できなくなる(破封しやすくなる)場合が多い。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、排水トラップにおいて、排水時にゴボゴボという不快な音の発生を防止し、また破封を生じ難くするために発明されたものである。
尚、ここでいう「独立した開口部」とは、排水口(3)から排出口(7)へ排水が流れる際、排水がある開口部を通過すれば、他の独立した開口部を通過しなくても排出口(7)に到達できる関係であることをいう。例えば、図3に示した防臭筒(4a)の第1開口部と第2開口部とは、排水口(3)から排出口(7)に流れる過程において、第1開口部を通過すれば第2開口部を通過する必要が無く、また第2開口部を通過すれば第1開口部を通過する必要がないので、ここでいう独立した開口部に相当する。
一方、図6に示した防臭筒(4a)であれば、第2開口部を通過した排水は必ず第1開口部を通過しなければならないため、ここでいう独立した開口部には相当しない(図6は本発明の実施例を示すものではない)。
尚、ここでいう「独立した開口部」とは、段落0007と同様の意味である。
請求項1、請求項3に記載の本発明は、排水トラップの排水口から開口部までの流路上で排水流路を複数に分岐させて、独立した開口部を複数設けたことで、破封の発生による影響を低減させることができる。
この効果を具体的に説明する。排水トラップに排水が行われて自己サイホンが発生し、開口部の高さまで封水の水面が降下すると、その高さ位置で破封が発生する。そして、この高さで空気の引き込みが発生するため、封水面の降下が抑えられる。このとき開口部は複数に分割されているため、前述の従来例のように開口部が1つしか無い場合に比べて開口面積は分割された分小さくなり、排水時の気泡は小さくなる(従来例において大きな気泡が単位時間に1つできる場合、本発明では気泡が小さくなった分単位時間に2つ又はそれ以上発生するのであって、発生する気泡の総体積自体は殆ど変わらない)。発生した小さな気泡同士は、水の表面張力があるため、水中で触れあっても合体する事はなく、封水の水面上で小さな気泡のまま弾ける事になる。気泡が小さくなったため、騒音は殆ど発生しなくなる。厳密には、従来例のような大きな気泡が弾ける「ゴボゴボ」という騒音ではなく、小さい騒音が連続して発生することになるが、小さい騒音自体が殆ど聞こえない程度に小さいため、それが連続して発生しても、実質上、騒音が殆ど発生しなくなる。一方で開口部は分岐しているだけで、開口面積は減少しているわけではないので、排水性能は従来と同等か、通気性が向上した分、向上する事になる。
更に、上記分割した開口部に高低差を設けると、気泡は主に上方に配置した開口部から発生するようになり、気泡が発生する開口部を限定することができ、例えば排出口から離れた位置から気泡を発生させるなど、気泡の発生をある程度コントロールすることができる。
また、自己サイホンによって封水が失われる場合でも、上方の開口部の高さ位置まで封水の水面が降下すると、その高さで通気が発生して封水水面の降下が止まる。排水が終了に近づき、比較的緩やかに流れて封水部に溜まる排水の量は従来例と同じであるが、元々残留している封水の量が多いため、封水部に残る排水の量は従来例と比較して多くなる。実際には、開口部の高さ位置が上昇した分、破封が生じやすくなるが、開口部は分岐によって開口面積が小さくなっているため、破封の影響が生じにくい。
また、請求項2に記載したように、上記防臭筒を独立した部材として構成し、排水トラップから着脱自在とすれば、清掃性が向上すると共に、従来品の排水トラップにおいて防臭筒のみ変更すれば本発明を採用することができ、専用部材を作る必要が減る分、部材の共通化による部材管理の容易化ならびにコストダウンを図ることができる。
更に同様の機構を備えた従来型の排水トラップにも、防臭筒を変更するだけで、本発明の作用/効果を与えることができ、好適である。
各開口部に上記のような高低差を設けた場合、請求項4に記載したように、高い位置にある開口部、つまり気泡が発生する頻度の高い開口部の開口面積を小さいものとしておくと、発生する気泡はより小さなものとなり、騒音の発生(騒音の音量)も減少する。
また、請求項5に記載したように、気泡が発生する頻度の高い開口部を再度複数に分岐することで、発生する気泡をより小さなものとできる。またこのように再度複数に分岐する構造を採用することで、気泡が発生する頻度の高い開口部とその排水流路を、それぞれ独立に設けるより効率的に分岐させることができる。
また、請求項6に記載したように、排水の分岐部分を封水水面よりも上方に配置すると、当該分岐部分が封水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等によって閉塞されにくくなり、信頼性が向上する。
特にこの分岐箇所を封水水面よりも上方に配置した排水トラップにおいて、請求項7に記載したように、分岐箇所の開口を下方に向けて設けると、封水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等に加えて、排水口から流入する、排水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等からも分岐部分が閉塞されにくくなり、信頼性がより向上する。
また、請求項8に記載したように、防臭筒又は防臭壁の開口部の開口面積の総和よりも、排水口の開口面積の方が大きな面積を有した排水トラップでは、排水中の空気が閉め出されて自己サイホンが発生しやすくなる。このため、本発明のように自己サイホンによって生じる問題を解決できる発明を採用すると好適である。
図1乃至図及び図5に示した、本発明の第一実施例は、以下に記載したトラップ本体(1)、フランジ部材(2)、防臭筒(4a)、より構成されてなる。
トラップ本体(1)は、有底円筒状の封水部(6)と、封水部(6)の上端を覆うように配置され、その内部を封水部(6)から溢れた排水(封水)が流れる通水路(9)と、通水路(9)の側面に設けられた、排水を排出するための排出口(7)と、通水路(9)の上方に設けた、雌ねじを有する開口からなる雌ねじ部(8)と、から構成される。
排出口(7)は前記トラップ本体(1)内の排水を下水側配管へ排出するための開口であって、通水路(9)の外壁部分の側面から外方向に向かって形成され、内部はトラップ本体(1)内部と連通してなる。
フランジ部材(2)は、上下に開口した円筒形状の部材であって、上端には鍔部を設け、また外周面には前記したトラップ本体(1)の雌ねじ部(8)と螺合する雄ねじ部(10)を設け、内側には防水パン(P)上の排水が流入する排水口(3)を開口している。
防臭筒(4a)は、上下端とも開放された略円筒状であって、上端から一度すり鉢状に縮径した後、下方に円筒部分が降下した形状であり、前記フランジ部材(2)の排水口(3)と着脱自在且つ水密的に嵌合される。
更にこの第一実施例の防臭筒(4a)は、防臭筒(4a)の内部、封水部(6)の上端よりも上方から下端部まで壁部(12)を設けることで、防臭筒(4a)内部において排水流路を途中で分岐させ、その下流の開口部を分岐に合わせそれぞれ独立して2つ設けてなる。
尚、ここでいう「独立した開口部」とは、排水口(3)から排出口(7)へ排水が流れる際、排水がある開口部を通過すれば、他の独立した開口部を通過しなくても排出口(7)に到達できる関係であることをいう。
この2つの開口部は上下に高低差を設け、高い方に設けた開口部を第二開口部(5b)、下端側に設けた開口部を第一開口部(5a)としている。更にこの第一開口部(5a)と第二開口部(5b)の面積比は、およそ10対1程度となるように構成している。
また、このような排水トラップは、次のような排水機器である防水パン(P)に施工される。防水パン(P)は、浴室や洗濯機など、使用時に排水が生じる場所に用いられる排水機器であって、流れた排水を受け止める機能を有し、底面の最も低い位置に取付部(P1)を開口してなる。
排水トラップは、防水パン(P)の取付部(P1)周縁を間に介した状態で、トラップ本体(1)の雌ねじ部(8)をフランジ部材(2)の雄ねじ部(10)に螺合させることで、防水パン(P)の取付部(P1)周縁が、フランジ部材(2)の鍔部下面と、トラップ本体(1)の開口周縁とで挟持され、防水パン(P)にトラップ本体(1)及びフランジ部が取り付け固定される。
更にフランジ部材(2)の排水口(3)に、防臭筒(4a)を着脱自在且つ水密的に嵌合させる。このとき、防臭筒(4a)下端の開口部は、第一開口部(5a)、第二開口部(5b)共に前記封水部(6)内に配置されてなる。
また、トラップ本体(1)の排出口(7)に床下配管(D)を接続させ、排水トラップの施工が完了する。
また、このとき封水部(6)に排水が溜まることで、排水トラップはトラップ機能を備えることとなる。
第二開口部(5b)のほうが、第一開口部(5a)よりも高い位置に設けられているため、図5に示したように、自己サイホンによって封水部(6)の水面が降下したとき先に通気状態となる。そして通気が行われることで、この高さ位置で封水水面(WL)の降下がほぼ終了する。これによって、気泡は主に第二開口部(5b)からのみ発生し、第一開口部(5a)からは殆ど生じないようにすることができる。そして、前述のようにこの第二開口部(5b)は第一開口部(5a)と比べて10分の1程度の開口面積しかないため、空気の気泡は、従来例のような開口部が一つしか無い場合や、面積が10倍の第一開口部(5a)から行われる場合と比べて極めて小さな気泡しか生じない。但し、通気に必要な空気の量は、排水性能が同じであれは基本的に同じであるため、同じ時間(単位時間)で比較すれば、この実施例の第二開口部(5b)からは、従来例の気泡よりも圧倒的に数的には多い(その分一つ一つの気泡は小さい)気泡を生じることになる。
発生した小さな気泡同士は、水の表面張力があるため、水中で触れあっても合体する事はなく、封水の水面上で小さな気泡のまま弾ける事になる。気泡が小さくなったため、騒音は殆ど発生しなくなる。厳密には、従来例のような大きな気泡が弾ける「ゴボゴボ」という騒音ではなく、気泡の数量が増加した分小さい騒音が連続して何度も発生することになるが、基本となる小さい騒音自体が殆ど聞こえない程度に小さいため、それが連続して大量に発生しても、実質上、騒音が殆ど発生しなくなる。
一方で開口部は第一開口部(5a)と第二開口部(5b)に分岐しているだけで、開口面積は殆ど減少しているわけではないので(正確には壁部(12)下面の分若干減少しているが、実質問題にならない程度である)、排水性能は従来と同等か、通気状態に到達するまでの時間が早くなった分通気性が向上するので、それに伴って向上する事になる。
またこの第一実施例では、排水の分岐部分である防臭筒(4a)内の壁部(12)の上端を、封水水面(WL)よりも上方に配置しているので、封水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等によってこの分岐部分が閉塞されにくくなっており、分岐部分が封水内にある場合よりも信頼性が向上する。
また、上記したように、上記防臭筒(4a)を独立した部材として構成し、排水トラップから着脱自在とすれば、清掃性が向上すると共に、従来品の排水トラップにおいて防臭筒(4a)のみ変更すれば本発明を採用することができ、専用部材を作る必要が減る分、部材の共通化による部材管理の容易化ならびにコストダウンを図ることができる。
また、上記実施例では、防臭筒(4a)を上端から下端に至るまでの部分で、一度すり鉢状に構成しているため、防臭筒(4a)の開口部の開口面積の総和よりも、排水口(3)の開口面積の方が大きくなっている。
このような排水トラップでは、排水中の空気が閉め出されて自己サイホンが発生しやすくなるが、本発明では自己サイホンによって生じる問題を解決できる機能を有しているため、このような自己サイホンが生じやすい排水トラップに採用するのに好適である。
図7乃至図9に示した、本発明の第二実施例は、以下に記載したトラップ本体(1)、フランジ部材(2)、防臭筒(4a)、より構成されてなる。
トラップ本体(1)、フランジ部材(2)、及び防水パン(P)は、前述した第一実施例の各部材と同様に構成されてなる。
防臭筒(4a)は、上下端とも開放された略円筒状であって、上端から一度すり鉢状に縮径した後、下方に円筒部分が降下した形状であり、前記フランジ部材(2)の排水口(3)と着脱自在且つ水密的に嵌合される。
更にこの第一実施例の防臭筒(4a)は、防臭筒(4a)の内部、封水部(6)の上端よりも上方から下端部まで壁部(12)を設け、更に後述する第二開口部(5b)側の分岐部分に、断面略逆U字形状の傘部(11)を設けてなる。このように構成したことで、防臭筒(4a)内部を途中で分岐させ、その下流の開口部を分岐に合わせそれぞれ独立して2つ設けると共に、分岐部分の開口を下方に向けた形状としている。
尚、ここでいう「独立した開口部」とは、排水口(3)から排出口(7)へ排水が流れる際、排水がある開口部を通過すれば、他の独立した開口部を通過しなくても排出口(7)に到達できる関係であることをいう。
また、この2つの開口部は上下に高低差を設け、高い方に設けた開口部を第二開口部(5b)、下端側に設けた開口部を第一開口部(5a)としている。更にこの第一開口部(5a)と第二開口部(5b)の面積比は、およそ10対1程度となるように構成している。
更に、上記第二実施例の防臭筒(4a)では、第二開口部(5b)にスリット(13)を設け、第二開口部(5b)を再度複数に分岐させて構成している。
また、このとき封水部(6)に排水が溜まることで、排水トラップはトラップ機能を備えることとなる。
また、傘部(11)を設けて、分岐箇所の開口を下方に向かうように構成したため、排水口(3)から流入する、排水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等に分岐部分の開口がさらされることが無くなり、分岐部分が閉塞されにくくなり、信頼性がより向上する。
図10乃至図11に示した、本発明の第三実施例は、以下に記載したトラップ本体(1)、フランジ部材(2)より構成されてなる。
フランジ部材(2)、及び防水パン(P)は、前述した第一実施例の各部材と同様に構成されてなる。
トラップ本体(1)は、上面に雌ねじを有する開口からなる雌ねじ部(8)を、側面に排出口(7)を備えたケーシング体であって、その内部に、平面視排水口(3)を有する側と、排出口(7)を有する側とに分割するように配置され、トラップ本体(1)の内壁上端から下方に延出された、下方に開口部を備えた防臭壁(4b)を備えて成る。
また、上記トラップ本体(1)内部には、トラップ本体(1)の内側底面から排出口(7)までの間に傾斜面を形成して、内部に封水部(6)を形成し、封水が溜まるように構成すると共に、その封水部(6)内に、前述の防臭壁(4b)下端が配置されるように構成して成る。
更にこの第三実施例のトラップ本体(1)の防臭壁(4b)は、封水部(6)の上端よりも上方から下端部まで壁部(12)を設けることで、防臭壁(4b)内部において排水流路を途中で分岐させ、その下流の開口部を分岐に合わせそれぞれ独立して2つ設けてなる。
尚、ここでいう「独立した開口部」とは、排水口(3)から排出口(7)へ排水が流れる際、排水がある開口部を通過すれば、他の独立した開口部を通過しなくても排出口(7)に到達できる関係であることをいう。
この2つの開口部は、上下に高低差を設け、高い方に設けた開口部を第二開口部(5b)、下端側に設けた開口部を第一開口部(5a)としている。更にこの第一開口部(5a)と第二開口部(5b)の面積比は、およそ10対1程度となるように構成している。
また、このような排水トラップは、次のような排水機器である防水パン(P)に施工される。防水パン(P)は、浴室や洗濯機など、使用時に排水が生じる場所に用いられる排水機器であって、流れた排水を受け止める機能を有し、底面の最も低い位置に取付部(P1)を開口してなる。
排水トラップは、防水パン(P)の取付部(P1)周縁を間に介した状態で、トラップ本体(1)の雌ねじ部(8)をフランジ部材(2)の雄ねじ部(10)に螺合させることで、防水パン(P)の取付部(P1)周縁が、フランジ部材(2)の鍔部下面と、トラップ本体(1)の開口周縁とで挟持され、防水パン(P)にトラップ本体(1)及びフランジ部が取り付け固定される。
また、トラップ本体(1)の排出口(7)に床下配管(D)を接続させ、排水トラップの施工が完了する。
また、このとき封水部(6)に排水が溜まることで、排水トラップはトラップ機能を備えることとなる。
第二開口部(5b)のほうが、第一開口部(5a)よりも高い位置に設けられているため、自己サイホンによって封水部(6)の水面が降下したとき先に通気状態となる。そして通気が行われることで、この高さ位置で封水水面の降下がほぼ終了する。これによって、気泡は主に第二開口部(5b)からのみ発生し、第一開口部(5a)からは殆ど生じないようにすることができる。そして、前述のようにこの第二開口部(5b)は第一開口部(5a)と比べて10分の1程度の開口面積しかないため、空気の気泡は、従来例のような開口部が一つしか無い場合や、面積が10倍の第一開口部(5a)から行われる場合と比べて極めて小さな気泡しか生じない。但し、通気に必要な空気の量は、排水性能が同じであれは基本的に同じであるため、同じ時間(単位時間)で比較すれば、この実施例の第二開口部(5b)からは、従来例の気泡よりも圧倒的に数的には多い(その分一つ一つの気泡は小さい)気泡を生じることになる。
発生した小さな気泡同士は、水の表面張力があるため、水中で触れあっても合体する事はなく、封水の水面上で小さな気泡のまま弾ける事になる。気泡が小さくなったため、騒音は殆ど発生しなくなる。厳密には、従来例のような大きな気泡が弾ける「ゴボゴボ」という騒音ではなく、気泡の数量が増加した分小さい騒音が連続して何度も発生することになるが、基本となる小さい騒音自体が殆ど聞こえない程度に小さいため、それが連続して大量に発生しても、実質上、騒音が殆ど発生しなくなる。
一方で開口部は第一開口部(5a)と第二開口部(5b)に分岐しているだけで、開口面積は殆ど減少しているわけではないので(正確には壁部(12)下面の分若干減少しているが、実質問題にならない程度である)、排水性能は従来と同等か、通気状態に到達するまでの時間が早くなった分通気性が向上するので、それに伴って向上する事になる。
またこの第三実施例では、排水の分岐部分である防臭壁(4b)の壁部(12)の上端を、封水水面よりも上方に配置しているので、封水中に浮かぶ髪の毛やゴミ、ヌメリ等によってこの分岐部分が閉塞されにくくなっており、分岐部分が封水内にある場合よりも信頼性が向上する。
また、このような排水トラップでは、トラップ本体(1)内部を流れる排水のほとんど全てが、排出口(7)の方向に向かうように構成されているため、第一実施例や第二実施例の排水トラップよりも排水性能が向上する分、自己サイホンが発生しやすくなるが、本発明では自己サイホンによって生じる問題を解決できる機能を有しているため、このような自己サイホンが生じやすい第三実施例の排水トラップ(一般には「ランニングトラップ」と呼ばれる)に採用するのに好適である。
3 排水口 4a 防臭筒
4b 防臭壁 5a 第一開口部
5b 第二開口部 6 封水部
7 排出口 8 雌ねじ部
9 通水路 10 雄ねじ部
11 傘部 12 壁部
13 スリット D 床下配管
P 防水パン P1 取付部
WL 封水水面
Claims (8)
- 排水の流入する排水口(3)と、排水口(3)から下方に延出された、下方に開口部を備えた防臭筒(4a)と、その内部に前記防臭筒(4a)の開口部を収納すると共に、排水を溜めて封水を形成する封水部(6)と、封水部(6)を溢れ出た排水を下水等に排出する排出口(7)と、を備えた排水トラップにおいて、排水口(3)から前記開口部までの流路上で防臭筒(4a)内部に壁部(12)を設けて排水流路を複数に分岐させたことで防臭筒(4a)内に侵入した排水を複数の流れに分岐させ、前記開口部が当該複数の流路の出口として対応して複数設けられた、それぞれ独立した開口部であり、該開口部のうち少なくとも2つ以上の開口部に高低差を設けたことにより、封水水面降下時、複数の流路のうち、いずれか1つ以上の流路が他の流路より先に破封することを特徴とする排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、上記防臭筒(4a)を独立した部材として構成し、排水トラップから着脱自在としたことを特徴とする請求項1に記載の排水トラップ。
- 中空のケーシング体から成るトラップ本体(1)と、トラップ本体(1)の上面に設けられた、排水の流入する排水口(3)と、トラップ本体(1)の側面に設けられた、排水を下水等に排出する排出口(7)と、トラップ本体(1)内部を、平面視排水口(3)を有する側と、排出口(7)を有する側とに分割するように配置され、トラップ本体(1)の内壁上端から下方に延出された防臭壁(4b)と、前記防臭壁(4b)の下方を収納すると共に、排水を溜めて封水を形成し、溢れた排水を排出口(7)に流出させる封水部(6)と、を備えた排水トラップにおいて、排水口(3)から防臭壁(4b)下方までの排水流路において壁部(12)を設けたことにより流路を複数に分岐させたことで防臭筒(4b)内に侵入した排水を複数の流れに分岐させ、当該複数の流路の出口として対応した開口部が複数設けられ、且つ当該開口部はそれぞれ独立した開口部であり、該開口部のうち少なくとも2つの開口部に高低差を設けたことにより、封水水面降下時、複数の流路のうち、いずれか1つ以上の流路が他の流路より先に破封することを特徴とする排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、上記開口部の開口面積に差違を設けると共に、開口面積が大きい開口部を、開口面積が小さい開口部よりも下方に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、最下方の開口部に対応する排水流路以外の開口部に対応する排水流路の少なくとも1つを、開口箇所にて再度複数に分岐させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、防臭筒(4a)又は防臭壁(4b)内部の排水流路において、少なくとも1つの排水流路の入口を、封水水面(WL)よりも上方に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、上記防臭筒(4a)又は防臭壁(4b)内部の排水流路において、少なくとも1つの排水流路の入口を下方に向けて設けたことを特徴とする請求項6に記載の排水トラップ。
- 上記記載の排水トラップにおいて、開口部の開口面積の総和よりも、排水口(3)の開口面積の方が大きな面積を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の排水トラップ。
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