JP4796717B2 - Si3N4−SiC複合焼結体の製造方法 - Google Patents

Si3N4−SiC複合焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化珪素および炭化珪素を主体とするSi34 −SiC複合焼結体の製造方法に関する。更に詳細には、安価な焼成炉用棚板、支柱、匣鉢、ガスタービン、ターボローターなどの高温高強度構造材料などの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiC−Si複合材料は、耐熱衝撃性、耐酸化性及び高温強度特性に優れているため、加熱炉に用いられる高温構造材や蛍光塗料などの粉体熱処理用容器として、アルミナやムライトといった汎用性セラミック材料に替わり、広く使用され始め、近年、生産量は徐々に増加しつつある。
【0003】
SiC−Si複合材料の製造において、SiCグリーン体あるいは再結晶化させた焼成体の開気孔部に、不活性雰囲気中、1400℃以上の高温にて溶融Siを含浸させる工程が不可欠となっている。本工程では、Si未含浸部分の発生を防ぐために、被含浸体の気孔率から算出する理論含浸量以上のSi粉末を使用している。
【0004】
したがって、含浸処理後においては相当量のSi塊が残留することとなり、その発生量は、例えば1年間にSiC−Si複合材料をおよそ100トン程度製造した場合、残留Si塊は約10トン程度に及ぶ。これら発生した余剰の残留Si塊は、従来、公共投棄場にて処分しており、その際には、処分費用がかかり、製品コストがかさむ問題が生じていた。また、将来的には、環境問題の点からも公共投棄場自体に限界があり、廃棄できなくなる可能性もある。そこで、工場から出た残留Si魂を再利用することができれば製品コストの面において、また資源の有効活用の面においても望ましい。
【0005】
再利用方法としては、Si粉末の本来の用途であるSi含浸工程に再利用することが望ましいが、含浸処理後はSi粉末の一部がβ−SiCやα−Si34 として生成しており、不純物が多いという問題のため使用し難い。
【0006】
本発明者らは、SiC−Si複合材料の製造における上記の問題点を解消するために、原料中のSi量、β−SiC量などについて、検討を加え、その結果として、Siが20〜50重量%、β−SiCが50〜80重量%であることを構成上の特徴とする粉体を成形して得たグリーン体を窒化反応して成る、Si34 −SiC耐火物の製造方法を提案した(特開2000−313667号公報)。この方法により得られるSi34 −SiC耐火物は、多くの点で満足すべき特性をそなえているが、使用分野によっては、機械的強度、耐熱衝撃性、耐酸化性などの面で必ずしも十分な特性を有しておらず、さらに改善の余地がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、SiC−Si複合材料の製造において排出される余剰の残留Si塊を再利用し、緻密性が高く、高温強度特性に優れた、安価なSi34 −SiC複合焼結体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため鋭意研究した結果、SiC−Si複合材料のSi含浸にて発生する余剰の残留Si塊の一部が、β−SiCやα−Si34 に変化しているため、Siの窒化反応によって製造するSi34 −SiC複合焼結体の製造用の粉末として適しており、再利用可能であることが明らかになった。
【0009】
そこで、本発明は、Si34−SiC複合焼結体の製造方法に関して、SiC−Si複合材料製造工程において排出される残留Si塊であって、Siが30〜60重量%、β−SiCが40〜70重量%である残留Siを5〜50μmに粉砕し、該残留Si塊の粉末と酸化イットリウム及び酸化アルミニウムからなる焼結助剤を含むグリーン体を、窒素雰囲気中1350℃〜1450℃で反応窒化する第1焼成工程と、窒素雰囲気中1600℃〜2200℃で焼結する第2焼成工程を具備することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明にて原料として使用する残留Si塊の粉砕方法については、特に限定されるものではないが、ジョークラッシャーやハンマークラッシャーなどの乾式による粗粉砕を経た後、ボールミルなどの湿式にて微粉砕することが好ましい。また、粉砕後の粒子径については、窒化反応を促進し、焼成を短時間化するため、50μm以下にすることが必要不可欠であり、更に緻密化を向上させるには0.5〜10μmにすることが好ましい。
【0011】
残留Si塊の組成については、SiC−Si複合材料のSi含浸工程において、その製法上の特徴から、あらかじめSi粉末に若干量の炭素粉末を添加している点や、黒鉛ヒータ炉を使用するために炉内が還元雰囲気となっている影響により、Siの一部がSiC化しており、その比率はSi含浸条件によって多少変動する。これら組成については、数%のα−Si34 を含むが、Siが30〜60重量%、β−SiCが40〜70重量%の組成となっていることが好ましく、複合焼結体を製造する前に確認しておく必要がある。β−SiCが40重量%より少なくなると、高温強度の改善に効果が現れにくい傾向があり好ましくない。
そして、β−SiCが70重量%より多くなると、Si34 結合が安定せず、さらに炭化珪素同志の接触部が生じ、これが破壊の起点となり複合セラミックスの強度低下をもたらす傾向があるので好ましくない。残留Si塊の組成がこの範囲外の場合は、Si粉末あるいはSiC紛末を所望量添加して、上記範囲に入るようにすることが必要となる。
【0012】
また、上記混合粉末には、1〜8重量%のα−Si34 を含むので、後述する窒化工程において、Si粉末を全て窒化珪素に反応する事が容易となる。
【0013】
残留Si塊の粉末に酸化イットリウム及び酸化アルミニウムからなる焼結助剤を添加してグリーン体とすることにより、緻密で耐摩耗性及び機械的強度に優れたSi34 −SiC複合焼結体を製造することができる。なお、本発明におけるグリーン体とは、焼結前の成形体のことである。
【0014】
上記残留Si塊の粉砕粉末、すなわちSiとβ−SiCとα−Si34 の混合粉末に、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムからなる焼結助剤を添加して得られた粉体を乾式プレス成形、射出成形、静水圧加圧成形、押出し成形、鋳込み成形といった方法にて所望の形状と要求特性に応じて成形方法を選択する事が出来るが、これらに限定されるものではない。乾式プレスについては、並形レンガや板といった単純な形状の成形に適用し、バインダーなどの成形助剤を適量添加して成形される。鋳込み成形については、ルツボといった容器形状などの複雑形状の成形に向いているが、水による分散の場合はSiの酸化によるH2 の発生が問題となるため、pH調整等の注意が必要である。
【0015】
ここで焼結助剤として、添加する酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの添加比は1:1とすることが好ましく、添加量はSi34 成分とSi成分を窒化珪素に換算したときの量との和に対して、それぞれ3〜6重量%とする事が好ましい。この量が3%未満の場合は、十分に緻密化できないことがあり、6重量%を越えると粒界相が過剰となり、耐磨耗性などの物性が低下する事がある。また、更に粒界相量の低減を図り、耐磨耗性を高めるには、4〜5重量%とする事が好ましい。
【0016】
また、これらの焼結助剤の平均粒径は、Si34 及びSi中に均一に分散させる為に5μm以下であることが好ましく、特に2μm以下とする事が好ましい。
【0017】
本発明においては、前記グリーン体からSi34 −SiC複合焼結体を製造するために、2段の焼成工程が必要である。その理由は、1段目の焼成で、珪素の窒化反応による窒化珪素を生成させるためである。2段目の焼成では、その生成した窒化珪素を常圧焼結させるためである。
【0018】
焼成に関しては、第1の焼成工程として、Siの窒化反応によるSi34 生成を行うため、上記グリーン体をN2 ガス雰囲気中にて1350℃〜1450℃の範囲、望ましくは1400℃にて熱処理することが好ましい。これは、珪素の融点以上まで加熱すると、金属珪素が溶融し、窒化珪素の生成反応が完全に進行しないためである。充分な窒化反応を行なうためには、5〜10時間程度の保持が必要となる。
【0019】
また、その後に行う緻密化の第2の焼成工程は、1600〜2200℃の温度範囲まで昇温し、1〜5時間程度保持する事が重要である。これは、1600℃より低い温度では窒化珪素の緻密化が十分に行われない為であり、2200℃以上では、窒化珪素の分解気化反応が起こり、緻密化が阻害されるためである。更に、窒化珪素の分解気化反応を抑える為に、N2 ガス圧力を2.9×10-1〜4.9×10-1MPaにする事が望ましい。
【0020】
このようにして得られる焼結体は、組成上、窒化珪素成分と炭化珪素成分とから構成される。炭化珪素成分は基本的には、炭化珪素のみからなり、一方窒化珪素成分は、窒化珪素と燒結体中の焼結助剤成分を含む系からなる。この炭化珪素成分は、窒化珪素結晶の粒内、または粒界に存在することにより窒化珪素結晶の焼結時の粒成長を抑制し、焼結体を微細構造の組織する。
【0021】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
SiC−Si複合材料のSi含浸工程において残留したSi塊10kgをジョークラッシャー装置にて粗粉砕した後、エタノールを分散媒としたボールミルにて24時間回転させて微粉砕を実施し、平均粒径5μmの粉体を得た。これら粉体のX線回折による組成分析を実施した結果は、Siが35重量%、β−SiCが60重量%、α−Si34 が5重量%であった。この混合粉砕原料に焼結助剤として、平均粒径0.3μmの酸化イットリウム及び平均粒径0.4μmの酸化アルミニウムを、Si34 成分とSi成分を窒化珪素に換算したときの量との和に対して、各々4重量%添加し、水40〜50重量%と分散剤0.2重量%、バインダーとしてワックスエマルジョンを2重量%を加え、NaOHにてpH7〜9に調整し、ボールミルにて24時間混合しスラリー化した。得られたスラリーを真空撹拌装置にて脱泡処理した後、棒状φ10×130mm、板状100×100×t8mm、それぞれの形状の石膏型に流し込んで、鋳込み成形した。
この成形体を110℃にて乾燥した後、黒鉛ヒータ炉にてN2 雰囲気中2.9×10-1MPa加圧、焼成温度1400℃、保持時間6時間にて処理することにより、Siを完全に窒化反応させて、さらに昇温し、1900℃保持時間3時間処理により焼結を行い、Si34 −SiC複合焼結体を製造した。得られた複合焼結体に対して、アルキメデス法により相対密度を、機械的特性の評価として、室温及び1400℃の4点曲げ強度試験(JIS R1601)を行った。
【0022】
得られた複合焼結体の特性は、相対密度99.2%、室温曲げ強度820MPa、1400℃曲げ強度620MPaであった。また、X線回折により組成分析を行なった結果、β−SiCが50重量%、α−Si34 が50重量%であった。
【0023】
実施例2〜3、比較例1〜3
残留Si塊の粉砕後の組成及び焼結体組成が変化した他は、実施例1と同一の方法によりSi34 −SiC複合焼結体を製造し、各特性を測定した。
【0024】
表1に実施例1〜3及び比較例1〜3についての組成及び各特性について示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004796717
【0026】
残留Si塊組成について、β−SiCが40重量%未満の場合(比較例1)では、高温強度が低いものであった。また、β−SiCが70重量%を越える場合(比較例2と3)、焼結性が著しく低下し緻密体を得る事ができなかった。
【0027】
したがって、高温構造材として使用が可能となる残留Si塊の組成は、Siが30〜60重量%、β−SiCが40〜70重量%であることが必要であることが判明した。また、実施例1〜3の範囲にて残留Si塊の組成が変動しても、充分使用に耐えうる高温構造材を製造できることが判る。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、SiC−Si複合材料製造におけるSi含浸工程において、発生する余剰の残留Si塊を再生利用するものである。かかる本発明によれば、残留Si塊といった産業廃棄物を大幅に削減出来るとともに、より安価なSi34 −SiC複合焼結体の製造が可能となる。
【0029】
これにより、焼成炉用棚板、支柱、匣鉢、ガスタービンやターボローター等の熱機関構造用として、またはその他の耐熱材料として、実用化を推進するとともに、その用途を拡大する事ができる。

Claims (1)

  1. SiC−Si複合材料製造工程において排出される残留Si塊であって、Siが30〜60重量%、β−SiCが40〜70重量%である残留Siを5〜50μmに粉砕し、該残留Si塊の粉末と酸化イットリウム及び酸化アルミニウムからなる焼結助剤を含むグリーン体を、窒素雰囲気中1350℃〜1450℃で反応窒化する第1焼成工程と、窒素雰囲気中1600℃〜2200℃で焼結する第2焼成工程を具備することを特徴とするSi34−SiC複合焼結体の製造方法。
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