JP4796236B2 - ポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂製光反射体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用ランプのハウジング、リフレクター、エクステンション、照明器具のハウジングなどに使用される光反射体およびこれの基材として好適に使用されるポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ランプ等に使用されるリフレクターやエクステンションなどの光反射体は、基材の表面に金属膜が設けられて形成されたもので、基材の材料には、従来より熱硬化性樹脂からなるBMC(バルクモールディングコンパウンド)が使用されている。しかし、BMCは耐熱性、寸法安定性等に優れるものの、成形時のバリなどの処理に手間がかかり成形サイクルが長く、生産性が低いという問題があった。そのため、基材として熱可塑性樹脂材料の成形体を用いる検討が行われてきている。
【0003】
このような熱可塑性樹脂材料としては、ポリエステルに種々の強化材を配合したものが使用されている。例えば、特開昭61−133234号公報においては、ポリアルキレンテレフタレートに微粉末フィラーを強化材として配合したものが提案されている。しかしながら、これから得られた成形体はフィラーの浮だしや離型不良により表面性が優れない。成形体表面にプライマー処理をする場合には、このような表面性不良をカバーできるものの、プライマー処理をすると工程が余分に必要であるとともに、プライマーに使用される溶剤の処理が必要であり、さらに塗料を乾燥するためにエネルギーを消費する。よって近年では、熱可塑性樹脂の成形体を基材とし、プライマー処理を必要としない光反射体の製造方法が検討されている。
【0004】
このような製造方法として、近年、ダイレクト蒸着(直接蒸着)法が提案されている。ダイレクト蒸着法は、成形体の表面に直接金属を蒸着するか、プラズマ活性化処理を施した後に金属膜を形成させる方法であるため、これまで以上に成形体の表面平滑性が求められるようになっている。
また、一方で最近の自動車ランプや照明器具には、輝度を高めるために高出力のランプが使用されるようになっている。そのため、基材である成形体にも160〜180℃の温度に耐えうる耐熱性が要求されるようになっていて、このような高温の環境下で長時間使用された場合であっても安定であることが必要になってきている。長時間の使用における安定性が不十分だと、熱可塑性樹脂からガスが発生し、そのガスによって金属膜の表面が曇ってしまう場合がある。
【0005】
表面平滑性、耐熱性に優れ、金属膜表面の曇りも低減可能な熱可塑性樹脂材料として、例えば特開平12−35509号公報には、末端カルボキシル基の量を少なくし、カルボキシル基の分解を低減し、耐熱性を向上させたポリブチレンテレフタレートが開示されている。また、特開平11−242006号公報には、ポリアルキレン樹脂およびポリカーボネート樹脂と、シリコンオイルと、粉末状フィラーとからなる組成物を基材とした光反射体が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平12−35509号公報の方法においては、末端のカルボキシル基を減らしても、成形時に受ける熱履歴によりカルボキシル基が再び生成してしまうために、根本的な解決にはならず、金属膜の安定性も不十分であった。また、特開平11−242006号公報の組成物は成形流動性が悪く、成形体の肉厚を厚くしたりゲート点数が増えたり、また、十分な平滑性が得られないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、光反射体の基材に適した成形性、表面性、耐熱性を有し、金属との密着性が良好なポリエステル樹脂組成物を提供するとともに、高温環境下でも金属膜に曇りを生じにくい光反射体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、酸化ランタン(B)0.5〜10質量部と、酸化チタン(C)2〜50質量部が配合されていることを特徴とする。
上記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらに脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)0.05〜2質量部が配合されていることが好ましい。
上記ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらにカーボンブラック(E)0.05〜2質量部が配合されていることが好ましい。
上記ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A−1)55〜95質量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(A−2)5〜45質量%との混合物であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂製光反射体は、上記ポリエステル樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に、光反射金属層が形成されていることを特徴とする。
上記光反射金属層は、蒸着により形成されていることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物に使用されるポリエステル樹脂(A)は、熱可塑性のポリエステル樹脂であり、芳香族ジカルボン酸、脂環式のジカルボン酸またはこれらの誘導体と、ポリオールを重縮合して得られるものである。芳香族ジカルボン酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、脂環式のジカルボン酸としてはシクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。ポリオールの例としては、メチレン鎖が2〜6であるエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどのポリアルキレンジオールや、ビスフェノールAにポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールが付加した付加体などがあげられる。
【0010】
ポリエステル樹脂(A)としては、これらのジカルボン酸またはこれらの誘導体とポリオールとから得られるものであれば制限はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステルが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせた混合物として用いることができるが、特に、成形性、成形体の外観、経済性の観点からポリブチレンテレフタレート(A−1)とポリエチレンテレフタレート(A−2)の混合物が好適である。混合物中におけるそれぞれの比率は、ポリブチレンテレフタレート(A−1)が95〜55質量%で、ポリエチレンテレフタレート(A−2)が5〜45質量%であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの比率が45質量%を超えると、ポリエステル樹脂組成物を成形する時のサイクル時間が延びる等成形性が悪化する傾向があり、5質量%未満では、得られた成形体の表面平滑性が悪化する傾向がある。
【0011】
使用されるポリブチレンテレフタレート(A−1)としては、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールからなるポリブチレンテレフタレート成分70質量%以上と、他のモノマー単位とから構成される共重合体であってもよい。他のモノマーのうちジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸等の脂肪族、芳香族多塩基酸またはそのエステル誘導体などが挙げられる。また、ポリオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの通常のアルキレングリコール;1,3−オクタンジーオールなどの低級アルキレングリコール;ビスフェノールA、4,4‘−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等のアルキレンオキサイド付加体アルコール;グリセリン、ペンタエリストール等のポリヒドロキシ化合物;またはこれらポリオールのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ポリブチレンテレフタレート(A−1)としては、20℃で測定した極限粘度(η)が0.5〜1.0であるものが好ましい。極限粘度が0.5未満の場合には得られた成形体の強度が低下する傾向があり、一方、1を超えると流動性低下による成形体の表面平滑性が問題になる場合がある。
【0012】
使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂(A−2)は、テレフタル酸またはそのエステル誘導体と、炭素数2のアルキレングリコールまたはその誘導体を重縮合させて得られるポリマーであるが、このようなポリエチレンテレフタレート成分70質量%以上と、他のモノマー単位とから構成される共重合体であってもよい。他のモノマーのうちジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸等の脂肪族、芳香族多塩基酸またはそのエステル誘導体などが挙げられる。また、ポリオール成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどエチレングリコール以外の通常のアルキレングリコール;1,3−オクタンジーオールなどの低級アルキレングリコール;ビスフェノールA、4,4‘−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族アルコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等のアルキレンオキサイド付加体アルコール;グリセリン、ペンタエリストール等のポリヒドロキシ化合物;またはこれらポリオールのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレート(A−2)としては、流動性が優れ、また得られる成形体の外観が良好となることから、20℃で測定した極限粘度(η)が0.5〜1.0であるもののものが好ましい。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、酸化ランタン(B)はフィラーとして配合されるものである。特に酸化ランタン(B)を配合すると、ポリエステル樹脂からなる成形体の強度が向上するとともに耐熱性も向上し、成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りを抑制することができる。酸化ランタン(B)はランタンの蓚酸塩、水酸化物、炭酸塩などを空気中で800〜1000℃程度で加熱して調製される通常のもので、製造方法に制限はない。使用される酸化ランタン(B)の純度も特に限定しないが、90%以上が好ましい。また、酸化ランタン(B)の平均粒子径は、成形体の表面平滑性の点から30μm以下が好ましい。より好ましくは、配合量を増やしても得られる成形体の表面平滑性が優れることから6μm以下が好ましい。
酸化ランタン(B)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、1〜5質量部がより好ましい。このような範囲であると、成形体の表面平滑性を維持しつつ、成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りを抑制させることができる。0.5質量部未満では、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りを十分に抑制できず、10質量部より多いと成形体の表面平滑性が劣り、光反射金属膜を蒸着で形成できない恐れがある。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、さらにフィラーとして酸化チタン(C)を配合するとポリエステル樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りをより抑制できるうえ、成形体の剛性および耐熱性をもさらに向上でき、成形体表面の引け防止にも効果がある。また、酸化チタン(C)は安価であることからも好ましい。樹脂の剛性向上、耐熱性向上、引け防止に使用されるフィラーとして、一般的にはタルク、マイカなどがあるが、これら珪酸塩化合物を樹脂に配合すると、耐熱性向上、剛性向上、引け防止には効果があるものの、上述したような光反射金属層表面の曇りを抑制する効果はない。
使用される酸化チタン(C)は塩素法あるいは硫酸法によって製造されたものなどであり、アルミニウムや珪素の含水酸化物を表面処理剤として表面処理されたものなどでもよい。
酸化チタン(C)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して2〜50質量部であるが、5〜40質量部がより好ましい。2質量部未満では、耐熱性の向上、引け防止に効果がない場合があり、50質量部を超えると押出性に問題が生じ、成形体の表面平滑性が不十分となる場合がある。
また、酸化チタン(C)の平均粒子径は、成形体の表面平滑性の点から4μm以下が好ましい。より好ましくは、配合量を増やしても得られる成形体の表面平滑性が優れることから1μm以下が好ましい。
【0015】
このようにポリエステル樹脂(A)に酸化ランタン(B)が配合されたポリエステル樹脂組成物は成形体の強度が優れ、かつ、耐熱性も良好で、成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りを抑制でき、良好な光反射面を備えた光反射体が形成可能となる。また、さらに酸化チタン(C)を配合することにより、ポリエステル樹脂組成物は耐熱性、剛性などにもより優れ、光反射体への使用に適する。
【0016】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物には、脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)を配合することが好ましい。脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)を配合すると、ポリエステル樹脂組成物の成形時における離型性を高め、外観の優れた成形体を得ることができる。具体的には脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)として、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類の部分ケン化物、モンタン酸のグリセリンエステルの部分ケン化物が好ましく、これらのなかでも特に離型効果が高く少量添加で効果があることからモンタン酸のグリセリンエステルの部分ケン化物が好ましい。
ケン化に使用されるアルカリ水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの周期律表におけるIa族あるいはIIa族の水酸化物が好ましい。これらでケン化された脂肪酸エステルを配合すると、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して形成された光反射金属層の腐食も抑制される。
脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し0.05〜2質量部である。配合量が0.05質量部未満では良好な外観をもつ成形体が得られない恐れがあり、配合量が2質量部を超えるとポリエステル樹脂(A)の分解を引き起こす恐れがある。
【0017】
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物には、カーボンブラック(E)を配合することが好ましい。カーボンブラック(D)を配合すると、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体に形成された光反射金属層の腐食を抑制できる。カーボンブラック(E)の配合量は0.05〜2質量部である。0.05質量部未満では、光反射金属層の腐食抑制効果が十分に発現しない場合があり、2質量部より多いとカーボンブラック(E)が十分に分散せず押出性が悪化し、成形体の表面が不良となる恐れがある。また、カーボンブラック(E)の平均粒子径は、成形体の表面平滑性の点から4μm以下が好ましい。より好ましくは、配合量を増やしても得られる成形体の表面平滑性が優れることから1μm以下が好ましい。
【0018】
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物には、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂に配合される公知の物質、すなわち、染料や顔料などの着色剤、熱安定性を改良するための酸化防止剤等を配合してもよい。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、従来の樹脂組成物の調製法として一般に用いられている慣用の方法および装置により容易に調製できるが、方法としては溶融混練法が好ましく、装置としては、押出し機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダーなどが挙げられる。
こうして調製されたポリエステル樹脂組成物は、射出成形、ガスアシスト成形、冷熱サイクル成形、ブロー成形、押出成形など公知の方法で成形できるが、生産性の点から射出成形が好ましい。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂製光反射体は、上述のようにして得られたポリエステル樹脂組成物からなる成形体表面の少なくとも一部に、光反射金属層が形成されたものであり、自動車用ランプのハウジング、リフレクター、エクステンション、照明器具のハウジングなどに使用される。
光反射金属層を形成する方法としては特に制限はないが、次のように蒸着で形成することが好ましい。▲1▼まず、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体を真空に維持された蒸着装置内に配し、ついでアルゴン等の不活性ガスと酸素を導入して、成形体表面にプラズマ活性化処理を施す。▲2▼次に、蒸着装置内においてターゲットを担持した電極に通電することで、装置内に誘導放電したプラズマの作用で光反射金属膜を形成する金属スパッタ粒子を成形体に付着させる。▲3▼その後、必要に応じて、蒸着した光反射金属膜の保護膜として、珪素を含むガスをプラズマ重合処理する方法、あるいは、酸化珪素をイオンプレーティング法により光反射金属膜の表面に付着させる。
光反射金属膜を形成する金属としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタンなどが挙げられ、これらのなかでも特に環境に対する影響および経済性からアルミニウムが好ましい。また、光反射金属膜の厚さは50〜100nm程度である。
【0020】
このようなポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、酸化ランタン(B)0.5〜10質量部が配合されているので、成形体の強度が優れる。また、耐熱性にも優れ、成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りが抑制される。また、成形体表面の平滑性も維持できる。よって、良好な光反射面を備えた光反射体を形成することができる。このような光反射体は、自動車ランプのハウジング、リフレクター、エクステンションや家電照明用ランプケースなどに好適である。
また、ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、さらに酸化チタン(C)2〜50質量部が配合されてもよい。酸化チタン(C)を配合すると、成形体の耐熱性、剛性を向上でき、成形体表面の引け防止にも効果がある。
また、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらに脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)0.05〜2質量部が配合されると、ポリエステル樹脂組成物の成形時における離型性が向上し、外観の優れた成形体を得ることができる。
また、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらにカーボンブラック(E)0.05〜2質量部が配合されると、ポリエステル樹脂組成物からなる成形体に光反射金属層が形成された場合、その腐食を抑制できる。
さらにポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A−1)55〜95質量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(A−2)5〜45質量%との混合物であると、成形性、成形体の外観、経済性などがより優れる。
また、このようなポリエステル樹脂組成物は、成形加工時の流動性も良好なので、ゲートの設定が少なくてすみ、デザインの自由度や金型作製の際の自由度が増すメリットもある。
【0021】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜3および比較例1〜6]
以下に示す成分を、表1および表2に示す配合量(質量部)で配合し、V型ブレンダーで5分間混合、均一化させ、シリンダー温度260℃で30mmφのベント付き2軸押出機に投入し、ポリステル樹脂組成物からなるペレットを得た。
1)PBT(A−1):極限粘度0.7、カルボン酸量30meq/kgのポリブチレンテレフタレート
2)PBT(A−2):極限粘度0.9、カルボン酸量60meq/kgのポリブチレンテレフタレート
3)PET(A−3):極限粘度0.78のポリエチレンテレフタレート
4)酸化ランタン(B−1):ニッキ社製酸化ランタン(99.99%含有)
5)酸化チタン(C−1):石原産業(株)製タイペーク酸化チタンCR−60−2
6)酸化チタン(C−2):川鉄工業(株)製GTR−1、酸化チタン(C−1)を顆粒状にしたもの。
7)モンタン酸エステル部分ケン化物(D−1):ヘキスト社製ヘキストワックスOP
8)カーボンブラック(E−1):三菱化学社製カーボンブラック#960
9)タルク(F−1):平均粒子径 2〜3μm
【0022】
上記で得られたポリエステル樹脂組成物からなるペレットを用いて、射出成形機(東芝製IS80FPB)により、100mm角板を成形した。なお、シリンダー温度は270℃、金型温度は80℃とした。
この100mm角板の表面に、次のようにしてアルミニウムを直接蒸着した。
まず、真空下の蒸着装置内に不活性ガスと酸素を導入し、装置内をプラズマ状態にして、100mm角板表面を活性化させるプラズマ活性化処理を実施した。次に、真空下の蒸着装置内においてアルミニウムを担持した電極に通電した。この操作によって、装置内には誘導放電によりプラズマが生成され、プラズマ中のイオンはターゲットをスパッタし、ターゲットから飛び出したスパッタ粒子すなわちアルミニウム粒子が100mm角板表面に付着し、角板の表面全面にアルミ蒸着膜が形成された。アルミ蒸着膜の膜厚は80nmであった。
さらにアルミ蒸着面の保護膜として、真空プラズマ状態下にヘキサメチルジシロキサイドを導入し、ニ酸化ケイ素重合膜を形成させた。二酸化ケイ素重合膜の膜厚は50nmであった。
【0023】
このようにして得られた、アルミニウムからなる光反射金属層が形成された100mm角板を試料とし、この表面性(平滑性、白化の程度)を評価するために、下記の方法で、5°正反射率の測定と光反射金属層表面の目視評価とを行った。また、耐熱性、光反射金属層表面の加熱後白化の有無を評価するために、上記100mm角板を180℃で60Hr熱処理した後、5°反射率の測定と目視評価とを同様に行った。さらに耐熱性評価のために、下記の方法で荷重たわみ温度を測定した。
1)5°正反射率
日立製分光光度計U−1600を用いて、波長550nmにおける光度を測定した。この5°正反射率は、100mm角板の表面平滑性、光反射金属層の白化、熱処理後の変形などに大きく依存する。また、強化材の種類や配合量によって表面平滑性が劣ったり、熱処理後にユズ肌状の外観不良や蒸着面の白化、変形などが発生した場合には低下する傾向にある。
なお、初期あるいは180℃×60℃Hr加熱後の5°正反射率が80%以上のものを、光反射体としての機能を果たす目安とした。
2)目視評価
表面性(平滑性、光反射金属層表面の白化の状態)を目視評価し、許容レベルにあるものを〇、許容レベルにないものをその程度に応じて△、×とした。
結果を表1および表2に示す。
3)荷重たわみ温度
荷重たわみ温度の測定は、ASTM D−648に準じ、試験片にかかる応力が0.46MPaとなる測定用ウェイトを使用して測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1および2から明らかなように、本実施例のポリエステル樹脂組成物からなる成形体は表面平滑性に優れ、180℃の熱処理によっても表面変形がほとんどなく5°正反射率が高く維持されていた。また、熱処理による光反射金属層表面の白化や表面性の低下も小さく抑制されていた。さらに、実施例の成形体は、荷重たわみ温度が180℃以上を示した。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形体の強度や表面平滑性に優れるだけでなく、耐熱性にも優れ、成形体の少なくとも一部に金属を蒸着して光反射金属層を形成し、これを加熱エージングした場合における光反射金属層表面の曇りが抑制され、良好な光反射面を備えた光反射体を形成することができる。このような光反射体は、自動車ランプのハウジング、リフレクター、エクステンションや家電照明用ランプケースなどに好適である。
Claims (6)
- ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、酸化ランタン(B)0.5〜10質量部と、酸化チタン(C)2〜50質量部が配合されていることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらに脂肪酸エステルの部分ケン化物(D)0.05〜2質量部が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、さらにカーボンブラック(E)0.05〜2質量部が配合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A−1)55〜95質量%とポリエチレンテレフタレート樹脂(A−2)5〜45質量%との混合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に、光反射金属層が形成されていることを特徴とするポリエステル樹脂製光反射体。
- 光反射金属層は、蒸着により形成されていることを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂製光反射体。
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