JP4795280B2 - 連続式降下粉塵計測装置および連続式降下粉塵計測方法 - Google Patents

連続式降下粉塵計測装置および連続式降下粉塵計測方法 Download PDF

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Description

本発明は、大気中の降下粉塵の粉塵降下速度を測定する装置及び方法に関するものである。
種々の生産活動・消費活動に伴って発生する大気中の粉塵は、重大な環境汚染項目のひとつとみなされており、その実態把握と対策が社会から強く求められている。大気中粉塵の実態把握のためには正確な粉塵計測機器を開発して製造することが重要である。特に、具体的な環境対策を策定する場合には、特定の気象条件とそれに対応した短時間での大気中粉塵量測定値の組み合わせで問題箇所を探索する手法が有効であり、そのためには、大気中の粉塵計測を少なくとも1時間、望ましくは、1分から10分程度以内の短周期で計測する必要がある。
公的な降下粉塵管理は、図1に示すデポジットゲージを用いてなされることが多い。粒子採取口1に沈着した降下粉塵は、再飛散や降雨過程を経て捕集瓶7に雨水とともに受動的に捕集される。1ヶ月間に捕集した粉塵の総量から降下粉塵の平均的な粉塵降下速度に換算する。この手法は、古くから公的に認められた測定法であるので、他のいずれの降下粉塵計測方法を用いる場合でも、長期測定において、この器具での測定値との相関を示すことが求められる。
ここで、降下粉塵の理想捕集速度について定義しておく。降下粉塵の場合、主として、地表面への沈着が実際の環境汚染に対応する。地表面において、単位面積当たり単位時間当たりの粉塵沈着量、即ち、粉塵降下速度は、地表面直上での、粉塵種及び粒径別の大気中粉塵濃度と粉塵種及び粒径別の大気中粒子沈降速度とを乗じたもので定義される。大気中粒子沈降速度には、粒子の自由落下によるものと、大気乱流に起因する拡散によるものが含まれる。デポジットゲージの粒子採取口入口でも理想的にはこの粉塵降下速度が満足され、これを理想捕集速度と定義する。実際のデポジットゲージでは、計器の空気力学的抵抗等の理由によって、捕集できる降下粉塵速度は一般に理想捕集速度よりも減少する。実際の粉塵降下速度の理想捕集速度に対する比を粒子捕集効率と呼ぶ。
デポジットゲージには、測定の時間分解能が低いために短時間での大気中粉塵量測定値の組み合わせで問題箇所を探索する手法に適用することができないという問題がある。また、比重1の粒子に換算して約4〜7μm未満の粒子は、周囲気流への追従性が高いために容易には壁面に付着できない。このため、デポジットゲージには特に4μm未満の粒子は、ほとんど捕集されない。
降下した粉塵を直接測定するのではなく、大気中の粒子濃度を測定して粉塵降下速度に換算する手法もしばしば用いられる。大気中の粒子を測定する公的に認められた装置として代表的なのは、図2に示すハイボリュームサンプラである。粒子採取口1から粉塵を含む大気をブロワまたは圧縮機6で高流量で吸引して捕集フィルタ5上に捕集し、一定時間に捕集された粒子質量を吸引大気量で除して大気中粒子濃度を算出するものである。この計測法は、例えば4〜7μm以下の比較的小径の粒子に対しては一定の合理性を有するが、より粗大な粒子に対しては誤差が大きく実用的でない。これは、粗大な粒子は、周囲の大気流れへの追従性が低いので、吸引を行っても計器内に捕集することが困難だからである。ハイボリュームサンプラは、フィルタ交換を自動で実施できないので、連続的な粉塵濃度推移を測定することが困難という問題もある。
同様の吸引による大気中の粉塵濃度の測定原理を用いて、連続的な濃度分布推移を測定する計測装置として、SPM(suspended particulate matter)計が存在する。SPMとは大気中の直径10μm以下の粒子である。特許文献1に開示された構成のSPM計の概略を、図3を用いて説明する。粉塵粒子を含んだ大気は、粒子採取口1からブロワまたは圧縮機6によって装置内に吸引される。SPM計には吸気口の形状に特段の制約はないが、降雨時の雨水浸水を防止するため、通常、水平方向、または、下方に開口を有する円管開放端とする場合が多い。吸引された粉塵を含んだ大気は、粒子採取口直後に配置された粗大粒子フィルタ3によって10μmを超える粗大な粒子が除去される。粗大粒子フィルタとしてはグリース塗布したインパクタやサイクロン等の空気力学的分級器等が用いられる。粗大粒子フィルタによって除去された粗大粒子は、装置外に廃棄される。粗大粒子フィルタを通過したSPMのみを含む大気は、粒子採取口気流路2’を通ってβ線吸収式質量測定器4内に流入し、空気中の粉塵のみが捕集フィルタ5上に捕集される。捕集粉塵に対して一定時間β線吸収式の質量測定が実施される。β線吸収式質量測定は、乾式・非破壊的に高速で微量の試料の質量を計測できる利点があり、1時間程度以内の短周期での連続粉塵計測で最も広く採用される方法である。質量測定が終了した後、捕集フィルタ送り装置14を作動させて粉塵の付着した部位の捕集フィルタをβ線吸収式質量測定器から回収するとともに、次の測定用に、未使用の捕集フィルタ部位をβ線吸収式質量測定器内に送りこむ。図3では捕集フィルタとしてテープ状のものを用い、また、捕集フィルタ送り装置として、未使用のテープ状の捕集フィルタを予めロール状に巻いたものを送り出し、粒子捕集済みのテープ状捕集フィルタをロール状に巻き取る機構を用いている。捕集フィルタ5によって粉塵の大半を除去された吸気は、β線吸収測定中は、気流路2’を通って外気中にそのまま放出される。尚、捕集フィルタによって粒子を捕集する場合、極端に小さい粒子が捕集フィルタを透過してしまうことは、原理的に避けられない。透過する粒子の上限直径は、公的に規準値、例えば、0.3μmが定められている。ここで、この極端に小さい粒子の大気中での質量構成率は一般に小さいので、この粒子の影響を無視する。以下、単に「微小粒子」と記述する場合には、直径0.3μm以下の粒子(または、公的に認められる捕集フィルタ透過粒子)を暗黙に除外するものとする。大気の吸引中に捕集フィルタ上の部分的な目詰まりが生じることによって、配管系の圧力抵抗は刻々と変化するので、この影響を補償する様に、吸引流量は、流量制御装置9等を用いて一定に制御される。SPM計も吸引による粉塵捕集法であるので、粗大な粒子を採取する目的には使用できない。
SPM計を発展させたものとしてPM2.5(particulate matter 2.5) 計が存在する。特許文献2に開示された図4に示す装置では、吸気された大気は、まず、粗大粒子フィルタ3を通過して大気中の直径10μmを越える粗大粒子が除去されて大気中の粒子は、SPMのみになる。次に、大気は分級器8を通過し、SPMのうちでより小径のPM2.5(比重1相当の粒子に換算して、粒径分布の中央値が2.5μmの粒子)とそれ以外の比較的粗大なSPM粒子を含む気流を分離してそれぞれ別系統の捕集フィルタに粉塵粒子を捕集する。分級器としては慣性分級器の一種であるバーチャルインパクタが用いられる。捕集された前記2系統の粉塵粒子は、β線吸収式質量測定法によってそれぞれの系統での連続質量測定が行われる。PM2.5計も粗大な粒子を採取する目的には使用できない。尚、バーチャルインパクタ等の空気力学的分級器を用いる場合、気流への追従性の高い微小粒子の一部が、粗大粒子側の気流に混入することが原理的に避けられない。しかし、この微小粒子の混入量はバーチャルインパクタにおける分流流路間の流量比に比例し、粗大粒子側へ分流される流量割合は一般に小さいので、分流気流とともに粗大粒子側に流れる微小粒子量の全吸引微小粒子量に対する割合も小さい。このため、粗大粒子側に分流された微小粒子の影響は、一般に無視される。
粗大な粒子も含めた降下粉塵を直接的、かつ、連続的に測定する装置として、連続式降下粉塵計が考案されている。市販されている装置の概要を図5に示す。これは、基本構造として、SPM計の吸引端に、上方に開口を有するデポジットゲージ型形状の粒子採取口1を付与したものである。さらに、実質的な外気の吸引を行わないようにするため、粒子採取口下端から吸引された大気は循環気流路11’を通って装置内を循環し、除塵フィルタ10によって除塵された後、粒子採取口内に吐出される機構になっている。通常1時間単位での粉塵降下速度の計測が可能であるが、これより短い周期で計測を行うことは、採取できる粒子質量が一般に過小なため、SN比の制約から不可能である。従って、この装置の時間分解能は、十分とはいえない。また、この装置においては、単位時間に採取された粉塵量を粒子採取口の断面積で除して降下粉塵量を算出しているが、この計測された長期間平均の粉塵降下速度がデポジットゲージと大きく異なる傾向を示す場合が多く、かつ、その原因も不明という問題が存在する。さらに、降下粉塵の挙動を把握するためには粒径分布が極めて重要な情報である。なぜならば、大気中の粉塵の平均落下速度は、粒径の2乗弱に比例するので、粉塵の飛散可能距離が粒径によって大きく異なるからである。しかしながら、この装置では粒径分布を測定することはできない問題がある。
降下粉塵の粒径分布を連続的に把握しうる装置として、特許文献3に開示された、レーザ光を粉塵に照射してその散乱光を測定することにより粒度分布を求める手法が存在する。しかし、この装置には、分析に必要な最低粒子数があること、並びに、粒子が一様な流体で囲まれていること等の制約がある。このため、例えば、β線吸収式連続粉塵計で採取される様な少量、かつ、捕集フィルタに付着した粒子の測定は困難である。
また、粒径分布を連続的に計測する他の方法として、特許文献4に開示された画像処理による粒径分布測定方法が存在する。この方法は、平面上の粒子を測定可能で、測定に必要な最低粒子数の制約がなく、さらに、高速のデータ採取が行える点で有利である。しかし、この手法の前提として、粉塵画像上で個々の粉塵を他の粉塵から区別して認識できるように、単位時間ごとに降下粉塵を採取する必要がある。このような降下粉塵採取装置は従来存在しなかった。
特開2006−3090号公報 特許第3574045号公報 特開2004−117005号公報 特開2001−337027号公報
以上述べたように、従来技術において、デポジットゲージによる粉塵降下速度計測値と良い相関をもち、1〜10分程度の短周期での粉塵降下速度計測が可能で、かつ、粒径分布を測定可能な連続式降下粉塵計は存在しない。このため、特定の気象条件とそれに対応した短時間での大気中粉塵量測定値の組み合わせで問題箇所を探索することは困難である。
本発明は、この問題箇所探索に適用可能な、実用的な連続式粉塵計測装置及び連続式粉塵計測方法を供することを目的とする。
そこで、本発明者の降下粉塵計測に関する研究の結果、以下の解決方法を発明するに至った。
[第1発明]
第1発明は、上方に向けた開口を有すると共に、下端が気流路と接続されている、ろうと状の粒子採取口と、前記粒子採口内に存在する大気中粒子を大気と共に前記粒子採取口の下端から前記気流路を通して吸引するためのブロワ又は圧縮機と、前記粒子採取口の後段に設けられ、前記粒子採取口から吸引された前記大気中粒子を粗大粒子と微小粒子に分ける分級器であって、該分級器が比重1の球形粒子に換算して直径4〜7μmを分級境界とする分級器である少なくとも1台と、前記分級器の後段に並列に設けられ、前記分級後の粗大粒子と微小粒子をそれぞれ、一定時間ごとに捕集面が更新されるテープ状又はカートリッジ交換式の捕集フィルタに捕集して、当該捕集されたそれぞれの粒子の質量を質量測定器によって連続計測し、前記分級後の粗大粒子と微小粒子それぞれにおける質量総量の時間変化を計測する、又は更に、前記計測された粗大粒子と微小粒子それぞれの質量総量の時間変化から前記粗大粒子の粉塵降下速度及び前記微小粒子の大気中濃度を算出する、前記粗大粒子計測部及び微小粒子計測部と、前記計測部の後段に設けられ、前記捕集フィルタに捕集されなかった粒子を前記計測後の吸引された大気から除塵する除塵フィルタと、前記粒子採取口、前記分級器、前記粗大粒子計測部及び微小粒子計測部、及び前記除塵フィルタを、この順番に接続し、前記吸引された大気を順次通す気流路と、前記除塵後の大気を前記粒子採取口内に排気する循環気流路と、前記気流路又は前記循環気流路の流路中に設けられたブロワ又は圧縮機と、前記粗大粒子計測部及び前記微小粒子計測部を通過する気流量をそれぞれ所定の値に制御する流量制御装置と、前記粒子採取口の入口に、前記粒子採取口の入口面と垂直方向に間隔を置いて複数設置する、前記粒子採取口の入口面と垂直方向に通気抵抗を発生させる気流抵抗体と、前記分級器のうち少なくとも1台の前記微小粒子に分けられた後段、且つ前記微小粒子計測部の前段の位置から、前記粗大粒子計測部及び微小粒子計測部の後段、且つ前記除塵フィルタ前段の位置まで、前記微小粒子を含む吸引された大気の一部を流通させるバイパス気流路とを備えていることを特徴とする連続式降下粉塵計測装置である。
従来の連続式降下粉塵計には、大気とともに吸引した粒子を予め分級して分級サイズごとに質量測定を行うものは存在しない。
従来のβ線吸収方式連続式降下粉塵計における降下粉塵の粉塵降下速度算出理論では、粒子採取口下端から単位時間当たりに吸引された大気中の粒子質量全てを粒子採取口入口断面積で除したものを降下粉塵の粉塵降下速度としていた。しかし、本発明者の詳細な調査の結果、この理論は、誤りであることが判明した。以下、具体的に説明する。
屋外で有風時の連続粉塵計の粒子採取口付近断面での一般的な流れ場の概念を図7に示す。粒子採取口は、大きく上下二領域に分割できる。上部は、外気の風の粒子採取口への巻き込みによって発生する旋回流の支配する領域であり、これを「外気流支配領域」と呼ぶ。粒子採取口入口に特別の減風機構を設置しない限り、外気流支配領域での主流速度は、外気の風速と同程度の値、例えば、数m/sに達する。下部は、粒子採取口下端での吸気により粒子採取口下端方向への流れが顕著な領域であり、これを「吸気支配領域」と呼ぶ。これら二領域の境界を「粒子採取口内部流れ場境界」18と呼ぶ。粒子採取口内部流れ場境界の上下方向位置は、外気流速と吸気流量の比で変化し、高風速時にはより下方へ、高流量で吸引する場合にはより上方へ移動する傾向となる。粒子採取口内でのこのような流れ場上で、粒子採取口入口から粒子採取口内に進入した粒子の軌跡の概念は、大きく、次の3つの場合に分類できる。第1の場合は、粒子径が、例えば、数百μm以上と非常に大きい場合の軌跡であり、このときの粒子軌跡は、旋回流等の流れ場の影響をほとんど受けずに、そのまま粒子採取口下端から吸気とともに計測器内に流入する(図8の軌跡a)。つまり、粒子採取口入口に進入した全粒子が吸引されるので、粒子採取口入口は、実質的な吸着面(仮想吸着面と呼ぶ)として作用することになる。図8に非常に粗大な粒子の仮想吸着面22の位置を示す。第2の場合は、粒子径が数μmから数十μm程度である大気中を自由落下する、一般的な粒径の粗大粒子の場合であり、粒子採取口入口から粒子採取口内に進入した粒子の大部分は、外気流支配領域内の旋回流とともにこの領域内を回転し、一部の粒子は、粒子採取口内部流れ場境界を越えて吸気支配領域に進入して粒子採取口下端から吸気とともに計測器内に流入するが(図8の軌跡c)、大半の粒子は、再び粒子採取口入口から外気に放出されてしまう(図8の軌跡b)。この場合、一般的粒径の粗大粒子での仮想吸着面23は、粒子採取口内部流れ場境界と一致する。粒子捕集量が粒子採取口入口断面積ではなく、仮想吸着面断面積であることの証拠として、本発明者は、従来の連続式粉塵計に対して、同一循環(吸引)流量で異なる粒子採取口入口断面積条件(直径130mm、200mm、並びに、300mm)の装置を個別に準備し、同一地点で同時に粉塵採取実験を行った。その結果、全ての装置についてほぼ同じ粉塵採取量が得られた。粒子採取中に粒子採取口内部の速度分布を測定した結果、いずれの装置でも粒子採取口下端−粒子採取口内部流れ場境界(仮想吸着面)の距離は一定であった。つまり、仮想吸着面面積が粉塵採取量を支配していることがわかった。この事実も本発明者が初めて見出したものである。第3の場合は、数μm以下の大気中を単に浮遊する粒子の場合であり、粒子の軌跡は、大気の流れとほぼ完全に一致するので粒子採取口内での粒子濃度は、ほぼ一様であり、計測器内に吸気される粒子量は、吸気流量と外気濃度だけに依存する(厳密には粒子採取口中に吐出された循環流の分だけ粒子濃度は減少するが、有風時には外気と粒子採取口内との物質交換が著しく強いので、循環流による粒子濃度低下効果を実質的に無視できる)。従って、仮想吸着面の概念は存在しない。粒子軌跡は、第2の場合と同様である。以上の分類と、連続式降下粉塵計における粉塵降下速度算出についての従来理論との関わりを述べる。第1の非常に粗大な粒子の場合、粒子採取口入口を通過した粒子全てが採取されるので従来理論で問題ない。次に、第2の一般的な粒径の粗大粒子の場合では、粒子採取口内部流れ場境界、即ち、仮想吸着面を通過した粒子のみが採取されるので、採取した粒子を仮想吸着面面積で除したものが降下粉塵の粉塵降下速度に対応するはずである。従って、採取量を粒子採取口入口断面積で除する従来理論は誤りである。さらに、第3の微小粒子の場合では、微小粒子は地表への沈着速度が一般に低いので、降下粉塵の粉塵降下速度への影響は本来、小さい。しかし、従来装置では、実際に粒子が地表に沈着しうるかとは無関係に大気中の微小粒子を吸引により強制的に捕集し、かつ、採取された粒子と降下粉塵の粉塵降下速度との関係は不明であるので、算出された微小粒子分の降下粉塵速度の根拠は薄弱である。従って、第1から第3の粒子を含む全捕集粒子を合計した採取粒子質量を、単に粒子採取口断面積で除して降下粉塵速度に換算する従来理論の妥当性は極めて低い。
この様に誤った理論をもとに構築された従来装置でのハード面での最大の問題は、採取した粒子の粒子径構成率を測定できないことである。このため、粒子採取理論を適切に修正したとしても、従来装置で採取された粒子質量を、修正理論に基いて採取粒子径ごとに補正して、適切な粉塵降下測定値に換算することが不可能である。また、従来装置はデポジットゲージとは全く異なる採取粉塵の選択性を示すので、従来装置による降下粉塵の粉塵降下速度がデポジットゲージと一般にかけ離れた値を示すのでは当然である。
本発明において、本発明者による上記、当業者の知り得ない、従来常識を覆す新知見を元に、降下粉塵に対応する粒子を、それ以外の粒子から分離して採取することにより、降下粉塵の連続的な粉塵降下速度を正確に計測することを初めて可能にしたものである。また、前述PM2.5計のように、吸引した外気中のSPMを分級して独立に連続質量測定を行う装置も存在する。しかし、PM2.5計では、そもそも吸引による捕集の困難な直径10μm以上の粒子については、その一部が粒子採取口に進入したとしても、測定精度を満足できないとみなして、予め捕集粒子から機械的に除外している。このため、粗大粒子の捕集性に関して何ら考慮されていない。また、分級の境界に関わる直径2.5μmという値も、主として発生源の種類や健康影響の観点から設定されたものであり、降下粉塵のみの分級の発想とは無関係である。つまり、PM2.5計では降下粉塵(直径10μm以上の粒子割合が高い)の捕集及び質量測定に関して、何らの考慮もされておらず、PM2.5計を単純に改造して本発明をなすことは、困難である。
[第2発明]
第2発明は、前記テープ状の捕集フィルタ上に捕集された粗大粒子を前記捕集フィルタとともに撮影するカメラを有すると共に、当該撮影された画像を画像処理して前記粗大粒子の粒径分布を測定する画像処理装置を有することを特徴とする第1発明に記載の連続式降下粉塵計測装置である。
連続式降下粉塵計には、集塵フィルタに捕集された粒子について画像処理粒子計測を行う技術は存在しない。
前述の様に、直径が数μm以下の単に大気中を浮遊する微小粒子は、大気中を自由落下しうる粗大粒子に比べて、降下粉塵として地表に沈着する確率が極端に低い。しかし、吸引により粒子を捕集するという連続式粉塵計の粒子採取特性によって、粗大粒子と同オーダの質量の微小粒子が連続式粉塵計に採取されてしまう。図5に示す従来の連続粉塵計では、全ての大きさの粒子を同一の捕集フィルタ上の位置で捕集していた。また、粒子は微小であるほど体積あたりの表面積が大きい。このため、捕集フィルタ上に捕集された粒子のうち、フィルタ上に占める断面積は、微小粒子によるものが粗大粒子に比べて圧倒的に広い。その結果、十分な精度を得るために必要な程度の質量の粒子を捕集フィルタ上に捕集した場合、一般に、捕集フィルタ上では図10に示すように全域が一様に暗色を呈する状態が観察されることになる。この様な捕集粒子の状態に対して個々の粒子を光学的に識別して粒径分布を求めることは困難である。また、他の方法、例えば、レーザ回折式粒度計を用いたとしても、フィルタ上に粒子が捕集された状態で粒度分布を測定することは原理的に不可能である。さらに、前述の様に、連続式粉塵計における従来の捕集理論では、連続式粉塵計に捕集された粒子は全て降下粉塵に対応するものとみなされていたので、捕集した粒子を大きさによって分離するという発想や、粒子を分離することの妥当性を保証する理論がそもそも存在しなかった。
これに対して、第1発明において開示した新理論(連続式粉塵計によって採取された微小粒子の大部分は降下粉塵とは無関係であること)に基づいて採取された粗大粒子を微小粒子から分離して捕集フィルタ上に捕集する第1発明を利用して、本発明では、粗大粒子間にフィルタ素地が露出する図11に示す様な捕集フィルタ上の粒子状態を撮影し、個々の粒子を識別して画像処理粒径計測を実施するものである。つまり、本発明においては、降下粉塵と対応づく大きさの粗大粒子のみを採取するための分級境界という物理的意味を有する粒径境界値を用いて粒子を分級すると、分級後の粗大粒子の画像処理粒径分布測定を行う際に、個別粒子の識別が極めて容易になるという本発明者による新たな知見を用いて初めてなされたものである。粗大な粒子のみを観察した場合に個別粒子の識別が容易であることは自明だが、例えば、直径50μm以上の粒子のみ捕集して画像処理粒径分布測定を行ったとしても、降下粉塵の粒径全範囲をカバーしていない(直径50μm以下の降下粉塵の粒径分布情報がない)点で、測定されたデータの妥当性及び有用性は低い。また、PM2.5計においても比較的粗大なSPM粒子とPM2.5粒子を分離して捕集しているが、比較的粗大なSPM粒子には、2.5μm直上のかなり微小な粒子が含まれているため、捕集フィルタ上の比較的粗大なSPM粒子を撮影しても、図11に示した様な明確な粒子間の識別が可能な画像を得ることは容易でない。仮に個別粒子が識別できたとしても、PM2.5計では直径10μm以上の降下粉塵を捕集できないので、降下粉塵に関するPM2.5計による粒径分布測定の有用性は低い。従って、当業者の知りえない、連続式粉塵計の粉塵径採取特性及び降下粉塵に占める粒径特性に関する今回の新知見無しに本発明を考案することはできない。
[第3発明]
第3発明は、前記カメラの撮影面となる前記捕集フィルタは、前記捕集フィルタに付着した粗大粒子の上から透明な保護フィルムで覆われていることを特徴とする第2発明に記載の連続式降下粉塵計測装置である。
従来の連続式粉塵計には、捕集フィルタを透明保護フィルタで覆う技術は存在しない。
従来の連続式粉塵計では、大気中から捕集して質量測定の終了した粒子を事後に分析するという発想はなく、粒子捕集済みの捕集フィルタは、何らの保護なく、巻き取られていた。SPMの様に比較的小径粒子の場合には比表面積が大きいため、粒子が捕集フィルタに付着し易く、フィルタを巻き取っても粒子が脱落することは少ない。また、同様の理由で巻き取り時のフィルタ裏面へのSPM粒子付着の影響も比較的小さいことが知られている。一方、降下粉塵の主体をなす直径4〜7μm以上の粗大粒子の場合、比表面積が小さいため、粒子とフィルタの接触による付着よりも粒子質量に比例する慣性力の方が大きくなりがちであり、フィルタへの付着性は低い。このため、粒子捕集済み捕集フィルタの巻き取り時に多くの粗大粒子がフィルタから脱落し、また、脱落しないものでも、一旦、フィルタ表面から離脱した粒子は、容易にフィルタ裏面に付着してしまう問題がある。また、粒径分布を測定する場合には、捕集した全粒子の粒径を測定しなければ精度を確保できない。これは、粒径によって、フィルタへの付着性が異なるため、捕集フィルタ表面に残留した粒子のみを測定した場合、付着性の高い微小粒子に重みのかかった粒径分布計測になってしまうからである。このため、従来装置では、オフライン法による画像処理粒子計測は原理的に困難である。
これに対して本発明では、粒子捕集済みフィルタの表面を保護フィルムで覆うことによってフィルタ巻き取り時の粒子の離脱、脱落を防ぐことができる。また、前述の様に粒径分布を計測する場合には捕集した全粒子を計測しなければならないが、オフラインで保護フィルムを剥がした後に画像撮影を行うと、保護フィルムに付着して除去された粒子の分の誤差が生じてしまう。そこで、本発明では、透明な保護フィルムを用いることによって、画像撮影時に保護フィルムを剥がすことなく保護フィルムを透過して撮像することにより、オフラインで画像処理するための粒子サンプルを良好な状態に保持することができる。従来の連続式粉塵計には、粒径分布を測定するという発想が存在しなかったので、捕集フィルタ表面を保護して捕集粒子の脱落を防止するという技術はあり得なかった。
ところで、従来のSPM計でも保護フィルムで捕集フィルタを覆う技術が存在した。これは、SPM中の化学組成を測定するために、粒子捕集後の大気との接触による汚染や捕集粒子からの気化離脱、並びに、紫外線による劣化を低減するためのものであった。このため、保護フィルムは、紫外線等の影響を受け難い不透明なもの、たとえばフッ素樹脂、のみが用いられていた。SPM計においては捕集する粒子が比較的小さく、粒子の捕集フィルタへの付着性が高いので、巻き取り時の粒子離脱、脱落問題はそもそも存在しない。実際、SPM計において、大気中で化学的に安定な物質種のみを問題にして捕集粒子のオフライン化学分析を行う場合には一般に保護フィルムが用いられることはない。また、保護フィルムを用いて、捕集された粒子のオフラインで粒子の化学分析を行う際には、通常、保護フィルムを剥がして捕集フィルタ表面の粒子のみを分析するか、粒子サンプルごとに切断して捕集フィルタ及び保護フィルムとまとめて捕集粒子を溶剤に浸漬した後、分析を行っていた。さらに、前述の様に、SPM計で画像処理粒子計測を行うことは実質的に不可能である。つまり、SPM計では、本発明でのような、捕集した粒子の分析を保護テープを透過して非破壊的に行うという発想は存在しなかったし、捕集粒子の脱落を防止する必要性も存在しなかった。
[第発明
従来の連続式粉塵計には、粒子採取口に通気抵抗体を間隔を置いて複数配置したものは存在しない。
前述の様に、有風時の連続粉塵計の粒子採取口内部での流れ場は、外気の巻き込みの影響を大きく受ける。このため、外気流速によって仮想吸着面高さが上下して粒子捕集特性が変動するという問題が存在する。もし、外気の粒子採取口への巻き込みを弱くする、または、外気流支配領域を常に一定の位置に限定することができれば、仮想吸着面高さが安定し、粒子採取特性の変動を減少させることができる。そこで、本発明では、粒子採取口入口面と垂直方向に通気抵抗を発生させる気流抵抗体を粒子採取口の入口に、粒子採取口入口面と垂直方向に間隔を置いて複数設置することにより、外気の巻き込み風速を減少させ、外気流支配領域を実質的に通気抵抗体のうち最外側のものと最内側のもの間の領域に限定することにより、仮想吸着面高さの安定化を実現する。また、仮想吸着面を上昇させることによって粒子捕集効率を向上させることにより、同一の循環(吸引)流量について、より大量の降下粉塵を採取することができるので、高時間分解能での降下粉塵量計測に必須であるSN比の向上効果を発揮できる。
従来の連続式粉塵計にも粒子採取口入口に防虫用の網が設置されることがあり、これは、通気抵抗体として機能しうる。しかし、本発明者の調査の結果、このような通気抵抗体が一箇所のみの場合には、多少の減風効果は認められるものの、仮想吸着面高さの上昇や安定化にはほとんど影響しないことが判明した。これは次の理由によるものである。まず、仮想吸着面を上昇させるためには仮想吸着面における平均的な吸引流速がここでの外気巻き込み流速と少なくとも同程度であることが必要である。ここで、吸引流速は粒子採取口の局所断面積(つまり、円錐ろうと状の粒子採取口では仮想吸着面高さの自乗)に半比例するので、仮想吸着面での巻き込み速度減少率の高々1/2乗でしか仮想吸着面は上昇しない。実際には、仮想吸着面が上昇すると仮想吸着面が外気により近づき、仮想吸着面での外気の巻き込み流の流速が増大して仮想吸着面の上昇を阻害するので、仮想吸着面上昇率は、巻き込み速度減少率の1/2乗よりもかなり低い値になる。一方、一般的な防虫網程度の開口率の通気抵抗体を粒子採取口入口に設置しても、外気流速の巻き込み速度を50%以上減じることは困難であること。従って、仮想吸着面の上昇代も25%を大きく下回る程度に留まるからである。
図12に示す本発明の特長は、単体では大きな減風効果を持ちえない通気抵抗体27を粒子採取口入口垂直方向に複数配置することにより、外気の巻き込み流の粒子採取口深部への侵入を防ぐことにより、仮想吸着面を最も内側の通気抵抗体直下に高位安定して維持する点にある。
本発明の原理を以下に説明する。外気の粒子採取口への巻き込みは、粒子採取口の外気流下流側内面に沿って粒子採取口深部方向に進入し、旋回して粒子採取口の外気流上流側内面に沿って上昇する主流を形成する。この旋回流を駆動するのは、外気流の連行効果(エントレインメント)によって発生する粒子採取口内部での負圧分布である。粒子採取口内では外気流の上流側ほど、より低圧分布となり、粒子採取口内では外気流の風下側から風上側への流れ(旋回流)が維持される。この旋回流の存在によって、連行効果により粒子採取口内で発生する負圧は緩和される。
粒子採取口に通気抵抗体を設置した場合の、旋回流に与える影響について説明する。まず、粒子採取口入口に大きな通気抵抗を有する通気抵抗体を単独で配置した場合、旋回流の流速を減少させて仮想吸着面を上昇させる効果は比較的小さい。これは、粒子採取口内での旋回流速が減少した分、外気流による連行効果で発生する負圧の緩和効果が減少して、粒子採取口内で外気流方向により強い圧力勾配が生成し、旋回流を回復させる作用が生じるからである。また、粒子採取口入口よりも十分に深い部分に大きな通気抵抗を有する通気抵抗体を単独で配置した場合も仮想吸着面を上昇させる効果は比較的小さい。これは、この場合、粒子採取口入口での外気の巻き込み風は、減風されることなく外気流風下側粒子採取口内面に沿った下向きの薄い高速気流を形成して通気抵抗体を通過するため、通気抵抗体で若干の減風を行っても、依然として高速を維持した下向きの高速気流が外気流風下側粒子採取口内面に沿って粒子採取口深部に進入してしまうからである。ところで、極端に開口率の小さい(例えば、開口率10%)の通気抵抗体を用いれば、仮想吸着面を上昇させることができる。しかし、この様な通気抵抗体では、本来採取すべき降下粉塵の通過も困難になるため、降下粉塵計測装置として成立しない。
以上の知見を元に、本発明者は、詳細な検討を行った結果、外気流風下側粒子採取口内面に沿った薄い高速気流の発生を抑制すれば、仮想吸着面を高位安定に維持することができることを見出した。具体的には、比較的抵抗の小さい通気抵抗体を外気流風下側粒子採取口内面に沿った流れが複数回通過するように通気抵抗体を配置することにより、外気流風下側粒子採取口内面に沿った薄い高速気流の発生を抑制を実現できる。これは、次の理由によるものである。比較的抵抗の小さい通気抵抗体であっても、粒子採取口の外気流風下方向内面に沿った流れがこれを通過する際には、下向き速度が減少するとともに、粒子採取口内面近傍での主流方向が下向きから外気流風上方向に若干転進する。これは、粒子採取口内の流れ場の主駆動源は、本来、粒子採取口入口直下での外気流風下方向から風上方向への圧力勾配であるので、この駆動力方向に直交する下向き風速を若干でも減少させれば、減速により余剰になった下向き流量が、容易に駆動力方向に転進するからである。但し、1回の通気抵抗の通過では粒子採取口の外気流風下方向内面に沿った流れの減風降下と駆動力方向への転進効果が小さいので(つまり従来装置のような単独の通気抵抗体の設置では転進効果が小さいので)、これを複数回繰り返す。その結果、最も内側の通気抵抗体を通過する時点で、粒子採取口の外気流風下方向内面に沿った流れは十分減速されているので、最早、粒子採取口の深部まで到達することはできず、仮想吸着面は、最も内側の通気抵抗の直下に維持されることになる。この方法の有利な点は、有風時の粒子採取口内に必然的に発生する旋回流全体を減風するのではなく、主として旋回流の風向のみを適切に導くことによって、旋回流が本来担っている、連行効果による粒子採取口内の圧力勾配の緩和効果を損なうことなく、仮想吸着面の高位安定化を効率的に実現したことにある。従来装置においては、粒子採取口内流れ場に関する知見が欠如しており、粒子採取口内での旋回流を制御することはおろか、旋回流の存在や、その重要性についてさえ全く知られていなかった。これらの新知見は、本発明をなすにあたって不可欠のものである。
[第発明]
発明は、前記粒子採取口の入口近傍の外周に、前記粒子採取口の半径方向外側に突出した水平な導流板を有することを特徴とする第1〜発明のいずれか1つに記載の連続式降下粉塵計測装置である。
従来の連続式粉塵計において粒子採取口は、単なる円錐台形状や円筒形状であり、特段の付加的な加工は施されていない。本発明では粒子採取口入口の周囲に導流板を設置する点で従来技術とは異なる。
連続式粉塵計の粒子採取口内での粒子捕集効率は、前述の様に、仮想吸着面面積により定まる。粒子採取口内での粒子捕集効率は、粒子採取口入口を通過して粒子採取口内に進入した粒子のうち、粒子採取口下端から吸引されるものの比率を表す。一方、これ以外にも総合的な粒子捕集効率に影響を与える要因として、デポジットゲージの説明をした際に説明した理想捕集に対する粒子採取口入口を通過する粒子の割合である、粒子流入効率が存在する。総合的な粒子捕集効率は、粒子流入効率に粒子採取口内での粒子捕集効率を乗じたものである。デポジットゲージの説明で述べた様に、従来の連続式粉塵計の様な粒子採取口が単なる円錐台形状や円筒状の場合、粒子採取口の空気力学的抵抗によって粒子の捕集効率が有風時に著しく低下する傾向を示す。本発明者の調査の結果、これは、有風時に粒子流入効率が低下することが原因であることが判明した。単に、デポジットゲージと連続式粉塵計の採取物間の対応性のみを重視する場合には、このような粒子流入効率の低下が存在しても、両測定器間で同一の粒子流入効率低下特性を示すように設定すれば問題ない。しかしながら、降下粉塵の測定は、測定地点の地表に降下粉塵が沈着する速度を正確に評価することが本来の目的である。この様な観点からは、粒子流入効率を高めて可能な限り理想捕集に近い粒子採取特性となるように計器を構成すべきである。
そこで、本発明では粒子採取口入口の周囲に導流板36を設置して、粒子流入効率を向上させたものである。その原理は、次のとおりである。粒子流入効率を低下させる原因は、粒子採取口及び計測器本体の空気力学的抵抗によって、粒子採取口前縁部(外気流の風上側)で外気流が上昇し、この上昇流とともに大気中の粒子が持ち上げられて、そのまま粒子採取口上方を通過するため、粒子採取口に粒子が流入できなくなることである。本発明においては、この粒子採取口前縁部での外気流の上昇を、導流板によって抑制して粒子採取口近傍で外気流を粒子採取口に対して平行に流れる様に導くことにより、粒子流入効率を高めることができる。さらに、粒子流入効率を高めて総合的な粒子捕集効率を向上させることにより、同一の循環(吸引)流量について、より大量の降下粉塵を採取することができるので、高時間分解能での降下粉塵量計測に必須であるSN比向上効果を発揮できる。
従来の連続式粉塵計の粒子採取理論においては、総合的な粒子捕集効率を暗黙に1とみなしており、粒子捕集効率を向上させるという発想がそもそも存在しなかった。また、SPM計においては、吸引による粒子捕集効率が粗大粒子で低下することが知られていた。しかし、そもそも、SPM計では粗大粒子を予め除去して測定の対象としていないので、降下粉塵に対する粒子流入効率を向上させる発想は存在しなかった。つまり、いずれの従来技術でも、粗大粒子に対する粒子採取口での粒子捕集効率を向上させる発想が欠如していた。
[第発明]
発明は、前記粒子採取口に、粒子採取口内面の付着粒子を除去するための加振機、ブラシ、又は気流吹き付け装置のうち1種または2種以上の組み合わせを備えることを特徴とする第1〜発明のいずれか1つに記載の連続式降下粉塵計測装置である
従来の連続式粉塵計には、粒子採取口内の粒子沈着物を除去する特段の機構は存在しない。
従来の連続粉塵計において粒子採取口内の粒子沈着物を除去する特段の機構が存在しない理由は、次のとおりである。第1に、従来装置においては、粒子採取口内に通気抵抗体が存在しないか、存在しても減風効果の小さいものなので、外気流速と同程度、例えば数m/sの旋回流が有風時には有風時(高風速時)には常に存在する。この高速の旋回流が粒子採取口内面の沈着粒子を再飛散させることによって、粒子採取口内面は比較的清浄な状態が保たれる。第2に、実用化された従来装置の粒子採取口直径は約100mm程度と小さいものに限定されているので、上記旋回流は粒子採取口の比較的深部まで高速を保つことができ、少なくとも、有風時には粒子採取口深部における旋回流の粒子採取口内面清浄化効果が低下する問題は顕著でない。無風時(低風速時)には従来装置でも粉塵付着が生じるが、その後に有風の状態があれば、粒子採取口内面粒子はそれ以前に付着していた粒子をまとめて、乾燥及び再飛散する。このため、数日にわたって粒子採取口内面に粒子が付着し続けることはなく、注意深く観察しなければ、粒子付着をみつけることは稀であった。従って、従来装置には、粒子採取口内面での付着粒子を除去するという発想が存在しなかった。しかし、従来技術におていも、例えば1時間程度の短周期での降下粉塵量を測定値の大小を問題にしていたので、無風速時に粉塵が粒子採取口内面に付着することは、計測すべき粒子の採取が遅れる結果をまねく。よって、本来、この付着を避けるべきである。つまり、従来技術において、粒子の粒子採取口内面への付着付着防止は、その実在する必要性が、単に認識されていなかっただけである。
一方、本発明の前提とする第1から第発明においては、高時間分解能での降下粉塵量計測の観点から、粒子採取口の拡大や粒子採取口深部での減風化を指向している。この結果、従来装置には存在しなかった、粒子採取口内面への粒子の付着という問題が顕在化する。この理由は、次のとおりである。まず、粒子採取口を拡大すると、粒子採取口深部での大気流速がそもそも低下し易く、粒子採取口内面清浄化効果が減少しやすいからである。次に、粒子採取口内で減風化を行うと、高速旋回流による粒子採取口内面清浄化効果が失われるからである。この様な粒子採取口内面への粒子付着が生じると、粒子捕集効率の低下や、外気中降下粉塵速度変動への計測値の追従性悪化等の悪影響が生じる。そこで、本発明において、粒子採取口内面に降下粉塵の付着防止機構を設置することによって、この悪影響を抑制する。
尚、従来装置でも、循環流を粒子採取口内に吐出する際、粒子採取口内面に沿って吐出しているので、この吐出流によって副次的に粒子採取口内面清浄化効果が生じる可能性がある。そこで、本発明者が調査した結果、市販の従来装置で吐出する循環流量(例えば、1Nm/時間)程度では吐出流の平均流速は、従来装置における有風時の粒子採取口内旋回流速よりも1桁以上小さいことが判明した。このため、吐出直後に吐出流は旋回流と乱流混合して粒子採取口内面には吐出流の痕跡はほとんど残ることがない。つまり、吐出流による粒子採取口内面清浄化効果は無視できるほど小さく、常に存在する旋回流による、粒子採取口内面清浄化効果が卓越している。従って、従来装置での循環流の粒子採取口内面への吐出流を降下粉塵の付着防止機構とみなすことはできない。
このような、粉塵の採取量および採取効率を向上させる際には粒子採取口内面に粉塵が付着し易いという現象は、本発明者が見出した新たな知見である。従来技術ではこの知見が知られていなかったので、粒子採取口内面への粉塵付着に対してほとんど考慮がなされていなかった。
[第発明]
発明は、前記粒子採取口には、その内面を加熱する加熱器を有することを特徴とする第1〜発明のいずれか1つに記載の連続式降下粉塵計測装置である
従来の連続式粉塵計には、粒子採取口内面を加熱する特段の機構は存在しない。
特に、臨海地域で連続式粉塵計を使用する場合には、海塩粒子が粒子採取口内に進入することが避けられない。海塩粒子は、相対湿度70%以上で潮解して粒子採取口内面への付着性が著しく増大する。従来の連続式粉塵計においても海塩粒子の付着は生じていたものと考えられるが、高湿度時に潮解して粒子採取口内面に付着した海塩粒子は、高湿度でない時に、従来装置の粒子採取口内に存在する高速旋回流によって容易に乾燥するとともに、気流によって粒子採取口内面から離脱除去されていたので、注目されることはなかった。
しかし、本発明者の調査の結果、高湿度時に潮解して粒子採取口内面に付着した海塩粒子は付着性がそもそも高いので、粒子採取口内に進入した他の非海塩粒子をも吸着してしまい、粉塵採取効率を一時的に著しく低下させていることが判明した。この結果、今回装置、従来装置ともに、海塩粒子が粒子採取口内面に付着して潮解している場合には、非海塩粒子の一部が一旦、粒子採取口内面上の潮解海塩粒子に補足されるので、質量測定の時間遅れや粒子捕集効率低下が生じる問題の存在することが明らかになった。そこで、本発明では、高湿度時であっても、粒子採取口内面を加熱して粒子採取口内面近傍での相対湿度を70%以下に保持することにより、粒子採取口内面に付着した潮解海塩粒子を乾燥させて、その付着性を減じることによって粉塵採取効率の低下を抑制するものである。また、海塩の潮解を防ぐためには、粒子採取口内面温度を外気温度よりも10℃以上高温に保つことにより実現できることを本発明者は見出した。
従来技術では、これら本発明者によって見出された新知見(潮解した海塩粒子が粒子捕集効率を低下させること、並びに、これを防止するためには粒子採取口内面温度を制御すればよいこと)が知られていなかったので、粒子採取口内面での海塩粒子の潮解に対してほとんど考慮されていなかった。
[第発明
従来の連続式粉塵計には、粒子採取口下端から吸気されて分級された微小粒子を含む大気の一部を、捕集フィルタを経由せずに除塵した後、該粒子採取口内に吐出する機構は存在しない。
計測装置内での循環流量を増大させることには次の利点がある。第1に、循環気流量を上昇させると、粒子採取口内流れに関して、外気流に対する吸引流の影響を増大させるので、仮想吸着面が高い位置で安定し、降下粉塵の捕集効率の高位安定化を図る効果がある。第2に、粒子採取口内に吐出する循環気流流量が増大するで、前述の粒子採取口内面に付着した粒子の再飛散を促進しうる効果がある。
しかしながら、従来装置の構造のままに、循環気流吐出量を著しく増大させることは不可能である。これは次の理由によるものである。β線吸収型質量測定では、捕集フィルタ質量とともに捕集した粒子の質量を測定している。このため、粒子質量測定のSN比を確保するために粒子捕集フィルタ厚は、その強度限界まで薄いものが採用されている。従来装置で循環気流吐出量を増大させた場合、循環気流は全て捕集フィルタを通過するので、通気抵抗によって捕集フィルタに加えられる力は、従来装置でのフィルタの耐力を超える。これを防ぐためには捕集フィルタの厚みを増大させる必要がある。この結果、捕集フィルタの質量増大によって採取粉塵計測のSN比が低下して検出できる採取粉塵量下限値が大幅に上昇して計測器として成立しなくなる問題が発生するからである。
そこで、本発明では、循環気流の一部をバイパスして一部のみの気流が捕集フィルタを通過するように導くことで質量測定のSN比確保のうえで望ましい、従来装置並みの薄いフィルタの使用と、粒子採取口への高流量での循環流吐出を両立させるものである。ここで、バイパス気流路には吸引した大気中の粒子の一部が必ず流れるため、質量測定を行う捕集フィルタ上の捕集粒子と質量測定に与らないバイパス気流路を通過する粒子に粒子が分離されることが避けられない。従って、妥当な計測を行うためには、気流のパイパス時に、適切に粒子を分離する理論および技術が必要である。その理論および技術について以下に説明する。
本発明の第1発明において、本発明者は既に、連続式粉塵計における吸引粒子を、降下粉塵に対応する、大気中を自由落下しうる粗大粒子と、単に大気中を浮遊する微小粒子に予め分級する装置、並びに、分級の妥当性を保証する理論を開示した。この理論に基いて、本発明では、分級後の微小粒子を含む気流から分流してバイパス気流とし、バイパスされなかった微小粒子と、粗大粒子の全量を捕集フィルタ上に捕集することとした。この方法では、吸引された粗大粒子は全量が質量測定されるので、降下粉塵(粗大粒子)の計測に対して、気流のバイパスは一切、影響を与えない。一方、微小粒子は、分流されてその一部のみが捕集フィルタ上に捕集され、質量測定された後、大気中の微小粒子濃度が算出される。ここで、微小粒子は単に大気中を浮遊するものなので、個々の粒子の運動は、その周囲の気流にほぼ完全に追従する。このため、微小粒子を含む気流では、その気流の流線がいかに変動しても、気流中の微小粒子濃度がほぼ均一に保たれので、微小粒子を含む気流を分流する際に気流中の微小粒子濃度は変動しない。従って、微小粒子のみを含む気流のごく一部のみを捕集フィルタを通過させて気流中の粒子を捕集すれば、分流される前の粒子濃度と同じ濃度が計測されることになる。つまり、本発明においては、微小粒子の質量測定に対しても、気流のバイパスは影響を与えない。
従来装置でも、バイパス気流路を設ければ薄いフィルタの使用が原理的には可能である。しかし、従来技術においては、粒子の分離特性性に関する知見が不十分であり、また、吸引した粒子を分離することの妥当性を保証する理論も存在しなかった。もし、本発明のような粒子の分級を予め行うことなしに、例えば、T字管路等を用いて安易に吸引気流の分流及びバイパスを行えば、粒子サイズに応じた気流変動への追従特性に応じて、粒子計測用の気流とバイパス気流の間で、予測のつかない粒子の分離が生じることは明らかであり、粒子の質量測定結果に大きな誤差を与えることになる。このため、従来技術において、吸引した粒子を分離することは、粒子採取特性に関して任意性が高く、問題のある計測方法とみなされ、採用されえなかった。
[第発明]
発明は、前記粒子採取口の開口部と、前記粒子採取口の下端から吸気された大気が最初に到達する前記分級器との間に備えられ、かつ、前記粒子採取口の下端へ向かって吸引される前記粒子を含む大気の水平旋回流成分を抑制可能な水平旋回流抑制器を備えることを特徴とする第1〜発明のいずれか1つに記載の連続式降下粉塵計測装置である。
粒子採取口から吸引された気流に強い水平旋回流成分(すなわち、気流路2の中心軸を回転中心とした気流成分)が存在すると次のような問題が存在するので、この成分は抑制されるべきである。まず、水平旋回流成分は吸気流中の固体粒子を吸気管中心軸からみて半径方向外側に押しやる効果があり、粒子が計測部に達する前に壁面に付着し易くなり、粒子捕集率の低下や粒子捕集の時間遅れ等の悪影響を招くからである。次に、第1〜第発明では吸引した大気中粒子をサイクロンやバーチャルインパクタなどの分級器を用いて分級するので、水平旋回流成分はこの分級特性に悪影響を与えるからである。特に、第1〜第発明では円錐ろうと状の粒子採取口を用いているので、粒子採取口入口で発生する不可避的な微小な水平旋回流が、下方に吸引されつつ回転半径を減じる間に角運動保存効果によって水平旋回流の旋回速度が急激に上昇するので、水平旋回流抑制の必要性は特に大きい。
[第発明]
発明は、第1〜発明のいずれか1つに記載の連続式降下粉塵計測装置を用いた連続式降下粉塵計測方法であって、前記粒子採取口から大気とともに採取された粒子を、前記分級器にて大気中を自由落下しうる粗大粒子とそれ以外の微小粒子に分級した後、前記分級された2種類の粒子の一部または全部を前記一定時間ごとにテープ状又はカートリッジ交換式の捕集フィルタの異なる部位に捕集し、更に、前記粗大粒子と前記微小粒子それぞれの粒子総質量推移を、それぞれ独立した質量測定器によって計測して、前記粗大粒子の粉塵降下速度及び前記微小粒子の大気中濃度を算出することを特徴とする連続式降下粉塵計測方法である。
[第発明]
発明は、第又は第発明に記載の連続式降下粉塵計測装置を用いた連続式降下粉塵計測方法であって、前記循環気流路の出口から、前記粒子採取口内面に沿って、前記除塵フィルタで除塵された大気を噴射するとともに、前記粒子採取口内面の全域において、大気中で自由落下しうる粗大粒子の発塵風速以上になるように前記噴射する大気の吐出流量を調整することを特徴とする連続式降下粉塵計測方法である。
従来の連続式粉塵計には、粒子採取口内面の全域において、大気中で自由落下しうる粗大粒子の発塵風速以上になるように循環流を粒子採取口内に吐出するものは存在しない。
前述の様に、従来装置での粒子採取口入口直下から粒子採取口内面に沿った循環気流の吐出自身には、粒子採取口内面での粉塵付着防止効果はない。これは、従来装置における循環流吐出流速が、外気巻き込みによる粒子採取口内での有風時の前記旋回流速に比べて著しく小さいからである。即ち、従来技術では、旋回流の影響を無視できる無風時には、循環流吐出により粒子採取口内面上に惹起される壁面上風速がそこでの粒子の発塵風速を下回るために粒子採取口内面付着粒子を再飛散させることができない。また、従来技術において有風時には、旋回流によって形成される流れ場が粒子採取口内では支配的であり、旋回流に循環気流吐出が加わっても、吐出後瞬時に旋回流に取り込まれてしまうので、循環流吐出の有無は、粒子採取口内面の浄化効果にほとんど影響を与えない。そこで、本発明では、第発明の装置を用いて循環気流吐出流速を粒子採取口内での旋回流速よりも大きくし、かつ、粒子採取口内壁面上の大部分で付着粉塵の再飛散風速よりも高い流速となる様に循環流を吐出する。これにより、有風時、無風時にかかわらず、粒子採取口への循環気流吐出による、粒子採取口内面での粉塵付着防止効果が発揮する。
本発明により、デポジットゲージによる粉塵降下速度計測値と良い相関をもち、10分程度の短周期での粉塵降下速度計測が可能で、かつ、粒径分布を連続的に測定できるようになり、特定の気象条件とそれに対応した短時間での大気中粉塵量測定値の組み合わせで問題箇所の探索を行うことができるようになった。
[第1発明]
以下、第1発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
次に、図6を用いて第1発明における装置構成を説明する。大気に対して、上方に開放した円錐ろうと状の粒子採取口1を通じて大気中流れとともに降下粉塵が計測装置内に進入する。装置内には、循環気流路11、粗大粒子用分岐気流路12、並びに、微小粒子用分岐気流路13が設置され、循環気流路の途中に配置されたブロワまたは圧縮機6によって、粒子採取口下端からブロワまたは圧縮機方向に循環気流が形成・維持される。粒子採取口1の入口付近には、循環気流路11が合流し、粒子採取口内に循環流を排気するので粒子採取口と外気間での流量は、平均的に零となる。粒子の自由落下、または、粒子採取口内下端からの吸気によって粒子採取口に進入した粒子の一部は、気流路2に進入する。気流路内の粉塵粒子は、気流によって分級器8に流入する。分級器の内部で粉塵は分級され、大気中で自由落下しうる粗大粒子(即ち、降下粉塵)を主として含む気流と、それ以外の微小粒子のみを含む気流に分流されて、それぞれ、粗大粒子用分岐気流路12及び微小粒子用分岐気流路13に分かれて分級器から流出する。粗大粒子用分岐気流路12は、粗大粒子計測部20に進入する。粗大粒子計測部内では、粒子を含む気流は、質量測定器4に流入する。粉塵粒子はこの測定器内の捕集フィルタ5上に捕集され、大気は捕集フィルタを通過してこの測定器から流出する。捕集フィルタに捕集された全粉塵粒子は、粒子捕集中に連続的に質量測定がなされる。この粒子質量測定値を、試料採取時間、並びに、数値流体解析や実測によって求めた粒子採取口内速度分布を用いて推定した仮想吸着面積で除することにより、降下粉塵の粉塵降下速度を算出できる。捕集フィルタは巻取りテープ式になっており、捕集フィルタ交換装置14によって一定時間ごとにテープを巻き取ることによって、新しいフィルタ部位と自動的に交換される。尚、捕集フィルタの全長が短い場合には、フィルタを巻き取る必要は特段なく、平坦なテープ状のまま、平面的にフィルタを移動させる回収装置によって回収してもよい。分級器の特性を安定化させるため、捕集フィルタを通過した大気は、流量制御装置9によって、作業中、常に一定流量になるように調整されている。同様の構造と手順により、微小粒子用分岐気流路気流中の微小粒子は、微小粒子計測部21に進入して、その質量推移が連続的に計測される。微小粒子の場合、降下粉塵速度は定義が困難なので、SPM計等と同様に、採取された粉塵量を粒子採取口下端で吸引した大気流量で除して大気中の粒子濃度に換算する。流量制御装置9の下流で、微小粒子用分岐気流路と粗大粒子用分岐気流路は合流して主循環気流路11に接続する。循環気流路11から粒子採取口内に吐出される大気は含有粒子の点で清浄でなければならないので、主循環気流路中11に除塵フィルタ10を設置する。循環流の粒子採取口への吐出は、従来の連続粉塵計測装置でのものと同様に、粉塵粒子採取口入口直下で全周均一に粒子採取口下端方向に粒子採取口内面に沿ってなされるようにすることが望ましい。尚、第1発明の装置に関わる一切の装置の設定・制御、並びに、測定値の記録・保存は、図示しない演算装置によって自動的に、または、この演算装置を外部から操作して、実施される。尚、採取された粗大粒子の質量測定値から粉塵降下速度を算出する装置、並びに、採取された微小粒子の質量測定値から大気中粒子濃度を算出する装置は、必ずしも計測装置内に存在しなくてもよい。この演算装置が計測装置外にある場合、計測装置内で測定された質量測定値を外部の演算装置にデータを移動させ、外部の演算装置で粉塵降下速度や大気中粒子濃度を算出すればよい。この方法の利点は、計測装置ごとに演算装置をもつ必要がないため、装置が小型化することである。データの移動方法は、通信線を用いてもよいし、計測装置内にリムーバブルハードディスク等の記録装置を設置して、記録装置を物理的に輸送して行ってもよい。また、本発明は、粉塵降下速度を高い分解能で正確に測定できることに特徴があるが、微小粒子を同時に測定すべき特段の必要性がない場合には、微小粒子計測部を省略して単なる気流路とし、設備費を低減させてもよい。
(粒子採取口)
降下粉塵採取量は、仮想吸着面面積に比例し、仮想吸着面面積は粒子採取口入口断面積以上にはなりえないので、粉塵粒子採取量を増大させて粒子質量測定のSN比を向上させる観点から、粒子採取口の面積は、大きいことが有利である。少なくとも、公的な長期降下粉塵捕集器であり、かつ、本質的にデポジットゲージと同一原理の測定器である米国式ダストジャーの直径110mm以上であることが望ましく、より望ましくは、長期間の降下粉塵採取を前提とした、デポジットゲージでの粒子採取口直径300mm(英国規格)以上とすることができる。また、降下粒子採取口が極端に大きい場合、粒子採取口への粉塵付着の悪影響の回避が困難になるので、粒子採取口直径は、直径1000mm以下にできる。但し、前述の様に、単に粒子採取口入口面積を拡大しただけでは粉塵採取量を増大させることはできず、循環(吸引)流量の増大による仮想吸着面の上昇と組み合わせて適用されるべきである。
粒子採取口のろうと形状は、上方に向けて広がる円錐台形状(簡単のため、単に円錐状と呼ぶ)が望ましいが、加工上の簡便さ等を優先して多角形錐状としてもよい。また、整流のために、粒子採取口入口直下部分のみ円筒状とし、それより下部を円錐状としてもよい。
ところで、採取した粉塵が粒子採取口近傍に付着することは、デポジットゲージの場合にはあまり問題ではない。これは、デポジットゲージは、一般に1ヶ月程度の長時間の測定を前提としており、測定中の降雨による洗浄捕集効果が期待できるからである。このため、デポジットゲージでの粒子採取口は、ろうと状の形状ではあるものの、ろうとを円錐とみなした場合の頂角は鈍角である。しかし、1時間周期程度の短時間測定を前提とする第1発明においては、粒子採取口近傍での粉塵付着は、測定の時間遅れの原因となるため、好ましくない。このため、第1発明においては、粒子採取口近傍での粉塵付着を抑制する手段として、粒子採取口をろうと状とし、このろうとを円錐とみなした場合の頂角を鋭角、より望ましくは、30°以下とすることができる。また、極端に鋭角なろうとの場合、ろうと長が長大となって粒子採取口内面積が大幅に拡大してかえって粒子付着を助長するので、頂角は5°以上であることが望ましい。粒子採取口内面の材質に関しては、粉塵の付着性を低下させるため、ステンレス鋼製、クロムめっきや亜鉛めっき等のめっき鋼製、アルミニウム製、アルミニウム合金製、マグネシム合金製、チタン合金製、または、表面のフッ素樹脂コーティングを採用することができる。
(分級境界)
図6の分級器8における分級境界について述べる。大気中で自由落下しうる大きさの粒子は、比重1の粒子に換算して直径4μm〜7μm以上である。従って、この範囲に分級境界を設定することが降下粉塵を選択的に採取する上で望ましい。また、分級された残りの微小粒子は、健康影響が大きいといわれる、SPMとPM2.5の中間的な大きさ定義の粒子である。従って、この分級された微小粒子は、これら健康影響に関する指標と密接な関係が存在することが期待され、大気質評価の重要な指標になりうるので、微小粒子を捕集して質量測定することには大きな意義がある。尚、既存の装置、例えばSPM計やPM2.5計との共用性を重視して、粗大粒子が直径10μm以上、または、PM2.5の上限直径以上(法的規準は存在しないが、概ね、直径3μmに相当する場合が多い)となるように分級境界を設定することも原理的には可能である。但し、この場合には採取された粗大粒子が降下粉塵の直径範囲(4μm〜7μm以上)とは一致しなくなるので、測定精度をかなり犠牲にしなければならず、用途が限られる。
(分級器)
粉塵のβ線吸収式の質量測定においては、正確な計測のために、試料が十分に乾燥している必要がある。また、短時間周期の計測を行うためには、装置内に次々と供給される粉塵を迅速にβ線吸収式質量測定器に送り込む必要がある。さらに、大気中でほとんど自由落下しない微小粒子をも分級する必要がある。さらに、粉塵中に含まれる数百μm程度の粗大粒子を分級することも必要である。静電集塵や湿式分級は代表的な分級方法であるが、この様な目的には適さない。大気中粉塵の分級には、乾式で、粒子サイズによらずに処理速度の高い、慣性式分級器、または、遠心式分級器を使用すべきである。
慣性式分級器としては、ルーバー分級器やカスケード型を含むインパクタ分級器を用いることができる。第1発明の用途としては、より望ましくは、分級後の2つの分岐流間の流量差が比較的小さく、流量制御を行い易い利点をもつバーチャルインパクタ型分級器を用いることができる。遠心式分級器としては、サイクロン式分級器を用いることができる。
(質量測定器)
質量測定方式は、望ましくは、連続的な測定に適した、市販のβ線吸収式を用いることができる。原理的に同様のγ線吸収式質量測定器やX線吸収式質量測定器を用いることもできる。さらに、市販の振動素子式マイクロ天秤型質量測定器も適用することができる。
(捕集フィルタ)
β線吸収式質量測定器及び同種の原理による質量測定器の場合、テープ状の捕集フィルタを用いることができる。捕集フィルタの交換には、テープ状の連続式捕集フィルタのロールを送り出して新たな捕集フィルタをこの測定器内に送り込むと同時に、測定済みの捕集フィルタを、駆動装置によって連続的にロール状に巻き取って回収する捕集フィルタ交換装置14を用いることができる。捕集フィルタは、粗大粒子計測部と微小粒子計測部でそれぞれ別のテープ状補集フィルタを用いてもよいし、テープ状捕集フィルタ及び捕集フィルタ交換装置を共用して、粗大粒子と微小粒子の捕集及び質量測定を同一テープ状捕集フィルタ上の異なる部位において同時に行ってもよい。捕集フィルタの材質は、粉塵の検出精度に与える影響を抑制するため、軽量で質量変化の少ないものが望ましい。この観点から、薄膜化が可能で、吸湿性の少ない、フッ素樹脂性の多孔テープを捕集フィルタに用いることができる。また、安価なテープとして、グラスファイバ製のテープ状捕集フィルタを用いることもできる。
質量測定器として振動素子式マイクロ天秤型質量測定器を用いる場合には、カートリッジ交換式フィルタを用いることができる。この方式では、質量測定器の試料設置部(マイクロ天秤部)に着脱可能なカートリッジケースに、所定の形状に加工されたフィルタを充填したフィルタカートリッジを用いる。1回の計測終了ごとに、フィルタカ−トリッジを交換する。一回の計測時間中のフィルタ質量の変化を振動によって検出することにより、捕集粒子の捕集速度に換算することができる。
(除塵フィルタ)
除塵フィルタは測定に用いられるわけではないので、余裕をもった大きな容量のものを用いることができ、定期的に除塵フィルタの交換さえ行えば、目詰まり等による作業の停止を招くことはない。フィルタ材質としては、一般的なグラスファイバ製のものや、市販のセラミックフィルタ等を用いることができる。また、フィルタを直列多段に結合して、除塵能力の向上を図ってもよい。
(ブロワまたは圧縮機、流量制御装置)
これらの装置は、従来技術のものをそのまま流用することができる。尚、流量制御装置とは、例えば、体積型流量計等の流量測定装置(または、流量を算出可能な流速測定装置や圧力測定装置)、バタフライ弁等の流量調整弁とそのアクチュエータ、並びに、制御演算装置等から構成され、気流路内の気流が、常時、所定の流量となるように流量調整弁の開度を調整するものを使用することができる。
(循環気流路)
粉塵の付着を抑制することが望ましいので、内面をステンレス鋼製、クロムめっきや亜鉛めっき等のめっき鋼製、アルミニウム製、アルミニウム合金製、マグネシム合金製、チタン合金製、または、フッ素樹脂コーティングした管を使用することができる。
[第2発明]
以下、第2発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
本発明は、捕集フィルタの更新の度にオンラインで画像処理粒径計測を行うオンライン法と、捕集フィルタの全ての更新が終了した後、フィルタ全体を測定器外に取り出して、フィルタを巻き戻しながら画像処理粒径計測を行うオフライン法のいずれかが可能である。オンライン法の装置構成を図9に示す。粗大粒子計測部20にカメラ24及び適切な画像範囲を撮影するための光学顕微鏡26を設置し、粒子捕集と質量測定が終了してフィルタの新しい部分と交換された捕集フィルタ上の単一の粗大粒子捕集済み部位全域を、光学顕微鏡を通して静止画像をカメラによって撮影する。カメラには、CCDカメラやCMOSカメラ等を用いることができる。静止画像を出力できる動画撮影装置を撮影に用いてもよい。撮影の際には撮影箇所が適切な光量になるように光源34により撮影箇所を照射する。光源には、タングステン白熱灯、蛍光灯、LED、ハロゲンランプ、水銀ランプ等を用いることができる。撮影された画像データは、画像処理演算装置19に伝送され、個別粒子の識別及び粒子径分布の計算処理を行った後、計算結果を計算データ保存装置25に保存する。保存されたデータは、必要に応じて、計測器外に取り出される。カメラの撮影タイミングは、フィルタ送り装置14からの起動信号をカメラが受信して、捕集フィルタ交換時のフィルタ送りのタイミングに連動させることができる。画像サイズの必要性に応じて、光学顕微鏡を省略することができる。画像処理演算装置や計算データの保存装置は市販のものを用いることができる。画像処理は、粒子画像撮影ごとに実施してもよいし、撮影画像を保存しておき、特定時期に、複数画像をまとめて画像処理してもよい。オンライン法の利点は、質量測定終了後、即時に粒径分布情報を得られうることである。
オフライン法では、一般的な画像処理粒子計測手法を用いることができる。例えば、粒子捕集済み捕集フィルタを計測装置外に取り出し、これを巻き戻しながら捕集フィルタ上の粒子を粒子捕集部位ごとに連続的にカメラで撮影してデータを保存する。このデータを連続的に呼び出して、市販の画像処理演算装置で連続的に画像処理を行って、粒径分布計算結果を保存すればよい。オフライン法の利点は、画像処理システム全体を安価に構築しうることである。
(粒径分布算出法)
採取された粒子の粒径分布算出には、一般的な画像処理粒子計測手法を用いることができる。例えば、まず、撮影画像を高輝度と低輝度に二値化する。次に、低輝度部分の連続した画素部分を識別してこれを個別の粒子とみなす(粒子が低輝度、フィルタ素地が高輝度の場合)。さらに、個別粒子部位の画素数の合計を粒子断面積に対応するものとみなし、その粒子断面積と同一面積の円に相当する直径をこの粒子の直径とみなして粒子直径を求める。この処理を全ての識別粒子に対して実施した後、全粒子の粒径分布を求めればよい。
[第3発明]
以下、第3発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
図15を用いて装置構成を説明する。透明な保護フィルムを用い、この保護フィルムは、保護フィルムロール15に予め加工され、必要量の保護フィルム16だけが、適宜、保護フィルムロールから引き出されて粗大粒子計測部20に進入する。保護フィルムの先端は、捕集フィルタ送り装置14の巻き取りロール上の捕集フィルタ表面に予め固定しておき、捕集フィルタ送り装置の駆動による巻き取りロールの回転によって、保護フィルムロールからテープ状の保護フィルムが引き出される。引き出された保護フィルムは、ガイドロール17に導かれて質量測定の終了した捕集フィルタ表面に接触して捕集フィルタを覆い、捕集フィルタ表面を保護しつつ、捕集フィルタとともに巻き取りロールに巻き取られる。保護フィルムロールにはバネ構造や回転軸の回転抵抗体等のバックテンションを付与する機構として、保護フィルム送り出し時にフィルムのたるみが生じないようにする。
(フィルム)
保護フィルムの材質として、粒子への汚染がなく、透明性が高く、かつ、巻き取り、巻き戻しに耐える弾性、延性を有するものであればどのようなものであってもよい。但し、望ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリルニトリル・スチレン、ポリメチルメタアクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、または、ポリ塩化ビニリデンを用いることができる。また、一般には不透明とみなされる物質でも、薄膜化により半透明化するものであれば、薄膜状態で使用することができる。
フィルム厚みに関しては、過小であればフィルムが切れ易い問題を生じ、過大であれば、フィルム剛性が強すぎて捕集フィルタとともに巻き取る際に乱巻きになり易い問題を生じる。望ましくは、5〜300μmの範囲にすることができる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
(通気抵抗体)
通気抵抗体は、粒子採取口に落下する降下粉塵の進入を妨げない様に、上方に開口を有し、かつ、通気抵抗体通過中に粉塵粒子が滞留・付着する部位の極力少ない構造でなければならない。また、風向による粒子採取特性の変動を生じないように、軸対象構造であることも必要である。また、当然のことながら、通過する気流に対して有意な通気抵抗を示さなければならない。この様な観点から、望ましくは開口の比較的小さい網を用いることができる。同様の観点から、微小な孔を多数穿孔した金属板や、薄い板状に加工した微細ハニカム構造体も使用することができる。
網等の材質は、望ましくは、形状が安定していること、静電気による粒子吸着の生じにくいことの理由から金属を用いることができる。より望ましくは、錆による特性変化の生じにくい、ステンレス鋼製を用いることができる。また、より安価であることを指向して、合成樹脂製の網を用いてもよい。
通気抵抗体の開口の大きさは、望ましくは、0.3mm以上2mm以下とすることができる。これ以上の大きさ場合、粉塵以外の大気中飛来物(虫、花びら、枯葉等)が粒子採取口内に進入する惧れがある。また、これ以下の場合、降下粉塵中で必ずしも無視できない割合を占める粗大粒子を捕集できないことになり問題である。通気抵抗体の開口率は、通気抵抗係数に最も影響する。望ましくは、0.3〜0.7の範囲にすることができる。これ以上の開口率の場合、有効な通気抵抗体として機能しない。また、これ以下の開口率の場合、降下粉塵の捕集率が極端に低下するので望ましくない。
(通気抵抗体の配置)
風向による粒子採取特性の変動を防ぐ観点から、通気抵抗体の主要通気面(網面)は、粒子採取口入口と平行方向に設置することができる。通気抵抗体は、粒子採取口入口垂直方向に複数設置されるが、その最外側と最内側のものの間隔は、少なくとも、粒子採取口入口直径の1/3以上であることが望ましい。本発明者の調査の結果、これ以下の間隔で設置した場合、複数の通気抵抗体が存在しても、実質的に大きな通気抵抗を有する単独の抵抗体が存在するのと同様の効果しか示さないからである。この様な単独に設置された通気抵抗体で仮想吸着面上昇効果の低いことは前述の通りである。これは、通気抵抗体を通過した高速気流が駆動力方向に転進するためには、一定の距離が必要であり、通気抵抗体間隔が過小な場合、最初の通気抵抗体を通過した高速気流は、駆動力方向への転進が十分なされる前に次の通気抵抗体を通過してしまうため、全体として、あたかも単独の通気抵抗体のように振舞うからである。通気抵抗体の最外側と最内側のものの間隔の原理的な上限は特にない。しかし、極端に大きな間隔の場合、装置が大型化して不経済であり、かつ、外気と粒子採取口下端との距離が大きくなって外気粒子濃度変化への計測の追従性が低下する問題があるので、通気抵抗体の最外側と最内側のものの間隔は、粒子採取口直径の3倍以下とすることができる。尚、最外側とは、最も粒子採取口入口に近いものを指し、最内側とは、最も粒子採取口入口から遠い、即ち、粒子採取口下端に最も近いものを指す。
通気抵抗体の個数が多い程、仮想吸着面の高位安定化効果は高い。しかし、過大な個数の通気抵抗を気流が通過すると、気流中の粉塵が通気抵抗体に付着する割合も大きくなり、粒子捕集率の低下を招くので避けるべきである。望ましくは、2個から5個の通気抵抗体を設置することができる。
複数の通気抵抗体を設置された領域では、旋回流が存在して大気中の粒子濃度はほぼ均一である。このため、この領域を、特段、円錐状のろうと形状にする必要はない。そこで、最外側と最内側の通気抵抗体の間の領域を図12でのように円筒状とすることができる。この円筒状の領域は、旋回流を整流して粒子採取口深部に進入させない効果を発揮するので、整流器35とみなすことができる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
図13を用いて装置構成を説明する。粒子採取口入口近傍の外周に、粒子採取口の半径方向外側に幅を有する水平な導流板27を設置する。設置高さは、望ましくは、粒子採取口入口高さ面よりも5mmから20mm下側にすることができる。これは、導流板上を大気風が通過する際、導流板上で境界層が発達しすることによって導流板直上で(導流板が無い場合に粒子採取口自身の空気力学的抵抗により発生する外気流の上昇流に比べて)弱い上昇流が生じるため、この上昇流の顕著な領域、即ち、導流板表面から5mmから20mmの範囲を除外した大気流れを粒子採取口入口上に流すことが粒子流入効率を向上させるために効果的だからである。但し、施工上の便宜のため、これより高い位置に導流板を設置した場合でも、粒子流入効率向上に一定の効果を与えることができる。
(導流板)
導流板の材質は構造体として機能する剛性を有し、かつ、屋外での使用に耐える材質であればどの様なものでよい。金属、木材、合成樹脂等を使用することができる。導流板の厚さは導流板自身の空気力学的抵抗を減少させる観点から薄いことが望ましい。望ましくは、0.1mmから5mm程度のものを使用することができる。薄い導流板を使用する場合には、外気流によって導流板の自励振動が発生して粒子採取特性や装置耐久性に悪影響を与えうるので、導流板の下面に適宜、支柱を設けて導流板を支えることができる。さらに、導流板の外周部に、空気力学的抵抗を減少させる様、鋭角に加工したものを使用することができる。導流板の幅(導流板外径と内径の差の半分)は、望ましくは50mm以上とすることができる。本発明者の調査の結果、これ以下の幅の場合、粒子採取口の空気力学的抵抗によって粒子採取口前縁部近傍に生成しうる外気の上昇気流を、導流板が抑制することができず、導流板と粒子採取口が一体として空気力学的抵抗として作用し、導流板前縁で外気流が剥離して強い上昇気流が生じてしまうからである。導流板の幅が50mm以上の場合、導流板前縁では外気流の剥離は生じず、粒子採取口本体とは無関係に上流からの外気流を水平面に固定する作用を発揮することができる。このとき、粒子採取口によって排除された気流は、上方ではなく、水平面方向に導かれる。この様に、導流板の幅50mmを境にして、粒子採取口近傍での流れ場の様式が変化する。
導流板の形状は、風向による粒子流入抵抗の変動を抑制するため、粒子採取口の軸に関して軸対称の形状であることが望ましい。さらに、望ましくは、中央に円孔を有した円盤状とすることができる。導流板表面は本質的に平坦であることが望ましいが、強度を確保するために波板等の形状も採用することができる。この他にも、導流板の形状を上方に向けて広がる円錐台状とし、かつ、導流板下部と粒子採取口外壁の間に隙間を設けることにより、導流板上に降下する降下粉塵を下方に落下させて排出する構造も可能である。但し、本発明者の調査の結果、この様な機構が有効に機能するのは降下粉塵径が数百μm以上の非常に粗大な粒子の場合に限られ、それ以下の径の粒子においては、粒子が導流板表面に付着し易いので粒子排出効果は小さい。加えて、円錐台状の導流板は、外気流の導流効果が比較的小さく、粒子流入効率向上効果は限定的である。
導流板上に沈着した降下粉塵は、強風時には再飛散しうる。この再飛散した粒子が粒子採取口に流入すると、採取粒子の質量測定精度に悪影響を与える。これを防止するために、導流板表面にグリース等の粘着性物質を塗布して導流板上に沈着した粒子の再飛散を抑制することができる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
粒子採取口内面での粒子の付着を防止する、または、一旦、付着した粒子を除去させる能力を有し、かつ、計測に悪影響を与えないものであれば、本来、どの様な付着粒子除去機構でも採用することができる。但し、除去した粒子を系外に排出してしまうと粒子捕集効率が低下するので、一旦、粒子採取口内面から除去された粒子が採取口内の大気中に再び放出されて採取口の下端から質量測定器側に吸引されることが望ましい。図19に示した付着粒子除去装置では、粒子採取口外面に加振機39を設け、これを定期的に作動させることによって、粒子採取口内面に付着した粒子を内面から除去する。加振機には、市販のノッカや偏心モータ型加振機を用いることができる。ノッカを使用する場合、望ましくは、0.1〜100回/秒の頻度で加振することができる。
図20に示した付着粒子除去装置では、粒子内面をブラシが摺動することによって、粒子採取口内面に付着した粒子を内面から除去する。ブラシを摺動させる方法には、例えば、粒子採取口中心軸上に回転し、同時に回転軸方向に上下運動するブラシ駆動装置41を用いることができる。ブラシは、市販されているものを用いることができる。ブラシの大きさは、作業性を考慮して、望ましくは粒子採取口半径方向に粒子採取口の最大内径の0.01倍から0.5倍とすることができる。ブラシの毛の長さは、作業性を考慮して、望ましくは、1〜300mmにすることができる。ブラシの材質は、粒子採取口内面への接触部位は、強度や耐汚染性を考慮して、望ましくは、ナイロン等の合成樹脂やステンレス鋼等の金属を用いることができる。ブラシ駆動装置の回転には市販の電動モータを用いることができ、ブラシ駆動装置の上下運動には、油圧制御を行う油圧シリンダ等を用いることができる。
図21に示した気流吹き付け装置を用いた付着粒子除去装置の例では、粒子採取口内面上を移動するノズル43から空気を粒子採取口内面に高速で吹付けて粒子採取口内面上に付着した粒子を内面から除去する。吹付ける空気は、循環気流路11から分岐した気流管42から得ることができる。また、吹付ける気流量が、計測装置内での循環流量に比べて十分に小さい場合には、吹きつけ気流管を循環気流から分岐させることなく、図示しない圧縮機等を用いて外気から空気を直接吸引してもよい。ノズルを移動させる方法には、例えば、粒子採取口中心軸上に回転し、同時に回転軸方向に上下運動するノズル駆動装置44を用いることができる。ノズル駆動装置の回転には市販の電動モータを用いることができ、ノズル駆動装置の上下運動には、油圧制御を行う油圧シリンダ等を用いることができる。吹き付ける気流の流速は、望ましくは、粒子採取口内面からの粒子の除去性を確保するために、1m/s以上とすることができ、また、粒子採取口内部全体での流れ場に大きな悪影響を与えないように、50m/s以下にすることができる。ノズルは粒子採取口内面に対して、できる限り、収束して衝突することが、粒子剥離性の観点から望ましく、市販のフルコーンノズルや直射ノズルを用いることができる。ノズル出口の内径は、吹付け流量と吹き付け流速を考慮して適宜定めればよく、例えば、0.1〜50mmとすることができる。ノズルの材質は、耐久性や耐汚染性を考慮してステンレス鋼等の金属を用いることができる。
これらの付着粒子除去装置は、それぞれ単独で用いることもできるが、複数組み合わせることによって、一層、効果を高めることができる。例えば、加振機は、粒子採取口に直接接触しないので耐汚染性が高い。一方、気流吹き付け装置は、粒子採取口内部気流に悪影響を与えうるが、粒子除去能力はより高い。さらに、ブラシは、ブラシの毛に粒子が付着して採取効率を低下させうるが、粒子の除去能力が最も高い。従って、これらの装置を組み合わせて使用する場合、加振機を最も高い頻度で使用し、加振機で剥離しえない粒子に対して気流吹きつけ装置をより低い頻度で作動させ、さらに低い頻度でブラシを作動させることによって、粒子の高い除去性と作業への悪影響回避が可能になる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
図14を用いて装置構成を説明する。粉塵粒子採取口内面の裏面全体に電気抵抗式ヒータ等の加熱器28を貼り付け、この加熱器によって、粒子採取口内面を加熱する。粒子採取口内面の温度を、粒子採取口内面に取り付けた熱電対等の粒子採取口内面温度計29によって計測するとともに、外気温度を同様の機構の外気温度計30によって計測する。計測された粒子採取口内面温度が外気温度計測値よりも10℃以上高温を維持するように、温度制御装置31は、PID制御法などを用いて加熱器加熱量を制御する。他の加熱方式として、粒子採取口内面又は外面に赤外線ヒータを設置し、この加熱出力を制御することによって、所定温度に粒子採取口を放射加熱してもよい。また、粒子採取口を電気伝導体又は半導体で構成し、粒子採取口に直接通電して加熱を行ってもよい。さらに、粒子採取口の周囲に熱水管又は熱風管を接触させ、作動流体の温度と流量を制御することによって粒子採取口加熱してもよい。粒子採取口外面にバーナーを設けて粒子採取口を直火加熱を行うこともできる。粒子採取口内面温度の上限は、装置の熱耐久性や加熱のための費用を総合的に判断してエンジニアリング的に定めるべきであるが、望ましくは、計測地点での年間最高気温平年値+15℃を上限温度とすることができる。また、設備費用を節約するために、加熱器の加熱量制御機構を省略することができる。この場合には、外気温度+10℃よりも粒子採取口内面温度が常に高温になる加熱量を予め求めておいて、常にその加熱量で加熱を行うことができる。この場合、粒子採取口内面温度は、平均的に外気温度+10℃よりも遥かに高温の設定にならざるをえない。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
(装置構成)
図16を用いて装置構成を説明する。基本的な構成は、図6の装置にバイパス気流路33を追加したものである。バイパス気流路33は、分級器と微小粒子計測部21の中間に存在する分流器32によって微小粒子用分岐気流路13に接続し、微小粒子計測部21の下流で循環流路に合流する。分流器は、異径T字管等を適用することができる。
他の装置構成として、図17の形式のものを用いることができる。図17は、バイパス用分級器37を有し、ここで、バイパス気流路33への分流を行う点のみ図16の装置構成と異なる装置である。粒子採取口から吸引された大気は、バーチャルインパクタ等のバイパス用分級器37において、比重1の球形粒子に換算して直径4〜7μm以上の粗大粒子の全量及びこれより小径の微小粒子の一部を含む気流を分級器8に向けて分流し、残りの微小粒子のみを含む気流をバイパス気流路33に分流される。この際、分級器8側への気流路とバイパス気流路33側に分流された微小粒子流量の比は、それぞれの流路での気流量の比に一致する。従って、分級器8側気流路側の気流中微小粒子密度は、粒子採取口から吸引された大気中微小粒子密度と一致する。これは、微小粒子は、気流への追従性が高く、気流中粒子密度が空間的に均一だからである。バーチャルインパクタ等の分級器8では、直径4〜7μm以上の粗大粒子を含む気流とこれ以外の微小粒子を含む気流に分流して、それぞれの計測部にて質量測定を行う。この結果、粒子採取口から吸引された気流の大半はバイパス気流路に流れるので、吸引された微小粒子の大半もバイパス気流路側に流れて、計測部に進入しない。一方、粒子採取口から吸引された粗大粒子は、ほぼ全量が粗大粒子計測部20に到達して質量を計測できる。また、微小粒子計測部21に進入した微小粒子の質量を測定することによって、少量のサンプリング気流量を用いて、粒子採取口から大量に吸気された微小粒子の大気中密度を正確に測定することができる。この様な作用は、バーチャルインパクタ等の空気力学的分級器で気流への追従性の高い微小粒子のごく一部が粗大粒子側に不可避的に混入する現象を利用したものである。
前述のように、バーチャルインパクタでは、微小粒子は、粗大粒子側(微小粒子も含む)と微小粒子側へ分岐される大気の流量比と同じ割合で、それぞれの気流路に分配される。この流量比には、分級器性能を確保するための好適な範囲、例えば、[微小粒子側流量]/[粗大粒子側流量]が2〜5の範囲が分級器の特性として存在する。そのため、バイパス用分級器37にて分級後のバイパス気流路側の大気流量(バイパス流量)には、上限が存在する。従って、より大きなバイパス気流量を実現するためには、バイパス用分級器を2台以上直列に結合して、それぞれのバイパス用分級器の微小粒子側からバイパス気流を抽出して、それらを合流することで実現できる。そして、2台以上直列に配置したバイパス用分級器の粗大粒子側気流を通過させるたびに粗大粒子側気流中の粗大粒子濃度を上昇させることができる。即ち、バイパス用分級器を増やせば、[バイパス気流量]/[粗大粒子計測部へ流入する気流量]の比をいくらでも増大させることができる。
バイパス気流路33には、流量制御装置9を備えて気流量を一定に制御することができる。また、バイパス気流路33の通気抵抗は、測定中に変化しないので、捕集フィルタの目詰まりによって測定中に通気抵抗の変化しうる粗大粒子分岐気流路12及び微小粒子分岐気流路13において、これらの気流路全体の通気抵抗を常に一定にする様に、粗大粒子分岐気流路上及び微小粒子分岐気流路上の流量制御装置9をそれぞれ制御すれば、バイパス気流路で流量制御を行わなくても構わない。
(循環気流量)
捕集フィルタへの負荷を減らすため、捕集フィルタを通過する循環気流路12,13には、従来装置並みの1Nm/時間程度の流量とすることができる。残りの気流量は、バイパス気流路33を通過させればよい。
必要な総循環気流流量は、粗大粒子質量測定でのSN比を十分高い値に維持するために、従来装置における循環気流量の約6倍、即ち6Nm/時間、とすることができる。これは、従来装置でも1時間程度の時間分解能で測定が可能であったことを前提に、より短い時間間隔、例えば10分間隔、での質量測定でも同程度のSN比を満足させるために決まる条件である。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
図6の装置に水平旋回流抑制器38を付加した装置を示す図18を用いて第発明を説明する。水平旋回流抑制器は、外気流れを阻害しないように粒子採取口の入口よりも下方に設置すべきであり、大気中粒子の分級特性に悪影響を与えないように全ての分粒器よりも上方に設置すべきである。
また水平旋回流の抑制は、粒子採取口の下端以降の下流で行うことが効果的である。分級器の構造は、水平旋回流成分を抑制できればどのようなものでもよいが、水平旋回流の垂直方向に壁面を設けて水平旋回流を阻害する方法が簡易、かつ、軸方向流れを阻害しにくいので望ましい。例えば、図18に示す、複数の薄板を組み合わせた構造にすることができる(水平旋回流抑制器38を粒子採取口内部に設置した例)。水平旋回流抑制器を構成する薄板の寸法は、十分な耐風強度を持ち、軸方向流れを阻害しない観点から、厚み0.1〜5mm、軸方向長さ2〜100mmにすることができる。水平旋回流抑制器の材質は、大気中粒子の付着しにくいものとして、ステンレス鋼等の金属、セラミックス、ガラス、または、フッ素樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
最良の形態である前述第1発明の装置を用いて、大気中の降下粉塵の粉塵降下速度と微小粒子の大気中濃度を高い時間分解能で正確に測定することができる。
[第発明]
以下、第発明の一実施形態について説明する。
図16の装置を用いて説明する。装置構成と基本的な計測方法は、第発明の説明で述べたとおりである。この装置を用いることによって、計測装置内の循環気流量を従来技術でのものに比べて数倍以上に増大できる。循環流量を増大させることによって、粒子採取口内への吐出気流速度を従来から大幅にさせ、吐出口から遠い粒子採取口内面上の部位でも付着粒子の発塵風速以上を満足することができる。
捕集フィルタへの負荷を減らすため、捕集フィルタを通過する循環気流路12,13には、従来装置並みの1Nm/時間程度の流量とすることができる。残りの気流量は、バイパス気流路33を通過させればよい。必要な総循環気流流量は、粒子採取口内面上での付着粒子の再飛散速度以上の流速を粒子採取口内面の大部分で満足させるのに必要な粒子採取口への吐出流量によって規定される。本発明者の調査の結果、粒子採取口内面が乾燥した状態で、複数の気流抵抗体を設置して減風化の図られた粒子採取口の場合、粒子採取口内面上(内面から内面垂直方向に30mm以内の範囲)で1m/s以上の風速を確保できれば、そこでの付着粒子が再飛散することを見出した。例えば、直径200mm、高さ550mmの円錐ろうと状の粒子採取口内壁面の大部分で付着した粉塵粒子を再飛散させるための前記風速(1m/s)を満足させる場合、5〜10Nm/時間以上の循環気吐出量でこの条件を満足する。吐出口の形状は、軸対称で内壁面に沿って粒子採取口下端方向に吐出する様に設定こすることができ、開口間隙幅は、1mmから20mm程度に設定することができる。
また、吐出口から遠い粒子採取口内面の領域では内面上の風速が低下し易いので、採取口への循環気流の吐出場所を粒子採取口の軸方向の位置を違えて複数段で吐出を行って、粒子採取口内面での吐出口からの平均距離を低減してもよい。複数段での吐出を行う場合には、循環気流路の末端部を分岐させた後、それぞれの末端部に吐出口を設ければよい。
参考例1)
図6に示す構造の降下粉塵計測装置を屋外で運用して降下粉塵の連続測定を行った。粒子採取口は、入口直径200mmの円錐ろうと状のステンレス鋼構造であり、ろうとを円錐とみなした場合の頂角を25°とした。循環気流の粒子採取口への吐出方法は、粒子採取口入口直下に、全周均一に、粒子採取口内面に沿って下向きに吐出した。気流路の内面を、全てステンレス鋼製とした。分級器にはバーチャルインパクタを用い、循環気流量が1Nm/時間となるように制御して、比重1相当の粒子について直径6μm以下の微小粒子を含む気流とそれ以外の粗大粒子を含む気流に分級し、それぞれ独立に質量測定を行った。ここでの分級の定義は、比重1相当の粒子について直径6μmの粒子が粗大粒子用分岐気流管に90%、微小粒子用分岐気流管に10%の割合で分離することである。粗大粒子を捕集する捕集フィルタは、多孔質で幅20mmの白色フッ素樹脂テープとし、このうち、直径10mmの範囲のみで粒子を捕集するように、上下に分割された気流路端が質量測定中にはフッ素樹脂テープを挟み込むように流路を設定した。粒子の質量測定は市販のβ線吸収式質量測定器を用いて1分周期で連続的に捕集粒子の質量を計測し、結果を電子データとして保存した。捕集フィルタ送り装置として、ロールの送り出し・巻き取り機構を採用し、1時間ごとに間欠的に粒子捕集済み捕集フィルタを送り出した。除塵フィルタは、1μm用の汎用繊維状フィルタの下流に0.3μm用のセラミックフィルタを設置して、排気の清浄化を図った。また、図示しない市販の感雨計を用いて降雨を検知し、雨天時には図示しない蓋が粒子採取口入口を覆って雨水が計測器内に侵入しないようにした。
本装置を用いて6ヶ月間の連続自動測定を実施した。代表的な採取粒子サンプルを、ロールに巻き取る前に捕集フィルタごと切り出して、オフラインでその粒径分析を一般的な画像処理粒子計測手法に基いて実施した。その結果、粗大粒子サンプルとして、5μmから400μmの粒子が採取され、粒径に関する累積質量分布の50%値は、粒径約30μmに対応した。また、粒子の平均比重は、約1.8であった。
本装置による粗大粒子の採取質量の1ヶ月ごと積算値を粒子採取口入口面積で除して算出した月間粉塵降下速度を、同一地点でのデポジットゲージによる月間粉塵降下速度と比較した。その結果、本装置の採取量平均は、デポジットゲージの約80%であり、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、0.15であった。従って、本装置による粗大粒子計測値とデポジットゲージ計測値の間で比較的強い相関を得ることができた。
また、本装置での微小粒子採取質量の1ヶ月ごと積算値を吸引総流量で除して得た月間大気中微小粒子濃度を、同一地点に設置したPM2.5計の月間大気中PM2.5濃度と比較した。その結果、本装置の大気中濃度平均は、PM2.5計によるものの約140%であり、[PM2.5計による月間大気中PM2.5濃度]/[本装置による月間大気中微小粒子濃度]の変動の標準偏差は、0.2であった。従って、本装置による微小粒子計測値とPM2.5計測値の間では、強い相関を得ることができた。
さらに、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を、同一地点、同一時刻に市販の粘着テープ式降下粉塵捕集器を10分ごとに交換して測定したものと比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.3であり、連続式粉塵計において、初めて実用的な短時間周期(10分間平均)での計測が実現できた。
(比較例1)
図5に示す、従来型連続式粉塵計を用いて、実施例1と同一地点、同一時期に同様の方法で採取粉塵質量測定を行った。その結果、採取量平均は、デポジットゲージの約130%であり、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、0.35であった。従って、本装置による粗大粒子計測値とデポジットゲージ計測値の間には相関は認められるものの、本発明に比べて劣る。
参考例2)
図9の撮影装置を設置し、これ以外を参考例1と同様に設定した連続式粉塵計測装置を用いて、オンライン画像処理粒子計測を行った。捕集フィルタ送り装置の巻き取りロールの直前に、倍率2倍の実体顕微鏡26に装着された総画素数約1000万のディジタルCCDカメラ24を設置し、捕集フィルタを送るたびにフィルタ送り信号を計測器制御装置からディジタルCCDカメラが受信し、これをトリガとして、粒子捕集済み捕集フィルタ上の粒子画像を自動的に撮影した。撮影箇所が適切な光量になるように、撮影時にはLEDライト34を撮影箇所に照射した。撮影画像は、直ちに、カメラ本体から画像処理ソフトを搭載した汎用演算装置に通信線経由で伝送され、汎用演算装置内で画像処理を行って、粒度分布と平均密度を求めた。画像処理の手法は、市販ソフトと同様の一般的な粒子径測定方法を用いた。
測定結果に関して、測定の精度を検証するため、粒度分布と、平均密度、並びに、総質量の把握され、かつ、平均的な大気中粉塵の構成率に調整した標準試料粉塵を、清浄な屋内に設置した降下粉塵計測装置の粒子採取口に1時間かけて投入し、β線吸収による質量測定とこれに続く画像処理による粒度分布と平均密度測定を実施した。その結果、質量測定値の誤差は2%、平均粒度測定値の誤差は3%、粒度分布の標準偏差の誤差は5%、平均密度の誤差は4%であり、良好な測定精度が得られた。
(比較例2)
図9の撮影装置を図5に示す従来型連続式粉塵計に設置し、実施例2と同様の方法で画像処理粒子計測を試みた。その結果、粗大粒子を微小粒子から区別して識別することはできず、画像処理粒子計測は不可能であった。
参考例3)
図15に示す保護フィルム機構を粗大粒子計測部近傍に設置し、これ以外を参考例1と同様に設定した装置を用いて、清浄な室内で、参考例2と同様の標準試料粉塵を粒子採取口に一時間かけて投入して、粒子捕集済み捕集フィルタロールを作成した。保護フィルムで粗大粒子捕集済みの捕集フィルタを覆い、保護フィルムとともに捕集フィルタをロール状に巻き取った。保護フィルムとして厚み10μmで幅20mmのポリ塩化ビニリデン膜を用いた。保護フィルムは、巻取りリールの回転に伴って送り出しリールから送り出され、表面を合成ゴムでコーティングしたガイドロールでセンタリング及び、方向転換がなされた後、捕集フィルタを覆うように導びかれた。捕集フィルタでの捕集が終了した後、これを巻き取った粒子捕集済み捕集フィルタロールを計測器から抜き出し、オフラインでこのロールを巻き戻しながら画像処理粒子計測を行った。画像撮影には光学顕微鏡に接続されたディジタルCCDカメラを用い、透明な保護フィルムを透過して捕集フィルタ上の粉塵粒子を撮影した。実施例2と同様の画像処理粒子計測手法によって得られた測定精度は、質量測定値の誤差は3%、平均粒度測定値の誤差は2%、粒度分布の標準偏差の誤差は6%、平均密度の誤差は、3%であり、参考例2と同様に良好な測定精度が得られた。
参考例4)
保護フィルムを用いないこと以外は、参考例3と同様にして、標準試料の画像処理測定を行った。その結果、得られた測定結果は、質量測定値の誤差は50%、平均粒度測定値の誤差は60%、粒度分布の標準偏差の誤差は90%、平均密度の誤差は、80%であった。いずれの結果でも、画像処理時までに、採取された粗大粒子の大半が欠落することの悪影響により、オフラインでの画像処理はでは保護フィルムを用いないと測定精度が低下することがわかった。
参考例5)
図12に示す円筒状の整流器を粒子採取口に設置すること以外を参考例1と同様に設定した装置を用いて、参考例1と同様の試験を行った。整流器は、直径200mmで高さ80mmであり、40mmの間隔を空けて計3枚の通気抵抗体としての円形の金網を設置した。金網は、ステンレス性であり、20メッシュ、開口率50%のものを用い、整流器内壁面に全周で密着するように配置した。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均85%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.12であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.22であり、本装置の短時間計測の精度が向上した。
参考例6)
整流器内で通気抵抗体間の各間隔を20mmに配置した以外、参考例4と同様の条件として試験を行った。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均75%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.15であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.29であり、実施例1に比べて顕著な改善は認められなかった。
参考例7)
図13に示す円盤状の導流板を粒子採取口近傍に設置すること以外を参考例1と同様に設定した装置を用いて、参考例1と同様の試験を行った。導流板は厚み1mm直径320mmのステンレス円盤を用い、粒子採取口入口から10mm下方に装着した。導流板上には定期的にグリースを塗布して沈着粉塵の再飛散を防止した。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均110%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.14であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.27であった。
参考例8)
導流板の直径を280mmにした以外、参考例7と同様の試験を行った。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均82%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.14であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.3であり、参考例1に比べて顕著な改善は認められなかった。
参考例9)
粒子採取口の外側に市販の空圧式ノッカを設置し、これ以外を参考例5と同様の装置を用いて参考例5と同様の試験を実施した。ノッカは、周方向に3個設置し、それぞれ、異なる設置高さとした。ノッカへの供給圧は1kg/cmとし、それぞれ、10秒につき1回の頻度で粒子採取口に打撃を与えた。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均95%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.11であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.2であった。
参考例10)
図14に示す粒子採取口加熱機構を設置し、これ以外を参考例9と同様の装置を用いて参考例5と同様の試験を実施した。尚、粒子採取口外面のノッカ設置箇所には加熱装置を設置しなかった。加熱装置として、抵抗式セラミックヒータを用い、温度計測器として熱電対を用いて、粒子採取口内面温度と外気温度を計測した。また、粒子採取口内面温度が外気温度+15℃を目標とし、計測器内の電子演算装置によって目標温度を維持するようにPID制御を行った。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均100%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.10であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.2であった。
(実施例11)
図16に示すバイパス気流路を設置し、これ以外を参考例5と同様の装置を用いて参考例4と同様の試験を実施した。粒子採取口への吐出流量を7Nm/時間とし、5.5Nm/時間の循環流量をバイパス気流路に通気するように各分岐気流路及びバイパス循環流路の通気抵抗を調整した。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均150%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.10であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.18であった。また、本装置での微小粒子の月間大気中微小粒子濃度を、対応するPM2.5計の月間大気中PM2.5濃度と比較した。その結果、本装置の大気中濃度平均は、PM2.5計によるものの約125%であり、[PM2.5計による月間大気中PM2.5濃度]/[本装置による月間大気中微小粒子濃度]の変動の標準偏差は、0.18であった。
(実施例12)
図17に示す、バーチャルインパクタであるバイパス用分級器37とバイパス気流路33を有し、これ以外を参考例5と同様の装置を用いて参考例4と同様の試験を実施した。粒子採取口への吐出流量を7Nm/時間とし、5.5Nm/時間の循環流量をバイパス循環流路に通気するように各分岐気流路及びバイパス循環流路の通気抵抗を調整した。バイパス用分級器37は、比重1の球形粒子に換算して直径4〜7μm以上の粗大粒子の全量及びこれより小径の微小粒子の一部を含む気流を分級器8に向けて分流し、残りの微小粒子のみを含む気流をバイパス気流路33に分流した。バーチャルインパクタである分級器8では、直径4〜7μm以上の粗大粒子を含む気流とこれ以外の微小粒子を含む気流に分流して、それぞれ計測部にて質量測定を行った。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均150%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.10であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.18であった。また、本装置での微小粒子の月間大気中微小粒子濃度を、対応するPM2.5計の月間大気中PM2.5濃度と比較した。その結果、本装置の大気中濃度平均は、PM2.5計によるものの約125%であり、[PM2.5計による月間大気中PM2.5濃度]/[本装置による月間大気中微小粒子濃度]の変動の標準偏差は、0.18であった。
参考例13)
図18に示す、水平旋回流抑制器38を有し、これ以外を参考例1と同様の装置を用いて参考例1と同様の試験を実施した。水平旋回流抑制器は、板厚0.3mmで軸方向長さ30mmのステンレス鋼板を上面からみて板の端面が十文字になる様に組み合わせて構成し、粒子採取口下端に設置した。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均86%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.12であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.22であり、本装置の短時間計測の精度が向上した。
(実施例14)
実施例12の装置に参考例7と同様の導流板と、参考例13と同様の水平旋回流抑制器を設置し、参考例5と同様の試験を実施した。粗大粒子の測定結果は、対応するデポジットゲージの月間粉塵降下速度に対して平均180%の粉塵降下速度が得られた。また、[デポジットゲージによる月間粉塵降下速度]/[本装置による月間粉塵降下速度]の標準偏差は、0.09であった。また、本装置による10分ごとの降下粉塵速度の6時間分を対応する粘着テープ式降下粉塵捕集器の測定と比較した。その結果、[粘着テープによる10分間塵降下速度]/[本装置による10分間粉塵降下速度]の変動の標準偏差は、約0.16であった。
従来技術の模式図 他の従来技術の模式図 他の従来技術の模式図 他の従来技術の模式図 他の従来技術の模式図 第1参考例の一実施形態の模式図 粒子採取口内流れ場の模式図 粒子採取口内粒子軌跡の模式図 第2参考例の一実施形態の模式図 従来技術の模式図 第2参考例の一実施形態の模式図 第4参考例の一実施形態の模式図 第5参考例の一実施形態の模式図 第7参考例の一実施形態の模式図 第3参考例の一実施形態の模式図 発明の一実施形態の模式図 発明の別の実施形態の模式図 第9参考例の一実施形態の模式図 第6参考例の一実施形態の模式図 第6参考例の別の実施形態の模式図 第6参考例の別の実施形態の模式図
符号の説明
1 ・・・粒子採取口
2 ・・・気流路
2’・・・気流路
3 ・・・粗大粒子フィルタ
4 ・・・質量測定器
5 ・・・捕集フィルタ
6 ・・・ブロワまたは圧縮機
7 ・・・捕集瓶
8 ・・・分級器
9 ・・・流量制御装置
10 ・・・除塵フィルタ
11 ・・・循環気流路
11’・・・循環気流路
12 ・・・粗大粒子用分岐気流路
13 ・・・微小粒子用分岐気流路
14 ・・・捕集フィルタ送り装置
15 ・・・保護フィルムロール
16 ・・・保護フィルム
17 ・・・ガイドロール
18 ・・・粒子採取口内部流れ場境界
19 ・・・画像処理装置
20 ・・・粗大粒子計測部
21 ・・・微小粒子計測部
22 ・・・超粗大粒子時の仮想吸着面
23 ・・・一般的な粗大粒子の仮想吸着面
24 ・・・カメラ
25 ・・・データ保存装置
26 ・・・顕微鏡
27 ・・・通気抵抗体
28 ・・・加熱器
29 ・・・粒子採取口内面温度計
30 ・・・外気温度計
31 ・・・温度制御制御装置
32 ・・・分流器
33 ・・・バイパス気流路
34 ・・・光源
35 ・・・整流器
36 ・・・導流板
37 ・・・バイパス用分級器
38 ・・・水平旋回流抑制器
39 ・・・加振機
40 ・・・ブラシ
41 ・・・ブラシ駆動装置
42 ・・・吹付け気流管
43 ・・・ノズル
44 ・・・ノズル駆動装置

Claims (9)

  1. 上方に向けた開口を有すると共に、下端が気流路と接続されている、ろうと状の粒子採取口と、
    前記粒子採取口内に存在する大気中粒子を大気と共に前記粒子採取口の下端から前記気流路を通して吸引するためのブロワ又は圧縮機と、
    前記粒子採取口の後段に設けられ、前記粒子採取口から吸引された前記大気中粒子を粗大粒子と微小粒子に分ける分級器であって、該分級器が比重1の球形粒子に換算して直径4〜7μmを分級境界とする分級器である少なくとも1台と、
    前記分級器の後段に並列に設けられ、前記分級後の粗大粒子と微小粒子をそれぞれ、一定時間ごとに捕集面が更新されるテープ状又はカートリッジ交換式の捕集フィルタに捕集して、当該捕集されたそれぞれの粒子の質量を質量測定器によって連続計測し、前記分級後の粗大粒子と微小粒子それぞれにおける質量総量の時間変化を計測する、又は更に、前記計測された粗大粒子と微小粒子それぞれの質量総量の時間変化から前記粗大粒子の粉塵降下速度及び前記微小粒子の大気中濃度を算出する、粗大粒子計測部及び微小粒子計測部と、
    前記計測部の後段に設けられ、前記捕集フィルタに捕集されなかった粒子を前記計測後の吸引された大気から除塵する除塵フィルタと、
    前記粒子採取口、前記分級器、前記粗大粒子計測部及び微小粒子計測部、及び前記除塵フィルタを、この順番に接続し、前記吸引された大気を順次通す気流路と、
    前記除塵後の大気を前記粒子採取口内に排気する循環気流路と、
    前記気流路又は前記循環気流路の流路中に設けられた前記ブロワ又は圧縮機と、
    前記粗大粒子計測部及び前記微小粒子計測部を通過する気流量をそれぞれ所定の値に制御する流量制御装置と、
    前記粒子採取口の入口に、前記粒子採取口の入口面と垂直方向に間隔を置いて複数設置する、前記粒子採取口の入口面と垂直方向に通気抵抗を発生させる気流抵抗体と、
    前記分級器のうち少なくとも1台の前記微小粒子に分けられた後段、且つ前記微小粒子計測部の前段の位置から、前記粗大粒子計測部及び微小粒子計測部の後段、且つ前記除塵フィルタ前段の位置まで、前記微小粒子を含む吸引された大気の一部を流通させるバイパス気流路と、
    を備えていることを特徴とする、連続式降下粉塵計測装置。
  2. 前記テープ状の捕集フィルタ上に捕集された粗大粒子を前記捕集フィルタとともに撮影するカメラを有すると共に、当該撮影された画像を画像処理して前記粗大粒子の粒径分布を測定する画像処理装置を有することを特徴とする、請求項1に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  3. 前記カメラの撮影面となる前記捕集フィルタは、前記捕集フィルタに付着した粗大粒子の上から透明な保護フィルムで覆われていることを特徴とする、請求項2に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  4. 前記粒子採取口の入口近傍の外周に、前記粒子採取口の半径方向外側に突出した水平な導流板を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  5. 前記粒子採取口に、粒子採取口内面の付着粒子を除去するための、加振機、ブラシ、又は気流吹き付け装置のうち1種または2種以上の組み合わせを備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  6. 前記粒子採取口には、その内面を加熱する加熱器を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  7. 前記粒子採取口の開口部と、前記粒子採取口の下端から吸気された大気が最初に到達する前記分級器との間に備えられ、かつ、
    前記粒子採取口の下端へ向かって吸引される前記粒子を含む大気の水平旋回流成分を抑制可能な水平旋回流抑制器を備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続式降下粉塵計測装置。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の連続式降下粉塵計測装置を用いた連続式降下粉塵計測方法であって、
    前記粒子採取口から大気とともに採取された粒子を、前記分級器にて大気中を自由落下しうる粗大粒子とそれ以外の微小粒子に分級した後、前記分級された2種類の粒子の一部または全部を前記一定時間ごとにテープ状又はカートリッジ交換式の捕集フィルタの異なる部位に捕集し、更に、前記粗大粒子と前記微小粒子それぞれの粒子総質量推移を、それぞれ独立した質量測定器によって計測して、前記粗大粒子の粉塵降下速度及び前記微小粒子の大気中濃度を算出することを特徴とする、連続式降下粉塵計測方法。
  9. 請求項又はに記載の連続式降下粉塵計測装置を用いた連続式降下粉塵計測方法であって、
    前記循環気流路の出口から、前記粒子採取口内面に沿って、前記除塵フィルタで除塵された大気を噴射するとともに、前記粒子採取口内面の全域において、大気中で自由落下しうる粗大粒子の発塵風速以上になるように前記噴射する大気の吐出流量を調整することを特徴とする、連続式降下粉塵計測方法。
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