JP4793936B2 - 電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置および方法 - Google Patents
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Description
この装置は、一般に線形加速器で用いられるSバンド(2.856GHz)の4倍の周波数にあたるXバンド(11.424GHz)をRFとして用いて小型化を図っており、例えばX線強度(光子数):約1×109photons/s、パルス幅:約10psの強力な硬X線の発生が予測されている。
そのため、この発明では、図9に示すように、レーザ61からのレーザ光を光共振器62へ送りそこでレーザ光を蓄積する。光共振器62は超高反射率ミラー63、64を有し、ミラーの反射効率は0.999%以上のものである。この光共振器62へ電子ビームを斜めに入れて衝突させ、その相互作用域でコンプトン散乱によるX線又はγ線を発生させるものである。
そのため、この発明のシステムは、図10に示すように、レーザ空洞70内で第1の方向71に高エネルギの光パルス73を方向付けるように構成されている高繰返し速度のレーザ72と、レーザ空洞70内で第1の方向とは反対の第2の方向76に電子ビーム78を方向付けるように構成されているパルス状電子ビーム78の源74とを含んでいる。電子ビーム78はレーザ空洞70内で光パルス73中の光子と相互作用して、第2の方向76にX線75を生成するものである。
そのため、この発明の装置は、図11に示すように、電子ビームを加速してパルス電子ビーム81を発生し所定の直線軌道82を通過させる電子ビーム発生装置85と、波長の異なる複数のパルスレーザ光83a,83bを順次発生する複合レーザ発生装置86と、複数のパルスレーザ光を直線軌道82上にパルス電子ビーム81に対向して導入するレーザ光導入装置87とを備え、複数のパルスレーザ光83a,83bを直線軌道82上でパルス電子ビーム81に順次正面衝突させ、2種以上の単色硬X線84(84a,84b)を発生させるものである。
上述した従来の方法では、高周波遅延時間tR、電子遅延時間te、レーザ遅延時間tLを予め装置の構成から計算し、高周波発生時から電子が発生するまでの時間dte(=tR−te:電子発生遅延時間)と、高周波発生時からレーザが発振するまでの時間dtL(=tR−tL:レーザ発生遅延時間)を予めそれぞれの遅延回路で設定する。
また、発生直後の電子は、加速管による加速前であり、光速と比較するとわずかに遅い(例えば、光速の90%程度)。
そのため、上述した従来の方法では、電子ビームとレーザ光の衝突点に到達する時間がわずかに異なり、実際に衝突する位置(実衝突点)が予定衝突点からずれてしまい、その結果,衝突断面積が小さくなって発生するX線の量が減少し、かつX線の仮想焦点(発生点)が変動し、これを用いて撮像した像がぼやけてしまうという問題点があった。
予定衝突点9aは、レーザ光3と電子ビーム1の共通する軌道(光路)上に予め設定される。レーザ光3は、この例で左から右に入射するパルスレーザ光であり、予定衝突点9aに集光して最小集光径(例えば1μm以下)となる。
電子ビーム1は、この例で右から左に入射する電子ビームバンチであり、レーザ光3と同時に予定衝突点9aに到達するときに両者の衝突率が最大となり最大量のX線4を発生する。また、予定衝突点9aの前後、例えば集光面積が予定衝突点9aの2倍以下の範囲は、衝突率が十分高いため、許容衝突領域8とされる場合がある。許容衝突領域8は、例えば予定衝突点9aの前後数10mmの範囲である。
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置提供される。
前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設置位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、前記所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法が提供される。
また、所定の遅延時間(Δt)は、遅延回路により、0.1ns以下の高精度で可変調整可能である。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
その結果、電子ビームとレーザ光の衝突断面積がほぼ一定となり、発生X線の強度の時間的揺らぎを小さくすることができ、再現性が良くなることが期待できる。また,X線の仮想焦点も変わらないため,より高精細なX線画像を撮像可能となる。
この例において、電子ビーム発生装置10は、RF電子銃11、α‐磁石12、加速管13、ベンディング磁石14、Q−磁石15、減速管16、およびビームダンプ17を備える。
3枚の反射ミラー24a,24b,24cは、偏光ビームスプリッタ22を出たパルスレーザ光3を複数回(この例では3回)反射して、偏光ビームスプリッタ22に周回させ周回路5を構成する。
制御装置(図示せず)は、偏光ビームスプリッタ22に周回して入るパルスレーザ光3が常に第2直線偏光3b(S偏光)となるようにポッケルスセル24を制御する。
なお、本発明において、上述したレーザ光周回装置20は不可欠ではなく、これを省略し、パルスレーザ光3をワンスルーで用いてもよい。
図1において、レーザ発生装置30は、パルスレーザ発生装置であり、衝突タイミング調整装置32からのレーザ光の発生指令信号に対応してパルスレーザ光3を発振し出射するようになっている。このレーザ光の出射は、Q−スイッチによるのがよい。
また、レーザ光3と電子ビーム1の共通する直線軌道2(光路)上に予定衝突点9aが予め設定される。さらに、パルスレーザ光3の光路上に設置されたレンズ25aは、パルスレーザ光3が予定衝突点9aを焦点としてここに集光して最小集光径となるように設定されている。最小集光径は、電子ビームとの衝突確率を高めるように、できるだけ細くするのがよく、例えば最小集光径が1μm以下となるように、レーザの光学系を設計する。
電子ビーム検出装置34は、電子ビーム1の通過経路上に設けられ、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する機能を有する。
電子ビーム検出装置34は、この例では、導電性巻線34aと電流検出器34bからなる。導電性巻線34aは、電子ビーム1の通過するダクトの外側に設けられ電子ビーム1の経路を囲む。電流検出器34bは、導電性巻線34aに発生する誘導電流を計測し、所定の閾値を超えたときに検出信号を出力する。
すなわち、レーザ光3を発生させるレーザ発生装置30は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、電流検出器34bの検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する。
Q−スイッチ30bの作動からパルスレーザ光3の出射までの遅延時間は極めて短く(例えば、数ns以下)かつ安定している。また、レーザ光3の光路長は、変動がほとんどなくかつ予め高精度に計測又は計算できる。従って、このレーザ遅延時間tLは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
本発明では、電子ビーム検出装置34の設置位置は、ビーム遅延時間tBがレーザ遅延時間tLよりも、後述する遅延時間Δt以上に長く設定されている。この設置位置は、好ましくは加速器の下流側であり、上述した条件を満たす限りで、予定衝突点9aに近い位置に設定する。
電子ビーム1が電子ビーム検出装置34による検出位置を通過した後に予定衝突点9aに到達する時間(すなわちビーム遅延時間tB)は、この設置位置において電子ビーム1の速度が実質的に光速に達しているため、変動がほとんどなく、容易かつ厳密に計算可能である。
さらに、tBは、電子ビーム検出装置34により電子ビーム1の通過検出時から電子ビーム1が予定衝突点9aに到達するまでの時間(ビーム遅延時間)、Δtは、レーザ光指令遅延回路36による電子ビーム1の通過検出時からレーザ発振までの遅延時間である。
次いで、第2ステップとして、この設置位置において、電子ビーム検出装置34により、電子ビーム1に影響を与えることなくその通過を検出する。
次いで、第3ステップとして、電子ビーム1の通過を検出後、所定の遅延時間Δt(=tB―tL)の経過後に、レーザ光3の発生指令を出力する。
従って、高周波発生装置や電子発生装置(電子銃)の状態如何により、実際に電子または電子ビームの発生タイミングが揺らぐ(変動する)場合でも、ビーム遅延時間tB、レーザ遅延時間tL、およびその差(遅延時間)Δtは、変動がほとんどなくかつ予め高精度に求めることができる。
3 レーザ光(パルスレーザ光)、4 X線(硬X線)、
5 周回路、8 許容衝突領域、9 衝突点、
9a 予定衝突点、9b 実衝突点、
10 電子ビーム発生装置、11 RF電子銃、
12 α‐磁石、13 加速管、14 ベンディング磁石、
15 Q−磁石、16 減速管、17 ビームダンプ、
20 レーザ光周回装置、22 偏光ビームスプリッタ、
24a,24b,24c 反射ミラー、
25a,25b,25c,25d レンズ、
26 ポッケルスセル、30 レーザ発生装置、
30a フラッシュランプ、30b Q−スイッチ、
32 衝突タイミング調整装置、
34 電子ビーム検出装置、34a 導電性巻線、
34b 電流検出器、36 レーザ光指令遅延回路
Claims (5)
- 電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置であって、
電子ビームの通過経路上に設けられ、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する電子ビーム検出装置と、
前記電子ビームの通過を検出後、所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力するレーザ光指令遅延回路とを備え、
前記電子ビーム検出装置の設置位置は、電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、前記遅延時間以上に長く設定されている、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整装置。 - 前記電子ビーム検出装置は、電子ビームが通過するダクトの外側に設けられ、電子ビームの経路を囲む導電性の巻線と、該巻線に発生する誘導電流を計測する電流検出器からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の衝突タイミング調整装置。
- 前記レーザ光を発生させるレーザ発生装置は、Q−スイッチ方式のパルスレーザであり、前記電流検出器の検出により、Q−スイッチのタイミングを調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の衝突タイミング調整装置。
- 電子ビームとレーザ光を衝突させて逆コンプトン散乱によりX線を発生させるX線発生装置における電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法であって、
電子ビームの通過時から該電子ビームが予定衝突点に到達するまでのビーム遅延時間が、レーザ光の発生指令から該レーザ光が予定衝突点に到達するまでのレーザ遅延時間よりも、所定の遅延時間以上に長い設置位置を電子ビームの通過経路上に設定し、
前記設置位置において、電子ビームに影響を与えることなく電子ビームの通過を検出し、
前記電子ビームの通過を検出後、前記所定の遅延時間経過後に、レーザ光の発生指令を出力する、ことを特徴とする電子ビームとレーザ光の衝突タイミング調整方法。 - 電子ビームが通過するダクトの外側に、電子ビームの経路を囲むように導電性の巻線を設け、該巻線に発生する誘導電流を計測して、電子ビームに影響を与えることなくその通過を検出する、ことを特徴とする請求項4に記載の衝突タイミング調整方法。
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