JP5454837B2 - 硬x線ビーム走査装置および方法 - Google Patents
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Description
また、逆コンプトン散乱によらない通常のX線発生装置において、X線の出射方向を変化させる手段として、例えば特許文献1〜5が既に提案されている。
この装置は、一般に線形加速器で用いられるSバンド(2.856GHz)の4倍の周波数にあたるXバンド(11.424GHz)をRFとして用いて小型化を図っており、例えばX線強度(光子数):約1×109photons/s、パルス幅:約10psの強力な硬X線の発生が予測されている。
X線は物質表面に極めて浅い入射角度で入射すれば、ほぼ全反射される。従ってこの装置では、一回の反射では大きな偏向角度を取れないが、極浅い角度(全反射臨界角度以下での反射)を多数回行うことで、一定の偏向角度を得ることができる。
高効率のX線ミラー(多層膜ミラー)が実現可能な軟X線領域では、この装置により、偏向・走査が可能である。
X線の集光系が実現可能な軟X線領域では、可視光の偏向・走査と同様に、この手段により偏向・走査が可能である。
電子ビームとレーザ光の衝突相互作用(逆コンプトン散乱)を用いて発生させる硬X線ビームは、その特長として高指向性、短パルス性、準単色性等の優れた特長を有し、硬X線ビームを用いた遠隔透視の実現可能性を持っている。
しかし、その高指向性のため、発生した硬X線ビームの出射方向を変化させること、すなわち硬X線ビームの偏向・走査が困難である問題点がある。そのため、広いエリアでのX線照射を必要とする応用分野への適用が困難であった。
1 特許文献1〜5は、発生するX線の指向性が低いX線を対象としており、指向性の高い硬X線ビームには適用できない。
2 コリメータ(ピンホールあるいは線状のスリット)を使用する手段は、X線の利用効率が極めて低い。
3 特許文献3の手段は、透過性の強い硬X線ビームを高効率に反射する反射鏡を必要とし、かつ実用的な偏向角度(±数deg以上)を得るには、数十回以上の多段反射が必要となり、単一反射鏡としては高効率といえども総合効率は極めて低いものとなる。
また、偏向系サイズも巨大な物となり、X線天体望遠鏡等の大型機器には応用できても、一般産業用には適用が困難である。
4 特許文献5の手段は、現時点では硬X線ビームを対象とする高効率の光学系は存在しないため適用できない。
電子ビームとレーザ光の所定の衝突点に入射する電子ビームの入射角度を変化させるビーム入射角制御装置を備える、ことを特徴とする硬X線ビーム走査装置が提供される。
電子ビームとレーザ光が正面衝突するように、前記ビーム入射角制御装置とレーザ入射角制御装置を同期させて制御する衝突制御装置とを備える。
電子ビームとレーザ光の所定の衝突点に入射する電子ビームの入射角度を変化させる、ことを特徴とする硬X線ビーム走査方法が提供される。
電子ビームとレーザ光が正面衝突するように、前記ビーム入射角制御装置とレーザ入射角制御装置を同期させて制御する。
本発明により実現される走査可能な硬X線ビームは、後方散乱X線を用いた遠隔透視装置等に適用できる。
この例において、電子ビーム発生装置10は、電子銃11、線形加速管12、入射偏向磁石13、出射偏向磁石14、真空容器15、電子ビームダンプ16、およびX線取出し窓17を備える。
線形加速管12は、電子銃11から発生した電子ビーム1を高エネルギーに加速する装置である。この電子ビームは、例えばパルス電子ビーム1であるのが好ましい。
入射偏向磁石13は、線形加速管12から出る高エネルギー電子ビームの収束&偏向を行い、電子ビーム1とレーザ光3の衝突点5に電子ビーム1を導く装置である。
出射偏向磁石14は、所定の衝突点5を通過した電子ビーム1を衝突軌道外の電子ビームダンプ16に向けて偏向させる。
電子ビームダンプ16は、直線軌道2を通過した後の電子ビーム1を捕捉して、放射線の漏洩を防止する。
レーザ装置21は、レーザ光3(好ましくはパルスレーザ光)を発生する。
レーザ反射ミラー22,23は、レーザ装置21で発生したレーザ光3を複数回(この例では2回)反射して、上述した所定の直線軌道2を通過させるようになっている。
また、この例でレーザ反射ミラー23は、発生した硬X線ビーム4が透過しやすいように、X線の透過率の高い材料、例えばプラスチック、ガラスや透過率の高い金属(アルミニウムなど)で構成されている。
ビーム出射角制御装置33は、衝突点5を通過した電子ビーム1が衝突軌道外の電子ビームダンプ16に向かうように上述した出射偏向磁石14を制御する。
コリメータ34は、X線の透過率の低い材料、例えば厚い金属板で構成され、その一部にX線の通過する穴又はスリットを有し、パルス電子ビーム1のパルス運転と同期して移動するようになっている。
この例において、硬X線ビーム走査装置30は、さらに、レーザ入射角制御装置36と衝突制御装置38を備える。
衝突制御装置38は、電子ビーム1とレーザ光3が常に正面衝突するように、ビーム入射角制御装置32とレーザ入射角制御装置36を同期させて制御する。
また電子ビーム1とレーザ光3がそれぞれパルス電子ビーム1とパルスレーザ光3である場合に、衝突制御装置38は、電子ビーム発生装置10とレーザ光発生装置20の同期をとり、パルス電子ビーム1とパルスレーザ光3のタイミングを合わせ、両者が所定の衝突点5で衝突するように制御する。
本発明により実現される走査可能な硬X線ビームは、後方散乱X線を用いた遠隔透視装置等に適用できる。
図3(B)から明らかなように、オフセット角度ηは、正面衝突における電子ビーム1とレーザ光3のなす角度であり、上述した第1実施形態では、電子ビーム1の入射角度αに相当し、第2実施形態では、電子ビーム1とレーザ光3の入射角度α、βの差(=α−β)に相当する。
図3(A)からわかるように、オフセット角度ηに依存して極僅かに発生する硬X線ビーム4のエネルギーが変化するが、オフセット角度ηが0.1rad以下の範囲では、その変化は微小であり、X線透視装置等に用いるのには全く影響しない。
図4(B)から明らかなように、オフセット角度ηは、正面衝突における電子ビーム1とレーザ光3のなす角度であり、上述した第1実施形態では、電子ビーム1の入射角度αに相当し、第2実施形態では、電子ビーム1とレーザ光3の入射角度α、βの差(=α−β)に相当する。また、散乱角度Θは、硬X線ビーム4と電子ビーム1とのなす角度である。
図4(A)からわかるように、散乱角度Θが0の場合を基準として、散乱角度Θが0.002radでは、相対値で800から700まで減少する。従って、硬X線ビーム4の発生方向は、ほぼ電子ビーム1の進行方向と一致しており、かつ高指向性であることがわかる。
3 レーザ光(パルスレーザ光)、4 硬X線ビーム、5 衝突点、
10 電子ビーム発生装置、11 電子銃、12 線形加速管、
13 入射偏向磁石、14 出射偏向磁石、15 真空容器、
16 電子ビームダンプ、17 X線取出し窓、
20 レーザ光発生装置、21 レーザ装置、
22,23 レーザ反射ミラー、
30 硬X線ビーム走査装置、32 ビーム入射角制御装置、
33 ビーム出射角制御装置、34 コリメータ、
36 レーザ入射角制御装置、38 衝突制御装置
Claims (7)
- 電子ビームとレーザ光とを衝突させて発生する硬X線ビームの出射方向を変化させる硬X線ビーム走査装置であって、
電子ビームとレーザ光の所定の衝突点を維持するように当該衝突点に入射する電子ビームの入射角度を変化させるビーム入射角制御装置と、
前記衝突点に入射するレーザ光の入射角度を変化させるレーザ入射角制御装置と、
電子ビームとレーザ光が正面衝突するように、前記ビーム入射角制御装置と前記レーザ入射角制御装置を同期させて制御する衝突制御装置と、
レーザ装置により発生させられたレーザ光を反射させる第1のレーザ反射ミラーと、
第1のレーザ反射ミラーにより反射させられたレーザ光を前記衝突点へ反射させる第2のレーザ反射ミラーと、を備え、
前記レーザ入射角制御装置は、第1および第2のレーザ反射ミラーの反射角度を変化させることにより、前記衝突点に入射するレーザ光の入射角度を変化させ、
前記衝突制御装置は、第2のレーザ反射ミラーが、電子ビームと正面衝突する方向にレーザ光を前記衝突点へ反射させるように、前記ビーム入射角制御装置とレーザ入射角制御装置を同期させて制御する、ことを特徴とする硬X線ビーム走査装置。 - 電子ビームとレーザ光とを衝突させて発生する硬X線ビームの出射方向を変化させる硬X線ビーム走査装置であって、
電子ビームとレーザ光の所定の衝突点を維持するように当該衝突点に入射する電子ビームの入射角度を変化させるビーム入射角制御装置を備え、
前記電子ビームはパルス電子ビームであり、前記レーザ光はパルスレーザ光であり、
前記パルス電子ビームのパルス運転と同期して移動するコリメータを備える、ことを特徴とする硬X線ビーム走査装置。 - 前記衝突点に入射するレーザ光の入射角度を変化させるレーザ入射角制御装置と、
電子ビームとレーザ光が正面衝突するように、前記ビーム入射角制御装置とレーザ入射角制御装置を同期させて制御する衝突制御装置とを備える、ことを特徴とする請求項2に記載の硬X線ビーム走査装置。 - 前記ビーム入射角制御装置は、電子ビームを所定の衝突点に向けて偏向させる入射偏向磁石を、電子ビームの所望の入射角度に応じて前記衝突点を維持するように制御する、ことを特徴とする請求項2または3に記載の硬X線ビーム走査装置。
- 前記電子ビームはパルス電子ビームであり、前記レーザ光はパルスレーザ光である、ことを特徴とする請求項1に記載の硬X線ビーム走査装置。
- 前記パルス電子ビームのパルス運転と同期して移動するコリメータを備える、ことを特徴とする請求項5に記載の硬X線ビーム走査装置。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬X線ビーム走査装置を用いた硬X線ビーム走査方法であって、
ビーム入射角制御装置により、電子ビームとレーザ光の所定の衝突点を維持するように当該衝突点に入射する電子ビームの入射角度を変化させる、ことを特徴とする硬X線ビーム走査方法。
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