JP4793834B2 - 金属缶の内面被膜検査方法及び検査装置 - Google Patents

金属缶の内面被膜検査方法及び検査装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、表面処理鋼板やアルミニウム合金板などから成る金属缶の内面側を被覆している内面被膜に生じている傷やピンホールなどの欠陥を検出するための方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属缶がその充填物によって腐食されることのないように、金属缶の内面を熱硬化性樹脂塗膜や熱可塑性樹脂フィルム膜などの合成樹脂製の絶縁体によって被覆することが従来から広く行われている。そして、金属缶の充填物の性質によって、金属缶の内面に施される被膜の材質や厚さ、内面被膜の形成方法が決定されている。なお、内面被膜の厚さは、通常、熱硬化性樹脂被膜の場合には4μm〜13μm、熱可塑性樹脂フィルム膜の場合には10μm〜30μmである。
【0003】
しかし、内面被膜の形成時やその後の金属缶の加工工程において、内面被膜に傷やピンホールなどの欠陥が発生する場合があった。そして、内面被膜の欠陥を放置したまま金属缶の内部に充填物を封入すると、その充填物によって金属缶を構成している金属が腐食して腐食孔が発生したり、金属缶に用いられている金属が充填物中に溶出して充填物のフレーバーが損なわれたりする可能性があった。そのため、充填物を金属缶に充填する前の工程において、抜き取り検査により、内面被膜の欠陥を検出することが行われている。
【0004】
その金属缶の内面被膜(塗膜)欠陥の検出方法として、エナメルレータ法が一般的に知られている。このエナメルレータ法について説明する。まず、一端が閉じられ、かつ、他端が開口されている金属缶の内部に電解液を注入し、その中に検出装置の負極を浸漬する。次に、金属缶の金属露出部に検出装置の正極を接触させて、これらの電極の間に所定時間(例えば3秒間)、数V(例えば6V)程度の電圧を印加する。そして、数V程度の電圧を印加することによって流れる漏洩電流を測定することにより、金属缶の内面被膜の欠陥を検出するものである。
【0005】
しかし、エナメルレータ法では、電解液として塩化ナトリウム水溶液や硫酸ナトリウム水溶液などが用いられているために、内面被膜に欠陥が存在しないという検査結果が得られた金属缶であっても、その内面に付着した電解液によりその後の時間経過に伴い金属缶の内面が腐食あるいは汚染される虞があることから、検査に用いた金属缶は正常品に戻されず廃棄処分され、抜き取り検査が前提となっている。したがって、金属缶の全数検査にこの方法を採用するとすれば、腐食性の強い電解液を金属缶の内部から完全に除去するための洗浄工程が必要となって、工程が複雑化し金属缶の製造コストがアップする問題がある。
【0006】
このような問題に対処することのできる金属缶の内面被膜の欠陥検出方法および装置の一例が、特開2000−046776号公報に記載されている。この公報には、導電性のブラシを金属缶の内部に挿入して内面被膜に接触させるとともに、内面被膜の表面に導電性の液体を供給し、ブラシと金属缶とを接触させたまま相対回転させることによりブラシによって液体を微粒子化し、その状態でブラシと金属缶との間に低電圧(例えば、5V〜30V)を印加し、その内面被膜を介して流れる電流を測定することが記載されている。この公報に記載された方法および装置によれば、導電性を有する液体として純水を用いることによって、金属缶を自然乾燥させたり、空気(室温程度の空気または暖めた空気)を吹き付けたりするだけで、乾燥後に金属缶の内面被膜に水の痕跡を残さず、金属缶を検査前の状態に戻すことができ、洗浄工程を設ける必要がないとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された方法および装置においては、ブラシにより導電性の液体を微粒子化しているため、金属缶の内面が、ブラシの先端が届き難い複雑な形状(例えば、途中から小径となっている形状や、一端側の開口部付近に螺旋形状の凹凸などが形成されている形状)である場合には、導電性の液体が、内面被膜の表面に満遍なく行き渡ることが困難である。その結果、内面被膜の欠陥検出精度や検査の確実性が低下する可能性があった。また、金属缶の内面形状が、ブラシの先端が届く形状であったとしても、ブラシを金属缶の内面被膜に接触させた状態で相対回転させると、ブラシにより内面被膜を傷つけたり、繰り返し行なわれる内面被膜との接触により、ブラシの先端が磨耗または折損し、ブラシの折損部分が内面被膜に付着したまま残ったりする虞があった。したがって、内面被膜の検査後に、ブラシの破片が金属缶の内面被膜に付着していないかどうかの検査を行なう必要があるが、この破片が微小な場合には、破片の検出が困難であるので、このような破片を除去するために金属缶の内面を洗浄して破片除去する洗浄除去工程が別途必要となり、検査工程が複雑化され、検査効率を低下させる可能性があった。
【0008】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、少なくとも一端に開口部が形成されている金属缶であって、その内面形状が複雑な形状を有するものであっても、内面被膜の欠陥検出を良好に行え全数検査に適用可能な内面被膜検査方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、非導電性の内面被膜が施された食品用もしくは薬品用の金属缶の金属部を一方の極性とし、前記金属缶内に配置した導電性部材を逆の極性とし、導電性を有する液体を前記金属缶内に充填した後、両極の間に電圧を印加し、印加時に生じる電流を検出し、前記検出電流値に基づいて内面被膜を検査する金属缶の内面被膜検査方法において、前記液体として、純水に炭酸ガスを溶解させて予め0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲の比抵抗値に調整した検査水を用い、かつ前記金属缶内に供給される前記検査水の比抵抗値を抵抗率計により検出して金属缶の全数に充填し、前記導電性部材は前記金属缶の内面との間の距離を1mmないし4mmに設定して前記金属缶の内部に配置するとともに、前記両極の間に印加する電圧は、検査する内面被膜の耐電圧より低く、かつ欠陥を介した導通電流と金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と欠陥の無い内面被膜を介して放電電流とが重複して流れる電圧に設定し、該電圧を印加することにより欠陥を介した導通電流と金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と欠陥の無い内面被膜を介した放電電流とが重複して流れる検出電流を測定し、予め実験によって定められた判定基準値を前記抵抗率計によって検出された比抵抗値に応じて補正して、補正された判定基準値と測定された前記検出電流とに基づいて、前記内面被膜の欠陥の有無を全数検査し、不良品と判定した金属缶はライン外に排出させ、良品と判定した金属缶は検査水を除去し乾燥させ正常品に戻すようにしたことを特徴とする方法である。
【0010】
請求項1の発明によれば、金属缶の内面形状が単純な円筒形状となっている場合はもちろんのこと、複雑な形状となっている場合にも、例えば、一端開口の金属缶において、開口部に多段状のネック成形が施されている缶や、開口端部を縮径して小径の口頸部を形成し、この小径口頸部の開口先端部をカール加工するとともに、小径口頸部の中間部に螺旋形状の凹凸などを形成したネジ付きボトル型缶などのように、内面形状が複雑な金属缶のいずれであっても、これらの内面被膜全域の細部に亘って検査水を満遍なく接触させることができるので、これに伴い内面被膜全域に電圧が印加され、内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性を向上させることができる。すなわち、一方の電極である導電性部材を内面被膜に直接的に接触させる換わりに、検査水を介して接触させて、つまり内面被膜に検査水が密接に接触するので、内面被膜の品質検査を十分に行うことができる。
【0011】
また、検査に用いる検査水は、炭酸ガスの溶解により、その比抵抗値を所定の値に調整することにより、耐電圧の低い内面被膜の場合であっても、欠陥の検出感度を低下させずに、検査用の検査電圧を内面被膜の耐電圧に応じた電圧すなわち内面被覆の耐電圧より低い電圧とするので、検査電圧による内面被膜の絶縁破壊を生起させずに、内面被膜の欠陥検出が可能となり、耐電圧の低い内面被膜を有した金属缶を検査対象とすることができ、この場合にも、内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性を向上させることができる。
また、検査水の比抵抗値を2.0MΩ・cm以下に調整していることにより、従来では絶縁破壊法でしか検査できなかった耐電圧の低い内面被膜の場合であっても、内面被膜の欠陥検出感度を十分に維持しながら、これに応じた低い検査電圧を印加することができ、検査によって内面被膜にダメージを与えて不良品にすることを未然に回避することができる。
さらに、検査水の供給過程などで検査水の比抵抗値が変動しても、この変動を検出して判定基準である判定基準値を設定するようにしたので、金属缶の内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性をさらに向上させることができる。
また、検査水の比抵抗値の下限を0.05MΩ・cmに設定することにより、比抵抗値を調整する炭酸ガスを大量に使用しなくて済み、検査水の比抵抗値を調整する運用コストの低減が図れ、経済性を向上できる。これとともに、比抵抗値が0.05MΩ・cm未満の設定は、実質的に絶縁破壊法に近づいた設定なので、内面被膜の絶縁破壊を防止するために検査電圧を低下させなければならず、これに伴い検出感度が低下してしまうので、検査水の比抵抗値の下限を0.05MΩ・cmに設定することにより、このような事態を未然に回避することができる。
【0012】
さらに、炭酸ガスの溶解により比抵抗値を所定に調整した純水を検査水として用いているだけなので、内面被膜の欠陥検査後には、内面被膜に金属などの残留物や付着跡を生起させずに済み、金属缶から検査水を排出し水分を除去するだけで良い。したがって、内面被膜の欠陥検査を行なった後に、残留物や付着跡を除去する金属缶の内面を洗浄する専用の工程を不要にできるとともに、金属缶を単に乾燥させるだけで検査水を除去でき、検査の仕様として食品衛生法上の問題が生じずに済み、全数検査への対応が可能となる。
【0013】
また、一方の電極である導電性部材を直接的に内面被膜に接触させずに、検査水を介して接触させているので、検査電圧を印加する時のスパーク接触が回避され、内面被膜の絶縁破壊が防げるとともに、電極がダメージを被ることなく、電極の耐久性を向上することができる。特に、従来の検査方法では、一方の電極である導電性のブラシを内面被膜に直接的に接触させていたので、ブラシにより内面被膜が傷ついたり、ブラシの先端が折損し折損部分が内面被膜に付着したりする虞があり、これに対処した専用の洗浄除去工程が必要となって、検査工程が複雑化したが、本実施形態によれば、このような事態を未然に回避することができる。
【0014】
請求項2の発明は、上記の請求項1に記載した金属缶の内面被膜検査方法であって、検査水が、検査に使用されて回収された後、イオン成分が除去され、炭酸ガスを溶解させて、所定の比抵抗値に調整処理し、検査に再利用されることを特徴とした方法である。
【0015】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、使用した検査水を回収し所定値に調整した後に検査装置に供給する検査水を循環使用する方法を追加して採用していることにより、検査水の原材料となる水資源の不要な浪費を防止できるとともに、その稼動時に検査環境の変動により、検査水の比抵抗値が変化しても、検査水の比抵抗値を適正な値に復帰させるために調整処理を迅速に行なうことができ、検査の信頼性を向上させることができる。
【0016】
さらに、検査水の比抵抗値を、検査水中に炭酸ガスを溶解させることにより調整しているので、内面被膜の欠陥検査後に、内面被膜に有害な金属などの残留物を生起させずに済み、金属缶から検査水を排出し水分を除去するだけで良く、有害な残留物や付着跡を排除する専用の洗浄工程を不要にできるとともに、金属缶を単に乾燥させるだけで検査水が除去されるので、検査工程に要する工程時間の短縮化が図れるとともに、検査の仕様として食品衛生法上の問題が生じずに済み、全数検査への対応が可能となる。
【0017】
請求項3の発明は、上記の請求項1または2に記載した金属缶の内面被膜検査方法であって、前記検査水の比抵抗値が、0.35MΩ・cm以下の範囲に設定され、耐電圧が低い内面被膜の欠陥の有無を検査することを特徴とする方法である。
【0018】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の作用が生じる他に、検査水の比抵抗値を0.35MΩ・cm以下に調整していることにより、従来では絶縁破壊法でしか検査できなかった耐電圧の低い内面被膜の場合であっても、内面被膜の欠陥検出感度を十分に維持しながら、これに応じた低い検査電圧を印加することができ、検査によって内面被膜にダメージを与えて不良品にすることを未然に回避することができる。
【0020】
請求項4の発明は、非導電性の内面被膜が施された食品用もしくは薬品用の金属缶の内面被膜の欠陥の有無を検査する内面被膜の検査装置において、前記金属缶の金属部を一方の極性とし、前記金属缶内の内面被膜との間の間隙距離が1ないし4mmに設定配置した導電性部材を逆の極性として、導電性を有する検査水を前記金属缶内に充填した後、両極の間に検査する内面被膜の耐電圧より低い電圧を印加する印加装置と、検査水として純水を用い、その純水に炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲に設定する調整装置と、前記金属缶内に供給される検査水の比抵抗値を検出する抵抗率計と、検査水を前記金属缶内に充填した状態にする充填装置と、充填後に、前記印加装置により両極の間に電圧を印加した時に、欠陥を介した導通電流と、金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と、欠陥の無い内面被膜を介した放電電流とが重複して流れる電流値を検出する電流計と、前記検査水に対して前記抵抗率計で検出された比抵抗値に応じて予め実験によって定められた判定基準値の補正を行い、補正された判定基準値と検出された電流値とに基づいて前記内面被膜の欠陥の有無を全数の金属缶に対して検査する判別装置とを備えたことを特徴とする装置である。
【0021】
請求項4の発明によれば、金属缶の内面形状が単純であると複雑であるとに拘わらず、検査水が内面被膜の全域に密接し、検査用の電圧を金属缶の内側から内面被膜全域に印加できるので、内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性を向上させることができる。
【0022】
また、検査に用いる検査水は、純水を用い、その純水に炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲で、調整装置により、その比抵抗値を予め所定の値に調整して金属缶内に充填しているので、耐電圧の低い内面被膜の場合であっても、欠陥の検出感度を低下させずに、検査用に印加する電圧を内面被膜の耐電圧に応じた電圧すなわち内面被覆の耐電圧より低い電圧とすることができ、耐電圧の低い内面被膜を有した金属缶を検査対象としても、検査電圧による内面被膜の絶縁破壊を生起させずに、内面被膜の欠陥検出が可能となり、内面被膜の耐電圧に応じて欠陥を検出する精度や確実性を向上することができる。
さらに、炭酸ガスの溶解により比抵抗値を所定に調整した純水を検査水として用いているだけなので、内面被膜の欠陥検査後には、内面被膜に金属などの残留物や付着跡を生起させずに済み、金属缶から検査水を排出し水分を除去するだけで良い。したがって、内面被膜の欠陥検査を行なった後に、残留物や付着跡を除去する金属缶の内面を洗浄する専用の工程を不要にできるとともに、金属缶を単に乾燥させるだけで検査水を除去でき、検査の仕様として食品衛生法上の問題が生じずに済み、全数検査への対応が可能となる。
【0023】
さらに、検査水の供給過程などで検査水の比抵抗が変動しても、この変動を検出して判定基準である判定基準値を設定するようにしたので、金属缶の内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性をさらに向上させることができる。
【0024】
請求項5の発明は、上記の請求項4に記載した金属缶の内面被膜検査装置であって、検査に使用された検査水を回収し、回収された検査水のイオン成分を除去処理し、炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を所定値に調整処理して、検査水を循環使用する検査水循環装置を設けたことを特徴とした装置である。
【0025】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と同様の作用が生じる他に、使用した検査水を回収し、イオン成分を除去した後に、炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を所定値に調整し、検査に循環使用する構成を加えているので、検査水の原材料となる水資源の不要な浪費が防止できるとともに、金属缶の製造コストダウンや、検査装置自体の小型化を図ることにも有効となる。
【0026】
また、常に安定して一定の比抵抗値に調整された検査水を検査に用いることができるので、内面被膜の検査信頼性を向上させることが可能となる。
【0027】
さらに、検査装置の稼動時に検査対象の変更による比抵抗値の再設定が必要になった場合にも、検査水循環装置の調整機能により、十分に対応することができ、多種多様な金属缶の内面被膜検査に対しても容易な対応が可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体例を、図面を参照して説明する。この発明の金属缶の内面被膜検査方法は、図1に概略を示す検査装置と、図2に概略を示す検査水循環装置とから構成される。まず、検査装置の構成を、図1に基づいて説明する。この図1は、検査対象である缶胴1と、この缶胴1を検査する検査装置2とを主に示す概略図、図2は、検査水循環装置を主に示す概略図である。なお、図3は、この発明の検査装置の検査原理を説明する検出特性の相関図である。缶胴1は、一端開口の筒形状に成形され、底部と胴部とが一体に成形された金属缶胴部3と、金属缶胴部3の内周面の全域に施された内面被膜4とを備え、その開口部を上方に向けて、検査装置2に連動する支持装置(図示せず)により保持されている。
【0029】
金属缶胴部3は、導電性の材料、例えば、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ティンフリースチールなどの表面処理鋼板、ブリキ、クロムメッキ鋼板、アルミメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、その他の各種合金メッキ鋼板を用いて、絞り再絞り加工または絞りしごき加工することにより形成されている。金属缶胴部3は、一端側に開口部5を有する円筒形状の胴部6に形成され、また、胴部6における開口部5とは反対側の底部が縮径するように成形され、かつ、この底部側の底面に缶内方にくぼんだ凹部7が形成されている。なお、金属缶胴部3は、その開口部5の周囲端部に、最終的にネックイン加工及びフランジ加工が施された金属缶胴部3や、ネックイン加工された口頸部にネジ加工・カール加工が施されたネジ付缶胴でも良い。
【0030】
上記のような缶胴1を製造する手法としては、以下の第1の方法と第2の方法とが挙げられる。第1の方法は、筒形状に加工された金属缶胴部3の内周面に、エポキシ−フェノール系塗料やアクリル変性エポキシ−フェノール系塗料、またはエポキシ−尿素系塗料などの塗料を液体の状態でスプレーするとともに、塗料を乾燥焼付けすることにより、内面被膜4を有する缶胴1を製造する方法である。また、第2の方法は、熱可塑性樹脂フィルムを金属板表面に貼着または押し出し被覆して樹脂被覆金属板を製造する。熱可塑性樹脂フィルムには、ポリエステル系やポリプロピレン系、ナイロン系などのものが用いられ、樹脂フィルムを配向結晶構造にしたものや、非結晶構造のものがある。以下に、耐電圧が比較的に低い非晶質構造の樹脂フィルムを備えた缶胴1の内面被膜の適用例を説明していく。
【0031】
なお、この樹脂被覆金属板を、絞り再絞り加工または絞りしごき加工することにより、円筒形状の底付き缶胴に成形し、その後、底付き缶胴の底部側に数回の絞り加工と平滑化加工とを行うことにより、小径口頸部および肩部を成形し、さらに、小径口頸部の先端を切断して開口させ、小径口頸部の先端部を外巻きしてカール部を成形し、その下方にネジ部を形成するとともに、タンパーエビデンス機構付きのキャップの破断バンドを固定するための環状突部を形成することにより製造される内面被膜を有するボトル型缶胴、あるいは、溶接缶胴、または、その一方の開口端部に缶蓋が巻き締められたスリーピース缶にも、本発明は適用することができる。
【0032】
一方、前記検査装置2は、開口部5を介して缶胴1の内部に挿入される検査ヘッド9を有している。この検査ヘッド9は、その少なくとも検査実行時に缶胴1内部に位置する部分の大部分が導電素材のステンレスを用いて形成され、耐錆性と低コスト性を確保するようにしており、検査ヘッド9の導電部分は、直流電源(以降は、単に電源と称する)22の正極に、電気的に接続されている。なお、電源22として、直流に交流を載せた電源を用いても良い。また、検査ヘッド9の導電部分には、ステンレスが用いられているが、これ以外に、白金やカーボン電極を用いることも可能である。また、検査ヘッド9の外面形状は、缶胴1の内面形状に相似する形状で僅かに小さく形成され、検査ヘッド9の外面と缶胴1の内面との間の間隙距離は、缶胴1内に充填される検査水17の水量に応じた一定距離に、適宜設定されている。なお、検査ヘッド9を缶胴1内の検査位置及び、缶胴1外の格納位置に移動させる駆動装置(図示せず)が設けられている。
【0033】
検査ヘッド9が検査位置にセットされた場合に、缶胴1の上方開口に臨む検査水供給管14の一端である検査水注入口15が検査ヘッド9に設けられているとともに、検査水供給管14の他端は、定流量弁(図示せず)を介して調圧タンク19に接続されている。定流量弁は、その定流量弁の開時に、検査水供給管を通過する検査水の流量を一定に調節するものである。調圧タンク19は、検査水循環装置30に配管を介して接続され、検査水循環装置30が、後述するように比抵抗値が調整された検査水17を安定して供給している。なお、検査に使用された検査水17は、検査装置2の缶胴1に対して直下方に設けられた受水回収部25を介して、回収タンク26に回収されており、回収タンク26は検査水循環装置30に配管を介して接続されている。すなわち、検査装置2の調圧タンク19は、検査水循環装置30の調整槽31に接続され、検査水循環装置30から検査用に調整された検査水17を供給される一方、検査装置2の回収タンク26は検査水循環装置30の供給槽32に接続され、検査に使用された検査水を再び検査に使用できるように検査水循環装置30によって、調整処理される。
【0034】
さらに、検査ヘッド9の所定箇所には、検査時に缶胴1の開口端部の金属素地に接触するエッジ電極20が設けられ、このエッジ電極20には、導電性素材が用いられている。なお、このエッジ電極20は、内外径方向の幅が広いリング形状に形成しても良く、この場合には、エッジ電極20の外径は缶胴1の外径よりも大きく設定されているとともに、内径は缶胴1の外径よりも僅かに小さく設定されている。さらに、エッジ電極20は電源22の負極に、電気的に接続されている。
【0035】
そして、電源22の電圧、つまり検査ヘッド9に印加する電圧は、内面被膜4の耐電圧(この耐電圧は、内面被膜4の種類、内面被膜4の厚さ、配向度などの各種条件により変化する)よりも低い電圧に設定されている。そして、電源22の負極とエッジ電極20との間には、電流計23が設けられている。また、検査水供給管14には、検査水17の比抵抗値を検出する高感度の抵抗率計(図示せず)が設けられている。さらに、これらの電流計23および高感度の抵抗率計は、それぞれ電子制御装置(図示せず)に電気的に接続されている。そして、この電子制御装置によって、電流計23により検出された電流値から内面被膜4に欠陥が生じているか否かが判定される。なお、電子制御装置には、缶内に充填された検査水17に対して検出された比抵抗値に応じて、検量線(これは、比較判定のしきい値であり判定基準値である)の補正を行なう補正回路が設けられている。
【0036】
また、缶胴1を前工程から検査ステーションに搬入する動作と、検査ステーションから乾燥ステーションへ缶胴1を移送する動作と、乾燥ステーションから缶胴1を後工程に排出する動作とを行う搬送装置(図示せず)が設けられている。この搬送装置は、電動機、シリンダなどの公知のアクチュエータ(図示せず)と、これらのアクチュエータにより動作するターンテーブル、ベルトコンベア、チャックなどの公知の機構とを備えている。さらに、各ステーション中、あるいは各ステーション同士の間における缶胴1の位置・移動・停止などの状態を、光電的または機械的に検出する各種のセンサ(図示せず)が設けられている。さらにまた、内面被膜4に欠陥があると判定された缶胴1をライン外に排出する排出装置(図示せず)が設けられている。
【0037】
そして、欠陥検出装置の動作や搬送装置の動作を連係して制御する前述した電子制御装置は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インタフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成され、記憶装置に格納されたプログラムに従って各装置の動作を制御するとともに、金属缶胴部3の内面被膜における欠陥の有無を判定している。すなわち、電子制御装置には、電流計23の検出値信号、各種のセンサの信号などが入力される。他方、電子制御装置からは、検査装置2の保持手段を駆動制御する信号、流量調節弁を駆動制御する信号、搬送装置及び排出装置の動作を制御する信号、検査水17の比抵抗値を調整制御する指令信号などを出力している。
【0038】
次に、本実施形態の検査原理と検査方法とを説明する。まず、本実施形態の金属缶は導電性材料が使用されるとともに、その内面被膜は非導電性の性質を示す材料から形成されている。したがって、この内面被膜は電気的な絶縁性を示すので、その内面被膜に全く欠陥が生じていない場合には、基本的に金属缶の金属部分に通電しても、検査電圧や比抵抗などの種々の条件に依存して、導電現象や放電現象などが観測されるが、内面被膜を介して電気的に導通しないことになる。すなわち、金属缶内に導電性の検査水を充填し、検査水に一方の極性の電圧を、金属缶に他方の極性の電圧を印加しても、非導電性の内面被膜により遮られ、導通による電流が流れないことになる。これに対して、内面被膜にピンホールや亀裂などの微小でも欠陥が生じていると、金属缶の金属素地と検査水とが直接接触し、導電部材と金属素地とが検査水を介して導通した状態となるので、電圧を印加した際に導通電流が流れ、この導通電流を検出することができる。但し、印加する電圧や検査水の比抵抗の設定によっては、無欠陥の正常な内面被膜の場合に、前述したような導通現象が観測されなくても、絶縁材である内面被膜層に蓄積される電荷量がその内面被膜層に蓄積できる最大容量を越えた場合に、放電電流が流れる。
【0039】
ここで、同じ検査対象物(耐電圧が比較的に低い非晶質構造の内面被膜を有する金属缶)を検査して得られた従来のエナメルレータ法による検出結果(QTV値)と、本発明の検査法による検出結果(FDD値)との関係図を図3に示す。前者(エナメルレータ法)は、電解液として塩化ナトリウム水溶液(1%の食塩水)を用いて、印加する電圧を6Vに設定している。これに対して本発明は、検査水として純水に炭酸ガスを溶解させ、その検査水の比抵抗値が2.0MΩ・cm以下の値である1.0MΩ・cmに調整されたものが用いられ、その検査電圧として、内面被膜の耐電圧よりも低い1000Vに設定されている。そして、これらの両者の関係を、傷欠陥特性を無欠陥から徐々に欠陥が大きくなるように段階的にグレードを変化させたもので、対比してみる。すなわち、欠陥状態が異なる金属缶毎に、本例の内面被膜検査装置で検査して電流値(FDD値)を取得し、次に、同一の欠陥状態の金属缶毎に、従来のエナメルレータ法で、漏洩電流値(QTV値)を取得し、どのようになるかプロットした。すると、両者には、相関関係が確認できるので、従来のエナメルレータ法に代えて、イオン交換方式で処理して得た純水に炭酸ガスを溶解させて比抵抗値を調整した検査水を用いれば、内面欠陥を確実に検出することが可能であることが解かった。なお、欠陥の無い正常な内面被膜の場合に、本発明の検査法では、30μA以下の微少電流が検出されるときがあるが、これは欠陥に起因する導通電流が検出されたものではなく、絶縁材である内面被膜層に蓄積される電荷量が所定量を越えた場合の放電電流が検出されることを示している。
【0040】
また、本発明の検査法で、上記の検査電圧1000Vより低い電圧500Vを印加した場合でも、検査水の比抵抗値を1.0MΩ・cmから0.18MΩ・cmの範囲に下げれば、欠陥の検出感度は、従来のエナメルレータ法と同等の検出感度を維持できる、つまり検査電圧1000Vでの検出感度を維持できることが、種々の実験結果から解かった。つまり、低下させた検査電圧に比例させて、検査水の比抵抗値を炭酸ガスの溶解により低下させれば、検出感度を維持できることが解かった。
【0041】
したがって、耐電圧の大きい内面被膜、例えば膜厚が厚く配向結晶度が大きい内面被膜の傷欠陥を検出する場合には、その内面被膜の耐電圧に依存している検査電圧を用い、この検査電圧に相応して大きくした比抵抗値の検査水を用いるようにすれば良いことになる。なお、内面被膜の組成、配向度、厚みなどによって、耐電圧は変化している。すなわち、具体的に有機被膜の耐電圧の例を示すと、熱硬化性の水性塗料をスプレー塗装して焼き付けた場合に、その内面被膜の厚みが5μm〜6μmのときは、内面被膜は300V〜400Vの耐電圧を有し、その内面被膜の厚みが10μm〜13μmのときは、内面被膜は800V〜900Vの耐電圧を有している。また、配向結晶性のポリエステル樹脂フィルムを表面処理鋼板に被覆した板材から薄肉化深絞り成形した缶体の場合に、その内面被膜の厚みが10μm〜13μmのときは、内面被膜は1500V〜2000Vの耐電圧を有し、その内面被膜の厚みが17μm〜20μmのときは、内面被膜は2500V〜3000Vの耐電圧を有している。さらに、非晶質構造のポリエステル樹脂フィルムをアルミニウム合金板に被覆した板材から薄肉化絞りしごき成形した缶体の場合に、その内面被膜であるフィルムの厚みが23μm〜26μmのときは、内面被膜であるフィルムは600V〜1100Vの耐電圧を有している。したがって、検査する内面被膜の耐電圧より低めの検査電圧を用い、この検査電圧の場合に、内面被膜の傷欠陥の検出感度をできるだけ良好にするために、検査水の比抵抗値を2.0MΩ・cm以下の範囲で適宜調整することにより、内面被膜の絶縁破壊を防止しながら欠陥の検出が可能となる。
【0042】
なお、検査水の比抵抗値を0.05MΩ・cmよりも小さくすることは、絶縁破壊法による電流検出法に近づくことになり、この場合に印加する電圧が高いと、正常品でも内面被膜を絶縁破壊させて内面被膜が損傷する虞があるので、全数検査に応用することは、不適当である。しかも、検査水の比抵抗値をこれ程までに低下させ維持するためには、炭酸ガスを大量に使用して消費する必要が生じるので、ランニングコストが高くなり不経済となる。したがって、検査電圧による内面被膜の絶縁破壊を防止する観点と、経済性の面とから、検査水の比抵抗値を0.05MΩ・cm以上に設定することにした。
【0043】
これらの結果、金属缶の内面被膜を絶縁破壊しない検査電圧とし、しかもその検査電圧で検出感度を良好に維持するためには、比抵抗値を0.05MΩ・cm以上且つ、比抵抗値を2.0MΩ・cm以下に調整した検査水が用いられ、特に内面被膜の耐電圧が低い場合には、比抵抗値を0.35MΩ・cm以下の範囲に調整した検査水を使用するのが好ましい。なお、本例においては、検査水の比抵抗を0.18MΩ・cmに設定するとともに、電源22の出力電圧、つまり検査電圧を500Vに設定している。
【0044】
上記のように構成された検査装置2と、上述した原理によって、缶胴1の内面被膜4の欠陥の有無を検出する検査方法について説明する。まず、内面被膜4を施された缶胴1が、前工程から、例えばコンベア、チャック機構などから構成される金属缶供給装置(図示せず)により、検査工程に搬入される。すると、図1に実線で示すように、支持手段により検査装置2の検査位置K1に移動され、缶胴1の軸線を上下方向に向け、かつ、小径口頸部を下に向けた状態で、セッティングされる。
【0045】
缶胴1のセッティングが完了すると、検査ヘッド9が下降を開始する。そして、検査ヘッド9が開口部5を通過して缶胴1の内部に進入するとともに、検査ヘッド9に設けたエッジ電極20が、大径開口部5に臨む金属缶胴部6の開口端に接触した時点で、検査ヘッド9が停止する。このようにして、検査ヘッド9をボトル型缶胴1の内部に挿入した状態において、検査ヘッド9の外表面と内面被膜4との間に空間が形成される。
【0046】
検査ヘッド9の外表面と内面被膜4との距離は、特に限定されるものではないが、缶胴1の内部に供給する検査水17の使用量を少なくすることにより、検査水17の缶胴1への充填及び排出に必要な時間、つまりこれに応じた検査速度を速めるためには、検査ヘッド9の外表面と内面被膜4との距離を1ないし4mm程度に設定することが好ましい。また、検査ヘッド9を缶胴1の内部に挿入する場合の挿入性と、検査ヘッド9と缶胴1との半径方向および軸線方向の位置決め性とを考慮すると、検査ヘッド9の外表面と内面被膜4との距離を、2ないし3mm程度に設定することが一層好ましい。なお、前記空間に対しては、前記検査水注入口15、検査ヘッド9の電流を検出する電極部分、内面被膜4が臨んでいる。
【0047】
ついで、金属缶胴部3が所定の検査水供給位置を通過したときに、流量調節弁の開動作により、調圧タンクから検査水17が、検査水供給管14および検査水注入口15を介して空間に供給される。なお、検査水17の比抵抗値は、0.18MΩ・cmに設定されている。ここで、検査水17が空間に対して規定量注入されたことが、公知の検知手段で判別され、この判別に基づいた流量調節弁の閉動作により、検査水17の供給が停止される。
【0048】
そして、金属缶胴部3が所定の検査位置に到達したときに、電源から検査ヘッドに対して検査用の電圧が印加される。この電圧は、本発明では非晶質構造のポリエステル樹脂フィルムからなる内面被膜4を実施形態例として用いているので、この内面被膜4の耐電圧よりも低い電圧、500Vに設定している。なお、内面被膜4に生じる欠陥には、亀裂、傷、ピンホール、表面の網目状のひび割れ(マクロクラック)が生じた網目欠陥、缶胴1の成形時に生じた微小な金属片が内面被膜4に刺さった金属片付着欠陥などがある。すなわち、亀裂、傷、ピンホールなどの欠陥が生じた場合には、検査水17が、亀裂、傷、ピンホールなどに浸入して缶胴1の金属素地と直接接触し、通電による電流が流れる。また、網目欠陥において、ひび割れが金属素地にまで達していない場合や、金属片付着欠陥において、内面被膜4に刺さった金属片が金属素地まで達していない場合などのように、金属素地と検査水17とが導通していなくても内面被膜4にダメージを受けている部分的な欠陥の場合には、放電による電流が流れる。また、欠陥の無い内面被膜4においても、欠陥部に比べると少ないが放電による電流が流れる場合がある(通常では流れない)。したがって、電圧を印加することにより、検査ヘッド9、検査水17、エッジ電極20によって閉じられた電気回路が形成され、この電気回路に欠陥を介した通電電流、部分的な欠陥を介した放電電流、欠陥の無い内面被膜4を介した放電電流などが重複した電流が流れる。一方、高感度の抵抗率計により、供給された検査水17の比抵抗値が検出され、この測定信号が電子制御装置に出力されるとともに、電流計23により、検出電流が測定され、この測定信号が電子制御装置に出力される。そして、電子制御装置においては、測定信号のノイズ成分を除去し、予め実験によって定められた検出電流の判定基準値を、供給された検査水の比抵抗値に応じて補正し、補正された判定基準値に基づき、測定された検出電流値が、この判定基準値未満であれば欠陥無しの良品、判定基準値以上であれば欠陥有りの不良品として、内面被膜4に生じている欠陥の有無を判定して、缶胴1の良または不良を判断し、以降の処理を決定する。したがって、検査水の供給過程などによって検査水の比抵抗値が変動しても、この比抵抗値の変化を検出して、判定基準値を補正するようにしたので、金属缶の内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性が維持され、検査の精度や確実性を向上することができる。
【0049】
上記のようにして、内面被膜4の欠陥の有無の判定が終了すると、検査ヘッド9が缶胴1の外部に退避し、次に、支持手段により缶胴1が上下方向に逆転つまり反転され、缶胴1の内部から検査水17が排出され、検査水17は下方の受水回収部25に吸入され、配管を介して回収タンク26に回収される。ついで、欠陥が無いまたは許容内と判定された良品の缶胴1は、支持手段から搬送装置に引き渡され、搬送装置により乾燥ステーションK2に移送され乾燥処理される一方、欠陥が有るまたは許容以上と判定された不良品の缶胴1は、支持手段からラインの外に排出される。
【0050】
なお、検査に用いられ検査装置2から回収された検査水17は、そのまま、検査水17として再び使用するには不適当である。すなわち、回収された検査水17は、その水質が変化し、後述するように炭酸ガスの抜けなどにより、検査水自体の比抵抗値は設定値よりも高くなり、その比抵抗値は0.8〜1.2MΩ・cm程度に大きくなる。
【0051】
したがって、このように使用して回収された検査水を所定の比抵抗値となるように調整する必要が有り、以下に、このような検査水を再び検査装置2に供給する検査水の比抵抗値を調整する検査水の調整装置を組み込んだ循環装置30について説明する。すなわち、検査水循環装置30の供給槽32は、回収タンク26よりも大きな容量が確保され、検査装置2の動作状態が変動することにより回収する検査水17の量が変動しても、安定して供給槽内に受け入れるとともに、その下流に安定して送水できるようにしている。また、供給槽32は、純水の補給タンク(図示せず)に補給弁(図示せず)を介して配管接続され、供給槽32内に任意の量の純水または水道水を補給することにより、供給槽32内の水温の上昇を防止して、検査水17の水温を適度な常温に維持している。なお、供給槽32に冷却機構を追加して設け、この冷却機構により供給槽32の水温の上昇を防止して、検査水17を適度な常温に維持しても良い。したがって、水温の上昇による炭酸ガスが溶解しにくくなることを未然に回避し、後述する炭酸ガスによる検査水17の比抵抗値の調整を適切に行えるようにしている。さらに、供給槽32には、ドレイン弁(図示せず)が設けられ、ある一定以上の大きさの有機物あるいは無機物を供給槽32外に排出するようにしている。さらにまた、供給槽32には、所定能力のポンプ33が設けられ、ポンプ33により供給槽32の検査水を、ゴミや粒子状の固形不純物を除去するフィルタ34を介して、活性炭吸着塔35に圧送している。
【0052】
活性炭吸着塔35は、活性炭が固定層に収納配置され、活性炭により検査水17中の有機成分(色、臭気、味など)や遊離塩素(Cl2)を吸着、除去している。また、活性炭吸着塔35は、微粒子状の不純物を除去する保安フィルタ36を介して、イオン交換部37に配管接続され、不純物が除去処理された検査水17をイオン交換部37に送水している。また、保安フィルタ36とイオン交換部37との配管途中と、イオン交換部37と調整槽31との配管途中とは、バイパス経路50により接続され、このバイパス経路50に設けた流量調節弁(図示せず)よって、イオン交換部37を迂回して、任意の量の検査水17を下流に送給できるようにしており、イオン交換部37を通過する水量を調節している。
【0053】
イオン交換部37は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を併用して、検査水中のイオン成分を所定に除去している。また、イオン交換部37は、所定のイオン交換樹脂を収納配置した複数のイオン交換ユニット(図示せず)から構成され、これらのイオン交換ユニットを直列の多段に配管接続し、最終段のイオン交換ユニットは、紫外線を用いた殺菌装置(図示せず)及びオゾン殺菌装置(図示せず)を介して調整槽31に配管接続され、イオン交換部37から調整槽31に送水している。なお、イオン交換部37から送水される処理された検査水17は、この段階では純水と呼ばれ、その比抵抗値は、これらの処理前に比べて不純物が除去されたことにより、大幅に高くなり、例えば15〜20MΩ・cmとなっている。
【0054】
イオン交換部37と調整槽31との配管経路途中の所定箇所には、混合調整装置41により生成された炭酸水の送出管と炭酸ガスの送出管が並列的に接続されている。そして、これらの炭酸水または炭酸ガスを、検査水17に任意の量で追加して添加し、検査水17中に溶解させることにより、上述したように処理された検査水17の比抵抗値を所定値まで小さくさせている。すなわち、混合調整装置41は、炭酸ガスが充填された炭酸ガスボンベ42と、炭酸ガスボンベ42に出力弁(図示せず)を介して配管接続された混合槽43と、混合槽43に接続され混合槽43内の混合水を配管経路途中に送出する圧送能力を備えた注入ポンプ44とから構成され、混合槽43には、所定に炭酸ガスを溶解させた混合水が収容されている。したがって、検査水17の比抵抗値を所定に維持するために、混合調整装置41から任意量の調整された炭酸ガス溶解度の混合水を循環経路に注入できるようにしている。さらに、炭酸ガスボンベ42は、電磁弁(図示せず)を介して、イオン交換部37と調整槽31との間の配管経路に配管接続されている。したがって、炭酸ガスボンベ42のガス圧力により、炭酸ガスを配管経路内に拡散放出してバブリングさせ、混合調整装置41から直接的に炭酸ガスを検査水17に溶解できるようにしている。なお、イオン交換部37と調整槽31との配管経路途中における混合調整装置41の接続箇所よりもイオン交換部37側の上流となる箇所には、検査水17の比抵抗値を測定する水質計(図示せず)が設置され、水質計は、前述した電子制御装置に電気的に接続されている。この電子制御装置の指示に基づいて、実行される検査水の調整方法については後述する。
【0055】
一方、混合槽43は、炭酸ガスボンベ42のガス圧力に対応した密閉容器であり、検査水の循環動作に伴ない、混合槽43から混合水が注入ポンプ44を介して循環経路に送出されて、混合槽43内の混合水が所定量以下に減少した場合には、循環経路から水路(図示せず)を介して検査水を混合槽43内に補充するとともに、ボンベ42から炭酸ガスを混合槽43内に導入し、これらを混合槽43の攪拌器により攪拌して、炭酸ガスの溶解を促進させ、所定の炭酸ガス溶解度に調整された混合水を新たに製造している。
【0056】
調整槽31は、イオン交換部37から送水する配管に接続されるとともに、調整槽31から送水する配管が検査装置2の調圧タンク19に接続され、調整槽31には、調圧タンク19よりも大きな容量が確保されている。したがって、調整槽31は、混合調整装置41により混合水が注入されて混合水と検査水17とが混合された検査水17が増量しても、安定して調整槽31内に受け入れるとともに、検査装置2の動作状況が変動することにより供給する検査水17の量が変動しても、検査装置に常時安定して検査水17を供給できるようにしている。また、調整槽31と供給槽32とは、任意に経路の開閉が可能なリターン経路51により、配管接続されている。したがって、調整槽31の検査水17が所定量以上になった場合には、リターン経路により、検査装置2を介さずに検査水を17を調整槽31から供給槽32に直接リターンさせ、調整槽31から検査水17が溢れ出すことを防止できるようにしている。
【0057】
上述したように検査水の循環経路である配管の所定箇所には、検査水の流量計や、圧力計、抵抗率計(図示せず)が適宜設けられ、これらは、前述した電子制御装置に電気信号的に接続され、電子制御装置は、これらの検出値に基づき、バイパス経路50の開度を制御したり、混合調整装置41の動作を制御したりして、検査装置2が適正に検査できるように、検査水17の水量や水質を調整し安定的に維持しつつ供給している。すなわち、検査装置2の抵抗率計が検出した検査水17の比抵抗値が、所定の比抵抗値の許容範囲内から外れる場合には、一定濃度の炭酸ガス混合水を循環経路に注入させたり、炭酸ガスを検査水にバブリングさせて、検査水17の比抵抗値を所定の許容範囲内に調整して維持するとともに、検査装置2からの信号に基づき、検査水17を検査装置2の調圧タンクに19に給水制御したり、リターン循環させたりしている。
【0058】
検査水循環装置30において、リターンされた検査水は、供給槽32に収容され、その水温が常温に維持され、次に、フィルタ34を通過して、ゴミや粒子状の固形不純物を除去しつつ、活性炭吸着塔35に送水される。活性炭吸着塔35に収容された検査水は、主に検査水の有機物が除去され、次のフィルタ36で微粒子が除去され、イオン交換部37に送水される。イオン交換部37に送水された検査水は、順次、複数のイオン交換ユニット(図示せず)を通過してイオン交換処理され、補給水もしくはリターンされた検査水のイオン成分が除去されたことに伴い、その比抵抗値は高めとなり、例えば15〜20MΩ・cmとなって、調整槽31に送水される。この送水経路途中の所定箇所に設置された水質計(図示せず)により、この経路を通過する検査水の比抵抗値が測定され、この測定結果に応じて、電子制御装置が所定の比抵抗値に、例えば0.18MΩ・cmにするべく、混合調整装置41の動作を制御する。すなわち、混合調整装置41の注入ポンプの注入動作または、バルブの開動作により、混合調整装置41から任意量の炭酸水または炭酸ガスが送水経路に注入される。これらの結果、調整槽31には、検査に最適な、例えば2MΩ・cm以下の値である0.18Ω・cmの比抵抗値に調整された検査水が貯蔵され、調整槽31から検査装置2の調圧タンク19に供給される。なお、回収された検査水17も、同様な処理が行なわれる。
【0059】
以上のように、この実施形態の内面被膜検査方法および検査装置によれば、缶胴1の内面被膜4の欠陥の有無、つまり内面被膜を検査する際に、純水に炭酸ガスを混合溶解させた検査水17のみが内面被膜4に接触する構成としているので、その検査後に専用の洗浄工程を設ける必要がなく、この工数が削減され、その全工程に必要な時間を短縮化することができる。すなわち、金属缶の内面被膜の欠陥を検査するために電解液を用いるエナメルレータ法などでは、電解液などの残留物が金属缶胴部に付着していたので、その残留物により金属缶胴部に付着跡が残る可能性と、同残留物により充填される充填物が汚染される可能性とがあった。しかし、本発明の実施形態の内面被膜検査方法および検査装置によれば、検査水17を用いることによって、缶胴1に残留物を生ぜずに済み、残留物による付着跡が残る可能性と、缶胴1内の充填物が残留物により汚染される可能性とを完全に解消することができる。このことは、全数検査の場合や、缶胴1の充填物が飲食物などの食品や薬品である場合、特に、これらの両者の条件が重複した場合には有効である。
【0060】
また、金属胴部3の内面被膜4と、検査ヘッド9の外表面との間に形成されている空間内に検査水17が充填される。具体的には、内面被膜4に臨む全領域および検出ヘッド9に臨む領域に検査水17が充填される。このため、金属缶の内面形状が単純な場合はもちろんなこと、その内面形状が複雑な場合、例えば、ネック部が段差状に形成されたり、底部に狭いリブ部が形成された場合や、螺旋形状の凹凸などがあった場合でも、その内面被膜4の表面の全域に亘り、満遍なく検査水17を行き渡らせて、内面被膜4と検査水17とを接触させることができる。すなわち、一方の電極である導電性部材を内面被膜に直接的に接触させる換わりに、検査水17を介して接触させて、つまり内面被膜4に検査水17が密接に接触するので、内面被膜4の品質検査を良好且つ十分に行うことができる。したがって、単純な内面形状を有する金属缶の内面被膜4だけではなく、複雑な内面形状を有する金属缶の内面被膜4の欠陥の有無を容易、かつ、微小な欠陥まで判定できるので、その判定精度を向上させることができる。
【0061】
また、一方の電極である検査ヘッド9を直接的に内面被膜に接触させずに、検査水を介して接触させているので、検査電圧を印加する時のスパーク接触が回避され、内面被膜4の絶縁破壊が防げるとともに、電極がダメージを被ることなく、電極の耐久性を向上することができる。特に、従来の検査方法では、一方の電極である導電性のブラシを内面被膜に直接的に接触させていたので、ブラシにより内面被膜が傷ついたり、ブラシの先端が折損し折損部分が内面被膜に付着したりする虞があり、これに対処した専用の洗浄除去工程が必要となって、検査工程が複雑化したが、本実施形態によれば、このような事態を未然に回避することができる。
【0062】
またさらに、検査水の比抵抗値を、内面被膜4の耐電圧に応じた検査電圧に実質的に比例した値に設定することが可能であり、耐電圧の低い内面被膜4の場合であっても検査電圧による内面被膜の絶縁破壊を生起させずに、内面被膜4の欠陥検出感度を維持しつつ、検査電圧による内面被膜4の損傷を防止しながら、内面被膜4の欠陥検出が可能となる。
【0063】
特に、検査水17の比抵抗値を2.0MΩ・cm以下に調整した場合には、検査する金属缶の内面被膜が例えば非晶質構造で、その耐電圧が低い場合であっても、放電による絶縁破壊が生じることを防止できる。
【0064】
これに加えて、検査水17が有する比抵抗値の下限を0.05MΩ・cmに設定することにより、絶縁破壊による内面被膜の損傷を防止できるとともに、炭酸ガスの大量消費が抑制され、比抵抗値を調整する運用コストの低減が図れ、経済性を向上させることができる。
【0065】
また、検査装置2で使用した検査水17を回収し検査水17の比抵抗値を所定値に調整した後に検査装置2に供給する検査水を循環使用する検査水循環装置30の構成を加えていることにより、検査水の原材料となる水資源の不要な浪費が防止できる。さらに、常に安定して一定の比抵抗値に調整された検査水17を検査に用いることができるので、内面被膜の検査信頼性を向上させることが可能となる。またさらに、検査装置2の稼動時に検査対象の変更による比抵抗値の再設定が必要になった場合にも、検査水循環装置30の調整機能により、迅速に対応することができる。
【0066】
さらに、検査水循環装置30によって、常に不純物が除去され、その比抵抗値が所定範囲に調整された清浄な検査水17が検査装置2に供給されているので、この検査水17が流れる検査装置2の経路や接触する部分が検査水17により洗浄されることになり、検査ヘッド9を含めたこれらの経路や部分を清潔な状態に保つことができ、誤検出を防ぎつつ検査精度を向上することが可能となる。
【0067】
ここで、実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、検査装置2がこの発明の検査装置に相当し、缶胴部3がこの発明の金属缶に相当し、内面被膜4がこの発明の内面被膜に相当し、検査ヘッド9がこの発明の導電性部材に相当し、検査水17がこの発明の検査水に相当し、炭酸ガスがこの発明のガスに相当し、流量調節弁、検査水注入口15、検査水供給管14、調圧タンク19がこの発明の検査水供給装置に相当し、検査ヘッド9、電源22およびエッジ電極20により形成される電気回路と、電流計23、電子制御装置がこの発明の判別装置に相当し、検査水循環装置30がこの発明の検査水循環装置に相当し、イオン交換部37がこの発明のイオン交換装置に相当し、混合調整装置41がこの発明の調整装置に相当する。
【0068】
なお、本発明の対象とする金属缶は、少なくとも一端開口の金属缶であれば、その内外形状によって限定されず、例えば、両端が開口されたボトル型の缶胴にも適用することができる。また、本実施形態では、検査水の比抵抗値を調整する方法として、検査水に炭酸ガスを溶解させる方法を採っているが、これに限らない。すなわち、比抵抗値が任意に調整でき、水分を除去するだけで、その後に金属缶内に充填される充填物のフレーバーを損なうことが無く、かつ、食品衛生上問題となる残留物や付着跡を残さない調整物質を、溶解物質として用いても良く、例えば、アルコールなどを用いても良い。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、非導電性の内面被膜が施された金属缶の金属部を一方の極性とし、金属缶内に配置した導電性部材を逆の極性とし、純水にガスを溶解させて所定の比抵抗値に調整した検査水を金属缶内に充填した後、両極の間に任意の電圧を印加し、印加時に生じる電流を検出し、検出電流値に基づいて内面被膜を検査しているので、金属缶の内面形状が単純な形状の場合はもちろんのこと、金属缶の内面形状が複雑な形状の場合であっても、これらの内面形状に沿った内面被膜全域の細部に亘って検査水を満遍なく接触させることができるので、金属缶の内側から内面被膜全域に電圧が印加でき、内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性を向上させることができ、内面被膜の品質検査を十分に行うことができる。
また、内面被膜の欠陥検査後には、内面被膜に金属などの残留物や付着痕を生起させずにすみ、金属缶から検査水を排出し水分を除去するだけで済むので内面を洗浄する専用の工程を設けることなく全数検査に適用することができる。
しかも、一方の電極である導電性部材を直接的に内面被膜に接触させずに、検査水を介して接触させているので、検査電圧を印加する時のスパーク接触が回避され、内面被膜の絶縁破壊が防げるとともに、電極がダメージを被ることなく、電極の耐久性を向上することができる。
【0070】
また、検査水が、検査に使用されて回収された後に、イオン成分を除去し、炭酸ガスを溶解して所定の比抵抗値に調整処理し、検査に再利用しているので、検査水の原材料となる水資源の不要な浪費を防止でき、経済性の向上を図れるとともに、その稼動時に検査環境の変動により、検査水の比抵抗値が変化しても、迅速に調整処理を行なうことができ、検査の信頼性を向上させることができる。
【0071】
さらに、検査水の比抵抗値を、0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲に調整することにより、従来の絶縁破壊法によって検査するしかなかった耐電圧の低い内面被膜の場合でも、内面被膜の欠陥検出感度を十分に維持しながら、これに応じた低い検査電圧を印加して検査できるので、内面被膜の放電による絶縁破壊が防止され、電圧印加による検査によって内面被膜にダメージを生じさせて金属缶を不良品にすることを未然に回避できるとともに、検査水の比抵抗値を調整する炭酸ガスを大量に使用しなくて済み、検査水の比抵抗値を調整する運用コストの低減が図れ、経済性を向上することができる。
【0072】
さらにまた、検査水の供給過程などによって検査水の比抵抗値が変化しても、この変化した比抵抗値に応じて判定基準値を設定するようにしたので、この判定基準値と検出された電流値とに基づいて内面被膜の欠陥を判別でき、内面被膜の欠陥を検出する精度や確実性が維持され、金属缶の内面被膜検査の精度や確実性を向上することができる。
【0073】
また、使用した検査水を回収し所定の処理を行なって検査水の比抵抗値を所定値に調整し、検査に循環使用する構成を加えているので、検査水の原材料となる水資源の不要な浪費が防止でき、また、常に安定して一定の比抵抗値に調整された検査水を検査に用いることができるので、内面被膜の検査信頼性を向上させることが可能となり、さらに、検査装置の稼動時に検査対象の変更による比抵抗値の再設定が必要になった場合にも、検査水循環装置の調整機能により、迅速に対応することができ、多種多様な金属缶の内面被膜検査に対しても容易な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施形態であり、主に検査ステーションで用いる検査装置と、検査対象となる金属缶の金属缶胴部とを示す概略図である。
【図2】 この発明の実施形態であり、主に検査水循環装置を示すブロック図である。
【図3】 この発明の内面膜検査による検出電流値(FDD値)とエナメルレータ法による漏洩電流値(QTV値)との相互の関連性を示す関係図である。
【符号の説明】
2…検査装置、 3…金属缶胴部、 5…開口部、 4…内面被膜、 9…検査ヘッド、 14…検査水供給管、 15…検査水注入口、 19…調圧タンク、 17…検査水、 20…エッジ電極、 22…電源、 23…電流計、 30…検査水循環装置、 32…供給槽、 37…イオン交換部、 41…混合調整装置。

Claims (5)

  1. 非導電性の内面被膜が施された食品用もしくは薬品用の金属缶の金属部を一方の極性とし、前記金属缶内に配置した導電性部材を逆の極性とし、導電性を有する液体を前記金属缶内に充填した後、両極の間に電圧を印加し、印加時に生じる電流を検出し、前記検出電流値に基づいて内面被膜を検査する金属缶の内面被膜検査方法において、
    前記液体として、純水に炭酸ガスを溶解させて予め0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲の比抵抗値に調整した検査水を用い、かつ
    前記金属缶内に供給される前記検査水の比抵抗値を抵抗率計により検出して金属缶の全数に充填し、前記導電性部材は前記金属缶の内面との間の距離を1mmないし4mmに設定して前記金属缶の内部に配置するとともに、前記両極の間に印加する電圧は、検査する内面被膜の耐電圧より低く、かつ欠陥を介した導通電流と金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と欠陥の無い内面被膜を介して放電電流とが重複して流れる電圧に設定し、該電圧を印加することにより欠陥を介した導通電流と金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と欠陥の無い内面被膜を介した放電電流とが重複して流れる検出電流を測定し、
    予め実験によって定められた判定基準値を前記抵抗率計によって検出された比抵抗値に応じて補正して、補正された判定基準値と測定された前記検出電流とに基づいて、前記内面被膜の欠陥の有無を全数検査し、不良品と判定した金属缶はライン外に排出させ、良品と判定した金属缶は検査水を除去し乾燥させ正常品に戻すようにしたことを特徴とする金属缶の内面被膜検査方法。
  2. 前記検査水が、検査に使用されて回収された後、イオン成分が除去され、炭酸ガスを溶解させて、所定の比抵抗値に調整処理し、検査に再利用されることを特徴とする請求項1に記載の金属缶の内面被膜検査方法。
  3. 前記検査水の比抵抗値が、0.35MΩ・cm以下の範囲に設定され、耐電圧が低い内面被膜の欠陥の有無を検査することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属缶の内面被膜検査方法。
  4. 非導電性の内面被膜が施された食品用もしくは薬品用の金属缶の内面被膜の欠陥の有無を検査する内面被膜の検査装置において、
    前記金属缶の金属部を一方の極性とし、前記金属缶内の内面被膜との間の間隙距離が1ないし4mmに設定配置した導電性部材を逆の極性として、導電性を有する検査水を前記金属缶内に充填した後、両極の間に検査する内面被膜の耐電圧より低くかつ欠陥を介した導通電流と金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と欠陥の無い内面被膜を介して放電電流とが重複して流れる電圧を印加する印加装置と、
    検査水として純水を用い、その純水に炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を0.05MΩ・cm乃至2.0MΩ・cmの範囲に設定する調整装置と、
    前記金属缶内に供給される検査水の比抵抗値を検出する抵抗率計と、
    検査水を前記金属缶内に充填した状態にする充填装置と、
    充填後に、前記印加装置により両極の間に電圧を印加した時に、欠陥を介した導通電流と、金属素地まで達していない部分的な欠陥を介した放電電流と、欠陥の無い内面被膜を介した放電電流とが重複して流れる電流値を検出する電流計と、
    前記検査水に対して前記抵抗率計で検出された比抵抗値に応じて予め実験によって定められた判定基準値の補正を行い、補正された判定基準値と検出された電流値とに基づいて前記内面被膜の欠陥の有無を全数の金属缶に対して検査する判別装置と
    を備えたことを特徴とする金属缶の内面被膜検査装置。
  5. 検査に使用された検査水を回収し、回収された検査水のイオン成分を除去処理し、炭酸ガスを溶解させて検査水の比抵抗値を所定値に調整処理して、検査水を循環使用する検査水循環装置を設けたことを特徴とする請求項4に記載の金属缶の内面被膜検査装置。
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