JP3588552B2 - 金属容器の内面被膜の欠陥検出方法および装置 - Google Patents

金属容器の内面被膜の欠陥検出方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、表面処理鋼板やアルミニウム合金板等から成る金属容器の内面側を被覆している合成樹脂製の内面被膜に生じている傷やピンホール等の欠陥を検出するための方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製の容器がその充填物によって腐食されることのないように、金属容器の内面を熱硬化性樹脂塗膜や熱可塑性樹脂フィルム膜等の合成樹脂製の絶縁体によって被覆することが従来広く行われている。そして、容器の充填物の性質によって、容器の内面に施される被膜の材質や厚さ、被膜の形成方法を決定する。なお、被膜の厚さは通常、熱硬化性塗膜の場合には4μm〜13μm、熱可塑性樹脂フィルム膜の場合には10μm〜30μmである。
【0003】
しかし、被膜の形成時やその後の容器の加工工程において、容器内面の被膜に傷やピンホール等の欠陥が発生する場合があった。そして、被膜の欠陥を放置したまま容器内部に充填物を封入すると、その充填物によって容器本体の金属が腐食され、容器に腐食孔が発生したり、容器に用いられている金属が充填物に溶出してフレーバーが損なわれる可能性があった。そのため、充填物を容器内部に充填する前には、容器内面の被膜欠陥を検出することが行われている。
【0004】
その容器内面の被膜(塗膜)欠陥の検出方法として、エナメルレータ法が知られている。このエナメルレータ法について説明する。まず、金属容器の内部に電解液(例えば塩化ナトリウム水溶液)を注入し、その中に検出装置の負極を浸漬する。次に、金属容器の金属露出部に検出装置の正極を接触させて、これらの電極の間に所定時間数V程度の電圧を印加する。そして、数V程度の電圧を印加することによって流れる漏洩電流を測定することにより、被膜欠陥を検出するものである。
【0005】
また、容器内面の被膜(塗膜)欠陥の他の検出方法として、特開昭63−44158号公報に開示されているものが知られている。ここに開示されている方法では、測定用電極を金属缶体の内面に、界面活性剤を含有する電解質溶液を介して接触させ、その測定用電極を移動させるとともに、測定用電極と金属缶体との間に測定用電圧を印加する。その結果、金属缶体に金属露出部が存在すれば、その金属露出部において漏洩電流が発生する。その漏洩電流を測定することにより、金属缶体の金属露出部、つまり被膜の欠陥を検出することができる。
【0006】
さらに、熱硬化性樹脂塗膜または熱可塑性樹脂フィルム膜で被覆した金属板から成形したシームレス容器内面の被膜欠陥の他の検出方法として、特開平6−74941号公報に開示されているものが知られている。ここに開示されている方法では、金属缶体内部に導電性ブラシを挿入し、その先端部近傍を缶体内面に接触させながら相対回転させるとともに、導電性ブラシと金属缶体の開口部に接触させた電極片との間に800V〜1000V程度の高圧直流電圧を印加させ、それらの間に流れる電流値から缶体内面の被膜欠陥を検出するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エナメルレータ法では、塩化ナトリウム水溶液などの電解液が用いられるために、容器の全数検査にこの方法を採用するとすれば、全容器に対して電解液を逐一充填し、かつ排出する工程や容器から電解液を完全に除去するための洗浄工程が必要となって工程が複雑化したり、容器の製造コストが高騰する可能性があり、容器の全数検査には採用されていない。一方、容器の抜き取り検査にはこの方法が広く採用されているが、容器内面の被膜欠陥を有する容器が検査されることなく製品中に混入する可能性があった。
【0008】
また、特開昭63−44158号公報に開示されている方法では、エナメルレータ法と同様に電解液を使用するので、上述した技術的な不都合があり、これに加えて、短時間で金属缶体内面全体の金属露出部を検出することができない欠点や、湾曲した缶体底部の金属露出部の検出ができない欠点があった。
【0009】
さらに、特開平6−74941号公報に開示されている方法では、電解液を介さず、導電性ブラシと電極片との間に800V〜1000V程度の高圧直流電圧を印加するので、耐電圧がその高圧直流電圧よりも低い材質および厚さのものによって缶体内面の被膜が形成されている場合には、その高圧直流電圧により被膜が絶縁破壊され、被膜が変質し、充填物から缶体本体を保護することができなくなる可能性があった。また、印加電圧を被膜の耐電圧よりも低い値に設定すると、被膜の欠陥を確実に検出できない可能性があった。
【0010】
つまりこの方法は、缶体内面有機被膜の厚さが15μm〜30μmと厚い場合には検査可能であるが、有機被膜の材質や厚さ等により印加した直流電圧がその有機被膜の耐電圧を超えていればたとえ正常な有機被膜であっても印加した高電圧により破壊されてしまうので検査できない。具体的に有機被膜の耐電圧の例を示すと、熱硬化性樹脂の水性塗料をスプレー塗装して焼き付けたもので、厚みが5μm〜6μmのものは300V〜400V、厚みが10μm〜13μmのものは800V〜900V、ポリエステル樹脂フィルムを表面処理鋼板に貼着した板材から薄肉化絞り成形した缶体のフィルム厚さが10μm〜13μmのものは1500V〜2000V、同じフィルムで厚さが17μm〜20μmのものは2500V〜3000Vである。5μm〜6μmの厚さの内面塗膜をもつ缶体でも、印加する電圧を低くすれば塗膜の破壊は防止できるが、塗膜の欠陥の検出ができなくなる。微小な被膜の欠陥の検出には最低800V〜1000V程度の印加電圧が必要となるのであって、この程度の電圧を有機被膜に印加すると、有機被膜が破壊されてしまい、欠陥の検出ができなくなるのである。従って、安全係数を考慮すると、この方法では耐電圧が約1200V以上の缶体内面有機被膜を有する缶体のみ検査対象となり、それ以外の缶体についての検査には適用できない不都合がある。
【0011】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、電解液を必要とせずに比較的低電圧で金属容器の内面被膜の欠陥を確実かつ容易に検出することのできる欠陥検出方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、金属容器の内周面に施された絶縁性の被膜の欠陥を検出する金属容器の内面被膜の欠陥検出方法において、導電性のブラシを前記金属容器の内部に挿入して該ブラシを構成している複数本の導電性繊維を前記被膜に接触させるとともに、前記導電性繊維の長手方向とその導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を、(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定して、前記導電性繊維の先端に、前記ブラシのスピンドルの中空部に連通しかつ前記ブラシの存在する位置に開口する通路を介して導電性の液体を供給し、前記ブラシを前記金属容器に対して回転させることにより前記ブラシによって前記液体を微粒子化し、その状態で前記ブラシと前記金属容器との間に5V以上30V以下の低電圧を印加して漏洩電流を検出することを特徴とする方法である。
【0013】
したがって請求項1の発明によれば、導電性のブラシを構成している複数本の導電性繊維の先端にブラシのスピンドルの中空部に連通しかつブラシの存在する位置に開口した通路を介して供給された導電性を有する液体を、ブラシを金属容器に対して回転させることにより微粒子化することによって、金属容器の内面被膜に生じた微小な傷やピンホール等の欠陥にも液体の微粒子を侵入させることができる。その結果、ブラシと金属容器の金属本体との間に電圧を印加すると、それら微小な傷やピンホール等の欠陥に侵入した液体の微粒子を介して漏洩電流が流れ、被膜の欠陥を容易に検出することができる。
【0014】
また、導電性を有する液体を用いることによって、ブラシと金属容器の金属本体との間に印加する電圧が比較的低電圧でも、感度良く内面被膜の欠陥を検出することができる。さらに、比較的低電圧の電圧を印加することによって、金属容器の内面被膜が変質したり破壊されたりすることを防ぐことができる。
【0015】
さらに、低電圧を印加するだけなので、作業者に対して安全性が高い。
【0016】
た、前記導電性繊維の長手方向と、その導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定することを特徴とする方法である。
【0017】
したがって請求項1の発明では、追従角が(π/4)rad以上であることにより、微小な欠陥部にブラシ先端が入り込み、それに対して(4π/9)rad以下であることにより、被膜上をはねる傾向が生じ難くなる。
【0018】
また請求項2の発明は、開口部を有する金属容器の内周面に施された絶縁性の被膜の欠陥を検出する金属容器の内面被膜の欠陥検出装置において、前記金属容器の開口部からその内部に挿入されるスピンドルと、そのスピンドルの外周に拡張・収縮可能に取り付けられ、導電性繊維から構成されるとともに前記金属容器の内面に接触させられる1または2個以上の導電性のブラシと、前記スピンドルと前記ブラシとを前記金属容器の開口部からその内部に相対的に挿入する挿入手段と、前記ブラシを構成する前記導電性繊維の長手方向とその導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を、(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定する手段と、前記導電性繊維の先端にブラシのスピンドルの中空部に連通しかつブラシの存在する位置に開口した通路を介して導電性を有する液体を供給する液体供給手段と、前記ブラシを前記金属容器に対して回転させて前記液体を微粒子化する回転手段と、前記ブラシを構成する前記導電性繊維と前記金属容器の金属本体との間に5V以上30V以下の低電圧を印加する前記ブラシと同数個の電圧印加手段と、電圧を印加することによって前記金属容器の前記被膜の欠陥を介して流れる漏洩電流から前記金属容器の前記被膜の欠陥を検出する前記ブラシと同数個の欠陥検出手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
したがって、請求項2の発明では、スピンドルの外周に拡張・収縮可能に取り付けられた1または2個以上の導電性のブラシを金属容器に対して回転させる回転手段と、ブラシを構成する複数本の導電性繊維の先端にブラシのスピンドルの中空部に連通しかつブラシの存在する位置に開口した通路を介して導電性を有する液体を供給する液体供給手段と、ブラシと同数個の欠陥検出手段とをこの金属容器の内面被膜の欠陥検出装置が備えていることによって、導電性を有する液体を導電性繊維に供給し、ブラシの相対的回転によりその液体を容易に微粒子化させることができる。その結果、内面被膜の欠陥を容易に検出することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体例を、図面を参照して説明する。まず、この発明の装置について説明する。図1はこの発明による金属容器の内面被膜の欠陥検出装置(以下、欠陥検出装置と記す)の一例を示す概略図である。また、図2はその欠陥検出装置の平面図である。
【0021】
図1に示す欠陥検出装置1は、絶縁材製の基台2上に設置されている。そして、その基台2の上に第1支持部材3が接合して設けられている。その第1支持部材3によってスピンドル4が基台2とほぼ平行でかつ回転自在に支持されている。
【0022】
このスピンドル4は厚肉の金属円管から形成されており、そのスピンドル4の図1における左端部に、ロータリージョイント5が取り付けられている。このロータリージョイント5とスピンドル4とに連通孔6が穿設されている。この連通孔6はスピンドル4の中空部と外部空間とを連通するものであり、この連通孔6を通して純水7をスピンドル4の中空部に注入することができる。また、スピンドル4が回転していても、常時純水7をスピンドル4の中空部に注入することができるように連通孔6が構成されている。そして、この連通孔6には外部空間からチューブ8が接続されている。このチューブ8から注入ポンプ(図示せず)によって純水7が連通孔6に導かれる。
【0023】
さらに、ロータリージョイント5の図1における左側には、四つの電極9(図1では一つのみ図示する)が設けられている。これらの電極9はスピンドル4に接合されているとともに、電極9のそれぞれの電気的配線が独立してスピンドル4の内部を貫通し、後述する四つの導電性ブラシ10にそれぞれ独立して電気的に接続されている。さらに、この四つの電極9は、電圧が可変である四つの直流電源11(図1では一つのみ図示する)の正極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
また、スピンドル4のうち第1支持部材3の図1における右側の部分にギヤ12が固定されている。このギヤ12は図2に示すようにこれと平行に配設されたギヤ13と噛合している。また、このギヤ13は減速機付きサーボモータ14の出力軸15に取り付けられている。この減速機付きサーボモータ14は、所望の回転数でギヤ13を回転制御することができる。したがって、ギヤ12とギヤ13とのギヤ比を予め設定しておき、減速機付きサーボモータ14の回転数を制御することによって、スピンドル4の回転数を制御することができる。
【0025】
さらに、ギヤ12の図1における右側には、第2支持部材16が基台2に接合して設けられている。この第2支持部材16の図1における右側には、円盤状で外周にフランジ部を有する缶体受け17がスピンドル4と一体化して設けられており、この缶体受け17は第2支持部材16に対して回転可能である。そして、この缶体受け17のフランジ部とその近傍には四つの電極18(図1では一つのみ図示する)が形成されており、その四つの電極18のそれぞれが四つの直流電源11の負極にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、四つの閉回路19が構成されている。なお、図1には、その内の一つの閉回路19のみが図示されている。
【0026】
さらに缶体受け17は、検査対象の金属容器である缶体20が図1における右側から移動してきた際に、その缶体20を受け止め、かつ缶体20の開口部を固定することができるように構成されている。また、缶体受け17の電極18以外の部分は絶縁体から形成されており、その内部には、スピンドル4の中空部を流通する純水7が通る通路21が形成されている。この通路21は、一方の端部がスピンドル4の中空部に連通しており、他方の端部が後述する導電性ブラシ10が存在する位置に開口している。そして、導電性ブラシ10に純水7を供給する役目を果たしている。
【0027】
なお、缶体20は有底円筒状に成形されたものである。また、この缶体20の金属本体22の内面に、エポキシ−フェノール系塗料やアクリル変性エポキシ−フェノール系塗料、またはエポキシ−尿素系塗料等の塗料が液体の状態でスプレーされ、乾燥焼付けされて、内面被膜23が形成されている。なお、塗料の代わりに、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムを金属板表面に貼着または押し出し被覆した樹脂被覆金属板を絞り再絞り加工または絞りしごき加工により成形した缶体20でもよい。そのような缶体20では、熱可塑性樹脂フィルムによる内面被膜23が形成されている。さらに電極18は、缶体20が缶体受け17に受け止められ、固定された際に、その缶体20の開口端で金属面が露出している金属本体(金属製本体)22と四つの電極18とが電気的に接続されるように構成されている。なお、この四つの電極18のそれぞれには、後述する四つの導電性ブラシ10のそれぞれから流れる電流が流入することができるように構成されている。
【0028】
また、缶体受け17の図1における右側の部分には、図3に示すように、スピンドル4の外周に互いに等間隔をあけるとともに、その長手方向に亘って嵌入孔(嵌入用溝)24が四つ穿設されている。そして、この嵌入孔24のそれぞれには、ブラシ芯25が嵌入されている。なお、このブラシ芯25は肉厚円筒状のものであり、その側面外周側と側面内周側とを連通するブラシ孔26が穿設されている。また、このブラシ芯25は、図示しない導電性ブラシ収縮拡張カムによって、スピンドル4の径方向に前後動可能に構成されている。さらに、このブラシ孔26には、ステンレス製のブラシカバー27によって挟持された導電性繊維28が多数本嵌入して固定されている。この導電性繊維28は、アクリル繊維等の合成繊維に硫化銅を結合させたものであり、長期使用しても導電性が劣化しないものである。また、導電性繊維28の太さは、50μm以上80μm以下のものが用いられている。これらブラシ芯25とブラシカバー27と導電性繊維28とから導電性ブラシ10が形成されている。なお、図示していないが、缶体受け17に設けられた純水7の通路21が、導電性ブラシ10に純水7を常時供給できる構造を有している。
【0029】
図4は図3の缶体20の内面における拡大図である。ここに示すように、導電性繊維28はブラシカバー27から3mm〜10mm程度缶体20の内面側に露出している。また、ブラシカバー27によって挟持された複数本の導電性繊維28の厚さ(幅)は5mm程度であり、奥行き(スピンドル4の中心軸線方向における長さ)は缶体20の中心軸線方向における缶体20の長さとほぼ等しい長さとなっている。さらに、導電性繊維28の先端部が缶体20の内面被膜23に接触し、かつ導電性ブラシ10が相対回転している際における導電性繊維28の先端部と缶体20の内面被膜23との追従角θ(導電性繊維28の長手方向と、その導電性繊維28が接触する缶体20の箇所における接線方向とのなす角)が(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)となるように導電性繊維28の長さが設定されている。なお、追従角が(π/4)radよりも小さい場合には、微小な欠陥部にブラシ先端が入り込むことができず、それに対して(4π/9)radよりも大きい場合には、被膜上をはねる傾向が生じ易いことから追従角が決められる。
【0030】
なお、導電性ブラシ10の導電性繊維28は、スピンドル4が缶体20内に嵌入する際には、図示しない導電性ブラシ収縮拡張カムによりブラシ芯25が径方向における内方に移動することによってスピンドル4側に収縮し、スピンドル4が缶体20内に嵌入した後に、図示しない導電性ブラシ収縮拡張カムによりブラシ芯25が径方向における外方に移動し拡張して、その先端部が缶体20の内面被膜23に接触するように制御される。また、導電性ブラシ10の導電性繊維28は、スピンドル4が缶体20から引き出される際には再び図示しない導電性ブラシ収縮拡張カムによってスピンドル4側に収縮し、スピンドル4が缶体20から引き出される。
【0031】
ここで、電流を検出するための構成について説明する。前記各電極9,18の間には直流電源11を含む閉回路19が構成されており、さらに直流電源11の負極と電極18との中間には電流計29が設けられている。そしてこの電流計29によって、缶体20の内面被膜23を介して各電極9,18間に流れる電流を計測することができる。さらに、この電流計29には、それにより測定された電流値を解析し、缶体20の内面被膜23に欠陥が生じているか否かを判定するデータ処理判別器30が設けられている。また、直流電源11の正極と電極9とを接続する導線の中間にはスイッチ31が設けられている。このスイッチ31によって、缶体20の内面被膜23への電圧の印加を、内面被膜の耐電圧よりも低い電圧に維持できるようにON・OFFすることができる。
【0032】
なお、このデータ処理判別器30は、各導電性ブラシ10毎に設置されている電流計29によって検出された漏洩電流を抵抗やブリッジ回路により直流電圧に変換する。漏洩電流は0〜2000μAの範囲内を測定する。直流電圧は、ノイズ分を多少なりとも含んでいるので、このノイズを取るためにノイズカット手法がその直流電圧に施される。このノイズカットの方法には、従来知られているローパスやハイパス、バンドパスフィルターがあるが、直流電圧の正規の波形と比較して、ノイズカット後の直流電圧の波形になまりや遅れが発生してしまう。その発生を防止するために、図5に示すフローチャートの処理を行うノイズ除去装置がデータ処理判別器30に付加されている。ここに示すように、まずステップ61では、電流計29によって検出された漏洩電流を抵抗やブリッジ回路等によって直流電圧に変換する。次に、ステップ62において、変換された直流電圧をその波形から生波形とその交流成分(交流ノイズ成分を含む)とに分離する。さらにステップ63において、交流成分の位相遅れ分を補正する。そしてステップ64において、位相遅れを補正された交流成分を生波形から減算し、直流電圧を得る。このように、交流ノイズを含む直流電圧の波形を生波形とその交流成分とに分離し、交流成分の位相遅れ分を補正した後、生波形から交流成分を減算することによって、波形ゲイン分を極力抑えることが可能となるとともに、ノイズ分を極力排除することができる。
【0033】
その後、ステップ65において、アンプにより直流電圧の値を増幅させる。そして、ステップ66において、最終的に得られた直流電圧のデータをAD変換する。次いで、ステップ67において、検査測定時間とデータサンプリング周期時間を設定し、データのピーク値、微分値(立ち上がり、立ち下がり)、積分値を計測する。なお、データのピーク値は最大値を示し、微分値は大きなデータのゆらぎの中から極端なデータの上下度を判定する。また積分値は検査時間内のデータのトータル値を示すものである。また、ステップ68において、それまでに検査され良品とされた缶体のピーク値、微分値、積分値から算出されたそれらの平均値(AVG)と標準偏差(σ)を求め、(AVG+4σ)を算出し、その算出された良品の(AVG+4σ)を良否の判定値として決定する。なお、良品とされた缶体のピーク値、微分値、積分値は、その有機被膜の材質や厚みにより異なるものである。そして、ステップ69において、検査された缶体のピーク値、微分値、積分値を良否の判定値とそれぞれ比較する。次いで、ステップ70において、検査された缶体のそれぞれの値が一つでも判定値よりも大きい場合には不良缶体と判別する。
【0034】
なお、この実施例では、導電性ブラシ10ごとに閉回路19が構成され、データ処理判別器30が一つ設けられている。その理由について説明する。
【0035】
仮に、スピンドル4の周囲にその周方向に等間隔に設けられている四つの導電性ブラシ10が閉回路19を共有し、かつデータ処理判別器30を共用している場合において、内面被膜23の欠陥箇所が、ある箇所とその箇所からスピンドル4の中心軸線において径方向に89度の角度をなす箇所とに存在した場合を例に挙げて説明する。
【0036】
一つのデータ処理判別器30は、スピンドル4の中心軸線において径方向に90度毎に配置された導電性ブラシ10のデータを同時にまとめて演算処理してしまう。それによって、データ処理判別器30において、前述のある箇所における欠陥データの立ち上がりに対し、その箇所からスピンドル4の中心軸線において径方向に89度の角度をなす箇所における欠陥データの立ち下がりを得てしまうので、これらを加算演算すると、立ち上がりデータを立ち下がりのテータで打ち消し合う可能性がある。つまりタイミングが合うと、ある欠陥箇所における立ち上がりデータを別の欠陥箇所における立ち下がりデータが打ち消してしまい、あたかも良品と変わらぬ検出値を得ることになってしまう可能性がある。そのため、導電性ブラシ一つに対し、一つの閉回路19を構成するとともにデータ処理判別器を一つ設けている。
【0037】
ところで図1において、導電性ブラシ10が取り付けられているスピンドル4の図1における右側には、缶体20の底部を吸着保持するための吸着板32が配置されている。この吸着板32は円盤状に形成されており、その外縁部でかつ図1における左側の部分には、ウレタン樹脂等からなる弾性部33が形成されている。この弾性部33には、缶体20の底部に存し缶体外方に突出している凸部が接触する。また、吸着板32の中心には、吸引孔34が穿設されている。さらに、吸着板32の図1における右側には、肉厚円管状のアーム35が吸着板32に接合されている。このアーム35は、その軸線とスピンドル4の軸線とが一致するように設けられている。また、吸着板32の吸引孔34とアーム35の中空部とが連通している。さらに、吸着板32が接合しているアーム35の端部とは逆の端部には吸引チューブ36が接続されており、その吸引チューブ36とアーム35の中空部とが連通されている。また、この吸引チューブ36は、吸引ポンプ(図示せず)に接続されており、その吸引ポンプを作動させることによって、吸引チューブ36とアーム35の中空部とを介して吸着板32の吸引孔34に空気を吸引することができるようになっている。そのため、缶体20の底部を吸着板32に吸着させることができる。
【0038】
アーム35は第3支持部材37によって支持されている。この第3支持部材37は、その下部がサドル38に接合されており、そのサドル38がスライドベース39上を摺動することができるように設けられている。そして、このスライドベース39は基台2上に設けられており、スピンドル4の軸線方向にサドル38が摺動できるようになっている。さらに、図1におけるスライドベース39の右端部にサドル38が位置している際には、缶体20が供給され、吸着板32に吸着されるようになっており、かつ、スライドベース39の左端部にサドル38が位置している際には、缶体20が缶体受け17に受け止められ、缶体20の開口端で露出している金属本体22が電極18に電気的に接続されることができるようになっている。
【0039】
つぎに、缶体20を欠陥検出装置1に供給し、排出する機構について説明する。図6は図1におけるVI−VI線断面図である。ここに示す缶体供給ステーション41には、それに缶体20が滞留することなく転動するように、水平面に対してきつい傾斜を有する缶体供給路42が基台2に設けられている。また、缶体供給ステーション41の下端部には、下ストッパ43が設けられており、この下ストッパ43によって制止させられている缶体20の有無を検知する下缶体センサ44が下ストッパ43の図6における上方に設けられている。さらに、下ストッパ43の下端から缶体20の直径分だけ缶体供給路42に沿って上方側に離れた位置に、上ストッパ45が設けられており、この上ストッパ45によって制止させられている缶体20の有無を検知する上缶体センサ46が上ストッパ45の図6における上方に設けられている。そしてこれら下ストッパ43と上ストッパ45には、エアシリンダの如きシリンダ(図示せず)がそれぞれ接続されている。そして、下缶体センサ44と上缶体センサ46とがそれぞれ缶体20の有無を検知することによって、それらのシリンダ(図示せず)が作動し、下ストッパ43と上ストッパ45をそれぞれ独立して前後動することができるようになっている。つまり、下ストッパ43と上ストッパ45のそれぞれが缶体20を制止させたり、転動させたりすることができる。
【0040】
また、缶体供給ステーション41の下端部近傍には、欠陥検出装置1において缶体20を支持するための缶体支持部材47が二本設けられている。この缶体支持部材47は、図1に示される第3支持部材37から図1における左側へ水平方向に突出して設けられている。そして、この二本の缶体支持部材47はそれらの間隔が缶体20の半径程度の長さとなるように設けられており、それらの缶体支持部材47の間に缶体20を載置することができるようになっている。さらに、缶体支持部材47の図6における上方には、二本の缶体支持部材47の間に載置されている缶体20の有無を検出する缶体検出センサ48が設けられている。
【0041】
また、欠陥検出装置1の図6における左側には、缶体排出ステーション49が設けられている。そして、缶体供給ステーション41の下端部の下側には、プッシャ50が設けられている。このプッシャ50は、検査の終了した缶体20を缶体排出ステーション49上に押し出すものであり、エアシリンダの如きシリンダ(図示せず)によって前後動することができるようになっている。また、缶体排出ステーション49は、プッシャ50によって押し出された検査後の缶体20を、後工程である不良缶体分別工程に移送するためのものであり、缶体20が転動するように水平面に対して緩い傾斜を有する缶体排出路51が基台2上に設けられている。
【0042】
つぎに、上記構成の欠陥検出装置1の作用、すなわちこの発明による方法の一例について説明する。
【0043】
まず、検査対象である缶体20が前工程から缶体供給ステーション41の缶体供給路42に供給される。次に、上ストッパ45を制御する上缶体センサ46により缶体20が検出されると、上ストッパ45が降下し、缶体20が制止させられる。そして、検査運転状態になったときに、上缶体センサ46からの缶体20の検出信号により、次行程に移行するために上ストッパ45が上昇する。それにより、缶体20が転動し、缶体供給路42の下端に移動する。移動した缶体20が下缶体センサ44により検出されると、下ストッパ43を下降させ、下降した下ストッパ43によって缶体20が制止される。なお、缶体20が下ストッパ43によって制止させられたと同時に上ストッパ45が下降し、一つ後の缶体20は上ストッパ45によって制止させられる。次に、サドル38がスライドベース39の図1における右端に静止している状態において欠陥検出装置1に缶体20が存在するか否かを判別する缶体検出センサ48によって、欠陥検出装置1に存する缶体20の有無を検出する。そして、缶体20が無い状態であれば下ストッパ43が上昇し、缶体20が転動して缶体支持部材47,47の間に嵌入する。缶体20が缶体支持部材47,47の間に嵌入した直後に下ストッパ43が下降し、さらに上ストッパ45が上昇して転動した一つ後の缶体20が下ストッパ43によって制止させられる。次いで上ストッパ45が下降することによって転動した二つ後の缶体20が制止させられる。
【0044】
缶体支持部材47,47の間に嵌入した缶体20は、その底部が吸引ポンプ(図示せず)によって吸引孔34から空気が吸引されることにより、吸着板32の弾性部33に吸着する。そして、缶体20が吸着板32に吸着された状態で、サドル38がスライドベース39上を図1における左側に摺動することによって、缶体20が図1における左側に移動し、缶体20の開口端が缶体受け17の電極18に嵌入する。そして、缶体20と電極18が電気的に接続される。缶体20の開口端が缶体受け17に嵌入した後、スピンドル4の嵌入孔24に嵌入している導電性ブラシ10が、導電性ブラシ収縮拡張カム(図示せず)の作動により、スピンドル4の中心からその径方向における外側に拡張する。拡張した導電性ブラシ10は缶体20の内面被膜23に接触する。
【0045】
また、純水注入ポンプ(図示せず)により、イオン交換方式により製造された比抵抗が12MΩ・cm〜16MΩ・cmである純水7がスピンドル4の中央の中空部に注入される。そして純水7がスピンドル4の中空部を流通し、通路21を通って導電性ブラシ10に供給される。さらに減速機付きサーボモータ14が作動することにより、スピンドル4が予備回転状態となり高速で3回転程度回転し、それに伴い導電性ブラシ10が高速で回転する。導電性ブラシ10が回転することによって発生する遠心力と導電性ブラシ10を形成している導電性繊維28による毛細管力によって、純水7が内面被膜23に接触している導電性繊維28の先端に供給される。また、導電性繊維28の先端に供給された純水7は、導電性ブラシ10が高速で回転することにより微粒子化される。そしてこの微粒子化された純水7は缶体20の内面被膜23に発生している微小な欠陥に侵入することができる。
【0046】
図7は、内面被膜23に微小な欠陥が発生している缶体の拡大断面図である。缶体20の金属本体22の内面に形成されている内面被膜23に、微小な欠陥である亀裂(ピンホール等を含む)52が発生している。なお、この亀裂52では、金属本体22が缶体20の内側に露出している。この亀裂52に微粒子化した純水7が侵入し、金属本体22に接触する。
【0047】
スピンドル4が予備回転状態を終了した後、スイッチ31がオンとなり、導電性繊維28と缶体20の金属本体22との間に直流電圧が印加される。その後減速機付きサーボモータが検査回転状態に切り替わり、スピンドル4が低速で(π/2)rad(90度)以上回転し、導電性ブラシ10が動回転状態となる。その際、導電性繊維28が亀裂52上を通過すると、金属本体22に接触した純水7を介して導電性繊維28と缶体20の金属本体22との間に漏洩電流が流れる。その漏洩電流は、電流計29において検出される。そしてその漏洩電流値がデータ処理判別器30に送られる。このデータ処理判別器30によって缶体20の内面被膜23に生じている欠陥の有無を判定する。判定方法は図5のフローチャートに示す通りである。
【0048】
検査回転が終了すると、スピンドル4が停止し、スイッチ31がオフになる。そして、スピンドル4の各嵌入孔24に嵌入した各導電性ブラシ10が、導電性ブラシ収縮拡張カム(図示せず)の作動によりスピンドル4の径方向における内側に収縮する。収縮された導電性ブラシ10は缶体20の内面被膜23から離れる。その後、サドル38がスライドベース39上を図1における右方向に摺動することにより、缶体20内からスピンドル4が引き出される。そして、缶体20底部を吸引するための吸引ポンプ(図示せず)が停止し、缶体20の底部の吸引が停止することによって、解放状態となる。すると、缶体20底部が吸着板32の弾性部33から離れ、缶体20は缶体支持部材47,47によって支持される。その後、缶体検出センサ48で缶体20が検知されると、プッシャ50が缶体20を押し出し、缶体20が欠陥検出装置1から缶体排出ステーション49の缶体排出路51上を転動する。その後、缶体20は後工程である不良缶体分別工程(図示せず)に移送される。そして、その不良缶体分別工程において、欠陥検出装置1によって内面被膜23に欠陥があると判定された缶体20がパスラインから排除装置(図示せず)により排出され、内面に欠陥がないと判断された缶体20は最終製品とされる。他方、欠陥検出装置1に缶体20が存在しないことを缶体検出センサ48が検出すると、下ストッパ43が上昇し、一つ後の缶体20が缶体支持部材47,47の間に嵌入する。そして上述の作用を缶体供給ステーション41に缶体20が無くなるまで繰り返す。
【0049】
つぎに、データ処理判別器30によって判定された結果について、図8ないし図10を用いて説明する。なお、これらの図のグラフにおいて示される検査の方法における共通条件は次の通りである。用いられる缶体20は、絞りしごき加工によって成形された後、内面被膜23の材料となる液状の熱硬化性塗料を金属本体22の内面にスプレーして焼き付けられたものである。なお、その内面被膜23の厚さが5〜6μmになるように形成されている。また、直流電源11の印加レベルを、その電圧を5V〜30Vとし、その最大の電流を2000μAとする。そして、比抵抗が16.0MΩ・cmである純水7を検査に用い、その使用量は一缶体当たり20mg〜30mgである。また、電流計29が指す値が2000μAを超えた場合には、内面被膜23が破壊されないように、スイッチ31が自動的に切られ、缶体20の内面被膜23に電圧が印加されなくなるように設定される。なお、印加電圧を上記範囲に設定したのは、5V未満では内面被膜23の欠陥の検出感度が悪くなり、一方、30Vを超える場合では、検出感度は充分であるが、内面被膜23のダメージが大きくなりやすいためである。
【0050】
図8は、スピンドル4の回転数を34.5rpmとして回転させた場合における、3種類の缶体を複数個検査した結果である。ここに示す◇は内面被膜23に欠陥が存在しない缶体20、□は内面被膜23に人為的に引っ掻き傷を入れた缶体20、△は内面被膜23となる熱硬化性塗料を金属本体22の内面にスプレーする以前に、金属本体22の内面の一部に「テラス46」(シェル石油株式会社の商標名)なる潤滑油を付着させた缶体20である。
【0051】
なお、図8に示すグラフの横軸はエナメルレータ電流(単位はmA)を表し、縦軸はピーク電圧(単位はデジット値)を表すものである。このエナメルレータ電流とは、引っ掻き傷を前述のエナメルレータ法を用いて検査した際に、電極と缶体との間に流れる電流値を表すものである。そして、このエナメルレータ電流をもって、引っ掻き傷の程度を特定している。また、ピーク電圧とは、電流計29から変換された直流電圧の変化において、ピークを示す電圧の値を指すものである。なお、この具体例では、まず缶体20に対して本発明の方法によりピーク電圧を測定し、その後、同一の缶体20に対してエナメルレータ法によりエナメルレータ電流を測定した。これは、先にエナメルレータ法を用いて検査を行うと、エナメルレータ法は塗膜欠陥を増大させる傾向があるので、塗膜欠陥がある場合にはその欠陥を増大させ、後で本発明の方法による検査では正確な測定結果が得られないためである。
【0052】
図8に示す検査結果から、◇で示す内面被膜23に欠陥のない缶体20では、ほぼ全ての缶体20にエナメルレータ電流が流れない、つまり欠陥がないと判定される。また、□で示す内面被膜23に引っ掻き傷の欠陥が生じている缶体20と△で示す塗料を塗布する前に内面に油分を付着させた缶体20とでは、そのピーク電圧は、内面被膜23に欠陥のない缶体20のピーク電圧よりも大きい値を示している。
【0053】
また、図9は、図8での検査条件において、スピンドル4の回転数を82rpmに変更して検査を行った結果である。
【0054】
さらに、図10は、図8での検査条件において、スピンドル4の回転数を145rpmに変更して検査を行った結果である。
【0055】
この図9の検査結果と図10の検査結果とを図8の検査結果と比較する。缶体20の内面被膜23の欠陥の種類それぞれについて比較すると、スピンドル4の回転数が上昇するにしたがい、固有のエナメルレータ電流を示すそれぞれの欠陥が測定される際のピーク電圧が下降することを示している。これは、導電性ブラシ10の回転数が上昇するにしたがって、導電性ブラシ10が内面被膜23の欠陥を通過する時間が短くなり、ピーク電圧の応答が鈍くなるためである。
【0056】
これらのことから、缶体20の内面被膜23の欠陥を検出するために、検査する缶体20の種類、および内面被膜23の種類と厚さ、導電性ブラシ10の回転数、純水7の比抵抗、純水7の使用量、欠陥の形態によりピーク電圧の閾値を設ける。そして、その閾値を超えるピーク電圧を検出した缶体20を不良缶体として決定し、パスラインから排除する。
【0057】
実際に缶体20の内面被膜23の欠陥を判定するには、まずピーク電圧の閾値や他の検査条件(スピンドル4の回転数、缶体20の一缶体当たりの純水7の供給量等)を決定するために、複数缶体の缶体20から検査条件の決定用として数缶体抜き取る。そして、それらの缶体20を検査条件を変えて検査することにより、缶体20を検査するために最適なピーク電圧の閾値や他の検査条件を決定する。なお、缶体20の検査には微量の純水7が用いられているので、エナメルレータ法や他の従来の方法と比較して、缶体20を洗浄しなくとも自然乾燥、または空気を吹き付けるだけで、短時間に同じ缶体20を検査条件を変えて繰り返し検査することができるとともに、検査に必要な電源電圧を極力抑え、内面被膜23が破壊されることを防ぐことができる。一方、エナメルレータ法では、内面被膜23の薄い缶体を繰り返し使用すると、供給電流が大きいため、徐々に内面被膜23が破壊されてしまう。
【0058】
缶体20の検査条件が決定した後、缶体20の全数について検査を行う。これにより、検査対象の缶体20の種類に最適な検査条件で検査を行うことができるとともに、検査の高速化、正確化を図ることができる。
【0059】
なお、この発明の実施例では、吸着板32を図1における左側に移動させることによって、缶体20の内部にスピンドル4を挿入したが、この発明はこれに限定されることはなく、スピンドル4を移動させて缶体20の内部に挿入してもよい。
【0061】
さらに、この発明の実施例では、純水7が注入ポンプ(図示せず)によって、導電性ブラシ10を構成する導電性繊維28に供給されたが、この発明はこれに限定されることはなく、導電性ブラシ10を缶体20に挿入する前に予め純水7を導電性繊維28に吹き付けてもよいし、予め缶体20の内面被膜23上に吹き付けてから導電性ブラシ10を缶体20内に挿入してもよい。
【0062】
そして、この発明の実施例では、導電性を有する液体として純水7が用いられたが、この発明はこれに限定されることはなく、導電性を有する液体であればよい(例えば、エチルアルコールや他のアルコール、純水に揮発性の液体を混合した混合液等)。なお、揮発性の液体を用いることによって、検査後の缶体20の乾燥が容易になる。
【0063】
また、液体を流通させるスピンドル4の中空部と缶体受け17の通路21とを可撓性パイプで連結してもよい。これによって、導電性ブラシ10の拡張・収縮の動作に可撓性パイプが追従し易く、安定的に液体を導電性ブラシ10に供給させることができる。
【0064】
さらに、この発明の実施例では、缶体20の側部の内面被膜23を検査したが、この発明はこれに限定されることはなく、缶体20の底部の内面被膜23に、導電性繊維28を缶体20の側部の内面被膜23の接触条件と同様に接触させることによって、その缶体20の底部の内面被膜23を検査することができる。
【0065】
そして、この発明の実施例では、導電性ブラシ10がスピンドル4の円周部に4個存在するように設けたものを用いたが、この発明はこれに限定されることはなく、導電性ブラシ10の個数および検出回路である閉回路19を増減させることができる。
【0066】
また、この発明の実施例では、熱硬化性塗膜を内面被膜23とする缶体20を検査したが、この発明はこれに限定されることはなく、10μm〜20μmの厚さの熱可塑性樹脂フィルムを内面被膜23とする缶体20も検査することができ、溶接缶等のスリーピース缶胴も検査することができる。
【0067】
さらに、この発明の実施例では、電極9を直流電源11の正極に接続するとともに、電極18を直流電源11の負極に接続したが、これとは逆に電極9を直流電源11の負極に接続するとともに、電極18を直流電源11の正極に接続してもよい。なお、安全性とノイズ発生の軽減とから、実施例のように電極9を直流電源11の正極に接続するとともに、電極18を直流電源11の負極に接続することが望ましい。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、導電性のブラシに供給された導電性を有する液体を、ブラシを金属容器に対して回転することにより表面活性剤を使用することなく拡散・付着させて、金属容器の内面被膜に生じた微小な傷やピンホール等の欠陥にも液体の微粒子を侵入させることができる。そして、ブラシと金属容器の金属本体との間に電圧を印加すると、それら微小な傷やピンホール等の欠陥に侵入した液体の微粒子を介して漏洩電流が流れ、その結果、被膜の欠陥を容易に検出することができる。
【0069】
また、導電性を有する液体を用いることによって、ブラシと金属容器の金属本体との間に印加する電圧が比較的低電圧でも、感度良く内面被膜の欠陥を検出することができる。さらに、比較的低電圧の電圧を印加することによって、金属容器の内面被膜が変質したり破壊されることを防ぐことができるとともに、厚さが薄く耐電圧が低い内面被膜の検査にも有効である。
【0070】
さらに、低電圧を印加するだけなので、作業者に対して安全性が高い。
【0071】
また請求項1の発明によれば、追従角が(π/4)rad以上であることにより、微小な欠陥部にブラシ先端が入り込み、それに対して(4π/9)rad以下であることにより、被膜上をはねる傾向が生じ難くなる。
【0072】
さらに請求項2の発明によれば、スピンドルの外周に拡張・収縮可能に取り付けられ、複数本の導電性のブラシを金属容器に対して回転させる回転手段と、導電性繊維の長手方向とその導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を、(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定する手段と、導電性繊維の先端にブラシのスピンドルの中空部に連通しかつブラシの存在する位置に開口した通路を介して導電性を有する液体を供給する液体供給手段と、ブラシと同数個の欠陥検出手段とをこの金属容器の内面被膜の欠陥検出装置が備えていることによって、導電性を有する液体を導電性繊維に供給し、ブラシを金属容器に対して回転させることによって、その液体を容易に拡散・付着させることができる。その結果、内面被膜の欠陥を容易に検出することができる。その結果、内面被膜の欠陥を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の金属容器の内面被膜欠陥の検出方法が用いられる金属容器の内面被膜の欠陥検出装置の一例を示す断面概略図である。
【図2】金属容器の内面被膜の欠陥検出装置を示す平面図である。
【図3】スピンドルが缶体に挿入された状態での、図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】図3の拡大断面図である。
【図5】ノイズ除去装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】図1におけるVI−VI線断面図である。
【図7】内面被膜に微小な欠陥が発生している缶体の拡大断面図である。
【図8】スピンドルの回転数が34.5rpmである場合の缶体の検査結果のグラフを示す図である。
【図9】スピンドルの回転数が82rpmである場合の缶体の検査結果のグラフを示す図である。
【図10】スピンドルの回転数が145rpmである場合の缶体の検査結果のグラフを示す図である。
【符号の説明】
1…欠陥検出装置、 4…スピンドル、 7…純水、 9,18…電極、 10…導電性ブラシ、 11…直流電源、 17…缶体受け、 19…閉回路、 20…缶体、 22…金属本体、 23…内面被膜、 28…導電性繊維、 29…電流計、 30…データ処理判別器、 41…缶体供給ステーション、 49…缶体排出ステーション、 52…亀裂。

Claims (2)

  1. 金属容器の内周面に施された絶縁性の被膜の欠陥を検出する金属容器の内面被膜の欠陥検出方法において、
    導電性のブラシを前記金属容器の内部に挿入して該ブラシを構成している複数本の導電性繊維を前記被膜に接触させるとともに、前記導電性繊維の長手方向とその導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を、(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定し、前記導電性繊維の先端に、前記ブラシのスピンドルの中空部に連通しかつ前記ブラシの存在する位置に開口する通路を介して導電性の液体を供給し、前記ブラシを前記金属容器に対して回転させることにより前記ブラシによって前記液体を微粒子化し、その状態で前記ブラシと前記金属容器との間に5V以上30V以下の低電圧を印加して漏洩電流を検出することを特徴とする金属容器の内面被膜の欠陥検出方法。
  2. 開口部を有する金属容器の内周面に施された絶縁性の被膜の欠陥を検出する金属容器の内面被膜の欠陥検出装置において、
    前記金属容器の開口部からその内部に挿入されるスピンドルと、
    そのスピンドルの外周に拡張・収縮可能に取り付けられ、複数本の導電性繊維から構成されるとともに前記金属容器の内面に接触させられる1または2個以上の導電性のブラシと、
    前記スピンドルと前記ブラシとを前記金属容器の開口部からその内部に相対的に挿入する挿入手段と、
    前記ブラシを構成する前記導電性繊維の長手方向とその導電性繊維が前記金属容器の内面被膜に接触する箇所における接線方向とがなす追従角を、(π/4)rad〜(4π/9)rad(45度〜80度)に設定する手段と、
    前記導電性繊維の先端にブラシのスピンドルの中空部に連通しかつブラシの存在する位置に開口した通路を介して導電性を有する液体を供給する液体供給手段と、
    前記ブラシと前記金属容器とを相対的に回転させて前記液体を微粒子化する回転手段と、
    前記ブラシを構成する前記導電性繊維と前記金属容器の金属本体との間に5V以上30V以下の低電圧を印加する前記ブラシと同数個の電圧印加手段と、
    電圧を印加することによって前記金属容器の前記被膜の欠陥を介して流れる漏洩電流から前記金属容器の前記被膜の欠陥を検出する前記ブラシと同数個の欠陥検出手段と
    を備えていることを特徴とする金属容器の内面被膜の欠陥検出装置。
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