JP4791661B2 - 固体高分子型燃料電池システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体燃料電池本体及び燃料ガスを改質する燃料処理器から排出される熱を屋内の冷暖房を行う空調機に利用するようにした固体高分子型燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子型燃料電池を使った家庭住宅用電源システムが将来的に有望視され、その技術開発競争が各企業間で激しさを増してきている。これらのシステムは、電池電力の利用のみならず、電池排熱を利用するコージェネレーションシステムが一般的である。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、電気エネルギの発生とともに、約100℃以下の排熱を生じる。これは、電池効率が100%にならない限り、つまり電池本体温度が周囲温度のままで発電が可能にならない限り、温度の高い電池温度から周囲温度への放熱分が熱として発生することにある。
【0004】
一方、燃料を水素に改質するための燃料処理システムにおいても、通常、改質器等の改質反応の加熱に燃焼器を使うため、燃焼排ガスや燃料処理器の外部から排熱が生じる。これらの排熱は、給湯やお風呂等の温水利用に適しており、電気と熱を合わせた総合効率を80%近くまで向上させることも不可能ではない。
【0005】
従って、このようなコージェネレーション運転を行なうことによって、従来の系統電力利用に比べてエネルギ効率が高く、しかも省エネルギで地球環境に優しく、より経済的な運転を行うことが実現できるため、ユーザにとっては大きな効果が得られる。
【0006】
ところで、この電気と熱の両方のエネルギを利用したコージェネレーション運転システムとしては、例えば特開平10−311564号公報に示される燃料電池駆動空調システムや、特開平11−132105号公報に示される排熱分配装置及び排熱利用システムが知られている。
【0007】
前者の燃料電池駆動空調システムは、カソード生成水蒸気を全熱交換型室内機を通して室内に供給し、暖房及び加湿に利用している。さらには、暖房時に電池排熱を冷媒配管を媒体に室外熱交換器の冷媒の蒸発に利用し、省エネルギ化を図っている。
【0008】
一方、後者の排熱分配装置及び排熱利用システムは、排熱分配装置の流量調整弁や水ポンプを使って、燃料電池排熱を温水パネルや貯湯槽などに分配するものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前者の燃料電池駆動空調システムにおいては、カソード生成水蒸気を室内に導入するため、全熱交換器と温湿度交換させている。また、固体高分子型燃料電池の排熱を冷媒配管を介して空調機の室外熱交換器に導入し、直接冷媒と熱交換させる構成となっている。
【0010】
この構成の問題点は、カソード生成水蒸気を室内の全熱交換器に導入するようにしているため、その間を長い配管により接続する必要があり、その工事に多くの手間と時間がかかるばかりでなく、その配管の構成自体も複雑化する。さらにはカソード生成水蒸気を室内空調の加湿に用いると、燃料電池システムの水回収、すなわち水自立が困難になるため、別途供給水が必要になり、それもイオン交換樹脂材を通して水イオン伝導度を低めたり、或いはコンタミ濃度を低くする等の水管理が必要になる。
【0011】
また、暖房時に電池排熱を空調機の室外熱交換器の冷媒蒸発に利用するためには、電池本体の冷却材に冷媒配管を通さなければならないため、電池システムと空調機とが一体となった運転及び冷媒配管が必要となり、しかも暖房運転時のみしか電池の排熱を利用できない。
【0012】
一方、後者の排熱分配装置及び排熱利用システムは、燃料電池排熱を、排熱分配装置の流量調整弁や水ポンプを使って、温水パネルや貯湯槽などに分配する構成になっている。
【0013】
この構成の問題点は、その排熱分配装置が燃料電池システムとは別に設けられるため、分配装置そのものを置くスペースが必要であり、その温水分流制御は分配数が多ければ多いほど複雑になる。
【0014】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、例えば暖房熱利用など様々な熱利用ができ、且つ電気出力と併せたコージェネレーション運転により、全体のシステム効率が高く、省エネで経済的な運転が実現可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により固体高分子型燃料電池システムを構成する。
【0016】
請求項1に対応する発明は、燃料極及び酸化剤極からなる一対のガス拡散電極間に触媒層を介して固体高分子電解質膜を挟持してなり、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学的反応により発電を行い電気的出力を発生する燃料電池本体及び前記燃料ガスを改質するための燃料処理器を備えた固体高分子型燃料電池システムにおいて、
屋内の冷暖房を行う室内機および室外機を有する空調機と、
前記室内機に設けられた室内熱交換器と、
前記室内熱交換器との間で熱交換可能に前記室外機に設けられた室外熱交換器と、
前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方から排出される熱が伝達される排熱熱交換器と、
前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方と前記排熱熱交換器とにそれぞれ連通し、前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方から排出される熱を前記排熱熱交換器に伝達する冷媒が循環して流れる冷媒通路と、
前記室外熱交換器と並列に配置された排熱利用熱交換器と、
前記排熱利用熱交換器と前記排熱熱交換器とにそれぞれ連通し、前記排熱熱交換器の冷媒通路を流れる冷媒との間で熱交換される不凍液又は温水が循環して流れる排熱供給水通路と、を有することを特徴とする
【0017】
以上の構成によって、電池システムの排熱を空調機の室外機に供給して利用できるため、室外機への熱供給が冷媒を介して行われる。従って、室内への直接的な温水配管は不要となり、燃料電池システムと空調機を結ぶ工事を簡略化することができる。また、電池システムの排熱利用熱交換器を空調機の室外機の室外熱交換器と並列に配置するため、空調機の熱源として空気及び燃料電池の排熱の両方を利用でき、快適な空調が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、空調運転が快適でかつ経済的で、エネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0020】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記冷媒通路を前記室外熱交換器又は前記排熱利用熱交換器のいずれか一方に切替えて運転するための二方遮断弁および絞り機構を有する。
【0021】
以上の構成によって、空調機は冷媒通路として屋外熱交換器又は排熱利用熱交換器の一方に切替えられて運転されるため、空調機の熱源利用が空気及び燃料電池の排熱の両方を効率よく選択でき、快適な空調が実現できる。さらに、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0022】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記室外熱交換器および前記排熱利用熱交換器を同時に運転するために、前記室外熱交換器と前記排熱利用熱交換器を並列に接続する前記冷媒通路を有する。
【0023】
以上の構成によって、電池システムの排熱利用熱交換器が空調機の室外機の室外熱交換器と並列に配置され、空調機は冷媒通路として室外熱交換器と前記排熱利用熱交換器を同時に利用して運転されるため、空調機の熱源として空気及び燃料電池の排熱の両方を利用でき、快適な空調が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0024】
請求項4に対応する発明は、請求項1に対応する発明の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記燃料電池本体又は前記燃料処理器から排出される熱を室内の床暖房に利用するために、前記室内熱交換器と前記排熱利用熱交換器を並列に接続する前記冷媒通路を有する。
【0025】
以上の構成によって、電池システムの排熱利用熱交換器が、空調機の室外機の室外熱交換器と並列に配置され、空調機の運転と協調して室内の床暖房に利用されるため、快適な床暖房が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0026】
なお、燃料極及び酸化剤極からなる一対のガス拡散電極間に触媒層を介して固体高分子電解質膜を挟持してなり、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学的反応により発電を行い電気的出力を発生する燃料電池本体、及び前記燃料ガスを改質するための燃料処理器を備えた固体高分子型燃料電池システムにおいて、燃料電池本体又は燃料処理器から排出される熱を衣類の洗濯や乾燥を行う洗濯乾燥機に供給するようにしてもよい。
【0027】
このような構成とすれば、無駄のない、洗浄性能が高い衣類洗濯や乾燥が実現でき。さらにはコージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる
また、燃料極及び酸化剤極からなる一対のガス拡散電極間に触媒層を介して固体高分子電解質膜を挟持してなり、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学的反応により発電を行い電気的出力を発生する燃料電池本体及び前記燃料ガスを改質するための燃料処理器を備えた固体高分子型燃料電池システムにおいて、燃料電池本体又は燃料処理器から排出される熱を融雪や融氷に利用するようにしてもよい。
【0028】
このような構成とすれば、電池システムの排熱が融雪や融氷に利用でき、労力の大きい除雪作業が不要となり、寒冷地の快適な冬の暮らしが実現でき、さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の燃料電池システムに係る第1の実施の形態を示す構成図である。
【0031】
本実施の形態における燃料電池システムは、主に燃料処理系(FPS;Fuel Processing System)1と、電池本体(CSA;Cell Stack Assembly)2から構成される。
【0032】
燃料処理系1は、燃料3、脱硫器4、水蒸気発生器5、改質器6、COシフト反応器7、CO選択酸化器8、水蒸気分離器9、改質用水タンク10、改質用水ポンプ11、排熱熱交換器12、排熱供給水ポンプ13等から構成される。
【0033】
なお、燃料3としては炭化水素系燃料、例えばプロパンや都市ガスが用いられる。
【0034】
一方、電池本体2は、アノード14、カソード15、水冷却部16、電池冷却水ポンプ17等から構成される。さらに、燃料処理系1並びに電池本体2に共通な部品として、他に空気ブロア18、凝縮熱交換器19等から構成される。
【0035】
ここで、本固体高分子型燃料電池システムの発電原理を簡単に説明する。
【0036】
燃料に例えばプロパンを使用する場合、プロパンから水素ガスへの改質は、燃料処理系1で行われる。最初にプロパン燃料3は、脱硫器4を通過すると例えば活性炭やゼオライト吸着によって硫黄分が取り除かれ、水蒸気供給系より供給されるガス化した水蒸気と合流して改質器6に流入する。
【0037】
前記水蒸気供給系は、改質用水タンク10より改質用水ポンプ11により供給される水が燃焼器5a及び熱交換器5bを備えた水蒸気発生器5で加熱され、ガス化した水蒸気が水蒸気分離器9より脱硫器4で脱硫されたプロパンガスに合流する構成となっている。また、水蒸気発生器9で凝縮した水は熱交換器を介して改質用水タンク10に戻るようになっている。
【0038】
改質器6に水蒸気とプロパンが流入すると、この改質器6では触媒によりプロパンと水蒸気の反応から水素を生成するが、同時にCOも生成される。この水蒸気改質は吸熱反応のため、改質器6には水蒸気発生器5の燃焼器5aが加熱器として兼用されている。
【0039】
固体高分子型燃料電池は、電池本体2の電解質膜及び触媒層から構成されるMEA(Membrane Electrode Assembly)でのCO被毒が問題となるため、COはCO2へ酸化させる必要がある。このため、改質器6で生成された改質ガスをCOシフト反応器7及びCO選択酸化器8を通し、且つCO選択酸化器8に空気ブロア18より空気を供給することで、触媒によりCO被毒が発生しない程度に酸化反応を進めるようにしている。
【0040】
また、図示していないが、改質器を含めたこれらの触媒反応温度はそれぞれ異なり、改質器6の数百度からCO選択酸化器8の百数十度と、改質ガスの上流と下流の温度差が大きいため、実際には下流側温度を下げるための水熱交換器が必要となり、例えば水蒸気発生器5を兼用する構成も考えられる。例えばプロパン改質の場合、COからCO2への酸化反応を省略し、全体をスルーした水蒸気改質反応は以下の(1)式のようになる。
【0041】
38+6H2O→3CO2+10H2…(1)
CO選択酸化器8を通過した改質ガスは、主に水素、炭酸ガス、水蒸気等の成分からなる。これらのガスがアノード14に送り込まれると、水素ガスはMEAの触媒層を経てプロトンHが電解質膜を通過し、空気ブロア18によりカソード15を通過する空気中の酸素及び電子と結びついて水が生成される。
【0042】
したがって、アノードは−極、カソード極は+極となり、電位を持って電力を発生する。この電位間に電気負荷を存在させることにより、電源としての機能を持たせることができる。そして、残ったアノード出口ガスは、水蒸気加熱器5及び改質器6の加熱用燃焼ガスとして使われる。
【0043】
また、カソード出口から流出する水蒸気及び燃焼排気ガス中の水蒸気は、水蒸気加熱器5の燃焼器5aで燃焼した燃焼ガスと合流して凝縮熱交換器19により凝縮した水分を改質用水タンク10に回収され、システムでの水自立を図っている。
【0044】
電池本体2のMEA触媒での反応温度は、通常百度以下が適当であることから、電池本体2の温度がそれ以下になるように、電池冷却水ポンプ17により冷却水を循環させ、排熱熱交換器12での放熱で冷却されるが、この場合電池冷却水ポンプ17は電気制御部(図示なし)により、電池本体2の入り口冷却水温度が一定になるように制御される。
【0045】
このような構成の固体高分子型燃料電池システムにおいて、排熱熱交換器12で電池本体2の冷却水と熱交換して暖められた不凍液もしくは温水は、排熱供給水通路に設けられた排熱供給水ポンプ13の運転により図2に示すような構成の空調機20の室外機21に供給される。
【0046】
図2において、空調機20は、主に圧縮機23、四方弁24、室外熱交換器25、室外ファン26、排熱利用熱交換器27、二方遮断弁28、絞り機構29及び逆止弁30から構成される室外機21と破線内に示す室内熱交換器31と室内ファン32とより構成される室内機22及びそれら室外機21、室内機22の各機器間を結ぶ冷媒通路を成す配管から構成される。
【0047】
すなわち、圧縮機23の冷媒出口は、四方弁24を介して室内ファン32を備えた室内熱交換器31の一方の冷媒出入口に接続され、この室内熱交換器31の他方の冷媒出入口に室外ファン26を備えた室外熱交換器25の一方の冷媒出入口が絞り機構29を介して接続され、この室外熱交換器25の他方の冷媒出入口を四方弁24及び逆止弁30を介して圧縮機23の入口に接続される。
【0048】
一方、室外熱交換器25と並列に排熱利用熱交換器27が設置され、この排熱利用熱交換器27の一方の冷媒流出入口が室内熱交換器31及び室外熱交換器25間の冷媒通路に二方遮断弁28を介して接続され、他方の冷媒流出入口が圧縮機23及び逆止弁30間の冷媒通路に接続されている。また、この排熱利用熱交換器27には排熱熱交換器12で熱交換されて暖められた温水又は不凍液が排熱供給水通路の排熱供給水ポンプ13により供給され、冷媒である冷却水と温水又は不凍液とが熱交換することが可能になっている。
【0049】
この排熱利用熱交換器27は、図3(a)の平面図及び同図(b)の正面図に示すようにフィンドチューブタイプの熱交換器の一方に排熱供給水通路としての配管27aに温水が流れ、他方に冷媒通路としての配管27bに冷媒が流れて、互いにフィン27cを介して熱交換できる構造となっている。
【0050】
なお、排熱利用熱交換器27としては、図4(a)平面図及び同図(b)の正面図に示すように配管が蓄熱水タンク33内に上方と下方位置に挿入され、上方に冷媒通路としての冷媒配管27b、下方に排熱供給水通路としての温水配管27aを配置した構成のものでもよい。
【0051】
このような構成の排熱利用熱交換器27によれば、排熱供給水通路としての下方側の温水配管27aの周囲フィン27cによって暖められた蓄熱水の温水が自然対流により上方に移動し、冷媒通路としての上方側の冷媒配管27bの周囲フィン27cを伝って冷媒に熱が伝わる。
【0052】
次に上記のような構成の空調機において、通常に空気熱源を使った暖房運転原理を簡単に説明する。
【0053】
暖房時、四方弁24は実線経路が開かれ、また二方遮断弁28は閉じられている。この状態で圧縮機23から吐出した高温高圧の冷媒ガスは四方弁24を通り、室内ファン32から供給される凝縮温度より低い室内空気により、室内熱交換器31で冷却され凝縮する。従って、暖房時の暖気は、この冷媒より高温の熱をもらうことにより得ることができる。
【0054】
凝縮した冷媒は室外機21に送られ、絞り機構29で絞られた後、低温、低圧の二相流となり、室外ファン26から供給される蒸発温度より高い室外空気により、室外熱交換器25で加熱されて蒸発する。
【0055】
低温、低圧になった冷媒ガスは四方弁24及び逆止弁30を通して圧縮機に23に吸引され、高温、高圧ガスとなり、再び室内機22へと送られる。
【0056】
一方、本実施の形態のように燃料電池の排熱を利用する場合は、絞り機構29を閉止すると共に、室外ファン26を停止し、二方遮断弁28を開けた状態とする。このような状態とすれば、室内熱交換器31で凝縮した冷媒は二方遮断弁28を介して排熱利用熱交換器27に流れる。
【0057】
この排熱利用熱交換器27では、排熱供給水ポンプ13から供給された温水が、排熱熱交換器12で熱を放出して冷却される。排熱利用熱交換器27で燃料電池の排熱により加熱された高圧、二相流冷媒は、蒸発して圧縮機23に送られる。
【0058】
この場合、冷媒蒸発温度は室内機での凝縮温度約40℃に近いが、温水温度が約60〜70℃とこれより高いため問題なく加熱できる。また、圧縮機23は、作用として圧縮機能と言うよりガスポンプの役割を果たす。さらに、逆止弁30の役割は、排熱利用熱交換器12に冷媒を流しているときに、低温、低圧側の室外熱交換器25に冷媒が逆流して冷媒不足サイクルになるのことを防止するためである。
【0059】
なお、上記では暖房運転の場合について述べたが、通常の冷房運転サイクルとする場合には、四方弁24を反転することにより、図示破線経路の冷媒経路になり、室外熱交換器25が凝縮器、室内熱交換器31が蒸発器になるだけであり、後述する除湿運転時を除いて、特に燃料電池の排熱利用はない。
【0060】
とろこで、空調機の暖房時における通常空気熱源運転と燃料電池排熱利用運転との使い分けは、一般的に低外気温時や起動時、除霜運転時のように空調機が高暖房能力を発揮したい時、また燃料電池の排熱が優先順位の高い給湯などに使われない場合に燃料電池排熱利用運転となり、それ以外は通常の空気熱源運転となる。
【0061】
また、図4のような排熱利用熱交換器27が蓄熱型タイプの場合は、利用するのに十分な温度に蓄熱されていれば、給湯が優先されて燃料電池排熱が利用できない時でも、空調機の熱源として利用できる。
【0062】
さらに、図には示していないが、空調機の利用を考えた場合、暖房時のみの利用とは限らない。例えば、室内熱交換器31の冷媒通路途中に絞り機構を入れて、四方弁24を実線の暖房サイクルで運転した場合、絞りの上流側が凝縮器、下流側が蒸発器になり、さらに下流側の蒸発を排熱利用熱交換器27で行うことができる。
【0063】
具体的な応用例としては、暖気味ドライ(室内温度を下げない、むしろ暖める除湿)であり、夏場にも燃料電池の排熱を空調機に応用することができる。
【0064】
また、燃料電池の排熱を冷媒の蒸発に利用できる分だけ、除湿能力を保ったまま蒸発量を室内熱交換器での凝縮熱量を増やし、暖気を室内に出して部屋を暖めることができる。これにより、通常ドライ運転時に湿度は下がるが、室温が下がり、むしろ不快になっていた室内空間を快適な除湿環境にすることができる。
【0065】
このように本実施の形態では、燃料電池システムの排熱利用熱交換器27を空調機20の室外機21の室外熱交換器25と並列に配置し、空調機は冷媒通路として室外熱交換器25又は排熱利用熱交換器27に切替えて運転されるため、空調機の熱源利用が空気及び燃料電池の排熱の両方を効率よく選択でき、快適な空調が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0066】
なお、システムの簡素化のために燃料電池システム側で排熱熱交換器12及び排熱供給水ポンプ13を用いずに、電池冷却水ポンプ17により空調機20の室外機21に直接温水を供給するようにしてもよい。
【0067】
また、燃料電池の排熱温水は、空調機20への供給に限らず、給湯用の温水タンク水の加熱や放熱器等に切替えて供給可能な構成としてもよい。
【0068】
図5は、本発明の固体高分子型燃料電池システムに係る第2の実施の形態を示す構成図であり、図2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について説明する。
【0069】
第2の実施の形態では、空調機20の室外機21のサイクル構成が第1の実施の形態と異なる。すなわち、第2の実施の形態では、圧縮機23としてその冷媒吸入ポートが2個所、いわゆるツイン圧縮機と言われるタイプのものを使用しており、一方の吸込み口に室外熱交換器25、もう一方の吸込み口に排熱利用熱交換器27と各冷媒配管がつながっている。そして、圧縮機23の両吸込み口相互間を逆止弁30を介して接続している。
【0070】
この逆止弁30の役割は、高圧側である排熱利用熱交換器27を通流する冷媒が、低圧側の室外熱交換器25につながっている圧縮機23の低圧側吸入ポートへの流入を防止すること、また、冷房運転時には冷房能力を高めるために圧縮機23の2つの吸入ポートから流入できるようにするためである。
【0071】
このような構成においては、例えば空調機の暖房運転時、暖房熱源として室外空気と燃料電池排熱の両方を同時に使えるため、暖房能力は大きくなり、特に起動時間の短縮、低外気温時の高暖房能力化に非常に大きな効果を発揮する。
【0072】
すなわち、冷媒の蒸発に必要な熱源は、同時に排熱利用熱交換器27及び室外熱交換器25を通じて確保することができる。また、暖気味ドライ運転時も第1の実施の形態と同様に、排熱利用熱交換器27を利用して冷媒の蒸発ができるため、快適な除湿環境を提供することができる。
【0073】
このように本実施の形態は、燃料電池システムの排熱利用熱交換器27を空調機20の室外機21の室外熱交換器25と並列に配置し、空調機は20の冷媒通路として室外熱交換器25と排熱利用熱交換器27を同時に利用して運転されるため、空調機20の熱源として空気及び燃料電池の排熱の両方を利用でき、快適な空調が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0074】
図6及び図7は、本発明の固体高分子型燃料電池システムに係る第3の実施の形態を示す構成図で、図2及び図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について説明する。
【0075】
本実施の形態の固体高分子型燃料電池システムは、図6及び図7に示すように破線の燃料電池システム50、空調機20、床暖房部40(床を真上から見た図)から構成される。
【0076】
燃料電池システム50からの排熱は、空調機20の室外機21の室外熱交換器25と並列に配置された排熱利用熱交換器27に温水として供給され、空調機20の運転と協調して、室内の床暖房部40に熱を供給可能な構成としたものである。
【0077】
空調機20を使った気流或いは輻射空調と床暖房部40を使った床暖房の協調運転例について説明する。
【0078】
まず、図6の空調機20の室外機21のように、空調機としては室外熱交換器25と排熱利用熱交換器27の利用を基本的に同時に行わない場合を考える。この場合、低外気温時や起動時、除霜運転時に空調機が高暖房能力を発揮したい時に、絞り機構29を閉じると共に、二方遮断弁28を開け、排熱利用熱交換器27に冷媒を流して空調機暖房運転を行い、床暖房運転は行わない。
【0079】
それ以外の場合は、二方遮断弁28を閉じて、空調機が通常空気熱源運転を行い、排熱利用熱交換器27を経由した温水が床暖房部40に供給されて床暖房を行う。不要であれば、空調機側の気流暖房を停止させても良い。
【0080】
気流暖房も床暖房も不要な場合は、図示はしていないが温水が給湯用の温水タンク水の加熱や放熱器等に切り替えられて供給される。暖気味ドライ運転時は、例えば空調機20では冷房、床暖房部40で床暖房を行えば、頭寒足熱の快適除湿環境を作り出すことができる。
【0081】
次に、図7の空調機20の室外機21のように、空調機としては室外熱交換器25と排熱利用熱交換器27を同時に行う場合を考える。この場合、低外気温時や起動時、除霜運転時に空調機が高暖房能力を発揮したい時に、同時に排熱利用熱交換器27及び室外熱交換器25に冷媒を流して空調機の暖房運転を行い、床暖房運転は行わない。
【0082】
それ以外の場合は、二方遮断弁28を閉じて、空調機20が通常空気熱源運転を行い、排熱利用熱交換器27を経由した温水が床暖房部40に供給されて床暖房を行う。不要であれば、空調機側の気流暖房を停止させても構わない。
【0083】
気流暖房も床暖房も不要な場合は、図示はしていないが温水が給湯用の温水タンク水の加熱や放熱器等に切り替えられて供給される。暖気味ドライ運転時は、例えば空調機20では冷房、床暖房部40で床暖房を行えば、頭寒足熱の快適除湿環境を作り出すことができる。
【0084】
このように本実施の形態は、燃料電池システムの排熱利用熱交換器27を空調機20の室外機21の室外熱交換器25と並列に配置し、空調機の運転と協調して室内の床暖房に利用されるため、快適な床暖房が実現できる。さらに、コージェネレーション運転によって経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0085】
図8及び図9は、本発明の固体高分子型燃料電池システムに係る第4の実施の形態の構成図である。
【0086】
図8に示す実施の形態における燃料電池システムは、破線の燃料電池システム50及び浴室乾燥機60から構成される。
【0087】
この燃料電池システム50からの排熱は、浴室内の上部の浴室乾燥機60に温水として熱が供給され、暖かい気流となって洗濯物或いは浴室の乾燥や暖房に利用される。
【0088】
図9に示す実施の形態は、室内に設置した洗濯機61と燃料電池システム50の排熱を温水として取出す排熱熱交換器との間に温水循環配管62を配設すると共に、この配管の給水口及び吸込口を水槽部下方に直接挿入し、洗濯する前のきれいな水を排熱供給水ポンプ13で循環させるようにしたものである。
【0089】
このような構成とすれば、燃料電池システムの排熱を洗濯水の加熱に利用することにより、洗浄能力を高めることができる。
【0090】
本実施の形態では、温水循環配管を配設して温水を循環させる場合について示したが、燃料電池システムの排熱により閉ループの温水放熱熱交換器を用いて洗濯水を暖めるようにしてもよく、また洗濯乾燥機における洗濯物の乾燥熱源として利用してもよい。
【0091】
このように本実施の形態ては、電池システムの排熱を利用して衣類の洗濯や乾燥を行う洗濯乾燥機に温水または熱源として供給することにより、無駄のない洗浄性能が高い衣類洗濯や乾燥が実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる
図10は、本発明の固体高分子型燃料電池システムに係る第5の実施の形態を示す構成図である。
【0092】
本実施の形態では、破線の燃料電池システム50の排熱を排熱熱交換器を介して取出し、この排熱を融雪熱交換器70に供給する融雪システムに利用する構成とするものである。
【0093】
この燃料電池システムからの排熱を屋外の家の前の道路の地下に埋められた融雪熱交換器70に供給することにより、地上の雪や氷を溶かし除雪、融氷することができる。
【0094】
なお、この融雪システムは路面だけでなく、例えば屋根に同機能の融雪熱交換器70を設置して、融雪や融氷に用いてもよい。
【0095】
このように本実施の形態では、電池システムの排熱が融雪や融氷に利用することにより、労力の大きい除雪作業が不要となり、寒冷地の快適な冬の暮らしが実現できる。さらには、コージェネレーション運転によって、経済的でエネルギ効率の高い運転が実現できる。
【0096】
上記各実施の形態では、燃料電池本体から排出される熱を空調機の室外機に供給したり、他の排熱利用システムに供給する場合について述べたが、燃料処理系から排出される熱を前述同様に空調機の室外機に供給したり、他の排熱利用システムに供給するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0097】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、簡単な構成にして様々な熱利用ができ、且つ電気出力と併せたコージェネレーション運転により、全体のシステム効率が高く、非常に省エネで経済的な運転を実現可能な燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による固体高分子型燃料電池システムの第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同実施の形態における空調システムを示す構成図。
【図3】同実施の形態における排熱利用熱交換器を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図4】同実施の形態における他の例の排熱利用熱交換器を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図5】本発明による固体高分子型燃料電池システムの第2の実施の形態を示す構成図。
【図6】本発明による固体高分子型燃料電池システムの第3の実施の形態を示す構成図。
【図7】同実施の形態の他の例を示す構成図。
【図8】本発明による固体高分子型燃料電池システムの第4の実施の形態を示す構成図。
【図9】同実施の形態の他の例を示す構成図。
【図10】本発明の固体高分子型燃料電池システムに係る第5の実施の形態を示す構成図。
【符号の説明】
1…燃料処理系、
2…電池本体、
3…燃料、
4…脱硫器、
5…水蒸気発生器、
6…改質器、
7…COシフト反応器、
8…CO選択酸化器、
9…水蒸気分離器、
10…改質用水タンク、
11…水改質用水ポンプ、
12…排熱熱交換器、
13…排熱協給水ポンプ、
14…アノード、
15…カソード、
16…水冷却部、
17…電池冷却水ポンプ、
18…空気ブロア、
19…凝縮熱交換器、
20…空調機、
21…室外機、
22…室内機、
23…圧縮機、
24…四方弁、
25…室外熱交換器、
26…室外ファン、
27…排熱利用熱交換器、27a…排熱供給水通路(温水配管)、27b…冷媒通路(冷媒配管)、
28…二方遮断弁、
29…絞り機構、
30…逆止弁、
31…室内熱交換器、
32…室内ファン、
40…床暖房部機
50…燃料電池システム、
60…浴室乾燥機、
70…融雪熱交換器。

Claims (4)

  1. 燃料極及び酸化剤極からなる一対のガス拡散電極間に触媒層を介して固体高分子電解質膜を挟持してなり、反応ガスである燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学的反応により発電を行い電気的出力を発生する燃料電池本体及び前記燃料ガスを改質するための燃料処理器を備えた固体高分子型燃料電池システムにおいて、
    屋内の冷暖房を行う室内機および室外機を有する空調機と、
    前記室内機に設けられた室内熱交換器と、
    前記室内熱交換器との間で熱交換可能に前記室外機に設けられた室外熱交換器と、
    前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方から排出される熱が伝達される排熱熱交換器と、
    前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方と前記排熱熱交換器とにそれぞれ連通し、前記燃料電池本体および前記燃料処理器のうちの少なくとも一方から排出される熱を前記排熱熱交換器に伝達する冷媒が循環して流れる冷媒通路と、
    前記室外熱交換器と並列に配置された排熱利用熱交換器と、
    前記排熱利用熱交換器と前記排熱熱交換器とにそれぞれ連通し、前記排熱熱交換器の冷媒通路を流れる冷媒との間で熱交換される不凍液又は温水が循環して流れる排熱供給水通路と、
    を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記冷媒通路を前記室外熱交換器又は前記排熱利用熱交換器のいずれか一方に切替えて運転するための二方遮断弁および絞り機構を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
  3. 請求項1記載の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記室外熱交換器および前記排熱利用熱交換器を同時に運転するために、前記室外熱交換器と前記排熱利用熱交換器を並列に接続する前記冷媒通路を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
  4. 請求項1記載の固体高分子型燃料電池システムにおいて、前記空調機は、前記燃料電池本体又は前記燃料処理器から排出される熱を室内の床暖房に利用するために、前記室内熱交換器と前記排熱利用熱交換器を並列に接続する前記冷媒通路を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池システム。
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