JP4789791B2 - 吸水速乾性ポリエステル複合繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、かかる特徴の反面、ポリエステル繊維は、他の繊維、例えば、木綿、レーヨン、アセテート、羊毛などの繊維に比べて吸水性や吸湿性に乏しいことから、衣料用途、なかでもインナーやスポーツウエアーなどに用いると発汗時などの「蒸れ」による着用不快感を生じるという問題がある。
こうした課題を解決するために、ポリエステル繊維の単糸断面形状を異型断面として単糸間に小さな空隙を作り毛細管現象により吸水性を高める提案(特許文献1)や、単糸繊度を1デシテックス以下の極細糸として毛細管現象を利用する提案、更には、前記ポリエステルを編織物とした後に親水性の加工剤を塗布して吸水性を高める提案(特許文献2)などが多数提案されている。
しかしながら、この方法で減量加工された繊維の表面は光が乱反射する程度の孔は形成されるものの、親水性ポリマーであるポリアルキレンオキシドとポリエステルの相溶性が低いことから、繊維の比表面積を増加させるのに十分な凹部が形成されないことがわかった。更に、この方法で十分な吸水性を向上させるには、親水性ポリマーの混合比率を5重量%以上、好ましくは10重量%以上含有させることが必要となり、製糸性の低下や残存する親水性ポリマーの影響で編織物の耐光堅牢性が低下し、商品価値が損なわれるという欠点があることがわかった。
更に、有機スルホン酸塩とポリエチレングリコールを共重合したポリエステルを繊維化した後、アルカリ化合物で減量処理して繊維表面に多数の連続筋状溝を形成することにより、吸水性やドライ感を付与する提案(特許文献4)がなされている。
この方法によれば、繊維表面に存在する多数の連続筋状溝により吸水性能は向上するものの、編織物の長期使用時に繊維表面の筋状溝が磨耗によりフィブリル化して、毛玉や白筋欠点が発生するなど、耐フィブリル性が大きな課題となることが明らかになった。
(1)該微細孔により形成される繊維比表面積が、光学顕微鏡観察による単糸断面形状か ら算出される繊維比表面積S1(cm2 /g)と、BET法で測定される繊維比表 面積S2(cm2 /g)の比(S2/S1)が1.5〜5.0であり、
(2)単糸断面形状がW断面で単糸の扁平度が2〜5であり、断面の少なくとも一つの凹 部に繊維長に沿って連続した微細孔の溝を有しており、
(3)繊維中に含有されるポリエチレングリコールの含有率が0.05〜2.0重量%で ある。
本発明の第2の発明は、鞘芯型ポリエステル系複合繊維の製造方法であって、芯成分がポリエステルBからなり、鞘成分が数平均分子量4000〜5万のポリエチレングリコールを2〜10重量%共重合したポリエステルAと、ポリエステルBからなり、該ポリエステルAの鞘部での混合率を10〜50重量%としたポリエステル成分からなり、溶融複合紡糸した後、延伸熱処理し繊維化した後に、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドを含んだアルカリ水溶液を用いて、100℃以下の温度で減量率4〜35重量%となるようにアルカリ減量処理することを特徴とする上記第1のポリエステル複合繊維の製造方法、である。
本発明の鞘芯型ポリエステル複合繊維においての上記(1)〜(3)の要件については以下の通りである。
要件(1)の微細孔による比表面積の特定は、過度なフィブリルを抑制し、耐フィブリル性と強度を維持しつつ、吸水速乾性を増大させるのに重要な要件である。
要件(2)のW断面の凹部に形成される繊維長に沿って連続した溝の特定は、微細孔を過度に形成しないで、限定された比表面積に留めたにも係わらず、吸水速乾性を増大させるのに重要な要件である。
要件(3)のポリエチレングリコール含有率の特定は、微細孔と水との親和性を高め、かつ、染色堅牢性を維持するのに重要な要件である。
本発明の鞘芯型ポリエステル複合繊維の製造方法においては、芯成分に用いるポリエステルAの特定は、アルカリ減量処理により繊維表面に溝状の微細孔を形成するための重要な要件であり、ポリエステルAとポリエステルBとのブレンド比率の特定は、過度なフィブリルを抑制するのに重要な要件であり、鞘芯の配合比率の特定は、アルカリ減量処理後のポリエチレングリコール含有率を制御するのに重要な要件であり、アルカリ減量処理条件の特定は、W字状断面の凹部に繊維長に沿って連続した溝を形成させるための重要な要件である。
本発明の第1の発明であるポリエステル複合繊維は、繊維の表面に繊維軸方向に平行な溝状の微細孔を有し、(1)微細孔により形成される繊維比表面積が、光学顕微鏡観察による単糸断面形状から算出される繊維比表面積S1(cm2 /g)と、BET法で測定される繊維比表面積S2(cm2 /g)の比(S2/S1)が1.5〜5.0であり、(2)単糸断面形状がW断面で単糸の扁平度が2〜5であり、断面の少なくとも一つの凹部に繊維長に沿って連続した微細孔の溝を有しており、(3)繊維中に含有されるポリエチレングリコールの含有率が0.05〜2.0重量%であることを特徴とする。
比表面積の測定は、後述するように従来公知のBET法により測定される。
単糸断面がW字状であることにより、単糸自体の比表面積が大きく、かつ、繊維表面に繊維軸方向に平行な溝状の微細孔を有することにより、格別に優れた吸水速乾性を発揮できることが明らかになった。単糸断面がW字であり、この扁平度が2〜5であることが必要である。扁平度は、W字断面を囲む外接長方形の短辺と長辺の比である。図1においては、長辺bを短辺aで徐した値である。W字断面に存在する各凹部の開口角度が100〜150度であれば、更に吸水速乾性能が向上し好ましい。
繊維長に沿った微細孔の連続した溝は、W断面の3ヶ所凹部の全てにあることが好ましいが、少なくとも1つに存在すれば、本発明の効果が十分に達成される。ここで、連続したとは、複合繊維を構成する各単糸にあっては繊維の長さ方向に沿っておよそ数cm〜数十cmであれば良く、実質的には複数の単糸が集合することにより、繊維全体としては実質的に連続した溝の作用を発揮する。
そしてこの効果により、繰り返しの洗濯を行っても吸水速乾性能の低下がなく、優れた洗濯耐久性を発揮するものと推察される。
本発明のポリエステル複合繊維の単糸表面には、上記凹部の溝以外に、繊維軸方向に平行な溝状の微細孔を有していることが必要である。溝の幅や長さ、個数は特に限定されないが、溝の幅0.1〜1.5μm、長さ3μm以上であれば、吸水速乾性能が向上し好ましい。より好ましくは、W字状断面の凹部に繊維長に沿って連続した溝を形成していることである。
本発明のポリエステル複合繊維は、繊維中に含有されるポリエチレングリコールの含有率が0.05〜2.0重量%であることが必要である。ポリエチレングリコールの含有率が0.05重量%未満では、繊維表面に微細孔が存在しても、吸水速乾性能の洗濯耐久性が不足する。ポリエチレングリコールの含有率が2.0重量%を超えると、染色堅牢性が低下する。本発明のポリエステル複合繊維は、微量ながらもポリエチレングリコールを含有することと微細孔の存在により、吸水速乾性能が相乗的に向上するところに大きな特徴がある。ポリエチレングリコールの好ましい含有率は、0.1〜1.0重量%である。
ポリエチレングリコールの含有量をかかる微量にすることにより、特許文献3で課題となる耐光堅牢性の低下を解消したものである。
繊維中に含有されるポリエチレングリコールは、共重合やブレンドのいずれでも良いが、共重合されていることが洗濯耐久性を向上させる目的から、好ましい。
本発明の第2は、鞘芯型ポリエステル複合繊維の製造方法であって、芯成分がポリエステルBからなり、鞘成分が数平均分子量4000〜5万のポリエチレングリコールを2〜10重量%共重合したポリエステルAを鞘成分に対して10〜50重量%ブレンドしたポリエステル成分からなり、両者を溶融複合紡糸後、延伸熱処理して繊維化した後に、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドを含んだアルカリ水溶液を用い、100℃以下の温度でアルカリ減量処理することを特徴とするポリエステル複合繊維の製造方法、である。
本発明のポリエステル繊維の製造に用いるポリエステルAは、数平均分子量が4000〜5万のポリエチレングリコールを2〜20重量%共重合していることを特徴としている。
ポリエチレングリコールの数平均分子量が4000未満では、ポリエステルBとの相溶性が良くなり、減量処理を行っても比表面積の増加が乏しいものとなり本発明の目的が達成されない。数平均分子量が5万を超えると、ポリエステルBとの相溶性が乏しくなり、紡糸時の糸切れや複合繊維の強度が低下する。ポリエチレングリコールの数平均分子量の好ましい範囲は6000〜2万である。
ポリエチレングリコールの共重合比率が2重量%未満では、ポリエステルBとの相溶性が良くなり、減量処理を行っても比表面積の増加が乏しいものとなり本発明の目的が達成されない。共重合比率が20重量%を超えると、ポリエステルBの耐熱性が悪く、溶融複合紡糸時の糸切れや耐光堅牢性が低下し、本発明の目的が達成されない。好ましい共重合比率は、3〜8重量%である。
ポリエステルA及び/又はポリエステルBは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位からなることが好ましいが、これ以外にトリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレートなどであっても良い。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリエステル成分として、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、スルホイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノールなどの酸成分や、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール成分を共重合しても良い。更に必要に応じて、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料などの第三成分を含有しても良い。
本発明に用いるポリエステルA及び/又はポリエステルBの固有粘度は、0.50〜0.80であることが、溶融複合紡糸時の糸切れを抑制する点から好ましい。
本発明のポリエステル繊維の製造においては、アルカリ減量処理にあたり、低濃度の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液で処理することが好ましい。低濃度のアルカリ水溶液にて鞘芯構造のポリエステル複合繊維の繊維表面に筋状溝を形成させるには、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドを含んだアルカリ水溶液で処理をすることが必要である。アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの併用により、ポリエステル複合繊維全体に対する減量率が低いにも係わらず、筋状溝を容易に形成させることがコントロールでき、過度なフィブリルの発生を抑制することができる。特に、W断面の少なくとも一つの凹部に繊維長に沿って連続した微細孔の溝を形成することが可能となった。
アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの使用濃度は、0.25〜1.5g/lの範囲が好ましい。使用濃度が0.25g/l未満では、筋状溝の形成が軽度であり単糸間での筋状溝形成にバラツキが大きく、本発明の比表面積比は得られず吸水速乾性能の洗濯耐久性が不足することがある。また使用濃度が1.5g/lを超えると加水分解反応が促進され所望の減量率にコントロールするのが難しくなることがある。
併用するアルカリ水溶液のアルカリ剤濃度は、2〜6g/lであることが、ポリエステル複合繊維全体の減量率をコントロールしやすく好ましい。処理温度は100℃以下、好ましくは95℃にて、処理時間は5〜30分の範囲が好ましい。
アルカリ減量率が4重量%未満であると筋状溝の形成が不足し、本発明に特定する比表面積が得られず、吸水速乾性能の洗濯耐久性が不足する。またアルカリ減量率が35重量%を越えると得られる比表面積が向上し、吸水速乾性能が向上するが、単糸切れによるフィブリル化による耐磨耗性の低下や、それに伴う織編物の外観品位の低下、破裂強度の低下が発生する。好ましいアルカリ減量率は、10〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%に制御することによって、吸水速乾性能の洗濯耐久性と、耐磨耗性のバランスが最も良好となる。
本発明で特定されたアルカリ減量処理により、W断面の凹部の少なくとも1つに繊維長に沿って連続した微細孔の溝が形成される理由は明らかではないが、鞘芯型複合繊維であることにより、結晶化度など繊維構造が凹部のみ低く抑えられていることと、ポリエチレングリコールが含有されていて、凹部のアルカリ減量速度が大きくなり選択的にアルカリ減量されるものと推定される。
本発明のポリエステル複合繊維の溶融複合紡糸では、公知の複合紡糸機が採用できる。紡糸方式は、未延伸糸を一旦巻き取った後延伸熱処理する方法や、未延伸糸を一旦巻き取ることなく、引き続き延伸熱処理した後に巻取る紡糸直接延伸法が採用される。
更に、本発明のポリエステル複合繊維と他のポリエステル繊維を混用しても良い。この場合には、ポリエステル複合繊維の編織物中に占める割合が20重量%以上であることが好ましい。
混用して用いる他の繊維としては、スパンデックス、ポリアミド繊維、セルロース繊維等が混用される。
一方、編織物の例としては、一般的な交編織があり、例えば交編では、両者を引き揃えて給糸したり、二重編地(例えばダブル丸編機、ダブル横編機、ダブルラッセル経編機)において表面及び又は裏面に各々給糸又は引き揃えて給糸する方法が挙げられる。交織では一方が経糸に他方を緯糸に用いる、経糸及び又は緯糸において両者を1〜3本交互に整経や緯入れにより配置する、さらには起毛織物やパイル織物において一方が地組織を構成し、他方が起毛部、パイル部を構成したり混用して地組織、起毛部等を構成する。二重織物において表面及び又は裏面を各々構成、又は混用して構成する等が挙げられる。またこれら各種の糸段階での複合と機上での複合を組み合わせてもよい。
(1)扁平度
扁平度は、図1に例示するように、単糸横断面の外接長方形の短辺aと長辺bの比から求めた。
扁平度=長辺b/短辺a
(2)繊維比表面積比
ポリエステル複合繊維の繊維比表面積S2(cm2 /g)は、BET比表面積測定器(Mountech社製)を用いて、比表面積を5回測定し、その平均値を用いた。
単糸断面形状から算出される繊維比表面積S1(cm2 /g)は、光学顕微鏡を用いて単糸断面の周長を測定して求めた。
繊維比表面積の比は次式により求めた。
繊維比表面積の比=S2/S1
1H−NMR法によりポリエチレングリコールの含有率を測定した。
測定装置、条件は以下のようにした。
測定装置 : 日本電子社製;JNM−LA400
溶媒 : HFIP−d2/CDCL3(5/5)
試料濃度 : 5.0重量/vol%
測定温度 : 25℃
化学シフト基準: テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとした。
積算回数 : 256回
待ち時間 : 2.9秒
繊維を洗濯した後室温で24時間乾燥したものを試料とし、各測定試料の 1H−NMRスペクトルを測定した。酸化チタンを分離するため、溶解液を遠心分離して上澄液について測定した。
ポリエチレングリコールのメチレン基シグナルを用いて、含有率を求めた。
測定は、各試料について3回行って平均値を求めた。
布帛を直径15cmの刺繍用丸枠に取り付け、布帛表面に水溶性青染料溶液(C.I.アシッドブルー62を0.005wt%含有)を0.1ml滴下し、3分後に濡れ拡がった吸水拡散面積を次式より求める。
吸水拡散面積(cm2 )=[縦の直径(cm)×横の直径(cm)]×π÷4
サンプル毎に測定を5回行い、平均吸水拡散面積を求めた。
耐洗濯性の評価は、市販の全自動洗濯機で洗剤1g/10リットル、浴比1:1000で100回繰り返した後に、同様の吸水拡散面積の測定を行った。
本測定によれば、吸水拡散面積が10cm2 以上であれば、良好な吸水性を有する。
布帛(10cm角)を水で十分に濡らし、脱水機にて2000rpmで1分間脱水した後、布帛の重量を測定し、水分量を算出し、温度20℃で相対湿度65%の環境下で、布帛の水分量が2%(乾いたと感じる水分量)となるまでの時間(分)を測定した。
耐洗濯性は、吸水性の測定と同様に行った。
本測定において、乾燥時間が25分以下であれば、良好な速乾性を有する。
(6)染色堅牢度
染色品について、JIS−L−0846に準じて評価した。試験片の変褪色と添付白布片の汚染の程度をそれぞれ変褪色用グレースケール、汚染用グレースケールと比較して判定した。
本測定において、4級以上であれば、良好な染色堅牢度を有する。
染色品について、JIS−L−1096法に準じて評価した。摩擦回数を4000回として、摩擦後の表面を5等級に区分して判定した。
本測定において、4級以上であれば、良好な耐フィブリル性を有する。
(8)強度
JIS−L−1013に基づいて測定した。
(9)紡糸安定性
1錘当たり8エンドの紡口を装着した溶融複合紡糸―連続延伸機を用いて、各実施例ごとに1日間の溶融複合紡糸―連続延伸を行った。
この期間中の糸切れの発生回数と、得られた複合繊維パッケージに存在する毛羽の発生頻度(毛羽発生パッケージの数の比率)から、以下のように判定した。
◎ ; 糸切れ0回、毛羽発生パッケージ比率 5%以下
○ ; 糸切れ2回以内、毛羽発生パッケージ比率 10%未満 × ; 糸切れ3回以上、毛羽発生パッケージ比率 10%以上
鞘側に酸化チタン2.0重量%含有し、固有粘度 [η] が0.62(オルソクロロフェノール中、1重量%で測定)のポリエチレンテレフタレートBに対して、数平均分子量2万のポリエチレングリコールを4重量%共重合したポリエステルAを表1に示すように鞘成分での混合比率を異ならせてブレンドしたポリマーを用い、芯側にはポリエチレンテレフタレートBを用いて、2軸の押出機を用いて鞘芯重量比が25/75となるように押し出し、W型に穿孔された、紡糸孔36個を有するノズルより、紡糸温度(スピンヘッド温度)292℃、紡糸速度2000m/分で押し出し、90℃の第1延伸ロールでフィラメントを加熱し、130℃の第2延伸ロールにて熱セットを行い、延伸を行い、単糸断面形状がW字状断面を有した84デシテックス/36フィラメントの延伸糸を得た。得られた繊維は、W断面の凹部開口角度は130度、扁平度は3.5であり、繊維の伸度は、いずれも34〜36%であった。
得られた仮撚加工糸を、33インチの編機にて、通常の編成条件にてスムース編み地を調製した。この編み地目付は220g/m2 であった。
この編地を80℃にて精練を行い、190℃でプレセットを行い、次に示す条件にてアルカリ減量率が10重量%となるように処理時間を調整し、液流染色機にて減量加工を行った。
アルカリ減量加工条件
アルカリ:水酸化ナトリウム 4g/リットル
ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド:DYK−1125
(一方社油脂工業製) 1.2g/リットル
浴比 : 1:25
処理温度: 95℃
次に下記の染色条件で染色した。
染色条件
染料:ダイアニックス ブルー S−2R(ダイスター社製) 2.2%omf
助剤:ニッカサンソルトRM−340(日華化学社製) 0.5g/リットル
酢酸: 0.5cc/リットル
酢酸ナトリウム: 1g/リットル
浴 比 : 1:25
染色温度、時間: 130℃、30分
ハイドロサルファイト 2g/リットル
苛性ソーダ− 2g/リットル
ビスノールUP−10(一方社油脂工業社製) 0.5g/リットル
浴比: 1:25
この還元洗浄後、残液を排出し、温湯及び水により染色物をすすぎ洗いした後、脱水、乾燥後、130℃で45秒間の乾熱セットを行い仕上げた。
仕上げた染色布帛の吸水拡散面積、脱水乾燥性、染色堅牢度、耐フィブリル性の評価結果を表1に示す。
得られた染色布帛を電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したところ、ポリエステル複合繊維の表面には、幅0.3〜0.5μm、長さ3μm以上の筋状溝が繊維軸方向に多数見られ、W断面の凹部には幅0.3〜0.6μm、の連続した筋状溝が観察された。
本実施例では、鞘芯型ポリエステル複合繊維の鞘成分と芯成分の配合比率の効果について説明する。
実施例1〜4と同様にして、ポリエステルAのブレンド比率30wt%において、鞘成分と芯成分の比率を表2のように異ならせた。
染色布帛の吸水拡散面積、脱水乾燥性、染色堅牢度、耐フィブリル性の評価結果を表2に示す。
[実施例9〜13、比較例5、6]
本実施例では、アルカリ減量率の効果について説明する。
実施例1〜4と同様にして、ポリエステルAのブレンド比率30wt%で、鞘芯比率30/70において、アルカリ減量率を表3のように異ならせて布帛を得た。
染色布帛の吸水拡散性、脱水乾燥性、染色堅牢性、耐フィブリル性の評価結果を表3に示す。
Claims (4)
- 鞘芯型ポリエステル複合繊維であって、繊維の表面に繊維軸方向に平行な溝状の微細孔を有し、以下の(1)〜(3)の要件を満すことを特徴とするポリエステル複合繊維。
(1)該微細孔により形成される繊維比表面積が、光学顕微鏡観察による単糸断面形状か ら算出される繊維比表面積S1(cm2 /g)と、BET法で測定される繊維比表 面積S2(cm2 /g)の比(S2/S1)が1.5〜5.0であり、
(2)単糸断面形状がW断面で単糸の扁平度が2〜5であり、断面の少なくとも一つの凹 部に繊維長に沿って連続した微細孔の溝を有しており、
(3)繊維中に含有されるポリエチレングリコールの含有率が0.05〜2.0重量%で ある。 - 繊維比表面積S1と繊維比表面積S2の比(S2/S1)が2.0〜4.5であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル複合繊維。
- 鞘芯型ポリエステル系複合繊維の製造方法であって、芯成分がポリエステルBからなり、鞘成分が数平均分子量4000〜5万のポリエチレングリコールを2〜10重量%共重合したポリエステルAと、ポリエステルBからなり、該ポリエステルAの鞘部での混合率を10〜50重量%としたポリエステル成分からなり、溶融複合紡糸した後、延伸熱処理し繊維化した後に、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドを含んだアルカリ水溶液を用いて、100℃以下の温度で減量率4〜35重量%となるようにアルカリ減量処理することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル複合繊維の製造方法。
- 鞘成分と芯成分の配合比率が10/90〜50/50であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル複合繊維の製造方法。
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