以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1および図2は本発明に係る車両用エンジン1の概略構成を示す。
各図に示すエンジン1は、4サイクル火花点火式ガソリンエンジンであって、4つの気筒12A〜12D(図2参照)が設けられている。また、各気筒12A〜12Dの内部には、図略のコネクティングロッドによってクランクシャフト3に連結されたピストン13が嵌挿されることにより、当該ピストン13の上方に燃焼室14が形成されている。各気筒12A〜12Dに設けられたピストン13は、所定の位相差をもってクランクシャフト3の回転に伴い上下運動を行うように構成されている。
一般的に、多気筒4サイクルエンジンにおいては、各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなる燃焼サイクルを行うようになっている。本実施形態の4気筒エンジンの場合、気筒列方向一端側から1番気筒12A、2番気筒12B、3番気筒12C、4番気筒12Dと呼ぶと、1番気筒(#1)、3番気筒(#3)、4番気筒(#4)、2番気筒(#2)の順にクランク角で180度ずつの位相差をもって燃焼が行われるようになっている。さらに本実施形態では、エンジンの自動停止中に圧縮行程にあった気筒を停止時圧縮行程気筒、膨脹行程にあった気筒を停止時膨脹行程気筒と称する(同様に吸気行程にあった気筒を停止時吸気行程気筒、排気行程にあった気筒を停止時排気行程気筒と称する)。
シリンダヘッド10には、各気筒12A〜12Dの燃焼室14の頂部に配置され、プラグ先端が燃焼室14内に臨むように点火プラグ15が設けられている。また、シリンダヘッド10には、燃焼室14の側方から内部に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、図外のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、エンジン制御ユニット100の燃焼制御部102(図4参照)から入力されたパルス信号のパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を上記点火プラグ15の電極付近に向けて噴射するように構成されている。
また、各気筒12A〜12Dの上部には、燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17および排気ポート18が設けられている。そして、これらのポート17、18と燃焼室14との連結部分には、吸気バルブ19および排気バルブ20がそれぞれ装備されている。この吸気ポート17および排気ポート18には、吸気通路21および排気通路22が接続されている。吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、図2に示すように、各気筒12A〜12Dに対応して独立した分岐吸気通路21aに分岐しており、この各分岐吸気通路21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流側には共通吸気通路21cが設けられている。この共通吸気通路21cには、スロットルボディ24が設けられている。スロットルボディ24には、各気筒12A〜12Dに流入する空気量を調整可能なスロットル弁24aとこのスロットル弁24aを駆動するアクチュエータ24bと、アイドリング回転速度制御装置(ISC:Idling Speed Control device)24cとが設けられている。図示の実施形態において、ISC24cは、エンジン制御ユニット100の燃焼制御部102(図4参照)によって開弁量を変更可能な電磁駆動式のものである。スロットル弁24aの上流側および下流側には、それぞれ吸気流量を検出するエアフローセンサ25と、吸気圧力を検出する吸気圧センサ26とが設置されている。
また、上記エンジン1には、図1に示すように、タイミングベルト等によりクランクシャフト3に連結されたオルタネータ28が付設されている。このオルタネータ28は、図略のフィールドコイルの電流を制御して出力電圧を調節することにより発電量を調整するレギュレータ回路28aを内蔵し、このレギュレータ回路28aに入力されるエンジン制御ユニット100(図4参照)からの制御信号に基づき、車両の車両電気負荷82(図3参照)および車載のバッテリ80(図3参照)の電圧等に対応した発電量の制御が実行されるように構成されている。
またエンジン1には、電動駆動装置としてのスタータ36が設けられている。このスタータ36は、モータ36a(電気モータ)とピニオンギア36dとを有し、エンジン1を駆動するものである。ピニオンギア36dの回転軸は、モータ36aの出力軸と同軸で、その回転軸に沿って往復移動する。またクランクシャフト3には、図略のフライホイールと、このフライホイールに固定されたリングギア35が、回転中心に対して同心に設けられている。そして、このスタータ36を用いてエンジンを始動する場合には、ピニオンギア36dが所定の噛合位置に移動して、リングギア35に噛合することにより、クランクシャフト3が回転駆動されるようになっている(クランキング)。
スタータ36によってエンジンを始動させる形態には2通りある。第1の形態は運転者がイグニションキースイッチ38(図4参照)を回してスタータ36を駆動させ、それによってエンジン1を始動させるものであり、キー始動と呼ばれるものである。第2の形態は、エンジンの自動停止後の再始動時に、エンジン制御ユニット100のスタータ制御部103(図4参照)が自動的にスタータ36を駆動させ、それによってエンジン1を始動させるものである。
またエンジン1には、クランクシャフト3の回転角を検出する2つのクランク角センサ30、31が設けられている。一方のクランク角センサ30から出力される検出信号(パルス信号)に基づいてエンジン回転速度Neが検出されるとともに、この両クランク角センサ30、31から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランクシャフト3の回転角度が検出されるようになっている。さらに、エンジン1には、吸気側カムシャフトの回転位置を検出するカム角センサ32と、冷却水温度を検出する水温センサ33と、運転者のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサ34とが設けられている。
図3は本実施形態に係る車両に搭載された電力供給システムの概略構成図である。
図3を参照して、同電力供給システムは、第1のバッテリ80aと第2のバッテリ80b(総称するときはのバッテリ80という)とを備えている。
第1のバッテリ80aは車両電気負荷82に常時接続され、これらに電力供給が可能である。車両電気負荷82は第1負荷群82a、第2負荷群82a、第3負荷群82cに大別される。第1負荷群82aは、一般的な電気負荷のうち、スタータ36のクランキング時に電源電圧が一次的に低下することが望ましくない電気負荷である。具体的には、エアバッグコントロールユニット、EHPAS(電子油圧式パワーステアリング)コントロールユニット、ナビゲーションシステム、オーディオ、各種メータ類等が挙げられる。第2負荷群82aは、一般的な電気負荷のうち、スタータ36のクランキング時に電源電圧が一次的に低下してもあまり問題にならない電気負荷である。具体的には各種ライト、デフォッガ等が挙げられる。第3負荷群82cは、エンジンの制御装置を搭載する当該車両特有の電気負荷である。具体的には坂道停車中に車両のずり下がりを防止するヒルホルダ、電動パワーステアリングのモータ等が挙げられる。ヒルホルダは、エンジン自動停止中にパワーブレーキが作動しないことをカバーするものであり、電動パワーステアリングは、エンジン自動停止中にEHPAS(電子油圧式パワーステアリング)が作動しないことをカバーするものである。
第1のバッテリ80aは、パワーリレー85を介してスタータ36に接続されている。従って、パワーリレー85がオフのときにはスタータ36への電力供給がなされず、パワーリレー85がオンのときにはスタータ36への電力供給が可能となる。さらに第1のバッテリ80aはオルタネータ28に常時接続され、オルタネータ28で発電された電気が第1のバッテリ80aに充電される。第1のバッテリ80aの電圧は、第1の電圧センサSW1によって検出され、エンジン制御ユニット100に入力されるようになっている。
第2のバッテリ80bは、第1のバッテリ80aよりも少容量で、スタータ36駆動専用のバッテリである。第2のバッテリ80bはスタータ36に常時接続され、電力供給が可能となっている。また第2のバッテリ80bは、チャージリレー87を介してオルタネータ28と接続されている。これにより、チャージリレー87がオンのとき、オルタネータ28で発電された電気が第2のバッテリ80bに充電される。第2のバッテリ80bの電圧は、第2の電圧センサSW2によって検出され、エンジン制御ユニット100に入力されるようになっている。
キー始動時およびエンジン自動停止状態からクランキングによる再始動を行うとき、第2のバッテリ80bからスタータ36のモータ36aに電力が供給され、スタータ36が駆動する。
クランキング時、スタータ36での消費電力は比較的大きいので、第2のバッテリ80bの電源電圧が一時的に大きく低下する(図5参照)。しかし車両電気負荷82は、第1のバッテリ80aからの電力供給を受けているので、第2のバッテリ80bの電圧低下の影響を受けない。これは特に電源電圧の低下が望ましくない第1負荷群82aに対して効果的である。
また、本実施形態に係る車両にはワーニング報知部90が設けられている。これは、オイル切れ等、各種のワーニング(警告)を運転者に報知するものであり、一般的にはインスツルメントパネル内に列設されたワーニングランプ等である。
なお、図3に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、自動変速機2とともにパワーユニットを構成している。
図4は、本発明に係る車両のエンジン制御ユニット100を中心とする制御ブロック図である。図4では、特に本実施形態の説明に必要な部分のみを抽出して示している。
エンジン制御ユニット100には、上述した各種のセンサやスイッチ類、すなわちエアフローセンサ25、吸気圧センサ26、クランク角センサ30、31、カム角センサ32、水温センサ33、アクセル開度センサ34、イグニションキースイッチ38、並びに第1、第2の電圧センサSW1、SW2等の入力要素からの信号が入力される。
またエンジン制御ユニット100は、その制御対象である燃料噴射弁16、スロットル弁24a、点火装置27、オルタネータ28、スタータ36、車両電気負荷82、パワーリレー85およびチャージリレー87等の出力要素に対して制御信号を出力する。
エンジン制御ユニット100は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェースおよびこれらを接続するバスを有するマイクロプロセッサで構成されている。そしてエンジン制御ユニット100は、運転状態判定部101、燃焼制御部102、スタータ制御部103、オルタネータ制御部104、給電状態判定部105,電気負荷制御部106、リレー制御部107、並びにワーニング処理部108を論理的に構成している。
運転状態判定部101は、エアフローセンサ25、吸気圧センサ26、クランク角センサ30、31、カム角センサ32、水温センサ33、およびアクセル開度センサ34からのセンサ信号に基づきピストン13の位置や、筒内温度、或いはエンジン1が正転しているか否か等、種々の運転状態を判定するものである。この運転状態判定部101は、エンジン1が自動停止時しているときにおけるピストン13の停止位置を判定するものでもある。さらに運転状態判定部101に判定される運転状態としては、予めメモリに記憶されたデータに基づいて推定される各気筒の筒内温度や、アシスト条件の成否も含まれる。アシスト条件とは、例えば、ピストン13の停止位置が予めメモリに記憶された所定の停止位置から外れている場合等に、スタータ36による始動アシストを要するとされる条件をいう。なお、本実施形態における運転状態判定部101は、エンジン制御ユニット100のメモリ領域に設定されたアイドルストップ禁止フラグFの更新制御を司るものでもあり、初期状態では、同フラグFの値を0にし、所定の運転状態では、同フラグFの値を1にする。アイドルストップ禁止フラグFの値が0の場合、次に説明する燃焼制御部102は、所定の自動停止条件が成立することによって、エンジン1を自動停止させる。他方、アイドルストップ禁止フラグFの値が1の場合、燃焼制御部102は、自動停止条件に拘わらず、エンジン1を自動停止しないように作動する。
燃焼制御部102は、エアフローセンサ25、吸気圧センサ26、クランク角センサ30、31、カム角センサ32、水温センサ33およびアクセル開度センサ34からのセンサ信号に基づき、エンジン1の適正なスロットル開度(吸気量)、燃料噴射量とその噴射タイミング、および適正点火時期を設定し、その制御信号を燃料噴射弁16、スロットル弁24a(のアクチュエータ24b)、点火装置27に出力する。この燃焼制御部102の機能により、エンジン制御ユニット100は、全体として、所定の自動停止条件が成立したときにエンジン1を自動停止させ、停止後、所定の再始動条件が成立したときに、エンジン1を自動的に再始動させるように構成されている。本実施形態に係る再始動制御は、再始動条件が成立したときに、エンジン1の自動停止時に膨張行程にあった停止時膨張行程気筒12B内での燃焼により自動的にエンジンを再始動させる燃焼再始動制御と、スタータ36を併用するスタータ併用再始動制御と、スタータ36のみにより強制的にエンジンを再始動させるスタータ始動制御とのいずれかの制御方法が選択され実行される。尤も、燃焼制御部102は、運転状態判定部101が設定されたアイドルストップ禁止フラグFの値が1の場合は、自動停止条件が成立しても、エンジン1を自動停止させることはない。
スタータ制御部103は、キー始動時およびエンジン自動停止制御における再始動においてスタータ36の駆動が必要とされたときにスタータ36に駆動信号を送りスタータ36を駆動させる。
オルタネータ制御部104は、オルタネータ28の適切な発電量を設定し、その駆動信号を上記レギュレータ回路に出力する。通常は、出力電圧(レギュレート電圧)の目標値(例えば13V)が設定され、エンジン回転速度等が変動してもその目標値を維持するように発電量をフィードバック制御する。またオルタネータ制御部104は、上記発電量制御において、オルタネータ28の発電量自体を調節することによってエンジン1の負荷を変化させ、ピストン13が再始動に適した適正範囲に停止するような制御を行っている。発電量制御が行われている間、出力電圧は電気負荷82の消費電力に応じて変動する。
給電状態判定部105は、各電圧センサSW1、SW2の検出値に基づき、各バッテリ80a、80bからの電圧を判定するものである。詳しくは後述するように、この給電状態判定部105は、各バッテリ80a、80bの劣化判定も実行する。
電気負荷制御部106は、運転者や搭乗者のスイッチ操作に基づき、或いは自動的に、車両電気負荷82を作動させたりその作動状態を変化させたりする。スタータ駆動時にスタータ36への電力供給をより多く確保するために、必要に応じて車両電気負荷82への電力供給を遮断するように構成されている。
リレー制御部107は、図3に示すパワーリレー85およびチャージリレー87を必要に応じてオン/オフ制御することにより、スタータ36への給電やバッテリ80の充電制御を司るものである。
ワーニング処理部108は、運転状態判定部101が判定した運転状態が所定の場合にワーニング報知部90を作動させるものである。
次に、給電状態判定部105による本実施形態に係るバッテリ80の劣化判定について説明する。
図5は、バッテリの劣化判定を説明するためのタイミングチャートである。なお、図5では、バッテリの一例として、第2のバッテリ80bのタイミングチャートを示しているが、第1のバッテリについても、同様の手法で劣化判定を行うことができるので、ここでは、第2のバッテリ80bを例に挙げて説明する。
図5を参照して、スタータ36のように、大電力を必要とする電気負荷に電力供給を開始すると、第2のバッテリ80bは、規定電圧から急激に電圧降下を来たし、一定の過渡的な期間を経過した後、再び規定電圧に戻る挙動を示す。第2のバッテリ80bが劣化していない正常時においては、過渡的に低下した電圧が所定の高さを維持して規定電圧に戻るのに対し、劣化を来している劣化時においては、過渡的に低下した電圧が、正常時よりも下回って低下することが分かっている。
そこで、本実施形態では、予め実験等でバッテリが劣化していないことを検出する始動可能電圧とバッテリの劣化を検出する劣化判定電圧とを設定し、これらの電圧と検出された電圧との比較でバッテリ80の劣化状態を判定するようにしている。
始動可能電圧は、過渡的に電圧降下が生じた際の最小値(sub_vb_min)に補正値αを加えた値に設定される。電圧センサSW1、SW2に検出された電圧が始動可能電圧以上であれば、バッテリ80は正常であると判定される。なお、最小値(sub_vb_min)は、経過時間によって異なることから、本実施形態においては、電力供給を開始してから所定の経過時間(例えば100ミリ秒)までの最小値をサンプリングして、サンプリングされた値の中で最も小さい値を基準に判定を実行するようにしている。
劣化判定電圧Vstは、現在検出されている電圧(sub_vb)が取り得る所定の電圧(例えば6Vから8V)に設定される。電圧センサSW1、SW2に検出された電圧(sub_vb)が劣化判定電圧Vst未満であれば、バッテリ80は劣化していると判定される。
次にエンジン制御ユニット100によって行われる自動停止制御について説明する。
図6および図7は、エンジン制御ユニット100による制御、特に自動停止制御を中心とするフローチャートである。図6はエンジン1が停止するまでの制御、図7はその後の再始動の制御を示す。
図6を参照して、エンジン制御ユニット100は、予め設定されたエンジン1の自動停止条件が成立するのを待機する(ステップS10)。具体的には、ブレーキの作動状態が所定時間継続し、車速が所定値以下であるといった場合には、エンジン1の自動停止条件が成立したと判定される。ステップS10において、自動停止条件が成立したと判定した場合には、アイドルストップ禁止フラグFの値が0であるか否かを判定する(ステップS11)。仮にアイドルストップ禁止フラグFの値が0ではない場合、エンジン制御ユニット100は、自動停止制御に関する処理を終了し、自動停止制御は禁止される。これにより、所定の運転状態では、エンジン1のアイドリング運転が継続され、始動性が確保されることになる。
アイドルストップ禁止フラグFの値が0である場合、エンジン制御ユニット100は、オルタネータ制御を含むエンジン回転速度調整制御を開始する(ステップS12)。具体的には、エンジン回転速度Neを停止前回転速度N1(例えば760rpm)に調節する(ステップS13)。そして、エンジン回転速度NeがこのN1になった後(ステップS13でYES)、燃料噴射弁16からの燃料供給を停止する(ステップS14)。
続いてエンジン制御ユニット100は、スロットル弁24aを開弁し(ステップS15)、エンジン回転速度Neが所定の回転速度N2(例えば約500rpm)よりも低くなるのを待機する(ステップS16)。ステップS16においてYESの場合、エンジン制御ユニット100は、スロットル弁24aを閉弁する(ステップS17)。その後もエンジン制御ユニット100はオルタネータ制御を継続してピストン13の停止位置調整を実行し続け、クランク角センサ30、31の検出値に基づいてエンジン1が完全に停止するのを待機する(ステップS18)。エンジン1が完全に停止するまで、エンジン制御ユニット100は、ピストン13の停止位置調整を制御し続けるとともに、エンジン1が完全に停止した場合には、オルタネータ制御を終了し(ステップS19)、クランク角センサ30、31の検出によって運転状態判定部101が判定したピストン13の停止位置を記憶する(ステップS20)。
次に図7を参照して、エンジンの再始動について説明する。エンジン制御ユニット100は、エンジン1が停止した後、再始動条件が成立するのを待機する(ステップS21)。再始動条件としては、例えば、運転者によるアクセル操作等が例示される。この再始動条件が成立すると、エンジン制御ユニット100は、停止時圧縮行程気筒12Aのピストン13が所定の単独燃焼停止範囲R(例えば圧縮上死点前60°CAから80°CAの範囲)内にあるか否かを判定する(ステップS22)。仮にピストン13が単独燃焼停止範囲R内にあれば、エンジン制御ユニット100は、そのまま燃焼再始動サブルーチンを実行し(ステップS23)、さらに、通常運転サブルーチンを実行する(ステップS24)。他方、ステップS22において、ピストン13が単独燃焼停止範囲R外であると判定した場合、エンジン制御ユニット100は、さらに、ピストン停止位置が所定の燃焼再始動可能範囲A(例えば、圧縮上死点前140°から圧縮上死点前40°の範囲)内であるか否かを判定する(ステップS25)。このステップS25でピストン13が燃焼再始動可能範囲A内であると判定した場合、エンジン制御ユニット100は、アシスト併用再始動サブルーチンを実行する(ステップS26)。他方、ピストン13が燃焼再始動可能範囲A外であると判定した場合、エンジン制御ユニット100は、スタータ36のみによるアシスト再始動サブルーチンを実行する(ステップS27)。
本実施形態に係る燃焼再始動制御やスタータ併用再始動制御の詳細については、例えば、本件出願人が先に提案している特開2005−2847号公報や、特開2005−315197号公報に開示されたものをそのまま適用することが可能であるので、その詳細については説明を省略する。
図8および図9は、本実施形態に係るアシスト再始動制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、図8を参照して、同アシスト再始動制御において、エンジン制御ユニット100は、カウントCの値を0に初期化する(ステップS271)。このカウントCは、アシスト再始動後にスタータ36に給電する第2のバッテリ80bの給電状態を判定するために用いられる計測値である。このカウントCの値をリセットした後、エンジン制御ユニット100のスタータ制御部103は、スタータ36を作動させる(ステップS272)。これにより、第2のバッテリ80bの電圧は、図5のグラフに示したように一時的に降下する。このステップS272におけるスタータ36の作動は、リレー制御部107によって、第2のバッテリ80bのみからスタータ36に給電する通常給電モードに設定された状態で実行される。
次いで、エンジン制御ユニット100は、カウントCの値をインクリメントしながら(ステップS273)、第2の電圧センサSW2によって検出される第2のバッテリ80bの電圧最小値(sub_vb_min)をサンプリングし、前回サンプリングした値と比較して値の低い方を最小値として更新する処理を実行する(ステップS274)。次いで、カウントCの値が所定の設定値Cn(例えば、100ミリ秒)になったか否かを判定し(ステップS275)、設定値Cnに至らない場合には、ステップS273に戻って上述した処理を繰り返す。設定値Cnに至った場合には、エンジン回転速度Neが所定の回転速度N3(例えば、500rpm)以上になっているか否かを判定する(ステップS276)。仮にエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3以上であれば、スタータ36によってエンジン1は、正常に再始動していると判断されるので、その場合には、スタータ36を停止し(ステップS277)、メインフローに復帰する。
他方、エンジン回転速度Neが所定の回転速度N3に満たない場合、エンジン制御ユニット100は、さらに、エンジン回転速度Neが0以下であるか否かを判定する(ステップS278)。エンジン回転速度Neが0以下である場合、何らかの障害が第2のバッテリ80b等に生じていると考えられるので、後述するフローによって、さらなる判定を実行する。他方、エンジン回転速度Neが0よりも高い場合には、スタータ36の作動を開始してからの経過時間Tesが所定の待機時間Tst1を経過するまでステップS276の判定を繰り返す(ステップS279)。これにより、待機時間Tst1迄にエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3以上になれば、スタータ36を停止してメインルーチンに復帰する一方、待機時間Tst1経過後もエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3に満たない場合には、何らかの異常があると考えられるので、スタータ36を停止し(ステップS2710)、エンスト処理を実行する(ステップS2711)。ここで、「エンスト」とは、広く一般的に「エンスト」と呼ばれるエンジン停止状態をいう。また本実施形態における「エンスト処理」とは、ワーニング報知部90に一定の動作を行わせるワーニング処理である。例えば、ワーニング報知部90がインスツルメントパネル内に列設されたワーニングランプであれば、それらを一斉に点灯させる。
次に、ステップS278において、エンジン回転速度Neが0以下であった場合のフローについて説明する。
図9を参照して、エンジン制御ユニット100は、まず、現在検出されている電圧(sub_vb)が、基準となる所定の電圧値(sub_vb_min+α)以下であるか否かを判定する(ステップS2720)。仮に現在検出されている電圧(sub_vb)が、この所定の電圧値(sub_vb_min+α)以下である場合、さらに、エンジン制御ユニット100は、仮に現在検出されている電圧(sub_vb)が、所定の劣化判定電圧Vst未満であるか否かを判定する(ステップS2721)。仮に現在検出されている電圧(sub_vb)が、所定の劣化判定電圧Vst未満である場合、第2のバッテリ80bが劣化していると考えられる。その場合、エンジン制御ユニット100のリレー制御部107は、パワーリレー85を接続して給電モードを増強給電モードに変更する(ステップS2722)。また運転状態判定部101は、ステップS2722が実行されることによって、アイドルストップ禁止フラグFの値を1に更新する(ステップS2723)。他方、ステップS2721において、現在検出されている電圧(sub_vb)が、所定の劣化判定電圧Vst以上である場合、第2のバッテリ80bの劣化以外の要因によって、エンジン1の回転が遅れていると考えられる。例えば、停止時吸気行程気筒12Cでの自着火によってスタータ36のピニオンギア36dがロックする温間ロックが生じている場合、比較的高いトルクでエンジン1を駆動し、自着火によるエンジン1の逆転方向の力に打ち勝つことが必要となる。そこで、この場合、エンジン制御ユニット100のリレー制御部107は、パワーリレー85を接続して給電モードを増強給電モードに変更するのであるが(ステップS2724)、運転状態判定部101は、過渡的な再始動障害としてステップS2723をバイパスし(つまり次回以降の自動停止を許可し)、次のステップに進むように設定されている。
ステップS2723またはステップS2724を処理した後、エンジン制御ユニット100は、エンジン回転速度Neが所定の回転速度N3以上に上がるのを待機する(ステップS2725)。仮にエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3以上になれば、ステップS277に移行してスタータ36を停止し、その後は、メインルーチンに復帰する。
他方、ステップS2725においてエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3未満である場合、エンジン制御ユニット100は、スタータ36の作動を開始してからの経過時間Tesが所定の待機時間Tst2を経過するまでステップS2725の判定を繰り返す(ステップS2726)。これにより、待機時間Tst2迄にエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3以上になれば、ステップS277に移行してスタータ36を停止してメインルーチンに復帰する一方、待機時間Tst2経過後もエンジン回転速度Neが所定の回転速度N3に満たない場合には、何らかの異常があると考えられるので、ステップS2710以下の処理に移行してスタータ36を停止し、エンスト処理を実行する。
次に、最も希なケースであるが、ステップS2720において、現在検出されている電圧(sub_vb)が、基準となる所定の電圧値(sub_vb_min+α)以上である場合、第2のバッテリ80bが正常であるにも拘わらず、エンジン1が回転していないと判定され、その場合には、スタータ36自身が破損している可能性がある。そこで、そのような運転状況では、速やかにスタータ36の運転を停止し(ステップS2727)、エンスト処理を実行し(ステップS2728)、アイドルストップ禁止フラグFの値を1に更新して(ステップS2729)、メインルーチンに復帰する。
以上説明したように本実施形態では、スタータ36の故障を判定し、その駆動を停止することができる。すなわち、スタータ36に所要の始動可能電圧(sub_vb_min+α)の電力を供給しているにも拘わらず、エンジン回転速度Neが所定値以下である場合には、スタータ36の破損等が考えられるので、その場合には、スタータ36への給電を中止して、信頼性を確保することができるのである。
また本実施形態では、車両の電気負荷に給電する第1のバッテリ80aと、スタータ36に給電する第2のバッテリ80bと、第1、第2のバッテリ80a、80bとスタータ36との回路接続を切り換えることにより、第2のバッテリ80bのみからスタータ36に給電する通常給電モードと、第2のバッテリ80bとともに第1のバッテリ80aからもスタータ36に給電する増強給電モードとに給電モードを択一的に切り換える切換手段としてのリレー制御部107とを備え、リレー制御部107は、スタータ36が駆動される際に給電モードを通常給電モードに切り換えるものであり、スタータ制御部103は、スタータ36の作動後に運転状態判定部101によって判定されたエンジン回転速度Neが所定値以下であって、給電状態判定部105によって判定された第2のバッテリ80bからのスタータ36への電圧が始動可能電圧(sub_vb_min+α)以上である場合には、スタータ36を停止するものである。このため本実施形態では、第2のバッテリ80bをスタータ36専用のバッテリとして特化し、バッテリ劣化による再始動不良を可及的に抑制することができる。他方、この第2のバッテリ80bが劣化していないにも拘わらず、スタータ36の作動後にエンジン1の回転速度が所定値以下である場合には、スタータ36の破損等が考えられるので、その場合には、スタータ36への給電を中止し、さらにはエンスト処理を実行することによって、信頼性を確保することができる。
また本実施形態では、リレー制御部107は、スタータ36の作動後に運転状態判定部101によって判定されたエンジン回転速度Neが所定値以下であって、給電状態判定部105によって判定された第2のバッテリ80bからのスタータ36への電圧が始動可能電圧(sub_vb_min+α)未満である場合には、給電モードを通常給電モードから増強給電モードに切り換えつつ、スタータ36の駆動を継続するものである。このため本実施形態では、第2のバッテリ80bの劣化に起因してスタータ36の動作不良が考えられる場合に、第1のバッテリ80aによってスタータ36を作動し、フォールトトレランス機能を奏することができる。すなわち、スタータ36の作動後にエンジン回転速度Neが所定値以下である場合に、第2のバッテリ80bからのスタータ36への電圧が始動可能電圧(sub_vb_min+α)未満であるときには、第2のバッテリ80bが劣化または故障しているか、或いは、エンジン1の自着火(Autoignition)に起因するスタータ36のロック(いわゆる温間ロック)が生じていると考えられるので、その場合には、第1のバッテリ80aからスタータ36へ電力を供給することによって、スタータ36の駆動力を増強しているのである。
また本実施形態では、運転状態判定部101は、スタータ36の作動後に運転状態判定部101によって判定されたエンジン回転速度Neが所定値以下であって、給電状態判定部105によって判定された第2のバッテリ80bからのスタータ36への電圧が、所定の劣化判定電圧Vst以下である場合には、アイドルストップ禁止フラグFの値を1に設定することによって、次回以降の自動停止を中止するものである。このため本実施形態では、第2のバッテリ80bの劣化が明らかな運転状態においては、エンジン1の自動停止を中止することにより、エンジン1のアイドリング運転を継続し、始動性を確保することができる。
なお本実施形態では、リレー制御部107は、エンジン1のイグニションキースイッチの接続時にも給電モードを増強給電モードに切り換えるものである。このため本実施形態では、操縦者の操作に基づいてエンジン1を始動する際にも、始動性を向上することができる。
上述した実施形態は、本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、スタータ36の駆動力を高める方法としては、パワーリレー85をスタータ36に接続する方法の他、パワーリレー85に給電される電力(電流/電圧)を直截に高くする方法を採用してもよい。
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。