JP4786633B2 - 生卵黄様加工食品及びその製造方法、並びに生卵黄様加工食品を用いた食品 - Google Patents

生卵黄様加工食品及びその製造方法、並びに生卵黄様加工食品を用いた食品 Download PDF

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本発明は、箸や手で取り扱った際の質感が卵黄膜に包まれたままの生卵黄と酷似した生卵黄様加工食品及びその製造方法、並びに生卵黄様加工食品を用いた食品に関する。
鶏卵等を割卵し、卵白と分離して取り出した生卵黄は、厚さ15μm程度の卵黄膜で卵黄液が包まれた球状物であり、表面を軽く押圧すると反発し、強く押圧すると卵黄膜が破れて崩れる特有の質感を有する。
このような卵黄膜につつまれたまま生卵黄は、鮮やかな黄色い色調であることに加えて、箸等で崩した時に卵黄液が流れ出す状態変化が目を引くことから、食事の楽しさを演出する素材として種々の料理に使用されている。このような料理としては、例えば、卵を卵黄膜を崩さないようにそのまま割り入れた蕎麦やうどん等や、卵白と分けた生卵黄を卵黄膜を崩さずにトッピングしたトロロやユッケ等の料理が挙げられる。
一方、卵黄は、良質の蛋白質や脂質を含み栄養価の高い食品であるものの、高脂血症体質や腎臓病患者等の人は、コレステロールや蛋白質等の摂取量を制限しなければならない場合がある。そのような場合に用いる卵製品として、例えば、特開2001−157560号公報(特許文献1)には、低コレステロール乾燥卵黄を用いた成分調整された卵製品が提案されている。そこで、このような成分調整した卵製品についても、卵黄膜につつまれたままの生卵黄と似た形で提供することができれば、料理素材としての使用の幅が広がり大変好ましい。
従来、卵黄膜につつまれたままの卵黄を模した食品としては、特開平3−43046号公報(特許文献2)に特定量の卵白を含む乳化液をアルギン酸カルシウム皮膜で被覆した卵黄代替物が提案されている。この卵黄代替物は、具体的には、前記乳化液を球状に凍結した後、これをカルシウム溶液及びアルギン酸溶液に順次浸漬して表層をアルギン酸カルシウムで覆うことにより製造される。しかしながら、この特許文献2記載の卵黄代替物は、加熱凝固させて用いることが前提とされており、未凝固の段階ではアルギン酸皮膜が不均一に形成された不自然な外観であり、取り扱いにより壊れ易く生卵黄の代替品としては使用できるものではなかった。
特開2001−157560号公報 特開平3−43046号公報
そこで、本発明は、箸や手で取り扱った際の質感が卵黄膜に包まれたままの生卵黄と酷似した生卵黄様加工食品及びその製造方法、並びに生卵黄様加工食品を用いた食品を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、アルギン酸アルカリ金属水溶液とカルシウムイオン含有水溶液を接触させるとアルギン酸カルシウムが形成する反応を利用し、当該接触反応を半球状カップを用いた特定の方法で行うことにより、アルギン酸カルシウム皮膜で卵黄様液が被覆された生卵黄様物が得られることを見出した。そして、製造条件を調整するならば、意外にも、皮膜が適度な柔軟性を有することと、平板上に静置した場合に底面が平らな扁平球形状を呈することの両者を満たした生卵黄と同じ特性の生卵黄様加工食品が得られ、当該生卵黄様加工食品は、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似したものとなることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、当該皮膜にて粘度が1〜30Pa・sである卵黄様液を内包する生卵黄様加工食品であって、前記皮膜の破断応力が10〜100gであり、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈する生卵黄様加工食品、
(2) 質量が3〜30gである(1)記載の生卵黄様加工食品、
(3) (1)又は(2)に記載の生卵黄様加工食品を用いた食品。
(4) (1)又は(2)に記載の生卵黄様加工食品を液卵白に浸漬した卵液様加工食品、
(5) アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、当該皮膜にて粘度が1〜30Pa・sである卵黄様液を内包する生卵黄様加工食品の製造方法であって、アルギン酸アルカリ金属水溶液中に浸漬した半球状カップ内に、カルシウムイオンを含有する卵黄様液を充填し、次いで、前記卵黄様液を充填した半球状カップを揺動させながらアルギン酸アルカリ金属水溶液中に保持することにより、前記卵黄様液表面に破断応力が10〜100gであるアルギン酸カルシウム皮膜を形成させ、得られる生卵黄様加工食品が平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈するように成形する生卵黄様加工食品の製造方法、
(6) 前記半球状カップに多孔が設けてある(5)記載の生卵黄様加工食品の製造方法、
である。
本発明の生卵黄様加工食品は、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似したものである。そして、内包する卵黄様液として、種々の原料を選択して用いることができることから、栄養成分を調整したり保存性を持たせたりすることが可能である。このような本発明の生卵黄様加工食品を、病院等の事業所給食、レストラン、コンビニエンスストア等に提供することで、これらの食事のメニューの多様化や、付加価値の増大に貢献できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。また、特にことわりのない限り「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
本発明において、生卵黄様加工食品とは、鶏、家鴨、鶉等の卵黄膜につつまれたままの生卵黄を模した加工食品をいう。鶏卵や家鴨卵の生卵黄は、通常10〜30g程度、鶉卵の生卵黄は、通常3〜6g程度であることから、本発明の生卵黄様加工食品の質量は、具体的には、好ましくは3〜30gである。
本発明の生卵黄様加工食品は、アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、当該皮膜にて卵黄様液が内包されていることを特徴とする。このような本発明の生卵黄様加工食品の一実施例としては、図1に示すような生卵黄様加工食品1が挙げられる。図1は、平板4上に静置した状態の生卵黄様加工食品1の平面図及び側面図を示し、図中、符号2はアルギン酸カルシウム皮膜、3は卵黄様液を示している。
本発明において、卵黄膜相当部を構成する前記アルギン酸カルシウム皮膜とは、アルギン酸アルカリ金属とカルシウムイオンの接触反応により形成されるアルギン酸カルシウムを主成分とする生卵黄様加工食品の最外層の薄膜をいう。皮膜の厚さは具体的には後述の製法により、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは100μm〜2mmとしてある。
なお、本発明における前記アルギン酸カルシウム皮膜とは、アルギン酸カルシウムのみからなる皮膜ばかりでなく、アルギン酸カルシウムに加えて他の皮膜構成成分が混在している皮膜も含む。ここで他の皮膜構成成分とは、アルギン酸のカルシウム塩以外の多価金属塩、例えば、マグネシウム塩、アルミニウム塩等や、カルシウム等の二価のアルカリ土類金属でゲル化したペクチン等が挙げられる。
アルギン酸カルシウム皮膜を得るために用いるアルギン酸アルカリ金属とは、多糖類として褐藻類に多く含まれるアルギン酸の塩類をいい、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等をいう。また、本発明においては、カルシウムイオンを供するための水溶性カルシウム塩を用いるが、当該水溶性カルシウム塩としては、食用可能な水に溶解する性質を有するカルシウム塩であれば特に制限は無く、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム或いはこれらの化合物の水和物等が挙げられる。
上述したように本発明の生卵黄様加工食品は、アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、当該皮膜にて卵黄様液が内包されているものであるが、更に、本発明の生卵黄様加工食品は、皮膜が適度な柔軟性を有することと、平板上に静置した場合に底面が平らな扁平球形状を呈することの両者を満たしていて生卵黄と同じ特性であることを特徴とする。すなわち、本発明の生卵黄様加工食品は、前記皮膜の破断応力が10〜100g、好ましくは10〜80gであり、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈することを特徴とする。
ここで、前記皮膜の破断応力とは、FUDOH
RHEO METER NRM-2010J-CW((株)レオテック製)を用い、球形Φ6mmプランジャーを使用し、テーブル上昇速度6cm/分の条件で破断応力を測定した値である。具体的には、測定テーブルに品温20℃の生卵黄様加工食品を載せ、上面の略中心部分の破断応力を測定した値である。
また、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈することは、品温20℃の生卵黄様加工食品を平板上に静置することにより評価できる。ここで、前記扁平球形状とは、図1の平面図に示すように平面視した場合に略円形である扁平な球形状をいい、底面が平らであるとは、図1の側面図に示すように平板4上に静置した場合の生卵黄様加工食品1の底面、つまり、平板4との接触面が平らであることをいう。更に、生卵黄様加工食品1を平板4上に静置した場合の高さとは、前記側面図に示される生卵黄様加工食品1の高さが最も高い部分であるαの長さであり、長径とは生卵黄様加工食品1の最も径が長い部分であるβの長さである。
このように、本発明の生卵黄様加工食品は、皮膜が適度な柔軟性を有することと、平板上に静置した場合に底面が平らな扁平球形状を呈することとの両者を満たしていて生卵黄と同じ特性であることから、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似したものとなる。特に、平板上での高さと長径の比が1:2〜1:2.8であると、箸で挟んだ際の質感が生卵黄と大変よく似たものとなりより好ましい。
これに対して、例えば、後述の試験例に示すように、平板上での高さと長径の比が前記範囲であったとしても、皮膜の破断応力が前記特定範囲より高い場合は、箸で挟んだ際の弾力が強すぎ、箸で押圧した際に崩れ難く、対照の生卵黄と似た質感とならない。一方、皮膜の破断応力が前記特定範囲であったとしても、平板上での高さを1とした際の長径が3より大きい場合は、箸で挟んだ際の弾力が弱すぎて対照の生卵黄と似た質感とならない。
卵黄膜で卵黄液が包まれた生卵黄は、卵黄膜が適度な柔軟性を有し、平板上に静置した場合に底面が平らな扁平球形状を呈する特性を有しているが、アルギン酸カルシウム皮膜で卵黄様液を内包した本発明の生卵黄様加工食品も後述する製法により同様の性質とすることができる。このように同じ特性とすることができる理由は定かではないが、蛋白質を主成分とする卵黄膜と本発明で用いるアルギン酸カルシウム皮膜との間に伸展性や強度等の性質にある程度共通点があるためではないかと考えられる。
一方、本発明における前記卵黄様液とは、生液卵黄を模した溶液をいい、本発明の卵黄様液はその粘度が好ましくは1〜30Pa・sである。粘度を前記特定範囲とすることにより、箸や手で取り扱った際の質感をより生卵黄と酷似したものとすることができる。特に、卵黄様液の粘度が1〜10Pa・sである場合は、箸で挟んだ際の質感が生卵黄と大変よく似たものとなり好ましい。なお、卵黄様液の粘度が1〜30Pa・sであると後述のアルギン酸アルカリ金属液中への浸漬工程において成形がし易い点からも好ましい。
ここで、卵黄様液の粘度は、当該卵黄様液をBH型粘度計で、品温20℃、回転数10rpmの条件で、粘度が0.8Pa・s未満のときローターNo.1、0.8Pa・s以上3Pa・s未満のときローターNo.2、3Pa・s以上7Pa・s未満のときローターNo.3、7Pa・s以上14Pa・s未満のときローターNo.4、14Pa・s以上のときローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。なお、製品(生卵黄様加工食品)1個当たりに含まれる卵黄様液の量は3〜30gであり、量が少なくて前記方法による粘度測定が困難であるが、多数の製品から卵黄様液を取り出して200g程度を集めることにより製品の卵黄様液の粘度を測定することができる。また、前記製品に含まれる卵黄様液の粘度は、粒体を形成する前の原料の卵黄様液の粘度とほぼ変わらないことから、原料の卵黄様液の粘度を測定して評価してもよい。
卵黄様液の粘度を前記範囲に調整するため、本発明の卵黄様液は、好ましくは増粘材を含む。用いる増粘材としては、前記粘度とすることができれば特に制限は無く、例えば、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類、澱粉、ゼラチン等が挙げられる。増粘材の含有量としては、増粘材の種類にもよるが通常卵黄様液に対して好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
また、卵黄様液には、風味を生卵黄に近づける点から液卵を含むことが好ましい。液卵としては、殻付生卵を割卵して溶きほぐして調製した生液全卵、殻付生卵を割卵して卵黄と卵白を分離してこれらをそれぞれ溶きほぐして調製した生液卵黄、生液卵白及びこれらの混合物、並びに乾燥卵を乾燥前の液卵の水分含有量となるように水戻ししたもの等であればよい。特に、卵黄成分を含む液全卵や液卵黄を配合するとより風味がよく好ましい。また、これら液全卵や液卵黄としては、アルコール抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法等により脂質やコレステロールを低減処理されたものを用いてもよく、これにより、栄養成分が調整された生卵黄様加工食品を得ることができる。液卵の配合量としては、風味等を考慮して適宜調整すればよいが増粘材等のその他の原料を配合することを考慮して卵黄様液に対して好ましくは5〜90%程度とすればよい。
更に、本発明の前記卵黄様液には、後述するように、アルギン酸アルカリ金属液中への浸漬工程において、アルギン酸アルカリ金属との接触反応によりアルギン酸カルシウム皮膜を形成するための塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩を含む必要がある。また、卵黄様液には、アルギン酸アルカリ金属液中への浸漬工程において成形がし易いように、卵黄様液の比重をアルギン酸アルカリ金属液よりも高くなるように調整するための後述する糖類等の原料を好ましくは含む。更に、卵黄様液は、液卵黄やクチナシ色素等により黄色い色調としてあると卵黄液に似た外観となり好ましく、また、アルギン酸カルシウム皮膜は半透明であることから、このように卵黄様液が黄色い色調であると本発明の生卵黄様加工食品の外観も黄色い色調になり生卵黄とよく似た外観となって好ましい。
卵黄様液には上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で種々の原料を含んでいてもよい。このような原料としては、例えば、風味や色調の改善、あるいは品質保持等の点から、牛乳やバター等の乳製品、カツオやコンブ等の動植物から抽出したエキス、醤油や食塩やグルタミン酸ナトリウム等の調味料、甘味料、クチナシ色素等の着色料、クエン酸、クエン酸塩等のpH調整材、保存料等の原料が挙げられる。
続いて、上述した本発明の生卵黄様加工食品を代表的な製造方法に基づき説明する。
本発明の生卵黄様加工食品を製するには、まず、増粘材、液卵、水溶性カルシウム塩、糖類、調味料、清水等の任意の原料に水溶性カルシウム塩を加えて混合し、粘度が好ましくは1〜30Pa・s、より好ましくは1〜10Pa・sの水溶性カルシウム塩を含む卵黄様液を製する。ここで、水溶性カルシウム塩は、後述するアルギン酸アルカリ金属液への浸漬工程により被膜を形成するためのカルシウム成分として配合するものであるが、本発明においては、得られる生卵黄様加工食品の皮膜が適度な柔軟性を有するように卵黄様液のカルシウムイオン濃度を調整する。具体的には、後述の試験例に示すように、卵黄様液のカルシウムイオン濃度が高くなるにつれて、アルギン酸カルシウム皮膜が硬くなり、一方、卵黄様液の塩化カルシウム濃度が低くなるにつれて、アルギン酸カルシウム皮膜の柔軟性が増すことを考慮して、卵黄様液のカルシウムイオン濃度を調整する。用いるアルギン酸アルカリ金属液の濃度や浸漬時間にもよるが、水溶性カルシウム塩として塩化カルシウムを用いた場合、皮膜の破断応力を前記範囲とするためには、卵黄様液の塩化カルシウム濃度を好ましくは0.1〜1.7%、より好ましくは0.3〜1.5%とすればよい。
更に本発明の卵黄様液は、後述のアルギン酸アルカリ金属液中への浸漬工程において成形がし易いように、卵黄様液の比重をアルギン酸アルカリ金属液の比重よりも高く調整する必要がある。比重調整は、卵黄様液に比重調整用の例えば、シュクロース、トレハロース、デキストリン、還元デキストリン等の糖類等を配合して行うことができる。比重調整は比重計で両液の比重を測定しながら行ってもよいが事前に卵黄様液をアルギン酸アルカリ金属液中に投入し、当該卵黄様液が沈むかどうかを調べることにより容易に判断することができる。なお、比重差がありすぎても、後述する半球状カップで卵黄様液を略球形に成形し難くなることから、両液の比重差は好ましくは0.001〜0.2、より好ましくは0.005〜0.1である。
次に、得られた卵黄様液をアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属液中に充填ノズル等により放出し、当該卵黄様液の外縁に皮膜を形成させて生卵黄様加工食品を得るが、この際、本発明においては、アルギン酸アルカリ金属液中に浸漬した半球状カップ内に卵黄様液を充填し、当該卵黄様液を塊状として崩れないように半球状カップを好ましくは上下に揺動させて塊状とした卵黄様液をカップ内で成形する。より詳しくは、前記卵黄様液を充填した半球状カップを揺動させながらアルギン酸アルカリ金属水溶液中に保持することにより、前記卵黄様液表面に破断応力が10〜100gであるアルギン酸カルシウム皮膜を形成させ、得られる生卵黄様加工食品が平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈するように成形する。
本発明で用いる前記半球状カップとしては、半球状に窪ませた凹部を有するカップであればその材質等に特に制限はないが、例えば、図2に示すような樹脂性の半球状カップ5が挙げられる。半球状カップは、製造する生卵黄様加工食品の大きさに合わせて、その半球状に窪ませた凹部の大きさを決定すればよい。また、半球状カップとしては、図2に示すように底部及び側壁面に、多数の小孔(多孔)6が設けてあると半球状カップ内への液の出入りによりカップ内のアルギン酸アルカリ金属液の濃度が均質に保たれ易く好ましい。半球状カップの揺動の周期と振幅は、生卵黄様加工食品の大きさにもよるが、好ましくは周期を5〜120秒間、振幅を1〜10cmとすると成形し易く好ましい。
また、卵黄様液をカップ内で成形する際には、得られる生卵黄様加工食品を平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈するように成形する必要があるが、このように成形する方法としては、カップ内で扁平な球形状に成形してもよいが、カップ内では略球形に成形し、これを平板上に静置した場合にその自重で底面が平らな扁平球形状に変形するようにさせてもよい。カップ内に充填する卵黄様液の量に対してカップの大きさが大きい程、扁平な形状となる傾向がある。また、成形する際のカップの揺動周期が短いほどカップ内で成形する生卵黄様加工食品の形状がより球形に近くなる傾向があり、揺動周期が長いほど扁平な球状となる傾向がある。
本発明においては、このように半球状カップを用いることにより、はじめて略球形の形状を有する生卵黄様加工食品を得ることができる。これに対して、後述の試験例に示すように、半球状カップを用いず単に卵黄様液をアルギン酸アルカリ金属液中に放出しただけではヒモ状の塊の生卵黄様加工食品となる。
半球状カップ1個あたりに充填する卵黄様液の量は、製造する生卵黄様加工食品の大きさにより決定すればよく、この充填量と得られる生卵黄様加工食品の質量はほぼ同じ値となる。
また、アルギン酸アルカリ金属液のアルギン酸アルカリ金属濃度は、アルギン酸カルシウム皮膜卵黄様液に含まれるカルシウムイオンとの接触反応によりアルギン酸カルシウム皮膜が形成される程度とすればよい。例えば、アルギン酸アルカリ金属としてアルギン酸ナトリウムを用いる場合は、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.5〜5%とすればよい。
卵黄様液をアルギン酸アルカリ金属液中に放出して皮膜を形成させる際の浸漬時間は、皮膜を充分に形成させるため、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上である。また、浸漬時間は長時間でも構わないが、あまり長すぎても生産効率が悪いことから、好ましくは30分以内、より好ましくは20分以内である。前記浸漬により、厚さが好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは100μm〜2mmのアルギン酸カルシウム皮膜を形成することができる。
なお、従来、このようなアルギン酸アルカリ金属水溶液とカルシウムイオンとの接触反応を利用して比較的大きな粒状物を得る方法としては、上述の特開平3−43046号公報に記載されているように、塩化カルシウムを配合していない卵黄様液を球状に凍結した後、カルシウム溶液及びアルギン酸溶液に順次浸漬して表層をアルギン酸カルシウムで覆うことにより製造する方法が知られているが、この方法では、均一な厚みのアルギン酸カルシウム皮膜が形成し難いため不自然な外観となるばかりでなく、水中から取り出して平板上へ静置しても破れないような球状物を得ることは困難である。また、アルギン酸アルカリ金属水溶液とカルシウムイオンとの接触反応を利用して粒状物を得る手法としては、アルギン酸ナトリウム溶液を塩化カルシウム溶液中に放出して粒状物とする方法も知られているが、この場合、得られた粒状物の内層までアルギン酸カルシウムが形成されてアルギン酸カルシウムが皮膜状とならないため、本願発明へ応用することはできない。
以上のようにして皮膜が形成され略球状に成形された卵黄様液をアルギン酸アルカリ金属水溶液中から好ましくは半球状カップごと取り出すことにより、本発明の生卵黄様加工食品が得られるが、本発明においては、更に、得られた生卵黄様加工食品を清水中に5〜60分程度浸漬して水晒し、内包する卵黄様液中の塩化カルシウム濃度を低下させるとカルシウム成分による苦みを減らすことができ好ましい。塩化カルシウムは比較的低分子であることから、水晒しすることにより、アルギン酸カルシウム皮膜を通して水晒し液中に溶出させることができる。
上述のように本発明の生卵黄様加工食品は、皮膜が適度な柔軟性を有することと、平板上に静置した場合に底面が平らな扁平球形状を呈することとの両者を満たしていて生卵黄と同じ特性であることから、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似している。したがって、卵黄膜に包まれたままの生卵黄と同様に種々の食品と組み合わせて用いることができる。このような本発明の生卵黄様加工食品を用いた食品としては、特に制限はないが、例えば、うどん、そば、焼きそば、ラーメン等の麺類、白飯、チャーハン、石焼ビビンバ等の米飯類、エッグトースト、ハンバーガー、サンドイッチ、ピザ等のベーカリー類、卵スープ、シチュー、カレー、パスタソース等のスープ、ソース類、トロロ、ユッケ、納豆、ハンバーグ、ネギトロ、お好み焼き等が挙げられる。
また、本発明の生卵黄様加工食品は、例えば、液卵白と本発明の生卵黄様加工食品を樹脂性パウチ等に充填密封する等して、生卵黄様加工食品が液卵白に浸漬した状態とすることにより、割卵しただけの卵黄を崩していない卵液と大変良く似た卵液様加工食品が得られる。この卵液様加工食品も、上述した種々の食品と組み合わせて用いることができる。
以下、本発明の実施例、比較例及び試験例により、本発明を更に説明する。
[実施例1]Mサイズ鶏卵の卵黄を模した生卵黄様加工食品
(1)卵黄様液の調製
卵黄様液を下記配合で調製した。調製は配合原料をミキサーで撹拌混合することによって行った。得られた卵黄様液の粘度は5.5Pa・sであり、比重は1.03であった。また、得られた卵黄様液は、黄色い色調であった。
<卵黄様液の配合>
液卵黄※ 70.0部
植物油脂 6.0部
α化澱粉 4.0部
還元デキストリン 1.0部
醸造酢 0.5部
キサンタンガム 0.5部
塩化カルシウム 0.4部
清水 17.6部
―――――――――――――
合計 100.0部
※ストレーナーで卵殻片等を除去したもの。
(2)生卵黄様加工食品の調製
まず、半球状の凹部を有し、底部及び側壁面に多孔(径2mm)を設けた図2に示す形状の半球状カップ(凹部の口径40mm、深さ30mm)を用意した。この半球状カップを1%アルギン酸ナトリウム水溶液(比重1.00)を満たした水槽中に浸漬し、当該半球状カップ内に、卵黄様液を充填機(ノズル径、10mm)で18g充填した。次いで、卵黄様液を塊状として崩れないように半球状カップをアルギン酸ナトリウム水溶液中で上下に揺動(周期20秒、振幅5cm)することにより、半球状カップ内で卵黄様液を略球形に成形した。続いて、成形物をアルギン酸ナトリウム水溶液中に浸漬した状態のまま、ノギスで短径及び長径を測定した後、直ちに卵黄様液を半球状カップごと取り出し、アルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された生卵黄様加工食品を得た。卵黄様液がアルギン酸ナトリウム水溶液中に浸漬された時間は5分間であった。生卵黄様加工食品のアルギン酸ナトリウム水溶液中での短径は30mm、長径は33mmであった。また、得られた生卵黄様加工食品の質量は18gであり、皮膜の厚さは約1mmであった。更に、得られた生卵黄様加工食品は、黄色い色調であった。
[実施例2]
実施例1において、用いる半球状カップの凹部の口径と深さをそれぞれ50mm及び15mmに変えた他は、実施例1と同様にしてアルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された扁平球形状の生卵黄様加工食品を得た。生卵黄様加工食品のアルギン酸ナトリウム水溶液中での短径は21mm、長径は37mmであった。また、得られた生卵黄様加工食品の質量は18gであり、皮膜の厚さは約1mmであった。更に、得られた生卵黄様加工食品は、黄色い色調であった。
[比較例1]
実施例1において、卵黄様液に塩化カルシウムに換えてアルギン酸ナトリウムを配合した他は同様にして卵黄様液を得た。次に、1%アルギン酸ナトリウム水溶液に換えて1%塩化カルシウム水溶液を満たした水槽中で半球状カップを用いて前記卵黄様液を成形した他は、実施例1と同様にして略球形の生卵黄様加工食品を得た。なお、得られた生卵黄様加工食品は内層までゲル化が進んでしまいアルギン酸カルシウムは皮膜状とはならなかった。
[比較例2]
実施例2において、卵黄様液の塩化カルシウム濃度を2%に増やし、その増加分は清水の配合量を増やして補正した他は実施例2と同様にしてアルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された扁平球形状の生卵黄様加工食品を得た。
[比較例3]
実施例1において、卵黄様液をアルギン酸ナトリウム水溶液中に放出した際に半球状カップを用いない他は、実施例1と同様にして生卵黄様加工食品を得た。なお、得られた生卵黄様加工食品はアルギン酸ナトリウム水溶液中でヒモ状であった。
[比較例4]
実施例1において塩化カルシウムを配合せずその減少分は清水の配合量を増やして補正した他は同様にして卵黄様液を得た。得られた卵黄様液18gを球型の合わせ形に充填後凍結して質量18gの冷凍球状物を得た。得られた冷凍球状物を2%濃度の塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬し、次いで、1%濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液に10秒間浸漬した後、取り出して略球形の生卵黄様加工食品を得た。なお、得られた生卵黄様加工食品はアルギン酸ナトリウム水溶液中で略球形であったが、アルギン酸カルシウム皮膜が不均一に形成されていて表面に凹凸を生じ不自然な外観であった。
[比較例5]
実施例1において、用いる半球状カップの凹部の口径と深さをそれぞれ70mm及び15mmに変えた他は、実施例1と同様にしてアルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された扁平球形状の生卵黄様加工食品を得た。
[試験例1]
まず、以上の実施例及び比較例で製造した生卵黄様加工食品と比較するために、対照品の生卵黄を用意した。すなわち、Mサイズの殻付き鶏卵を割卵して卵黄膜が破れないようにセパレータで丁寧に卵白と分けて生卵黄を取り出した。
次に、実施例1、2及び比較例1〜5で得られた生卵黄様加工食品、並びに対照の生卵黄について、平板上での高さと長径の比を下記の方法で測定した。また、上述の実施形態に記載した方法により、生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力を測定した。
続いて、各生卵黄様加工食品について、生卵黄を対照として、箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さを下記の評価基準で評価した。また、図3に示すように指先でつまんで3秒間吊持ち可能であるかを下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
<平板上での生卵黄の高さと長径の測定方法>
水平面に保った表面が平滑な樹脂性の平板上に、生卵黄様加工食品又は対照の生卵黄を静置し、その高さを「卵白高、卵黄高測定器」で測定し、長径をノギスで測定した。
表1より、皮膜の破断応力が10〜100gであることと、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈することの両者を満たす点から生卵黄と同じ特性を有する実施例1及び2の生卵黄様加工食品は、箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さが対照の生卵黄と同程度であり、また、対照の生卵黄と同様に指先でつまんで吊持ち可能であったことから、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似しているといえる。
これに対して、平板上での高さを1とした際の長径が3より大きい場合(比較例5)は、皮膜の破断応力が前記特定範囲であったものの、箸で挟んだ際の弾力が弱すぎて、対照の生卵黄と似た質感とならなかった。また、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状となったとしても、皮膜の破断応力が前記特定範囲より高い場合(比較例2)は、箸で挟んだ際の弾力が強すぎ、箸で押圧した際に崩れ難く、対照の生卵黄と似た質感とならなかった。
一方、アルギン酸ナトリウムを配合した卵黄様液を塩化カルシウム溶液中で成形した比較例1の卵黄様食品は、内層までゲル化が進んでおり、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と異なるものであった。また、卵黄様液をアルギン酸ナトリウム水溶液中に放出した際に、半球状カップを用いなかった比較例3の生卵黄様加工食品は、ヒモ状の形状となった。更に、塩化カルシウムを配合していない卵黄様液を用い、これを球状に凍結した後、カルシウム溶液及びアルギン酸溶液に順次浸漬して表層をアルギン酸カルシウムで覆うことにより製造した比較例4の生卵黄様加工食品は、平板上へ静置した際に破れてしまった。
[試験例2]
本試験例においては、卵黄様液の塩化カルシウム濃度と皮膜の硬さについて調べるために以下の試験を行った。すなわち、実施例1において、卵黄様液の塩化カルシウム濃度をそれぞれ0.05%、0.1%、0.3%、0.4%、1%及び2%に変え、その減少分あるいは増加分は清水の配合量で補正した他は同様にして、塩化カルシウム濃度の異なる6種類の卵黄様液を得た。次に、これらの卵黄様液を用いて、実施例1と同様にして6種類の生卵黄様加工食品を得た。なお、これらの生卵黄様加工食品は、いずれもアルギン酸ナトリウム水溶液中で略球形であった。また、得られた生卵黄様加工食品は、いずれも質量が18g、皮膜の厚さが約1mmであり、黄色い色調であった。
続いて、試験例1と同様に、各生卵黄様加工食品の平板上での高さと長径の比及び生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力を測定した。
更に、試験例1と同様にして、生卵黄を対照として箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さ、更に、指先でつまんで吊持ち可能であるかを評価した。結果を表2に示す。
表2より、卵黄様液の塩化カルシウム濃度が高くなるにつれて、アルギン酸カルシウム皮膜が硬くなり、一方、卵黄様液の塩化カルシウム濃度が低くなるにつれて、アルギン酸カルシウム皮膜の柔軟性が増すことがわかる。つまり、卵黄様液の塩化カルシウム濃度を変えることにより、アルギン酸カルシウム皮膜の柔軟性、つまり、生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力が調整できることがわかる。
また、表2より、皮膜の破断応力が10〜100gであり、平板上で高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈する本発明の生卵黄様加工食品(試験品2−2〜2−5)は、箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さが対照の生卵黄と同程度であり、また、対照の生卵黄と同様に指先でつまんで吊持ち可能であって、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似しているといえる。
[試験例3]
本試験例においては、卵黄様液の粘度について調べるために以下の試験を行った。すなわち、実施例1において、卵黄様液のキサンタンガム濃度をそれぞれ0%、0.1%、0.5%、1%、2%及び3%に変え、その減少分あるいは増加分は清水の配合量で補正した他は同様にして、粘度の異なる6種類の卵黄様液を得た。次に、これらの卵黄様液を用いて、実施例1と同様にして6種類の生卵黄様加工食品を得た。なお、これらの生卵黄様加工食品は、いずれもアルギン酸ナトリウム水溶液中で略球形であった。また、得られた生卵黄様加工食品は、いずれも質量が18g、皮膜の厚さが約1mmであり、黄色い色調であった。
続いて、試験例1と同様に、各生卵黄様加工食品の平板上での高さと長径の比及び生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力を測定した。
更に、試験例1と同様にして、生卵黄を対照として箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さ、更に、指先でつまんで吊持ち可能であるかを評価した。結果を表3に示す。
表3より、卵黄様液の粘度が好ましくは1〜30Pa・sである本発明の生卵黄様加工食品(試験品3−2〜3−5)は、箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さが対照の生卵黄と同程度であり、また、対照の生卵黄と同様に指先でつまんで吊持ち可能であって、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似していた。特に、卵黄様液の粘度が1〜10Pa・sである本発明の生卵黄様加工食品(試験品3−2〜3−4)は、箸で挟んだ際の質感が対照と大変似ていてより好ましかった。
これに対して、粘度が30Pa・sよりも高く、平板上での高さを1とした際の長径が1.8より小さくく球形に近い場合(試験品3−6)は、箸で挟んだ際の弾力が強すぎて対照の生卵黄と似た質感とならなかった。一方、粘度が1Pa・sよりも低い場合(試験品3−1)は、箸で挟んだ際の質感がやや対照の生卵黄と異なった。
[試験例4]
実施例1において、半球状カップの大きさ及び卵黄様液の充填量を表4に示すものに変えた他は同様にして、アルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された4種類の略球状の生卵黄様加工食品を得た。なお、卵黄様液の質量から、それぞれ試験品4−1は鶉卵の卵黄を模した生卵黄様加工食品、試験品4−2の生卵黄様加工食品はSSサイズ鶏卵の卵黄を模した生卵黄様加工食品、試験品4−3の生卵黄様加工食品はMサイズ鶏卵の卵黄を模した生卵黄様加工食品である。また、得られた生卵黄様加工食品は、いずれも皮膜の厚さが約1mmであり、黄色い色調であった。
続いて、試験例1と同様に、各生卵黄様加工食品の平板上での高さと長径の比及び生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力を測定した。
更に、試験例1と同様にして、生卵黄を対照として箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さ、更に、指先でつまんで吊持ち可能であるかを評価した。結果を表5に示す。
表5より、皮膜の破断応力が10〜100gであり、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈する点から生卵黄と同じ特性を有する本発明の生卵黄様加工食品(試験品4−1〜4−4)は、いずれも箸で挟んだ際の弾力及び崩れ易さが対照の生卵黄と同程度であり、また、対照の生卵黄と同様に指先でつまんで吊持ち可能であったことから、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似しているといえる。
[実施例4]
卵黄様液を下記配合で調製した。調製は配合原料をミキサーで撹拌混合することによって行った。得られた卵黄様液の粘度は8Pa・s、比重は1.04であり、黄色い色調であった。実施例2において、卵黄様液としてこの卵黄様液を用いた他は同様にしてアルギン酸カルシウム皮膜により卵黄様液が内包された扁平球形状の生卵黄様加工食品を得た。なお、生卵黄様加工食品のアルギン酸ナトリウム水溶液中での短径は28mm、長径は37mmであった。また、得られた生卵黄様加工食品の質量は18g、皮膜の厚さは約1mmであり、黄色い色調であった。
<卵黄様液の配合>
液卵白※ 73.0部
ゼラチン 5.0部
α化澱粉 2.0部
醸造酢 0.5部
塩化カルシウム 1.5部
クチナシ色素 0.1部
清水 17.9部
――――――――――――
合計 100.0部
※ストレーナーで卵殻片等を除去したもの。
得られた生卵黄様加工食品は、箸や手で取り扱った際の質感が生卵黄と酷似していて好ましかった。なお、得られた生卵黄様加工食品を平板上に静置ところ、底面が平らな扁平球形状となった。また、平板上での高さと長径の比を測定したところ、高さと長径の比が1:2.5であった。更に、生卵黄様加工食品の皮膜の破断応力を測定したところ、78gであった。
[実施例5]
液卵白(ストレーナーで卵殻片等を除去したもの)37gと実施例1で得られた生卵黄様加工食品を樹脂製パウチに充填密封して生卵黄様加工食品が液卵白中に浸漬した状態とすることにより、容器詰めの卵液様加工食品を得た。得られた卵液様加工食品は、割卵しただけの卵黄を崩していない卵液と大変良く似たものであった。
次に、得られた容器詰めの卵液様加工食品を5℃で3日間保存した後に開封して、かけうどんの上に盛り付け、生卵黄様加工食品を箸で崩しながら食したところ、割卵しただけの卵黄を崩していない生卵液と同様に大変美味しいものであった。また、生卵黄様加工食品は、箸で触れたり崩したりした際の質感が生卵黄と酷似していた。
[実施例6]
トロロ200gを樹脂製の成形容器に入れ、その上に実施例1で得られた生卵黄様加工食品を載せた後、樹脂製の蓋を被せて容器詰めの惣菜を得た。得られた容器詰めの惣菜を5℃で3日間保存した後に開封して、生卵黄様加工食品を箸で崩しながら食したところ、生卵黄を用いたものと同様に大変美味しいものであった。また、生卵黄様加工食品は、箸で触れたり崩したりした際の質感が生卵黄と酷似していた。
本発明の一実施例である生卵黄様加工食品を平板上に静置した状態を示す平面図及び側面図。 半球状カップの一実施例を示す斜視図。 実施例1で得られた生卵黄様加工食品を吊持ちした状態を示す図面代用写真。
符号の説明
1.生卵黄様加工食品
2.アルギン酸カルシウム皮膜
3.卵黄様液
4.平板
5.半球状カップ
6.多数の小孔
7.支軸

Claims (6)

  1. アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、該皮膜にて粘度が1〜30Pa・sである卵黄様液を内包する生卵黄様加工食品であって、前記皮膜の破断応力が10〜100gであり、平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈することを特徴とする生卵黄様加工食品。
  2. 質量が3〜30gである請求項記載の生卵黄様加工食品。
  3. 請求項1又は2に記載の生卵黄様加工食品を用いた食品。
  4. 請求項1又は2に記載の生卵黄様加工食品を液卵白に浸漬した卵液様加工食品。
  5. アルギン酸カルシウム皮膜からなる卵黄膜相当部を有し、該皮膜にて粘度が1〜30Pa・sである卵黄様液を内包する生卵黄様加工食品の製造方法であって、アルギン酸アルカリ金属水溶液中に浸漬した半球状カップ内に、カルシウムイオンを含有する卵黄様液を充填し、次いで、前記卵黄様液を充填した半球状カップを揺動させながらアルギン酸アルカリ金属水溶液中に保持することにより、前記卵黄様液表面に破断応力が10〜100gであるアルギン酸カルシウム皮膜を形成させ、得られる生卵黄様加工食品が平板上に静置した場合に高さと長径の比が1:1.8〜3の底面が平らな扁平球形状を呈するように成形することを特徴とする生卵黄様加工食品の製造方法。
  6. 前記半球状カップに多孔が設けてある請求項記載の生卵黄様加工食品の製造方法。
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