JP4786026B2 - 高寿命電場発光蛍光体およびそれを用いた電場発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高寿命電場発光蛍光体とそれを用いた電場発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電場発光素子は、誘電体中に電場発光蛍光体を分散させた発光層の両側に電極を配置し、その少なくとも一方を透明電極とした構造を有しており、これら電極間に交流電圧を印加することにより発光させる素子である。このような電場発光素子の主な用途としては、各種ディスプレイデバイスのバックライトが挙げられ、さらに電場発光素子自体でディスプレイデバイスを構成することも行われている。
【0003】
電場発光素子に用いられる電場発光蛍光体としては、硫化亜鉛を母体とし、これに付活剤として銅やマンガン、さらに共付活剤として塩素や臭素を含有させたものが一般的である。硫化亜鉛に付活剤として銅を含有させた蛍光体(ZnS:Cuなど)は、青色ないし青緑色発光の電場発光蛍光体として用いられている。また、硫化亜鉛に付活剤としてマンガンを含有させた蛍光体(ZnS:Cu,Mnなど)は、橙色発光の電場発光蛍光体として用いられている。
【0004】
青色ないし青緑色発光の電場発光蛍光体は、その発光色を直接利用して、例えば携帯電話の表示部のバックライトとして用いられたり、また赤色染料を添加して白色発光の発光装置(ELパネル)などとして用いられており、携帯電話や携帯型情報端末などの普及に伴って、その使用用途は拡大している。また、橙色発光の電場発光蛍光体は車載用のディスプレイデバイスなどに使用されている。
【0005】
ところで、従来の硫化亜鉛系の電場発光蛍光体を用いた発光素子は、寿命特性が他の発光素子に比べて劣り、例えばディスプレイデバイスに求められる要求特性を必ずしも満足しているとはいえない。このようなことから、硫化亜鉛系の電場発光蛍光体の寿命特性などを改善するための手法が種々提案されている。例えば、特開昭57-145174号公報には、上述したような付活剤や共付活剤の添加量を最適化することによって、硫化亜鉛系電場発光蛍光体の効率や寿命を向上させる方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、硫化亜鉛系電場発光蛍光体の寿命特性を向上させるための手法が種々提案されているが、従来の手法では現状の寿命に対する要求レベルを満足させることができなくなりつつある。特に、最近のディスプレイデバイスには、明るさや寿命をさらに向上させることが求められていることから、それに用いられる電場発光蛍光体の寿命特性をより一層高めることが課題とされている。
【0007】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、硫化亜鉛を母体とする蛍光体の電場発光用途における寿命特性を向上させた高寿命電場発光蛍光体を提供することを目的としており、さらにそのような高寿命電場発光蛍光体を用いることによって、長寿命化を達成した電場発光素子を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、請求項1に記載したように、硫化亜鉛を蛍光体母体とし、付活剤としての銅と、融剤として用いた塩素を含む蛍光体粉体を具備する電場発光蛍光体において、前記蛍光体粉体は、50%D値で表される平均粒子径が18μm以上30μm以下であり、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分が0.7%以下の粒度分布を有し、かつ、粒子径3.9μm未満の成分を実質的に含まないことを特徴としている。本発明の高寿命電場発光蛍光体は、さらに請求項2に記載したように、蛍光体粉体の粒度分布において粒子径3.9μm以上5.5μm未満の成分が0.2%以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、粒子径が3.9μm以上7.8μm未満という微細な蛍光体粒子の比率を低減したものである。このような微粒子成分が特に電場発光素子の寿命特性に悪影響を及ぼすことから、本発明では蛍光体粉体に例えば分級操作を施すことによって、粒子径が3.9μm以上7.8μm未満という微粒子成分の比率を低減している。これによって、そのような電場発光蛍光体を用いて構成した電場発光素子の長寿命化を実現することが可能になる。
【0012】
本発明の電場発光素子は上記した本発明の高寿命電場発光蛍光体を用いたものであり、請求項3に記載したように、本発明の高寿命電場発光蛍光体を含む発光層を具備することを特徴としている。このような電場発光素子の具体的な構成としては、請求項4に記載したように、発光層の一方の主面に沿って反射絶縁層を介して一体的に配置された背面電極層と、発光層の他方の主面に沿って一体的に対向配置された透明電極層とを具備する構成が挙げられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、硫化亜鉛を蛍光体母体とし、これに付活剤として銅およびマンガンから選ばれる少なくとも1種を含有させた組成を有するものである。なお、本発明の電場発光蛍光体は、融剤として用いた塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0015】
上記した硫化亜鉛を母体とする電場発光蛍光体は、銅およびマンガンから選ばれる付活剤の種類により発光色が制御される。すなわち、銅を付活剤として含有させた硫化亜鉛系蛍光体、例えばZnS:Cu蛍光体は、青色ないし青緑色発光の電場発光蛍光体として使用される。この際、銅は硫化亜鉛からなる蛍光体母体に対して0.001〜0.1質量%の範囲で含有させることが好ましい。なお、塩素、臭素、ヨウ素などの含有量は0.1質量%以下とすることが好ましく、さらには0.001〜0.1質量%の範囲とすることがより好ましい。上記したような量の付活剤を硫化亜鉛に含有させることによって、発光効率や発光色度に優れた青色ないし青緑色発光の電場発光蛍光体が得られる。
【0016】
また、銅およびマンガンを付活剤として含有させた硫化亜鉛系蛍光体、例えばZnS:Cu,Mn蛍光体は、橙色発光の電場発光蛍光体として使用される。この際、銅およびマンガンは硫化亜鉛からなる蛍光体母体に対し合計量で0.001〜0.1質量%の範囲で含有させることが好ましい。なお、塩素、臭素、ヨウ素などの含有量は0.1質量%以下とすることが好ましく、さらには0.001〜0.1質量%の範囲とすることがより好ましい。上記したような量の付活剤を硫化亜鉛に含有させることによって、発光効率や発光色度に優れた橙色発光の電場発光蛍光体が得られる。
【0017】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、上述したような硫化亜鉛系蛍光体粉体の粒度分布を、粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の成分の累積体積比が0.7%以下となるようにしている。すなわち、粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の蛍光体粒子(微粒子成分)は、特に電場発光素子の寿命特性に悪影響を及ぼすことから、本発明ではそのような微粒子成分の比率を0.7%以下としている。
【0018】
例えば、電場発光蛍光体を用いて電場発光素子を構成した場合、蛍光体の微粒子成分は印加される交流電場により熱を持ちやすく、この熱によるダメージにより早期に特性が劣化しやすい。従って、このような微粒子成分(粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の成分)の比率を0.7%以下とすることによって、それを用いて構成した電場発光素子の寿命特性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
上述した粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の蛍光体粒子成分の比率は0.6%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.5%以下である。また、このような微粒子成分のうち、特に粒子径が3.9μm以上5.5μm未満の成分の比率を0.2%以下とすることが好ましい。粒子径が3.9μm以上5.5μm未満の成分の比率は0.1%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは実質的に0%とすることである。上記したような条件を満足させることによって、電場発光蛍光体の寿命特性をより一層向上させることができる。なお、粒子径が3.9μm未満の蛍光体粒子成分については、同様な理由から実質的に含まないことが好ましい。
【0020】
本発明の電場発光蛍光体は上述したように、特に寿命低下原因となっている微粒子成分を低減することで、電場発光素子の長寿命化を図ったものであり、例えば平均粒子径などは特に限定されるものではないが、寿命特性のより一層の改善や輝度特性の向上などを図る上で、50%D値で表される平均粒子径を18μm以上30μm以下とすることが好ましい。ここで、50%D値とは粒度分布において累積体積が50%となったときの粒子径を示すものである。
【0021】
電場発光蛍光体の50%D値(平均粒子径)が30μmを超えると、輝度の低下が著しくなるおそれがある。一方、50%D値(平均粒子径)が18μm未満になると寿命特性が低下するおそれがあり、微粒子成分を低減したことによる高寿命化効果が損なわれることになる。電場発光蛍光体の50%D値(平均粒子径)は、より一層の長寿命化を図る際には25〜30μmの範囲とすることが好ましく、また微粒子成分の低減による高寿命化効果を得た上で、輝度特性を高めるためには18〜27μmの範囲とすることが好ましい。
【0022】
なお、本発明においては、粒子にレーザ光を当てたときに起こる光の散乱現象を利用した、LEEDS & NORTHRUP社製のマイクロトラックII粒度分析計を用いて、蛍光体粉末の粒度分布を測定し、この粒度分布に基づいて粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の蛍光体粒子成分などの比率、さらに50%D値で表される平均粒子径を求めるものとする。
【0023】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、例えば以下に示す方法により作製される。
すなわち、まず粒子径が1〜3μm程度の硫化亜鉛粉末に所定量の純水を加えてスラリー状とし、これに所定量の硫酸銅や炭酸マンガンなどの付活剤原料を添加して混合する。このようなスラリーを乾燥した後、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化ナトリウムなどの結晶成長剤を添加し、さらに十分に混合する。結晶成長剤(融剤)として塩化物を用いた場合には、微量の塩素を含む電場発光蛍光体が得られる。臭素やヨウ素を含有させる場合には、結晶成長剤(融剤)として臭化物やヨウ化物を使用すればよい。
【0024】
次に、上記した混合物を石英るつぼに充填し、空気中にて1100〜1200℃の温度で3〜8時間焼成する。この焼成物を必要に応じて洗浄し、酸化亜鉛を数%混合した後、石英るつぼを用いて空気中にて600〜800℃×1〜2時間の条件で焼成する。この焼成物を純水中に分散し、数回洗浄する。さらに、塩酸洗浄や純水による中和洗浄を必要に応じて行った後、ろ過、乾燥することによって、硫化亜鉛系電場発光蛍光体を作製する。このような電場発光蛍光体粉末に対して分級操作を施し、粒子径が7.8μm未満の成分を除去することによって、本発明の高寿命電場発光蛍光体が得られる。
【0025】
蛍光体粉末に対する分級操作は、例えば湿式分級、サイクロン分級、篩い分けなどにより実施される。例えば、焼成並びに洗浄、乾燥などを行って得た電場発光蛍光体粉末を325メッシュの篩で篩い分けし、さらにこの325メッシュの篩を通過した粉末を635メッシュの篩で再篩いする。この635メッシュの篩の上部に残留した蛍光体粉末を利用することによって、粒子径が7.8μm未満の成分が除去された電場発光蛍光体、すなわち粒子径が3.9μm以上7.8μm未満の微粒子成分の比率を0.7%以下とした電場発光蛍光体を得ることができる。
【0026】
本発明の高寿命電場発光蛍光体は、例えば図1に示すような電場発光素子1の発光層2に用いられる。図1に示す電場発光素子1は、上述した本発明の高寿命電場発光蛍光体粉体を例えばシアノエチルセルロースのような高誘電率を有する有機高分子バインダ(有機誘電体)中に分散含有させた発光層2を有している。
【0027】
発光層2の一方の主面上には、例えばTiO2やBaTiO3などの高反射性無機酸化物粉末を、シアノエチルセルロースなどの高誘電率を有する有機高分子バインダ中に分散含有させた反射絶縁層3が積層形成されている。Al箔のような金属箔や金属膜からなる背面電極層4は、反射絶縁層3を介して、発光層2の一方の主面上に一体的に配置されている。
【0028】
発光層2の他方の主面上には、ポリエステル(PET)フィルムのような透明絶縁フィルム上にITO膜などを被着形成した透明電極層(透明電極シート)5が一体的に配置されている。透明電極シート5は、電極膜(ITO膜)が発光層2と対向するように配置されている。
【0029】
これら透明電極層5、発光層2、反射絶縁層3および背面電極層4を例えば熱圧着することによって、電場発光素子1が構成されている。なお、図示を省略したが、背面電極層4および透明電極層5からはそれぞれ電極が引き出されており、これら電極から発光層2に交流電圧が印加される。
【0030】
上述した積層体(熱圧着体)からなる電場発光素子1は、透明なパッケージングフィルム6で覆われている。パッケージングフィルム6には、例えば水湿透過率が小さいポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィルムのような防湿フィルムが用いられる。透明電極層3側には必要に応じて、6-ナイロンフィルムなどの吸湿性フィルム7が配置される。そして、これらパッケージングフィルム6のはみだし部を熱圧着して電場発光素子1を封止することによって、電場発光パネル(ELパネル)が構成される。
【0031】
このような電場発光素子1およびそれを用いたELパネルによれば、発光層2中の電場発光蛍光体粉体、すなわち硫化亜鉛系の青色ないし青緑色発光の電場発光蛍光体、または橙色発光の電場発光蛍光体が寿命特性に優れることから、長寿命化を実現することが可能となる。
【0032】
さらに、電場発光素子およびそれを用いたELパネルを作製するにあたって、PCTFEフィルムのような防湿フィルムを使用せずに、電場発光蛍光体粒子の個々の表面に対して防湿処理を行うようにしてもよい。本発明は金属酸化物や金属窒化物、あるいは樹脂などによる防湿処理を施した電場発光蛍光体に対しても適用可能である。すなわち、本発明の電場発光蛍光体は、アルミナ、シリカ、チタニアなどから選ばれる少なくとも1種からなる保護膜(防湿膜)を有していてもよい。このような構成においても長寿命化を達成することができる。
【0033】
図2は、蛍光体粒子表面に上記したような保護膜を形成した電場発光蛍光体を用いた電場発光素子11を示している。図2に示す電場発光素子11は、個々の粒子が保護膜で覆われた本発明の高寿命電場発光蛍光体を有機高分子バインダ中に分散含有させた発光層12を有している。保護膜で覆われた電場発光蛍光体粒子は、それ自体で防湿性を有しているため、吸湿フィルムや防湿フィルムを用いることなく、電場発光蛍光体の水分による発光特性の低下を防ぐことができる。
【0034】
図1に示した電場発光素子1と同様に、発光層12の一方の主面上には、反射絶縁層13を介して背面電極層14が一体的に積層されている。発光層12の他方の主面上には、透明電極層(透明電極シート)15が一体的に積層されている。背面電極層14は金属粉末やカーボン粉末などをバインダと共に混合してスラリー状とし、このスラリーを例えばスクリーン印刷することによって形成してもよい。背面電極層14のさらに裏面側には、必要に応じて、発光素子の背面側の絶縁性を確保する背面絶縁層(図示せず)が積層形成される。
【0035】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0036】
比較例1
まず、粒子径が約1〜3μmの硫化亜鉛粉末100gに1L(リットル)の純水を加えてスラリー状とし、これに硫酸銅(5水和物)0.25gと塩化マグネシウム40g、塩化バリウム40g、塩化ナトリウム20gを結晶成長剤(融剤)として添加し、十分に混合した。
【0037】
次に、上記したスラリー状混合物を乾燥させた後、石英るつぼに充墳し、空気中にて1150℃の温度で4時間焼成した。この焼成物に洗浄、乾燥処理を施した後、酸化亜鉛を焼成物300gに対して15g混合し、この混合物を石英るつぼに充填して、空気中にて750℃の温度で1.5時間焼成した。この焼成物を純水中に分散して3回洗浄した。さらに、pH=1.5の条件での塩酸洗浄および純水による中和洗浄を行い、ろ過、乾燥した後、325メッシュの篩で篩い分けして電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を得た。なお、このZnS:Cu蛍光体には融剤として用いた塩素が微量含まれる。
【0038】
上記した硫化亜鉛系電場発光蛍光体の粒度分布をLEEDS & NORTHRUP社製のマイクロトラックII粒度分析計を用いて測定した。その結果を表1および図3に示す。この粒度分布から粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めたところ、その累積体積比率は0.8%であった。また、粒度分布から50%D値を求めたところ、50%D値は26.0μmであった。このようにして得た電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を、後述する特性評価に供した。
【0039】
実施例1
比較例1と同様にして、まず50%D値が26.0μmの電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を作製した。この蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、この635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu)として得た。このZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。その結果を表1および図3に示す。
【0040】
上記した粒度分布から粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めたところ、その累積体積比率は0.5%であった。また、粒度分布から50%D値を求めたところ、50%D値は28.2μmであった。このようにして得たZnS:Cu蛍光体を、後述する特性評価に供した。
【0041】
実施例2
比較例1と同様にして、まず50%D値が26.0μmの電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を作製した。この蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、この635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu)として得た。このZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。その結果を表1および図3に示す。
【0042】
上記した粒度分布から粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めたところ、その累積体積比率は0.4%であった。また、粒度分布から50%D値を求めたところ、50%D値は27.3μmであった。このようにして得たZnS:Cu蛍光体を、後述する特性評価に供した。
【0043】
実施例3〜6
比較例1と同様にして作製した電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を325メッシュで篩い分けした後、これら各蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、これら635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、それぞれ本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu)として得た。このようにして得た各ZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。また、各ZnS:Cu蛍光体を下記に示す特性評価に供した。
【0044】
上記した実施例1〜6および比較例1による各ZnS:Cu蛍光体を用いて電場発光素子を作製し、その輝度および寿命特性を測定した。すなわち、各蛍光体粉末とエポキシ樹脂系バインダとを体積比が7:3となるように混合し、これを透明電極シート上に塗布して発光層を形成し、さらに反射絶縁層と背面電極層を形成することによって、電場発光素子をそれぞれ作製した。これら各電場発光素子を100V,400Hzの条件で動作させ、輝度が初期輝度の1/2になった時点を寿命時間として評価した。なお、電場発光素子の輝度測定環境は、温度20℃、湿度60%の雰囲気とした。これらの値を表1に併せて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかなように、電場発光蛍光体中の微粒子成分の比率を低減した実施例1〜6では、電場発光素子の輝度寿命が比較例1(従来品)に比べて大幅に向上していることが分かる。
【0047】
比較例2
上記した比較例1において、硫化亜鉛粉末を含むスラリーに添加する結晶成長剤(融剤)を臭化物とする以外は、比較例1と同様にして、電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を作製した。このZnS:Cu蛍光体は325メッシュで篩い分けしたものである。なお、このZnS:Cu蛍光体には融剤として用いた臭素が微量含まれる。
【0048】
このようにして得たZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。この粒度分布から求めた50%D値は26.2μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めた。その結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表2に示す。なお、電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0049】
実施例6〜9
比較例2と同様にして作製した電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を325メッシュで篩い分けし、50%D値が24.3μm、24.5μm、23.1μmの蛍光体粉末をそれぞれ得た後、これら各蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、これら635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、それぞれ本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu)として得た。
【0050】
このようにして得た各ZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。各粒度分布から求めた50%D値は、それぞれ27.3μm、28.1μm、29.2μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率をそれぞれ求めた。それらの結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表2に示す。なお、各電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0051】
【表2】
【0052】
比較例3
上記した比較例1において、硫化亜鉛粉末を含むスラリーに添加する結晶成長剤(融剤)をヨウ化物とする以外は、比較例1と同様にして、電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を作製した。このZnS:Cu蛍光体は325メッシュで篩い分けしたものである。なお、このZnS:Cu蛍光体には融剤として用いたヨウ素が微量含まれる。
【0053】
このようにして得たZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。この粒度分布から求めた50%D値は25.0μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めた。その結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表3に示す。なお、電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0054】
実施例10〜12
比較例3と同様にして作製した電場発光蛍光体(ZnS:Cu)を325メッシュで篩い分けした後、各蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、これら635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、それぞれ本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu)として得た。
【0055】
このようにして得た各ZnS:Cu蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。各粒度分布から求めた50%D値は、それぞれ27.1μm、28.1μm、29.3μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率をそれぞれ求めた。それらの結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表3に示す。なお、各電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0056】
【表3】
【0057】
比較例4
上記した比較例1において、硫化亜鉛粉末を含むスラリーに添加する付活剤原料として、硫酸銅に加えて炭酸マンガンを使用する以外は、比較例1と同様にして、電場発光蛍光体(ZnS:Cu,Mn)を作製した。このZnS:Cu,Mn蛍光体は325メッシュで篩い分けしたものである。
【0058】
このようにして得たZnS:Cu,Mn蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。この粒度分布から求めた50%D値は24.3μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率を求めた。その結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表4に示す。なお、電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0059】
実施例13〜15
比較例4と同様にして作製した電場発光蛍光体(ZnS:Cu,Mn)を325メッシュで篩い分けした後、各蛍光体粉末を635メッシュの篩で再篩いし、これら635メッシュの篩の上部に残った蛍光体粉末を、それぞれ本発明の電場発光蛍光体(ZnS:Cu,Mn)として得た。
【0060】
このようにして得た各ZnS:Cu,Mn蛍光体の粒度分布を比較例1と同様にして測定した。各粒度分布から求めた50%D値は、それぞれ25.1μm、26.3μm、27.3μmであった。さらに、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分の比率をそれぞれ求めた。それらの結果を電場発光素子の輝度寿命と併せて表4に示す。なお、各電場発光素子の輝度寿命は実施例1と同様にして測定したものである。
【0061】
【表4】
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粒子径が3.9μm以上7.8μm未満という微粒子成分の比率を低減しているため、高寿命の電場発光蛍光体を提供することができる。そして、このような高寿命電場発光蛍光体を用いた電場発光素子によれば、ディスプレイデバイスなどに求められる寿命特性を満足させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による電場発光素子の要部構造を示す断面図である。
【図2】 本発明の他の実施形態による電場発光素子の要部構造を示す断面図である。
【図3】 本発明の実施例1による電場発光蛍光体(ZnS:Cu)の粒度分布を比較例1による電場発光蛍光体(ZnS:Cu)と比較して示す図である。
【符号の説明】
1、11……電場発光素子
2、12……発光層
3、13……反射絶縁層
4、14……背面電極層
5、15……透明電極層
Claims (4)
- 硫化亜鉛を蛍光体母体とし、付活剤としての銅と、融剤として用いた塩素を含む蛍光体粉体を具備する電場発光蛍光体において、
前記蛍光体粉体は、50%D値で表される平均粒子径が18μm以上30μm以下であり、粒子径3.9μm以上7.8μm未満の成分が0.7%以下の粒度分布を有し、かつ、粒子径3.9μm未満の成分を実質的に含まないことを特徴とする高寿命電場発光蛍光体。 - 請求項1記載の高寿命電場発光蛍光体において、
前記蛍光体粉体は、さらに粒子径3.9μm以上5.5μm未満の成分が0.2%以下の粒度分布を有することを特徴とする高寿命電場発光蛍光体。 - 請求項1または請求項2記載の高寿命電場発光蛍光体を含む発光層を具備することを特徴とする電場発光素子。
- 請求項3記載の電場発光素子において、
前記発光層の一方の主面に沿って反射絶縁層を介して一体的に配置された背面電極層と、前記発光層の他方の主面に沿って一体的に対向配置された透明電極層とを具備することを特徴とする電場発光素子。
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