JP4784005B2 - 難燃性重合体組成物の製造方法および難燃性重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性重合体組成物の製造方法、ならびに、それにより得られる電線被覆用重合体組成物に関する。さらに詳しくは、難燃性に優れるとともに、燃焼した場合であってもハロゲンガス等の有毒ガスの発生がなく、また、リンや鉛等の環境汚染物質を含有することがなく、さらに、成形加工性、引張強さ、引張伸び、可撓性(耐折り曲げ白化性)、及び耐屈曲性等の諸物性のバランスに優れ、機器内配線や自動車用ハーネス等の電線被覆材、絶縁テープ等の工業用材料等の用途、特に電線被覆用重合体組成物に有用な難燃性のオレフィン系重合体組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系重合体(樹脂)は、物理的性質及び化学的性質に優れるところから、押出成形、射出成形等の種々の方法で、フィルム、シート、パイプ、容器、電線、ケーブル等に成形され、家庭用品及び工業用材料として汎用されている。このようなオレフィン系樹脂は、易燃性であるため、これを難燃化するための方法が従来から種々開示されている。例えば、
【0003】
その最も一般的な方法として、オレフィン系樹脂にハロゲン系の有機難燃剤を用いる方法が知られている。しかし、これらの難燃剤は少量の配合で難燃効果を発揮するものの、燃焼時に腐食性で有毒なガスを発生するという問題がある。
【0004】
また、近年、ハロゲン系有機難燃剤を用いない難燃性プロピレン樹脂組成物が開示されている(例えば、特開平2−263851号公報)。しかし、この組成物は、難燃剤として、リン系の難燃剤を用いており、その吸湿性に基づくブリードを防止する必要があり、ブリードの防止については、オレフィン系合成ゴム及びシランカップリング剤の配合によって一定の改良が認められるものの、可撓性や柔軟性等の物性及び無公害かつ環境調和の観点からは必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
【0005】
また、プロピレンホモ重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、テトラブロモビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル及び三酸化アンチモンを有する難燃性ポリプロピレン組成物が開示されている(特開昭61−183337号公報)。しかし、この組成物は、難燃剤としてテトラブロモビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテルを用いているが、この化合物はいわゆる環境ホルモンの疑いがあり、環境調和の観点から必ずしも十分に満足し得るものではなかった。また、この組成物は、エチレン−プロピレン共重合ゴムを用いていることから衝撃強度においては一定の改良が認められるものの、例えば、電線被覆材として用いられる場合、配線、組み立て時に要求される柔軟性については必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
【0006】
さらに、最近、無公害かつ環境調和型の難燃剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系金属化合物の水和物を用いる方法が開示されている(例えば、特開平10−279736号公報)。しかし、このような無機系金属化合物の水和物を用いた難燃性組成物においては、難燃性を高めるためには無機系金属化合物の水和物の充填量を高める必要があり、充填量を高めると機械的特性、特に引張伸びが低下し、また成形加工性が低下するという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、難燃性に優れるとともに、成形加工性、引張強さ、引張伸び、可撓性(耐折り曲げ白化性)、耐屈曲性等の諸物性のバランスに優れ、機器内配線や自動車用ハーネス等の電線被覆材、絶縁テープ等の工業用材料等の用途に、特に電線被覆に有用な難燃性のオレフィン系重合体組成物の製造方法、および、その組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究した結果、(A)未変性オレフィン系重合体、(B)(b−1)共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水添共役ジエン系重合体、さらに必要に応じ、(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ならびに、(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体の合計量100重量部に対し、(D)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、または硼砂から選ばれる無機系難燃剤を5〜500重量部含有する難燃性重合体組成物の製造方法であって、予め、上記(B)成分と(C)成分から得られた混合物(E)と、上記(A)成分および(D)成分とを混練りすることによって、上記諸特性を全て満足する難燃性重合体組成物が得られることを知見し本発明を完成させた。すなわち、本発明によって、下記の難燃性重合体組成物の製造方法、及び、その組成物が提供される。
【0009】
[1](A)未変性オレフィン系重合体、(B)(b−1)共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水添共役ジエン系重合体、さらに必要に応じ、(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ならびに、(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体の合計量100重量部に対し、(D)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、または硼砂から選ばれる無機系難燃剤を5〜500重量部含有する難燃性重合体組成物の製造方法であって、予め、上記(B)成分と(C)成分から得られた混合物(E)と、上記(A)成分および(D)成分とを混練りすることを特徴とする難燃性重合体組成物の製造方法。
[2]上記(A)成分と(B)成分と(C)成分との組成割合は(A)+(B)+(C)=100重量%とした場合、(A)成分は5〜60重量%、(B)成分は30〜94重量%、(C)成分は1〜20重量%である上記[1]に記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[3]上記(C)成分に含まれる官能基が、酸無水物、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]または[2]に記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[4]上記(B)成分を構成する(b−1)水添共役ジエン系重合体の、水添前の共役ジエン部分のビニル結合含量が、55重量%以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[5]上記(B)成分を構成する(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体が、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体、エチレンと1−ブテンとのランダム共重合体、エチレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、またはエチレンと1−オクテンとのランダム共重合体のいずれかである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[6]上記(D)無機系難燃剤が、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム又はそのいずれかである上記[1]〜[5]のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[7]上記(D)無機系難燃剤が、シランカップリング剤で表面処理をしたものである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法により得られる難燃性重合体組成物。
[9]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法により得られる電線被覆用重合体組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の難燃性重合体組成物の製造方法の実施形態を具体的に説明する。 本発明の難燃性重合体組成物の製造方法は、(A)未変性オレフィン系重合体、(B)(b−1)共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水添共役ジエン系重合体、さらに必要に応じ、(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ならびに、
(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体との合計量100重量部(以下、「重合体組成物(M)」という)に対し、
(D)無機系難燃剤(以下、「無機系難燃剤(D)」という)を5〜500重量部含有する難燃性重合体組成物の製造方法であって、予め、上記(B)成分と(C)成分から得られた混合物(E)と、上記(A)成分および(D)成分とを混練りすることを特徴とする難燃性重合体組成物の製造方法を特徴とする。
以下、各構成要素ごとにさらに具体的に説明する。
【0011】
1.重合体組成物及び組成割合
本発明に用いられる重合体組成物(M)は、(A)未変性オレフィン系重合体、(B)(b−1)共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水添共役ジエン系重合体、さらに必要に応じ、(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ならびに(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体とからなり、その組成割合は使用目的に応じて任意ではあるが、(A)+(B)+(C)=100重量%とした場合、(A)成分は5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、(B)成分は30〜94重量%、好ましくは40〜80重量%、(C)成分は1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。
【0012】
(A)未変性オレフィン系重合体
本発明に用いられる未変性オレフィン系重合体(A)は、1種又は2種以上のモノオレフィンを高圧法又は低圧法のいずれかによる重合から得られる結晶性のオレフィン樹脂(重合体)であり、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1が好ましい。このオレフィン樹脂は単独重合体であってもよく、また、後述するエチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体(b−2)と区別できる範囲内で、他のモノマーと共重合してなる共重合体であってもよい。
【0013】
共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン(主たる重合体がポリエチレンの場合は除く)、プロピレン(主たる重合体がポリプロピレンの場合は除く)、ブテン−1(主たる重合体がポリブテン−1である場合は除く)、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン;4−メチルペンテン−1、2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン;並びに、上記α−オレフィンと共重合することができるモノマーを挙げることができる。これら共重合可能なモノマー成分は、15重量%未満、好ましくは10重量%以下である。これらを共重合した場合の共重合体の様式については特に制限はなく、例えば、ランダム型、ブロック型、グラフト型、これらの混合型等のいずれであってもよい。
【0014】
オレフィン系重合体(A)として用いられる好ましい共重合体としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等を挙げることができる。これらオレフィン系重合体は1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0015】
重合体組成物(M)中におけるオレフィン系重合体(A)の配合量は、5〜60重量%であり、好ましくは、10〜50重量%である。5重量%未満であると、本発明の組成物の機械的強度、耐熱性が低下し、60重量%を超えると、引張伸び及び柔軟性が低下する。
【0016】
(B)水添共役ジエン系重合体(b−1)
(B)成分として本発明に用いられる水添共役ジエン系重合体(b−1)は、例えば、共役ジエンの単独重合体、共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのランダム共重合体、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックとからなるブロック共重合体、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン及び芳香族ビニル化合物のランダム共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン化合物の重合体ブロックと共役ジエン及び芳香族ビニル化合物の共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン化合物の重合体ブロックと芳香族ビニル化合物及び共役ジエンからなり芳香族ビニル化合物が漸増するテーパー状ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン及び芳香族ビニル化合物のランダム共重合体ブロックと芳香族ビニル化合物及び共役ジエンからなり芳香族ビニル化合物が漸増するテーパー状ブロックとからなるブロック共重合体、ビニル結合が30重量%以下のポリブタジエンブロックとビニル結合が30重量%を超える共役ジエン化合物の重合体ブロックとからなるブロック共重合体等のジエン系重合体(以下、「水添前重合体」ということがある)の水素添加物等を挙げることができる。
【0017】
また、水添共役ジエン系重合体(b−1)において、水添前共重合体の共役ジエン部分のビニル結合含量(水添前共重合体の共役ジエン部分の1,2−及び3,4−ビニル結合の割合)としては特に制限はないが、55重量%以上であることが好ましい。55重量%未満であると、折り曲げ白化性の改良効果が不十分となることがある。
【0018】
また、水添共役ジエン系重合体(b−1)は、官能基で変性したものであってもよく、例えば、酸無水物、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む官能基変性重合体であってもよい。
【0019】
水添前重合体を構成する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との組成割合(共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合物)は、重量比で、95/5〜40/60が好ましく、さらに好ましくは93/7〜50/50である。
【0020】
水添共役ジエン系重合体(b−1)に用いられる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等を挙げることができるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水添共役ジエン系重合体を得るためには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンがさらに好ましい。また、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、p―メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0021】
上記水添前重合体は、カップリング剤の使用により重合体分子鎖がカップリング残基を介して延長又は分岐された重合体であってもよい。
この際用いられるカップリング剤としては、例えば、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化ケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0022】
なお、水添共役ジエン系重合体(b−1)としては、2種又はそれ以上の水添前重合体のブレンド物を水素添加したものであってもよい。さらに、2種又はそれ以上の水添共役ジエン系重合体同士のブレンド物であってもよい。
【0023】
水添共役ジエン系重合体(b−1)は、共役ジエン化合物を主体とする重合体を水素添加したものであり、共役ジエン部分の二重結合の80%以上、好ましくは90%以上が飽和されたものである。飽和の割合が80%未満であると、耐候性等が低下する。
【0024】
水添共役ジエン系重合体(b−1)の好ましい重量平均分子量は、1万〜70万、さらに好ましくは5万〜60万である。1万未満であると、水添共役ジエン系重合体をペレット化した場合ブロッキングしやすくなり、かつオレフィン系重合体(A)とブレンドした場合、機械的強度が低下する。70万を超えると、流動性、加工性、成形外観等が劣るものとなる。
【0025】
重合体組成物(M)中における水添共役ジエン系重合体(b−1)の配合量は、30〜94重量%であり、好ましくは、40〜80重量%である。30重量%未満であると、引張伸び及び柔軟性が低下し、94重量%を超えると、機械的強度及び耐熱性が低下する。
【0026】
(B)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)
必要に応じ(B)成分として本発明に用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、ゴム質重合体であり、α−オレフィン成分の含有率が、15〜65重量%、さらに好ましくは18〜60重量%のものである。65重量%を超えると、本発明の難燃性重合体組成物の引張り特性が低下することがあり、15重量%未満であると、耐屈曲性が低下することがある。また、DSC(示査熱走査熱量計)によって測定される融点ピークが、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下のものである。100℃を超えると、本発明の難燃性重合体組成物の耐屈曲性が低下することがある。
この共重合体を構成するα−オレフィン成分の炭素数は、3〜10であり、引張強度及び引張伸びの観点からは、4〜8が好ましい。
【0027】
また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、官能基を含む変性エチレン・α−オレフィンランダム共重合体であってもよい。このような官能基としては、酸無水物、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。変性エチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、変性オレフィン系重合体と同様な方法で製造することができる。
【0028】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)を構成するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
従って、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)の好ましい具体例としては、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体、エチレンと1−ブテンとのランダム共重合体、エチレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、またはエチレンと1−オクテンとのランダム共重合体のいずれかを挙げることができる。
【0029】
また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、本発明の難燃性重合体組成物の特性を損なわない範囲であれば、必要に応じて他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。
このような他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン等のビニル化合物類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和有機酸又はその無水物;1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチルー1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類等を挙げることができる。
【0030】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、このような他の重合性モノマーから導かれる単位を、全繰り返し構造単位の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
【0031】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を1種単独で用いてもよく、また2種以上を組合わせて用いてもよい。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)のメルトフローレート(MFR:温度230℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.01〜100g/10分、さらに好ましくは0.05〜50g/10分である。100g/10分を超えると、本発明の難燃性重合体組成物の機械的強度が低下することがあり、0.05未満であると、組成物の流動性、加工性、成形外観等が劣るものとなることがある。
【0032】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、必要に応じ水添共役ジエン系重合体(b−1)と併用して使用される。その場合のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)の配合量は、(b−1)+(b−2)=100重量%とした場合、1〜70重量%であり、さらには1〜50重量%であることが好ましい。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)は、水添共役ジエン系重合体(b−1)と併用することにより得られる難燃性重合体組成物の物性を大幅に損なわずに使用できる。
【0033】
(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体
官能基を含む変性オレフィン系重合体(C)としては、上述の未変性オレフィン系重合体(A)に、酸無水物、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む変性オレフィン系重合体が用いられる。
重合体組成物(M)中における官能基を含む変性オレフィン系重合体(C)の配合量は、1〜20重量%であり、好ましくは、3〜15重量%である。1重量%未満であると、機械的強度の改良効果が不十分となり、20重量%を超えると引張伸び及び引張強度が低下する。
【0034】
2.無機系難燃剤
本発明に用いられる無機系難燃剤(D)としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、硼砂等の無機金属化合物の水和物等を挙げることができる。中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0035】
本発明においては、無機系難燃剤(D)の表面を、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸又はその金属塩;パラフィン、ワックス、ポリエチレンワックス、又はそれらの変性物;有機ボラン、有機チタネート等の有機金属化合物;シランカップリング剤等で表面処理をしたものであってもよい。中でも、シランカップリング剤で表面処理をしたものは、引張強度の改良効果が著しいので好ましい。
【0036】
無機系難燃剤として水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムを用いる場合は、結晶がよく成長し、かつ凝集の少ないものが好ましい。BET比表面積は20m2/g以下、特に好ましくは3〜10m2/gの範囲にあり、かつ平均2次粒子径が0.2〜5μm、特に好ましくは0.5〜3μmの範囲にある水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである。水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムは上記特性を充足するものであれば、合成品、天然品のいずれでもよい。水酸化マグネシウムの合成品は塩化マグネシウム又は硝酸マグネシウムとアンモニア又は水酸化カリウムとが十分接触できる条件下で水性媒体中で接触せしめた後、加圧下で加熱することにより得られる。
シランカップリング剤の水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムに対する添加量は、0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜1重量%である。上記範囲の下限より少ないときには、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムの凝集力が強く、組成物への分散性が劣ることとなり易い。上記範囲の上限を超えても分散性がさらに向上することはなく、経済的に好ましくない。シランカップリング剤による水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムの表面処理方法としては、公知の方法、すなわち乾式法または湿式スラリー法を用いることができる。均一処理という点で湿式スラリー法がより好ましい。また、シランカップリング剤をその水溶液中で加水分解させたもので水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムの表面処理をするため、通常の水に可溶性のものが好ましい。シランカップリング剤の種類によっては、酢酸等でpHを約4程度まで下げなければ加水分解しないものもある。このようなシランカップリング剤を用いた場合には、表面処理の過程で酸により水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム表面が侵食を受け、耐酸性の悪いものが生じたり、電線等の用いた場合、被覆材の体積固有抵抗を下げるので好ましくない。湿式スラリー法は水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムを水中に分散させ、高速攪拌下に、イオン交換水に5重量%以下の濃度になるように溶解させたシランカップリング剤を必要量徐徐に添加し、滴下終了後、約15〜30分間高速攪拌を続ける。処理後のスラリーを濾別し、約120℃で乾燥する、または処理後のスラリーをそのまま噴霧乾燥してもよい。
高級脂肪酸又はそのアルカリ金属塩で表面処理する場合には、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム中に、熱または溶剤で溶かした高級脂肪酸又はそのアルカリ金属塩を噴霧し、ヘンシェルミキサー等を用いて乾式法で表面処理することができる。水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムに対する高級脂肪酸又はそのアルカリ金属塩の添加量は、BET法による比表面積の10〜80%、好ましくは15〜50%被覆できる量でよい。高級脂肪酸およびそのアルカリ金属塩としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩などが用いられる。
【0037】
また、本発明においては、無機系難燃剤(D)の難燃効果を高めるために、必要に応じて、ポリ燐酸アンモニウム系難燃剤、燐酸エステル等の燐系難燃剤、シリコーン化合物;石英硝子等を用いてもよく、また難燃助剤として、水ガラス、フリット等を用いてもよく、さらに、ドリップ防止のため窒化珪素短繊維等を用いてもよい。
【0038】
無機系難燃剤(D)の組成物中の含有量は、重合体組成物(M)100重量部に対し、5重量部以上、好ましくは、25重量部以上、さらに好ましくは、50重量部以上である。5重量部未満であると、十分な難燃性を有する組成物が得られない。上限は500重量部以下、好ましくは、300重量部以下である。
【0039】
本発明の難燃性重合体組成物は、必要に応じて、従来公知の方法により、硫黄架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋等によって架橋されるものであってもよい。
【0040】
3.難燃性重合体組成物の製造方法
本発明の難燃性重合体組成物は、予め、第一工程で(B)成分と(C)成分とを混合して混合物(E)を得、第二工程で、混合物(E)と(A)成分および(D)成分とを混練りすることにより製造することができる。
第一工程で得られる、混合物(E)は、(B)成分と(C)成分とをいかなる方法で混合してもよいが、(B)成分、(C)成分が溶融する温度で混練り(以下「溶融混練り」と記す)することが好ましい。
第二工程では、混合物(E)と(A)成分および(D)成分とを同時に混練する以外に、混合物(E)と(A)成分とを混練りした後、さらに(D)成分と混練りすることにより製造すること、また、混合物(E)と(D)成分とを混練りした後、さらに(A)成分と混練りすることにより製造することもできる。
第二工程で混合物(E)を使用することにより(D)成分を短時間で均一に分散でき、優れた難燃性重合体組成物が得られる。
第二工程での混練りはいかなる方法で混練りすることもできるが、(A),混合物(E)の各成分が溶融する温度で溶融混練りすることが好ましい。
(A),(B),(C),(D)の各成分を一括して溶融混練りする場合は、本発明の効果は得られない。
【0041】
溶融混練りする方法は特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の公知の混練機、及びそれらを組み合わせた混練機により溶融混練する方法等を挙げることができる。
【0042】
本発明の組成物は、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、蒸気発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって、実用上有用な成形品に加工することができる。また、必要に応じて、発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工を施してもよい。
【0043】
本発明の組成物には、必要に応じて各種添加剤、例えば、老化防止剤、熱安定剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤;防菌・防かび剤;分散剤;軟化剤;可塑剤;発泡剤;発泡助剤;酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;フェライト等の金属粉末;ガラス繊維;金属繊維等の無機繊維;炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維;複合繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー;ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズ等の充填剤又はこれらの混合物;ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉等の充填剤;低分子量ポリマー等を配合してもよい。これらの添加剤は通常第二工程で添加される。
【0044】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例、比較例中の部及び%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例、比較例中の各種測定は、下記の方法に拠った。
1)1,2−結合等のビニル結合含量
1,2−結合等のビニル結合含量は、赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
2)水添率
共役ジエンの水添率は、四塩化エチレンを溶媒に用い、100MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
3)水添共役ジエン系重合体の重量平均分子量
水添共役ジエン系重合体の重量平均分子量(以下、「分子量」ともいう)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算で求めた。
4)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体のエチレン成分含有量
赤外分析法を用いて測定した。
5)流動性
JIS K7210に準拠して、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレート(MFR)を測定し、成形加工性の指標とした。
6)引張特性
JIS K6301に従ってサンプルの引張強さ、伸びを測定した。
7)可撓性(耐折り曲げ白化性)
厚さ2mmの短冊状シートを180度折り曲げて、外側の白化程度を観察し、下記の基準で評価した。
○:ほとんど白化しないか、又は白化しない場合
△:やや白化が観察される場合
×:白化が著しい場合
8)耐屈曲性
厚さ2mmの短冊状シートの180度折り曲げを10回行い、下記の3段階で評価した。
○:亀裂なし
△:やや亀裂が観察される
×:割れる
9)酸素指数(O.I.)
JIS K7201に従って酸素指数を測定した。酸素指数は、所定の試験条件下において、材料の燃焼を持続するために必要な酸素と窒素との混合気体の容量%で表される最低酸素濃度の数値であり、この値が大きな程、難燃性に優れていることになる。
【0045】
実施例及び比較例において用いた各種の成分は、以下の通りである。
(A)未変性オレフィン系重合体
P−1:プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリオレフィン(株)製、商品名:MD772H、MFR=30g/10分)
P−2:プロピレン−エチレンブロック共重合体(日本ポリケム(株)製、商品名:BC05B、MFR=50g/10分)
P−3:日本ポリケム(株)製 低密度ポリエチレン、LJ800、MFR=18g/10分(190℃、2.16kg荷重)
【0046】
(B)水添共役ジエン系重合体(b−1)
表1〜2に示す構造を有する水添共役ジエン系重合体(S−1〜S−6)
尚、表中の各記号は以下の通りである。
BD : ブタジエン
ST : スチレン
IP : イソプレン
A :芳香族ビニル化合物の重合体ブロック
B :芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体ブロック
C :芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のテーパー状重合体ブロック
D :高ビニル結合タイプの共役ジエン化合物の重合体ブロック
E :低ビニル結合タイプの共役ジエン化合物の重合体ブロック。
【0047】
(B)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(b−2)
EP:エチレン・プロピレンランダム共重合体(JSR(株)製、商品名:EP961SP、MFR=0.8g/10分(230℃、2.16kg)、エチレン含量=77重量%、融点=41℃)
EB:エチレン・1−ブテンランダム共重合体(JSR(株)製、商品名:EBM2021P)、MFR=1.3g/10分(190℃、2.16kg)、エチレン含量=80重量%、融点=69℃
EO:エチレン・1−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル社製、商品名:ENGAGE8003、MFR=1g/10分(190℃、2.16kg)、エチレン含量=82重量%、融点=86℃)
M−EP:無水マレイン酸変性エチレン・プロピレンランダム共重合体(JSR(株)製、商品名:EPT7741P、MFR=0.8g/10分(230℃、2.16kg)、エチレン含量=77重量%、融点=41℃)
【0048】
(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体
Q−1:酸無水物変性のポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、商品名:ユーメックス1001)
Q−2:水酸基変性のポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、商品名:ユーメックス1210)
【0049】
(D)無機系難燃剤
X−1:高級脂肪酸にて表面処理された合成水酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名:キスマ5A)
X−2:シランカップリング剤にて表面処理された合成水酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名:キスマ5NH)
X−3:表面処理していない合成水酸化マグネシウム(神島化学(株)製、商品番号:#200)
X−4:表面処理していない天然水酸化マグネシウム(ソブエクレー(株)製、商品名:エブゾンRF)
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
実施例1
第1工程で水添共役ジエン系重合体(b−1)として(S−1)を50部、および、変性オレフィン系重合体(C)として(Q−1)を10部、とを200℃に設定したシリンダー径40mm、L/D=28の単軸押出機(田辺プラスチック社製)を用いて、70rpmで溶融混練りした後、ペレット化し混合物(E)を得た。
次に第2工程で未変性オレフィン系重合体(A)として(P−1)を40部、無機系難燃剤(D)として(X−1)を150部、および、第1工程で得られた混合物(E)を60部、とを220℃に設定したシリンダー径50mm、L/D=32の単軸押出機(日本プラコン社製:DMG−50型)を用いて、70rpm溶融混練りした後、ペレット化し、成形温度210℃、金型温度40℃で射出成形し、物性評価用の試験片を作製した。物性評価の結果を表3に示す。
【0053】
実施例2〜13
実施例1と同様、表3、表4に示す配合処方で第一工程を行い、溶融混練り・ペレット化し混合物(E)を得た。
次に第2工程として未変性オレフィン系重合体(A)、無機系難燃剤(D)および第1工程で得られた混合物(E)を220℃に設定した単軸押出機を用いて、表3、表4に示す配合処方で溶融混練り・ペレット化し、射出成形により物性評価用の試験片を作製した。物性評価の結果を表3、表4に示す。
【0054】
実施例14
第1工程で(b−1)成分として(S−1)を25部、(b−2)成分としてEPを25部、および、(C)成分として(Q−1)を10部、とを200℃に設定したシリンダー径40mm、L/D=28の単軸押出機(田辺プラスチック社製)を用いて、70rpmで溶融混練りした後、ペレット化し混合物(E)を得た。
次に第2工程で(A)成分として(P−1)を40部、(D)成分として(X−1)を150部、および、第1工程で得られた混合物(E)60部、とを220℃に設定したシリンダー径50mm、L/D=32の単軸押出機(日本プラコン社製:DMG−50型)を用いて、70rpmで溶融混練りした後、ペレット化し、実施例1と同一条件で射出成形により物性評価用の試験片を作製した。物性評価の結果を表5に示す。
【0055】
実施例15〜17
実施例14と同様、表5に示す配合処方で物性評価用の試験片を作製した。物性評価の結果を表5に示す。
【0056】
比較例1〜6
実施例と異なり第1工程を経ず、未変性オレフィン系重合体(A)、水添共役ジエン系重合体(b−1)、変性ポリオレフィン系重合体(C)および無機系難燃剤(D)を220℃に設定したシリンダー径50mm、L/D=32単軸押出機(日本プラコン社製:DMG−50型)を用いて、表6に示す配合処方で一括で70rpmで溶融混練りした後、ペレット化し、実施例1と同一条件で射出成形により物性評価用の試験片を作製した。物性評価の結果を表6に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
備考:比較例では一括溶融混練した。
【0061】
表3に示す実施例1〜3、および、表4に示す実施例8〜9の結果から、2工程で溶融混練した本発明の樹脂組成物は、表6に示す一括で溶融混練した比較例1〜6に比べて、引張伸びが約10〜20%優れることがわかる。
【0062】
また、表5に示す実施例14〜17は、第1工程において水添共役ジエン系重合体とともにエチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体として、EP(エチレン−プロピレン共重合体)[JSR(株)製、商品名:EP02P]、EB(エチレン・1−ブテンランダム共重合体)[JSR(株)製、EBM2021P]、EO(エチレン−オクテン共重合体)[ダウ・ケミカル製、商品名:ENGAGE8003]、M−EP(無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体)[JSR(株)製、EPT7741P]を用いた場合であり、いずれも引張強さ、引張伸び、難燃性、可撓性(耐折り曲げ白化性)、耐屈曲性のバランスに優れることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、難燃性に優れるとともに、燃焼した場合であってもハロゲンガス等の有毒ガスの発生がなく、また、リンや鉛等の環境汚染物質を含有することがなく、成形加工性、引張強さ、引張伸び、可撓性(耐折り曲げ白化性)、及び耐屈曲性等の諸物性のバランスに優れ、機器内配線や自動車用ハーネス等の電線被覆材、絶縁テープ等の工業用材料等の用途に特に有用な難燃性のオレフィン系重合体組成物の製造方法とその組成物を提供することができる。
Claims (9)
- (A)未変性オレフィン系重合体、(B)(b−1)共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水添共役ジエン系重合体、さらに必要に応じ、(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、ならびに、(C)官能基を含む変性オレフィン系重合体の合計量100重量部に対し、(D)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、または硼砂から選ばれる無機系難燃剤を5〜500重量部含有する難燃性重合体組成物の製造方法であって、予め、上記(B)成分と(C)成分から得られた混合物(E)と、上記(A)成分および(D)成分とを混練りすることを特徴とする難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(A)成分と(B)成分と(C)成分との組成割合は(A)+(B)+(C)=100重量%とした場合、(A)成分は5〜60重量%、(B)成分は30〜94重量%、(C)成分は1〜20重量%である請求項1に記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(C)成分に含まれる官能基が、酸無水物、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(B)成分を構成する(b−1)水添共役ジエン系重合体の、水添前の共役ジエン部分のビニル結合含量が、55重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(B)成分を構成する(b−2)エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体が、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体、エチレンと1−ブテンとのランダム共重合体、エチレンと1−ヘキセンとのランダム共重合体、またはエチレンと1−オクテンとのランダム共重合体のいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(D)無機系難燃剤が、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム又はそのいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 上記(D)無機系難燃剤が、シランカップリング剤で表面処理をしたものである請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性重合体組成物の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる難燃性重合体組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる電線被覆用重合体組成物。
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