JP4783519B2 - 3−アシル−2−ブタノンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香料として有用な3−メチル−2,4−ノナジオンに代表される3−アシル−2−ブタノン類、およびその合成中間体である2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3−メチル−2,4−ノナジオンに代表される3−アシル−2−ブタノン類は、マリン様、グリーン様の香気を有することから、香料などとして有用である。従来、3−メチル−2,4−ノナジオンの製造方法としては、例えば、(i)カプロン酸無水物とメチルエチルケトンを三フッ化ホウ素ガスの存在下に反応させて合成する方法[J.Am.Chem.Soc.vol.67,284(1945)]、(ii)ヘキサン酸エチルとアセトンを水素化ナトリウムの存在下に反応させて得られる2,4−ノナジオンを、ナトリウムエノラートの存在下にヨウ化メチルでメチル化する方法[Fett.Wiss.Techol.vol.91,225(1989)]が知られている。
【0003】
しかしながら、上記(i)の従来法は、三フッ化ホウ素ガスを使用するため、腐食性、爆発性および毒性などの問題がある。また、上記(ii)の従来法は、2,4−ノナジオンの合成に当たって反応溶媒としてジエチルエーテルを用い、2,4−ノンジオンのメチル化をヨウ化メチルを用いて行っていることから、経済性および毒性の点から工業的に有利な方法であるとは言い難い。しかも、上記(ii)の従来法による場合は、目的物である3−メチル−2,4−ノナジオンの純度が40%と低く、精製もガスクロマトグラフィーにより行っていることから目的物を大量に得ることが困難であることが報告されている]J.Am.Oil.Chem.Soc.,vol.75,831(1998)]。
【0004】
M.W.Rathkeらは、J.Org.Chem.1985,50,2622−2624に、アシルクロリドおよびアセト酢酸エチルを、アシルクロリドと等モル量の無水塩化マグネシウムおよび2倍モル量のピリジンの存在下で反応させて、アシルアセト酢酸エチルエステルを合成する方法を報告している。しかしながら、このRathkeらの方法では、高価な無水塩化マグネシウムをアシルクロリドと等モル量で使用しなければならないため経済的に有利な方法であるとは言い難い。また、この方法では多量の塩化マグネシウムを用いるため、塩化マグネシウムが溶媒に溶解せず、撹拌が困難になり、操作性が悪く、さらに反応終了後に多量の塩化マグネシウムが廃棄物として排出されるため、環境汚染の点から問題があり、該廃棄物の処理に手間を要するなどの問題がある。また、このRathkeらの方法で用いられるアセト酢酸エチルは、2位が無置換の化合物であり、このRathkeらの方法は、2位が置換されていて立体障害などによって反応性が劣ることが予想される2−位が置換されたアセト酢酸エチルへの適用可能性を何ら示唆していない。
また、2−アシル−β−ケト酸のt−ブチルエステルを酸性条件下で脱炭酸してβ−ジケトン類を合成する方法が報告されている[J.Chem.Res.,Synop.,(9),302(1987)、Gazz.Chim.Ital.,115(11−12,Pt.A),633(1985)]。しかしながら、ここで使用されている2−アシル−β−ケト酸のt−ブチルエステルは、いずれも2位が無置換のもののみであり、しかも使用している酸は高価で毒性の強いトリフルオロ酢酸であり、実用的でない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、マリン様、グリーン様の香気を有し香料として有用な、3−メチル−2,4−ノナジオンに代表される3−アシル−2−ブタノン類を、温和な条件下に、簡便な操作で、経済的に、収率よく、高純度で製造できる方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、3−アシル−2−ブタノンの製造に有効に用い得る合成中間体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定のアシルクロリドと2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルをピリジン系化合物および少量のマグネシウム化合物の存在下に反応させると、3−アシル−2−ブタノンの合成中間体として有用な2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルが、高収率で、選択的に生成すること、そしてそれによって生成した前記2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを酸の存在下で脱炭酸すると、目的とする3−アシル−2−ブタノンが、温和な条件下に、特別の精製法などを採用しなくても、簡便な操作で、経済的に、収率よく、高純度で得られることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 下記の一般式(I);
【0008】
【化10】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表されるアシルクロリドと、下記の化学式(II);
【0009】
【化11】
で表される2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルを、ピリジン系化合物(a)および触媒量のマグネシウム化合物(b)の存在下に反応させて、下記の一般式(III);
【0010】
【化12】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを製造し、該2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを酸の存在下に脱炭酸して、下記の一般式(IV);
【0011】
【化13】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される3−アシル−2−ブタノンにすることを特徴とする3−アシル−2−ブタノンの製造方法である。
【0012】
さらに、本発明は、
(2) 下記の一般式(I);
【0013】
【化14】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表されるアシルクロリドと、下記の化学式(II);
【0014】
【化15】
で表される2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルを、ピリジン系化合物(a)および触媒量のマグネシウム化合物(b)の存在下に反応させて、下記の一般式(III);
【0015】
【化16】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを製造することを特徴とする2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの製造方法である。
【0016】
そして、本発明は、
(3) 2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの脱炭酸を、ギ酸および/またはp−トルエンスルホン酸の存在下で行う前記(1)の製造方法;
(4) マグネシウム化合物(b)を、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対して0.01〜0.5モル当量で用いる前記(1)〜(3)のいずれかの製造方法;
(5) ピリジン系化合物(a)が、α−ピコリン、ピリジンおよび2,6−ルチジンから選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法;
(6) マグネシウム化合物(b)が、無水の塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシドおよびマグネシウムアセチルアセトナートから選ばれる少なくとも1種の無水マグネシウム化合物である前記(1)〜(5)のいずれの製造方法;
(7) マグネシウム化合物(b)が、無水塩化マグネシウムおよび/または無水臭化マグネシウムである前記(6)の製造方法;および、
(8) アシルクロリドと2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルの反応を、トルエン、ヘプタンおよびテトラヒドロフランから選ばれる有機溶媒の1種または2種以上中で行う前記(1)〜(7)のいずれかの製造方法;
を好ましい態様として包含する。
【0017】
さらに、本発明は、
(9) 下記の一般式(III);
【0018】
【化17】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを酸の存在下に脱炭酸して、下記の一般式(IV);
【0019】
【化18】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される3−アシル−2−ブタノンにすることを特徴とする3−アシル−2−ブタノンの製造方法である。
【0020】
そして、本発明は、
(10) 2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの脱炭酸を、ギ酸および/またはp−トルエンスルホン酸の存在下に行う前記(9)の製造方法;
を好ましい態様として包含する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、上記の一般式(I)で表されるアシルクロリド[以下「アシルクロリド(I)」ということがある]と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル[以下「2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)」ということがある]を、ピリジン系化合物(a)およびマグネシウム化合物(b)の存在下に反応させて、上記の一般式(III)で表される2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル[以下「2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)」ということがある](合成中間体)を製造する。
【0022】
本発明で使用するアシルクロリド(I)において、Rは、炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基であればいずれでもよく、具体例としては、エチル基、直鎖状または分岐鎖状のプロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基)、直鎖状または分岐鎖状のブチル基(n−ブチル基、イソブチル基)、直鎖状または分岐鎖状のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、直鎖状または分岐鎖状のプロペニル基、直鎖状または分岐鎖状のペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基を挙げることができる。前記した基Rを有するアシルクロリド(I)の具体例としては、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド、ペンタノイルクロリド、ヘキサノイルクロリド、ヘプタノイルクロリド、オクタノイルクロリド、ノナノイルクロリド、イソブチリルクロリド、3−メチルブタノイルクロリド、5−メチルヘキサノイルクロリド、5−メチル−4−ヘキセノイルクロリドなどを挙げることができる。
そのうちでも、アシルクロリド(I)としては、Rが、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基であるペンタノイルクロリド、3−メチルブタノイルクロリド、ヘキサノイルクロリド、ヘプタノイルクロリドが、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応性、入手の容易性、コスト、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率、最終的に得られる上記の一般式で表される3−アシル−2−ブタノン[以下「3−アシル−2−ブタノン(IV)」ということがある]の収率、香気強度、香質などの点から好ましく用いられ、ヘキサノイルクロリドがより好ましく用いられる。
【0023】
アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)の使用割合は、両者の反応性、経済性などの点から、モル比で、[アシルクロリド(I)]:[2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)]=2.0:1.0〜1.0:2.0の範囲内であることが好ましく、1.5:1.0〜1.0:1.5の範囲内であることがより好ましい。前記したモル比の範囲内で、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)のうちの価格の安い方を過剰に使用するとコストを低減することができる。
【0024】
2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の製造に用いるピリジン系化合物(a)としては、下記の一般式(V);
【0025】
【化19】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはエチル基を示すか、或いはR1とR2またはR2とR3が共に結合して環を形成してもよい。)
で表されるピリジン系化合物(ピリジンまたはピリジン誘導体)が好ましく用いられる。本発明で用いられるピリジン系化合物(a)の具体例としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、キノリン、イソキノリンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率、経済性などの点から、α−ピコリン、ピリジンおよび2,6−ルチジンのうちの1種または2種以上がより好ましく用いられ、α−ピコリンまたはα−ピコリンを含むピリジン系化合物の混合物が更に好ましく用いられる。
【0026】
本発明では、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)とを反応させる際の塩基として、ピリジン系化合物(a)を用いることによって、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)を高選択率、高収率で生成させることができる。
本発明者らの実験によれば、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)を反応させる際の塩基としてピリジン系化合物(a)の代わりに一般的な塩基である水素化ナトリウムを使用した場合には、下記の反応式において、一般式(VI)で表されるO−アシル化物が30〜50%程度の高割合(選択率)で副生し、その結果、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率が大幅に低下することが確認された。
【0027】
【化20】
(式中、Rは炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
【0028】
ピリジン系化合物(a)の使用量は、アシルクロリド(I)に対して1.0〜10.0モル当量[アシルクロリド(I)1モルに対して1.0〜10.0モル]であることが、目的とする3−アシル−2−ブタノン[以下「3−アシル−2−ブタノン(IV)」ということがある]を高収率で得るために好ましく、1.5〜2.5モル当量であることがより好ましい。
【0029】
マグネシウム化合物(b)としては、無水のマグネシウム化合物が好ましく用いられ、含水物を使用すると、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との間の反応の停止や抑制などが生じ易い。
本発明で用いるマグネシウム化合物(b)としては、無水の塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド(マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなど)、マグネシウムアセチルアセトナートなどのマグネシウム化合物を挙げることができ、前記した無水のマグネシウム化合物の1種または2種以上が好ましく用いられる。そのうちでも、マグネシウム化合物(b)としては、無水塩化マグネシウムおよび無水臭化マグネシウムの少なくとも一方、特に無水塩化マグネシウムが、少量の使用量で、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応を速やかに進行させて、目的とする高純度の3−アシル−2−ブタノン(IV)を高収率で得ることができ、しかも入手が容易で、空気中で比較的安定であることから、特に好ましく用いられる。
【0030】
本発明では、マグネシウム化合物(b)を、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)に対して0.01〜0.5モル当量[2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)1モルに対してマグネシウム化合物(b)を0.01〜0.5モル]の割合で使用することが好ましく、0.1〜0.5モル当量の割合で使用することがより好ましく、0.2〜0.5モル当量の割合で使用することが更に好ましい。
マグネシウム化合物(b)の使用量が0.01モル当量よりも少ないと、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)を高収率で得るためにアシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応に長い時間がかかるようになり、生産性の低下やコストの上昇を招き易い。一方、マグネシウム化合物(b)の使用量が0.5モル当量よりも多いと、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率が低下し易い。しかも、マグネシウム化合物(b)の使用量が0.5モル当量よりも多いと、反応媒体中に分散しにくくなって撹拌などの操作が円滑に行われにくくなり、更に反応終了後に廃棄物として排出されるマグネシウム化合物(b)の量が多くなって廃棄物処理に手間、経費、時間などを要するようになる。
【0031】
ピリジン系化合物(a)およびマグネシウム化合物(b)の存在下でのアシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)の反応は、有機溶媒中で行ってもまたは有機溶媒を使用せずに行ってもよいが、反応を速やかに且つ円滑に行うために、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのマグネシウム化合物(b)に対して不活性な有機溶媒が、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)を高収率で生成することから好ましく用いられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、トルエン、テトラヒドロフランおよびヘプタンの1種または2種以上が、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)がより高収率で得られ、しかも安価である点からより好ましく用いられる。
【0032】
有機溶媒を使用する場合は、その使用量は特に制限されないが、一般に、アシルクロリド(I)、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)、ピリジン系化合物(a)およびマグネシウム化合物(b)の合計1モルに対して、有機溶媒を25〜550mlの割合で用いることが、反応の円滑な進行、反応時の撹拌などの操作の容易性、コスト、釜効率などの点から好ましく、50〜250mlの割合で用いることがより好ましい。
【0033】
アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)の反応は、室温を含む広い温度範囲で行うことができ、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率、副生物の生成抑制、反応時間の長期化の防止、熱効率、撹拌効率などの点から、一般的には、0〜120℃の温度が好ましく採用され、5〜80℃の温度がより好ましく採用される。反応温度が低すぎると、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応が速やかに進行しなくなって、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の生成に長時間を要するようになり、一方反応温度が高すぎると、反応時間は短縮されるが副生物の生成が多くなり、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の収率や純度の低下、ひいては目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)の収率や純度の低下を生じ易くなるので好ましくない。
【0034】
アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応により得られる2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)は、減圧下で蒸留などを行うことにより単離することができる。但し、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)は、熱に対して不安定でありで蒸留時に一部分解することがある。そのため、アシルクロリド(I)と2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)との反応終了後に、生成した2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)を特に単離精製せずに粗生成物の状態で、酸の存在下に脱炭酸反応を行って、目的とする3−アシル−2−ブタノン(IV)を生成させ、それによって得られた3−アシル−2−ブタノン(IV)を蒸留などにより反応系から回収すると、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)を高収率で得ることができる。
【0035】
2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応に使用する酸としては、ギ酸、酢酸などの有機カルボン酸類、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸類、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、目的とする3−アシル−2−ブタノン(IV)を高収率で得ることができることから、ギ酸およびp−トルエンスルホン酸のうちの一方または両方が好ましく用いられる。
【0036】
2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応に使用する酸の量は、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)に対して0.1〜50モル当量であることが好ましく、0.5〜20モル当量であることがより好ましい。
酸の量が少なすぎると脱炭酸反応が円滑に進行しなくなり、一方多すぎると副反応などにより収率が低下し易くなる。
【0037】
2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応は、無溶媒下で行ってもまたは溶媒中で行ってもよい。溶媒中で行う場合は、反応条件下で酸に不活性な溶媒であればいずれも用いることができ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。溶媒を用いて脱炭酸反応を行う場合は、溶媒の使用量は、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)1モルに対して、270〜2700ml程度であることが好ましい。
【0038】
2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応は、室温を含む広い温度範囲で行うことができ、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)の収率、副生物の生成抑制、反応時間の長期化の防止、熱効率、撹拌効率などの点から、一般的には0〜100℃の温度が好ましく、20〜60℃の温度がより好ましい。反応温度が低すぎると、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応が速やかに進行しなくなって、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)の生成に長時間を要するようになり、一方反応温度が高すぎると、反応時間は短縮されるが副生物の生成が多くなり、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)の収率や純度の低下を生じ易くなるので好ましくない。
【0039】
下記の反応式に示すように、本発明では、アシルクロリド(I)と反応させる出発原料として、2−メチル−アセト酢酸エステルにおけるエステル基がt−ブチル基によりエステル化されている2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)を選んで使用している。そして、その2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル(II)をアシルクロリド(I)を、ピリジン系化合物(a)およびマグネシウム化合物(b)の存在下に反応させて、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)を生成させ、その2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)に酸を加えていることにより、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)の脱炭酸反応を選択的に進行させることができ、その結果、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステル(III)が1,3−ジケトン構造を有する3−アシル−2−ブタノン(IV)へと選択的に変換し、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)を高収率で且つ高純度で得ることができる。
これに対して、本発明者らが実験した結果、2−メチル−アセト酢酸のエステルではあっても、そのカルボキシル基が通常の低級アルキル基であるエチル基によってエステル化されている2−メチル−アセト酢酸エチルエステル[以下の式(III')で表される化合物においてR’がエチル基である化合物]では、下記の反応式に示すように、酸性条件およびアルカリ性条件のいずれでおいても、脱炭酸反応が生じず、脱アセチル反応が選択的に進行して、β−ケトエステル構造を有する式(VII)で表される化合物が生成し、目的とする3−アシル−2−ブタノン(IV)が生成しないことが確認された。
【0040】
【化21】
【0041】
上記した脱炭酸反応によって得られる、目的物である3−アシル−2−ブタノン(IV)を反応系から回収する。反応系からの3−アシル−2−ブタノン(IV)の回収方法は特に制限されないが、一般的には、減圧蒸留法、シリカゲルクロマトグラフィー法などが好ましく採用される。減圧蒸留によって3−アシル−2−ブタノン(IV)を回収する場合は、温度60〜120℃、圧力100〜1000Paが好ましく採用される。
本発明の方法により得られる3−アシル−2−ブタノン(IV)は、高純度で副生物の含有量が少ないため、通常の蒸留操作だけで、香料などとして有効に用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
以下の例において、合成を目的とする化合物への変換率および収率は次のようにして求めた。
【0043】
[変換率の算出]
ヒューレットパッカード社製のガスクロマトグラフィー装置「HP−5890A」を使用し、ジーエルサイアンス株式会社製のカラム「Chemical bonded column OV−1」(25m×0.25mm)を用いて、キャリアーガスとしてヘリウムを使用して、初期温度100℃、昇温速度10℃/分、注入温度250℃、検出温度250℃の条件下で測定し、下記の数式により変換率を算出した。
【0044】
【数1】
変換率(%)={(A0−A1)/A0}×100
[式中、A0は出発原料とした用いた2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルまたは2−メチル−2−アシルアセト酢酸エステルのガスクロマトグラフィーエリア%、A1は反応生成物中に残留している2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルのガスクロマトグラフィーエリア%(実施例1〜6および比較例1〜2)、または反応生成物中に残留している2−メチル−2−アシルアセト酢酸エステルのガスクロマトグラフィーエリア%(実施例7〜8および比較例3〜4)を示す。]
【0045】
[収率の算出]
反応終了後の反応生成物溶液に、内部標準物質としてn−ペンタデカンを添加し、ガスクロマトグラフィー上の生成物と内部標準物質とのガスクロマトグラフィーエリア%比から、定法に従い検量線を用いて収率を算出した。
【0046】
《実施例1》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
(1) 1リットルの四口フラスコに、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル115.74g(0.67モル)を入れ、それに無水テトラヒドロフラン350mlを加えて溶解した後、氷浴にて5℃に冷却して撹拌しながら、無水塩化マグネシウム12.81g(0.13モル、0.2モル当量)を加え、α−ピコリン(2−ピコリン)133ml(2モル当量)を5分かけて滴下して加えた。
5℃で15分反応させた後、ヘキサノイルクロリド95.1g(1.05モル当量)を15分かけて滴下して加え、5℃で15分反応させた後、還流温度まで加熱し、5時間反応を行った。反応後にガスクロマトグラフィーにて上記した方法で変換率を測定したところ、94.4%と良好であった。
(2) 上記(1)で得られた反応生成物を、抽出水洗後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物184.1gを得た。この粗生成物を用いて上記した方法で2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は80%であった。
【0047】
《実施例2》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
(1) 100mlのナスフラスコに、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル8.60g(0.05モル)と無水塩化マグネシウム952mg(0.2モル当量)を加え、これにトルエン40mlを加えて溶解した後、氷浴にて5℃に冷却して撹拌しながらα−ピコリン10ml(2モル当量)を滴下して加えた。5℃で15分反応させた後、ヘキサノイルクロリド6.73g(1モル当量)を滴下して加えた。さらに5℃で15分反応させた後、反応系を80℃まで加熱昇温させて反応を継続した。一定時間ごとにガスクロマトグラフィーにて反応を確認して、上記した方法で変換率を測定したところ、1時間の時点での変換率は68.4%、3時間の時点での変換率は80.8%、24時間後の変換率は86.5%であった。
(2) 上記(1)で得られた反応混合物を、抽出水洗後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物13.7gを得た。この粗生成物を用いて上記した方法で2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は78%であった。
【0048】
《実施例3》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
α−ピコリンの代わりに、ピリジン8.3ml(2モル当量)を用いて、実施例2と同様にして反応を行ったところ、2時間反応後の変換率は78%であり、また2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は75%であった。
【0049】
《実施例4》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
無水塩化マグネシウムの使用量(2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対するモル当量)を、以下の表1に示す量に変えて、実施例2と同様にして反応を行った結果、2時間反応後の変換率および2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は、表1に示すとおりであった。
【0050】
【表1】
【0051】
《実施例5》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
トルエンの代わりにヘプタン40mlを使用した以外は、実施例2と同様にして反応を行った結果、2時間反応後の変換率は74%、および2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は、78%であった。
【0052】
《実施例6》[2−メチル−2−(3−メチルブタノイル)アセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−CH2CH(CH3)2である化合物の合成]
ヘキサノイルクロリドの代わりに、3−メチルブタノイルクロリド6.03g(1モル当量)を使用して、実施例2と同様にして反応を行った結果、2時間反応後の変換率は69%、および2−メチル−2−(3−メチルブタノイル)アセト酢酸t−ブチルエステルの収率(出発原料である2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は、65%であった。
【0053】
《比較例1》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
100mlのナスフラスコに、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステル8.60g(0.05モル)を入れ、そこに無水テトラヒドロフラン30mlを加えて溶解した後、氷浴にて5℃に冷却して撹拌しながら、60%水素化ナトリウム2.01g(0.05モル、1モル当量)をゆっくり加え、5℃で水素の発生が収まるまで反応させた。さらに5℃の温度で15分反応させた後、ヘキサノイルクロリド6.73g(1モル当量)を滴下して加え、さらに5℃で15分反応させた後、還流温度まで加熱して1時間反応させた。ガスクロマトグラフィーにて反応を確認して、上記した方法で変換率を測定したところ98.6%であった。しかしながら、ヘキサノイル基付加のC−/O−選択性[前記した反応式において一般式(III)で表されるC−アシル化物と一般式(VI)で表されるO−アシル化物の比率]は、67/33であり、2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルへの選択性は低いものであった。
【0054】
《比較例2》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル;
一般式(III)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
(1) 比較例1において、60%水素化ナトリウム2.01g(0.05モル、1モル当量)と共に無水塩化マグネシウム952mg(0.2モル当量)を添加した以外は比較例1と同様にして反応を行ったところ、ヘキサノイル基付加のC−/O−選択性は、62/38であり、2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルへの選択性は低いものであった。
(2) 上記(1)の反応を、トルエン60mlを用いて有機溶媒中で行ったところ、ヘキサノイル基付加のC−/O−選択性は、52/48であり、2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルへの選択性は著しく低いものであった。
したがって、上記比較例1およびこの比較例2の結果から、アシルクロリドと2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルの反応を、ピリジン系化合物とマグネシウム化合物の存在下に行わずに、水素化ナトリウムの存在下または水素化ナトリウムとマグネシウム化合物の存在下で行うと、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルへの選択性が低く、2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルが高収率で得られないことが確認された。
【0055】
《実施例7》[3−ヘキサノイル−2−ブタノン;一般式(IV)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
100mlのナスフラスコに、実施例1で得られた2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステル1.0gを入れ、内部標準物質としてn−ペンタデカン204mg(2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルの1/5量)および100%ギ酸2.0g(2倍質量)を加え、室温で2日間撹拌下に反応させた。ガスクロマトグラフィーにて上記した方法により変換率を測定したところ、100%であった。また、内部標準物質を用いて上記した方法で収率を測定したところ、目的物である3−ヘキサノイル−2−ブタノンの収率(2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸t−ブチルエステルに対する収率)は97%であった。
【0056】
《実施例8》[3−ヘキサノイル−2−ブタノン;一般式(IV)においてR=−(CH2)4−CH3である化合物の合成]
酸の種類や使用量、反応温度を以下の表2に示すように変えて、非溶媒下、または溶媒(トルエン)中で、実施例7と同様の反応操作を行って3−アシル−2−ブタノンを製造したところ表2に示すとおりの結果であった。
【0057】
【表2】
【0058】
《比較例3》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸エチルエステル;一般式(III’)においてR’=−CH2CH3(エチル基)である化合物の酸性加水分解反応]
50mlのナスフラスコに、2−メチル−アセト酢酸エチルエステル2.07g(8.6ミリモル)を入れ、そこに酢酸3mlを加えて溶解した後、6M/リットルの塩酸水溶液6mlを加え、室温で一晩反応させた。ガスクロマトグラフィーにて反応を確認して、上記した方法で変換率を測定したところ45%であり、β−ケトエステル体である2−メチル−3−オキソ−オクタン酸エチルエステル[上記の一般式(VII)で表される化合物]の生成が確認され、目的物の3−ヘキサノイルー2−ブタノンの生成は確認されなかった。
【0059】
《比較例4》[2−メチル−2−ヘキサノイルアセト酢酸エチルエステル;一般式(III’)においてR’=−CH2CH3(エチル基)である化合物のアルカリ性加水分解反応]
(1) 50mlのナスフラスコに、水酸化ナトリウム833mg(1モル当量)を入れ、エタノール15mlを加えて溶解した後、室温下で撹拌しながら、そこに2−メチル−アセト酢酸エチルエステル4.84g(0.02モル)を加え、室温で1時間反応させた。ガスクロマトグラフィーにて反応を確認して、上記した方法で変換率を測定したところ100%であり、β−ケトエステル体である2−メチル−3−オキソ−オクタン酸エチルエステル[上記の一般式(VII)で表される化合物]の生成が確認され、目的物である3−ヘキサノイルー2−ブタノンの生成を確認することができなかった。
(2) また、エタノール/水混合溶媒(1/1容量比)を30ml用いて、上記(1)と同条件で反応を行ったところ、やはりβ−ケトエステル体である2−メチル−3−オキソ−オクタン酸エチルエステルの生成のみが確認され、目的物である3−ヘキサノイルー2−ブタノンの生成を確認することができなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明の方法による場合は、マリン様、グリーン様の香気を有し香料として有用な、3−メチル−2,4−ノナジオンに代表される3−アシル−2−ブタノン類を、温和な条件下に、簡便な操作で、経済的に、高い選択率で、収率よく、高純度で製造することができる。
本発明の方法による場合は、3−アシル−2−ブタノンを製造する際の合成中間体である2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを、温和な条件下に、簡便な操作で、経済的に、高い選択率で、収率よく製造することができる。
本発明の方法により得られる3−アシル−2−ブタノンは、高純度で副生物の含有量が少ないので、通常の蒸留などの簡単な精製処理を施すだけで、香料などとして有効に用いることができる。
Claims (10)
- 下記の一般式(I);
で表されるアシルクロリドと、下記の化学式(II);
で表される2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを製造し、該2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルを酸の存在下に脱炭酸して、下記の一般式(IV);
で表される3−アシル−2−ブタノンにすることを特徴とする3−アシル−2−ブタノンの製造方法。 - 2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの脱炭酸を、ギ酸および/またはp−トルエンスルホン酸の存在下で行う請求項1に記載の製造方法。
- マグネシウム化合物(b)を、2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルに対して0.01〜0.5モル当量で用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- ピリジン系化合物(a)が、α−ピコリン、ピリジンおよび2,6−ルチジンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- マグネシウム化合物(b)が、無水の塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシドおよびマグネシウムアセチルアセトナートから選ばれる少なくとも1種の無水マグネシウム化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- マグネシウム化合物(b)が、無水塩化マグネシウムおよび/または無水臭化マグネシウムである請求項6に記載の製造方法。
- アシルクロリドと2−メチル−アセト酢酸t−ブチルエステルの反応を、トルエン、ヘプタンおよびテトラヒドロフランから選ばれる有機溶媒の1種または2種以上中で行う請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 2−メチル−2−アシルアセト酢酸t−ブチルエステルの脱炭酸を、ギ酸および/またはp−トルエンスルホン酸の存在下に行う請求項9に記載の製造方法。
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