JP4783357B2 - 締結具固定構造 - Google Patents
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Description
なお、閉断面の大きさが、溶接トーチを挿入して溶接作業が可能な巨大な閉断面構造体であれば、閉断面内における溶接が可能であるが、この場合は、閉断面内の限られたスペースで溶接を行っているので、溶接作業が行い難いという問題点がある。
このため、閉断面構造体内にベースプレートや締結具や締結具附属等の部品(以下、単に「部品」という)を溶接手段で固定する場合は、部品を閉断面構造体の外周面に溶接することに限られていた。
(1) 閉断面構造体の壁面に、閉断面に内設する部品を搬入することが可能な大きさの孔を穿設し、その孔から閉断面内に前記部品を入れて閉断面の内壁に取り付ける方法。
(2) 断面コ字状のアウタ部材およびインナ部材の2つの部材で閉断面を有する閉断面構造体を形成する方法であって、その2つの部材を結合する前に閉断面の内壁を形成する箇所に予め部品を取り付けておく方法。
(3) 閉断面構造体の閉断面内に部品を設置することを廃止して、構造部材の外周面に部品を固定する方法。
したがって、閉断面構造体内に被締結部を設けるために設置するベース部材等の部品を、溶接代を設けるなどして必要以上に大きくする必要がないので、閉断面構造体内に設けるそれらの部品を小型化して、重量を最小限に抑制することができる。これにより、閉断面構造体に締結具を低コストで固定することができるようになる。
本発明に係る締結具固定構造は、閉断面を有する閉断面構造体内に、ベース部材等を介在して被締結部を設けて、閉断面構造体外の締結具を閉断面構造体内の被締結部に固定するものである。以下、本発明の実施形態の一例として、車両に搭載するシートベルトを車体に固定するためのシートベルトアンカを締結具(ボルト)で、閉断面構造体(サイドシル)内の被締結部(ナット)に固定する場合を例に挙げて説明する。
なお、車両の進行方向を「前」、後退方向を「後」、車幅方向を「左」、「右」として説明する。まず、締結具(ボルト)を説明する前に、この締結具(ボルト)が固定される車両、車体、および閉断面構造体(サイドシル)について説明する。
車両(図示せず)は、車体の左右側方に、前後方向に延設した図1(a)に示す閉断面構造体1からなるサイドシル11をそれぞれ備えている。車両は、閉断面構造体1を有する自動車であればよく、車両の型式等は特に限定されない。以下、乗用車の車体右側下方に搭載したサイドシル11を例に挙げて実施形態を説明する。
なお、車両には、サイドシル11以外に、閉断面構造体1としてのフレーム部材等を各所に備えており、そのフレーム部材等に各種部品が締結具(ボルト2)と被締結部(ナット6(図3参照))とで固定されている。
図1(a)に示すように、閉断面構造体1は、少なくとも閉断面1aを有する長尺の金属製部材からなる。
サイドシル11は、車両軽量化のためにアルミニウム材またはアルミニウム合金材等の軽金属(以下、単に「アルミ」という)によって形成されたフレーム部材であり、押し出し成形したアルミ押し出し成形品からなる。サイドシル11は、車体の一部を構成する部材であり、車両の車体フロア部において、不図示のフロントピラーやセンタピラーなどと連結して一体に形成されている。サイドシル11は、略四角形の閉断面1aを有し、両端部に開口端部1d,1dを有する長尺の筒状部材からなり、当該サイドシル11の内側および外側に、適宜に補強部材12が設置されている。
図2および図3に示すように、ボルト2(締結具)は、シートベルトアンカ3をサイドシル11の開口1cに配置したベース部材4に固定するための部材であり、例えば、汎用の六角ボルトからなる。ボルト2は、シートベルトアンカ3を介在して、ベース部材4のボルト挿通孔4a、ブラケット5のボルト挿通孔5aを挿通してナット6のねじ孔6aに螺合することで、シートベルトアンカ3をサイドシル11に固定されている。ボルト2およびナット6は、鉄製(鋼製)または鉄合金製のものからなる。
シートベルトアンカ3は、シートベルト8(図6参照)の一端を車体に固定するための金具であり、全体が正面視してヘの字状に折曲された金属製厚板部材からなる。シートベルトアンカ3は、ボルト2が挿通されるボルト挿通孔3aと、中央部にボルト挿通孔3aが穿設されたベース部材4の表面側に密着する座部3cと、シートベルト8の端部を挿通させるためのベルト挿通孔3bと、このベルト挿通孔3bが穿設されたベルト連結部3dと、を有する。
図2および図3に示すように、ベース部材4は、サイドシル11の開口1cを閉断面1aの内側から閉塞するための部材であり、開口1cより大きな平板状部材からなる。ベース部材4は、例えば、略六角形のアルミの厚板部材からなる。ベース部材4には、ボルト挿通孔4aと、リベット挿通孔4b,4bと、位置決め凸部4c,4cと、が穿設されている。ベース部材4は、サイドシル11の前後両端に形成した開口端部1d(図1(a)参照)から治具(図示せず)によって閉断面1a内に挿入されて、開口1cを閉塞する位置に位置決めして配置される。
リベット挿通孔4b,4bは、一対のリベット7がそれぞれ挿通される孔であり、リベット挿通孔1e,1eに合致するように設けられている。
位置決め凸部4c,4cは、ブラケット5の位置決め部5d,5dに係合することによって、ブラケット5をベース部材4の所定位置に設置するための部位である。位置決め凸部4c,4cは、ボルト挿通孔4aとリベット挿通孔4bとの間に、前記位置決め部5d,5dに合致するように設けられている。この位置決め凸部4c,4cは、例えば、この位置決め凸部4c,4cがあるベース部材4の反対側にポンチ等を打つことによって、ブラケット側に膨らんだ形状に形成されている。なお、この位置決め凸部4c,4cは、ベース部材4に固定または着脱自在な棒状の部材やピン等であっても構わない。
図3に示すように、ブラケット5は、鉄製のナット6をアルミ製のベース部材4に固定させるための部材であり、車両前後方向から見てコ字状に折曲形成したアルミ製の厚板部材からなる。ブラケット5は、ボルト挿通孔5aと、突出片5b,5bと、係合部5cと、位置決め部5d,5dと、を有している。
突出片5b,5bは、ブラケット本体5eの上下端部からそれぞれナット6(被締結部)側に突設されて、被締結用ベース6bを上下両側から支持して被締結用ベース6bが上下動するのを阻止するように形成されている。突出片5b,5bは、ブラケット本体5eと一体に形成して折曲形成したものでも、溶接してブラケット本体5eに接合したものであってもどちらでも構わない。
位置決め部5d,5dは、位置決め凸部4c,4cが係合する部位であり、ブラケット本体5eの前後端部の中央に切欠形成した半円状のものからなる。位置決め部5d,5dは、ブラケット5をベース部材4の所定位置に設置するための位置決め部材としての役目と、ボルト2を回動してボルト締めするときに、ナット6およびブラケット5が回動するのを阻止する回転防止部の役目と、を果たす。なお、この位置決め部5d,5dは、位置決め凸部4c,4cが係合するものであればよく、円形のものであっても構わない。
ブラケット本体5eは、ベース部材4の閉断面内側に固定されて、前後方向に長く形成された平板状の略長方形の形状をしている。突出片5b,5b間に被締結用ベース6bを挿入して、その係合部5c,5cに突起6c,6cを係合させたときに、ブラケット本体5eが、ナット6と一体に形成された被締結用ベース6bに密着するように設置されている。
ちなみに、溶接部C(図2参照)は、ブラケット5とベース部材4とをミグ溶接、ミグスポット溶接等で溶接する箇所であり、例えば、ブラケット5の前側端部とこの前側端部に連続する前側上端部とに設けられる。
図4(a)、(b)に示すように、リベット7は、ベース部材4をサイドシル11の閉断面1a内に固定するための締結部材である。リベット7は、リベット本体であるスリーブ7aをサイドシル11の表面側から取り付けることが可能な周知の片側工法に使用されるリベットからなる。リベット7は、スリーブ7aと、このスリープ7a内に進退自在に挿入されたピン7bと、から主に構成されている。
スリーブ7aは、リベット挿通孔1e,4eに挿通される筒状の部材からなり、表面側の端部に形成されてサイドシル11の壁面1bに当接するフランジ部7eと、閉断面側の内端に形成されてピン7bの頭部7cに押されて座屈変形する座屈部7dと、を有している。
ピン7bは、閉断面側の先端に頭部7cを有する棒状の部材によって形成されている。リベット7のスリーブ7aおよびピン7bは、例えば、アルミ製の材料によって形成されている。
前記リベット7は、サイドシル11の表面側からリベット挿通孔1eおよびベース部材4をリベット挿通孔4bに挿入した後、ピストル状のリベッター(図示せず)によってピン7bを表面側へ引っ張ることで、このピン7bの先端に形成した頭部7cがスリーブ7aに食い込んでスリーブ7aの端部に形成された座屈部7dを外側に拡開させてかしめ固定することが可能になっている。また、ピン7bの余分な箇所(2点鎖線で示す箇所)は、最終的に破段する。
図5および図6に示すように、ナット6(被締結部)は、ボルト2(締結具)のねじ部2aがねじ孔6aに螺合することで、このナット6とボルト2との間に介在された部材を固定させるための固定部である。ナット6は、ねじ孔6aを有する鉄製の筒部6dと、上下方向に突出した突起6c,6cを有する鉄製の被締結用ベース6bと、を溶接手段等で一体に固定するか、または、筒部6dと被締結用ベース6bと鉄製材料で一体形成すことによって形成されている。
溶接部D(図2参照)は、ナット6の被締結用ベース6bの配置部分近傍にてブラケット5とベース部材4とをミグ溶接、ミグスポット溶接等で溶接する箇所であり、例えば、被締結用ベース6bの後側端部近傍とこの後側端部に連続する後側上端部近傍である。
次に、図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係る締結具固定構造の作用を説明する。
この場合、まず、図3に示すナット6の突起6c,6cをブラケット5の係合部5c,5cに係合する。図2に示すように、被締結用ベース6bの端部の配置部分近傍にて、ブラケット5とベース部材4とを、溶接部Dを溶接することによって接合する。
このようにリベット7を使用して閉断面1a内のベース部材4をサイドシル11に固定することにより、サイドシル11の外側でリベットの取り付け作業ができるようになり、作業性がよい。
次に、図4(a)、(b)に示すように、ボルト2のねじ部2aを、ボルト挿通孔3a,4a,5aを介してねじ孔6aに螺合することによって、シートベルトアンカ3をベース部材4に固定する。
このため、溶接部A〜Dを大きくして溶接代を多く取ることが不用で、ベース部材4やブラケット5を必要以上に大きくする必要がないため、それらの部材を小型化してコストおよび重量を最小限に抑制することができる。
ナット6は、汎用の座付ナットの座金部分をブラケット5に係止するようにしたものであっても構わない。
1a 閉断面
1b 壁面
1c 開口
1d 開口端部
2 ボルト(締結具)
3 シートベルトアンカ
4 ベース部材
5 ブラケット
6 ナット(被締結部)
6b 被締結用ベース
7 リベット
8 シートベルト
11 サイドシル
Claims (3)
- 車両に搭載される筒状のフレーム部材からなり、その一端に開口端部を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の閉断面構造体の壁面に開口を穿設し、当該開口より大きなアルミニウム製またはアルミニウム合金製のベース部材を、前記開口端部から前記閉断面構造体内に挿入させて前記開口を閉塞する位置に配置し、シートベルトを車体に固定するためのシートベルトアンカを介在して、前記閉断面構造体の外側に設けた鉄製の締結具を前記閉断面構造体内に設けた鉄製の被締結部に締結させた締結具固定構造であって、
前記被締結部は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製のブラケットを介在して前記ベース部材に固定され、
前記ブラケットは、車両前後方向に長く形成された平板状のブラケット本体と、
該ブラケット本体の上下端部からそれぞれ前記被締結部側に突設された突出片と、を有し、
前記被締結部に設けた被締結用ベースの上下両端部に形成された突起が前記突出片の基端部略中央に穿設された係合部に挿入されると共に、前記ベース部材に溶接固定させたことを特徴とする締結具固定構造。 - 前記閉断面構造体および前記ベース部材には、前記閉断面構造体内に設けた前記ベース部材を前記閉断面構造体の外側からリベットを挿入して固定するためのリベット挿通孔がそれぞれ形成され、
前記リベットは、前記閉断面構造体内側の先端に頭部を有するピンと、
前記ピンが挿入される筒状のスリーブと、からなり、
前記スリーブは、前記リベットで前記ベース部材を前記閉断面構造体内に取り付ける際に、一端に形成され前記閉断面構造体の壁面に当接するフランジ部と、
他端に形成され前記閉断面構造体内側に配置された前記頭部に押圧されて座屈する座屈部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の締結具固定構造。 - 前記ブラケットは、前記ベース部材の所定位置に形成された位置決め凸部に係合して当該ブラケットを前記ベース部材に位置決めする位置決め部を、前記ブラケット本体の車両前後方向の両端部に有すると共に、
当該両端部の少なくとも一方側を、前記ベース部材に溶接していること特徴とする請求項1または請求項2に記載の締結具固定構造。
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