以下に、本発明に係るガス絶縁母線の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るガス絶縁母線の縦断面図、図2は、図1におけるA部の詳細図、図3は、図2におけるB−B断面図、図4は、図2におけるC−C矢視図である。
図1〜図4に示すように、本実施の形態に係るガス絶縁母線では、例えば六フッ化硫黄(SF6)などの絶縁ガスが充填された円筒状の金属容器1内に主回路導体2が収納されている。金属容器1は、長手方向を例えば水平にして配置されている。なお、金属容器1は垂直に、或いは傾斜させて配置してもよい。軸線3は、金属容器1の主胴の中心軸である。主回路導体2は、軸線3と平行に延設され、例えば主回路導体2の軸線は軸線3と一致している。主回路導体2は電圧が印加され電流が流れる通電部である。主回路導体2は、例えば断面円環状でその断面の外形は円形である。主回路導体2は、三相のうちの一相用を表しており、残り二相の構成も同様である。
金属容器1は、例えば両端部にフランジ4が形成された筒状部材からなり、この筒状部材をフランジ4で互いに締結することにより軸線3方向に複数個の筒状部材が連結されて構成されている。なお、フランジ4を形成する代わりに、例えば互いに隣接する金属容器1の主胴同士を溶接で接続する構造でもよい。金属容器1の側面には、例えば上方に分岐した枝管5と例えば下方に分岐した枝管16とが設けられている。枝管5は軸線3方向に例えば一定の間隔で配置され、同様に枝管16は軸線3方向に例えば一定の間隔で配置されている。枝管5は例えば円筒状の分岐であり、例えば軸線3方向と略直交する方向に分岐している。同様に枝管16は例えば円筒状の分岐であり、例えば軸線3方向と略直交する方向に分岐している。また、図示例では、枝管5の下方に枝管16が設けられており、枝管5の軸線と枝管16の軸線は例えば一致している。
枝管5の内径は、例えば金属容器1の主胴の内径以下とすることができる。枝管5の長さは金属容器1の長さよりも短いので、金属容器1に枝管5を形成する場合、枝管5の内径が金属容器1の主胴の内径と同じかそれよりも小さいときのほうが逆のときよりも工作上容易である。枝管5の内径が金属容器1の主胴の内径よりも大きい場合は、金属容器1を分割し、絶縁スペーサ6の周囲のみ専用の容器を製作して設置することになり、金属容器1の製作コストが増大する。同様に、枝管16の内径は、金属容器1の主胴の内径以下とすることができる。
枝管5には例えばボルト等により蓋15が取り付けられている。蓋15は金属容器1を密封し、さらに蓋15には絶縁スペーサ6が取り付けられている。ここで、絶縁スペーサ6は例えば単脚の構造である。絶縁スペーサ6は例えば柱状で、その長手方向に垂直な平面による断面形状は例えば円形である。絶縁スペーサ6の一端部には金属容器側の埋込電極である埋込電極9が埋め込まれており、この埋込電極9は例えばボルト等により蓋15に固定されている。すなわち、絶縁スペーサ6の一端部は、埋込電極9を介して金属容器1の一部である蓋15に取り付けられている。したがって、絶縁スペーサ6の一端部は、枝管5内に配置される。
なお、埋込電極9の少なくとも一部は、軸線3を中心として金属容器1の主胴の内径により規定される領域の外側に位置していることが好ましい。これにより、埋込電極9の周辺の電界が緩和される。ここで、電界は主回路導体2の通電時に金属容器1の内部に発生する電界である。なお、埋込電極9の全体を、軸線3を中心として金属容器1の主胴の内径により規定される領域の外側に配置することができ、この場合、埋込電極9の周辺の電界は最も緩和される。
絶縁スペーサ6の他端部には、シールド側の埋込電極である埋込電極10が埋め込まれている。また、絶縁スペーサ6の他端部には、埋込電極10を介して、略樽形の金属製のシールド7が取り付けられている。具体的には、シールド7は、例えばボルト等を用いて埋込電極10に固定されている。シールド7は、軸線3方向に主回路の通電部が貫通する中空構造であり、軸線3方向の両端にそれぞれ開口部11を有し、主回路導体2の接続部を覆う。また、シールド7の開口部11の径は、例えば主回路導体2の外径φd1よりも大きい。さらに、シールド7の外径は、軸線3方向の位置にかかわらず、主回路導体2の外径φd1よりも大きい。一般に、シールド7および主回路導体2の各端部の電界は大きくなる傾向にあるが、シールド7を略樽形とし、かつシールド7の外径を主回路導体2の外径φd1よりも大きくすることにより、等電位線を外側に押し出し、端部付近における電界の集中を緩和することができる。また、シールド7を略樽形とすることで、その中央部の曲率半径が大きくなり、中央部周辺の電界も緩和される。
さらに、シールド7の軸線3方向の略中央部には、その内周に沿って例えば円環板状の円環部18が設けられている。円環部18は、その外周部が略樽形の外形を成すシールド7の本体の内面に接続され、その中心軸を例えば軸線3と一致させて配置されている。そして、円環部18には例えば略円柱状のアダプタ導体12がその軸線を軸線3と平行にして挿通され、このアダプタ導体12はその一部である鍔部19を介して円環部18に固定され支持されている。鍔部19は円環部18の軸線3方向における一方の表面(例えば左側の表面)上に配置され、鍔部19と円環部18とが例えばボルト等により締結されている。後述するように、アダプタ導体12は、主回路導体2の端部間の接続に用いられる。
また、シールド7の枝管5側の外面の一部には凹部8が形成されている。絶縁スペーサ6の他端部はこの凹部8内に配置され、絶縁スペーサ6はシールド7に挟まれるようにして配置されている。したがって、埋込電極10の少なくとも一部は凹部8内に配置される。埋込電極10の少なくとも一部を樽形形状の外形よりも内側の凹部8内に配置することにより、埋込電極10周辺の電界を緩和することができる。なお、埋込電極10の全体を凹部8内に配置することもでき、この場合、埋込電極10周辺の電界は最も緩和される。
主回路導体2は、所定の長さの例えば管状導体を軸線3方向に複数接続して構成される。主回路導体2同士の接続部は例えば絶縁スペーサ6の設置箇所であり、シールド7内では、互いに接続される主回路導体2の端部22同士が対向して配置されている。すなわち、シールド7の一方の開口部11には一方の主回路導体の端部22が挿入され、シールド7の他方の開口部11には他方の主回路導体の端部22が挿入され、これらの端部22は所定の距離を隔てて互いに対向して配置され、端部22間にはアダプタ導体12が配置されている。端部22は断面の外形が例えば円形であって、その外径は例えば主回路導体2の外径φd1よりも小さい。
シールド7の一方の開口部11に挿入された一方の主回路導体の端部22は、接触子13を介してアダプタ導体12の一端部と接続され、シールド7の他方の開口部11に挿入された他方の主回路導体の端部22は、別の接触子13を介してアダプタ導体12の他端部と接続されている。ここで、接触子13は、主回路導体2との接点部が軸線3方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子13は、周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング14で束ねて構成され、端部22は、接触子13の中に圧入され、アダプタ導体12との間で電気的に接続される。したがって、互いに対向する端部22同士は、例えば接触子13とアダプタ導体12を介して、互いに電気的に接続されている。
主回路導体2の端部22同士を接触子13を用いて接続することで、主回路導体2の接続作業が容易となる。また、接触子13を、その接点部が軸線3方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体2が軸線3方向に例えば熱伸縮した場合でも、主回路導体2の伸縮に応じて、接触子13と接する端部22が移動することで、この伸縮が吸収され、接続部に伸縮に伴う過大な応力が印加されることがない。また、接触子13は通電時に発熱源となるが、接触子13は樽形のシールド7の内部に配置されているので、シールド7の内部空間と表面積の広さにより、放熱性も向上し、温度上昇による主回路導体2の熱的な影響を低減することができる。
このように、シールド7は、アダプタ導体12および接触子13を介して主回路導体2を金属容器1内で保持する。また、シールド7は、主回路導体2の端部22を覆う。なお、アダプタ導体12は、シールド7と一体構造とすることもできる。シールド7は例えばアルミニウムを材質として製作されるが、アダプタ導体12をシールド7と一体構造とした場合は、アダプタ導体12も例えばアルミニウムを材質として製作される。ただし、高い通電性能を要求される場合、アダプタ導体12をより導電性の高い例えば銅を材質として製作することが好ましい。この場合、図示例のように、アダプタ導体12をシールド7と別部品とすることにより、シールド7はその材質を変更することなく例えばアルミニウムで製作し、アダプタ導体12のみ例えば銅を材質として製作すればよいので、コストの低減にもつながる。また、アダプタ導体12を用いることにより、接触子13同士の接続構造が簡素化される。
なお、端部22の外径は主回路導体2の外径φd1よりも小さいとしたが、これは、シールド7の開口部11と主回路導体2との間の間隙をより大きくすることにより、通電時に接触子13から発生する熱をシールド7の外に逃がし易くなり、放熱性をさらに向上させることができるからである。また、シールド7の開口部11の径は、例えば主回路導体2の外径φd1よりも大きいとしているが、これも同様の効果を奏する。
本実施の形態では、絶縁スペーサ6およびシールド7は、枝管5の分岐方向(枝管5の軸線方向)に平行な方向から平面視したときに、枝管5の内径で規定される領域29の範囲内に配置される。すなわち、枝管5の内径をφd3とすると、絶縁スペーサ6およびシールド7の全体は、上記平面視で、この内径φd3で規定される例えば円形の領域29内に存在することが好ましい。こうすることで、絶縁スペーサ6とシールド7を金属容器1の外で組み立ててから枝管5を通して絶縁スペーサ6およびシールド7を金属容器1内に設置することができ、組立てが容易になる。なお、例えば枝管5の内径が枝管5の軸線方向に対して一定でない場合は、その最小の内径で規定される領域内に絶縁スペーサ6およびシールド7の全体が存在するように構成すればよい。
また、金属容器1の主胴の内径φDの1/e(e:自然対数の底)倍が、主回路導体2の外径φd1よりも大きく、かつ、シールド7の最大外径φd2よりも小さいこと、すなわち、
φd1<φD/e<φd2 ・・・(1)
であることが好ましい。これは次の理由からである。まず、主回路導体2と金属容器1とが同軸円筒であるとき、この間の空間における電界の大きさEは、
E=V/(x/2・ln(φD/2x))・・・(2)
で与えられる。ここで、Vは主回路導体2の電位、xは軸線3から径方向の任意の距離である。これから、電界の大きさEは、2x=φD/eで最小値をとることがわかる。そこで、主回路導体2の外径φd1とシールド7の最大外径φd2とを、電界の大きさが最小となる径φD/eを挟むように設定すれば、双方の電界をバランス良く小さくし、母線全体としての最大電界値を低減することができる。
また、枝管16には例えばボルト等により蓋17が取り付けられている。蓋17は金属容器1を密封する。ガス絶縁母線の組立て時には、蓋17を外した状態で、枝管16を通して主回路導体2の接続作業を金属容器1の外から目視確認することができる。シールド7の軸線3方向の長さは、枝管16の内径よりも短いことが好ましい。これにより、主回路導体2の接続時における視認性が向上し、組立作業の信頼性がさらに向上するからである。
以上のように、本実施の形態によれば、シールド7の外径を主回路導体2の外径よりも大きくすることにより、シールド7および主回路導体2の各端部に集中する電界を緩和することができる。また、本実施の形態によれば、シールド7の形状を略樽形とすることにより、シールド7および主回路導体2の各端部に集中する電界を緩和することができる。さらにまた、本実施の形態によれば、樽形形状により、シールド7の中央部の曲率半径が大きくなるので、中央部周辺の電界を緩和することができる。よって、本実施の形態によれば、金属容器1内の全体の電界を緩和することができ、ガス絶縁母線の縮小化を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ6およびシールド7を、枝管5の分岐方向(枝管5の軸線方向)に平行な方向から平面視したときに、枝管5の内径で規定される領域29の範囲内に配置するようにしたので、絶縁スペーサ6とシールド7を金属容器1の外で組み立ててから枝管5を通して金属容器1内に設置することができ、組立性が向上する。また、絶縁スペーサ6およびシールド7を金属容器1の外部で組み立てることにより、金属容器1内で組み立てる場合に比べて組立後の清掃及び点検作業がし易く、金属容器1内に金属異物が混入してガス絶縁母線の絶縁性能に悪影響を及ぼす可能性が低くなる。
また、本実施の形態によれば、単脚の絶縁スペーサ6を用いているので、二脚もしくは三脚等の複数脚構造のものまたは円錐形状のものと比較して、絶縁スペーサ6の構造が簡素化され、組立作業性が向上する。また、単脚の絶縁スペーサ6を用いることにより、複数脚の場合と比較して、絶縁スペーサ6の表面積が小さくなり、絶縁スペーサ6に金属異物が付着する可能性も少なくなる。また、単脚の絶縁スペーサ6を主回路導体2の上方に設置すれば、万一、運転中に金属容器1の底面で金属異物が挙動しても絶縁スペーサ6に付着する可能性がさらに少なくなる。加えて、絶縁スペーサ6の下方に枝管16を設置することで、万一、運転中に金属容器1の底面で金属異物が挙動して絶縁スペーサ6に接近しても、枝管16内に落下して捕獲され、低電界部である枝管16内から再浮上することがなく、絶縁スペーサ6に付着する可能性がさらに少なくなり、絶縁性能に関する大幅な信頼性の向上に寄与する。
また、本実施の形態によれば、枝管5の内径を金属容器1の主胴の内径以下としたので、金属容器1の製作コストを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、シールド7側の埋込電極10の少なくとも一部は凹部8内に配置されているので、埋込電極10周辺に集中し易い電界を緩和することができる。このように、樽形のシールド7の中央部の膨らんだ空間を利用して凹部8を設け、この凹部8内に埋込電極10の少なくとも一部を配置することにより、埋込電極10周辺の電界を緩和することができ、金属容器1の径を縮小化することができる。なお、シールド7に凹部8を形成しない構成も可能である。
また、本実施の形態によれば、金属容器1側の埋込電極9の少なくとも一部は、軸線3を中心として金属容器1の主胴の内径により規定される領域の外側に位置しているので、埋込電極9の周辺の電界が緩和される。このように、枝管5の内部空間を利用し、埋込電極9の少なくとも一部を金属容器1の主胴の内径により規定される領域の外側に配置して、電界を緩和することができるので、金属容器1の主胴の内径を増大させる必要がない。
また、本実施の形態によれば、シールド7内で端部22同士を接触子13を介して互いに電気的に接続するようにしたので、主回路導体2の接続作業が容易となる。例えば、端部22とアダプタ導体12とをボルトで固定する方法では、組立作業上の空間的制約の大きい金属容器1内でボルト締結作業が必要になるが、本実施の形態では、端部22を接触子13に挿入するのみで接続が容易である。また、接触子13をその接点部が軸線3方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体2の軸線3方向の例えば熱伸縮を寸法的に吸収することができる。
また、本実施の形態によれば、端部22同士の接続にアダプタ導体12を介在させているので、接触子13同士の接続構造が簡素化される。また、アダプタ導体12をシールド7と別部品にすることは、アダプタ導体12の材質をシールド7の材質と異なるものにする必要があるときにも好適である。
なお、端部22同士の接続にアダプタ導体12を用いない構成も可能である。図5(a)は、端部22同士の別の接続形態を示した図である。図5(a)に示すように、絶縁スペーサ6には埋込電極10を介してシールド27が取り付けられている。シールド27は、その外形が略樽形でその外面の一部に凹部8が形成されている点はシールド7と同様であるが、その内部形状はシールド7と異なる。すなわち、シールド27の両端の開口部11は円筒状で、その内径は主回路導体2の端部22の外径よりも僅かに小さい。そして、シールド27の両端部の内周面にはそれぞれ環状の溝が設けられ、各溝内には例えば環状のコイルばね接触子28が配置されている。図示例では、シールド27の各端部に例えば2個のコイルばね接触子28が設けられているが、1個ないしは3個以上でもよい。また、コイルばね接触子18に限らず、端部22のほぼ全周を覆うことができて、同様の効果を奏するバンド状の他の接触子を適用してもよい。なお、図5(b)に示すように、端部22の外径を主回路導体2の外径と同じにして、コイルばね接触子28の内径を大きくしてもよい。この場合は、主回路導体2の端部22の形状を簡素化でき、コイルばね接触子28の温度上昇による熱的な影響を低減できる。ここで、コイルばね接触子28はシールド27bの溝内に配置されている。端部22は、環状のコイルばね接触子28に挿入されて接触し、シールド27と電気的に接続される。このように、端部22同士は、それぞれコイルばね接触子28と接触することにより、シールド27を介して互いに電気的に接続される。コイルばね接触子28と端部22との接点部は、図2の接触子13と同様に、軸線3方向に摺動可能である。
また、本実施の形態によれば、端部22同士の接続に1個のシールド7と1個のアダプタ導体12を用いればよく、例えばそれぞれ2個を用いて円錐形状でのスペーサを挟んで両側に1個ずつ配置するような従来の構成と比較して、部品点数が削減されるとともに、接続部の軸線3方向における寸法が短くなり、枝管5の内径で規定される領域29の範囲内にシールド7を配置して金属容器1の外で組み立てされる上記の効果を奏しやすくなる。
また、本実施の形態では、接触子13と接続する主回路導体2の端部22の径を主回路導体2の端部22以外の部分の径φd1よりも小さくしている。このような構成により、シールド7の端部と主回路導体2との間の隙間を大きくとることができ、通電時に接触子13により発生する熱をシールド7の外に効果的に放熱することができる。よって、主回路導体2の通電性能の低下を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、シールド7の開口部11の径を主回路導体2の外径よりも大きくしている。これにより、シールド7の端部と主回路導体2との間の隙間を大きくとることができ、上記と同様の効果を奏するとともに、主回路導体2の端部22以外の部分が組立時または通電による熱膨張時に開口部11に接近したとしても、主回路導体2とシールド7とが接触して損傷することがなく、信頼性の向上に寄与する。
また、本実施の形態によれば、例えば上記(1)式を満たすように構成したので、主回路導体2の表面の電界と、シールド7の表面の電界とのバランス(絶縁協調)をとり、金属容器1の径寸法を最適化して縮小することができる。
また、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ6は例えば金属容器1の内側上部からシールド7を支持するよう構成したので、絶縁スペーサ6には運転電圧下の金属容器1内で挙動する金属異物が付着し難く、絶縁性能の信頼性が向上する。また、この場合、枝管5も金属容器1の上部に配置されることになり、主回路導体2と接触子13からの放熱が枝管5の内部空間に逃げることで放熱性が向上する。
また、本実施の形態によれば、例えば金属容器1の下部に枝管16を設けるようにしたので、この枝管16に運転電圧下の金属容器1内で挙動する金属異物を落下させて捕獲することができる。なお、シールド7の外径は主回路導体2の外径よりも大きく、シールド7の近傍では電界がより高くなるため、金属異物の挙動が激しく、金属異物のシールド7への接近現象も生じ易いので、枝管16をシールド7の下方に設けることは金属異物の捕獲に効果的である。さらに、枝管16は、蓋17をはずした状態で、主回路導体2を接触子13に接続する際の目視確認用のマンホールにもなり、組立作業性と信頼性が向上する。
また、本実施の形態では、主回路導体2の軸線と軸線3とが一致するようにしているが、偏心させて配置することも可能である。例えば主回路導体2を軸線3よりも下方に偏心させて配置することもできる。この場合は、本実施の形態と比べて、運転電圧下の金属容器1内で挙動する金属異物が主回路導体2または絶縁スペーサ6に付着しやすくなる。すなわち、本実施の形態では、絶縁性能の信頼性がより向上する。
また、シールド7の軸線3方向の長さは、枝管16の内径よりも短いことが好ましい。このような構成により、主回路導体2の接続時に、枝管16を通して接続作業を視認しながら進める際の視認性が向上する。なお、本実施の形態のその他の作用・効果は、構成の説明とともに行った通りである。
実施の形態2.
図6は、本実施の形態に係るガス絶縁母線の縦断面図、図7は、図6におけるA部の詳細図、図8は、図7におけるB−B断面図である。
図6〜図8に示すように、本実施の形態に係るガス絶縁母線では、例えば六フッ化硫黄(SF6)などの絶縁ガスが充填された円筒状の金属容器1内に、三相の主回路導体2a〜2cが一括で収納されている。金属容器1は、その主胴の中心軸である軸線3を例えば水平にして配置されている。なお、金属容器1は垂直に、或いは傾斜させて配置してもよい。主回路導体2a〜2cは、それぞれ軸線3と平行に延設されている。主回路導体2a〜2cは、例えば断面円環状でその断面の外形は円形である。
主回路導体2a〜2cは、軸線3と直交する断面において、例えば正三角形の各頂点に配置されている(図8)。すなわち、軸線3から主回路導体2a〜2cのそれぞれの中心軸までの距離は互いに等しく、かつ、それぞれの方向は互いに120°の角度差を成す。また、主回路導体2bと主回路導体2cは例えば同じ高さに配置されるとともに、主回路導体2aは、主回路導体2b,2cよりも上方に配置されている。つまり、主回路導体2a〜2cの配置で決まる正三角形は、その一辺を水平にし、かつ、当該一辺よりも上方に一頂点が配置されている。なお、主回路導体2a〜2cの配置は、必ずしも正三角形の各頂点の位置でなくてもよく、例えば二等辺三角形または他の三角形の頂点の位置でもよいが、正三角形が絶縁性能上最も好ましい。
金属容器1の側面には、軸線3方向に例えば一定の間隔で、枝管5a〜5c、16が設けられている。ここで、枝管5aは例えば上方に分岐し、枝管5bは例えば枝管5aの分岐方向と120°を成す一方の斜め下方向に分岐し、枝管5cは例えば枝管5a,5bの双方の分岐方向と120°を成すもう一方の斜め下方向に分岐する。枝管16は、例えば下方に分岐している。また、枝管5a〜5c,16は例えば円筒状の分岐であり、例えば軸線3方向と略直交する方向に分岐している。枝管5a〜5cの内径は例えば互いに等しい。
次に、主回路導体2aの絶縁支持構造について説明する。枝管5aには例えばボルト等により蓋15aが取り付けられ、さらに蓋15aには絶縁スペーサ6aが取り付けられている。絶縁スペーサ6aは例えば単脚の構造である。絶縁スペーサ6aの一端部には金属容器側の埋込電極である埋込電極9aが埋め込まれており、この埋込電極9aは例えばボルト等により蓋15aに固定されている。すなわち、絶縁スペーサ6aの一端部は、埋込電極9aを介して金属容器1の一部である蓋15aに取り付けられ、枝管5a内に配置されている。
枝管5aの内径は、例えば金属容器1の主胴の内径以下とすることができる。同様に、枝管16の内径は、金属容器1の主胴の内径以下とすることができる。
埋込電極9aの少なくとも一部は、軸線3を中心として金属容器1の主胴の内径により規定される領域の外側に位置していることが好ましい。
絶縁スペーサ6aの他端部には、シールド側の埋込電極である埋込電極10aが埋め込まれている。また、絶縁スペーサ6aの他端部には、埋込電極10aを介して、略樽形の金属製のシールド7aが取り付けられている。具体的には、シールド7aは、例えばボルト等を用いて埋込電極10aに固定されている。シールド7aは、軸線3方向に主回路の通電部が貫通する中空構造であり、軸線3方向の両端にそれぞれ開口部11aを有する。また、シールド7aの開口部11aの径は、例えば主回路導体2aの外径よりも大きい。さらに、シールド7aの外径は、軸線3方向の位置にかかわらず、主回路導体2aの外径よりも大きい。
さらに、シールド7aの軸線3方向の略中央部には、その内周に沿って例えば円環板状の円環部18aが設けられている。円環部18aには例えば略円柱状のアダプタ導体12aが挿通され、このアダプタ導体12aはその一部である鍔部19aを介して円環部18aに固定され支持されている。
また、シールド7aの枝管5a側の外面の一部には凹部8aが形成されている。絶縁スペーサ6aの他端部はこの凹部8a内に配置され、絶縁スペーサ6aはシールド7aに挟まれるようにして配置されている。この場合、埋込電極10aの少なくとも一部は凹部8a内に配置される。
シールド7a内では、互いに接続される主回路導体2aの端部22aが対向して配置されている。すなわち、シールド7aの一方の開口部11aには一方の主回路導体の端部22aが挿入され、シールド7aの他方の開口部11aには他方の主回路導体の端部22aが挿入され、これらの端部22aは所定の距離を隔てて互いに対向して配置され、端部22a間にはアダプタ導体12aが配置されている。端部22aは断面の外形が例えば円形であって、その外径は例えば主回路導体2aのその他の部分の外径よりも小さい。
シールド7aの一方の開口部11aに挿入された一方の主回路導体の端部22aは、接触子13aを介してアダプタ導体12aの一端部と接続され、シールド7aの他方の開口部11aに挿入された他方の主回路導体の端部22aは、別の接触子13aを介してアダプタ導体12aの他端部と接続されている。ここで、接触子13aは、主回路導体2aとの接点部が軸線3方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子13aは、主回路導体2aの軸線を中心にして周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング14aで束ねて構成され、端部22aは、接触子13aの中に圧入され、アダプタ導体12aとの間で電気的に接続される。したがって、互いに対向する端部22a同士は、例えば接触子13aとアダプタ導体12aを介して、互いに電気的に接続されている。なお、実施の形態1で説明したように、アダプタ導体12aを用いることなく、端部22a間を接続する構成も可能である。
このように、シールド7aは、アダプタ導体12aおよび接触子13aを介して主回路導体2aを金属容器1内で保持する。また、シールド7aは、主回路導体2aの端部22aを覆う。
以上のような、絶縁スペーサ6a、シールド7a、アダプタ導体12a、および接触子13aによる主回路導体2aの絶縁支持構造は、実施の形態1で説明した主回路導体2の絶縁支持構造と同じである。また、同様の構造は、主回路導体2b,2cについても成り立つ。詳細は省略するが、図6〜図8では、主回路導体2bを絶縁支持する絶縁スペーサ6b、この絶縁スペーサ6bに取り付けられたシールド7b、絶縁スペーサ6bに埋め込まれた埋込電極9b,10b、枝管5b、および蓋15bなどが示され、主回路導体2cを絶縁支持する絶縁スペーサ6c、この絶縁スペーサ6cに取り付けられたシールド7c、絶縁スペーサ6cに埋め込まれた埋込電極9c,10c、枝管5c、および蓋15cなどが示されている。
また、枝管16には例えばボルト等により蓋17が取り付けられている。蓋17は金属容器1を密封する。ガス絶縁母線の組立て時には、蓋17を外した状態で、枝管16を通して主回路導体2a〜2cの接続作業を金属容器1の外から目視確認することができる。また、シールド7a〜7cの軸線3方向の長さは、枝管16の内径よりも短いことが好ましい。主回路導体2a〜2cの接続時の視認性が向上し、組立作業の信頼性がさらに向上するからである。また、枝管16は、例えば金属容器1の上部から支持された主回路導体2aのシールド7aの下方に配置されている。
本実施の形態によれば、金属容器1内に三相の主回路導体2a〜2cが一括して収納されているので、実施の形態1に示す相分離形の構成に比べて、金属容器1の本数を削減することができる。
また、本実施の形態によれば、金属容器1内における三相の主回路導体2a〜2cの配置が、軸線3と直交する断面において、例えば正三角形を成すようにしたので、主回路導体2a〜2c間の距離が互いに等しくなり、相間の絶縁距離を最も効果的に確保でき、相間短絡時の電磁力も緩和することができる。
また、本実施の形態によれば、金属容器1内における三相の主回路導体2a〜2cの配置が上記のように正三角形であって、さらに例えば、正三角形の一辺が水平でかつ正三角形の一頂点が当該一辺の上方に位置するようにしたので、金属異物が堆積する可能性のある金属容器1の下部に主回路導体2a〜2cをできるだけ接近させないようにすることができ、運転電圧下における金属異物の挙動を抑制することができる。なお、三相の主回路導体2a〜2cを、上記以外の正三角形配置にし、または正三角形以外の配置にすることもできる。
また、本実施の形態によれば、金属容器1内の三相の主回路導体2a〜2cのうち、正三角形の頂部に位置する主回路導体2aを覆うシールド7aの下方に枝管16を設けるようにしたので、運転電圧下の金属容器1内で挙動する金属異物を効率的に捕獲することができる。また、枝管16は、蓋17をはずした状態で、主回路導体2a〜2cの接続時における目視確認用のマンホールにもなり、組立作業性と信頼性が向上する。
また、本実施の形態によれば、シールド7a〜7cの軸線3方向の長さは、例えば枝管16の内径よりも短いので、主回路導体2a〜2cの接続時に、枝管16を通して接続作業を視認しながら進める際の視認性が向上する。なお、本実施の形態のその他の構成、作用、効果は、相分離形の場合の特徴である例えば(1)式の関係などを除き、実施の形態1と同様である。
実施の形態3.
本実施の形態では、主回路導体の屈曲部における絶縁支持構造について説明する。図9は、本実施の形態に係るガス絶縁母線の縦断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。図10は、図9(a)におけるD部の詳細図、図11は、図10におけるF−F断面図、図12は、図9(b)におけるE部の詳細図である。
まず、図9を参照して、本実施の形態の概略構成について説明する。なお、図9では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。円筒状の金属容器1a内には主回路導体20aが収納されている。金属容器1aは長手方向を例えば水平にして配置されている。軸線3aは金属容器1aの主胴の中心軸である。主回路導体20aは、例えば断面円環状でその断面の外形は円形である。主回路導体20aは、軸線3aと平行に延設され、例えば主回路導体20aの中心軸線は軸線3aと一致している。金属容器1aは、例えば両端部にフランジ4が形成された筒状部材からなり、この筒状部材をフランジ4で互いに締結することにより軸線3a方向(第1の方向)に複数個の筒状部材が連結されて構成されている。なお、図9では、軸線3a方向に連結された金属容器をいずれも同じ符号1aを用いて記載している。正確には、軸線3a方向に連結された金属容器の形状は例えば端部等において異なるため(例えば、枝管16が形成された金属容器と枝管38が形成された金属容器とでは端部等の形状が異なる)、異なる符合を付すべきものであるが、同一の方向である軸線3a方向に延設された金属容器を表すものとして、簡単のため同一の符号1aを付している。
金属容器1aには、実施の形態1で説明した絶縁支持構造が例えば2箇所に設けられている。すなわち、金属容器1aの主胴の側面には、例えば上方に分岐した枝管5が設けられ、この枝管5を密封するその蓋には例えば単脚の構造の絶縁スペーサ6が取り付けられている。また、絶縁スペーサ6の先端部には、略樽形の金属製のシールド7が取り付けられている。また、金属容器1aの主胴の側面には、枝管5と対向するように、例えば下方に分岐した枝管16が設けられている。なお、詳細は実施の形態1で説明した通りであるので省略する。
金属容器1aの端部52には、金属容器1aの主胴の側面から分岐する枝管60(主回路用枝管)が設けられている。枝管60の軸線方向は、例えば水平方向でかつ軸線3a方向と略直交する方向である。さらに、金属容器1aの端部52には、軸線3aを挟んで枝管60と対向するように、枝管50が設けられている。枝管50の分岐方向は、例えば枝管60の分岐方向と逆向きである。
金属容器1aの枝管60には金属容器1bが接続されている。金属容器1bは長手方向を例えば水平にして配置されている。また、金属容器1bの主胴の中心軸である軸線3bは軸線3aと例えば略直交している。すなわち、金属容器1aと金属容器1bは互いの延伸方向が略直交するように接続されている。また、枝管60の軸線方向は、軸線3b方向(第2の方向)と略平行である。金属容器1bの形状は例えば金属容器1aの形状と同じである。金属容器1b内には主回路導体20bが収納されている。主回路導体20bは、例えば断面円環状でその断面の外形は円形である。主回路導体20bは、軸線3bと平行に延設され、例えば主回路導体20bの中心軸線は軸線3bと一致している。したがって、主回路導体20bの延伸方向と主回路導体20aの延伸方向は略直交している。また、主回路導体20bの端部と主回路導体20aの端部は、金属容器1aの端部52内で互いに接続されている。主回路導体20aと主回路導体20bとの接続部は、互いの延伸方向が変化する部位(屈曲部)である。以下では、主回路導体20a,20bの双方を表す場合は、主回路導体20で表す。図9では、主回路導体20が例えばL字状に屈曲する場合の配置構成の例を示している。
主回路導体20の屈曲部は、金属容器1aの端部52内において、例えば単脚の構造の絶縁スペーサ55により絶縁支持されている。また、絶縁スペーサ55の一端部は金属容器1aの端部52に固定され、その他端部にはシールド33が取り付けられている。そして、シールド33は主回路導体20の屈曲部を覆っている。絶縁スペーサ55は、例えば絶縁スペーサ6と同一のものとすることができる。
また、金属容器1aの主胴の下部には下方に分岐する枝管38(下部枝管)が設けられている。また、枝管38は、軸線3a方向において枝管60の位置よりも端部52から離れた位置に設けられている。枝管38の軸線は、例えば軸線3aと略直交している。また、金属容器1a,1b内には例えばSF6ガス等の絶縁ガスが封入されている。
次に、図9〜図12を参照して、本実施の形態の詳細構成について説明する。D部およびE部は、主回路導体20の屈曲部における絶縁支持構造の詳細を示すものである。
上記のように、金属容器1aの端部52には、枝管50および枝管60が設けられている。枝管50は蓋51で閉塞されている。ここで、枝管50および枝管60の内径は、それぞれ例えば金属容器1aの主胴の内径φD以下とすることができる。枝管50および枝管60の長さは、それぞれ金属容器1aの長さよりも短いので、金属容器1aに枝管50および枝管60を形成する場合、枝管50および枝管60の内径が金属容器1aの主胴の内径と同じかそれよりも小さいときのほうが逆のときよりも工作上容易である。
金属容器1aの端部52には例えばボルト等(図示せず)により蓋53が取り付けられている。蓋53は金属容器1aを密封し、さらに蓋53には絶縁スペーサ55が取り付けられている。ここで、絶縁スペーサ55は例えば単脚の構造である。絶縁スペーサ55は例えば柱状で、その長手方向に垂直な平面による断面形状は例えば円形である。絶縁スペーサ55は、例えばその軸線方向が金属容器1aの主胴の軸線3a方向と略平行に配置されている。絶縁スペーサ55の一端部には金属容器側の埋込電極である埋込電極54が埋め込まれており、埋込電極54は例えばボルト等(図示せず)により蓋53に固定されている。すなわち、絶縁スペーサ55の一端部は、埋込電極54を介して金属容器1aの一部である蓋53に取り付けられている。
なお、埋込電極54の少なくとも一部は、軸線3bを中心とし枝管60の内径により規定される領域の外側に位置している。これにより、埋込電極54の周辺の電界が緩和される。埋込電極54の全体を、軸線3bを中心とし枝管60の内径により規定される領域の外側に配置すれば、埋込電極54の周辺の電界は最も緩和される。
絶縁スペーサ55の他端部には、シールド側の埋込電極である埋込電極56が埋め込まれている。また、絶縁スペーサ55の他端部には、埋込電極56を介して、金属製のシールド33が取り付けられている。具体的には、シールド33は、例えばボルト等(図示せず)を用いて埋込電極56に固定されている。
シールド33は、軸線3a方向に向かって開口する開口部70(第1の開口部)と軸線3b方向に向かって開口する開口部71(第2の開口部)とを有し、中空でかつ外形が略紡錘形形状又は略樽形形状であり、主回路導体2の屈曲部(接続部)を覆っている。
また、シールド33の開口部70の径は、例えば主回路導体20aの外径φd1よりも大きい。さらに、シールド33の外径は、軸線3a方向の位置にかかわらず、主回路導体20aの外径φd1よりも大きい。また、シールド33の開口部71の径は、例えば主回路導体20bの外径φd1よりも大きい。さらに、シールド33の外径は、軸線3b方向の位置にかかわらず、主回路導体20bの外径φd1よりも大きい。なお、主回路導体20aの外径と主回路導体20bの外径は例えばいずれも等しく、φd1に設定されている。一般に、シールド33および主回路導体20a,20bの各端部の電界は大きくなる傾向にあるが、シールド33を略紡錘形または略樽形とし、かつシールド33の外径を主回路導体20a,20bの外径φd1よりも大きくすることにより、等電位線を外側に押し出し、各端部付近における電界の集中を緩和することができる。また、シールド33を略紡錘形または略樽形とすることで、その中央部の曲率半径が大きくなり、中央部周辺の電界も緩和される。また、シールド33の開口部71と軸線3aを挟んで反対側の端部は、例えば球状を成し、表面の電界を緩和する構造となっている。さらにまた、シールド33の当該端部に枝管50が対向する配置とすることで表面の電界がさらに緩和される。
なお、シールド33は、実施の形態1のシールド7の形状との比較でいえば、シールド7の軸方向の両端の開口部の一方が主回路導体20aに向かい、両端の開口部の他方が主回路導体20bの方向を向かうように、その軸方向の中央付近で滑らかに折り曲げて屈曲させ、開口部70は軸線3a方向を向き、開口部71は軸線3b方向を向くようにしたものとみなすことができる。このように、軸線は2方向に形成されてはいるものの、略樽形形状または略紡錘形形状を屈曲させたものに対応すること、および中央付近は端部付近よりも脹らんだ形になっているという意味で、シールド33は、略樽形または略紡錘形ということができる。
シールド33の絶縁スペーサ55側の外面の一部には凹部34が形成されている。絶縁スペーサ55の他端部はこの凹部34内に配置され、絶縁スペーサ55はシールド33に挟まれるようにして配置されている。したがって、埋込電極56の少なくとも一部は凹部34内に配置される。埋込電極56の少なくとも一部を略樽形形状または略紡錘形形状の外形よりも内側の凹部34内に配置することにより、埋込電極56周辺の電界を緩和することができる。なお、埋込電極56の全体を凹部34内に配置することもでき、この場合、埋込電極56周辺の電界は最も緩和される。
また、シールド33内には、アダプタ導体32が配置されている。アダプタ導体32は、上面視で略L字形状であり(図10)、軸線3a方向に延伸する第1の腕部と軸線3b方向に延伸する第2の腕部を有し、アダプタ導体32は凹部34を介して埋込電極56に例えばボルト等(図示せず)により取り付けられている。アダプタ導体32は、上記L字の一方の辺に相当する第1の腕部が軸線3aと平行であり、上記L字の他方の辺に相当する第2の腕部が軸線3bと平行であって、主回路導体20の屈曲した軸線と沿うように同じく屈曲している。アダプタ導体32は、主回路導体20a,20bの端部間の接続に用いられる。
シールド33内には、開口部70を介して主回路導体20aの端部31aが挿入されるとともに、開口部71を介して主回路導体20bの端部31bが挿入されている。端部31aは断面の外形が例えば円形であって、その外径は例えば主回路導体20aの外径φd1よりも小さい。端部31aは軸線3a方向に延伸する。端部31bは断面の外形が例えば円形であって、その外径は例えば主回路導体20bの外径φd1よりも小さい。端部31bは軸線3b方向に延伸する。
シールド33の一方の開口部70に挿入された主回路導体20aの端部31aは、接触子36a(第1の接触子)を介してアダプタ導体32の第1の腕部の端部と接続されている。アダプタ導体32の当該端部は端部31aと同径である。シールド33の他方の開口部71に挿入された主回路導体20bの端部31bは、接触子36b(第2の接触子)を介してアダプタ導体32の第2の腕部の端部と接続されている。アダプタ導体32の当該端部は端部31bと同径である。ここで、接触子36aは、主回路導体20aの端部31aとの接点部が軸線3a方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子36aは、周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング37aで束ねて構成され、端部31aは、接触子36aの中に圧入され、アダプタ導体32との間で電気的に接続される。また、接触子36bは、主回路導体20bの端部31bとの接点部が軸線3b方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子36bは、周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング37bで束ねて構成され、端部31bは、接触子36bの中に圧入され、アダプタ導体32との間で電気的に接続される。したがって、互いに略直交する端部31a,31b同士は、例えば接触子36a,36bとアダプタ導体32を介して、互いに電気的に接続されている。
主回路導体20aの端部31aを、接触子36aを用いてアダプタ導体32と接続することで、主回路導体20aの接続作業が容易となる。同様に、主回路導体20bの端部31bを、接触子36bを用いてアダプタ導体32と接続することで、主回路導体20bの接続作業が容易となる。また、接触子36aを、その接点部が軸線3a方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体20aが軸線3a方向に例えば熱伸縮した場合でも、主回路導体20aの伸縮に応じて、接触子36aと接する端部31aが移動することで、この伸縮が吸収され、接続部に伸縮に伴う過大な応力が印加されることがない。同様に、接触子36bを、その接点部が軸線3b方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体20bが軸線3b方向に例えば熱伸縮した場合でも、主回路導体20bの伸縮に応じて、接触子36bと接する端部31bが移動することで、この伸縮が吸収され、接続部に伸縮に伴う過大な応力が印加されることがない。また、接触子36a,36bは通電時に発熱源となるが、接触子36a,36bは略樽形または略紡錘形のシールド33の内部に配置されているので、シールド33の内部空間と表面積の広さにより、放熱性も向上し、温度上昇による主回路導体20a,20bの熱的な影響を低減することができる。
このように、シールド33は、アダプタ導体32および接触子36a,36bを介して主回路導体20の屈曲部(接続部)を金属容器1a内で保持する。また、シールド33は、主回路導体20aの端部36aと主回路導体20bの端部36bを覆う。
なお、アダプタ導体32は、シールド33と一体構造とすることもできる。シールド33は例えばアルミニウムを材質として製作されるが、アダプタ導体32をシールド33と一体構造とした場合は、アダプタ導体32も例えばアルミニウムを材質として製作される。ただし、高い通電性能を要求される場合、アダプタ導体32をより導電性の高い例えば銅を材質として製作することが好ましい。この場合、図示例のように、アダプタ導体32をシールド33と別部品とすることにより、シールド33はその材質を変更することなく例えばアルミニウムで製作し、アダプタ導体32のみ例えば銅を材質として製作すればよいので、コストの低減にもつながる。また、アダプタ導体32を用いることにより、接触子36a,36bを用いた接続構造が簡素化される。
なお、端部31aの外径は主回路導体20aの外径φd1よりも小さいとしたが、これは、シールド33の開口部70と主回路導体20aとの間の間隙をより大きくすることにより、通電時に接触子36aから発生する熱をシールド33の外に逃がし易くなり、放熱性をさらに向上させることができるからである。また、シールド33の開口部70の径は、例えば主回路導体20aの外径φd1よりも大きいとしているが、これも同様の効果を奏する。同様に、端部31bの外径は主回路導体20bの外径φd1よりも小さいとしたが、これは、シールド33の開口部71と主回路導体20bとの間の間隙をより大きくすることにより、通電時に接触子36bから発生する熱をシールド33の外に逃がし易くなり、放熱性をさらに向上させることができるからである。また、シールド33の開口部71の径は、例えば主回路導体20bの外径φd1よりも大きいとしているが、これも同様の効果を奏する。
また、本実施の形態では、絶縁スペーサ55およびシールド33は、軸線3a方向から平面視したときに、例えば金属容器1aの内径φDで規定される領域の範囲内の大きさである。こうすることで、絶縁スペーサ55とシールド33を金属容器1aの外で組み立ててから金属容器1aの端部52から絶縁スペーサ55およびシールド33を金属容器1a内に設置することができ、組立てが容易になる。
また、金属容器1aの主胴または枝管60の内径φDの1/e(e:自然対数の底)倍が、主回路導体20の外径φd1よりも大きく、かつ、シールド33の最大外径φd2よりも小さいこと、すなわち、
φd1<φD/e<φd2 ・・・(3)
であることが好ましい。これは、実施の形態1で説明したように、主回路導体20の外径φd1とシールド33の最大外径φd2とを、電界の大きさが最小となる径φD/eを挟むように設定すれば、双方の電界をバランス良く小さくし、母線全体としての最大電界値を低減することができるからである。
金属容器1aの下部に設けられた枝管38には、例えばボルト等(図示せず)により蓋39が取り付けられている。蓋39は金属容器1aを密封する。枝管38は、運転電圧下の金属容器1a内で挙動する金属異物を捕獲することができる。枝管38は、軸線3a方向に枝管60と隣接して設けられている。主回路導体20の屈曲部では金属容器1aの複数の枝管(枝管50,60)が互いに近接しているため、さらに枝管38を軸線3a方向において枝管50,60と同じ位置の下部に設ける構成は製作上も困難であり、圧力容器としての強度も厳しくなるため、枝管38の位置を軸線3a方向において枝管50,60の位置からずらして配置している。これにより、構造上有利となり、圧力容器としての強度も確保できる。枝管38は、ガス絶縁母線の組立て時には、蓋39を外した状態で、主回路導体20aを接触子36aに接続する際と、主回路導体20bを接触子36bに接続する際の目視に使用されるが、上記のように枝管38の位置をずらしたとしても双方の目視確認は容易であり、組立作業性と信頼性の向上に寄与する。
なお、上記説明では、軸線3aと軸線3bとが略直交する場合の例について示したが、本実施の形態は、一般に軸線3aと軸線3bとが交差する場合について適用可能である。この場合、アダプタ導体32は、軸線間の交差角度に応じたV字形の形状とすればよい。また、上記説明では、主回路導体20a,20bは例えば水平面内で接続されているとしたが、これに限定されず、例えば主回路導体20bが水平面内に対して傾斜していてもよい。例えば、主回路導体20bが主回路導体20aに対して鉛直上方に延伸するように接続されている場合は、枝管60は上方を向き、枝管50は下方を向くこととなる。この場合は、枝管50が下方を向いているので、ガス絶縁母線の組立て時の目視用や、シールド33の電界緩和用に加え、金属異物の捕獲用として利用できるので、枝管38を設けない構成とすることも可能である。また、図9では、金属容器1aに対して例えば1箇所に屈曲部が形成される例について説明したが、屈曲部が例えば2箇所に形成される場合でも同様である。例えば、図9(a)において、主回路導体20aが左端で屈曲する構成も可能である。
以上のように、本実施の形態によれば、シールド33の外径を主回路導体20a,20bの外径よりも大きくすることにより、シールド33および主回路導体20a,20bの各端部に集中する電界を緩和することができる。また、本実施の形態によれば、シールド33の形状を略樽形または略紡錘形とすることにより、シールド33および主回路導体20a,20bの各端部に集中する電界を緩和することができる。また、本実施の形態によれば、略樽形または略紡錘形の形状により、シールド33の中央部の曲率半径が大きくなるので、中央部周辺の電界を緩和することができる。
また、本実施の形態によれば、単脚の絶縁スペーサ55を用いているので、二脚もしくは三脚等の複数脚構造のものまたは円錐形状のものと比較して、絶縁スペーサ55の構造が簡素化され、組立作業性が向上する。また、単脚の絶縁スペーサ55を用いることにより、複数脚の場合と比較して、絶縁スペーサ55の表面積が小さくなり、絶縁スペーサ55に金属異物が付着する可能性も少なくなる。さらにまた、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ55は、主回路導体20の屈曲部を直接支持しているので、支持強度の信頼性も高く、強度設計上有利である。組立作業性を向上させながら、主回路導体20の屈曲部を直接支持するには、絶縁スペーサを単脚の構造とするのが最も適している。
また、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ55は、金属容器1aの主胴の端部52で、その軸線方向が金属容器1aの主胴と略平行に配置されている。このように、絶縁スペーサ55を主回路導体20aの経路から外した低電界部に配置することで、金属異物が絶縁スペーサ55の近傍へ挙動し難くしている。また、絶縁スペーサ55の下部配置を回避して金属異物を付着し難くしている。
また、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ55およびシールド33を、軸線3a方向から平面視したときに、金属容器1aの主胴の内径で規定される領域の範囲内の大きさとなるようにしたので、絶縁スペーサ55とシールド33を金属容器1aの外で組み立ててから金属容器1a内に設置することができ、組立性が向上する。また、絶縁スペーサ55およびシールド33を金属容器1aの外部で組み立てることにより、金属容器1a内で組み立てる場合に比べて組立後の清掃及び点検作業がし易く、金属容器1a内に金属異物が混入してガス絶縁母線の絶縁性能に悪影響を及ぼす可能性が低くなる。
また、本実施の形態によれば、枝管60の内径を金属容器1aの主胴の内径以下としたので、金属容器1aの製作コストを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、シールド33側の埋込電極56の少なくとも一部は略樽形または略紡錘形の形状の外形35よりも内側の凹部34内に配置されているので、埋込電極56周辺に集中し易い電界を緩和することができる。このように、略樽形または略紡錘形のシールド33の中央部の膨らんだ空間を利用して凹部34を設け、この凹部34内に埋込電極56の少なくとも一部を配置することにより、埋込電極56周辺の電界を緩和することができ、母線全体を縮小化することができる。なお、シールド33に凹部34を形成しない構成も可能である。
また、本実施の形態によれば、金属容器1a側の埋込電極54の少なくとも一部は、軸線3bを中心として枝管60の内径により規定される領域の外側に位置しているので、埋込電極54の周辺の電界が緩和される。
また、本実施の形態によれば、シールド33の開口部70を介して主回路導体20aの端部31aをシールド33内に挿入し、シールド33の開口部71を介して主回路導体20bの端部31bをシールド33内に挿入し、主回路導体20aはシールド33内で軸線3a方向に摺動可能な接触子36aと接続し、主回路導体20bはシールド33内で軸線3b方向に摺動可能な接触子36bと接続するようにしたので、主回路導体20aと主回路導体20bの接続作業が容易となる。例えば、端部31aとアダプタ導体32とをボルトで固定する方法では、組立作業上の空間的制約の大きい金属容器1a内でボルト締結作業が必要になるが、本実施の形態では、端部31aを接触子36aに挿入するのみで接続が容易である。端部31bについても同様である。また、接触子36aをその接点部が軸線3a方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体20aの軸線3a方向の例えば熱伸縮を寸法的に吸収することができる。接触子36bについても同様である。
また、本実施の形態によれば、シールド33内に主回路導体20と同じく屈曲したアダプタ導体32を配置し、アダプタ導体32と主回路導体20aを接触子36aで接続するとともに、アダプタ導体32と主回路導体20bを接触子36bで接続するようにしたので、接触子36a同士および接触子36b同士の接続構造が簡素化される。また、アダプタ導体32をシールド33と別部品にすることは、アダプタ導体32の材質をシールド32の材質と異なるものにする必要があるときにも好適である。
なお、主回路導体20a,20b同士の接続にアダプタ導体32を用いない構成も可能である。図13は、主回路導体20a,20b同士の別の接続形態を示した図である。図13に示すように、シールド90は、その外形が略樽形または略紡錘形でその外面の一部に凹部34が形成されている点はシールド33と同様であるが、その内部形状はシールド33と異なり、シールド90の開口部70は円筒状である。そして、開口部70が設けられたシールド90の端部の内周面には複数の環状の溝が設けられ、各溝内には例えば環状のコイルばね接触子91が配置されている。同様に、シールド90の開口部71は円筒状であり、開口部71が設けられたシールド90の端部の内周面にも複数の環状の溝が設けられ、各溝内には例えば環状のコイルばね接触子91が配置されている。なお、コイルばね接触子91の設置個数は図示例に限定されない。また、コイルばね接触子91に限らず、端部31a,31bのほぼ全周をそれぞれ覆うことができて、同様の効果を奏するバンド状の他の接触子を適用してもよい。なお、図14のシールド93のように、主回路導体20aの端部20aの外径を主回路導体20aの外径φd1と同じにし、主回路導体20bの端部20bの外径を主回路導体20bの外径φd1と同じにして、コイルばね接触子94の内径を大きくしてもよい。この場合は、主回路導体20a,20bの各端部の形状を簡素化でき、コイルばね接触子94の温度上昇による熱的な影響を低減できる。
また、本実施の形態では、接触子36aと接続する主回路導体20aの端部31aの径を主回路導体20aの端部31a以外の部分の径φd1よりも小さくし、接触子36bと接続する主回路導体20bの端部31bの径を主回路導体20bの端部31b以外の部分の径φd1よりも小さくしている。このような構成により、シールド33の開口部70と主回路導体20aとの間の隙間とシールド33の開口部71と主回路導体20bとの間の隙間を大きくとることができ、通電時に接触子36a,36bにより発生する熱をシールド33の外に効果的に放熱することができる。よって、主回路導体20a,20bの通電性能の低下を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、シールド33の開口部70の径を主回路導体20aの外径よりも大きくし、シールド33の開口部71の径を主回路導体20bの外径よりも大きくしている。これにより、シールド33の開口部70と主回路導体20aとの間の隙間とシールド33の開口部71と主回路導体20bとの間の隙間を大きくとることができ、上記と同様の効果を奏するとともに、主回路導体20aの端部31a以外の部分が組立時または通電による熱膨張時に開口部70に接近し、または主回路導体20bの端部31b以外の部分が組立時または通電による熱膨張時に開口部71に接近したとしても、主回路導体20a,20bとシールド33とが接触して損傷することがなく、信頼性の向上に寄与する。
また、本実施の形態によれば、例えば上記(3)式を満たすように構成したので、主回路導体20a,20bの表面の電界と、シールド33の表面の電界とのバランス(絶縁協調)をとり、金属容器1a,1bの径寸法を最適化して縮小することができる。
また、本実施の形態によれば、例えば金属容器1aの下部に枝管38を設けるようにしたので、この枝管38に運転電圧下の金属容器1a内で挙動する金属異物を落下させて捕獲することができる。なお、シールド33の外径は主回路導体20aの外径よりも大きく、シールド33の近傍では電界がより高くなるため、金属異物の挙動が激しく、金属異物のシールド33への接近現象も生じ易いので、枝管38をシールド7の下方付近に設けることは金属異物の捕獲に効果的である。枝管38は、金属容器1aの端部52に対し、屈曲部よりも端部52からより離れた側に配置されているが、ガス絶縁母線の組立て時において、蓋39を外した状態で主回路導体20aを接触子36aに接続する際と、主回路導体20bを接触子36bに接続する際の双方の目視確認は容易であり、目視確認用のマンホールとして有用である。また、枝管38は、複数の枝管50,60が互いに近接して形成された端部52から軸線3a方向にずれた位置に設けられているので、枝管38を軸線3a方向において枝管50,60と同一位置に設ける場合と比べて、構成の困難さも解消されるとともに、圧力容器としての強度も確保される。よって、枝管38は、組立作業性と信頼性の向上に寄与する。
なお、本実施の形態では、主回路導体20a,20bの軸線と軸線3a,3bとがそれぞれ一致するようにしているが、偏心させて配置することも可能である。
本実施の形態では、金属容器内に例えば1相分の主回路導体を収納する例について説明したが、金属容器内に主回路導体を3相分一括して収納する場合についても同様である。三相一括形については、実施の形態2で説明した通りである。三相一括形では、三相分の絶縁スペーサが例えば軸線3aと平行に蓋53に立設される。三相のうち一相ないしは二相が軸線3bと平行に蓋51に立設される構成でもよい。三相一括形では、タンク(金属容器)本数が削減される。また、実施の形態2で述べたように、主回路導体の三相配置が正三角形を成すように配置することもできる。この場合、主回路導体間の距離を等しくし、相間短絡事故時の電磁力を緩和することができる。
実施の形態4.
本実施の形態では、実施の形態3と同様に、主回路導体の屈曲部における絶縁支持構造について説明する。図15は、本実施の形態に係るガス絶縁母線の縦断面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。図16は、図15(a)におけるG部の詳細図、図17は、図16におけるK−K断面図、図18は、図16におけるL−L断面図、図19は、図15(b)におけるH部の詳細図である。なお、図15〜図19では、実施の形態3の図9〜図12と同一の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下では、実施の形態3との相違を中心に関連箇所を含めて説明する。なお、図15でも、軸線3a方向に連結された金属容器をいずれも同じ符号1aを用いて記載している。正確には、軸線3a方向に連結された金属容器の形状は例えば端部等において異なるため(例えば、枝管16が形成された金属容器と枝管38が形成された金属容器とでは端部等の形状が異なる)、異なる符合を付すべきものであるが、同一の方向である軸線3a方向に延設された金属容器を表すものとして、簡単のため同一の符号1aを付している。
図15〜図19に示すように、本実施の形態では、主回路導体20の屈曲部は、金属容器1aの端部52内において、絶縁スペーサ42により絶縁支持されている。なお、実施の形態3と同様に、主回路導体20a,20bの双方を表す場合は主回路導体20で表す。絶縁スペーサ42は、その一端部が枝管50(絶縁スペーサ固定用枝管)内に配置されて金属容器1aに固定され、その他端部にはシールド41が取り付けられている。シールド41は主回路導体20の屈曲部を覆っている。絶縁スペーサ42は、例えば絶縁スペーサ6,55と同一のものとすることができる。
枝管50には例えばボルト等(図示せず)により蓋51が取り付けられている。蓋51は金属容器1aを密封し、さらに蓋51には絶縁スペーサ42の一端部が取り付けられている。ここで、絶縁スペーサ42は例えば単脚の構造である。絶縁スペーサ42は例えば柱状で、その長手方向に垂直な平面による断面形状は例えば円形である。絶縁スペーサ42は、例えばその軸線方向が主回路用枝管である枝管60の軸線方向と略平行に配置され、軸線3b方向と略平行に配置されている。
枝管50の内径は、金属容器1aの主胴の内径φD以下とすることができる。枝管50の長さは、金属容器1aの長さよりも短いので、金属容器1aに枝管50を形成する場合、枝管50の内径が金属容器1aの主胴の内径と同じかそれよりも小さいときのほうが逆のときよりも工作上容易である。図示例では、枝管50の内径を例えば金属容器1a,1bの主胴の内径φDとしている。
絶縁スペーサ42の一端部には金属容器側の埋込電極である埋込電極44が埋め込まれており、埋込電極44は例えばボルト等(図示せず)により蓋51に固定されている。すなわち、絶縁スペーサ42の一端部は、埋込電極44を介して金属容器1aの一部である蓋51に取り付けられている。
なお、埋込電極44の少なくとも一部は、軸線3aを中心とし金属容器1aの主胴の内径により規定される領域の外側に位置している。これにより、埋込電極44の周辺の電界が緩和される。埋込電極44の全体を、軸線3aを中心とし金属容器1aの主胴の内径により規定される領域の外側に配置すれば、埋込電極44の周辺の電界は最も緩和される。
絶縁スペーサ42の他端部には、シールド側の埋込電極である埋込電極43が埋め込まれている。また、絶縁スペーサ42の他端部には、埋込電極43を介して、金属製のシールド41が取り付けられている。具体的には、シールド41は、例えばボルト等(図示せず)を用いて埋込電極43に固定されている。
シールド41は、軸線3a方向に向かって開口する開口部70と軸線3b方向に向かって開口する開口部71とを有し、中空でかつ外形が略紡錘形形状又は略樽形形状であり、主回路導体20の屈曲部(接続部)を覆っている。
また、シールド41の開口部70の径は、例えば主回路導体20aの外径φd1よりも大きい。さらに、シールド41の外径は、軸線3a方向の位置にかかわらず、主回路導体20aの外径φd1よりも大きい。また、シールド41の開口部71の径は、例えば主回路導体20bの外径φd1よりも大きい。さらに、シールド41の外径は、軸線3b方向の位置にかかわらず、主回路導体20bの外径φd1よりも大きい。一般に、シールド41および主回路導体20a,20bの各端部の電界は大きくなる傾向にあるが、シールド41を略紡錘形または略樽形とし、かつシールド41の外径を主回路導体20a,20bの外径φd1よりも大きくすることにより、等電位線を外側に押し出し、端部付近における電界の集中を緩和することができる。また、シールド41を略紡錘形または略樽形とすることで、その中央部の曲率半径が大きくなり、中央部周辺の電界も緩和される。
シールド41の絶縁スペーサ42側の外面の一部には凹部45が形成されている。絶縁スペーサ42の他端部はこの凹部45内に配置され、絶縁スペーサ42はシールド41に挟まれるようにして配置されている。したがって、埋込電極43の少なくとも一部は凹部45内に配置される。埋込電極43の少なくとも一部を略樽形形状または略紡錘形形状の外形よりも内側の凹部45内に配置することにより、埋込電極43周辺の電界を緩和することができる。なお、埋込電極43の全体を凹部45内に配置することもでき、この場合、埋込電極43周辺の電界は最も緩和される。シールド41は、実施の形態3のシールド33の形状との比較でいえば、絶縁スペーサ42の取り付け位置の相違に応じて、凹部45の形成箇所が異なる分形状は異なっているが、その他の形状は略同じであり、同様の機能を有する。
また、シールド41内には、アダプタ導体40が配置されている。アダプタ導体40は、上面視で略L字形状であり(図16)、アダプタ導体40は凹部45を介して埋込電極43に例えばボルト等(図示せず)により取り付けられている。アダプタ導体40は、軸線3aと平行な第1の腕部と軸線3bと平行な第2の腕部を有する。アダプタ導体40は、主回路導体20a,20bの端部間の接続に用いられる。なお、アダプタ導体40は、シールド41と一体構造とすることもできる点は、実施の形態3で説明した通りである。
シールド41内には、開口部70を介して主回路導体20aの端部31aが挿入されるとともに、開口部71を介して主回路導体20bの端部31bが挿入されている。シールド41の一方の開口部70から挿入された主回路導体20aの端部31aは、接触子36aを介してアダプタ導体40の第1の腕部の端部と接続されている。シールド41の他方の開口部71から挿入された主回路導体20bの端部31bは、接触子36bを介してアダプタ導体40の第2の腕部の端部と接続されている。なお、実施の形態3で説明したように、接触子36aは、主回路導体20aの端部31aとの接点部が軸線3a方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子36aは、周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング37aで束ねて構成され、端部31aは、接触子36aの中に圧入され、アダプタ導体40との間で電気的に接続される。また、接触子36bは、主回路導体20bの端部31bとの接点部が軸線3b方向に摺動可能な接触子であり、例えばチューリップ形の接触子である。図示例では、接触子36bは、周方向に配列された複数個の接触子片をその外側からガータスプリング37bで束ねて構成され、端部31bは、接触子36bの中に圧入され、アダプタ導体40との間で電気的に接続される。
また、本実施の形態では、例えば、絶縁スペーサ42およびシールド41は、枝管50の軸線方向(軸線3b方向)から平面視したときに、枝管50の内径で規定される領域の範囲内の大きさである。こうすることで、絶縁スペーサ42とシールド41を金属容器1aの外で組み立ててから枝管50から絶縁スペーサ42およびシールド41を金属容器1a内に設置することができ、組立てが容易になる。
なお、本実施の形態のその他の構成は、実施の形態3と同様である。例えば、構成各部の大きさの関係および延伸方向の関係なども同様である。
以上のように、本実施の形態によれば、シールド41の外径を主回路導体20a,20bの外径よりも大きくすることにより、シールド41および主回路導体20a,20bの各端部に集中する電界を緩和することができる。また、本実施の形態によれば、シールド41の形状を略樽形または略紡錘形とすることにより、シールド41および主回路導体20a,20bの各端部に集中する電界を緩和することができる。また、本実施の形態によれば、略樽形または略紡錘形の形状により、シールド41の中央部の曲率半径が大きくなるので、中央部周辺の電界を緩和することができる。
また、本実施の形態によれば、単脚の絶縁スペーサ42を用いているので、二脚もしくは三脚等の複数脚構造のものまたは円錐形状のものと比較して、絶縁スペーサ42の構造が簡素化され、組立作業性が向上する。また、単脚の絶縁スペーサ42を用いることにより、複数脚の場合と比較して、絶縁スペーサ42の表面積が小さくなり、絶縁スペーサ42に金属異物が付着する可能性も少なくなる。さらにまた、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ42は、主回路導体20の屈曲部を直接支持しているので、支持強度の信頼性も高く、強度設計上有利である。組立作業性を向上させながら、主回路導体20の屈曲部を直接支持するには、絶縁スペーサを単脚の構造とするのが最も適している。
また、本実施の形態によれば、金属容器1aの主胴の軸線3aを挟んで、枝管60と対向するように枝管50が設けられ、絶縁スペーサ42はその一端部が枝管50内に配置され、例えばその軸線方向が主回路用枝管である枝管60の軸線方向と略平行に配置されている。このように、絶縁スペーサ42を主回路導体20aの経路から外した低電界部に配置することで、金属異物が絶縁スペーサ42の近傍へ挙動し難くしている。また、絶縁スペーサ42の下部配置を回避して金属異物を付着し難くしている。
また、本実施の形態によれば、絶縁スペーサ42よびシールド41を、枝管50の軸線方向(軸線3b方向)から平面視したときに、枝管50の内径で規定される領域の範囲内の大きさとなるようにしたので、絶縁スペーサ42とシールド41を金属容器1aの外で組み立ててから金属容器1a内に設置することができ、組立性が向上する。また、絶縁スペーサ42およびシールド41を金属容器1aの外部で組み立てることにより、金属容器1a内で組み立てる場合に比べて組立後の清掃及び点検作業がし易く、金属容器1a内に金属異物が混入してガス絶縁母線の絶縁性能に悪影響を及ぼす可能性が低くなる。
また、本実施の形態によれば、枝管50の内径を金属容器1aの主胴の内径以下としたので、金属容器1aの製作コストを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、シールド41側の埋込電極43の少なくとも一部は略樽形または略紡錘形の形状の外形46よりも内側の凹部45内に配置されているので、埋込電極43周辺に集中し易い電界を緩和することができる。このように、略樽形または略紡錘形のシールド41の中央部の膨らんだ空間を利用して凹部45を設け、この凹部45内に埋込電極43の少なくとも一部を配置することにより、埋込電極43周辺の電界を緩和することができ、母線全体を縮小化することができる。なお、シールド41に凹部45を形成しない構成も可能である。
また、本実施の形態によれば、埋込電極44の少なくとも一部は、軸線3aを中心とし金属容器1aの主胴の内径により規定される領域の外側に位置しているので、埋込電極44の周辺の電界が緩和される。
また、本実施の形態によれば、シールド41の開口部70を介して主回路導体20aの端部31aをシールド41内に挿入し、シールド41の開口部71を介して主回路導体20bの端部31bをシールド41内に挿入し、主回路導体20aはシールド41内で軸線3a方向に摺動可能な接触子36aと接続し、主回路導体20bはシールド41内で軸線3b方向に摺動可能な接触子36bと接続するようにしたので、主回路導体20aと主回路導体20bの接続作業が容易となる。例えば、端部31aとアダプタ導体40とをボルトで固定する方法では、組立作業上の空間的制約の大きい金属容器1a内でボルト締結作業が必要になるが、本実施の形態では、端部31aを接触子36aに挿入するのみで接続が容易である。端部31bについても同様である。また、接触子36aをその接点部が軸線3a方向に摺動可能な接触子とすることにより、主回路導体20aの軸線3a方向の例えば熱伸縮を寸法的に吸収することができる。接触子36bについても同様である。
また、本実施の形態によれば、シールド41内に主回路導体20と同じく屈曲したアダプタ導体40を配置し、アダプタ導体40と主回路導体20aを接触子36aで接続するとともに、アダプタ導体40と主回路導体20bを接触子36bで接続するようにしたので、接触子36a同士および接触子36b同士の接続構造が簡素化される。また、アダプタ導体40をシールド41と別部品にすることは、アダプタ導体40の材質をシールド41の材質と異なるものにする必要があるときにも好適である。なお、実施の形態3の図13,図14で説明したように、主回路導体20a,20b同士の接続にアダプタ導体40を用いない構成も可能である。
また、本実施の形態では、接触子36aと接続する主回路導体20aの端部31aの径を主回路導体20aの端部31a以外の部分の径φd1よりも小さくし、接触子36bと接続する主回路導体20bの端部31bの径を主回路導体20bの端部31b以外の部分の径φd1よりも小さくしている。このような構成により、シールド41の開口部70と主回路導体20aとの間の隙間とシールド41の開口部71と主回路導体20bとの間の隙間を大きくとることができ、通電時に接触子36a,36bにより発生する熱をシールド41の外に効果的に放熱することができる。よって、主回路導体20a,20bの通電性能の低下を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、シールド41の開口部70の径を主回路導体20aの外径よりも大きくし、シールド41の開口部71の径を主回路導体20bの外径よりも大きくしている。これにより、シールド41の開口部70と主回路導体20aとの間の隙間とシールド41の開口部71と主回路導体20bとの間の隙間を大きくとることができ、上記と同様の効果を奏するとともに、主回路導体20aの端部31a以外の部分が組立時または通電による熱膨張時に開口部70に接近し、または主回路導体20bの端部31b以外の部分が組立時または通電による熱膨張時に開口部71に接近したとしても、主回路導体20a,20bとシールド41とが接触して損傷することがなく、信頼性の向上に寄与する。
また、本実施の形態では、実施の形態3と同様に、例えば上記(3)式を満たすように構成することができる。これにより、主回路導体20a,20bの表面の電界と、シールド41の表面の電界とのバランス(絶縁協調)をとり、金属容器1a,1bの径寸法を最適化して縮小することができる。
また、本実施の形態によれば、例えば金属容器1aの下部に枝管38を設けるようにしたので、この枝管38に運転電圧下の金属容器1a内で挙動する金属異物を落下させて捕獲することができる。なお、シールド41の外径は主回路導体20aの外径よりも大きく、シールド41の近傍では電界がより高くなるため、金属異物の挙動が激しく、金属異物のシールド41への接近現象も生じ易いので、枝管38をシールド41の下方付近に設けることは金属異物の捕獲に効果的である。枝管38は、金属容器1aの端部52に対し、屈曲部よりも端部52からより離れた側に配置されているが、ガス絶縁母線の組立て時において、蓋39を外した状態で主回路導体20aを接触子36aに接続する際と、主回路導体20bを接触子36bに接続する際の目視確認は容易であり、目視確認用のマンホールとして有用である。また、枝管38は、複数の枝管50,60が互いに近接して形成された端部52から軸線3a方向にずれた位置に設けられているので、枝管38を軸線3a方向において枝管50,60と同一位置に設ける場合と比べて、構成の困難さも解消されるとともに、圧力容器としての強度も確保される。よって、枝管38は、組立作業性と信頼性の向上に寄与する。
なお、本実施の形態のその他の効果は実施の形態3と同様である。