JP4780171B2 - 車両用発電制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用発電機の発電制御を行う車両用発電制御装置に関する。
近年、車両の燃費向上のため、低アイドル化や低フリクション化が進んでおり、補機の作動によるトルク変動が、エンジン回転変動に大きく影響するようになってきている。エンジン回転の安定化を図る技術としては、アイドル時に車両用発電機の発電を抑制して車両用発電機のトルクを制限することにより、アイドル安定化を図るものが知られている。その際、電気負荷量が大きいときには発電の抑制によりバッテリ電圧が低下するが、このときにバッテリの充電状態が良好な場合は問題ないが、過度に放電していたり、バッテリが劣化して内部抵抗が大きくなっている状態、あるいは、バッテリ端子が接触不良の状態では、バッテリから動作電力が供給される車載機器の電源電圧が大きく低下し、例えば10V程度まで下がると、車載機器が誤動作するなどの不具合が発生する。
このような発電抑制の弊害に対処する従来技術として、バッテリ電圧が設定電圧以下に低下した場合には、トルク制限のための発電抑制を解除する手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この従来技術によると、バッテリ電圧が電気機器が異常となる電圧以下に低下する前に発電状態が回復するため、バッテリ電圧の過度の低下はなくなる。
また、その他の従来技術としては、発電機電圧と最低維持電圧との偏差に応じた制御量で車両用発電機を制御する手法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
また、車両用発電機のトルクの急激な変動を制限する従来の徐励回路を、耐久性の向上に有利で1チップ構成に適したなデジタル制御回路を用いて構成する従来技術が知られている(例えば、特許文献3、4参照。)。
特許第3283325号公報(第2−3頁、図1−4) 特開2006−246574号公報(第5−12頁、図1−5) 特開昭62−64299号公報(第5−23頁、図1−6) 特開平7−177678号公報(第2−4頁、図1−6)
ところで、特許文献1に開示された従来技術では、通常の電圧制御モードと外部装置による発電抑制制御モードを繰り返し、励磁電流駆動のデューティが不安定となり、励磁電流の脈動すなわち車両用発電機のトルクの脈動が大きくなって、車両用発電機のトルクの変動でアイドル時のエンジン回転が不安定になるといった問題があった。
また、特許文献2に開示された従来技術では、回路が複雑になってコストアップを招くという問題があった。
また、特許文献3、4に開示された従来技術では、複雑な回路構成となっており、回路規模が増大する上に、検査時間も増大するのでコストアップを招くという問題があった。しかも、徐励時間の変更に対しても、回路構成を変更する必要があり、徐励時間を車両状態に応じて適宜変更する場合には適しているとはいえなかった。また、最近主流となっている記述言語によるハードロジックの設計に対しても、複雑なロジック構成のため対応できないというデメリットがあった。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、車両用交流発電機の出力電圧の安定性とエンジン回転の安定性とを両立させることができ、簡素な構成であってコストダウンを図ることができる車両用発電制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の車両用発電制御装置は、車両用発電機の励磁巻線に流れる励磁電流を断続して車両用発電機の発電状態を制御する車両用発電制御装置であって、励磁巻線への励磁電流の供給を断続するスイッチング素子と、励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、車両用発電機の出力電圧を第1の設定値に制御する際に、励磁巻線に流れる励磁電流を制限する励磁電流制御を行うとともに、スイッチング素子の駆動デューティの増加速度を制限する徐励制御を行う制御手段とを備え、制御手段は、車両用発電機の出力電圧が第1の設定値よりも低い第2の設定値より低くなったときに励磁電流制御を解除し、再び第2の設定値以上になったときに励磁電流制御を行うとともに、第2の設定値よりも低い第3の設定値よりも低くなったときに徐励制御を解除し、徐励制御における駆動デューティの増加速度は、車両用発電機の出力電圧が第2の設定値よりも高いときよりも低いときの方が大きな値に設定され、第2の設定値付近で、励磁電流制御および徐励制御による発電抑制と、励磁電流制御を含まない徐励制御による発電抑制とが交互に行われている。
また、本発明の車両用発電制御装置は、車両用発電機の励磁巻線に流れる励磁電流を断続して車両用発電機の発電状態を制御する車両用発電制御装置であって、励磁巻線への励磁電流の供給を断続するスイッチング素子と、励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、車両用発電機の出力電圧を第1の設定値に制御する際に、励磁巻線に流れる励磁電流を制限する励磁電流制御を行うとともに、スイッチング素子の駆動デューティの増加速度を制限する徐励制御を行う制御手段とを備え、制御手段は、車両用発電機の出力電圧が第1の設定値よりも低い第2の設定値より低くなったときに励磁電流制御を解除し、第2の設定値よりも低い第3の設定値よりも低くなったときに徐励制御を解除し、徐励制御における駆動デューティは、最新の駆動デューティを含んで徐励時間において駆動デューティをなまし平均化した値に基づいて設定されている。
車両用発電機の出力電圧が第3の設定値まで低下する前に第2の設定値まで低下したときに励磁電流制御を解除することにより出力電圧の低下を抑制して出力電圧の安定性を確保することができ、しかも、徐励制御を継続することにより、急激なトルク増大を抑制してエンジン回転の安定性を確保することができる。
また、上述した徐励制御における駆動デューティの増加速度を、車両用発電機の出力電圧が第2の設定値よりも高いときよりも低いときの方が大きな値に設定することにより、車両用発電機の出力電圧が第1の設定値よりも低くなったときに徐励制御を行ってエンジン回転の安定性を確保することができるとともに、第2の設定値よりも低くなったときに速やかに第2の設定値まで上昇させることができる。
また、駆動デューティをなまし平均化した値に基づいて徐励制御を行うことにより、簡素な構成のロジックで徐励制御を実現することができ、低コストで検査が簡単な回路を実現することができる。
また、上述した励磁電流制御は、励磁電流検出手段によって検出する励磁電流が励磁電流制御目標値に近づくように励磁電流を制限することにより行われることが望ましい。これにより、電気負荷投入時等に励磁電流を適切な値に制御することが可能となる。
また、上述した励磁電流制御は、スイッチング素子の駆動デューティを制限することにより行われることが望ましい。これにより、励磁電流制御と徐励制御とで処理内容を共通化することができ、構成の簡略化が可能となる。
また、上述した第2の設定値は、エンジンを制御するエンジン制御装置以外の電気負荷が正常に動作する範囲の下限値以上に設定されることが望ましい。これにより、各種の電気負荷の正常動作を確保することができる。
また、上述した第3の設定値は、エンジンを制御するエンジン制御装置の動作が保証される最低動作電圧以上に設定されることが望ましい。これにより、エンジン制御装置の安定的な動作を確実に確保することができる。
また、上述した徐励制御における駆動デューティは、最新の駆動デューティを含んで徐励時間において駆動デューティをなまし平均化した値に基づいて設定され、駆動デューティの増加速度の切り替えは、駆動デューティを平均化する徐励時間を切り替えることより行われることが望ましい。これにより、徐励時間を変更するだけで駆動デューティの増加速度を容易に切り替えることができ、この切り替え機構を含めて簡素な構成のロジックで徐励制御を実現することができる。
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用発電制御装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図であり、あわせてこの車両用発電制御装置と車両用発電機やバッテリ、電気負荷、ECUとの接続状態が示されている。
図1において、車両用発電制御装置2は、車両用発電機1の出力端子(B端子)の電圧が所定の調整電圧設定値(例えば14V)になるように制御するためのものである。また、車両用発電制御装置2は、B端子以外に、通信端子(C端子)とグランド端子(E端子)を有している。B端子は、所定の充電線を介してバッテリ3や各種の電気負荷4に接続されている。C端子は、外部制御装置であるエンジン制御装置としてのECU5に接続されている。E端子は、車両用発電機2のフレームに接続されている。なお、図1では、車両用発電制御装置2は、車両用発電機1と並行して図示したが、実際には車両用発電機1に内蔵されている。
車両用発電機1は、固定子に含まれる3相の固定子巻線101と、回転子に含まれる励磁巻線102と、固定子巻線101の3相出力を全波整流するために設けられた整流回路103とを含んで構成されている。この車両用発電機1の出力電圧の制御は、励磁巻線102に対する通電を車両用発電制御装置2によって適宜断続制御することにより行われる。
次に、車両用発電制御装置2の詳細構成および動作について説明する。図1に示すように、車両用発電制御装置2は、NチャネルMOS−FET201、環流ダイオード202、センス抵抗203、通信制御回路204、電源回路205、発電電圧・励磁電流制御回路206、励磁電流検出回路207、回転検出回路208を備えている。
MOS−FET201は、励磁巻線102に直列に接続されており、オン状態のときに励磁巻線102に励磁電流が流れる。環流ダイオード202は、励磁巻線102に並列に接続されており、MOS−FET201がオフ状態のときに励磁電流を環流させる。
電源回路205は、所定の動作電圧を生成する。発電電圧・励磁電流制御回路206は、車両用発電機1の出力電圧を一定に維持したり、MOS−FET201の駆動デューティや励磁巻線102に流れる励磁電流を設定値以下に制限するなどの発電制御を行う。発電制御の内容や制御パラメータは、ECU5から送られてくる通信フレームに含まれる発電制御信号に基づいて設定される。励磁電流検出回路207は、MOS−FET201のソース電位に基づいて励磁巻線102に流れる励磁電流を検出する。MOS−FET201のソースには励磁電流検出用のセンス抵抗203が接続されており、MOS−FET201のソース・ドレイン間およびセンス抵抗203を介して励磁電流が流れたときに生じるセンス抵抗203の端子電圧に基づいて励磁電流検出回路207による励磁電流の検出が行われる。回転検出回路208は、固定子巻線101のいずれかの相に現れる相電圧を監視することにより、車両用発電機1の回転数を検出し、検出した回転数に対応する電圧を出力する。通信制御回路204は、C端子を介してECU5との間で双方向のシリアル通信を行い、ECU5から周期的に送られてくる通信フレームを受信する。また、通信制御回路204は、C端子を介してECU5に向けて通信フレームを送信する。
上述したMOS−FET201がスイッチング素子に、励磁電流検出回路207が励磁電流検出手段に、発電電圧・励磁電流制御回路206が制御手段にそれぞれ対応している。
本実施形態の車両用発電制御装置2はこのような構成を有しており、次にその制御動作を説明する。
キースイッチ(図示せず)がオンされると、ECU5から車両用発電制御装置2のC端子に向けてシリアル通信にて動作開始信号が送信される。C端子を介してECU5から送られてくる動作開始信号を受信すると、通信制御回路204は、電源回路205に向けて電源オン信号を出力する。電源回路205は、入力される電源オン信号に応じて、各部に供給する動作電圧の生成を開始する。これにより、車両用発電制御装置2全体が所定の発電制御動作を開始する。具体的には、MOS−FET201をPWM制御にて駆動することにより発電制御動作が行われる。例えば、この発電制御は、5msの周期で繰り返し実施される。
図2は、車両用発電制御装置2による発電制御の動作手順を示す流れ図である。この流れ図に示す一連の動作手順が5msの周期で繰り返され、MOS−FET201の最新の励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値がその都度更新される。以下、発電制御動作を各ステップ毎に詳細に説明する。
(ステップ1001)
通信制御回路204は、調整電圧Vreg、励磁電流制御目標値IF_MAX、Fduty制限目標値Fduty_MAX、発電低下検出電圧設定値VL1、VL2、徐励時間LRS_S_Hを含む発電制御信号をECU5から受信する。ここで、調整電圧Vregは、目標とする調整電圧設定値(第1の設定値)である。励磁電流制御目標値IF_MAXは、励磁電流を制限する際の励磁電流の上限値である。Fduty制限目標値Fduty_MAXは、MOS−FET201の駆動デューティ(オンオフする際のオンデューティ)の上限値である。発電低下検出電圧設定値VL1は、調整電圧Vregよりも低い値に設定された第2の設定値であり、車両用発電機1の出力電圧(発電機出力電圧VB)がこの設定値よりも低くなると励磁電流制御(励磁電流を制限する制御)が解除される。この発電低下検出電圧設定値VL1は、ECU5以外の電気負荷4が正常に動作する範囲の下限値以上に設定される。発電低下検出電圧設定値VL2は、発電低下検出電圧設定値VL1よりもさらに低い値に設定された第3の設定値であり、発電機出力電圧VBがこの設定値よりも低くなると徐励制御(MOS−FET201の駆動デューティの増加速度を制限する制御)が解除される。この発電低下検出電圧設定値VL2は、ECU5の動作が保証される最低動作電圧以上に設定される。徐励時間LRS_S_Hは、励磁電流を上限値まで増加させる際に要する時間である。上述した各種の情報は、発電電圧・励磁電流制御回路206に送られる。これにより、発電電圧・励磁電流制御回路206によって、MOS−FET201を駆動するの制御信号を生成する動作が開始される。
(ステップ1002)
発電電圧・励磁電流制御回路206は、発電機出力電圧VBと調整電圧Vregおよび定数K1に基づいて、発電機出力電圧VBを調整電圧Vregに制御するために必要な励磁電流駆動デューティFduty1を演算する。
(ステップ1003)
また、発電電圧・励磁電流制御回路206は、励磁電流検出値IFを励磁電流検出回路207から取得して、励磁電流制御目標値IF_MAXと定数K2および前回の励磁電流駆動デューティFduty_OLDに基づいて、励磁電流を制御するために必要な励磁電流駆動デューティFduty2を演算する。
(ステップ1004)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、Fduty制限目標値Fduty_MAX値と、ステップ1002、1003で演算した励磁電流駆動デューティFduty1、Fduty2と、徐励制御デューティFduty_LRC+αとを比較し、最も小さい値を次回の励磁電流駆動デューティFduty_NEWに設定する。ここで、徐励制御デューティFduty_LRC+αとは、徐励制御を行う基準となる徐励制御記憶デューティFduty_LRC(詳細については後述する)に所定の増分(+α)を加算した駆動デューティであり、例えば徐励制御記憶デューティFduty_LRCが20%で、+αが5%の場合には、徐励制御デューティFduty_LRC+αが25%に設定される。このようにして励磁電流駆動デューティFduty_NEWを設定することにより、発電抑制が実施されない定常状態の場合、すなわち励磁電流制御目標値IF_MAXが大きな値に設定され、かつFduty制限目標値Fduty_MAXも100%の場合には、Fduty1<Fduty_LRC+α<Fduty2=Fduty_MAXとなり、励磁電流駆動Fduty1で励磁電流駆動デューティFduty_NEWが設定されるので、発電機出力電圧VBが調整電圧Vregになるように制御する「電圧制御モード」で動作することになる。
このとき、電気負荷4が投入された場合には、発電機端子電圧(発電機出力電圧VB)が低下して励磁電流駆動デューティFduty1が100%になり、Fduty_LRC+α<Fduty1<Fduty2=Fduty_MAXとなり、徐励制御デューティFduty_LRC+αで励磁電流駆動デューティFduty_NEWが設定される。これにより、徐励制御が実施される。
これに対し、車両用発電機1のトルクを抑制するために励磁電流制限を実施する場合には、励磁電流制御目標値IF_MAXが適切な値に設定されて、Fduty2<Fduty1<Fduty_LRC+α<Fduty_MAXの関係を満たすと、励磁電流駆動デューティFduty2が励磁電流駆動デューティFduty_NEWとして設定されるので、励磁電流が励磁電流制御目標値IF_MAXよりも少なくなるように制御する「励磁電流制御モード」になる。
また、励磁電流駆動デューティを制限してトルクを抑制する場合には、Fduty制限目標値Fduty_MAXが適切な値に設定されて、Fduty_MAX<Fduty1<Fduty_LRC+α<Fduty2の関係を満たすと、Fduty制限目標値Fduty_MAXが励磁電流駆動デューティFduty_NEWとして設定されて「Fduty制限モード」になる。
通常、上記のいずれかの制御モードで動作することになるが、電気負荷4が大きい場合には、発電抑制の制御により、電気負荷4が発電能力より大きく上回り、バッテリ電圧が大きく低下して、車両の電気負荷4が正常動作しない電圧付近まで下がることがある。このように発電機出力電圧VBが低下した場合には、各種の発電抑制を段階的に解除し、発電機出力電圧VBが所定の電圧を維持するように発電制御が行われる。次に、その動作を説明する。
(ステップ1005、1006)
発電電圧・励磁電流制御回路206は、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1より低い否かの判定を行い、発電機出力電圧VBの方が低い場合には肯定判断を行う。この場合は次のステップ1006に移行し、発電電圧・励磁電流制御回路206は、励磁電流駆動デューティFduty_NEWを、ステップ1004で設定された値ではなく、すなわち、励磁電流制御目標値IF_MAXを用いて設定した励磁電流駆動デューティFduty2を考慮した値ではなく、徐励制御デューティFduty_LRC+αとするとともに、徐励時間をLRS_S_Hとは異なるLRS_S_L(<LRS_S_H)に設定する。徐励時間を短い値に切り替えることにより、徐励制御を維持しつつも駆動デューティの増加速度を小から大に切り替えて、発電機出力電圧VBの速やかな上昇を図っている。
(ステップ1007、1008)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、発電機出力電圧VBが、VL1より低い発電低下検出電圧VL2よりさらに低いか否かの判定を行い、発電機出力電圧VBの方が低い場合には肯定判断を行う。この場合はステップ1008に移行し、発電電圧・励磁電流制御回路206は、励磁電流駆動デューティFduty_NEWを100%とする。
これにより、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1より低くなると励磁電流制御を含む発電抑制が解除されて、通常より速い徐励制御で発電が徐々に増加してゆく。再び発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1以上になると励磁電流制御を含む発電抑制が行われる。したがって、発電低下検出電圧設定値VL1付近で発電抑制と徐励制御の制御が交互に行われるので、発電低下検出電圧設定値VL1以下で励磁電流駆動デューティを100%に設定する従来方式に比べ、励磁電流駆動デューティの変動が小さくなり、励磁電流の変動を小さくすることができ、発電機出力電圧変動やトルク変動を抑制することができる。また、徐励時間(徐例速度の増加速度である徐励速度)を通常とは異なる値に設定にすることにより、常に、最低作動電圧を、励磁電流変動が極力抑えられるように維持する最適な設定にすることができる。また、バッテリ3が劣化している場合には、電気負荷投入時に発電機出力電圧VBが急激に低下して、上記徐励制御による発電量の増加では発電機出力電圧VBの低下に追いつかない場合がある。このような状況で、バッテリ電圧が低下し、ECU5など車両の走行に関する機器が誤動作する前に、発電低下検出電圧VL2で発電機端子電圧の低下を検出して、徐励制御も解除して励磁電流駆動デューティを100%に設定することにより、急激な電圧低下に対処することができる。
(ステップ1009)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、徐励制御記憶デューティFduty_LRCを更新するための処理を実施する。具体的には、まず、発電電圧・励磁電流制御回路206は、駆動デューティの平均値である平均Fdutyを表すFduty_AVを、ステップ1004、1006、1008のいずれかで設定された励磁電流駆動デューティFduty_NEWをもとに、以下のなまし平均化処理を行って求める。
Fduty_AV←Fduty_NEW×(1/LRC_S)
+Fduty_AV×(LRC_S−1)/LRC_S
この演算は、徐励時間LRC_Sに対応するFduty_AVの値を最新の励磁電流駆動デューティFduty_NEWで更新するためのものであり、徐励時間LRC_Sにわたる平均値Fduty_AVの値を、励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値を1次フィルタを通して更新することに相当する。
(ステップ1010)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、Fduty_AVがFduty_LRCよりも小さいか、または、カウンタTの値がLRC_Sと同じであるか否かを判定する。このカウンタTは、徐励制御の経過時間をカウントするためのものであり、デジタル値で表された徐励時間LRC_Sと一致するか否かが判定される。
(ステップ1011)
Fduty_AVの方がFduty_LRCよりも小さいときには肯定判断が行われ、次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、徐励制御記憶デューティFduty_LRCを減少させるため、Fduty_AVをFduty_LRCに設定する。また、Fduty_AVがFduty_LRC以上の場合でもカウンタTの値がLRC_Sと等しい場合には肯定判断が行われ、発電電圧・励磁電流制御回路206はFduty_AVをFduty_LRCに設定する。したがって、徐励制御記憶デューティFduty_LRCの増加時間は徐励時間LRC_Sで決定され、LRC_Sが大きくなると徐励制御デューティの増加時間も大きくなる。
(ステップ1012)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、徐励時間LRC_SとカウンタTの値を比較するためにカウンタTをカウントアップする。
このように、Fduty_AVは徐励時間LRC_Sと励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値に基づいて更新され、それに伴って徐励制御記憶デューティFduty_LRCの値の更新される。そして、Fduty_LRCの値が更新されると、この値に+αを加算して決定される徐励制御デューティFduty_LRC+αの値も更新され、次の周期で励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値を設定する際にこの更新されたFduty_LRC+αの値が用いられる。また、Fduty_AVは徐励時間LRC_Sと励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値に基づいて更新されるため、Fduty_NEWの値が同じであっても徐励時間LRC_Sが短い方がFduty_AVの値が大きく変化し、Fduty_LRCおよびFduty_LRC+αの増加量も大きくなる。
(ステップ1013)
次に、発電電圧・励磁電流制御回路206は、励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値に応じた駆動デューティにてMOS−FET201をPWM制御にてオン/オフ制御する。以上の動作手順は5ms毎に実施され、励磁電流駆動デューティFduty_NEWの値がこの周期で更新される。
このように、本実施形態の車両用発電制御装置2では、車両用発電機1の出力電圧が第3の設定値である発電低下検出電圧設定値VL2まで低下する前に第2の設定値である発電低下検出電圧設定値VL1まで低下したときに、励磁電流制御を解除することにより出力電圧の低下を抑制して出力電圧の安定性を確保することができ、しかも、徐励制御を継続することにより、急激なトルク増大を抑制してエンジン回転の安定性を確保することができる。
また、励磁電流制御を励磁電流が励磁電流制御目標値IF_MAXに近づくように励磁電流を制限することにより、電気負荷投入時等に励磁電流を適切な値に制御することが可能となる。また、励磁電流制御をMOS−FET201の駆動デューティを制限することにより、励磁電流制御と徐励制御とで処理内容を共通化することができ、構成の簡略化が可能となる。
また、第2の設定値としての発電低下検出電圧設定値VL1を、エンジンを制御するECU5以外の電気負荷4が正常に動作する範囲の下限値以上に設定することにより、各種の電気負荷4の正常動作を確保することができる。
また、第3の設定値としての発電低下検出電圧設定値VL2を、ECU5の動作が保証される最低動作電圧以上に設定することにより、ECU5の安定的な動作を確実に確保することができる。
また、上述した徐励制御における駆動デューティの増加速度を、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1より高いときよりも低いときの方が大きな値に設定しているため、発電機出力電圧VBが調整電圧Vregよりも低くなったときに徐励制御を行ってエンジン回転の安定性を確保することができるとともに、発電低下検出電圧設定値VL1よりも低くなったときに速やかにこのVL1まで上昇させることができる。
図3は、発電抑制状態において電気負荷が投入された場合の各部の状態を示すタイミング図である。図3および後述する図4において、点線は従来技術による発電制御を行った場合を、実線は本実施形態の車両用発電制御2による発電制御を行った場合をそれぞれ示している。
励磁電流制御が実施され、発電機出力電圧VBは、調整電圧Vregより低い値となる。この状態で電気負荷4が投入されると、さらに発電機出力電圧VBが低下する。従来技術では、発電低下検出電圧設定値VL1以下になると、励磁駆動デューティの制限値が100%になるので、発電低下検出電圧設定値VL1への復帰は早いが、オーバーシュートが発生して、励磁電流IFの脈動が発生し、電圧変動およびトルクの変動が大きくなる。これに対し、本実施形態の車両用発電制御装置2では、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1以下になると励磁電流制御による発電抑制が解除されて、徐励制御による動作で励磁駆動デューティ(Fデューティ)および車両用発電機1の発電量が増加していって、発電低下検出電圧設定値VL1付近で制御される。
図4は、電圧制御状態から発電抑制を実施した場合の各部の状態を示すタイミング図である。最初の電圧制御状態では、発電機出力電圧VBが調整電圧Vregになるように励磁電流IFが制御されている。この状態でトルク制限のための励磁電流制限が実施されて車両用発電機1の発電能力が低下し、電気負荷量以下になるとバッテリ3が放電し、発電機出力電圧VBは、調整電圧Vregより低い値に低下する。この状態が継続し、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1以下になると、従来技術では、励磁駆動デューティの制限値が100%になるので、発電低下検出電圧設定値VL1への復帰は早いが、オーバーシュートが発生して、励磁電流IFの脈動が発生し、電圧変動およびトルクの変動が大きくなる。これに対し、本実施形態の車両用発電制御装置2では、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1以下になると励磁電流制御による発電抑制が解除されて、徐励制御による動作で励磁駆動デューティ(Fデューティ)および車両用発電機1の発電量が増加していって発電低下検出電圧設定値VL1付近で制御される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、発電機出力電圧VBが発電低下検出電圧設定値VL1よりも低いか否かで徐励時間を切り替えたが、切り替えは行わずに一定の徐励時間としてもよい。
一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図である。 車両用発電制御装置による発電制御の動作手順を示す流れ図である。 発電抑制状態において電気負荷が投入された場合の各部の状態を示すタイミング図である。 電圧制御状態から発電抑制を実施した場合の各部の状態を示すタイミング図である。
符号の説明
1 車両用発電機
2 車両用発電制御装置
3 バッテリ
4 電気負荷
5 ECU
201 MOS−FET
202 環流ダイオード
203 センス抵抗
204 通信制御回路
205 電源回路
206 発電電圧・励磁電流制御回路
207 励磁電流検出回路
208 回転検出回路

Claims (8)

  1. 車両用発電機の励磁巻線に流れる励磁電流を断続して前記車両用発電機の発電状態を制御する車両用発電制御装置であって、
    前記励磁巻線への励磁電流の供給を断続するスイッチング素子と、
    前記励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、
    前記車両用発電機の出力電圧を第1の設定値に制御する際に、前記励磁巻線に流れる励磁電流を制限する励磁電流制御を行うとともに、前記スイッチング素子の駆動デューティの増加速度を制限する徐励制御を行う制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記車両用発電機の出力電圧が前記第1の設定値よりも低い第2の設定値より低くなったときに前記励磁電流制御を解除し、再び前記第2の設定値以上になったときに前記励磁電流制御を行うとともに、前記第2の設定値よりも低い第3の設定値よりも低くなったときに前記徐励制御を解除し、
    前記徐励制御における前記駆動デューティの増加速度は、前記車両用発電機の出力電圧が前記第2の設定値よりも高いときよりも低いときの方が大きな値に設定され、
    前記第2の設定値付近で、励磁電流制御および徐励制御による発電抑制と、励磁電流制御を含まない徐励制御による発電抑制とが交互に行われることを特徴とする車両用発電制御装置。
  2. 車両用発電機の励磁巻線に流れる励磁電流を断続して前記車両用発電機の発電状態を制御する車両用発電制御装置であって、
    前記励磁巻線への励磁電流の供給を断続するスイッチング素子と、
    前記励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、
    前記車両用発電機の出力電圧を第1の設定値に制御する際に、前記励磁巻線に流れる励磁電流を制限する励磁電流制御を行うとともに、前記スイッチング素子の駆動デューティの増加速度を制限する徐励制御を行う制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記車両用発電機の出力電圧が前記第1の設定値よりも低い第2の設定値より低くなったときに前記励磁電流制御を解除し、前記第2の設定値よりも低い第3の設定値よりも低くなったときに前記徐励制御を解除し、
    前記徐励制御における前記駆動デューティは、最新の前記駆動デューティを含んで徐励時間において前記駆動デューティをなまし平均化した値に基づいて設定されることを特徴とする車両用発電制御装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記励磁電流制御は、前記励磁電流検出手段によって検出する励磁電流が励磁電流制御目標値に近づくように前記励磁電流を制限することにより行われることを特徴とする車両用発電制御装置。
  4. 請求項1または2において、
    前記励磁電流制御は、前記スイッチング素子の駆動デューティを制限することにより行われることを特徴とする車両用発電制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記第2の設定値は、エンジンを制御するエンジン制御装置以外の電気負荷が正常に動作する範囲の下限値以上に設定されることを特徴とする車両用発電制御装置。
  6. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記第3の設定値は、エンジンを制御するエンジン制御装置の動作が保証される最低動作電圧以上に設定されることを特徴とする車両用発電制御装置。
  7. 請求項1において、
    前記徐励制御における前記駆動デューティは、最新の前記駆動デューティを含んで徐励時間において前記駆動デューティをなまし平均化した値に基づいて設定され、
    前記駆動デューティの増加速度の切り替えは、前記駆動デューティを平均化する前記徐励時間を切り替えることより行われることを特徴とする車両用発電制御装置。
  8. 請求項2において、
    前記駆動デューティの増加速度の切り替えは、前記駆動デューティを平均化する前記徐励時間を切り替えることにより行われることを特徴とする車両用発電制御装置。
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