JP4778607B2 - インサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、タイヤのビード部およびサイドウォール部を含む範囲内の所要領域に、ほぼタイヤ周方向に延びる補強コードからなるインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ほぼタイヤ周方向に延びる補強コードからなり、生タイヤ内で渦巻状の延在態様をとるインサートプライの配設方法としては、シェーピング工程で、円筒状のカーカスバンドの中央部分を大きく膨出変形させた状態で、カーカスバンドの、クラウン部を隔てたそれぞれの側部部分上に、補強コードの一本もしくは複数本を直接的に巻付けて粘着させる方法の他、シェーピング工程に先だって、円筒状カーカスバンドのそれぞれの端部分上に補強コードを螺旋状に巻回してインサートプライとし、このインサートプライを、シェーピング工程等における、カーカスバンド端部分の折返しに伴って渦巻状に変形させて、そのカーカスバンドの膨出側部部分に粘着させる方法等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、カーカスバンドの膨出側部部分上に補強コードを直接的に巻付ける前者の技術にあっては、コードの巻付け位置精度の確保が困難である他、タイヤの成型工程に占める巻付け時間の長さがタイヤ成型のサイクルタイムを長くして作業能率を低下させるという問題があり、また、円筒状カーカスバンドの端部分上に補強コードを螺旋状に巻回する後者の技術にあっては、その巻回時間が作業能率の低下を招き、また、カーカスバンドの端部分の折返しに伴うインサートプライの変形が、しばしば不均一な渦巻形状をもたらす他、補強コードそれ自身の伸長性が小さい場合には、螺旋形状から渦巻形状への変形それ自体が不可能である等の問題があった。
【0004】
この発明は、従来の提案技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、タイヤの成型工程とは別の工程で、インサートプライ等を予め所要の形状に形成することで、タイヤの成型作業能率の低下なしに、補強コードの伸長性のいかんにかかわらず、補強コード等を所期した通りの位置に正確に配置することができる、インサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の、インサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法は、サイド部にインサートプライを有する生タイヤを成型するに当って、それぞれの端部分上にビードリングを配設した円筒状のカーカスバンドの中央部分を、両ビードリングの近接変位下で膨出変形させ、このカーカスバンドの、クラウン部を隔てたそれぞれの側部部分上に、別の工程で予め形成した、有機繊維コードもしくは金属コードからなる補強コードの渦巻状巻回構造になるインサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを、相互に別個にまたは一体として配設し、この配設後に、先に膨出変形させたカーカスバンドの膨出変形量をさらに増加させるものである。
【0006】
この方法では、インサートプライに加えて、環状ゴム層をもまた、タイヤの成型工程から切り離して予め形成し、それらを、シェーピング工程のカーカスバンドの所要位置に粘着等させることにより、タイヤの成型工程で、補強コードを巻回配置してインサートプライを形成し、また、サイドゴム等を成形配置する場合に比して作業能率を大きく高めることができる。
【0007】
しかも、インサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを、それらの形成に何の制約も受けることのない別工程で所要の形態に形成することで、それらの形状および寸法精度を十分に高めることができるので、それらをカーカスバンドに粘着等させてなお、コード材質、ゴム材質等にかかわらず、常にすぐれた配設精度の下で、所期した通りの位置に正確に組付けることができる。
【0008】
そして、これらのことは、インサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを、相互に別個に配設する場合および、予め一体化させて配設する場合のいずれにあっても同様であるが、後者によれば、成型作業能率を一層高めることができる。
【0009】
ここで、インサートプライおよび環状ゴム層の配設は、カーカスバンドの端部分の、ビードリングの周りでの折返しの前もしくは後のいずれにおいても行うことができ、その前後に応じて環状ゴム層の種類を適宜に選択することができる。
【0010】
たとえば、カーカスバンドの折返し前の配設では、その折返し端部分と、環状ゴム層との不都合な干渉を防止するべく、環状ゴム層を、ビードフィラ、サイドゴムの半径方向外側部分、または、ビードフィラおよびサイドゴムの半径方向外側部分等とすることができ、また、折返し後の配設では、その環状ゴム層を、サイドゴムの全体、サイドゴムの全体とゴムチェーファ、サイドゴムの全体とビードフィラの半径方向内側部分とゴムチェーファ、サイドゴムの全体とビードフィラの半径方向外側部分、または、ビードフィラの半径方向外側部分のみ等とすることができる。そして、このような環状ゴム層の配設に当っても、それらの構成各部を相互に別個に、または、予め一体化させて配設することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基いて説明する。
図1は、この発明の実施の形態を、インサートプライを環状ゴム層から独立させて配設する場合について示す略線断面図であり、これは、いわゆるシングルステージ成型における、カーカスバンド成型ドラムを兼ねるシェーピングドラムまたは、いわゆる2ステージ成型における、カーカスバンド成型ドラムとは別体をなすシェーピングドラムをもって、カーカスバンドの中央部分を膨出変形させたシェーピング工程を示す。
【0012】
図中1はカーカスバンドを示し、ここに示すこのカーカスバンド1は、たとえば、図示しないカーカスバンド成型ドラム上で円筒状に成型した後、それの両端部分上にそれぞれのビードリング2を配設した状態で、または、図の左半部に示すように、ビードリング2をカーカスバンド端部分の折返し部1aで、図示しないインナーライナ等とともに包み込んだ状態で、それぞれのビードリング2を、ビードロック3をもって内周側から保持して、それらのビードロック3、ひいては、それぞれのビードリング2を相互に近接変位させるとともに、そのカーカスバンド1の内周側へ直接的に、または、図示しないブラダーを介して間接的に加圧気体を吹き込んで、軸線方向の中央部分を半径方向外方へ膨出変形させた状態にある。
【0013】
ここでは、このように膨出変形されたカーカスバンド1の、クラウン部を隔てたそれぞれの側部部分上に、タイヤのこの成型工程から分離独立させた工程で予め形成されて、補強コードの渦巻状巻回構造になり、所要の配設形態を有するインサートプライ4を粘着等させる。
【0014】
ここで、インサートプライ4の半径方向配設域は、補強コード4aの巻回数をもって適宜に選択することができ、この場合、インサートプライ4の内周縁が、カーカスバンド1の折返し部1aより半径方向外方に位置するときには、インサートプライ4の配設時点は、折返し部1aの形成時点の前後いずれともすることができる。この一方で、インサートプライ4の内周縁が、折返し部1aの外周縁より半径方向内方に位置するときは、そのインサートプライ4を、折返し部1aの内外側のいずれに位置させるかで、インサートプライ4の配設タイミングを選択することが必要になり、図の左半部に示すように、折返し部1aの形成後にインサートプライ4を配設するときは、そのインサートプライ4の内周側部分が折返し部1aの外側に重なることになり、図の右半部に示すように、折返し部1aの形成前に配設するときは、折返し部1aの内側で、ビードリング2の外周側に予め配設したビードフィラ5の外側に位置することになる。
【0015】
一のインサートプライ4をこのように配設した後は、所要のタイミングでの折返し部の形成、他のインサートプライの所要に応じた配設等を行った後、または、行うことなく、これも別工程にて予め所要の形状および寸法に形成したサイドゴム6等の環状ゴム層もしくはそれの構成部材をそれぞれ配設するとともに、カーカスバンド1のクラウン部に、たとえばベルト・トレッドバンド、その他を配設して生タイヤの成型を終了する。
【0016】
なおここで、インサートプライ4の配設の後に、カーカスバンド1へのベルト・トレッドバンド7の接合を行う場合には、その接合に先だって、ビードリング間距離の一層の短縮をもたらして、カーカスバンド1の膨出変形量を増加させ、これに伴って、インサートプライ4の補強コード張力を高めることが好ましく、これによれば、生タイヤの加硫成形に際するゴム質の変形、流動等によって補強コード4aに作用する力に対して、その補強コード4aを十分に対抗させて、補強コード4aの乱れ、変形等を有効に阻止することができる。
【0017】
図2は、他の実施形態を示す略線断面図であり、これはインサートプライと環状ゴム層とを予め一体化して配設する場合について示すものであり、これによれば、所要の配設作業効率、すなわち組付け作業効率を大きく向上させることができる。
【0018】
図の左半部に示すところは、ビードリング2の外周側にビードフィラ5を配設した状態の下で、カーカスバンド1の端部分に折返し部1aを形成し、しかる後、別の工程で所要の形状、寸法等に予め形成したインサートプライ4と、環状ゴム層としてのサイドゴムの全体6とのプレアッセンブリ構体8を、カーカスバンド1の側部部分に配設する場合を示し、図の右半部に示すところは、折返し部1aの形成前の時点で、予め形成したインサートプライ4と、環状ゴム層としてのサイドゴムの半径方向外側部分9とのプレアッセンブリ構体10をカーカスバンド側部部分に配設する場合を示す。
【0019】
ここで、後者の場合のプレアッセンブリ構体10から、サイドゴムの半径方向内側部分を省いているのは、その内側部分が、事後的な折返し部の形成によって、折返し部の内側に挟み込まれる不都合を回避するためである。なおこの後者の場合は、ビードフィラ5をもまたプレアッセンブリ構体に含ませることができ、これによれば、組付け作業効率をより一層高めることができる。
【0020】
以上のような配設に続くさらなる工程は、先に述べたところと同様であり、全ての部材の組付けによって生タイヤの成型工程が終了する。
【0021】
ところで、インサートプライ4の、タイヤ成型工程から独立した形成は、たとえば図3に示すように、補強コード4aの巻取りロール11から、フェスツーン12を介して繰出されたそのコード4aを、回転駆動される巻取り円板13上に、たとえば溝付きロール14をもって圧着させるとともに、その溝付きロール14の半径方向位置を、揺動アーム15をもって漸次変化させて、補強コード4aを、巻取り円板13上で渦巻状に延在させることにより行うことができ、このようにして形成されるインサートプライ4は、たとえばそれを、搬送手段としての吸着板その他で保持しつつ、図1,2に示すカーカスバンドの側部部分へ、直接的に、または、環状ゴム層とのプレサッセンブリの後に搬送してそこへ粘着等させることで、所定位置に所期した通りに配設される。
なおこのようなインサートプライ4は、吸着板その他に保持した状態で、一定期間保管することもできる。
【0022】
また、環状ゴム層の予めの形成は、押出機により、回転円板上等に押出したコンター付き部材を、所定の直径の下でエンドレスに接合することによって行うことができる他、たとえば図4に示すように、押出機16から押出した5〜20mm程度の幅のリボン17を、回転円板18上で適宜に積層して所要のコンター形状とすることにより行うこともできる。
このようにして形成される環状ゴム層もまた、搬送手段としての吸着板その他をもって所要の位置へ搬送し、そしてそこへ配設することができる。
【0023】
【発明の効果】
かくしてこの発明によれば、シェーピング工程で、カーカスバンドの、クラウン部を隔てた側部部分上に、タイヤ成型工程から独立させた工程で予め形成したインサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを、相互に別個に、または、プリアッセンブリによって一体化させた状態で配設して組付けることで、タイヤの成型作業能率を高めるとともに、インサートプライおよび環状ゴム層を、所期した通りに常に正確に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示す略線断面図である。
【図2】 他の実施形態を示す略線断面図である。
【図3】 インサートプライの形成態様を例示する略線斜視図である。
【図4】 環状ゴム層の形成態様を例示する略線斜視図である。
【符号の説明】
1 カーカスバンド
1a 折返し部
2 ビードリング
3 ビードロック
4 インサートプライ
4a 補強コード
5 ビードフィラ
6 サイドゴム
7 ベルト・トレッドバンド
8,10 プレアッセンブリ構体
9 サイドゴムの半径方向外側部分
11 巻取りロール
12 フェスツーン
13 巻取り円板
14 溝付きロール
15 揺動アーム
16 押出機
17 リボン
18 回転円板
Claims (6)
- サイド部にインサートプライを有する生タイヤを成型するに当り、
それぞれの端部分上にビードリングを配設した円筒状のカーカスバンドの中央部分を膨出変形させ、このカーカスバンドの、クラウン部を隔てたそれぞれの側部部分上に、予め形成した、補強コードの渦巻状巻回構造になるインサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを配設し、該配設後に、前記カーカスバンドの膨出変形量を増加させる、インサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。 - インサートプライおよび環状ゴム層のそれぞれを、相互に別個にまたは一体として配設する請求項1に記載のインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。
- カーカスバンドの端部分のビードリングの周りでの折返しを、インサートプライおよび環状ゴム層の配設後であって、カーカスバンドの膨出変形量を増加させる前に行う請求項1もしくは2に記載のインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。
- 環状ゴム層を、サイドゴムの一部もしくは全部とする請求項1〜3のいずれかに記載のインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。
- 環状ゴム層を、ビードフィラの一部もしくは全部とする請求項1〜3のいずれかに記載のインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。
- 環状ゴム層を、ビードフィラおよびサイドゴムの一部とする請求項1〜3のいずれかに記載のインサートプライを具える空気入りタイヤの製造方法。
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