JP4777612B2 - 多官能チオキサントン光開始剤 - Google Patents

多官能チオキサントン光開始剤 Download PDF

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Description

本発明は、多官能性光開始剤として有用であり、ワニス、ラッカー、印刷用インク(特に印刷用インク)等の種々のコーティング組成物に使用され得る一連の新しいチオキサントン系化合物に関する。また、本発明は、本発明の化合物の少なくとも1つを光開始剤として含む放射線硬化型表面コーティング組成物を提供する。
本発明の化合物は、チオキサントンまたはそのアナログから誘導された複数の基に化学的に結合されたポリヒドロキシポリマー化合物によるポリマーコアを含む。
エネルギー硬化型表面コーティング処方に使用される光開始剤は、優れた硬化速度、特に優れた表面硬化活性、低臭気、および優れた溶解度を有する必要がある。更に、消費者は異質な化合物が食品内に存在することに慎重になっているため、将来的な法制に対応しておくためにも、化合物が移動したり、抽出されたりする傾向も低く抑えるべきである。なお、化合物を実際に使用するため、それらが商業規模で容易かつ経済的に製造可能なことが必要である。したがって、要求条件の一つは、化合物の調製における反応速度が比較的速くなければならないことである。これらの要求条件の全てを満たすことは、ますます難しくなっている。
近年、チオキサントン誘導体(特にイソプロピルチオキサントンとジエチルチオキサントン)は、紫外線硬化型印刷用インク用途に広く使用されてきた。しかしながら、この種の未反応チオキサントン誘導体には、硬化後印刷用インクから、例えば包装された食品などへ移動する傾向があるため、これらの誘導体は完全に満足できるものではない。
しかしながら、チオキサントンとその誘導体の多くは、中圧水銀ランプからの強い紫外線照射の領域にある2個の吸収ピークを有し、印刷用インクにとって特に貴重な特性である優れた深部硬化(throngh cning)をもたらすため、光開始剤として非常に貴重である可能性が大きい。したがって、チオキサントンの利点を持ちながら、同じ程度には移動しない化合物のニーズがある。
イソプロピルチオキサントン等の簡単なチオキサントン誘導体は、印刷用インクに対する溶解度が低く、室温において固体であるため、直接それらを取り入れることは難しい。その結果、それらは、一般に、特性、価格、および使いやすさの適正バランスを提供するため、他の光開始剤とアミン相乗剤との液体ブレンドと共に処方に加えられる。チオキサントン自体は、印刷用インクとほとんどの汎用有機溶媒には難溶性を示す。
1グラムあたりの光開始剤反応性は、硬化にとって非常に重要である。材料の反応性が希望のレベルより低いなら、処方の硬化速度を維持するために限られた範囲内でより多くの材料を加えることができる。10〜12%以上の濃度では、非アクリレート機能性材料は多くのアミノアクリレート相乗剤の場合のように可塑剤として振る舞い始めるか、または硬化フィルムの架橋密度をその機械的物性が損なわれるまで減少させる。ジペンタエリトリトールペンタアクリレート等の高官能性アクリレートモノマーを使用することにより、架橋密度を増加させることでこの効果にある程度まで対抗することができるが、この取り組み方ではコストが劇的に上昇し、処方のフレキシビリィティも失われるだろう。
タイプII(水素引き抜き型)光開始剤の移動または硬化フィルムから抽出される傾向は、理論上、タイプI(開裂型)光開始剤より強い。これは開裂型光開始剤がアクリレート基と反応することにより、硬化フィルムに結合する傾向がある2つの高反応性遊離基を発生することによる。また、水素引き抜き型光開始剤は、アミン相乗剤との二分子反応により2つの遊離基を生成する。その中では、アミノアルキル遊離基は反応性が高く、アクリレート基と反応することにより硬化フィルムと結合するが、ケチル遊離基はアクリレート結合に対し反応性が低く、停止反応を起こすか、またはケトンに酸化してしまう。硬化フィルムの溶剤抽出では使用されたタイプII光開始剤のすべてを回復する事はできないことから、いずれのメカニズムにせよ、これらの材料は硬化フィルムと結合できるといえる。したがって、官能度を増加させる、すなわち単官能性光開始剤よりむしろ多官能性光開始剤を使用することにより、光開始剤の両タイプ共、移動したり、抽出されたりする傾向を最小に抑えることができる。
また、材料が硬化フィルムから抽出される傾向は、ある程度までは抽出プロセスに使用される溶剤(類似体;simulant)に依存するだろう。現在、ヨーロッパで承認されている食物類似体は、水(ソフトドリンクとミルク)、水中の10%エタノール(ワイン)、水中の3%酢酸(果汁)、あるいはオリブ油、水中の95%エタノール、またはイソオクタン(油脂食品)のいずれかである。これらの類似体の大部分は水性であるため、光開始剤は抽出レベルを最低に抑えるためには水溶性であってはならない。また、平版印刷インクに使用される光開始剤にとっても水不溶性は重要であり、そうでなければビヒクル溶液に溶け、硬化段階以前にインクから除去されてしまう可能性もある。また、限られた水溶性は、インク/ビヒクルのバランスを崩壊させ、印刷のできばえが悪くなる可能性もある。
WO97/49664は、光開始剤として使用され得る一連の化合物を開示し、その一部にはチオキサントンかその誘導体に由来する残基を含んでいる。しかしながら、WO97/49664が開示する化合物は、単官能性であるため、1グラム当たり官能度は低くなり、反応度を低下させる。更には、それらは比較的に水分感受性を持つか水や他の水性流体に可溶であるため、抽出される傾向があり、食品への適用には使用することができない。それらの水分感受性や水溶性のため、平版印刷インクへの使用には不適当であろう。
N.S.Allen等は、その著作(Trends in Photochemistry & Photobiology, Vol. 5, 7 - 16 (1999))で、光開始剤として使用され得る高分子主鎖を基にするものを含む多種にわたるチオキサントン誘導体の特性について述べている。しかしながら、本発明のものと異なって、これらの化合物のチオキサントン官能性部分は、異なった長さの鎖で高分子主鎖に結合したペンダント基である。このような化合物は、粘度が非常に高く、コーティング組成物に入れて使用することは非常に難しい。同様の化合物は、Pouliquen等による(Macromolecules、Vol.28、8028〜8034(1995))とAngiolini等による(J.Appl. Poly. Sci.、Vol.55、1477〜1488(1995))で発表されているが、同様に不利な点を有する。
ES2015341も、チオキサントン系が高分子鎖に付した一連の化合物を開示する。この場合、化合物は単官能性であるか、またはペンダント基として高分子主鎖に結合された多官能性の化合物である。
したがって、高官能性、コーティング処方への優れた溶解性、高い反応性を有し、またほとんどの既知の代替化合物に比べて非常に臭気が低く、移動したり、抽出されたりする傾向が極めて低いコーティングを作る多官能性の光開始剤が必要なことが明らかである。
我々は、2−ヒドロキシチオキサントンを原料とした、上記の要求条件を満たす一連の多官能化合物を発見した。材料の多官能的な特質としては、1グラム当たりの官能度が比較的高く、そして、高分子連結基はコーティング処方、特に紫外線硬化型処方での材料の溶解性を高めている。この生成物はまた紫外線硬化型処方との相溶性があり、ほとんどの代替化合物に比べて非常に臭気が低く、移動したり、抽出されたりする傾向が極めて低いコーティングを作り得る液体である。
したがって、本発明は式(I):
Figure 0004777612
{式中、nは1〜6の数であり;
R3は水素原子、メチル基、またはエチル基であり、nは1より大きい場合、R3で表される基または原子は同一または異なるものであってもよい;
Aは式 −[O(CHR2CHR1)a]y−、−[O(CH2)bCO]y−、または -[O(CH2)bCO](y-1)-[O(CHR2CHR1)a]- の基を表し、式中R1とR2の一方は水素原子を表し、他方は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し;
aは1〜2の数であり;
bは4〜5の数であり;
Qは2〜6個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物の残基であり;
xは1より大きく、Qの利用できる水酸基の数を越えない数であり;
xが1より大きく、2を越えない場合、yは1〜10の数であり;そして、
xが2を越える場合、yは3〜10の数である}で表される光開始剤化合物とそのエステルである。
これらの化合物はワニス、ラッカー、および印刷用インクを含むエネルギー硬化型、例えば紫外線硬化型のコーティング組成物に使用される光開始剤として有用であり、特に印刷用インクには優れている。
従って、本発明は、(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーかオリゴマーである重合性成分と(b)本発明に従った光開始剤を含むエネルギー硬化型液体組成物を提供する。
本発明は、更に本発明の組成物に放射線、好ましくは紫外線を照射することにより、ポリマー組成物の硬化物を製造する方法を提供する。
疑問回避のため、下記にチオキサントン誘導体の番号付けのシステムを式(IV)で表す:
Figure 0004777612
これらの化合物の内、nが1であり、特にnが1でR3が水素原子である化合物が望ましい。
あるいは、nが2〜6であれば、代わりにR3基の内の一つが水素原子、メチル基またはエチル基であり、他のR3が水素原子であることが望ましい。
本発明の化合物におけるAは、式-[O(CHR2CHR1)a]y-で表される基であり、この場合、aは1〜2の整数、yが前記の定義の通り3〜10の数であることが望ましく、より望ましくは式 -[OCH2CH2]y-、-[OCH2CH2CH2CH2]y-、-[OCH(CH3)CH2]y-のいずれかの基であり、この場合もyが前記の定義の通りで3〜10の数であり、または、式 -[O(CH2)bCO]y-、-[O(CH2)bCO](y-1)-[O(CHR2CHR1)a]-のいずれかの基であり、この場合、bが4〜5の数、yが前記定義の通り3〜10の数であることが望ましい。yが3〜6の数であれば、より望ましい。
特にxが2であり、yが1〜10の数である化合物が望ましい。
本発明は、その化合物が高分子的性質であることを特徴とする。高分子的性質は、Qで表される基、Aで表される基、または両方から与えられる。
本発明化合物のコアを形成する式Q-(A-)xの高分子ポリヒドロキシ残基は、化合物のふるまいに主要な影響を与える。本発明によれば、得られ化合物は液体かまたは融点が低く、コーティング組成物内での分散を容易にするため、残基が高分子的であることは重要である。類似の構造を持っている非高分子化合物は固体であり、そして/又は、これらのコーティング組成物に不溶性である傾向がある。しかしながら、式Q-(A-)xのコア残基の分子量が高過ぎないことが望ましく、式Q-(A-)xの残基の分子量が、2000以下、望ましくは1200以下、より望ましくは1000以下、そして800以下であることが最も望ましい。
Qは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリットの残基であることが特に望ましい。
Qが残基である化合物における利用可能なヒドロキシ基の数よりxが小さい数の場合、本発明の化合物には遊離ヒドロキシ基が存在する可能性が認識される。化合物を酸の存在下で調整するなら、または望むなら、これらのヒドロキシ基がエステル化される場合もある。この様に調整されたエステルの特性には特に制限はないが、炭素数が2〜6のアルカノイルエステルのような低級脂肪酸等のエステルが望ましい。このようなエステルとして、酢酸、プロピオン酸、酪酸、および吉草酸エステルが例示される。
本発明の化合物を分析すれば、上記の式におけるa、b、yの数値が必ずしも整数ではなく、本発明の化合物はa、b、yの数が異なるいくつかの化合物の混合物であり、整数ではありそうもないことは明らかである。本発明によれば、それぞれの数の平均値が前記の定義の通りであるなら、問題ではない。もちろん、本発明における化合物の各分子のa、b、yが整数となるように、個々の化合物に分離することは可能であるかもしれないが、実際にはこれらの化合物の混合物が使用されている。
本発明の化合物は、このタイプの化合物の調製ではよく知られている反応により製造することができ、選択する具体的な反応経路は製造したい化合物の特性によって異なる。
例えば、このような化合物は式(II):
Figure 0004777612
の2-カルボキシアルコキシチオキサントン(nとR3は前記の定義通り)、特に2-カルボキシメトキシチオキサントンを式(III):
(HA)x−Q (III)
(式中、A,x,Qは前記の定義通り)のコア化合物と反応させることにより、調整することができる。
通常、試薬や反応に悪影響を及ぼさなければ、その特性が本発明にとって重要でない溶媒の存在下に反応を行うことが望ましい。適当な溶媒としてはベンゼン、トルエンまたはキシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
その反応は、酸触媒、例えば、pートルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などのスルホン酸;硫酸、塩酸または燐酸などの無機酸;または、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素またはオルガノチタナートなどのルイス酸の存在下に行うことが望ましい。
同様に、反応の温度は本発明にとって重要でなく、試薬と溶媒の性質と反応条件により大幅に変化するが、反応が完了するためには、反応の間に生成された水が取り除かれるに足る高さの温度であればよい。したがって、一般的に、反応混合物の還流温度で反応を行えば便利であることがわかる。また、主に反応温度により、反応に必要な時間が大幅に変化することも考えられる。しかしながら、上記の望ましい条件であれば、通常、1〜20時間で充分と思われる。
反応が完了すれば、反応混合物から従来の手段によって、例えば水そして/または水性アルカリで反応混合物を洗浄し、乾燥後、溶媒を減圧下で蒸発除去することにより望みの生成物を分離することができる。
通常、本発明の化合物を含有するコーティング組成物は、少なくとも1つの放射線硬化型モノマーそして/又はオリゴマーと本発明の化合物、また場合によっては他の反応性希釈剤から構成される。また、印刷用インクの場合では、組成物は、顔料のような着色剤を含むこともある。放射線硬化型モノマーかオリゴマーは、エチレン性不飽和化合物であることが望ましい。適切なアクリレートオリゴマーとしては、脂肪族か芳香族ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートとエポキシアクリレート(ビスフェノールA系エポキシアクリレート等)が挙げられる。適当なアクリレートモノマーとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート;エオキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリトリットテトラアクリレート等のポリエーテルアクリラート類、「ジアノール」ジアクリレート(すなわち、2,2−ビス「4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル」プロパンのジアクリレート、UCB製Ebecryl 150)のようなエポキシアクリレート類およびトリプロピレングリコールジアクリレート等のグリコールジアクリレート類が挙げられる。
本発明の組成物は、従来技術において周知のアミノアクリレートやジメチルアミノ安息香酸エステル等の相乗剤を含むことが望ましい。印刷用インクの場合には相乗剤はアミノアクリレート、ワニスの場合にはジメチルアミノ安息香酸エステルであることが望ましい。インクによっては、例えばフレキソ印刷分野で用いられるインクは、両方のアミン型のものを含むことも可能である。
放射線硬化型モノマーかオリゴマー、光開始剤、相乗剤および随時加える着色剤の量は、ワニスやインクの種類、それを塗布するための特定の設備や用途によって異なる。しかしながら、通常、全組成物の重量に対し、光開始剤とアミン相乗剤の量は1%〜20%である。
式(I)の多官能性開始剤は、インク、特に平版印刷インクを含む印刷用インクに特に適している。これらは、上記の成分への追加成分としては、例えばここで引用したLeach R.Hら(編), Van Nostrand Reinhold, Wokingham, (1988)で述べているように、1種または複数の顔料、ワックス、安定剤、および流動補助剤を通常含む。本発明の光開始剤は黄変を起こすので、変色が重要でない場合にだけワニスに入れて使用することができる。
以下に、例を引用して本発明を説明するが、この例に限定するものではない。例に挙げた公式において、nは化合物の分子量(MW)から概算することができる重合度を表す。
実施例1
2-カルボキシメトキシチオキサントンの調製
Figure 0004777612
24gの水酸化ナトリウムを400mlのテトラヒドロフランの中で5分間還流させた。22.8g(0.1モル)のヒドロキシチオキサントンを加えて還流を1時間続けたところ、色は鮮やかな赤色に変化し、2―ヒドロキシチオキサントンのナトリウム塩の生成を示した。35.1g(0.21モル)のブロモ酢酸エチルを加えて、還流を3時間続けた。室温まで冷却した後、400mlの純水を攪拌下で加え、テトラヒドロフランを留去することにより透明で赤い溶液を得た。すべてのエステル中間体を加水分解するため、還流を2時間継続した。次に、溶液を50℃に冷却し、攪拌下で1.0Mの塩酸を400ml加えることにより、固体生成物を沈殿させた。すべてのナトリウム塩が遊離酸に変換されたことを確かめるため、5分間還流させて溶液を室温に冷却し、2時間攪拌した後、固体をろ過し、400mlの脱イオン水で洗浄し、真空オーブンにより80℃で乾燥した。
生成物の収率は28.12g(97%)であった。製品はNMRで分析された。
実施例2
Figure 0004777612
8.58g(0.03モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと4.82gのエトキシ化トリメチロールプロパン(Perstorp製TP70)を0.15gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に200mlのトルエンで共沸蒸留した。2.5時間後に冷却した溶液をろ過し、すべての溶媒をロータリーエバポレーターで除去することにより、濃赤で高粘度のオイルを得た。
生成物はHPLCで分析された。
実施例3
Figure 0004777612
4.5g(0.01575モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと1.875gのポリテトラヒドロフラン(分子量250)を0.3gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に100 mlのトルエンで共沸蒸留した。6.5時間後、冷却した溶液ろ過し、0.25Mの水酸化ナトリウム100mlで二度洗浄し、脱イオン水100mlで二度洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、すべての溶剤をロータリーエバポレーターで除去したところ橙赤色のオイルを得た。
生成物の収率は5.67g(96.2%)であった。生成物はHPLCで分析された。
実施例4
Figure 0004777612
20 g(0.07モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと9.59gのエトキシ化ペンタエリスリット(Seppic製Simusol PTPE)を0.6 gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に300 mlのトルエンで共沸蒸留した。8.5時間後に、溶液を90°Cでろ過し、75°Cで0.1Mの水酸化ナトリウム200mlで二度洗浄し、脱イオン水200mlで二度洗浄した。有機相を共沸乾燥し、すべての溶剤をロータリーエバポレーターで除去したところ橙赤色で高粘度のオイルを得た。
実施例5
Figure 0004777612
9.0 g(0.0315モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと2.8 g(0.014モル)のポリエチレングリコール(分子量200)を0.3 gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に100 mlのトルエンで9時間共沸還流した。この溶液を60℃まで冷却してろ過した後、ロータリーエバポレーターですべての溶媒を除去して、濃赤で高粘度のオイルを得た。
生成物の歩留りは10.0g(96.5%)であった。生成物はHPLCで分析された。
実施例6
Figure 0004777612
10.0 g(0.035モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと4.44 g(0.0054モル)のエトキシ化ジペンタエリスリット(Perstorp製DPP130)を0.35gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に100 mlのトルエンで10時間共沸還流した。低温では製品がトルエンに溶解せず、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、生成物を100mlのジクロロメタンで再溶解し、100mのl0.2Mの炭酸ナトリウム水溶液で二度洗浄し、100mlの脱イオン水で一度洗浄した。溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、すべての溶剤をロータリーエバポレーターで除去したところ、粘度が非常に高い赤色のオイルを得た。生成物の収率は7.46g(56.9%)であった。生成物はHPLCで分析された
比較例1
Figure 0004777612
7.15 g(0.025モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと1.15gのヘキサンジオール(0.01モル)を0.3 gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に150 mlのトルエンで共沸蒸留した。6時間後に、溶液を冷却したところ溶液から固体が沈殿した。それをろ過し、0.25M水酸化ナトリウムと脱イオン水で洗浄した後、真空オーブンで乾燥することによって印刷用インク処方に難溶性の黄色の粉末を得た。
生成物の収率は5.37g(82%)であった。生成物はHPLCで分析された。
比較例2
Figure 0004777612
7.15 g(0.025モル)の2-カルボキシメトキシチオキサントンと1.39gのジトリメチロールプロパン(0.01モル)を0.3 gのpートルエンスルホン酸1水塩触媒と共に150 mlのトルエンで共沸蒸留した。4.75時間後、溶液が冷却したところ、溶液から固体が沈殿した。すべての溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、固体反応物をジクロロメタンに再溶解した後、0.25M水酸化ナトリウム100mlで二度洗浄し、脱イオン水100mlで二度洗浄した。すべての溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、真空オーブンで一晩乾燥させ、印刷用インク処方には難溶性の黄色の粉末を得た。
生成物の収率は5.9 g(81%)であった。生成物はHPLCで分析された。
実施例10
インクにおける開始剤の評価
以下の処方からシアン色のオフセットインクを製造した:
Figure 0004777612
光開始剤ブレンドは、下記のもので構成した:
Figure 0004777612
この処方では、次のチオキサントン誘導体を評価した(インク中に1.562%):
イソプロピルチオキサントン(Lambson製Speedcure ITX)
2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson製Speedcure DETX)
1,3-ジメチル-2-(2-エチルヘキシルオキシ)チオキサントン (First Chemical製Firstcure LTX)
実施例3の生成物
1.35の色濃度でカートンボード基材の上に処方を印刷し、300W/インチ(120W/cm)の中圧水銀ランプの下を四回通して硬化させた。それらの相対的硬化レベルは、耐擦過性、親指ねじれ(thuwb twist)、およびイソプロパノール摩擦テストの組み合わせを使用することで評価した。
4つの全実験における硬化速度は比較的近かったが、例3の生成物とLTXを含むものはわずかに劣っていた。LTXは0.31%、例3の生成物は0.23%をそれぞれ添加することより、同等な硬化速度を達成した。ITXとDETXに比べてわずかに硬化速度が劣ったにもかかわらず、例3の生成物がモノマー性チオキサントン誘導体LTXより大きい反応性を持っていることが分かる。高分子特性のため、例3の生成物の1グラムあたりの官能度は、ITX、DETXまたはLTXより低く、これは特に有利である。
実施例11
光開始剤のコンタクトマイグレーション分析
以下の処方からシアン色のオフセットインクを製造した:
Figure 0004777612
この処方へ、以下のものを含む光開始剤ブレンドを加えた:
Figure 0004777612
イソプロピルチオキサントンがチオキサントン誘導体であったインクに7.5%の光開始剤ブレンドを加え、例3に記載したチオキサントン誘導体のインクには9.0%の光開始剤ブレンドを加えた。その後、インク処方はGPTAで100%に調合した。光開始剤の混合レベルは、2つのインクの硬化速度を等しくするように選択した。
Prufbau印刷機を用い、1.4の色濃度でIggesund製のIncada Silk 260gsmというカートンボード基材の上に二つの処方を印刷した。出力を最大にセットした2つの300W・インチの中圧水銀ランプの下で、100m/秒の速度でプリントを硬化させた。
その後、印刷サンプルのコンタクトマイグレーション分析では、硬化したインクを濾紙かポリエチレンサセプタのどちらかに接触させ、次に、アルミ箔で両側から挟んだ。これらのいくつかのサンドイッチ構造をSpecac機に重ねて配置し、10トンの圧力下で72時間維持した。
サセプターがポリエチレンであれば、移動した光開始剤を再度溶解するようにサセプターをトルエンに24時間浸した。次に、移動した開始剤の量をHPLCで定量し、プリント面積単位あたりの光開始剤のグラム数で表す。サセプターが濾紙であれば、トルエンの代わりにアセトニトリルを使う以外は、同様の手順を用いる。
表1に光開始剤のコンタクトマイグレーションのレベルを示す。
表1
チオキサントン光開始剤のコンタクトマイグレーションの結果
Figure 0004777612
表1の結果は、例3のチオキサントン光開始剤の移動傾向が市販の標準型チオキサントン光開始剤ITXより低いことを明白に立証している。
実施例12
光開始剤の蒸気相への移動分析
硬化したプリントに対し、例11と同様に同じの2つサンプルを作成した。これら50cm2のサンプルをペトリ皿に置き、1.0gのTenaxでカバーした。このサンプルを180℃まで10分間加熱し、Tenaxをジエチルエーテルによって抽出した後、高速液体クロマトグラフィによって光開始剤を定量した。
表2には光開始剤蒸気相への移動のレベルを示す。
表2
チオキサントン光開始剤の蒸気相への移動結果
Figure 0004777612
表2の結果は、例3のチオキサントン光開始剤の揮発性は低く、検出できるだけの蒸気相への移動を防ぐが、対照的にITXでは蒸気相への移動が大きいことを明白に立証している。

Claims (20)

  1. 式(I):
    Figure 0004777612
    {式中、nは1〜6の数であり;
    は水素原子、メチル基、またはエチル基であり、nが1より大きい場合、Rで表される基または原子は同一または異なるものであってもよい;
    Aは式−[O(CHRCHR−、−[O(CHCO]−、または−[O(CHCO](y−1)−[O(CHRCHR]−の基を表し、
    式中RとRの一方は水素原子を表し、他方は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し;
    aは1〜2の数であり;
    bは4〜5の数であり;
    Qは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、カプロラクトンポリオールの残基であり;
    xは1より大きいが、Qで利用できるヒドロキシ基の数を越えない数であり;
    xは1より大きく、2を越えない数であれば、yは1〜10の数であり;そして、
    xが2を越える数であれば、yは3〜10の数である}で表される化合物、およびその低級脂肪酸エステルであって、Q内の遊離ヒドロキシル基がエステル化されたもの。
  2. nが1である請求項1の化合物。
  3. が水素原子を表す請求項2の化合物。
  4. nが2〜6の数であり、R基の一つが水素原子、メチル基またはエチル基を表し、他のRが水素原子を表す請求項1の化合物。
  5. yが3〜10の数である請求項1〜4の全ての化合物。
  6. Aが式−[O(CHRCHR−の基を表し、aが1〜2の整数であり、yが3〜10の数である請求項1〜4いずれかの化合物。
  7. Aが式 −[OCHCH−、−[OCHCHCHCH−または−[OCH(CH)CH−の基を表し、yが3〜10の数である請求項1〜4いずれかの化合物。
  8. Aが式 −[O(CHCO]−の基を表し、bが4〜5の数であり、yが3〜10の数である請求項1〜4いずれかの化合物。
  9. Aが式 −[O(CHCO](y−1)−[O(CHRCHR]−の基を表し、aが1〜2の数、bが4〜5の数、yが3〜10の数である請求項1〜4いずれかの化合物。
  10. xが2、yが1〜10の数である請求項1〜9いずれかの化合物。
  11. yが3〜6の数である請求項1〜10いずれかの化合物。
  12. 残基Q−(A−)が2000以下の分子量を有する請求項1〜11いずれかの化合物。
  13. 残基Q−(A−)が1200以下の分子量を有する請求項12の化合物。
  14. 残基Q−(A−)が1000以下の分子量を有する請求項13の化合物。
  15. 残基Q−(A−)が800以下の分子量を有する請求項14の化合物。
  16. Qがエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリットの残基である請求項1〜15いずれかの化合物。
  17. (a)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーかオリゴマーである重合性成分と、(b)請求項1〜16いずれかの光開始剤を含むエネルギー硬化型液体組成物。
  18. 印刷用インクである請求項17のエネルギー硬化型液体組成物。
  19. 請求項17と18の組成物に放射線を照射することで高分子組成物の硬化物を調整する製法。
  20. 放射線が紫外線である請求項19の製法。
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