JP4776171B2 - デンプン分解酵素阻害活性を有する蕎麦殻エキス - Google Patents
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Description
(1)蕎麦殻を水または有機溶媒あるいはそれらの混合物で抽出して得られる、デンプン分解酵素阻害活性を有するエキス;
(2)分子量10000以上の画分である(1)記載のエキス;
(3)α−アミラーゼを阻害するものである(1)または(2)記載のエキス;
(4)該有機溶媒がエタノールである(1)ないし(3)のいずれかに記載のエキス;
(5)(1)ないし(4)のいずれかに記載のエキスを有効成分として含む、デンプン分解酵素阻害剤;
(6)(1)ないし(4)のいずれかに記載のエキスを有効成分として含む、糖尿病、高血糖および/または肥満の治療および/または予防薬;
(7)(1)ないし(4)のいずれかに記載のエキスを有効成分として含む機能性食品;ならびに
(8)蕎麦である(7)記載の機能性食品
を提供するものである。
脱脂大豆、蕎麦殻、米ぬか、醤油粕、ワイン粕、あん粕、梅の種、チーズホエー各々20g(乾燥重量)を、ソックスレー抽出器を用いて水150mlまたはエタノール150mlにて10時間抽出し、抽出物をロータリーエバポレーターにて蒸発乾固させてから水を添加して、各々2.1gの水抽出物およびエタノール抽出物を試料として得た。上記原料はワイン粕を除き一般的な食品加工メーカーから入手したものである。ワイン粕はメルシャン社から入手した。
次いで、これらの試料のα−アミラーゼ阻害活性およびα−グルコシダーゼ阻害活性を測定した。測定方法は以下の如し。
(i)α−アミラーゼ阻害活性の測定
アミラーゼテストワコー(和光純薬)を用いて測定を行った。試料終濃度は1mg/ml(w/v)、アミラーゼ終濃度は0.098U/mlとした。試料を添加しない系を対照とした。
(ii)α−グルコシダーゼ阻害活性の測定
マルトース水溶液(10%)を基質として、37℃で適当時間反応させ、遊離するグルコール量を測定することにより行った。試料終濃度は1mg/ml(w/v)、α−グルコシダーゼ終濃度は0.25U/mlとした。試料を添加しない系を対照とした。グルコース量の測定はグルコースCII−テストワコー(和光純薬)を用いて行った。
各抽出物のα−アミラーゼ阻害活性を図1(a)に示す。蕎麦殻抽出物は抽出溶媒(水またはエタノール)に関係なく上記測定においてα−アミラーゼを100%阻害した。次いで、ワイン粕のエタノール抽出物、脱脂大豆のエタノール抽出物のα−グルコシダーゼ阻害活性が強かった。各抽出物のα−グルコシダーゼ阻害活性を図1(b)に示す。試験試料のなかで蕎麦殻抽出物が抽出溶媒(水、エタノール)に関係なく上記測定において最強のα−グルコシダーゼ阻害活性を示した。次いで、醤油粕抽出物、脱脂大豆抽出物のα−グルコシダーゼ阻害活性が強かった。
これらの結果より、蕎麦殻水抽出物およびエタノール抽出物はα−アミラーゼおよびα−グルコシダーゼに対していずれも高い阻害活性を示し、効果的にデンプン分解を阻害すると考えられた。特に蕎麦殻抽出物はα−アミラーゼに対して強い阻害活性を示した。
本発明の精製蕎麦殻エキスの製造スキームを図2に示す。上記1で説明した方法において抽出溶媒として150mlの水を用いて、20gの蕎麦殻から2.1gの蕎麦殻水抽出物を得た(抽出溶媒として150mlのエタノールを用いても以下に述べるのと同様の結果が得られた)。この蕎麦殻水抽出物を限外濾過膜(分画分子量10000のセロファンチューブ、和光純薬)に入れ、水に対して透析して、分子量10000以上の画分と分子量10000以下の画分とに分けた。分子量10000以上の画分は0.71g得られ、分子量10000以下の画分は1.39g得られた。分子量10000以上の画分ロータリーエバポレーターにて蒸発乾固した後、エタノール150mlに溶解した。このエタノール溶液をソックスレー抽出器で10時間抽出し、抽出液をロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固させ、水に溶解して、0.027gの精製された分子量10000以上の画分(以下、「精製蕎麦殻エキス」という)を得た。なお、上記のロータリーエバポレーターによる蒸発乾固操作を凍結乾燥に代えて行ってもよい。最終段階にて使用する水は精製水(例えばMilli Q水)が好ましい。
上の2で説明した蕎麦殻水抽出物、限外濾過後の分子量10000以上の画分、分子量10000以下の画分、および精製蕎麦殻抽出エキスのα−アミラーゼ阻害活性を調べた。上の1(i)で説明した方法によりα−アミラーゼ阻害活性の測定を行い、α−アミラーゼ活性を50%阻害するに必要な試料濃度(「IC50」という)で表した。蕎麦殻水抽出物、分子量10000以上の画分、分子量10000以下の画分、および精製蕎麦殻エキスのIC50値はそれぞれ、65μg/ml(w/v)、31μg/ml(w/v)、2mg/ml(w/v)、および7.2μg/ml(w/v)であった(図2)。
以上の結果から、本発明のエキスのα−アミラーゼ阻害活性の多くが分子量10000以上の画分にあったことより、阻害物質は高分子量の物質である可能性が示唆された。
そこで、上記2で説明した各段階における試料中のポリフェノール量を測定した。ポリフェノール量の測定にはFolin-Ciocalteauの方法を用いた。すなわち、試料200μlと水3.2mlを試験管に入れて攪拌した。そこに飽和炭酸ナトリウム溶液を400μl加え30分間放置した。その後、調製した溶液は、分光光度計を用いて波長760nmの吸光度を測定した。検量線はカテキンを用いて作成した。蕎麦殻水抽出物、限外濾過後の分子量10000以上の画分、および精製蕎麦殻エキス中のポリフェノール量はそれぞれ、試料の22%、32%、および46%(w/v、カテキン当量)であった。
このように、精製段階が進むにつれて、試料中に含まれるポリフェノール量が増加していること、ならびに試料を有機溶媒(ベンゼン、トルエン、クロロホルム)分画を試みたところ、これらの有機溶媒に阻害活性物質が可溶であることから(データ示さず)、本発明のエキス中のデンプン分解酵素阻害物質はポリフェノール類であると考えられた。
上記1の方法により得られた蕎麦殻水抽出物および蕎麦殻エタノール抽出物のα−アミラーゼ阻害活性を、抗糖尿病機能エキスとして市販されている月見草エキスおよび冷え性・肩こり改善エキスとして市販されている蕎麦の葉エキスと比較した。いずれの試料も1mg/mlとして測定した。蕎麦殻水抽出物および蕎麦殻エタノール抽出物のα−アミラーゼ阻害活性はこれらの市販品と遜色ないどころか、それらの阻害活性を上回っていた(図3)。
さらに、蕎麦殻水抽出物のα−アミラーゼ阻害活性を、最近になってα−アミラーゼ阻害効果があることが明らかとなり市販飲料にも添加されているグアバ葉水抽出液(グアバ葉100g(乾燥重量)を2リットルの蒸留水にて80℃で30分抽出したもの)と比較した。本発明の蕎麦殻水抽出物のα−アミラーゼ阻害活性のIC50値は65μg/ml(w/v)であったが、グアバ葉水抽出液のそれは600μg/ml(w/v)であった。
Claims (4)
- 精製蕎麦殻エキスを有効成分とするデンプン分解酵素阻害用の医薬組成物であって、該精製蕎麦殻エキスが、水、メタノールまたはエタノールあるいはそれらの混合物で蕎麦殻を抽出し、抽出物から分子量10000以上の画分を得て、蒸発乾固させ、これを水、メタノールまたはエタノールあるいはそれらの混合物に溶解して抽出し、抽出液を蒸発乾固させることを特徴とする方法により製造されるものである、医薬組成物。
- 該有機溶媒がエタノールである請求項1記載の医薬組成物。
- 分子量10000以上の画分が限外濾過により得られる請求項1または2記載の医薬組成物。
- α−アミラーゼを阻害するものである請求項1または2記載の医薬組成物。
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