JP4775447B2 - 内燃機関用のスパークプラグ - Google Patents
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Description
このスパークプラグ9は、下記の中心電極94と、接地電極95とを有する。
この接地電極95は、取付金具92に固定されるとともに、接地電極95における中心電極94側の面である対向面において中心電極94に向かって接地電極95の母材の一部を突出させてなる突出部951を有する。
かかる突出部951の放電面952には、貴金属チップ953が溶接してある。
すなわち、貴金属チップ953と接地電極95の母材とは、接合部954においてのみ接合されている。つまり、貴金属チップ953と接地電極95の母材とは、貴金属チップ953と突出部951との接触面の円周上においてのみ溶接されているのである。このため、冷熱サイクルによって接合部954に熱応力が作用すると、接合部954に亀裂が生じたり、あるいは酸化したりして、貴金属チップ953と接地電極95の母材との接合信頼性が低下してしまう。
さらには、要求電圧を下げるために中心電極94と貴金属チップ953との間に形成される火花放電ギャップGを小さくする必要があるが、かかる場合には、貴金属の使用量が多くなり、スパークプラグ9の製造コストが高くなってしまうおそれがある。
上記接地電極は、上記中心電極と対向する面である放電面の少なくとも一部に貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融してこれを凝固してなる溶融凝固部を、上記接地電極における上記中心電極の面である対向面において、上記中心電極に向かって押し出し突出させてなる凸部を有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグにある(請求項1)。
上記接地電極の母材における上記凸部の上記放電面を形成しようとする部分の少なくとも一部において、アーク溶接にて貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融した後これを凝固し、
次いで、上記凸部を成形するための凸部用キャビティを有する金型に、上記凸部用キャビティと上記対向面とを対向させた状態で略平板状の上記接地電極を載置し、
次いで、上記凸部を形成するための押圧冶具によって上記接地電極の母材の一部を上記凸部用キャビティに押し出すことにより、上記放電面の少なくとも一部に上記溶融凝固部を有する上記凸部を形成することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある(請求項13)。
上記接地電極の母材における上記凸部の上記放電面を形成しようとする部分の少なくとも一部において、アーク溶接にて貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融した後これを凝固し、
次いで、上記凸部を成形するための凸部用キャビティを有する金型に、上記凸部用キャビティと上記対向面とを対向させた状態で略平板状の上記接地電極を載置し、
次いで、上記凹部を形成するための押圧冶具によって上記接地電極背面の一部を押圧して上記凹部を形成するとともに上記接地電極の母材の一部を上記凸部用キャビティに押し出すことにより、上記放電面の少なくとも一部に上記溶融凝固部を有する上記凸部を形成することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある(請求項14)。
上記放電面の少なくとも一部には、貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融してこれを凝固してなる溶融凝固部が形成されている。これにより、低コストであって、耐消耗性及び接合信頼性に優れた内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
その結果、耐消耗性に優れたスパークプラグを得ることができる。
特に、本発明においては、上記溶融凝固部を中心電極側に押し出し突出させて上記凸部を形成しているので、熱伝導性に優れ、耐消耗性に優れたスパークプラグを提供することができる。
さらに、要求電圧を下げるためには、凸部自体の突出量を増やすだけでよく、従来に比して少量の貴金属を使用するだけで足りる。そのため、スパークプラグの製造コストを安価なものとすることができる。
以上のとおり、第一の発明によれば、低コストであって、耐消耗性及び接合信頼性に優れた内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
また、上記貴金属としては、例えば、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)などがある。
また、第二の発明及び第三の発明におけるアーク溶接としては、プラズマアーク溶接、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、イナートガス溶接、マグ溶接(含炭酸ガスアーク溶接)、セルフシールドアーク溶接など種々のものが挙げられる。
この場合には、凸部の消耗をより一層抑制することができる。すなわち、中心電極からは、特に凸部の側面と放電面との間に形成される角部に火花が飛びやすい。そのため、上記構成により、かかる部位にも溶融凝固部を配置することができる。その結果、凸部の消耗をより一層抑制することができる。
この場合には、凸部の放電面における角部の全長を長くすることができる。これにより、強電界部を複数形成することができ、要求電圧を低減することができる。その結果、スパークプラグの着火性を向上させることができる。
この場合には、チップと接地電極との接合信頼性を向上させることができる。すなわち、上記構成によれば、溶接部を有する放電面の表面に貴金属からなるチップを溶接することとなる。このため、接地電極の母材からチップへと作用する熱応力を溶融凝固部によって緩和することができ、チップと接地電極との接合信頼性を向上させることができる。
なお、本明細書において主成分とは、貴金属からなるチップ全体に占める含有量が50%を超えて含有されるものをいう。
また、上記溶融凝固部は上記放電面の40%以上の面積に形成されていることが好ましい。
この場合は、本発明の効果を一層発揮させることができる。
また、上記溶融凝固部は上記凸部の付根まで形成されていることが好ましい(図11参照)。
この場合は、上記凸部における角部の消耗を十分に抑制することができる。また、凸部の側面における酸化や亀裂、溶融凝固部の剥離等の不具合を回避することができる。
この場合には、上記スパークプラグを容易に製造することができる。すなわち、例えば押圧冶具などによって接地電極背面の一部を押圧して凹部を形成するのと同時に、凸部を形成することができる。したがって、この場合には、溶融凝固部を有する凸部を容易に形成することができ、ひいては本発明のスパークプラグを容易に製造することができる。
この場合には、耐熱性に優れたスパークプラグを得ることができる。すなわち、上記凸部は、例えば、接地電極背面の一部を押し出して凹部を形成することにより対向面に接地電極の母材の一部を突出させて成形することができるが、S1≧sの関係があるため、凹部の深さが小さくても、凸部を十分に突出させることができる。このため、凹部付近における接地電極の母材の厚みを十分に確保することができるため、接地電極の熱引きのための経路をも十分に確保することができる。その結果、耐熱性に優れたスパークプラグを得ることができる。
なお、本明細書において、凸部の平均断面積sは、凸部の体積を凸部の突出量で除した値である。
この場合には、凹部の深さが小さくても、凸部を十分に突出させることができる。このため、生産性及び耐熱性に優れたスパークプラグを得ることができる。
なお、本明細書において、凹部の平均断面積S2は、凹部の体積を凹部の深さで除した値である。
この場合には、凹部付近における接地電極の厚みを十分に確保することができる。その結果、耐熱性に一層優れたスパークプラグを得ることができる。
この場合にも、生産性及び耐熱性に優れたスパークプラグを得ることができる。
この場合には、凸部を十分に突出させるとともに、凹部付近における接地電極の厚みを十分に確保することができる。その結果、着火性及び耐熱性に十分に優れたスパークプラグを得ることができる。
また、H≦hであることがより好ましい。
この場合には、押圧冶具によって接地電極の母材の一部を押圧する際に、接地電極がその幅方向へ広がるように変形することを防ぎ、凸部を確実に突出させることができる。
この場合には、押圧冶具によって接地電極の一部を押圧する際に、接地電極がその先端方向へ広がるように変形することを防ぎ、凸部を確実に突出させることができる。
ここで、スパークプラグが内燃機関に取りつけられて使用される場合、初期状態においては、火花は電極先端部から上記角部へ向かって放電する。そして、かかる火花放電によって、凸部は上記角部から次第に消耗していき、上記角部がなくなった後に凸部全体の消耗が進行し、火花放電ギャップが拡大する。すなわち、上記方法により製造されたスパークプラグにおいては、まず上記角部から凸部を消耗させることができる。したがって、凸部が上記角部を有している分、凸部の寿命、すなわち、スパークプラグの寿命を長くすることができる。
さらに、可動型が凸部用キャビティに対して摺動可能であるため、凸部を成形した後、接地電極を金型より容易に離型することができる。
この場合には、凸部の放電面において角部を確実に形成することができる。すなわち、仮に押圧冶具による一回の押圧によっては放電面に十分に角部を形成することができなくても、二回以上押圧することで放電面に確実に角部を形成することができる。これにより、要求電圧を低減することができ、着火性に優れるスパークプラグを得ることができる。
この場合には、上記と同様に、強電界部を複数形成して要求電圧を低減することができ、スパークプラグの着火性を向上させることができる。
この場合には、前述したとおり、スパークプラグの材料コストを低減することができるとともに、スパークプラグの着火性を向上させることができる。
本発明の内燃機関用のスパークプラグ、及びその製造方法に係る実施例について、図1〜図11とともに説明する。
本例のスパークプラグ1は、図1に示すように、以下の取付金具2と、絶縁碍子3と、中心電極4と、接地電極5とを有する。
絶縁碍子3は、取付金具2よりも先端側に突出した状態で配置される碍子先端部30を有するとともに、取付金具2の内側に保持されている。
また、中心電極4は、絶縁碍子3よりも先端側に突出した状態で配置される電極先端部40を有するとともに、絶縁碍子3の内側に保持されている。
そして、接地電極5は、中心電極4との間に火花放電ギャップGを形成している。
そして、この凸部510は、中心電極4と対向する面である放電面511の少なくとも一部に、貴金属全体と接地電極5の母材の一部とを溶融してなる溶融凝固部511aを有する。
上記スパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション、ガス圧送用ポンプ等における内燃機関の着火手段として用いることができる。
スパークプラグ1は、前述したとおり、自身の外周に取付用ねじ部20を有する取付金具2を有する。そして、取付用ねじ部20において、スパークプラグ1は、内燃機関の燃焼室(図示略)の壁部に螺合される。また、図1、図2に示すように、取付金具2の先端面に、接地電極5の一端が接合されており、接地電極5の他端に形成される凸部510が、中心電極4の電極先端部40と対向する位置に配されるよう、接地電極5は屈曲成形されている。
この凹部520と凸部510との位置関係について説明すると、本例においては、図3(a)に示すように、凸部510は、この凸部510の軸芯Mの延長線が凹部520が形成されている領域を通過するよう形成されている。
なお、放電面511の面積に対して40%以上の面積を有する溶融凝固部511aが形成されていれば、本発明の作用効果を十分に発揮することができる。
また、本例においては、凸部510及び凹部520はともに略円柱形状である。したがって、例えば、図3に示すように、凸部510の直径をd、凹部520の直径をDとすると、本例のスパークプラグ1においては、D≧dの関係が成り立っている。
凸部510は、放電面511が平坦面として形成されるとともに、放電面511と側面512との間に角部513を有している。
なお、本例においては、後述する図10、図11とは異なり、角部513の全体に溶融凝固部511aが形成されているわけではない。
h≧0.3mmである場合には、スパークプラグの着火性を向上させることができる。すなわち、接地電極5の対向面51を、放電火花により混合気に着火した初期火炎から0.3mm以上離すことにより、初期火炎が燃え広がりやすくすることができ、スパークプラグの着火性を向上させることができる。
また、h≦1.1mmである場合には、凸部510の先端部の温度上昇を抑制し、エンジン運転中におけるプレイグニッションを抑制することができる。
すなわち、例えば図3に示すように接地電極5の加工部分を切断した断面において各部の寸法を計測する。かかる計測においては、例えば投影機を用いて10倍等の倍率で投影して計測してもよく、拡大写真を用いて計測してもよい。
また、凸部510の突出量hは、上記断面において、接地電極5の対向面51から凸部510の放電面511までの長さを計測する。また、凹部520の深さHは、同様に接地電極5の接地電極背面52から凹部520の底面部521までの距離を計測する。
まず、図8(a)に示すように、接地電極5を固定した取付金具2の内側に中心電極4等を挿通する。
また、上記貴金属としては、Ir、Pt、Rh等を用いることが好ましく、一方、接地電極の母材としては、前述した、Niを主成分としてTiを含有するNi基合金のほか、Ni−Cr系合金、Ni−Cr−Al系合金等を用いることが好ましい。
また、凸部510の放電面511は、接地電極5の一部が可動型610の型面611に当接することによって成形される。
次いで、図8(b)、(c)に示すように、電極先端部40と凸部510とが対向するように接地電極5を屈曲成形する。これにより、電極先端部40と凸部510との間に火花放電ギャップGが形成される。
すなわち、例えば、図10に示すように、放電面511のみならず、角部513や側面512の一部にも溶融凝固部511aを形成することができる。この場合には、放電により消耗しやすい角部513の消耗を十分に抑制することができる。
放電面511の少なくとも一部には、貴金属全体と接地電極5の母材の一部とを溶融してこれを凝固してなる溶融凝固部511aが形成されている。これにより、低コストであって、耐消耗性及び接合信頼性に優れた内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
その結果、耐消耗性に優れたスパークプラグ1を得ることができる。
さらに、要求電圧を下げるためには、凸部510自体の突出量を増やすだけでよく、従来に比して少量の貴金属を使用するだけで足りる。そのため、スパークプラグ1の製造コストを安価なものとすることができる。
本例は、図12〜図16に示すように、上記実施例1とは異なる形状のスパークプラグ1、及びその製造方法についての例である。
本例のスパークプラグ1における接地電極5は、図16に示すように、その先端部分が先端側に向かうにつれて幅が狭くなるよう形成されたテーパ部516を有する。そして、このテーパ516における対向面51側には、テーパ部516と同形状の凸部510が形成されている。
また、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
一方、本例では、実施例1とは異なり凹部(図1における符号520参照)は形成されていない。
すなわち、本例では、まず実施例1と同様に、凸部510の放電面511を形成しようとする部分よりも大きな範囲において、アーク溶接にて貴金属全体と接地電極5の母材の一部とを溶融した後これを凝固する。
次いで、図13、図15に示すように、接地電極5の母材の軸方向と直交する方向の両方向から一対の押圧冶具7にて接地電極5の母材の先端部分を押圧する。かかる一対の押圧冶具7は、テーパ部516のテーパ角θと同角度のテーパ形状を有する。
これにより、図16に示すような形状の接地電極5を有するスパークプラグ1を作製することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
本例は、図17に示すように、凸部510と凹部520とが、略四角柱形状である接地電極5の例である。すなわち、本例の接地電極5は、略四角柱形状の凸部用キャビティ61を有する金型6と略四角柱形状の押圧冶具7とを用いて作製したものである。
また、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
本例は、図18に示すように、接地電極5の軸方向に平行に切断したときの断面が略長方形状である凸部510と、接地電極5の軸方向に平行に切断したときの断面が略台形状である凹部520とを有する接地電極5の例である。
ここで、凹部520の平均断面積S2は、凹部520の体積Vを凹部520の深さHで除した値V/Hである。
なお、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
本例は、図19に示すように、接地電極5を、スパークプラグ1の軸方向に平行に切断したときの断面が、ともに略台形状である凸部510及び凹部520を有する接地電極5の例である。
本例においては、凹部520の開口部523の面積S1は、凸部510の平均断面積sよりも大きい。また、凹部520の平均断面積S2についても、凸部510の平均断面積sより大きい。
また、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
本例は、図20に示すように、接地母材50を、スパークプラグ1の軸方向に平行に切断したときの断面が略長方形状である凸部510と、その断面において表れる曲線が半楕円弧形状である凹部520とを有する接地電極5の例である。
本例においては、凹部520の開口部523の面積S1は、凸部510の面積sよりも大きい。また、凹部520の平均断面積S2についても、凸部510の面積sより大きい。
また、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
本例は、図21〜図23に示すように、凸部510と凹部520とが、種々の形状を有する接地電極5の例である。
図21に示す接地電極5は、ともに六角柱形状である凸部510及び凹部520を有する。
また、図22に示す接地電極5は、ともに楕円柱形状である凸部510及び凹部520を有する。
また、図23に示す接地電極5は、実施例3における略四角柱形状の凸部510と凹部520とを、ともにスパークプラグ1の軸方向を中心として略45°回転させてなるものである。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
本例は、図24、図25に示すように、押圧冶具7によって接地電極背面52の一部を押圧して凸部510を形成する押圧工程の変形例である。
すなわち、図24は、上記押圧工程を2回行っている状態を示している。そして、同図(a)に示すように、一回目の押圧工程においては、凹部520の開口部523の径と同一の径を有する押圧冶具7aを用いて凸部510を形成している。
次いで、同図(b)に示すように、二回目の押圧工程において、凸部510の径よりも小さい径を有する押圧冶具7bを用いて凸部510をさらに突出させる。
本例の場合には、凸部510に確実に角部513を形成することができる。
その他は、実施例1と同様である。
本例は、図26に示すように、接地電極5を二つ有する多極型のスパークプラグ1の例である。
すなわち、本例のスパークプラグ1は、凸部510を有する接地電極5を二つ備えている。具体的には、二つの接地電極5は、それぞれの凸部510における放電面511が中心電極4を挟んで互いに対向するように取付金具2に取りつけられている。
また、それぞれの凸部510は、中心電極4の先端部に向かって突出している。
本例の場合には、着火性に優れたスパークプラグ1を得ることができる。
その他は、実施例1と同様である。
本例は、図27に示すように、中心電極4の先端部に取りつけられた電極先端部40のみが、絶縁碍子3の碍子先端部30よりもスパークプラグ1の軸方向の先端側に位置するよう構成されたスパークプラグ1の例である。
また、本例においても実施例1と同様、放電面510の全面に溶融凝固部511aが形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
本例は、図28、図29に示すように、放電面511の全面に配される溶融凝固部511aの表面sにさらに貴金属からなるチップ514を溶接した接地電極5を有するスパークプラグ1の例である。
チップ514としては、例えばPt、Ir、Rh、Wのいずれか一種類を主成分とした貴金属を用いることができる。
また、チップ514は、図28(a)に示すような円柱形状のもの、図28(b)に示すような直方体形状のもの、図28(c)に示すような円環形状のものを、凸部510の突出量hに応じて種々高さを変更して形成することができる。
すなわち、同図(a)に示すように、放電面511を形成する位置に溶融凝固部511aを形成した後、上記実施例1と同様、押圧冶具7によって接地電極5の母材の一部を押圧することにより凸部510を形成する。
次いで、同図(b)に示すように、凸部510の先端部に、チップ514を例えば抵抗溶接により溶接する。なお、チップ514が長い場合などにおいては、溶接の信頼性を高めるため、抵抗溶接とレーザー溶接とを併用することもできる。
以上の手順により、本例のスパークプラグ1を作製することができる。
その他は、実施例1と同様である。
本例は、図30、図31に示すように、放電面511の全面に形成された溶融凝固部511aに種々の形状の溝部515が形成されている接地電極5の例である。
放電面511には、例えば図30(a)に示すように三つの円柱形状の溝部515、同図(b)に示すように三つの直線状の溝部515を放電面511の中心で結合してなるもの、同図(c)に示すように二本の直線状の溝部515を並列してなるものなど種々の形状の溝部515を形成することができる。
そして、それぞれの溝部515は、凸部510の放電面511において接地電極背面52側に向かって窪むように形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
本例のように、放電面511の全面に溶融凝固部511aを形成しておけば、溶融凝固部511aを有する角部を複数箇所において形成することができる。
本例は、図32に示すように、凹部520の開口部523の面積S1と凸部510の断面の平均断面積sとの関係を示すS1/sと、凸部510の突出量hとの関係を調べた例である。
具体的には、凹部520の深さHを1.2mm、凹部520の直径Dを1.8mm、接地電極5の厚みTを1.6mm、接地電極5の幅Wを2.8mmで固定するとともに、凸部510の直径dを変更することによりS1/sの値が種々異なる接地電極5を作製した(符号については図3参照)。
そして、それぞれの場合における凸部510の突出量hを測定した。
その他の構成は、実施例1と同様である。
同図からわかるように、S1/s≧1である場合には、凸部510の突出量hは0.7mmを超え、凸部510を十分に突出させることができる。
一方、S1/s<1である場合には、凸部510の突出量hは0.7mm未満であり、凸部510を十分に突出させることが困難であることがわかる。特にS1/s<0.8の場合には、H>2hとなるため、熱引きの経路が十分に確保されているとは言いがたい。
なお、本例においては、凸部510が円柱形状である接地電極5にて実験を行ったが、凸部510の側面512や凹部520の側面522がテーパ状である場合であっても同様の結果が得られる。
本例は、図33に示すように、凹部520の深さHと接地電極5の厚みTとの関係を示すH/Tと、接地電極5の温度との関係を調べた例である。
具体的には、凹部520の直径Dを2.0mm、凸部510の直径dを1.5mm、接地電極5の幅Wを2.8mm、接地電極5の厚みTを1.6mmで固定するとともに、凹部520の深さHを種々変更することによりH/Tの値が種々異なる接地電極5を作製した(符号については図3参照)。
その他の構成は、実施例1と同様である。
すなわち、まず、各接地電極5、及び凸部510及び凹部520を設けなかった場合の接地電極(以下、比較試料という。)が730℃となるように加熱した。
次いで、各接地電極5、及び比較試料における、凹部520よりも先端部分54に近い部分の温度を測定した。
なお、本例では、比較試料に対する増加温度の基準は100℃とした。これは、100℃以上の温度上昇が生じた場合、耐熱性が低下して接地電極5の寿命低下が顕著となるおそれがあることに基づく。
同図からわかるように、H/T≦0.75である場合には、比較試料に対する増加温度を100℃以下と、十分に小さくすることができる。
一方、H/T>0.75である場合には、比較試料に対する増加温度が100℃を超え、さらに温度増加率が急激に増大することがわかる。
なお、本例においては、凸部510が円柱形状である接地電極5にて実験を行ったが、凸部510の側面512や凹部520の側面522がテーパ状である場合であっても同様の結果が得られる。
2 取付金具
20 取付用ねじ部
3 絶縁碍子
30 碍子先端部
4 中心電極
40 電極先端部
5 接地電極
51 対向面
510 凸部
511 放電面
511a 溶融凝固部
G 火花放電ギャップ
Claims (18)
- 外周に取付用ねじ部を設けた取付金具と、この取付金具よりも先端側に突出した状態で配置される碍子先端部を有するとともに上記取付金具の内側に保持される絶縁碍子と、この絶縁碍子よりも先端側に突出した状態で配置される電極先端部を有するとともに上記絶縁碍子の内側に保持される中心電極と、この中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備えた内燃機関用のスパークプラグであって、
上記接地電極は、上記中心電極と対向する面である放電面の少なくとも一部に貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融してこれを凝固してなる溶融凝固部を、上記接地電極における上記中心電極の面である対向面において、上記中心電極に向かって押し出し突出させてなる凸部を有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。 - 請求項1において、上記溶融凝固部は、上記放電面の全面に形成されていることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1又は2において、上記凸部は、上記放電面において上記接地電極における上記対向面と反対側の面である接地電極背面側に向かって窪んだ溝部を有することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1又は2において、上記放電面には、Pt、Ir、Rh、Wのいずれか一種類を主成分とする貴金属からなるチップが溶接されていることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記溶融凝固部は上記放電面の40%以上の面積に形成されていることを特徴とする内熱機関用のスパークプラグ。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項において、上記溶融凝固部は上記凸部の付根まで形成されていることを特徴とする内熱機関用のスパークプラグ。
- 請求項1〜6のいずれか一項において、上記接地電極は、この接地電極における上記対向面と反対側の面である接地電極背面から上記対向面に向かって形成された凹部を有し、上記凸部は、その軸芯の延長線が上記凹部が形成されている領域を通過するよう形成されていることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項7において、上記凹部の開口部の面積をS1、上記スパークプラグの軸方向に直交する上記凸部の断面の平均断面積をsとしたとき、S1≧sの関係が成り立つことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項7又は8において、上記スパークプラグの軸方向に直交する上記凹部の断面の平均断面積をS2としたとき、S2≧sが成り立つことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項7〜9のいずれか一項において、上記接地電極の厚みをT、上記スパークプラグの軸方向における上記凹部の深さをHとしたとき、H≦(3/4)Tの関係が成り立つことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項7〜10のいずれか一項において、上記凸部と上記凹部とは、略円柱形状であって、上記凸部の直径をd、上記凹部の直径をDとしたとき、D≧dの関係が成り立つことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項7〜11のいずれか一項において、上記スパークプラグの軸方向における上記凸部の突出量をh、上記スパークプラグの軸方向における上記凹部の深さをHとしたとき、H≦2hの関係が成り立つことを特徴とする内燃機関用のスパークプラグ。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを製造する方法であって、
上記接地電極の母材における上記凸部の上記放電面を形成しようとする部分の少なくとも一部において、アーク溶接にて貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融した後これを凝固し、
次いで、上記凸部を成形するための凸部用キャビティを有する金型に、上記凸部用キャビティと上記対向面とを対向させた状態で略平板状の上記接地電極を載置し、
次いで、上記凸部を形成するための押圧冶具によって上記接地電極の母材の一部を上記凸部用キャビティに押し出すことにより、上記放電面の少なくとも一部に上記溶融凝固部を有する上記凸部を形成することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。 - 請求項5〜12のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを製造する方法であって、
上記接地電極の母材における上記凸部の上記放電面を形成しようとする部分の少なくとも一部において、アーク溶接にて貴金属全体と上記接地電極の母材の一部とを溶融した後これを凝固し、
次いで、上記凸部を成形するための凸部用キャビティを有する金型に、上記凸部用キャビティと上記対向面とを対向させた状態で略平板状の上記接地電極を載置し、
次いで、上記凹部を形成するための押圧冶具によって上記接地電極背面の一部を押圧して上記凹部を形成するとともに上記接地電極の母材の一部を上記凸部用キャビティに押し出すことにより、上記放電面の少なくとも一部に上記溶融凝固部を有する上記凸部を形成することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。 - 請求項13又は14において、上記接地電極は、その幅方向の両側面を上記金型に設けた側方当接面に当接させた状態で上記押圧冶具によって押圧されることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
- 請求項13〜15のいずれか一項において、上記接地電極は、その先端部分を上記金型に設けた先端当接面に当接させた状態で上記押圧冶具によって押圧されることを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
- 請求項13〜16のいずれか一項において、上記金型には、上記凸部用キャビティに対して摺動可能な可動型が挿入配置されており、この可動型は、上記接地電極に対向する型面を平面状に形成してなり、上記接地電極の母材の一部を上記凸部用キャビティに押し出して上記凸部を成形する際に上記可動型の型面によって上記凸部の放電面を成形することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
- 請求項13〜17のいずれか一項において、上記凸部を形成するに当たっては、上記押圧冶具によって上記接地電極背面の一部を二回以上押圧することを特徴とする内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
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