ところで、上記特許文献1の考え方を利用して、上記のようなエアバッグ装置のバッグ部に、該バッグ部内の圧力が、予め設定した設定圧を超えたときに、閉状態から開状態となるリリーフバルブを設けるようにすれば、衝突物の衝撃吸収性を向上させることができるようになる。このリリーフバルブにより、バッグ部内の圧力を、図10に実線で示す如く変化させるようにする。すなわち、バッグ部内の圧力は、インフレータによるガス供給開始から高くなっていき、衝突物がバッグ部に衝突すると、該衝突によりバッグ部が外側から押圧されることで、急激に増大する。そこで、上記衝突時のバッグ部内の圧力を、衝突物に大きな反力を与えたり跳ね返したりしないような適切な圧力範囲内になるように、リリーフバルブを設ける。これにより、仮にリリーフバルブがなければ、図10に一点鎖線で示すように、上記衝突によってバッグ部内の圧力がかなり増大して衝突物への反力が非常に大きくなるところを、リリーフバルブが圧力増大を小さく抑えて、衝突物の衝撃吸収性を向上させることができるようになる。また、上記圧力増大直後に、バッグ部内の圧力が図10に示す如く急速に低下するように、リリーフバルブを、閉状態から開状態になった後に開状態を維持するように構成すれば、衝撃吸収性をより一層向上させることができるようになる。
しかしながら、上記のようなリリーフバルブを設ける構成では、バッグ部内の温度(車両周囲の温度)によっては、上記の圧力変化を得ることは困難であり、衝撃吸収性を十分に向上させることができない可能性がある。すなわち、上記設定圧は、通常、バッグ部内の温度が、想定される温度範囲において高い温度領域及び低い温度領域を除く中程度の温度領域(常温付近)にあるときに、上記のような圧力変化が生じるように設定されるが、バッグ部内の温度が低い場合には、バッグ部内の圧力が、図10に破線で示すように変化する。つまり、衝突物がバッグ部に衝突したときの該バッグ部内の圧力が上記設定圧よりもかなり低くなり、このため、その衝突によりバッグ部内の圧力が増大しても、リリーフバルブが作動せず、衝突物への反力が大きくなってしまう。
一方、エアバッグ内の温度が高い場合には、図10に太い二点鎖線で示すように変化する。つまり、衝突物がバッグ部に衝突する前に、バッグ部内の圧力が上記設定圧を超える。このため、バッグ部内の圧力は、設定圧を超えた直後に急速に低下し、衝突物がバッグ部に衝突したときには、バッグ部内の圧力が低下しすぎて衝突物を十分に受け止めることができなくなる。また、バッグ部内の圧力が上記設定圧を超えた後に低下しないように、設定圧を保持するように構成すると、細い一点鎖線で示すように、衝突物の衝突前においてはバッグ部内の圧力が設定圧に保持されるが、この状態で衝突物がバッグ部に衝突すると、バッグ部内の圧力が最初から比較的高い圧力にあるため、衝突物が大きな反力を受けることになる。
そこで、上記のようなバッグ部内の温度の高低による問題を解決するために、例えば特許文献2〜4に示されているように、バッグ部内の温度を検出する温度センサ等を設け、その検出された温度に基づいてバッグ部内の圧力を調整するようにすることが考えられる。
しかしながら、この方法では、バッグ部内の圧力を制御する必要があり、システムが非常に複雑になるという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように車両のフロントピラーの前側を覆うように展開するバッグ部を備えた車両用エアバッグ装置に対して、その構成に工夫を凝らすことによって、簡単な構成で、出来る限り広い温度範囲に亘ってバッグ部による衝突物の衝撃吸収性を向上させようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、バッグ部内の圧力を第1所定圧に保持する圧力保持バルブと、上記バッグ部内の圧力が、上記第1所定圧よりも大きい第2所定圧を超えたときに閉状態から開状態となるリリーフバルブとを設けるようにした。
具体的には、請求項1の発明では、車両のフロントピラーの前側を覆うように展開するバッグ部と、該バッグ部へ展開用気体を供給する気体供給手段とを備えた車両用エアバッグ装置を対象とする。
そして、上記バッグ部内の圧力を第1所定圧に保持する圧力保持バルブと、上記バッグ部内の圧力が、上記第1所定圧よりも大きい第2所定圧を超えたときに閉状態から開状態となるリリーフバルブとを備えているものとする。
この発明により、上記第2所定圧を、バッグ部内の温度が中程度である場合において衝突物がバッグ部に衝突したときからリリーフバルブが作動したときまでの圧力増大量(衝突時におけるバッグ部内の圧力と第2所定圧との差)が、所定値以下になるように設定し、上記第1所定圧を、良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲内であって、バッグ部内の温度が中程度である場合において衝突物が二次衝突したときにおけるバッグ部内の圧力と上記第2所定圧との間の圧力に設定しておけば、バッグ部内の温度が中程度以上である場合に、衝突物の衝撃吸収性を向上させることができる。すなわち、バッグ部内の温度が中程度である場合には、衝突物がバッグ部に衝突したときのバッグ部内の圧力は、第1所定圧よりも低く、その衝突による圧力増大によって第1所定圧を超える。このとき、圧力保持バルブによる圧力保持動作(開閉動作)が追いつかない場合には、バッグ部内の圧力が急激に増大してバッグ部内の圧力が第2所定圧を超える。これにより、リリーフバルブが開状態となってバッグ部内の気体が外部へ流出して、バッグ部内の圧力が急速に低下する。この場合、上記衝突時からの圧力増大量は、上記第2所定圧を上記の如く設定したことにより、上記所定値以下となる。
また、バッグ部内の温度が高い場合には、衝突物がバッグ部に衝突する前にバッグ部内の圧力が第1所定圧を超ようとするが、圧力保持バルブによって第1所定圧に保持される。この状態で衝突物がバッグ部に衝突して、圧力保持バルブによる圧力保持動作が追いつかない場合には、バッグ部内の圧力が急激に増大する。そして、バッグ部内の圧力が第2所定圧を超えると、リリーフバルブが開状態となってバッグ部内のガスが外部へ流出して、バッグ部内の圧力が急速に低下する。この場合、上記衝突時からの圧力増大量は第1所定圧と第2所定圧との差となる。この差は、上記第1及び第2所定圧を上記の如く設定したことにより、上記所定値よりも小さくなる。
したがって、バルブを使用するという簡単な構成で、低い温度領域を除く広い温度範囲に亘ってバッグ部による衝突物の衝撃吸収性を向上させることができる。
また、第2所定圧を出来る限り小さくして、それに応じて第1所定圧をも小さくすれば(但し、第1所定圧は良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲の下限値よりも大きくかつ第2所定圧よりも小さい)、バッグ部内の温度が低い場合であっても、衝突物の衝突時からの圧力増大量を上記所定値以下にすることができ、バッグ部による衝突物の衝撃吸収性を向上させることができるようになる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記リリーフバルブは、閉状態から開状態になった後に閉状態に戻るのを阻止する閉状態移行阻止手段を有しているものとする。
このことにより、リリーフバルブが一旦、閉状態から開状態になると、その直後からバッグ部内の気体が外部へ流出し続けてバッグ部内の圧力が急速に低下するので、バッグ部内の圧力を、圧力増大直後に急速に低下させるようにすることができ、衝突物の衝撃吸収性をより一層向上させることができる。
以上説明したように、本発明の車両用エアバッグ装置によると、バッグ部内の圧力を第1所定圧に保持する圧力保持バルブと、上記バッグ部内の圧力が、上記第1所定圧よりも大きい第2所定圧を超えたときに閉状態から開状態となるリリーフバルブとを設けるようにしたことにより、バルブを用いるという簡単な構成で、出来る限り広い温度範囲に亘ってバッグ部による衝突物の衝撃吸収性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。但し、最初に、本発明の参考となる参考形態を説明し、その後に、本発明の実施形態を、その参考形態と異なる点を中心に説明する。
(参考形態1)
図1は、本発明の参考形態1に係る車両用エアバッグ装置10(図2参照)が搭載された車両W(本参考形態では、自動車)を示し、この車両Wのフロントバンパ1内の表面近傍には、衝突検知センサ2が配設されている。この衝突検知センサ2は、フロントバンパ1が障害物(歩行者等)に接触して変形したときに、接触信号を不図示のコントロールユニットに送信するようになっており、このことにより、車両Wが障害物に衝突したことが検知される。
上記エアバッグ装置10は、上記車両Wの車体カウル部20の左右両端部に設けたエアバッグ装置収容部15にそれぞれ配設されている。上記車体カウル部20は、図2に示すように、ボンネット3の後端部とフロントガラス4の下端部との間に位置していて、前板21及び後板22とで構成されて車幅方向に延ばした略筒状に形成されている。上記前板21の上部は車両後方へ延びており、この前板21の上部における各エアバッグ装置収容部15に対応する部位には、後述のバッグ部11が膨出展開可能な開口部21aが形成されている。この各開口部21aは、リッド23により閉塞され、このリッド23は、バッグ部11の展開圧により開口部21aを開放するようになっている。
上記各エアバッグ装置10は、当該車両Wのフロントピラー5の前側を覆うように展開するバッグ部11(車両左側のエアバッグ装置収容部15に配設されたエアバッグ装置10のバッグ部11は、車両左側のフロントピラー5を覆い、車両右側のエアバッグ装置収容部15に配設されたエアバッグ装置10のバッグ部11は、車両右側のフロントピラー5を覆う)と、このバッグ部11へ展開用ガス(気体)を供給する気体供給手段としてのインフレータ12とを備えている。このインフレータ12は、上記コントロールユニットが上記衝突検知センサからの接触信号を受けたときに該コントロールユニットから送信される起爆信号により起爆されてガスを発生させるようになっている。
上記各エアバッグ装置収容部15内には、上記インフレータ12が配設されたガス供給室16(気体供給室)が密閉状に形成されているとともに、このガス供給室16と、バッグ部11が収容されたバッグ部収容室17とを隔てる隔壁18が設けられている。そして、袋状のバッグ部11の開口端が上記隔壁18に取付固定されて、バッグ部11がバッグ部収容室17内に折り畳まれた状態で収容されている。したがって、インフレータ12は、バッグ部11に対して隔壁18を隔てて密閉状に設けられたガス供給室16に配設されていることになる。
上記隔壁18には、逆止弁(チェックバルブ)19が設けられており、インフレータ12は、この逆止弁19を介してガス供給室16からバッグ部11へガスを供給するようになっている。すなわち、この逆止弁19は、ガス供給室16からバッグ部11への一方向のみにガスを流すようになっている。
図3に概略的に示すように、上記バッグ部11には、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が、予め設定した設定値を超えたときに閉状態から開状態となる差圧バルブ31が設けられている。この差圧バルブ31は、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が上記設定値を超えたときに、該バッグ部内のガスを外部へ流出させ、このことで、後述の如くバッグ部11が外側から押圧力を受けることでバッグ部11内の圧力が増大したときにおいて、該押圧力を受けたときからの圧力増大量を所定値以下に規制するようになっている。したがって、差圧バルブ31は、上記押圧力を受けたときからの圧力増大量を所定値以下に規制する圧力増大規制バルブを構成する。
上記差圧バルブ31は、閉状態から開状態になった後に閉状態に戻るのを阻止する閉状態移行阻止手段を有している。この閉状態移行阻止手段の構成を簡単に説明すると、閉状態では、図4(a)に示すように、差圧バルブ31のボール32がスプリング33によって同図の左側へ付勢されてガス流通路の開口を塞いでいる。このボール32の右側には、閉状態移行阻止手段としての阻止部材34が、スプリング35によって下方に付勢された状態で配置されている。そして、バッグ部11内の圧力がガス供給室16内の圧力よりも大きくなって、その差圧が上記設定値を超えると、ボール32が右側へ移動しようとする。このとき、阻止部材34はボール32によって押されてスプリング35の付勢力に抗して上側へ移動し、これにより、ボール32が右側へ移動して、上記ガス流通路の開口を開放する。上記ボール32が阻止部材34よりも右側へ移動すると、図4(b)に示すように、阻止部材34がスプリング35の付勢力によって元の位置へ下降する。このとき、ボール32がスプリング33の付勢力により左側へ移動しようとしても、阻止部材34により移動することができず、この結果、差圧バルブ31は、閉状態に戻ることはできず、開状態を維持する。
上記構成のエアバッグ装置10を搭載した車両Wのフロントバンパ1が障害物に衝突して変形すると、衝突検知センサ2が接触信号をコントロールユニットに送信し、コントロールユニットは、この接触信号を受けて起爆信号をインフレータ12へ送信する。これにより、インフレータ12が起爆されてガスを発生させ、このガスを逆止弁19を介してガス供給室16からバッグ部11へ供給する。バッグ部11は、このガスの供給を受けることで、該バッグ部11内の圧力を増大させながら展開し、この展開圧により開放された開口部21aを通ってフロントピラー5の前側を覆う。
一方、上記障害物(衝突物)は、ボンネット3上に倒れてフロントピラー5に二次衝突する可能性があるが、その二次衝突(以下、単に衝突という)の前に上記バッグ部11がフロントピラー5の前側に展開しており(殆ど展開完了した状態にある)、これにより、衝突物はバッグ部11に衝突してその衝撃力が緩和される。
上記衝突物がバッグ部11に衝突すると、この衝突によりバッグ部11は外側から押圧力を受け、このことで、バッグ部内の圧力が、ガスの供給による増大分よりも大きく増大する。このとき、バッグ部11とガス供給室16とを隔てる隔壁18に設けられた逆止弁19が閉状態となるので、バッグ部11内の圧力がガス供給室16内の圧力よりも大きくなる。そして、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が上記設定値を超えると、差圧バルブ31が作動して閉状態から開状態となる。このことで、バッグ部11内のガスが外部へ流出し、バッグ部11内の圧力が低下する。また、上記差圧バルブ31は一旦、開状態となると、上記阻止部材34によって開状態を維持する。このため、バッグ部11内の圧力は、差圧バルブ31が作動した後は急速に低下していく。
上記のバッグ部11内の圧力変化の様子を図5に実線で示す。尚、衝突物のバッグ部11への衝突以降に破線で示す線は、ガス供給室16内の圧力変化である。
本参考形態では、バッグ部11内の温度に関係なく、同様の圧力変化が得られる。すなわち、バッグ部11内の圧力は、インフレータ12によるガス供給開始から高くなっていき、バッグ部11の展開完了の少し手前で衝突物がバッグ部11に衝突し、これにより、バッグ部11内の圧力は急激に増大する。一方、ガス供給室16内の圧力は、衝突前のバッグ部11の圧力変化に連続するように滑らかに増大し、やがて、インフレータ12からのガスの供給がなくなって、緩やかに低下していく。尚、衝突物のバッグ部11への衝突がなければ、バッグ部11内の圧力もガス供給室16内の圧力と同様に変化する。
上記衝突によるバッグ部11内の圧力増大によって、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が設定値ΔVを超えると、差圧バルブ31が作動して、バッグ部11内の圧力が、ガス供給室16内の圧力よりも大きく低下していく。これにより、バッグ部11が衝突物より押圧力を受けたとき(衝突物のバッグ部11への衝突時)からの圧力増大量が所定値以下となる。尚、図5では、上記圧力増大量はP1としており、このP1の値は、上記差圧が設定値ΔVを超えたときにおけるガス供給室16内の圧力から衝突時のバッグ部11内の圧力を引いた値に、ΔVを加えた量に等しい。
このように、上記圧力増大量が所定値以下であれば、衝突物は、その圧力増大によって大きな衝撃を受けたり跳ね返されたりするようなことはなく、衝突物の衝撃吸収性を向上させることができる。すなわち、仮に差圧バルブ31がなければ、図5に一点鎖線で示すように、上記衝突時からの圧力増大量がP2となって上記所定値よりもかなり大きくなってしまうが、本参考形態では、差圧バルブ31によって、衝突物の衝突時からの圧力増大量が適切に抑えられ、良好な衝撃吸収性が得られるようになる。このことは、想定される温度範囲全体に亘って同様であるが、衝突物のバッグ部11への衝突時における該バッグ部11内の圧力自体は温度によって異なり、バッグ部11内の温度が中程度(常温付近)以下である場合には、衝突時におけるバッグ部11内の圧力を、衝突物に大きな反力を与えたり跳ね返したりしないで良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲内になるようにすることが可能であるが、バッグ部11内の温度が高い場合には、衝突時のバッグ部11内の圧力が、通常、上記適切な圧力範囲よりも高くなってしまう。但し、バッグ部11内の温度が高い場合には、押圧力を受けたときの圧力増大が発生し難い。
したがって、本参考形態では、バッグ部11内の温度が中程度(常温付近)以下である場合(押圧力を受けたときの圧力増大が比較的発生し易い場合)に、衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力を適切な圧力範囲内にすることができるとともに、この衝突時からの圧力増大量を所定値以下となるようにすることができる。よって、簡単な構成で、押圧力を受けることにより圧力増大が発生する広い温度範囲に亘ってバッグ部11による衝突物の衝撃吸収性を確実に向上させることができる。尚、バッグ部11内の温度が高い場合であっても、衝突物の衝突時からの圧力増大量が適切に抑えられかつ圧力増大直後にバッグ部11内の圧力が急速に低下するので、或る程度良好な衝撃吸収性が得られるようになる。
(参考形態2)
図6は、本発明の参考形態2を示し(尚、以下の参考形態及び実施形態では、図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、バッグ部11内の温度が高い場合でも、衝突物のバッグ部11への衝突時における該バッグ部11内の圧力を適切な圧力範囲内にするようにしたものである。
すなわち、本参考形態では、バッグ部11に、圧力保持バルブ35が差圧バルブ31とは並列に設けられている。この圧力保持バルブ35は、バッグ部11内の圧力が所定圧を超えたときには、閉状態から開状態となる一方、バッグ部11内の圧力が上記所定圧よりも低いときには、開状態から閉状態となり、このことで、バッグ部11内の圧力を上記所定圧に保持するように構成されている。また、この圧力保持バルブ35は、開状態にあるときに、ガス流通路の開口より流出するガス量が上記差圧バルブ31よりも少なくなるように構成されている。
上記所定圧は、バッグ部11内の温度が高い場合に、衝突物がバッグ部11に衝突する前にバッグ部11内の圧力が所定圧に達するように設定しておくとともに、良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲内に設定しておく。
上記の構成により、バッグ部11内の温度が高い場合においては、図7に示すように、衝突物がバッグ部11に衝突する前にバッグ部11内の圧力が所定圧を超えようとするが、圧力保持バルブ35の開閉動作によって所定圧に保持される。この状態で衝突物がバッグ部11に衝突すると、この衝突時からの圧力増大量は、差圧バルブ31によって所定値以下(本参考形態ではΔV)に規制される。したがって、バッグ部11内の温度が高い場合であっても、衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力を適切な圧力範囲内にすることができるとともに、この衝突時からの圧力増大量も所定値以下にすることができる。
尚、衝突物がバッグ部11に衝突した際、その衝撃力が小さければ、圧力保持バルブ35によって、バッグ部11内の圧力が殆ど増大することなく上記所定圧に保持されるが、通常は、上記衝撃力が大きくて、しかも、圧力保持バルブ35が、開状態にあるガス流通路開口より流出するガス量がかなり小さいために、圧力保持バルブ35による圧力保持動作(開閉動作)が追いつかずにバッグ部11内の圧力が急激に増大する。そして、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が設定値ΔVを超えると、差圧バルブ31が作動することになる。
また、バッグ部11内の温度が中程度以下である場合には、バッグ部11内の圧力は、衝突物がバッグ部11に衝突する前には上記所定圧に達せず、圧力保持バルブ35は作動しない。そして、衝突後において、所定圧を超えたとしても、上記参考形態1と同様に、差圧バルブ31が作動して、衝突時からの圧力増大量が所定値以下となる。或いは、衝突後において、所定圧を超える前に、差圧バルブ31が作動して、衝突時からの圧力増大量が所定値以下となる。つまり、バッグ部11内の圧力変化の様子は、上記参考形態1と同様になる。
したがって、本参考形態では、バッグ部11内がどのような温度であっても、衝突物の衝撃吸収性を確実に向上させることができる。
尚、上記参考形態1及び2では、圧力増大規制バルブとして、バッグ部11内とガス供給室16内との差圧が設定値を超えたときに閉状態から開状態となる差圧バルブ31を用いたが、圧力増大規制バルブは、このような差圧バルブ31に限らず、バッグ部11が押圧力を受けたときからの圧力増大量を所定値以下に規制することが可能なものであれば、どのようなものであってもよい。
また、上記参考形態1及び2では、差圧バルブ31が、閉状態から開状態になった後に閉状態に戻るのを阻止する閉状態移行阻止手段を有するが、このような閉状態移行阻止手段は必ずしも必要なものではない。但し、上記参考形態1及び2のように閉状態移行阻止手段を設ける方が、衝撃吸収性を向上させる観点で好ましい。特に参考形態1の場合には、バッグ部11内の温度が高い場合においても、衝撃吸収性を出来る限り向上させるために、閉状態移行阻止手段を設けることが好ましい。
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について説明する。図8は、本発明の実施形態を示し、上記参考形態1の圧力増大規制バルブ(差圧バルブ31)に代えて、バッグ部11に圧力保持バルブ40とリリーフバルブ41とを並列に設けるようにしたものである。
すなわち、本実施形態では、袋状のバッグ部11の開口端はインフレータ12に取付固定されており、上記参考形態1のガス供給室16や隔壁18は設けられていない。これにより、インフレータ12で発生したガスは、直接バッグ部11へ供給される。
上記圧力保持バルブ40は、上記参考形態2における圧力保持バルブ35と同様に、バッグ部11内の圧力が第1所定圧を超えたときには、閉状態から開状態となり、バッグ部11内の圧力が第1所定圧よりも低いときには、開状態から閉状態になり、このことで、バッグ部11内の圧力を第1所定圧に保持するように構成されている。この圧力保持バルブ40は、開状態にあるときに、ガス流通路の開口より流出するガス量が上記リリーフバルブ41よりも少なくなるように構成されている。
一方、上記リリーフバルブ41は、バッグ部11内の圧力が、上記第1所定圧よりも大きい第2所定圧を超えたときに閉状態から開状態となるように構成されている。このリリーフバルブ41は、上記参考形態1及び2における差圧バルブ31と同様の構成の閉状態移行阻止手段を有しており、このことで、閉状態から開状態になった後は、開状態を維持するようになっている。
上記第2所定圧は、バッグ部11内の温度が中程度である場合において衝突物がバッグ部11に衝突したときからリリーフバルブ41が作動したときまでの圧力増大量(衝突時におけるバッグ部11内の圧力と第2所定圧との差)が上記所定値以下になるように設定する。また、上記第1所定圧は、良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲内であって、バッグ部11内の温度が中程度である場合において衝突物がバッグ部11に衝突したときにおける該バッグ部11内の圧力と上記第2所定圧との間の圧力に設定しておく。したがって、第1所定圧と第2所定圧との差は、上記所定値よりも小さくなる。
上記の構成により、図9に示すように、バッグ部11内の温度が中程度である場合には、衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力は、第1所定圧よりも低く、その衝突による圧力増大によって第1所定圧を超える。このとき、圧力保持バルブ40による圧力保持動作(開閉動作)が追いつかずにバッグ部11内の圧力が急激に増大する。そして、この増大により、バッグ部11内の圧力が第2所定圧を超えると、リリーフバルブ41が開状態となってバッグ部11内のガスが外部へ流出して、バッグ部11内の圧力が低下する。また、リリーフバルブ41の開状態が維持されるので、バッグ部11内の圧力は、リリーフバルブ41が作動した後は急速に低下していく。ここで、上記第2所定圧は、バッグ部11内の温度が中程度である場合において衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力と第2所定圧との差が所定値以下になるように設定されているので、上記衝突時からの圧力増大量(図9に示すP3)は所定値以下となる。
また、バッグ部11内の温度が高い場合においては、衝突物がバッグ部11に衝突する前にバッグ部11内の圧力が第1所定圧を超えようとするが、圧力保持バルブ40によって第1所定圧に保持される。この状態で衝突物がバッグ部11に衝突すると、圧力保持バルブ40による圧力保持動作(開閉動作)が追いつかずにバッグ部11内の圧力が急激に増大する。そして、バッグ部11内の圧力が第2所定圧を超えると、リリーフバルブ41が開状態となってバッグ部11内のガスが外部へ流出して、バッグ部11内の圧力が急速に低下する。この場合、上記衝突時からの圧力増大量(図9に示すP4)は第1所定圧と第2所定圧との差となる。この差は、上記の如く上記所定値よりも小さい。
一方、バッグ部11内の温度が低い場合には、衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力が第1所定圧よりも低くかつ適切な圧力範囲内の低い側にあるために、この衝突時からの圧力増大量(衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力と第2所定圧との差)が所定値を超える可能性がある。
したがって、本実施形態では、バッグ部11内の温度が中程度以上である場合に、衝突物の衝突時におけるバッグ部11内の圧力を適切な圧力範囲内にすることができるとともに、この衝突時からの圧力増大量を所定値以下となるようにすることができ、低い温度領域を除く広い温度範囲に亘ってバッグ部11による衝突物の衝撃吸収性を向上させることができる。
ここで、バッグ部11内の温度が低い場合でも、衝突時からの圧力増大量を所定値以下にするためには、上記第2所定圧を出来る限り小さくして、それに応じて第1所定圧をも小さくすればよい(但し、第1所定圧は良好な衝撃吸収性が得られる適切な圧力範囲の下限値よりも大きくかつ第2所定圧よりも小さい)。これにより、バッグ部11内の温度が低い場合であっても、衝突物の衝突時からの圧力増大量を所定値以下にすることができ、バッグ部11による衝突物の衝撃吸収性を向上させることができるようになる。この場合、バッグ部11内の温度が中程度である場合にも、温度が高い場合と同様に、衝突物がバッグ部11に衝突する前にバッグ部11内の圧力が第1所定圧に達して該第1所定圧に保持され、この状態で衝突物がバッグ部11に衝突することになる。このため、バッグ部11内の温度が中程度である場合において、衝突物がバッグ部11に衝突したときの該バッグ部11の圧力が、適切な圧力範囲の下限値付近にあり、問題ではないが、最も好ましい圧力範囲(適切な圧力範囲の中の中央付近の圧力)からは外れてしまう。
尚、上記実施形態においては、リリーフバルブ41が、閉状態から開状態になった後に閉状態に戻るのを阻止する閉状態移行阻止手段を有するが、この閉状態移行阻止手段は必ずしも必要なものではない。但し、上記実施形態のように閉状態移行阻止手段を設ける方が、衝撃吸収性を向上させる観点で好ましい。